説明

消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラム

【課題】各消防本部間の消防指令装置の消防業務を補完することにより、消防本部を無人化することのできる消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラムを提供する。
【解決手段】相互補完を行う各消防本部の消防指令装置1ーA、1ーBに接続装置18、28を設置し、消防指令装置1ーAと消防指令装置1ーBとを接続装置18、28を介して接続回線51で接続する。消防指令装置1ーA、1ーBの各構成機器間で情報の転送、送受信を行い、消防本部間で相互の消防業務を補完する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラムに関し、特に、各消防本部(消防局)の消防指令装置間で情報を送受信することにより、消防本部が無人になっても、他の消防本部にて指令管制業務を補完することのできる消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、全国の各消防本部(消防局)は、消防指令センターに消防指令装置を設置して、管轄市町村の住民からの119番通報の受信、消防署への出動指令、消防車・救急車の管制という指令管制業務を行っている。各消防本部は、毎日昼夜連続で管内市町村の指令管制業務を行うため、一定人数の消防職員を確保し、消防指令センターに常駐させている。全国の各消防本部は、119番通報の受信回数(頻度)とは無関係に、指令管制業務用の要員を必要とする。
【0003】
従って、1日数件しか119番通報のない過疎化地域の消防本部では、消防指令センターに常駐する消防職員の人件費の負担割合が大きくなる。一方、都市部の消防本部では、数分でも消防指令センターに無人状況が発生した場合、かなりの件数の119番通報を受け付けることができず、住民の生命に関わる指令管制業務を行えなくなる。
【0004】
そこで、隣り合った緊急指令本部において管轄の署所と相手の緊急指令本部の署所に対して同時に指令接続を行えるようにし、スムーズな緊急指令を可能とするものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1の技術は、A消防本部側の通報者から緊急通報をB消防本部にて受信した場合、B消防本部の車両情報を含むデータベースから出動に適切な車両を選択する。選択車両としてA消防本部のものを選択していた場合、A消防本部に車両の出動状況を問い合わせ、出動可ならA消防本部に局間指令を送出し、車両管轄の署所に出動可の確認後、災害情報を含む電文をA消防本部へ送信し、B消防本部のトーン及び音声指令の送出タイミングに従ってA消防本部から該当する署所の端末にトーン及び音声の発出を行う。
【0006】
また、119番通報から出動指令に至る消防本部の通信指令業務を提供サービスすることにより、防災活動、災害/救急活動に対して、迅速かつ適切な支援を可能とし、かつ、少数の人員で対応可能として消防業務効率化を図るものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
特許文献2の技術は、通報指令センターと署所が持つ消防緊急情報システムと署端末との間で持つ情報の一元化を図りつつ共有化し、システムのスリム化、コンパクト化を図る。このため、消防緊急情報システムは、通報受付手段と、出動指令発行手段とを設ける。
【0008】
【特許文献1】特開2002ー218070号公報
【特許文献2】特開2003ー256963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の特許文献1の技術は、近隣の緊急指令本部管轄の署所に対して直接指令を行えるようにするため、自消防本部と他消防本部との車両データを各々の消防本部のデータベースに格納する。従って、指令業務の内、車両出動指令しか消防本部間で相互補完できず、また、データベースに格納していない消防本部との間では、相互補完をできず、消防本部を無人化できないという課題がある。
【0010】
上述の特許文献2の技術は、119番通報から出動指令に至る消防本部の通信指令業務を提供サービスするため、消防本部は、通報指令部門のみをアウトソーシングする。通報指令センターは、広域の多数の消防本部を管轄し、一元化を図りつつ共有化を図る。従って、通報指令センターは、管轄する消防本部を全て管理する必要があり、負荷が大きくなり、また、通報指令センターは、常に、無人化することができないという課題がある。
【0011】
