液体収容体
【課題】 液体収容体の内部に配置された移動体の動きを制限し、不快な衝突音の発生が抑制された液体収容体を提供する。
【解決手段】 インクカートリッジ1は、インクジェットプリンタ用のインクを収納する液体収容体である。このインクカートリッジ1には、内部に収容されたインクより比重が大きく、そしてインクの沈降率にあわせてそれぞれ異なる比重に設定された撹拌移動体711と、インクに浮遊しそして撹拌移動体711の移動を制限する浮遊体712とが収容されている。
【解決手段】 インクカートリッジ1は、インクジェットプリンタ用のインクを収納する液体収容体である。このインクカートリッジ1には、内部に収容されたインクより比重が大きく、そしてインクの沈降率にあわせてそれぞれ異なる比重に設定された撹拌移動体711と、インクに浮遊しそして撹拌移動体711の移動を制限する浮遊体712とが収容されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容した液体を外部に供給する液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として挙げられるインクジェット式記録装置は、インクを収容したインクカートリッジが装着されることにより、当該インクカートリッジからインクの供給を受けて、被印刷物にインクを吐出して印刷を行う。インクジェット式記録装置に用いられるインクの種類には、染料系と顔料系があり、顔料系インクは、溶媒中に顔料等の分散粒子を均一に分散させて混合されたものである。このような顔料系インクは、長期間にわたって印刷が行われず、インク収容室内においてインクが循環しない状態に置かれると、溶媒と分散粒子との比重差で分散粒子が沈降する傾向がある。
【0003】
このような分散粒子の沈降に対して、インクの濃度を一定に維持するためにインクを攪拌するインクジェット式記録装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1に記載されたインクジェット式記録装置は、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドを非印刷物に対して相対的に移動させるキャリッジと、前記記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジとを備え、前記インクカートリッジにインクよりも比重が大きな材料により形成された移動体が収容されていて、前記移動体が前記インクカートリッジ内のインクに沈澱が生じるよりも短い周期で移動されるものである。
【0004】
一方、特許文献2に記載されたインクジェット式記録装置は、インクカートリッジに対してインクの撹拌動作を付与したときにはインク室内で撹拌移動を行い、上記記録ヘッドからインク滴を吐出して印刷動作を行うときには上記インク室内の所定箇所に停止しているように構成されている。つまり、インクの顔料等が沈降して撹拌をするべき状態にあるときには上記撹拌を行い、上記印刷動作の状態にあるときには撹拌動作を行わないことから、撹拌動作と印刷動作が区分されて、撹拌に起因する不要な振動が印刷中に記録ヘッドへ伝達されるようなことがなく、均一に顔料等が分散したインク滴が印刷媒体上に吐出されて、良好な印字品質がえられるものである
【0005】
更に、上記分散粒子の沈降を制限する方法として、前記移動体に超音波振動子を用いて、インク成分に超音波振動を作用させることにより記インクを分散する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、近年のインクジェット式記録装置は、複数色のインクでカラー印刷する形式のものが広く用いられている。複数色のインクは、例えばシアン、マゼンタ及びイエローの3色である。これら3色のインクのためのインクカートリッジの一例は、シアン、マゼンタ及びイエローの各々を収容した計3個のインク収容室を有するインクカートリッジである。また、他のインクカートリッジの例として、シアン、マゼンタ及びイエローの3色に加えてブラックのインクを収容したインク収容室を有する4色のインクカートリッジがある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−309212号公報
【特許文献2】特開2003−266730
