説明

液体をパルス吐出するための装置及び方法

【課題】シリンジ内の液体の体積が減少しても、より一貫した体積の液体をパルス吐出するための装置及び方法を提供する。
【解決手段】
本装置は、加圧された作動空気のための流入通路と連通すると共に液体を放出するための出口通路と連通するシリンジ本体構造体を備える。空気流入流量制御装置は、前のパルス吐出動作に起因したシリンジ本体構造体内の液体体積の減少に少なくとも部分的に応じる関係に従って、流入空気の流量を増大させるように動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には少量の液体の吐出に関し、より詳細には、シリンジ型のディスペンサから少量の液体を吐出することに関する。
【背景技術】
【0002】
膠若しくは接着剤のような様々な種類の液体又は他の粘稠液が、時限圧力パルスを用いてシリンジから吐出される。吐出動作の結果、電子回路基板のような基板上に液体のドット(液滴)が形成されることになる。多くの用途では、時限圧力パルス中に吐出される液滴の大きさ又は体積は小さいものであり、厳しい許容誤差を維持しなければならない。
【0003】
既知のシリンジディスペンサは多くの場合、加圧された作動空気を利用して液体をシリンジから強制的に出す。すなわち、シリンジ内への加圧された空気の短い吹き込み(ショートバースト)が、少量の液体をシリンジから強制的に出す。連続的なパルス吐出動作後には、シリンジ内の液体体積は減少し、シリンジ内の残りの体積は、加圧された作動空気で満たされることになる。液体体積によって占められていた領域の減少に起因して、それと同時にシリンジ内の空気体積すなわち空気領域が増大するにつれ、作動空気圧力に達するまでの時間が長くなる。したがって、短い吐出サイクル時間では、適切な作動空気圧力に達することがなく、これは、連続吐出サイクルの液滴の大きさすなわち液体流出体積に影響を与える。より詳細には、吐出システムがこの状況を補償しない場合、液体の吐出体積すなわち液滴の大きさは、シリンジ内に保持される液体体積が減少するにつれて減少する。1つの既知の補償方法は、時間を変更する作動空気パルスを用いてシリンジ内で変化する空気体積及び液体体積を補償することである。すなわち、シリンジ内の液体体積が減少するにつれて、作動空気が吹き込まれる持続時間は長くなる。
【発明の概要】
【0004】
液体をパルス吐出するために、シリンジ本体構造体と作動空気流入通路流量制御装置とを備える装置が提供される。シリンジ本体構造体は、加圧された作動空気のための流入通路と連通し、また、吐出される液体のための出口すなわち放出通路とも連通する。空気流入流量制御装置は、一又は二以上の前のパルス吐出動作に起因したシリンジ本体構造体内の液体体積の減少に少なくとも部分的に応じる関係に従って、流入空気の流量を増大させるように動作可能である。
【0005】
空気流入流量制御装置は様々な形態をとることができる。例えば、流量制御装置は、ニードル弁又は比例弁であってもよい。空気流入流量制御装置は、シリンジ本体構造体に直接組み込むこともできる。例えば、本装置は、シリンジ本体構造体内での往復運動できるように取り付けられたピストンを備えることができる。ピストンは、出口通路と連通するピストンの一方の側に液体領域を画定し、空気流入通路と連通するピストンの他方の側に空気領域を画定する。この例では、空気流入流量制御装置は、ピストンから空気流入通路の中へ延在する細長い部材をさらに備えることができる。細長い部材は、出口通路から離れる方向にいくにつれて直径が減少していく。例えば、この直径の減少は、連続的に先細りの形態であってもよいし、さらにより詳細には実質的に円錐型の細長い部材であってもよい。
【0006】
制御された量の液体をシリンジディスペンサから吐出する方法も提供される。本方法は概して、加圧された作動空気源を流入通路によりシリンジ本体構造体に連結することを含む。作動空気の第1の時限パルスを流入通路を通じて供給することによって、第1の量の液体を出口通路を通じて排出する。次いで、シリンジ本体構造体内の液体体積の減少に少なくとも部分的に応じる関係に従って、流入空気流量を増大させる。次いで、作動空気の第2の時限パルスをより多い流量で流入通路を通じて供給することによって、第2の量の液体を出口通路を通じて排出する。これによって、例えば、第2の量を第1の量と少なくとも実質的に同じにすることが可能になり、すなわち言い換えれば、シリンジディスペンサ内の液体体積が減少するが、より一貫した吐出体積を達成することができる。
【0007】
本方法のさらなる態様として、空気流入通路は、環状に形成された断面を有することができ、空気流量を増大させることは概して、流入通路の断面積を拡大することを含むことができる。例えば、これは、環状に形成された断面の面積を増大させる、すなわち、拡大することを含むことができる。環状に形成された断面の面積を増大させることは、細長い部材を流入通路の中に移動させることをさらに含むことができ、細長い部材は、実質的に円錐型の部材のような連続的に先細り状になっている部材であり得る。作動空気の第1の時限パルス及び第2の時限パルスを供給することは、シリンジ本体構造体内で往復運動することができるように取り付けられたピストンに対して作動空気を供給することをさらに含むことができる。
【0008】
本発明の様々なさらなる詳細及び特徴は、添付の図面と共に考慮される例証的又は例示的な実施形態のより詳細な説明を検討すると、当業者にはより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】1つの例示的な実施形態によって構成された装置の概略図である。
