説明

消火性粘着剤層およびこれを利用する消火性粘着シート

【課題】
周辺部材の発火に対しても迅速に窒息消火させることができる粘着剤層を有する粘着シートを提供すること。
【解決手段】
沸点が70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセルを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層であって、該粘着剤層の形成が該ハロゲン化合物の沸点より20℃以上低い温度で行われることを特徴とする消火性粘着剤層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火性粘着剤層およびこれを利用した消火性粘着シートに関し、更に詳細には、被着体の周辺における発火に対し、迅速に消火性ガスを放出し消火することが可能な消火性粘着剤層および当該粘着剤層を利用した消火性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器などにおいては、小型化、高機能化が進み、内部が過熱しやすく、短絡などにより発火する危険性が高まっている。このような電子機器等の内部の発火による延焼を防ぐために、部材の固定等に使用される粘着テープに、難燃剤として有機ハロゲン化合物を内包したマイクロカプセルを含有せしめる技術が提案されている。有機ハロゲン化合物は、難燃性であるとともに、気化すると非燃性雰囲気を作り出して、高温表面に空気が入り込むのを遮断し、また高温下で生成する活性ラジカルにより燃焼の動力学的連鎖を切断する消火性ガスとして機能すると考えられている。
【0003】
このようなマイクロカプセル化した有機ハロゲン化合物を用いた粘着テープとして、例えば、塩素化パラフィンなどのハロゲン化パラフィンを含有するマイクロカプセルを用いたアクリル系粘着剤が開示されている(特許文献1)。また、ヘキサブロモシクロドデカンなどを内包するマイクロカプセルを用いたアクリル系エマルション粘着剤が開示されている(特許文献2)。
【0004】
これらの有機ハロゲン化合物を用いた粘着テープは、その難燃性により粘着テープ自体への着火を防止したり、着火した場合に速やかに消火する機能は有するものの、沸点が200℃以上と高いものであるため、被着体の周辺が発火源である場合には、速やかに気化することができず、消火性ガスとして作用することにより発火源の炎を消火することが困難であった。
【特許文献1】特開平6−25629号公報
【特許文献2】特開2004−307748号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、被着体周辺の発火に対して、迅速に気化しマイクロカプセルから放出されて、発火源の炎を消火することが可能な粘着剤層を備えた粘着シートの開発が望まれており、本発明はそのような粘着剤層およびこれを備えた粘着シートを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粘着剤層中に特定範囲の沸点のハロゲン化合物をマイクロカプセル化して含有せしめるとともに、粘着剤層の形成を、その沸点よりも低い温度で行うことにより、マイクロカプセルを安定的に製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち本発明は、沸点が70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセルを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層であって、該粘着剤層の形成が該ハロゲン化合物の沸点より20℃以上低い温度で行われることを特徴とする消火性粘着剤層である。
【0008】
また本発明は、上記粘着剤組成物が、重量平均分子量が5万以上の(メタ)アクリル系ポリマー10〜60質量%と(メタ)アクリル系モノマー40〜90質量%とを含有するアクリルシロップ 100質量部、沸点70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル 1〜300質量部、光重合開始剤 0.01〜5質量部および架橋剤 0.01〜5質量部を含有する光重合性粘着剤組成物である消火性粘着剤層である。
【0009】
さらに本発明は、上記消火性粘着剤層を支持体の少なくとも一方の表面に厚さ100〜2000μmで設けてなる消火性粘着シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の消火性粘着剤層は、比較的低沸点のハロゲン化合物を用いるものであるため、難燃性を示すとともに被着体の周辺の発火に対しても、迅速にハロゲン化合物が気化・膨張し、マイクロカプセルから放出されることによって消火性ガスとして作用し、積極的に発火源の炎を消火することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の消火性粘着剤層を形成するアクリル系粘着剤組成物は、沸点が70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル(以下、単に「マイクロカプセル」ということがある)を含有する。
【0012】
ハロゲン化合物は沸点が70〜150℃のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ジブロモメタン、トリブロモメタン等が例示でき、これらの1種または2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、下記式(1)で表される臭素化アルカンがオゾン層破壊が少なく、温室効果が少ないため好ましく用いられる。
2n+2−xBr (1)
(式中、nは1〜3の整数であり、xは2又は3である)