【特許文献3】特許第3163628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、インクジェット式記録装置において印字動作が開始されると、インクカートリッジは被印刷物に対して相対的に移動し、前記インクカートリッジ内に収容されている移動体がこのインクカートリッジの移動に伴い前記インクカートリッジ内を移動すると前記移動体がインクカートリッジの内壁と衝突し衝突音が発生する場合がある。この衝突音はインクの残量が十分である場合はインクの抵抗により軽減されほとんど気になるものではないが、インクの残量が少なくなってくると、ユーザーがこの衝突音を不快な衝突音、あるいは故障音として認識してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、攪拌移動体が液体収容体の内壁と衝突することによって発生する衝突音を軽減し、ユーザーがこの衝突音を故障音等として認識してしまうことのない液体収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体収容体は、液体を収容する液体収容室を備えた液体収容体であって、
前記液体収容室には、前記液体に沈降する攪拌移動体と、前記液体に浮く少なくとも一つの浮遊体とが収容されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容体内の液面が低下して、攪拌移動体とほぼ同レベルに浮遊体が位置することによって、攪拌移動体の移動が制限される。従って、液量が少なくなり攪拌移動体に対する液体の抵抗が少なくなった状態であっても、攪拌移動体が不要に移動して液体収容体の内壁に衝突し不快な衝突音を発生させにくくすることができる
【0012】
また、本発明に係る液体収容体における前記浮遊体は、例えば、前記液体よりも比重が小さい物質、内部に空洞を有する中空体等としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体収容体によれば、液体収容体内の液面が低下して攪拌移動体に対する液体の抵抗が少なくなった状態であっても、攪拌移動体が不要に移動して液体収容体の内壁に衝突し不快な衝突音を発生させにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液体収容体は、液体噴射装置の液体噴射ヘッドに液体を供給するのに適したものである。ここで言う液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置の色剤噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、さらにはバイオチップを製造するバイオチップ製造装置の生体有機物噴射ヘッド及び精密ピペットしての試料噴射ヘッドなどが該当する。
【0015】
以下、本発明に係る液体収容体の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、液体収容体の一例として、インクジェット式記録装置に対して着脱して用いられるインクカートリッジについて説明する。
図1に、本実施の形態のインクカートリッジの斜視図を示す。図1に示すインクカートリッジ1は、複数色(複数種)のインクを色毎に収容した複数のインク収容室(液体収容室)2,4,6,8を有している。これらのインク収容室2,4,6,8は、全体の筐体が一体成形されているか、または互いに連結されて一体となっている。インク収容室2は、他のインク収容室より大きく、ブラックインクを収容している。また、インク収容室4,6,8は、それぞれシアン、マゼンタ、イエローのインクを収容している。
【0016】
また、このインクカートリッジ1の略中央に位置するインク収容室4の背面側の上部にはインクジェット式記録装置のキャリッジと係合する係合レバー180が、インク収容室4と一体的に形成されている。
このインクカートリッジ1は、キャリッジに搭載された状態でインク収容室2,4,6,8の並列方向(図中X方向)に往復移動され、各インク収容室内のインクを被印刷物に対して吐出する。
【0017】
ここで、各インク収容室2,4,6,8の構成例について、インク収容室4を例に挙げて説明する。なお、各インク収容室2,4,6,8の構成は、キャリッジの移動方向の幅を除き、略同様である。
図2は、図1に示したインクカートリッジ1のうち、インク収容室4のみを示した斜視
図である。
図3及び図4は図2のインク収容室4を斜め下方からみた背面斜視図で、図3はインク収容室4の収容室本体120の表面にフィルム110が貼り付けられる前の状態を示し、図4はインク収容室4の収容室本体120にフィルム110が貼り付けられた状態を示す。さらに、図5及び図6は、インク収容室4を構成する部材を分解して示す分解斜視図である。
【0018】
図1,図2及び図4に示した矢印Xは、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)の往復移動方向を示している。
図7は、図2のインク収容室4の背面図であり、図2のインク収容室4においてフィルム110が貼り付けられる前の状態を示す。図8は、図1のインク収容室4の正面図であり、インク収容室4の開口部122にフィルム130が貼り付けられる前の状態を示す。図9は、図2のインク収容室4の正面図であり、インク収容室4の開口部122にフィルム130が貼り付けられた後の状態を示す。