【図2】シリンジディスペンサに直接組み込まれている流入通路流量調整器を含む、一実施形態によって構成された装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、空気を圧力調整器14を通じて三方ソレノイド圧力切り替え弁16へ送る作動空気源12を一般的に含む装置10を示す。三方ソレノイド圧力切り替え弁16は、シリンジ本体構造体22とアダプタ24とから成るシリンジ20内へ加圧された作動空気のパルスを提供する。圧力調整器14は、既知の方法で空気圧パルスの振幅を設定する。三方ソレノイド圧力切り替え弁16を用いて、既知の方法でシリンジディスペンサの空気領域34の加圧及び排気を行う。管26は、空気流入流量制御装置30とアダプタ24との間の空気経路を提供する。
【0011】
図1は、空気流入流量制御装置30が設けられていることを除いて従来と同じである装置を表す。シリンジ本体構造体22は、吐出されるべき液体32を含み、液体32は、該本体構造の特定の体積を占めている。シリンジ本体構造体は、残りの体積を占める作動空気領域34も含む。したがって、例えば、出口すなわち放出通路42を通して液滴40を連続的にパルス吐出動作する間に液体32の体積が減少するにつれて、作動空気領域すなわち空気体積34が増大することが理解されるであろう。
【0012】
シリンジが液体32で満たされているとき、加圧可能な空気体積34をわずかに残して液体体積がシリンジ20の内部体積のほとんどを占める。空気領域すなわち空気体積34が小さいとき、適切な作動空気圧力振幅を達成するのに必要な空気は少量である。しかしながら、空気流入流量制御装置30なしでは、シリンジ20内の液体32の体積が減少して空気体積すなわち空気領域34が増大するにつれて、液体の一滴(液滴)の大きさ又は放出体積40は小さくなる。すなわち、シリンジ20を適切な作動空気圧力振幅まで加圧するには、作動空気流入通路を流れる空気量を増大させなければならず、したがって、より長い時間期間にわたって空気を空気領域34内へ送らなければならない。空気流入流量制御装置30は、この例では、空気体積すなわち空気領域34が拡大又は増大するにつれて、流入オリフィスすなわち通路の断面積を増大させる。これによって、シリンジの空気領域34内への空気流量すなわち質量流量が増大することが可能になり、したがって、前の吐出サイクルと同じ時間をかけて、設定された圧力振幅を達成する。したがって、吐出サイクル時間は、シリンジ20内の液体32の高さが減少する場合であっても同じ持続期間であるため、一滴毎の体積の一貫性が向上する。
【0013】
装置の流入通路を通る空気流を制御することは、流量制御装置を用いることによって様々な方法で達成することができる。例えば、流量制御装置は、作動空気を空気領域34の上流へ送るニードル弁又は比例電磁弁であり得る。これらの二種類の弁のいずれか又は他の機構を用いて、作動空気の質量流量、すなわち言い換えれば、単位時間当たりにシリンジ内へ流れる空気量を変えることができる。
【0014】
図2は、作動空気流入通路流量制御装置がシリンジディスペンサ20’に、より詳細にはアダプタ24’に直接組み込まれている例示的な実施形態を示す。この実施形態では、同様の参照符号は、図1の同様の参照符号に関して同様の構造及び機能を示し、したがってさらなる説明を要しない。図面及び/又は本明細書の説明から明らかとなるように、プライム(’)記号を有する同様の参照符号は、図1に比べると多少変更された構造を指す。シリンジディスペンサ20’は、シリンジ本体構造体22内で移動できるように取り付けられたピストン50と、ピストン50から上方に、すなわち出口通路42から離れる方向に延在したプランジャすなわち細長い部材52とをさらに備える。プランジャ52は、シリンジ本体構造体22の作動空気入口点すなわち流入オリフィス60における断面積が、ピストン50により近い空気領域34内における断面積よりも小さいように設計されている。プランジャ52は、連続テーパ(先細り形状)を有する円錐型の部材とすることができる。ピストン及びプランジャが出口通路42に向かって移動するにつれ、オリフィス60に位置するプランジャ52の一部の断面積は減少する。したがって、全体的に環状のオリフィス断面積(ここを通じて、加圧された作動空気がシリンジ本体構造体22に入ることができる)は増大する。これによって、単位時間当たりにより多くの空気量がシリンジ本体構造体22に入ることが可能になり、すなわち、これは空気流入流量を増大させる。したがって、シリンジ本体構造体22内の液体32の量すなわち体積にかかわらず、同じ時間をかけて空気領域34を必要な程度にまで加圧することができる。
【0015】
例として、30ccシリンジに用いられる細長い部材すなわちプランジャ52は、長さを7.683センチメートル(3.025インチ)とすることができる。この例では、オリフィス60は、0.381センチメートル(0.150インチ)の直径を有することができる。オリフィス60に位置する細長い部材52の断面の直径は、シリンジが液体で充填されている場合、0.3622センチメートル(0.1426インチ)である。オリフィス60に位置する細長い部材52の断面の直径は、シリンジの液体が空である場合、0.2619センチメートル(0.1031インチ)である。約330センチポアズの粘稠液を利用して、3.4475×10Pa(50psi)において0.100秒の持続時間の空気圧力パルスで液滴を吐出することができる。
【0016】
