説明

浄化合成ガス流の製造方法

炭素質原料から浄化合成ガス流を製造する方法であって、(a)炭素質原料を分子酸素合成ガスで部分酸化し、主成分の一酸化炭素と水素の他に水、硫化水素及び二酸化炭素を含有した合成ガスを得る工程、(b)合成ガスとメタノールを混合し、その混合物の温度を下げ、冷却された気体状合成ガスから液体のメタノール−水混合物を分離する工程、(c)工程(b)で得られた冷却合成ガスをメタノールと接触させて合成ガス中の硫化水素と二酸化炭素の含有量を減少させることで、硫化水素と二酸化炭素を含有した濃メタノールと、硫化水素と二酸化炭素の減少した合成ガス流とを得る工程、(d)濃メタノールから二酸化炭素フラクションと硫化水素フラクションを分離して、工程(b)及び(c)のメタノールとして用いる希薄メタノールを得ることにより、工程(c)の濃メタノール流を再生する工程、(e)前記メタノール−水混合物中のメタノールの一部を分離し、工程(b)及び/又は(c)において再利用する工程、(f)工程(b)で得られた前記メタノール−水混合物中に存在するメタノールの別の一部を、メタノールが一酸化炭素と水素に変換される条件下で工程(a)に循環させる工程、を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素質原料から浄化合成ガス流を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まず原料の部分酸化(ガス化ともいう)を行った後でスクラビング工程、COシフト工程、及びCOとHSの除去工程を行うことにより炭素質原料から浄化合成ガスを製造することは知られている。この方法は、Gasification Technology Counsel (GTC 2004) ConferenceにおけるJohn Y Mak他の論文で「Synthesis Gas Purification in Gasification to Ammonia/Urea Complex」に記載されている(http://www.gasification.org/Presentations/2004.htm)。この論文の図5には、石炭スラリーフィードをいわゆる急冷ガス化法でガス化して原合成ガスを得る統合プロセスが記載されている。原合成ガスのスクラビング及びCOシフト工程の後、COとHS及び他の酸性ガスを除去して処理済み合成ガスを得る。COとHSの除去は、Lurgi AG and Linde AGの周知のRectisol法によって行う。Rectisol法では、低温で合成ガスをメタノールに接触させることによりCOとHS及び他の酸性ガスを除去する。
【0003】
上記刊行物の図6に示されているRectisol法では、まず合成ガスをメタノールと混合した後、この混合物の温度を下げる。冷却により液体のメタノール−水混合物を形成し、いわゆるノックアウトドラムでガス状合成ガスから分離する。次に冷却された合成ガスをいわゆるメタノールスクラバーにおいて低温メタノールと接触させて処理済み合成ガスと濃メタノールを得る。COとHS及び他の酸性ガスを濃メタノールから除去し、再生されたメタノールをメタノールスクラバーで再利用する。水−メタノール混合物中に存在するメタノールをいわゆるメタノール/水精留塔で回収してメタノールスクラバーにおいて再利用する。
【0004】
上記方法の問題は、メタノールインベントリーの一部を循環メタノールから取り除き、特定の汚染物質(例えばアンモニア、シアン化合物、特定されない硫黄種及び微量の金属など)の堆積を防止することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、COとHSの除去工程において上記のような汚染物質の堆積を防止する更に効率的な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は下記の方法によって達せられる。
【0007】
炭素質原料から浄化合成ガス流を製造する方法であって、
(a)炭素質原料を分子酸素合成ガスで部分酸化し、主成分の一酸化炭素と水素の他に水、硫化水素及び二酸化炭素を含有した合成ガスを得る工程、
(b)合成ガスとメタノールを混合し、その混合物の温度を下げ、冷却された気体状合成ガスから液体のメタノール−水混合物を分離する工程、
(c)工程(b)で得られた冷却合成ガスをメタノールと接触させて合成ガス中の硫化水素と二酸化炭素の含有量を減少させることで、硫化水素と二酸化炭素を含有した濃メタノールと、硫化水素と二酸化炭素の減少した合成ガス流とを得る工程、