従って、上記特許文献1、2の技術は、空気感染の伝染病が緊急指令本部内、通報指令センター内において発生したとき、或いは、付近で爆弾などの危険物が発見されたときにおいても、消防職員は、業務を放棄する以外に職場を離れて避難することができない。常駐する消防職員は、生命を危険に曝すことになる。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、各消防本部に設ける消防指令装置に接続装置を設置し、消防指令装置同士を通信回線を介して接続し、お互いの消防指令装置の消防業務を補完することにより、消防本部を無人化することのできる消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の消防指令システムは、各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムであって、消防指令装置は、電話の通報を受信する指令制御装置と、指令制御装置での受信情報を電話回線網を介して他の消防指令装置へ転送する接続装置と、出動指令に必要な出動指令情報を送受信する自動出動指定装置と、出動指令の操作を行う端末装置とを有し、指令制御装置は、受信した電話の通報を他の消防指令装置へ転送する相互補完モード切換手段を有することを特徴とする。
【0014】
指令制御装置は、相互補完モード切換手段により相互補完モードにしたとき、受信した電話の通報を接続装置へ送信し、接続装置は、電話の通報を他の消防指令装置へ転送することを特徴とする。
【0015】
指令制御装置は、相互補完モードを解除したとき、電話の通報を自動出動指定装置へ送信することを特徴とする。
【0016】
指令制御装置は、相互補完モード切換手段に加え、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、通報があったことを表示する通報表示手段と、自動出動指定装置または接続装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする。
【0017】
指令制御装置は、119番通報を受信することを特徴とする。
【0018】
自動出動指定装置は、消防本部管轄内情報を格納する記憶手段と、受付情報を記憶手段に格納する受付情報書込手段と、記憶手段から格納情報を読み出す読出手段と、受付情報と管轄内情報とから通報電話の住所を検索する住所データ検索手段と、出動指令情報を生成する出動指令情報生成手段と、出動指令情報を署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する送受信手段とを有することを特徴とする。
【0019】
記憶手段は、磁気ディスク装置を有し、磁気ディスク装置は、管内データベースを有することを特徴とする。
【0020】
管内データベースは、住所情報データベースと、回線/電話局情報データベースと、受付情報データベースとを有することを特徴とする。
【0021】
受付情報データベースは、通報の回線情報と通報受信時刻情報とを有することを特徴とする。
【0022】
出動指令情報生成手段は、他の消防指令装置の出動指令情報を要求する指令要求生成手段を有することを特徴とする。
【0023】
端末装置は、自動出動指定装置から受信した住所データを表示する住所データ表示手段と、出動指令情報を表示する出動指令表示手段と、自動出動指定装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明の消防指令装置は、電話回線網を介して接続し情報の送受信を行う各消防本部に設ける消防指令装置であって、電話の通報を受信する指令制御装置と、指令制御装置での受信情報を電話回線網を介して他の消防本部の消防指令装置へ転送する接続装置と、出動指令に必要な出動指令情報を送受信する自動出動指定装置と、出動指令の操作を行う端末装置とを有し、指令制御装置は、受信した電話の通報を他の消防本部の消防指令装置へ転送する相互補完モード切換手段を有することを特徴とする。
【0025】
指令制御装置は、相互補完モード切換手段により相互補完モードにしたとき、受信した電話の通報を接続装置へ送信し、接続装置は、電話の通報を他の消防本部の消防指令装置へ転送することを特徴とする。
【0026】
指令制御装置は、相互補完モードを解除したとき、電話の通報を自動出動指定装置へ送信することを特徴とする。
【0027】
指令制御装置は、相互補完モード切換手段に加え、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、通報があったことを表示する通報表示手段と、自動出動指定装置または接続装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする。
【0028】
指令制御装置は、119番通報を受信することを特徴とする。
【0029】
自動出動指定装置は、消防本部管轄内情報を格納する記憶手段と、受付情報を記憶手段に格納する受付情報書込手段と、記憶手段から格納情報を読み出す読出手段と、受付情報と管轄内情報とから通報電話の住所を検索する住所データ検索手段と、出動指令情報を生成する出動指令情報生成手段と、出動指令情報を署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する送受信手段とを有することを特徴とする。