【0013】
上記式(1)で表される臭素化アルカンは、具体的には、ジブロモメタン(沸点98.5℃)、トリブロモメタン(沸点149〜150℃)、ジブロモエタン(沸点131〜132℃)等が挙げられ、その中でも、特にジブロモメタンがオゾン層破壊が少なく、温室効果も少ないために好ましく用いられる。
【0014】
この沸点が70〜150℃のハロゲン化合物の含有量は、マイクロカプセルの内包物全体に対して70〜100質量%(以下、単に「%」と示す)であることが好ましい。
【0015】
マイクロカプセルの内包物には、上記沸点が70〜150℃のハロゲン化合物の他に、必要に応じて炭素数7〜9のパーフルオロアルカンを含有することができる。炭素数7〜9のパーフルオロアルカンとしては、具体的にはパーフルオロヘキサン、パーフルオロシクロヘキサン等が挙げられる。マイクロカプセルの内包物中の炭素数7〜9のパーフルオロアルカンの含有量は0〜30%の範囲が好ましい。
【0016】
マイクロカプセルの内包物の融点は、内包物が凝固するとその体積が大きく減少し、マイクロカプセルの外殻を破壊する場合があるため、−40℃以下であることが好ましい。
【0017】
この内包物のマイクロカプセル全体における含有量は75〜95%が好ましく、さらに80〜95%が好ましい。
【0018】
一方、マイクロカプセルの外殻を形成する成分は、内包するハロゲン化合物の溶出を防止できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ゼラチン、ゼラチン誘導体、珪素系ゲル、アルコキシシランの加水分解生成物などが例示でき、これらを好適に用いることができる。また、外殻は二重構造を有していることが好ましく、特に珪素系ゲルにより形成される内層と、ゼラチンまたはゼラチン誘導体により形成される外層から構成される二重構造の外殻であることが、保存状態では臭素化アルカンからなる消火液が漏洩することなく、火災時には確実に破裂し、臭素化アルカン消火液をガス状態で放出することが出来る二層構造を形成できるために好ましい。
【0019】
上記珪素系ゲルは、アルコキシシランの加水分解生成物から形成されるゲルであることが好ましい。
【0020】
マイクロカプセルの製造は、コアセルベーション法、界面重合法、in−site重合法、ゾル−ゲル法など通常の製造方法にしたがって行うことができるが、例えば、上記珪素系ゲルにより形成される内層と、ゼラチンまたはゼラチン誘導体により形成される外層から構成される二重構造の外殻を有するマイクロカプセルは、アルコキシシランからゾル−ゲル法によりアルコキシシランを加水分解、縮合して珪素系ゲルによる内層を形成し、次いでゼラチンまたはゼラチン誘導体からコアセルベーション法により外層を形成することにより製造することができる。
【0021】
より具体的には、ゼラチンの水溶液に、予め1〜2%となるテトラキシシラン等のアルコキシシランを添加した内包物を添加して撹拌し、例えば40℃で5〜10分間程度乳化することにより、内包物の小滴の表面にアルコキシシランが加水分解および縮合して珪素系ゲルの薄膜が形成される。
【0022】
次いでこの液に5%リン酸ナトリウム水溶液を添加し、さらに10%硫酸水溶液を添加してpHを4〜4.5に調整するとゼラチンのコアセルベーションが起こり、この液を徐々に冷却し1〜1.5時間かけて25〜35℃程度に低下させると、珪素系ゲルによる膜の上に、ゼラチンの膜が形成される。この液をさらに5〜15℃まで冷却し、1時間以上保持する。
【0023】
さらに25%グルタルアルデヒド水溶液を加え、5〜15℃で1時間以上保持するとゼラチン膜の一次固化が生じる。次いでこの液を20〜30℃に加熱した後、15%レゾルシン水溶液を加え、pHを1〜2に低下させる。その後、37%ホルムアルデヒド水溶液を加え、混合液を30〜35℃に上昇させ、30分間以上保持するとゼラチンの二次固化が起こり、マイクロカプセルが形成される。
【0024】
このマイクロカプセル分散液を撹拌してマイクロカプセルを沈殿させ、上澄み液を除去する。デカンテーション法によりマイクロカプセルを2〜3回洗浄した後、濾別し乾燥する。このようにして2層の膜を有するマイクロカプセルが得られる。
【0025】
以上のようにして得られるマイクロカプセルの平均外径は50〜400μmが好ましく、100〜400μmがより好ましい。また殻の平均厚さは3〜20μmが好ましく、5〜10μmがより好ましく、5〜7μmが最も好ましい。さらに外殻が二層構造の場合には、内層の平均膜厚は0.1〜3μmが好ましく、1μm程度がより好ましい。一方外層の平均膜厚は1〜18μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。なお、マイクロカプセルの平均外径の測定方法は下記のとおりである。
【0026】
(マイクロカプセルの平均外径の測定方法)
マイクロカプセル粉末について、光学顕微鏡で25倍の写真を撮影し、画像解析をしてマイクロカプセルの平均外径を測定した。
【0027】
またマイクロカプセルは、その破裂温度が100〜300℃の範囲であることが好ましく、さらに130〜280℃が好ましく、特に150〜250℃が好ましい。この破裂温度は、下記方法による測定値である。
【0028】
(マイクロカプセルの破裂温度)
マイクロカプセル粉末を、ホットステージ上に置き、ヒーターで10℃/分で加熱昇温しながら、温度はホットステージに挿入した熱電対で確認しながら、光学顕微鏡視野で破裂する温度を確認した。
【0029】
本発明の消火性粘着剤層は、上記マイクロカプセルを含有したアクリル系粘着剤組成物から、マイクロカプセルに内包されるハロゲン化合物の沸点よりも20℃以上低い温度で粘着剤層が形成されるものである。このような温度範囲で粘着剤層が形成されることにより、マイクロカプセルの破壊等が生じることなく安定して製造することができる。