【0019】
図5及び図6に示すように、本実施の形態のインク収容室4は、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)の往復移動方向に対向する正面に開口部122を有する有底の略筐体形状の収容室本体120、この開口部122のほぼ全面を覆うフィルム130、及び、このフィルム130の外側を覆う蓋体140を備える。
【0020】
収容室本体120は合成樹脂による一体成形品で、収容室本体120の内部は、後述のように隔壁又はリブにより、開口部122側(即ち、印字ヘッドの往復移動方向に対向する面)が開放した複数の凹部270a,292a,294aに複数の凹部270a,292a,294aに複数の凹部270a,292a,294aに区画されている。
これらの各凹部270a,292a,294aの開放面は、フィルム130によって気密に塞がれて、インクを収容するインク収容部270,292,294を形成する。
【0021】
更に詳述すると、フィルム130は、収容室本体120よりも融点の低い透明又は半透明の樹脂製フィルムで、凹部270a,292a,294aを区画している隔壁又はリブに融着されることで、各インク収容部270,292,294を画成している。
なお、フィルム130の融着処理の前に、凹部270a,294aには、収容したインクを撹拌するための撹拌移動体711が投入される。
【0022】
蓋体140は、さらにフィルム130の外側を非密閉状態で被覆するように収容室本体120に固定される。また、この蓋体140が、インク収容室4と隣接したインク収容室6の収容室本体と一体成形されていても良い。
【0023】
収容室本体120は、インクを収容するインク収容部111(図8参照)と、インク収容部111からインク供給部160までのインク流路部と、インク収容部111を大気に連通させるインク側通路、大気弁収容部、及び大気側通路からなる大気連通部とを備え、例えばポリプロピレン(PP)により一体成形されている。
【0024】
インク収容室4はさらに、インク供給制御手段150と、インク供給部160と、記憶手段170と、係合レバー180とを有する。
インク供給部160は、収容室本体120の下面に配され、インク収容室4が装着されるキャリッジに形成されたインク供給針が挿入されて、インク収容部111に収容されたインクをインクジェット式記録装置の記録ヘッドへ供給する。
【0025】
図5及び図6に示すように、記憶手段170は、取付部190に加締められ、この取付
部190は、収容室本体120の側面の下方に加締められて取り付けられる。
また、記憶手段170は、インク収容室4の種類の情報、インク収容室4が保持するインクの色の情報、及び、インクの現存量等の情報を記憶し、表面に露出した複数の端子171により装置本体との間でこれらの情報を受け渡す。係合レバー180は、収容室本体120における取付部190と対向する側面の上部に形成され、インクジェット式記録装置のキャリッジと係合する。取り付け部190の側面は、キャリッジに形成された図示しないリブにより規制されて、上記端子171とキャリッジ側の弾性接点とが確実に当接するように構成されている。
【0026】
インク供給制御手段150は、インクの消費に伴って発生するインク収容部111とインク供給部160との圧力差により、インク収容部111のインクをインク供給部160へ供給する差圧弁から構成されている。インク供給制御手段150は、弾性変形可能であって、収容室本体120の凹部495に挿入される弁部材の一例である膜弁900と、凹部495を覆う弁蓋151と、膜弁900及び弁蓋151の間に配される付勢部材の一例としてのコイルバネ907とを有する。
【0027】
インク収容部111は、図8に示したように水平方向に延びる隔壁272により、上部と下部とに大きく分割され、この隔壁272の下部には連通孔242により大気と連通可能な大気側収容部270が、また上部には大気から遮断された2つの第1インク収容部292及び第2インク収容部294からなる供給側収容部290が形成されている。
【0028】
供給側収容部290は、隔壁272の近傍(下部領域)に連絡流路(連通部)276を有する鉛直な隔壁271により、第1、及び第2インク収容部292、294の2つに分割され、また第2インク収容部294に周りを囲まれるように配された流路部296が形成されている。
流路部296は下部の連絡流路278を介して、第2インク収容部294と接続されるとともに、通路298及び通孔918を介してインク供給制御手段150に接続されている。
【0029】
隔壁271は、隔壁272との間に下連絡流路276及び上面との間に上連絡流路277を有する。上連絡流路277の流路抵抗は、下連絡流路276の流路抵抗よりも小さい。
【0030】
また、第2インク収容部294には、短尺で鉛直な隔壁288が設けられ、隔壁288と隔壁272との間が流路279となっている。