【0030】
出動指令情報生成手段は、他の前記消防指令装置の前記出動指令情報を要求する指令要求生成手段を有することを特徴とする請求項17記載の消防指令装置。
【0031】
本発明の消防指令システムの相互補完方法は、各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムの相互補完方法であって、第1消防指令装置は、相互補完モード切換手段により電話の119番通報を第2消防指令装置へ転送する相互補完モードにするステップと、指令制御装置により119番通報を受信するステップと、受信した119番通報を指令制御装置から接続装置へ送信するステップと、接続装置により電話回線網を介して第2消防指令装置へ119番通報を転送するステップと、第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を第2消防指令装置との間で送受信するステップと、出動指令情報を自動出動指定装置から署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信するステップとを有することを特徴とする。
【0032】
第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を第2消防指令装置との間で送受信するステップにおいて、第2消防指令装置は、第1消防指令装置から転送した119番通報を第2接続装置で受信するステップと、受信情報を第2接続装置から第2指令制御装置へ送信するステップと、第2指令制御装置において情報受付手段で119番通報を受け付けるステップと、119番通報を第2指令制御装置から第2自動出動指定装置へ通知するステップと、第2自動出動指定装置から第2接続装置経由で第1消防指令装置へ119番通報を転送するステップとを有し、第1消防指令装置は、第2消防指令装置から転送した119番通報を接続装置経由で自動出動指定装置で受信するステップと、受付情報書込手段により119番通報を記憶手段の受付情報データベースへ格納するステップと、記憶手段から管轄内情報を読出手段により読み出すステップと、受付情報と管轄内情報とから119番通報電話の住所データを住所データ検索手段により検索するステップと、検索した住所データを接続装置経由で第2消防指令装置へ転送するステップとを有し、第2消防指令装置の第2端末装置は、第1消防指令装置で検索した住所データを第2自動出動指定装置から受信し住所データ表示手段により表示するステップと、出動指令情報を出動指令表示手段により表示するステップとを有することを特徴とする。
【0033】
第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を第2消防指令装置との間で送受信するステップにおいて、第2消防指令装置は、第1消防指令装置内の署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置との出動指令に必要な指令要求を指令要求生成手段により生成し送信するステップと、第1消防指令装置からの署所指令要求を第2接続装置、第2自動出動指定装置経由で第2指令制御装置で受信するステップと、受信した署所指令要求を第2接続装置経由で第1消防指令装置へ転送するステップとを有することを特徴とする。
【0034】
本発明の消防指令システムの相互補完方法のプログラムは、各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムの相互補完方法のプログラムであって、コンピュータを、第1消防指令装置は、相互補完モード切換手段により電話の119番通報を第2消防指令装置へ転送する相互補完モードにする手段と、指令制御装置により119番通報を受信する手段と、受信した119番通報を指令制御装置から接続装置へ送信する手段と、接続装置により電話回線網を介して第2消防指令装置へ119番通報を転送する手段と、第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を第2消防指令装置との間で送受信する手段と、出動指令情報を自動出動指定装置から署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明の消防指令システム、その相互補完方法、消防指令装置、プログラムによれば、各消防本部(消防局)の消防指令センターに設ける消防指令装置の間で消防業務を相互補完でき、消防本部の消防指令センターを無人にすることができるという効果がある。
【0036】
その理由は、各消防本部の消防指令装置に接続装置を設置し、消防指令装置同士を通信回線を介して接続する。それぞれの消防指令装置の各構成機器間で情報を送受信することにより、片方の消防指令センターにて他方の指令管制業務を行うことができるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明の消防指令システム7を示す概略構成ブロック図である。図2〜図5は、各々、図1中の消防指令装置1ーAを構成する指令制御装置10、自動出動指定装置11、端末装置12、接続装置18の概略構成ブロック図である。