【0030】
本発明に用いられるアクリル系粘着剤組成物としては、特に限定されるものではないが、光重合性であると上記のような温度範囲であっても比較的短時間で重合硬化し粘着剤層を形成できるために好ましい。また、無溶剤型、溶剤型、水分散型等のいずれであってもよいが、溶剤型や水分散型の場合には、上記温度範囲では溶媒の乾燥時間に時間を要し製造コストが高くなる場合があるため、無溶剤型が好ましい。
【0031】
この光重合性のアクリル系粘着剤組成物には、上記マイクロカプセルの他に、アクリルシロップ、光重合開始剤および架橋剤を含有するものであることが好ましい。
【0032】
上記アクリルシロップは、重量平均分子量が5万以上の(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを含有するものであることが好ましく、これらを構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルが挙げられる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0033】
また上記(メタ)アクリルポリマーおよび(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであるが、さらに他のモノマーを含有していてもよい。本発明で使用することができる他のモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;(メタ)アクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2-メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等が挙げられる。このような単量体は単独であるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0034】
本発明のアクリルシロップを構成する(メタ)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであることが好ましく、アクリルシロップを構成するモノマー全体に対する(メタ)アクリル酸エステルの含有量は50質量%以上が好ましく、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0035】
アクリルシロップ中の(メタ)アクリル系ポリマーの含有量は10〜60%であり、(メタ)アクリル系モノマーの含有量は40〜90%であることが好ましい。このような組成のアクリルシロップは、上記モノマーを含有する組成物を重合率10〜60%で重合することによって得ることができ、また、予め上記モノマーを重合した(メタ)アクリル系ポリマーと(メタ)アクリル系モノマーとを、10〜60:90〜40の割合で混合することによっても得ることができる。
【0036】
またアクリルシロップ中の(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は5万以上であることが所望のテープ粘着物性を発現させる為に好ましい。この重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による値である。
【0037】
上記光重合開始剤としては、4-(2-ヒロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキシルアセトフェノンなどのアセトフェノン系光重合開始剤;;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン、アシルフォスファナートなどの光重合開始剤などを挙げることができる。また、光重合開始剤の配合量は、アクリルシロップ100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、さらに0.01〜3質量部が好ましい。
【0038】
上記硬化剤としては、エポキシ基を有する化合物(多官能エポキシ化合物)、イソシアネート基を有する化合物(多官能イソシアネート化合物)を挙げることができる。具体的には、エポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができ、イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体を挙げることができる。また、硬化剤の使用量は、アクリルシロップ100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、さらに0.01〜3質量部が好ましい。
【0039】
また上記マイクロカプセルの配合量は、アクリルシロップ100質量部に対し、1〜300質量部が好ましく、さらに5〜200質量部の範囲が好ましい。
【0040】
光重合性アクリル系粘着剤組成物には、さらに有機充填剤および/または無機充填剤を配合することにより、光重合性アクリル系粘着剤組成物中に含まれる(メタ)アクリル系モノマーの含有率を少なくする事ができ、該モノマーの重合の際の発熱量が減少し、マイクロカプセルが破裂しない温度で粘着シートを成形することができるため好ましい。
【0041】
無機充填剤としては、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタンなどの無機物、ガラスバルーン、シラスバルーン、セラミックバルーンなどの無機中空体などが例示でき、これらの中でも水酸化アルミニウム、ガラスバルーンなどが好ましく用いられる。
【0042】