また、インク供給制御手段150の下流側は、インク供給制御手段150と連通する通孔910、通孔910と連通する流路321、流路321の一端に形成され、表面側に向けて形成された通孔323、及び、通孔323と一端が連通した連通部304を介して、インク供給部160と連通するよう構成されている。
【0031】
大気側収容部270と第1インク収容部292とは垂直方向に延びる連絡流路295及び大気側収容部270の底面を貫通する連通部162(図3参照)を介して連通されている。従って、インク供給部160からインクが消費されると、それに対応して大気側収容部270のインクが第1インク収容部292に吸い上げられ、ここから第2インク収容部294、流路部296等を介してインク供給制御手段150に流れ込むように構成されている。
【0032】
インク収容部111の大気側収容部270からインク供給制御手段150へは、連絡流路274、連通部162、連通孔163、連絡流路295、連絡流路276,278、流路部296、通路298、及び通孔918をこの順に通ってインクが流れ込む。
【0033】
大気弁連通部624を境として大気と連通する側である大気側通路は、図7に示す開口212、蛇行した通路214、フィルタ収容部216、連通孔218及び、図8に示す連通部222、連通部222の側面に形成された通孔652b、及び押圧部材収容室652により構成されている。
【0034】
詳細には、図7に示すように、収容室本体120の表側に形成された迷路状に蛇行した1本の通路214の一端は開口212として大気に開放され、他端は撥インク性と通気性の機能を備えたフィルタ215(図5、図6)が収容されたフィルタ収容部216に接続されている。
フィルタ収容部216は、収容室本体120の表側から裏側に貫通する連通孔218と連通する。連通孔218は、収容室本体120の裏側において連通部222、及び連通部222の側面に形成された通孔652bを介して押圧部材収容室652と接続している。通路214の途中には、凹部からなるチャンバ930が設けられている。
【0035】
一方、図8に示すように大気弁連通部624を境としたインク側通路は、大気弁室669、連通孔238、連通溝240、及び連通孔242で形成されてインク収容部111の大気側収容部270と連通する。
【0036】
収容室本体120の裏側から表側に貫通する連通孔238は、連通孔238と連通する連通溝240、連通溝240と連通すると共に収容室本体120の表側から裏側に貫通する連通孔242を介して大気側収容部270と連通する。
【0037】
これらの大気側収容部270、供給側収容部290、大気弁室669、及び大気側通路、インク側通路は、それぞれを区画する隔壁にインク側通路は、それぞれを区画する隔壁にインク側通路は、それぞれを区画する隔壁にフィルム130、110を熱溶着などの方法で貼着することにより大気と隔離された領域となる。
【0038】
インク供給部160は、キャリッジに設けられたインク供給針が挿入される挿入口26を有するエラストマ等から形成されたシール部材12と、シール部材12の挿入口26を塞ぐ供給弁13と、供給弁13をシール部材12に向けて付勢するコイルスプリング等からなる付勢部材14とを有する。なお、シール部材12の挿入口26には、工場出荷時において、フィルム604が貼り付けられている。
【0039】
インク収容室4がインクジェット式記録装置のキャリッジに装着されると、キャリッジに設けられた凸部がフィルム480及び大気弁押圧部材654を介して大気弁650を上方に押し上げるとともに、キャリッジのインク供給針がインク供給部160の供給弁13を上方に押し上げる。
この結果、大気弁連通部624は、大気弁室669から連通孔242までの大気流路を大気と連通する。また、インク供給部160における供給弁13より上流は、インク供給針と連通する。
【0040】
連通孔242が大気と連通している状態において、インクジェット式記録装置が記録を始めると、インク供給部160からインク供給針を通して記録ヘッドへインクが供給される。インク供給部160からインクが供給されると、インク収容部111において図8に示す矢印a、通孔918の順に流れたインクが、インク供給制御手段150を経由して、図7に示す矢印b、c、d、eの順に流れて、インク供給部160に流れ込み、インク供給部160に挿入されたインク供給針にインクが供給される。
【0041】
このインクの流れにあわせてインク収容部111においては、大気側収容部270のイ
ンクが供給側収容部290に供給される。大気側収容部270のインクの消費に伴って、空気が図8における矢印f、gの経路を順に通って、連通孔242から大気側収容部270へ流入する。インク供給部160から記録ヘッドへインクが供給されて大気側収容部270の液面が下がるが、大気側収容部270と供給側収容部290とを接続する流路は、大気側収容部270の最も下部に連通口があるので、大気側収容部270の全てのインクが供給側収容部290へ移動するまで、供給側収容部290には空気が流入しない。