【0039】
図1を参照すると、消防指令システム7は、各消防本部に設ける消防指令装置1ーA〜消防指令装置1−Nを電話回線網5の接続回線51を介して接続し、消防指令装置1ーA〜消防指令装置1−N間で情報の送受信を行うよう構成する。
【0040】
消防指令装置1ーAは、固定電話または携帯電話3の119番通報を受信する指令制御装置10と、指令制御装置10での受信情報を電話回線網5を介して他の消防指令装置1ーB〜1ーNへ転送する接続装置18と、出動指令に必要な出動指令情報を送受信する自動出動指定装置11と、出動指令の操作を行う端末装置12とで構成する。固定電話または携帯電話3と指令制御装置10とは、119番電話回線(NTT電話局からA消防本部までの専用線)で繋ぎ、署所端末14と指令制御装置10とは、指令回線(アナログ専用線)で接続する。
【0041】
具体的には、例えば、指令制御装置10は、専用装置(交換機)とサーバとで構成し、自動出動指定装置11は、サーバで構成し、端末装置12は、ワークステーションで構成する。接続装置18は、ブロードバンド(光専用回線)で繋ぐルータで構成する。
【0042】
なお、消防指令装置1ーB〜消防指令装置1−Nは、消防指令装置1ーAと同一構成であり、消防指令装置1ーB〜消防指令装置1−Nを構成する指令制御装置、自動出動指定装置、端末装置、接続装置の概略構成ブロック図は、図示および説明を省略する。
【0043】
図2を参照すると、指令制御装置10は、受信した119番通報を他の消防指令装置1ーB〜1ーNへ転送する相互補完モード切換手段101を備える。相互補完モード切換手段101により相互補完モードにしたとき、119番通報を接続装置18へ送信し、接続装置18は、119番通報を他の消防指令装置1ーB〜1ーNへ転送する。指令制御装置10は、相互補完モードを解除したとき、119番通報を自動出動指定装置11へ送信するよう構成する。指令制御装置は、相互補完モード切換手段101に加え、119番通報を受け付ける情報受付手段103と、119番通報があったことを表示する通報表示手段102と、自動出動指定装置1または接続装置18との間で情報の送受信を行う送受信手段104とで構成する。
【0044】
図3を参照すると、自動出動指定装置11は、A消防本部管轄内情報を管内データベース111として格納する磁気ディスク装置110と、受付情報を磁気ディスク装置110に格納する受付情報書込手段117と、磁気ディスク装置110から格納情報を読み出す読出手段112と、受付情報と管轄内情報とから119番通報電話の住所を検索する住所データ検索手段113と、出動指令情報を生成する出動指令情報生成手段114と、出動指令情報を署所端末14と音声合成装置15と出動車両運用管理装置16と他の機器17と地図検索装置13とに送信する送受信手段116とで構成する。出動指令情報生成手段114は、さらに、他の消防指令装置1ーB〜1ーNの出動指令情報を要求する指令要求生成手段115を備える。なお、具体的には、例えば、地図検索装置13は、ワークステーション、出動車両運用管理装置16は、サーバ、署所端末14は、電話とコンピュータとを組み合わせた装置、他の機器17は、パソコンで各々構成する。
【0045】
管内データベース111は、住所情報データベース1101と、回線/電話局情報データベース1103と、受付情報データベース1102とを備える。受付情報データベース1102は、119番通報の回線情報1105と通報受信時刻情報1104とを備える。
【0046】
図4を参照すると、端末装置12は、自動出動指定装置11から受信した住所データを表示する住所データ表示手段121と、出動指令情報を表示する出動指令表示手段122と、自動出動指定装置11との間で情報の送受信を行う送受信手段123とで構成する。
【0047】
次に、上述のように構成した消防指令システム7の動作について、図面を参照して説明する。
【0048】
図6、図7は、消防指令システム7の動作を説明するためのフローチャートである。
【0049】
いま、図1に示すA消防本部(消防局)の消防指令センター(消防指令装置1ーA)が無人になったと仮定して、A消防本部(消防局)の管轄市町村の住民から119番通報があった場合の動作について、図6を参照して説明する。なお、この例では、消防指令装置1ーAと消防指令装置1ーBとで消防指令管制業務を相互補完するものとする。
【0050】
A消防本部の消防指令装置1ーAを無人にするため、指令制御装置10の相互補完モード切換手段101により相互補完モードにする。相互補完モードにしておくことで、以降、指令制御装置10、自動出動指定装置11は、相互補完モードとして動作する。
【0051】