(d)濃メタノールから二酸化炭素フラクションと硫化水素フラクションを分離して、工程(b)及び(c)のメタノールとして用いる希薄メタノールを得ることにより、工程(c)の濃メタノール流を再生する工程、
(e)前記メタノール−水混合物中のメタノールの一部を分離し、工程(b)及び/又は(c)において再利用する工程、
(f)工程(b)で得られた前記メタノール−水混合物中に存在するメタノールの別の一部を、メタノールが一酸化炭素と水素に変換される条件下で工程(a)に循環させる工程、
を含む方法。
【0008】
出願人は、工程(b)で得られるメタノール−水混合物中に存在するメタノールの一部を工程(a)に再循環させることにより、汚染物質の堆積が避けられることを見いだした。同時に、吸熱反応によりメタノールをCOとHに変換するとき、COとHSの除去工程のこの廃流から更なる合成ガスを製造する。
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
工程(a)では、分子酸素含有ガスで炭素質原料を部分酸化する。部分酸化は好ましくは1000〜1800℃の温度で行い、更に好ましくは1200〜1800℃の温度で行う。部分酸化が行われる圧力は、好ましくは0.3〜12MPaであり、より好ましくは3〜10MPaである。灰分含有原料が使用される場合には、部分酸化が起こる反応容器の内側にスラグ層が形成されるように温度条件が選択される。
【0011】
炭素質原料は好ましくは石炭であり、例えば無煙炭、褐炭、瀝青炭、亜瀝青炭、及び亜炭である。代替の炭素質原料の例は、石油コークス、泥炭、及びタールサンドから抽出された重質残渣又は脱歴プロセスにおいて前記残渣から分離されたアスファルト部分である。精油所からの残渣、例えば原油から直接得られるか、又は油変換プロセス(例えば熱分解、接触分解、水素化分解など)から得られる360℃超の沸点を有する残留オイル部分を、炭素質原料として使用してもよい。
【0012】
バイオマスから得られ灰分を含有する適当な原料は、バイオマス源の乾燥により得られる固体のバイオマス原料である。好ましくは、バイオマス供給原料をガス化プロセスに更に適したものにするために、乾燥を圧縮又はペレット化工程と組み合わせ、ガス化プロセスにおいていわゆる乾燥形にてバイオマス原料を供給する。バイオマス源の材料の乾燥はよく知られており、例えばM.Pach,R.Zanzi及びE. Bjornbom, Torrefied Biomass a Substitute for Wood and Charcoal. 6th Asia−Pacific International Symposium on Combustion and Energy Utilization. May 2002, Kuala Lumpur and in Bergman, P.C.A., "Torrefaction in combination with pelletisation − the TOP process", ECN Report, ECN−C−05−073, Petten,2005に記載されている。
【0013】
本方法において使用するのに適した液体のバイオマス原料は、バイオマス源の乾燥及びフラッシュ熱分解により得られる。フラッシュ熱分解プロセスでは、一般に固体の木炭と液体のバイオマス原料成分が得られる。本発明はまた、いわゆるバイオマススラリーが原料として用いられる態様にも向けられる。フラッシュ熱分解はよく知られており、例えばEP−A−904335;Dinesh Mohan, Charles U.Pittman,Jr.,及びPhilip H.Steele. Pyrolysis of Wood/Biomass for Bio−oil: A Critical Review. Energy & Fuels 2006, 20, 848−889; 及びE. Henrich: Clean syngas from biomass by pressurised entrained flow gasification of slurries from fast pyrolysis. In: Synbios, the syngas route to automotive biofuels, conference2005年5月18〜20日開催,ストックホルム,スウェーデン(2005)に記載されている。
【0014】