有機充填剤としては、ポリエチレンビーズ、ポリプロピレンビーズ、ウレタンビーズ、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズなどの有機物、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーンなどの有機中空体などが例示でき、これらの中でもポリエチレンビーズ、ウレタンビーズなどが好ましい。
【0043】
無機充填剤および有機充填剤の大きさは特に制限されないが、5〜100μmが好ましく、さらに好ましくは5〜60μmであることが好ましい。また光重合性アクリル系粘着剤組成物中の有機充填剤および/または無機充填剤の配合量は、アクリルシロップ100質量部に対し、10〜200質量部が好ましく、さらに好ましくは30〜200質量部である。
【0044】
光重合性アクリル系粘着剤組成物には、必要に応じ、難燃剤、発泡剤、酸化防止剤、染料、顔料、シランカップリング剤、重合禁止剤、安定剤など通常粘着剤に配合される添加剤などをさらに配合することができる。
【0045】
光重合性アクリル系粘着剤組成物の製造は、上記アクリルシロップと、マイクロカプセル、光開始剤、硬化剤、および必要に応じて配合する任意成分とを、常法に従って均一に混合することにより行うことができる。
【0046】
本発明の消火性粘着剤層は、上記のようにして得られた光重合性アクリル系粘着剤組成物から、含有するハロゲン化合物の沸点よりも20℃以下の温度で形成される。具体的には、光重合性アクリル系粘着剤組成物をロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート等公知の手段を用いて、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、紙、金属箔、布、不織布、シリコーン処理したポリエステルフィルム、シリコーン処理した紙などの支持体上に重合硬化後の厚さが100〜2000μmとなるように塗工され、必要によりさらに、別途シリコーン処理したポリエステルフィルムを塗工面に積層した後、光を照射して、アクリル系粘着剤組成物を重合硬化させる方法が例示できる。光重合時の反応熱によって上記温度よりも高い温度とならないように、冷却しながら重合硬化させることが好ましい。
【0047】
照射される光は、紫外線、電子線、可視光線、α線、γ線等の光重合開始剤の反応を開始できるエネルギー線であり、中でも、紫外線(UV)および/または電子線(EV)を用いて光重合反応させることが好ましい。
【0048】
また、溶剤型のアクリル系粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーと上記マイクロカプセルを含有するものであることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、上記アクリルシロップに用いられるモノマーと同じものが使用できるが、これらのうちアクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく用いられ、これらのモノマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー中50質量%以上であることが好ましく、さらに70質量%以上が好ましい。これらのモノマーを酢酸エチル、トルエン等の適当な溶剤に溶解して溶液重合させるか、または、予め重合された(メタ)アクリル系ポリマーを前記した溶剤に混合して、(メタ)アクリル系ポリマーの溶液を調製することができる。(メタ)アクリル系ポリマーのGPCによる重量平均分子量は、5万〜200万が好ましく、さらに20〜150万が好ましい。
【0049】
溶剤型アクリル系粘着剤組成物には、有機充填剤および/または無機充填剤を配合することが好ましく、さらに架橋剤を配合することが好ましい。これらは上記したものと同じものが用いられる。
【0050】
溶剤型アクリル系粘着剤組成物中のマイクロカプセルの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、1〜300質量部であることが好ましく、さらに5〜200質量部が好ましい。また有機充填剤および/または無機充填剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し10〜200質量部配合することが好ましく、架橋剤は0.01〜5質量部配合することが好ましい。
【0051】
溶剤型アクリル系粘着剤組成物は、上記(メタ)アクリル系ポリマー溶液に、前記マイクロカプセルや必要により充填剤等を常法に従って混合することにより製造することができる。
【0052】
以上のようにして得られる溶剤型アクリル系粘着剤組成物を、例えば、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、紙、金属箔、布、不織布、シリコーン処理したポリエステルフィルム、シリコーン処理した紙等の支持体上に乾燥後の厚さが100μm程度となるように塗工し、これをハロゲン化合物の沸点よりも20℃以上低い温度で乾燥させることにより本発明の消火性粘着層を得ることができる。
【0053】
さらに、水分散型のアクリル系粘着剤組成物としては、(メタ)アクリル系ポリマーと上記マイクロカプセルを含有するものであることが好ましい。(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマーも、上記アクリルシロップに用いられるモノマーと同じであるが、これらのうち、アクリル酸ノルマルブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく用いられ、これらのモノマーの含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー中50質量%以上であることが好ましく、さらに70質量%以上が好ましい。これらのモノマーを水等の水性溶媒に乳化させこれを乳化重合させるか、または予め重合した(メタ)アクリル系ポリマーを、乳化剤を用いて水性溶媒中に分散させることによって(メタ)アクリル系ポリマーの分散液を調製することができる。