図6を参照すると、まず、固定電話または携帯電話3から住民は、119通報を行う(S101)。電話局(電話回線網5)を通してA消防本部(消防局)の消防指令装置1ーA内に設置している指令制御装置10は、119番通報を送受信手段104により受信(着信)する。指令制御装置10は、受信情報(119番通報)をB消防本部の消防指令装置1ーBへ通知するため、接続装置18へ受信情報を転送する(S102)。
【0052】
接続装置18は、受信手段181により受信した119番通報をB消防本部(消防局)の接続装置28へ転送手段182により転送する(Sー103)。接続装置28は、接続回線51を通して、接続装置18からの転送情報を受信し、指令制御装置20に119番情報を転送する(S104)。
【0053】
指令制御装置20へ119番の着信情報が伝わり、指令制御装置20は、通報表示手段102により119番通報があった旨を表示する。B消防本部(消防局)の消防指令装置1ーBは、A消防本部管内で119番通報があったことが分かる(S105)。
【0054】
B消防本部(消防局)にて、消防職員は、119番通報の受け付けの操作をすると、指令制御装置20は、情報受付手段103により119番通報を受け付ける(S106)。
【0055】
119番通報を受け付け後、指令制御装置20は、自動出動指定装置21に対して119番通報を受け付けたことを通知する(S107)。
【0056】
119番通報の受付情報を受信した自動出動指定装置21は、119番通報のあったA消防本部(消防局)管轄内の電話局の住所データを取得するために、まず、接続装置28へ119番通報の受付情報を転送する(S108)。接続装置28は、A消防本部(消防局)の接続装置18に対して119番通報の受付情報を転送する(S109)。
【0057】
接続回線51を通して119番通報受付情報を受信したA消防本部(消防局)の接続装置18は、受信情報を自動出動指定装置11へ転送する(S110)。
【0058】
119番通報受付情報を受信した自動出動指定装置11は、管内データベース111内の受付情報データベース1102に受付情報書込手段117により、119番通報受付情報を書き込む。住所データ検索手段113により、119番通報受付情報と管轄内情報とから119番通報電話の住所データを検索する(S111)。ここに、住所データ検索手段113は、受付情報データベース1102の回線情報1105と回線/電話局情報データベース1103とから電話局を検索して特定し、次に電話局の管轄する住所情報を格納する住所情報データベース1101を検索し、119番通報電話のあった電話局に関連する住所データの一覧を抽出する。
【0059】
自動出動指定装置11は、読出手段112により抽出した住所データの一覧を送受信手段116にて接続装置18へ送信する(S112)。接続装置18は、住所データをB消防本部(消防局)の接続装置28へ転送する(S113)。
【0060】
接続回線51を通して住所データを受信した接続装置28は、自動出動指定装置21に転送する(S114)。A消防本部管内の住所データを受信した自動出動指定装置21は、端末装置22へ住所データを送信する(S115)。
【0061】
端末装置22は、受信した住所データを住所データ表示手段121によりディスプレイ上に表示する(S116)。
【0062】
上述のように、接続回線51を利用して消防指令装置1ーA、1ーBの構成機器間で情報の転送、送受信を行う。従って、各消防本部(消防局)は、複数の他の消防本部(消防局)の管理データを取得でき、自管轄以外のデータ持たなくてもよいことになる。
【0063】
次に、図1に示すB消防本部(消防局)の消防指令装置1ーBからA消防本部(消防局)に対して出動指令を送出する動作について、図7を参照して説明する。
【0064】
図7を参照すると、消防職員が端末装置22の出動指令表示手段122にて表示の出動指令の操作をすると、端末装置22は、自動出動指定装置21に対して出動指令操作をした旨の情報を送信する(S201)。出動指令表示手段122は、災害種別、災害住所が決定すると、どの署所(消防署)からどの車両が出動するべきかを画面表示する手段であり、また、出動指令の操作は、端末装置22に設けた出動指令ボタンをマウスによりクリックして行うが、詳細な説明は省略する。
【0065】
自動出動指定装置21は、A消防本部(消防局)の消防指令装置1ーAの構成機器に出動指令に必要な情報を送信するために、指令要求生成手段により指令要求情報を生成し、自動出動指定装置11に対して送信する(S202)。なお、指令要求情報は、出動すべき(指令放送を流すべき)署所(消防署)情報、指令トーン(火災の指令トーンなのか救急の指令トーンなのか)情報、出動しなくてもよい署所(消防署)に対しても通知放送を入れるか否かの情報などであり、詳細な説明は省略する。
【0066】
自動出動指定装置21から指令要求情報を受信した接続装置28は、指令要求情報を接続回線51を介してA消防本部の消防指令装置1ーAの接続装置18へ転送する(S203)。
【0067】
接続装置18は、自動出動指定装置11に指令要求情報を転送する(S204)。自動出動指定装置11は、B消防本部からの指令要求情報を読み込み解析する(S205)。