適当なバイオマス源は農業における雑草又は残物である。適当な残物の例はパーム油産業、トウモロコシ産業、バイオディーゼル産業、林業、木材加工産業及び製紙業において発生する流れである。
【0015】
上記原料はすべて、炭素と水素の割合が異なっており、汚染物質と見なされる物質も異なっている。炭素質原料に依存して、合成ガスは二酸化炭素、硫化水素、硫化カルボニル及びカルボニルジスルフィドなどの汚染物質を含有する一方、窒素、窒素含有成分(例えばHCN及びNH)、金属、金属カルボニル(特にニッケルカルボニル及び鉄カルボニル)、蒸気、及び場合によってメルカプタンが存在し得る。
【0016】
本発明は、これらの汚染物質を効率的に低レベルにまで除去して触媒転換反応に適した合成ガスを得る方法を提供する。特に興味深い触媒転換反応は炭化水素合成プロセスである。炭化水素合成プロセスでは、合成ガスを触媒転換して、メタンから最大200個の炭素原子又は特定の状況ではそれより多くを含む高分子量分子までの炭化水素化合物にする。炭化水素合成プロセスの例はフィッシャー−トロプシュ法であり、例えばWO 02/02489、WO 01/76736、WO 02/07882、EP 510771 及びEP 450861に記載されている。特に適した触媒はコバルトを含んだ触媒であり、これらの種類の触媒は重質炭化水素において高い収率を可能にする。コバルトを基にしたフィッシャー−トロプシュ触媒は汚染物質による毒作用に非常に敏感であり、ppbvの範囲で出来るだけ低い汚染物質の濃度を有する浄化合成ガス流を必要とする。
【0017】
石炭などの固体化石燃料を原料として使用する場合、一般にガス化装置から出てくる合成ガス流中のHS及びCOSの量は、合成ガス流に対して15体積%未満、一般に5体積%未満である。特定の態様では、ガス化装置から出てくる合成ガス流中のHS及びCOSの総量は、合成ガス流に対して5〜15ppmvの範囲、好ましくは合成ガス流に対して8〜12ppmvの範囲にある。
【0018】
オイル残渣を原料として使用する場合、一般にガス化装置から出てくる合成ガス流中のHS及びCOSの量は、合成ガス流に対して20体積%未満、一般に10体積%未満である。特定の態様では、ガス化装置から出てくる供給合成ガス流中のHS及びCOSの総量は、合成ガス流に対して15〜30ppmvの範囲、好ましくは20〜28ppmvの範囲にある。
【0019】
工程(a)は種々のガス化法、例えばいわゆる移動床法、流動床ガス化法、又は噴流層式ガス化炉法により実施してもよく、これらの方法は例えばGasification,Christofer Higman and Maarten van der Burgt,2003,Elsevier Science, Burlington MA,第85−128頁に記載されている。噴流層式ガス化炉を用いるのが好ましい。噴流層式ガス化炉を用いる方法では、多様な原料を扱うことができ、タールの無い合成ガスを製造できるからである。このような方法では、原料と酸素を好ましくは適当なバーナーにより並流にて反応器に導入する。適当なバーナーとその好ましい使用法の例がUS−A−4510874及び US−A−4523529に記載されている。動作条件は、当該方法がスラッギングモード(動作温度が灰の融点を超えていることを意味する)にて動作するような条件である。適切には、炭素質原料と分子酸素含有ガスをガス化反応器中に設けられたバーナーに3〜10MPaの圧力、好ましくは4〜8MPaの圧力にて供給することにより、前記反応体を合成ガスに変換する。動作温度は適切には1200〜1800℃である。好ましくは、蒸発する水での直接冷却、工程(b)のメタノール−水の混合物による直接冷却、蒸発する水による間接熱交換、又はそれらの冷却工程の組み合わせによって、1000℃未満の温度、好ましくは600℃未満の温度まで合成ガスを冷却する。適切には、スラグと他の溶融固体をガス化反応器の底端部にて該反応器から排出する。
【0020】
固体の炭素質原料を水中のスラリーとして噴流層式ガス化炉反応器のバーナーに供給してもよい。石炭スラリーの供給方法は、例えばEP−A−168128に記載されている。好ましくは、粉末を適当な搬送ガスの形にて固体原料を含んだガス−固体混合物で、固体炭素質原料をバーナーに供給する。適当な搬送ガスは窒素、二酸化炭素又は合成ガス(すなわちCOとHからなる混合物)である。搬送ガスは二酸化炭素が好ましい。この搬送ガスの使用法は例えばWO−A−2007042562に記載されている。
【0021】