【0054】
水分散型アクリル系粘着剤組成物にも、有機充填剤および/または無機充填剤を用いることが好ましい。これらは前記したものと同じものが用いられる。
【0055】
水分散型アクリル系粘着剤組成物中のマイクロカプセルの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、1〜300質量部であることが好ましく、さらに5〜200質量部が好ましい。また有機充填剤および/または無機充填剤は、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し10〜200質量部配合することが好ましい。
【0056】
水分散型アクリル系粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマー分散液に、上記マイクロカプセルや必要により他の任意成分を混合することにより製造することができる。
【0057】
かくして得られる水分散型アクリル系粘着剤組成物を、例えば、PETフィルム等の支持体上に乾燥後の厚さ100μm程度で塗工し、これをハロゲン化合物の沸点よりも20℃以上低い温度で乾燥させることにより本発明の消火性粘着剤層を得ることができる。
【0058】
本発明の粘着シートは、上記アクリル系粘着剤層がPET等の支持体の少なくとも一方の表面に厚み100〜10000μm程度に設けられてなるものである。
【実施例】
【0059】
次に製造例および実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0060】
製 造 例 1
マイクロカプセルの製造(1):
下記製造方法によりジブロモメタン(沸点98.5℃、融点−52.8℃)を内包するマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルについて、下記測定方法により平均外径、内包物のマイクロカプセル中の含有量、破裂温度を測定した。
【0061】
(製造方法)
5gのゼラチンを95gの蒸留水に入れ、室温で20分間保持し、次いで50℃に30分間加熱して、5%ゼラチン水溶液を調製した。また5gの燐酸ナトリウムを95gの蒸留水に加え、60〜70℃で1〜2時間撹拌し、5%燐酸ナトリウム水溶液を調製した。さらにレゾルシン15gを85gの蒸留水に入れ、室温で39分間撹拌して、15%のレゾルシン水溶液を調製した。5%ゼラチン水溶液に、テトラエトキシエタン濃度が1%であるジブロモメタンとテトラエトキシシランの混合液50mlを添加し、40℃で3〜5分間撹拌して乳化させ、テトラエトキシシランの加水分解生成物からなる第一の殻層を有するジブロモメタンの液滴を形成した。次いでこの溶液に5%燐酸ナトリウム水溶液12mlを加え、ゼラチンのコアセルベーションを行った。10%硫酸水溶液を加えてpHを4.2〜4.3とし、32〜33℃に冷却して1〜1.5時間保持した。次いでこの液を8〜12℃まで冷却して1時間保持し、ジブロモメタン液滴上の第一の殻層の上に第二の殻層としてゼラチン膜を形成した。
【0062】
この液に25%グルタルアルデヒド水溶液5mlを添加し、8〜12℃に1時間保持した後、20〜25℃まで徐々に昇温して、3時間保持し、ゼラチン膜を一次固化させた。さらに15%レゾルシン水溶液18.3mlを加えて15分間撹拌した後、10%硫酸水溶液を加えてpHを1.3〜1.4とした。次いで37%のホルムアルデヒド水溶液29mlを加えて30℃に3時間保持し、ゼラチン膜を二次固化させた。その後撹拌を停止すると、マイクロカプセルは沈殿した。上澄みを捨て、マイクロカプセルをデカンテーション法により2〜3回水洗いした。濾過及び乾燥により、平均外径200〜300μmで、内包物の含有量が95%の粉体状のマイクロカプセルを得た。マイクロカプセルの破裂温度は230℃であった。
【0063】
(平均外径の測定方法)
マイクロカプセル粉末について、光学顕微鏡で25倍の写真を撮影し、画像解析をしてマイクロカプセルの平均外径を測定した。
【0064】
(内包物の含有量の測定方法)
臭素化アルカン含有マイクロカプセルについて正確に重量を秤量して、しかる後、ガラス管容器内で、臭素化アルカンの沸点+100℃の温度で、窒素ガスを流しながら加熱、破裂させて、臭素化アルカンを蒸発させて残カプセルの重量を秤量して、減少重量をもって内包物の含有量とした
【0065】
(破裂温度の測定方法)
マイクロカプセル粉末を、ホットステージ上に置き、ヒーターで10℃/分で加熱昇温しながら、温度はホットステージに挿入した熱電対で確認しながら、光学顕微鏡視野で破裂する温度を確認した。
【0066】
製 造 例 2
マイクロカプセルの製造(2):
ジブロモメタンに代えて質量比で80:20のジブロモメタンとトリブロモメタンの混合物(沸点111℃、融点−45℃)を使用した以外は製造例1と同様にしてマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルについて製造例1と同様の方法により平均外径、内包物の含有量、破裂温度を測定したところ、平均外径は200〜300μmであり、内包物の含有量は89%であり、破裂温度は270℃であった。
【0067】
製 造 例 3
ジブロモメタンに代えて、質量比で80:20のジブロモメタンとパーフルオロヘキサンの混合物(沸点88℃、融点−55℃)を使用した以外は製造例1と同様にしてマイクロカプセルを製造した。得られたマイクロカプセルについて製造例1と同様の方法により平均外径、内包物の含有量、破裂温度を測定したところ、平均外径は200〜400μmであり、内包物の含有量は90%であり、破裂温度は190〜200℃であった。