【0068】
自動出動指定装置11は、指令要求情報から、音声合成装置15、出動車両運用管理装置16、他の機器17に対して、出動指令に必要な情報の送信を行う(S206)。
【0069】
続いて、自動出動指定装置11は、A消防本部の消防署へ出動指令の放送をするために、B消防本部の指令制御装置20に対して、署所指令要求を送信する(S207)。
【0070】
自動出動指定装置11から署所指令要求を受信した接続装置18は、接続回線51を介してB消防本部の接続装置28に署所指令要求を転送する(S208)。接続装置28は、自動出動指定装置21に署所指令要求を転送する(S209)。自動出動指定装置21は、指令制御装置20に署所指令要求を送信する(S210)。
【0071】
署所指令要求を受信した指令制御装置20は、A消防本部の指令制御装置10に対して署所指令要求を送信するため、接続装置28へ送信する(S211)。接続装置28は、接続回線51を介してA消防本部の接続装置18へ署所指令要求を転送する(S212)。接続装置18は、指令制御装置10へ署所指令要求を転送する(S213)。
【0072】
署所指令要求を受信した指令制御装置10は、出動指令の放送を流す必要がある消防署の署所端末14に対して指令要求を送信する(S214)。A消防本部の消防署の署所端末14は、指令放送を流す(S215)。
【0073】
指令制御装置10の相互補完モード切換手段101により相互補完モードを解除し、通常の消防指令装置1ーAとしたときは、接続装置18は、動作しない。119番通報を消防指令装置1ーBへ転送せず、消防指令装置1ーA内で出動指令を出す。このときの動作は、消防指令装置1ーAの一般的な動作である故、説明を省略する。
【0074】
以上説明したように、本発明の消防指令システム7は、一つの消防本部が無人になっても、他の消防本部において両方の管内市町村の住民からの119番通報の受付、消防署への出動指令、消防車・救急車の管制などの指令管制業務を行うことができる。
【0075】
従って、各消防本部(消防局)は、無人化により、人件費を大幅に削減することができる。また、爆弾テロ予告や空気感染病などにより消防本部にいる消防職員の人命に関わる問題が発生した場合でも、消防職員は、業務を放棄することなく避難可能になる。
【0076】
さらに、市町村合併などにより、2つの消防本部(消防局)の管内市町村が、1市町村になった場合でも、消防指令装置1ーA〜1ーNの構成機器を変更することなく、消防業務の運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の消防指令システムを示す概略構成ブロック図である。
【図2】図1中の指令制御装置の概略構成ブロック図である。
【図3】図1中の自動出動指定装置の概略構成ブロック図である。
【図4】図1中の端末装置の概略構成ブロック図である。
【図5】図1中の接続装置の概略構成ブロック図である。
【図6】消防指令システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】消防指令システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1ーA〜1ーN 消防指令装置
3 固定電話または携帯電話
5 電話回線網
51 接続回線
10、20 指令制御装置
101 相互補完モード切換手段
102 通報表示手段
103 情報受付手段
104 送受信手段
11、21 自動出動指定装置
110 磁気ディスク装置
111 管内データベース
1101 住所情報データベース
1102 受付情報データベース
1103 回線/電話局情報データベース
1104 通報受信時刻情報
1105 回線情報
112 読出手段
113 住所データ検索手段
114 出動指令情報生成手段
115 指令要求生成手段
116 送受信手段
117 受付情報書込手段
12、22 端末装置
121 住所データ表示手段
122 出動指令表示手段
123 送受信手段
13 地図検索装置
14 署所端末
15 音声合成装置
16 出動車両運用管理装置
17 他の機器
18、28 接続装置
181 受信手段
182 転送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し前記消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムであって、前記消防指令装置は、電話の通報を受信する指令制御装置と、前記指令制御装置での受信情報を前記電話回線網を介して他の前記消防指令装置へ転送する接続装置と、出動指令に必要な出動指令情報を送受信する自動出動指定装置と、出動指令の操作を行う端末装置とを有し、前記指令制御装置は、受信した電話の通報を他の前記消防指令装置へ転送する相互補完モード切換手段を有することを特徴とする消防指令システム。
【請求項2】