本発明は、様々な好ましい実施形態の説明によって例示されており、これらの実施形態がいくらか詳細に説明されているが、本出願人らは、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限するか又は一切限定することを意図していない。さらなる利点及び変更は、当業者には容易に明らかであろう。本明細書において説明される様々な特徴を、使用者の必要性又は好みに応じて単独で又は任意に組み合わせて用いることもできる。これは、現時点で判明している本発明の好ましい実施方法に沿った、本発明の例示的な態様及び実施形態の説明である。しかしながら、本発明自体は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体をパルス吐出するための装置であって、
加圧された作動空気を受け入れる流入通路と連通し、且つ、液体を放出するための出口通路と連通するシリンジ本体構造体であって、前記作動空気を用いて、或る量の液体を前記出口通路から押し出すシリンジ本体構造体と、
前のパルス吐出動作に起因した前記シリンジ本体構造体内の液体体積の減少に少なくとも部分的に応じる関係に従って、前記流入通路を通る前記作動空気の流量を増大させるように動作可能な空気流入流量制御装置と、
を備える装置。
【請求項2】
前記流入通路は、断面積を有しており、前記空気流入流量制御装置は、流量を増大させるために該断面積を拡大するように動作可能である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シリンジ本体構造体内で移動できるように取り付けられたピストンであって、前記出口通路と連通する該ピストンの一方の側に液体領域を画定し、前記流入通路と連通する該ピストンの他方の側に空気領域を画定するピストンをさらに備える請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記空気流入流量制御装置は、前記ピストンから前記流入通路の中に延在する細長い部材をさらに備え、該細長い部材は、前記出口通路から離れる方向にいくにしたがって直径が減少していく請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記細長い部材は、前記出口通路から離れる方向に連続的に先細り状になっている請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記空気流入流量制御装置は、ニードル弁を含む請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記空気流入流量制御装置は、ニードル弁を含む請求項3に記載の装置。
【請求項8】
前記空気流入流量制御装置は、比例弁を含む請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記空気流入流量制御装置は、比例弁を含む請求項3に記載の装置。
【請求項10】
制御された量の液体をシリンジディスペンサから吐出する方法であって、
加圧された作動空気源を流入通路によりシリンジ本体構造体に連結すること、
第1の量の液体を出口通路を通じて排出するために前記作動空気の第1の時限パルスを第1の流量で前記流入通路を通じて供給すること、
前記シリンジ本体構造体内の液体体積の減少に少なくとも部分的に応じる関係に従って、前記第1の流量から第2の流量へ流量を増大させること、及び
第2の量の液体を前記出口通路を通じて排出するために前記作動空気の第2の時限パルスを前記第2の流量で前記流入通路を通じて供給すること、
を含む方法。
【請求項11】
前記第2の量は、前記第1の量と少なくとも実質的に同じである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流量を増大させることは、前記流入通路の断面積を拡大することをさらに含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記流入通路は、環状に形成された断面を有しており、前記流入通路の断面積を拡大することは、該環状に形成された断面の面積を拡大することをさらに含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記環状に形成された断面の面積を拡大することは、細長い部材を前記流入通路の中で移動させることをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記環状に形成された断面の面積を拡大することは、細長い且つ連続的に先細り形状になっている部材を前記流入通路の中で移動させることをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記作動空気の前記第1の時限パルス及び前記第2の時限パルスを供給することは、前記シリンジ本体構造体内で移動することができるように取り付けられたピストンに作動空気を供給することをさらに含む請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−158675(P2010−158675A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2659(P2010−2659)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【出願人】(391019120)ノードソン コーポレーション (150)
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
【Fターム(参考)】