工程(a)で生成される合成ガス流は、粒状物質、例えば煤粒子を含むかもしれない。したがって、好ましい態様では、工程(a)で得られた合成ガスは、工程(b)を実施する前に洗浄液に接触させる。この接触は煤スクラバーで実施して粒状物質、特に煤を除去して原料合成ガス流を得る。工程(a)で得られた合成ガス流は一般に高温及び/又は高圧である。更なる冷却及び/又は減圧工程を回避するために、煤スクラバーにおけるスクラビング工程は高温及び/又は高圧にて実施するのが好ましい。好ましくは、合成ガスを洗浄液と接触させる温度は、40〜160℃、更に好ましくは110〜150℃の範囲である。好ましくは、合成ガス流を洗浄液と接触させる圧力は、工程(a)において得られた合成ガスの圧力の範囲内である。
【0022】
本発明の方法の工程(b)、(c)、(d)及び(e)は、例えば上記Rectisol法による方法に従って有利に実施できる。工程(b)では、合成ガスをメタノールと混合する。この混合物の温度を好ましくは−50〜0℃、さらに好ましくは−40〜−20℃に下げる。冷却された混合物から、液体のメタノール−水混合物を気体状合成ガスから分離する。工程(c)では、工程(b)で得られた冷却合成ガスを、好ましくは−70〜0℃、さらに好ましくは−70〜−30℃の温度にてメタノールと接触させる。好ましくは、工程(c)を2〜8MPa、さらに好ましくは3〜8MPaの範囲の圧力にて実施する。これらの好ましい圧力では、HS及びCOなどの汚染物質の溶解度が更に高い。この工程では、好ましくは向流スクラビング塔で実施して、HS及びCOと場合によっては合成ガス中に存在する化合物(例えば硫化カルボニル及びシアン化水素)を合成ガスから除去する。これらの化合物を含んだ濃メタノール流とこれらの化合物が減少した合成ガス流が得られる。少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%の二酸化炭素を合成ガスから除去するのが好ましい。
【0023】
工程(d)では、工程(c)の濃メタノール流を再生する。この再生プロセスでは、HS及びCOと他の化合物をメタノールから除去し、工程(b)及び(c)において再利用するのに適した希薄メタノールを得る。この再生プロセスは当業者には周知である。圧力解放、例えばフラッシング操作により、及び/又は温度上昇、例えば蒸留プロセスにより、メタノールを適切に再生する。この再生は、2以上の工程、好ましくは3〜10の工程、特に1以上のフラッシング工程と蒸留工程の組み合わせにて適切に実施する。
【0024】
工程(e)では、工程(d)で得られた希薄メタノールを、工程(b)及び(c)のメタノールとして再利用する。
【0025】
工程(f)では、工程(b)で得られたメタノール−水混合物中に存在するメタノールを、メタノールが一酸化炭素と水素に変換されるという条件下で工程(a)に再循環させる。さらに好ましくは、このメタノールをガス化反応器に、該反応器中の温度が900〜1800℃、好ましくは1200〜1800℃である場所にて導入することにより、メタノールを一酸化炭素と水素に変換する。好ましい1態様では、メタノール−水混合物を直接用いて原料のスラリーを作る。このスラリーを上記の噴流層式ガス化炉のバーナーに提供できる。別の有利な態様では、好ましくは専用の導入手段(例えば槍(lance))によるか、又は任意の始動バーナー(このバーナーは始動後は使用されず、よってメタノール−水混合物を加える手段として使い道がある)により、メタノール−水混合物をガス化反応器に直接注入する。別の好ましい態様では、当該水の一部又は全部を工程(b)で得られたメタノール−水混合物から除去する。このようにして得られたメタノールを工程(a)に再循環させる。このメタノールを上記のバーナーにより、又はメタノール−水混合物について上述した別手段により導入できる。
【0026】
工程(f)を連続して実施するか、または間をおいて実施(すなわち工程(a)〜(e)を連続して実施し、工程(f)は汚染物質のレベルが一定レベルに達したときだけ実施)できる。例えば、200m/hのメタノール循環のために工程(e)を実施することにより10〜50mのメタノールを1月に1回システムから流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい態様を示す。