前記指令制御装置は、前記相互補完モード切換手段により相互補完モードにしたとき、受信した電話の通報を前記接続装置へ送信し、前記接続装置は、電話の通報を他の前記消防指令装置へ転送することを特徴とする請求項1記載の消防指令システム。
【請求項3】
前記指令制御装置は、相互補完モードを解除したとき、電話の通報を前記自動出動指定装置へ送信することを特徴とする請求項1または2記載の消防指令システム。
【請求項4】
前記指令制御装置は、前記相互補完モード切換手段に加え、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、通報があったことを表示する通報表示手段と、前記自動出動指定装置または前記接続装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の消防指令システム。
【請求項5】
前記指令制御装置は、119番通報を受信することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の消防指令システム。
【請求項6】
前記自動出動指定装置は、前記消防本部管轄内情報を格納する記憶手段と、受付情報を前記記憶手段に格納する受付情報書込手段と、前記記憶手段から格納情報を読み出す読出手段と、前記受付情報と管轄内情報とから通報電話の住所を検索する住所データ検索手段と、前記出動指令情報を生成する出動指令情報生成手段と、前記出動指令情報を署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する送受信手段とを有することを特徴とする請求項1記載の消防指令システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、磁気ディスク装置を有し、前記磁気ディスク装置は、管内データベースを有することを特徴とする請求項6記載の消防指令システム。
【請求項8】
前記管内データベースは、住所情報データベースと、回線/電話局情報データベースと、受付情報データベースとを有することを特徴とする請求項7記載の消防指令システム。
【請求項9】
前記受付情報データベースは、通報の回線情報と通報受信時刻情報とを有することを特徴とする請求項8記載の消防指令システム。
【請求項10】
前記出動指令情報生成手段は、他の前記消防指令装置の前記出動指令情報を要求する指令要求生成手段を有することを特徴とする請求項6記載の消防指令システム。
【請求項11】
前記端末装置は、前記自動出動指定装置から受信した住所データを表示する住所データ表示手段と、前記出動指令情報を表示する出動指令表示手段と、前記自動出動指定装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする請求項1記載の消防指令システム。
【請求項12】
電話回線網を介して接続し情報の送受信を行う各消防本部に設ける消防指令装置であって、電話の通報を受信する指令制御装置と、前記指令制御装置での受信情報を前記電話回線網を介して他の消防本部の前記消防指令装置へ転送する接続装置と、出動指令に必要な出動指令情報を送受信する自動出動指定装置と、出動指令の操作を行う端末装置とを有し、前記指令制御装置は、受信した電話の通報を他の消防本部の前記消防指令装置へ転送する相互補完モード切換手段を有することを特徴とする消防指令装置。
【請求項13】
前記指令制御装置は、前記相互補完モード切換手段により相互補完モードにしたとき、受信した電話の通報を前記接続装置へ送信し、前記接続装置は、電話の通報を他の消防本部の前記消防指令装置へ転送することを特徴とする請求項12記載の消防指令装置。
【請求項14】
前記指令制御装置は、相互補完モードを解除したとき、電話の通報を前記自動出動指定装置へ送信することを特徴とする請求項12または13記載の消防指令装置。
【請求項15】
前記指令制御装置は、前記相互補完モード切換手段に加え、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、電話の通報を受け付ける情報受付手段と、通報があったことを表示する通報表示手段と、前記自動出動指定装置または前記接続装置との間で情報の送受信を行う送受信手段とを有することを特徴とする請求項12乃至14の何れか1項記載の消防指令装置。
【請求項16】
前記指令制御装置は、119番通報を受信することを特徴とする請求項12乃至15の何れか1項記載の消防指令装置。
【請求項17】
前記自動出動指定装置は、前記消防本部管轄内情報を格納する記憶手段と、受付情報を前記記憶手段に格納する受付情報書込手段と、前記記憶手段から格納情報を読み出す読出手段と、前記受付情報と管轄内情報とから通報電話の住所を検索する住所データ検索手段と、前記出動指令情報を生成する出動指令情報生成手段と、前記出動指令情報を署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する送受信手段とを有することを特徴とする請求項12記載の消防指令装置。