【0068】
実 施 例 1
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(1):
アクリルシロップの調製
アクリル酸―2−エチルヘキシルアクリレート96gとアクリル酸4gとからなるモノマー100gに光開始剤(商品名:イルガキュア369,チバガイキ(株)製)0.003gを均一に添加した。この混合物を、撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み口を備えた容量300mlのパイレックス(登録商標)製セパラブルフラスコに仕込み、容器内に20分間窒素ガスを導入して容器内の空気を窒素ガスで置換した後、窒素気流中で混合物を80℃に昇温して、この温度を一定に保ちながら、フラスコの外部に設置した水冷式高圧水銀ランプ(出力100W)にて、紫外線照射量が1000ml/cmとなるまで、断続的に紫外線の照射を繰り返した。得られたアクリル共重合体の部分重合体は、不揮発分:30.0%、粘度:8.0Pa・s、GPCで測定した重量平均分子量:20万、数平均分子量:8万のシロップ状物であった。なお、重量平均分子量および数平均分子量の測定方法は下記のとおりである。
【0069】
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定)
下記測定条件においてGPCによる重量平均分子量及び数平均分子量を測定した。
<測定条件>
測定装置:HLC−8120GPC(東ソー社製)
GPCカラム構成:以下の5連カラム(すべて東ソー社製)
(1)TSK−GEL HXL−H(ガードカラム)
(2)TSK−GEL G7000HXL
(3)TSK−GEL GMHXL
(4)TSK−GEL GMHXL
(5)TSK−GEL G2500HXL
サンプル濃度:1.0mg/cmとなるように、テトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒 :テトラヒドロフラン
流量:1.0cm/min
カラム温度:40℃
【0070】
無溶剤型光重合性アクリル系粘着剤組成物の調製
得られたアクリルシロップ100質量部に、架橋剤T−X(商品名:テトラッドX、三菱瓦斯化学工業(株)製)0.2質量部、無機充填材である水酸化アルミH42(商品名:ハイジライトH42 昭和電工(株)製)150質量部、光開始剤(商品名:イルガキュア819,チバスベシャリティケミカルズ(株)製)0.2質量部、製造例1で得られたマイクロカプセル30質量部を配合して混合・脱泡処理して光重合性アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0071】
消火性粘着シートの作製
得られた光重合性アクリル系粘着剤組成物を、両面剥離処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーターの重剥離面上に1mmの塗布厚さになるように塗布した後、同一のPETセパレーターの軽剥離面を塗布面にあてて空気遮断し、ブラックライトを10分間照射した後、軽剥離面が塗布面に接しているPETセパレーターを剥がして消火性粘着シートA−1を得た。この際、塗布面にあてた100μmのPETセパレーターを介した塗工物表面温度が75℃を超えないようにブロワーで送風冷却しながらブラックライトを照射した。
【0072】
実 施 例 2
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(2):
溶剤型アクリル系粘着剤組成物の調製
撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み口が取り付けられた容器500mlのガラス製フラスコに、プチルアクリレート95.5g、アクリル酸4g、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.5g、酢酸エチル150gおよび重合開始剤であるアゾピスイソブチロニトリル0.2gを仕込み、窒素ガス気流中、68℃で8時間溶液重合を行い、アクリル系共重合体を調整した。反応終了後、このアクリル系ポリマー溶液に酢酸エチル83gを加え、固形分30%のアクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液100質量部に、架橋剤T−X0.05質量部、無機充填材である水酸化アルミH42 150質量部、製造例1で得られたマイクロカプセル20質量部を配合して混合・脱泡処理して溶剤型アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0073】
消火性粘着シートの作製
得られた溶剤型アクリル系粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが0.5mmになるようにポリプロピレン製のトレイに流延した後、70℃の乾燥機内に6時間投入して溶剤を除去して消火性粘着シートA−2を得た。
【0074】
実 施 例 3
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(3):
水分散型アクリル系粘着剤組成物の調製