【図2】工程(a)を実施するのに適したガス化反応器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は本発明の好ましい態様を示す。図1は合成ガスを製造し浄化するためのシステム1を概略的に示す。ガス化反応器2において、炭素質流と酸素含有流をそれぞれ管路3及び4から供給する。炭素質流をガス化反応器2において少なくとも部分的に酸化させ、原合成ガスとスラグを得る。このために、通常は複数のバーナー(図示せず)をガス化反応器2に設ける。
【0029】
生成した原合成ガスを管路5により冷却領域6に送り、ここで原合成ガスを通常は約400℃に冷却する。スラグは下に落ち、更なる任意の処理のために管路7から排出する。冷却領域6は間接熱交換器又は冷却容器でもよい。冷却容器の場合、好ましくは液体の水を管路17から合成ガス流に注入する。液体の水は好ましくは霧状にて注入する。図1の態様に示されているように、冷却領域6から出ていく原合成ガスを更に処理する。このために、管路8から乾燥固体除去装置9に送り、原合成ガス中の乾燥灰分を少なくとも部分的に除去する。乾燥固体除去装置9はそれ自体が公知であるから、ここではさらに説明しない。管路18を通して乾燥灰分を乾燥固体除去装置から取り出す。乾燥固体除去装置9の次に、管路10を通して原合成ガスを湿式ガススクラバー11に送り、その後に管路12を介してシフト変換器13に送って水の少なくとも一部をCOと反応させCOとHを生成することで、シフト変換されたガス流を管路14に得る。H/CO比を下流での化学処理に使用するために調整する必要がある場合、シフト反応は有利となり得る。このようなシフト反応は、炭素質原料が石炭であり且つ下流での処理がフィッシャー−トロプシュプロセス又はメタノール合成プロセスである場合、有利である。洗浄された合成ガスの一部を管路12’によりシフト変換器13をバイパスさせ、適当な下流でかつ冷却器22よりは上流の場所にてシフト合成ガス流と非シフト合成ガス流を再結合することにより、H/CO比を操作できる。別法として、バイパスさせた流れ12を専用の冷却器と吸収装置に送り、共通再生領域にて供給メタノール流を結合することもできる。図1には、結合した流れを冷却器22に送る態様が示されている。湿式ガススクラバー11とシフト変換器13はそれ自体既に知られているので、ここではさらに詳細に説明しない。
【0030】
図1はまた、シフト変換器13から出てくる管路14中のシフト変換合成ガスに対して、管路12中の原合成ガスを熱交換器15で加熱する態様を示す。
図1に示す態様では、冷却容器の場合に冷却領域6に注入される管路17の水を暖めるために、熱交換器15から出てくる管路16の流れに含まれるエネルギーを用いる。このために、管路16の流れを間接熱交換器19に送り、管路17の流れと間接熱交換してもよい。
【0031】
間接熱交換器19から出てくる管路20の合成ガス流を、管路21に供給されるメタノールと混合する。熱交換器22においてCO流23、浄化合成ガス流24及びテールガス流25に対して混合物の温度を下げる。ノックアウト容器26においてメタノール−水混合物を冷却混合物から分離して管路27から排出する。
【0032】
メタノールスクラバー塔29において、管路28に供給される冷却合成ガスを、管路30から供給される希薄メタノールと接触させる。メタノールスクラバー塔29は冷却手段31を備える。メタノールスクラバー塔29の上部において、COの大部分を除去し、下部においてHSの大部分を除去する。COの豊富なメタノールの一部を管路32により上部から引き出し、減圧する。COフラッシュドラム33において、フラッシュガスを分離する。メタノールスクラバー塔29の下部から放出されるHS飽和メタノールを、フラッシュドラム35に降ろして第2フラッシュガスを得る。2つのフラッシュガスを管路36から圧縮器34に供給し、続いて、熱交換器22内の前記混合物の温度を下げる前に工程(b)のメタノール/合成ガス混合物と混合する。
【0033】
フラッシュドラム35において得られるHS飽和メタノールを減圧し、いわゆるCOストリッパー塔39の下部に管路37から供給する。フラッシュドラム33において得られるCO飽和メタノールを減圧し、COストリッパー塔39の上部に管路38から供給し、一部をいわゆるHS濃縮塔41の上部に供給する。塔39においてCO流23を得る。COストリッパー塔39において底部流として得られるHS飽和メタノール流をさらに減圧し、管路40からHS濃縮塔41に供給し、管路42から供給される窒素でストリッピングする。HS濃縮塔41の底部流にて管路43から得られるメタノールを、蒸留塔44で蒸留し、管路45から排出される酸性ガスの少なくとも一部を除去し、管路46において希薄メタノールを得てメタノールスクラバー塔29において再利用する。管路48の希薄メタノールの一部と、管路27に供給されるメタノール−水混合物を、メタノール−水精留塔47に供給し、管路47から排出される水を除去する。前記塔から管路50を介してメタノール流を放出する。