【0042】
大気側収容部270のインクがすべて消費された後に、供給側収容部290の第1インク収容部292及び第2インク収容部294のインクがこの順に消費される。この間、供給側収容部290と大気側収容部270とを連通する連通部162に形成されるインクのメニスカスによる表面張力により、供給側収容部290のインクが大気側収容部270に逆流することが防止される。
【0043】
第1インク収容部292のインクが消費され始めると、第1インク収容部292に空気が流入する。これにより、第1インク収容部292の液面が下がるが、第1インク収容部292と第2インク収容部294とは、下部のみが連絡流路276により連通しているので、まず、第1インク収容部292のインクが消費される。第1インク収容部292のインクが消費されて、液面が連絡流路276に到達すると、第2インク収容部294のインクが消費されるのにあわせて、空気は第2インク収容部294にも流入する。第2のインク収容部のインクが消費される間、連絡流路276にインクのメニスカスによる表面張力が生じるため、第2インク収容部294のインクが第1インク収容部292に逆流することが防止される。
【0044】
上述したように、大気側収容部270、第1インク収容部292及び第2インク収容部294のインクはこの順に消費されるが、インクの液面がいずれの収容部にあっても、インクは、インク収容部111を上下に略二分する隔壁272の近傍に配された連通部278から通路298を経由して通孔918を通ってインク供給部160へ供給される。
【0045】
図10は、図8の部分拡大斜視図である。大気側収容部270において、連通孔163(図3参照)が配された連絡流路274の上を区画している供給側隔壁272aは、大気側収容部270における他の隔壁272よりも装備位置が低くなっている。また、大気側収容部270は、連絡流路274の近傍において大気側収容部270の底面から鉛直上方に延伸する第1鉛直隔壁部510、及び、この第1鉛直隔壁部510に平行な第2鉛直隔壁部530を有する。
【0046】
第1鉛直隔壁部510は、下端において第1鉛直隔壁部510を貫通して大気側収容部270の底面との間で液体が流れる下連絡流路512を有する。下連絡流路512は、第1鉛直隔壁部510を切り欠いた切り欠きである。第1鉛直隔壁部510は、さらに下連絡流路512よりも上方にあって第1鉛直隔壁部510を貫通し、下連絡流路512よりも小さい流路抵抗でインクが流れる上連絡流路514を有する。
【0047】
図10に示す実施形態において、上連絡流路514は下連絡流路512よりも大きく切り欠かれた切り欠きである。これにより、上連絡流路514の流路抵抗は下連絡流路512の流路抵抗よりも小さくなっている。
さらに、上連絡流路514は、下連絡流路512との間に下壁部513を挟んで供給側隔壁272aよりも上方に配されている。第1鉛直隔壁部510は、さらに、上連絡流路514との間に上壁部515を挟んで、下連絡流路512よりも小さい流路抵抗でインクが流れる第2上連絡流路516を有する。図10に示す実施形態において、第2上連絡流路516は、隔壁272と第1鉛直隔壁部510の上端との間に生じる間隙である。
なお、第2鉛直隔壁部530は第1鉛直隔壁部510と同一の構成を有するため、説明
を省略する。
【0048】
さらに、第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530は、図3に示す通路214の裏面に配されている。よって、通路214に図4に示すフィルム110を貼り付ける場合に、通路214が設けられた収容室本体120の側面が凹んでフィルム110が貼りにくくなる「逃げ」を防ぐことができる。
【0049】
また、図8に示すように供給側収容部290の第1インク収容部292は、上下方向について傾斜している傾斜壁部550を有する。傾斜壁部550は、上下方向に延伸している連絡流路295の上方に配される。
【0050】
図11はインク収容室4の正面図であり、大気側収容部270にインクが充填されている状態を示す。本実施の形態の場合、図11に示すように、一番基端の液体収容部である大気側収容部270と、インク供給制御手段150の直前の液体収容部である第2インク収容部294のそれぞれに、収容されたインクより比重が大きい撹拌移動体711が配置され、大気側収容部270には、浮遊体712が配置されている。
撹拌移動体711は、球形の金属製ボールで、キャリッジによるインク収容室4の移動動作時に受ける慣性によって収容部内を転動して、それぞれの収容部内に貯留しているインクを撹拌する。また、浮遊体712は、インクよりも比重が小さいまたは内部に空洞を有する中空体であり、インクに対して浮遊する。撹拌移動体711、浮遊体712の外形は、球形に限らず、例えば、円柱形、又は円筒形等としても良い。また、撹拌移動体711、浮遊体712を構成する材質も金属に限られず、ナイロン、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のプラスチックや、ガラス、セラミックス(例えば、Al2O3、ZrO2)、ゴム等を用いることができる。