脱イオン水50gに、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム1.0gを溶解させた乳化剤水溶液に、アクリル酸ノルマルオクチル50.0g、アクリル酸ノルマルブチル45.0g、メタクリル酸5.0gを攪拌下に分散させて単量体水性分散液150gを調製した。別に撹拌機、環流冷却器、温度計及び窒素ガス吹き込み口、滴下ロートを供えた容量500mlのガラス製フラスコに、脱イオン水40gを入れ、さらに過硫酸カリウム0.2g、アクリル酸ブチル2g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを加えて、水性反応母液を調製した。次いで、このガラス製フラスコ内に窒素ガスを導入してフラスコ内の空気を窒素ガスで置換した後、水性反応母液を82℃に加熱して反応を開始させた。反応が開始した直後より、この滴下ロートから上記単量体水性分散液150gを180分かけて滴下し、乳化重合を行った。この間反応液の温度を、82℃に保持した。180分経過後さらに120分間反応液の温度を82℃に維持して重合反応を完結させた反応液を25℃に冷却した後、反応液のpH値を7.0付近に調整し、アクリル系ポリマー溶液を得た。このアクリル系ポリマー溶液100質量部に、架橋剤T−X0.05質量部、無機充填材である水酸化アルミH42 150質量部、製造例1で得られたマイクロカプセル20質量部を配合して混合・脱泡処理して、水分散型アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0075】
消火性粘着シートの作製
水分散型アクリル系粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが0.5mmになるようにポリプロピレン製のトレイに流延した後、70℃の乾燥機内に24時間投入して水分を除去して消火性粘着シートA−3を得た。
【0076】
実 施 例 4
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(4):
実施例1のH42 150質量部を30質量部とした以外は実施例1と同様の方法で消火性粘着シートA−4を得た。
【0077】
実 施 例 5
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(5):
実施例2で得た固形分30%のアクリル系ポリマー溶液100質量部に、架橋剤T−X0.05質量部を配合して混合し、厚さ38μmのPETセパレーターの剥離処理面上にドクタープレードを用いて乾燥後の厚さが25μmになるように塗布し、70℃の乾燥機で3分間加熱及び乾燥を行い、粘着シートa−1を得た。次いで、消火性粘着シートA−1 および粘着シートa−1の粘着剤層同士を貼り合わせて粘着シートa−2を得、さらに、このシートa−2を構成する厚さ100μmのPETセパレーターを剥がして露出した粘着剤層と、粘着シートa−1の粘着剤層とを貼り合わせた後、23℃で10日間静置して粘着剤層が3層構造の消火性粘着シートA−5を得た。
【0078】
実 施 例 6
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(6):
無溶剤型光重合性アクリル系粘着剤組成物の調製
実施例1で得られたアクリルシロップ100質量部に、架橋剤T−X0.10質量部、無機充填材である水酸化アルミH42 150質量部、光開始剤(商品名:イルガキュア819,チバスベシャリティケミカルズ(株)製)0.2質量部、製造例2で得られたマイクロカプセル30質量部を配合して混合・脱泡処理して光重合性アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0079】
消火性粘着シートの作製
得られた光重合性アクリル系粘着剤組成物を、両面剥離処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーターの重剥離面上に1mmの塗布厚さになるように塗布した後、同一のPETセパレーターの軽剥離面を塗布面にあてて空気遮断し、ブラックライトを10分間照射した後、軽剥離面が塗布面に接しているPETセパレーターを剥がして消火性粘着シートA−6を得た。この際、塗布面にあてた100μmのPETセパレーターを介した塗工物表面温度が75℃を超えないようにブロワーで送風冷却しながらブラックライトを照射した。
【0080】
実 施 例 7
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(7):
無溶剤型光重合性アクリル系粘着剤組成物の調製
実施例1で得られたアクリルシロップ100質量部に、架橋剤T−X0.10質量部、無機充填材である水酸化アルミH42 150質量部、光開始剤(商品名:イルガキュア819,チバスベシャリティケミカルズ(株)製)0.2質量部、製造例3で得られたマイクロカプセル30質量部を配合して混合・脱泡処理して光重合性アクリル系粘着剤組成物を調製した。
【0081】
消火性粘着シートの作製
得られた光重合性アクリル系粘着剤組成物を、両面剥離処理された厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)セパレーターの重剥離面上に1mmの塗布厚さになるように塗布した後、同一のPETセパレーターの軽剥離面を塗布面にあてて空気遮断し、ブラックライトを10分間照射した後、軽剥離面が塗布面に接しているPETセパレーターを剥がして消火性粘着シートA−7を得た。この際、塗布面にあてた100μmのPETセパレーターを介した塗工物表面温度が65℃を超えないようにブロワーで送風冷却しながらブラックライトを照射した。
【0082】
実 施 例 8
消火性粘着剤層および消火性粘着シートの製造(8):
実施例1のマイクロカプセル 30質量部を10質量部とした以外は実施例1と同様の方法で消火性粘着シートA−8を得た。
【0083】
比 較 例 1
マイクロカプセルの配合量を0質量部とした以外は実施例1と同様の方法で粘着シートB−1を得た。
【0084】
比 較 例 2
マイクロカプセルの配合量を0質量部とした以外は実施例2と同様の方法で粘着シートB−2を得た。
【0085】
比 較 例 3