【0034】
図1は、どのようにしてメタノールを図1の部分酸化工程又はガス化反応器2に再循環させ得るかについて種々の態様を示す。これらの態様のいずれも単独で、又は他の態様と組み合わせて使用できる。
【0035】
管路27のメタノール−水混合物の一部として管路51からガス化反応器2に工程(a)にてメタノールを供給してもよい。
【0036】
管路27のメタノール−水混合物の一部として管路52から冷却領域6で使用される冷却水の一部として工程(a)にてメタノールを提供してもよい。合成ガスの温度は、メタノールを合成ガスに分解するのに十分なものとなる。
【0037】
管路46の希薄メタノールの一部として管路53から工程(a)にてメタノールを提供してもよい。
【0038】
管路50に存在するメタノール−水精留塔47の上部生成物の一部として管路54から工程(a)にてメタノールを提供してもよい。
【0039】
図2は工程(a)を実施するのに適したガス化反応器60を示し、冷却領域が下記で説明するようにガス化反応器の一部である。反応器60はいわゆるメンブレンウォール62により形成されるガス化室61を備える。ガス化室61は、直径方向に対向した1対以上のバーナー63を備える。メンブレンウォールは垂直導管から構成され、これらの垂直導管は続けて固定され、使用中に垂直導管内を冷却媒体、すなわち蒸発する水が分配器64から蒸気ヘッダー66に流れる。分配器64は冷却媒体供給管路65を備え、蒸気ヘッダー66は蒸気排出導管67を備える。管状メンブレンウォールの下端には、末広がりの円錐台部分68が取り付けられる。前記円錐台部分68の下端開口69には、下向きに延びる管状部分70が設けられ、スラグと合成ガスをディップ管74に案内する。ディップ管74の直径より小さい開口69を有することにより、スラグ粒子がディップ管74の内壁に接触することを出来るだけ避ける。
【0040】
ディップ管74の内壁は、下向きに移動する水の層によって湿っている。この水の層は、導管72と供給リング73を通して水を導入することにより実現する。導入した水は、傾斜面71から円形開口75に流れ、さらにディップ管74の内壁に沿って下向きに流れる。
【0041】
本発明の方法の工程(f)は、メタノール又はメタノールと水の混合物を供給導管77とノズル76を通して合成ガス流に導入することにより実施する。ディップ管74においてメタノールを加える位置は、局所的な温度がメタノールを一酸化炭素と水素に変換するために十分な高温となるように選択しなければならない。もっと多くのノズルリングを設けてもよく、下に配置されたリングは、冷却水を加えるために適切に用いられ、上に配置されたリングは本発明によりメタノールを加えるのに用いられる。別法として、メタノールをガス化室61に供給することにより工程(f)を実施してもよい。
【0042】
図2はさらに、水面79を有する水槽78を示す。この水槽78により、合成ガスをさらに冷却する。冷却した合成ガスは、出口80を通して反応器60から放出する。スラグ粒子は円錐部82により出口81に案内する。83の部分は、反応器又は始動バーナーを検査するためのマンホールとし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】EP−A−904335
【特許文献2】WO 02/02489
【特許文献3】WO 01/76736
【特許文献4】WO 02/07882
【特許文献5】EP 510771
【特許文献6】EP 450861
【特許文献7】US−A−4510874
【特許文献8】US−A−4523529
【特許文献9】EP−A−168128
【特許文献10】WO−A−2007042562
【符号の説明】
【0044】
1…本システム
2…ガス化反応器
6…冷却領域
9…乾燥固体除去装置
11…湿式ガススクラバー
13…シフト変換器
15…熱交換器
19…間接熱交換器
22…冷却器
26…ノックアウト容器
29…メタノールスクラバー塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質原料から浄化合成ガス流を製造する方法であって、
(a)炭素質原料を分子酸素合成ガスで部分酸化し、主成分の一酸化炭素と水素の他に水、硫化水素及び二酸化炭素を含有した合成ガスを得る工程、