【請求項18】
前記出動指令情報生成手段は、他の前記消防指令装置の前記出動指令情報を要求する指令要求生成手段を有することを特徴とする請求項17記載の消防指令装置。
【請求項19】
各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し前記消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムの相互補完方法であって、第1消防指令装置は、相互補完モード切換手段により電話の119番通報を第2消防指令装置へ転送する相互補完モードにするステップと、指令制御装置により119番通報を受信するステップと、受信した119番通報を前記指令制御装置から前記接続装置へ送信するステップと、前記接続装置により前記電話回線網を介して第2消防指令装置へ119番通報を転送するステップと、前記第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を前記第2消防指令装置との間で送受信するステップと、出動指令情報を前記自動出動指定装置から署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信するステップとを有することを特徴とする消防指令システムの相互補完方法。
【請求項20】
前記第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を前記第2消防指令装置との間で送受信するステップにおいて、前記第2消防指令装置は、前記第1消防指令装置から転送した119番通報を第2接続装置で受信するステップと、受信情報を前記第2接続装置から第2指令制御装置へ送信するステップと、第2指令制御装置において情報受付手段で119番通報を受け付けるステップと、119番通報を前記第2指令制御装置から第2自動出動指定装置へ通知するステップと、前記第2自動出動指定装置から前記第2接続装置経由で前記第1消防指令装置へ119番通報を転送するステップとを有し、前記第1消防指令装置は、前記第2消防指令装置から転送した119番通報を前記接続装置経由で前記自動出動指定装置で受信するステップと、受付情報書込手段により119番通報を記憶手段の受付情報データベースへ格納するステップと、前記記憶手段から管轄内情報を読出手段により読み出すステップと、受付情報と管轄内情報とから119番通報電話の住所データを住所データ検索手段により検索するステップと、検索した前記住所データを前記接続装置経由で前記第2消防指令装置へ転送するステップとを有し、前記第2消防指令装置の第2端末装置は、前記第1消防指令装置で検索した住所データを前記第2自動出動指定装置から受信し住所データ表示手段により表示するステップと、前記出動指令情報を出動指令表示手段により表示するステップとを有することを特徴とする請求項19記載の消防指令システムの相互補完方法。
【請求項21】
前記第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を前記第2消防指令装置との間で送受信するステップにおいて、前記第2消防指令装置は、前記第1消防指令装置内の前記署所端末と前記音声合成装置と前記出動車両運用管理装置との出動指令に必要な指令要求を指令要求生成手段により生成し送信するステップと、前記第1消防指令装置からの署所指令要求を第2接続装置、第2自動出動指定装置経由で第2指令制御装置で受信するステップと、受信した前記署所指令要求を前記第2接続装置経由で前記第1消防指令装置へ転送するステップとを有することを特徴とする請求項19記載の消防指令システムの相互補完方法。
【請求項22】
各消防本部に設ける消防指令装置を電話回線網を介して接続し前記消防指令装置間で情報の送受信を行う消防指令システムの相互補完方法のプログラムであって、コンピュータを、第1消防指令装置は、相互補完モード切換手段により電話の119番通報を第2消防指令装置へ転送する相互補完モードにする手段と、指令制御装置により119番通報を受信する手段と、受信した119番通報を前記指令制御装置から前記接続装置へ送信する手段と、前記接続装置により前記電話回線網を介して第2消防指令装置へ119番通報を転送する手段と、前記第1消防指令装置の出動指令に必要な情報を前記第2消防指令装置との間で送受信する手段と、出動指令情報を前記自動出動指定装置から署所端末と音声合成装置と出動車両運用管理装置とに送信する手段として機能させるための消防指令システムの相互補完方法のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−180035(P2006−180035A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369188(P2004−369188)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】