マイクロカプセルの配合量を0質量部とした以外は実施例3と同様の方法で粘着シートB−3を得た。
【0086】
比 較 例 4
マイクロカプセル及びH42の配合量をそれぞれ0質量部とした以外は実施例1と同様の方法で粘着シートB−4を得た。
【0087】
試 験 例 1
性能評価試験:
実施例1〜8及び比較例1〜4で得られた粘着シートについて、消火性、粘着力、保持力の各項目を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0088】
バーナー接炎時の消火性
UL94安全規格のプラスチック材料の燃焼性試験における垂直燃焼試験方法にてバーナー接炎時のバーナーの炎の消火性を確認した。接炎10秒以内にバーナーの炎が消火されたものを○、バーナーの炎が消火されずに試料が燃焼したものを×とした。
【0089】
粘着力
幅25mm、長さ150mmのシートの片面に厚さ50μmのアルミ箔を貼りあわせた後、もう一方の面をステンレス製テストピースに貼り付け、23℃/65%RHに30分静置して引っ張り試験機(東洋精機(株)製 ストログラフM1)にて90°剥離力を測定した。
【0090】
保持力
縦25mm×横25mmのサイズのシートの片面に幅25mm、長さ50mm、厚さ200μmのアルミ箔を貼り付け、もう一方の面をステンレス製テストピースに貼り付けた後、80℃に調製した乾燥機内に投入して1時間静置後、1Kgの荷重をかけ1時間後のズレの距離または落下に到るまでの時間を測定した。
【0091】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の消火性粘着剤層は、難燃性であるため延焼を防ぐとともに、被着体周辺部の発火に対して、迅速に消火性ガスを放出し窒息消火させることができるものである。したがって、この粘着剤層を備えた粘着シートは、電子機器のバッテリー等の過熱しやすい部材の固定や、排気ダクトを被覆するシートなどの用途に極めて有用なものである。
以 上

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸点が70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセルを含有するアクリル系粘着剤組成物から形成されてなる粘着剤層であって、該粘着剤層の形成が該ハロゲン化合物の沸点より20℃以上低い温度で行われることを特徴とする消火性粘着剤層。
【請求項2】
アクリル系粘着剤組成物が、重量平均分子量が5万以上の(メタ)アクリル系ポリマー10〜60質量%と(メタ)アクリル系モノマー40〜90質量%とを含有するアクリルシロップ 100質量部、沸点70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル 1〜300質量部、光重合開始剤 0.01〜5質量部および架橋剤 0.01〜5質量部を含有する光重合性アクリル系粘着剤組成物である請求項1記載の消火性粘着剤層。
【請求項3】
光重合性アクリル系粘着剤組成物が無溶剤型である請求項2記載の消火性粘着剤層。
【請求項4】
光重合性アクリル系粘着剤組成物が、さらに有機充填剤および/または無機充填剤10〜200質量部を含有するものである請求項2または3に記載の消火性粘着剤層。
【請求項5】
粘着剤層が、光重合性アクリル系粘着剤組成物を紫外線(UV)および/または電子線(EB)照射下に重合硬化することにより形成されるものである請求項2ないし4のいずれかの項に記載の消火性粘着剤層。
【請求項6】
アクリル系粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部、沸点70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル 1〜100質量部を含有する溶剤型アクリル系粘着剤組成物である請求項1記載の消火性粘着剤層。
【請求項7】
溶剤型アクリル系粘着剤組成物が、さらに有機充填剤および/または無機充填剤10〜200質量部を含有するものである請求項6記載の消火性粘着剤層。
【請求項8】
溶剤型アクリル系粘着剤組成物が、さらに架橋剤0.01〜5質量部を含有するものである請求項6または7に記載の消火性粘着剤層。
【請求項9】
アクリル系粘着剤組成物が、(メタ)アクリル系ポリマー100質量部、沸点70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル 1〜100質量部を含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物である請求項1記載の消火性粘着剤層。
【請求項10】
水分散型アクリル系粘着剤組成物が、さらに有機充填剤および/または無機充填剤10〜200質量部を含有するものである請求項9記載の消火性粘着剤層。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかの項に記載の消火性粘着剤層を支持体の少なくとも一方の表面に厚さ100〜2000μmで設けてなる消火性粘着シート。
【請求項12】
重量平均分子量が5万以上の(メタ)アクリル系ポリマー10〜60質量%と(メタ)アクリル系モノマー40〜90質量%とを含有するアクリルシロップ 100質量部、沸点70〜150℃のハロゲン化合物を内包するマイクロカプセル 1〜300質量部、光重合開始剤 0.01〜5質量部および架橋剤 0.01〜5質量部を含有する消火性アクリル系粘着剤組成物。

【公開番号】特開2009−167311(P2009−167311A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7640(P2008−7640)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】