(b)合成ガスとメタノールを混合し、その混合物の温度を下げ、冷却された気体状合成ガスから液体のメタノール−水混合物を分離する工程、
(c)工程(b)で得られた冷却合成ガスをメタノールと接触させて合成ガス中の硫化水素と二酸化炭素の含有量を減少させることで、硫化水素と二酸化炭素を含有した濃メタノールと、硫化水素と二酸化炭素の減少した合成ガス流とを得る工程、
(d)濃メタノールから二酸化炭素フラクションと硫化水素フラクションを分離して、工程(b)及び(c)のメタノールとして用いる希薄メタノールを得ることにより、工程(c)の濃メタノール流を再生する工程、
(e)前記メタノール−水混合物中のメタノールの一部を分離し、工程(b)及び/又は(c)において再利用する工程、
(f)工程(b)で得られた前記メタノール−水混合物中に存在するメタノールの別の一部を、メタノールが一酸化炭素と水素に変換される条件下で工程(a)に循環させる工程、
を含む方法。
【請求項2】
900〜1800℃の温度にてメタノールを一酸化炭素と水素に変換する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)において、炭素質原料と分子酸素含有ガスは、3〜10MPaの圧力にてガス化反応器内に設けられたバーナーに前記反応体を供給することによって、合成ガスに変換する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)に循環させるメタノールを前記バーナーに供給する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)に循環させるメタノールを、合成ガスの温度が900〜1800℃である場所にて反応器の内側に別々に供給する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(a)に循環させるメタノールは、工程(b)で得られた水−メタノール混合物として循環させるか、又は工程(b)で得られた水−メタノール混合物から水の一部を除去した後に得られる水−メタノール混合物として循環させる請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
メタノールを工程(a)に循環させる前に工程(b)で得られた水−メタノール混合物から水を除去する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(c)を−50〜0℃、好ましくは−40〜−20℃の範囲の温度にて実施する請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)の合成ガスを洗浄液に接触させ、工程(b)の実施前に粒状物質を除去する請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭素質原料が灰分含有原料である請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
灰分含有原料が石炭である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
灰分含有原料がバイオマス源の乾燥により得られる固体バイオマスである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
灰分含有原料がバイオマス源のフラッシュ熱分解により得られる液体バイオマスである請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−504196(P2011−504196A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534458(P2010−534458)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065794
【国際公開番号】WO2009/065841
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(390023685)シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ (411)
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
【Fターム(参考)】