【0051】
大気側収容部270内には、第1鉛直隔壁部510と第2鉛直隔壁部530との間の区間、及び第2鉛直隔壁部530を挟んで第1鉛直隔壁部510とは逆側の区間に、それぞれ撹拌移動体711、浮遊体712が配置されている。また、第2インク収容部294の場合は、流路279を有した隔壁288と連絡流路278との間の区間に撹拌移動体711が装備されている。
【0052】
各収容部に装備した撹拌移動体711は、連絡流路を有した隔壁側に転動した場合に、その隔壁の底部側に開口している連絡流路(例えば、連絡流路278,279、下連絡流路512,532)に接近する。その場合に、それらの連絡流路に最接近した時でも、その連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体711との間に、それらの連絡流路の断面積(開口面積)よりも大きな断面積の流路が確保されるように、連絡流路の開口に対して、前記撹拌移動体711の外径を所定以上の大きさに規制している。
【0053】
以上の構成において、大気側収容部270及び供給側収容部290には顔料インクが収容されている場合の、インクの供給動作について説明する。図3及び図8に示すように、大気側収容部270のインクをなるべく使い切るべく、連通部162は、大気側収容部270の底面を貫通して配され、連通部162を通過したインクを供給側収容部290に供給する。
【0054】
通常、顔料インクの色材である顔料は、溶媒中に分散した分散粒子であるため長期間放置した場合にはこの分散粒子が沈降し、特に連通部162が配された連絡流路274付近には顔料の濃度が高くなった濃いインクが溜まりやすい。
【0055】
しかし、本実施の形態においては、大気側収容部270及び第2インク収容部294に装備した撹拌移動体711が、これらの収容部内に貯留しているインクの撹拌を行って、インク中の色材の沈降自体を抑止することができるので、連絡流路274付近に顔料の濃度が高いインクが溜まる現象を防止できる。更に、本実施例においては一つの隔壁(第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530)に上下に分けて分散配置された連絡流路が
インク供給時に撹拌を促進させる上下方向の流動を起こすことができ、双方の撹拌作用の相乗で、活発な撹拌が行われ、インク供給部160に供給するインクに濃度のばらつきが生じにくい。つまり、連絡流路274付近の濃いインクがそのまま連通部162から流れ出た後に、その上方にあった濃度の薄いインクが流れ出るといったことが防止でき、外部へ供給されるインクの濃さが不均一になることが防止できる。
また、前記撹拌移動体711の外径を、連絡流路の開口に対して所定以上の大きさに規制しているので、大気側収容部270及び第2インク収容部294に装備した撹拌移動体711は、連絡流路を塞ぐことがなく、インクの供給不良を招くことがない。従って、濃度のばらつきがない高品位なインク供給を維持できる。
【0056】
次に、撹拌移動体711の撹拌動作について説明する。
本実施の形態のインク収容室4によれば、大気側収容部270や第2インク収容部294内に装備されている撹拌移動体711がそれぞれのインク収容部内を移動した場合に、前記撹拌移動体711が隔壁530,510,288等に貫通形成された連絡流路532,512,279,278に最接近した時でも、これらの連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体711との間には、連絡流路の断面積よりも大きな断面積の流路が確保される。
従って、撹拌移動体711が、これらの連絡流路532,512,278を塞いでこれらの連絡流路532,512,278におけるインクの流通を妨げることがなく、インク収容部270,294内の上下に分散する濃度差を持った液体を撹拌移動体711によって再混合して均一濃度の液体を連絡流路から安定供給することができ、インクジェット式記録装置におけるインクカートリッジとして使用された場合であれば、記録するインク濃度に濃淡のばらつきが生じない高品位な安定した記録が可能になる。
【0057】
次に、インクの残量変化に対する攪拌移動体711と浮遊体712の動作について説明する。
インク収容室4にインクが充分に充填されている場合には、攪拌移動体に対するインクの抵抗が大きいため大気側インク収容部270、供給側インク収容部294内での攪拌移動体の移動速度は小さい。そのため、インク収容部内壁に対する撹拌移動体711の衝突速度が小さく、攪拌移動体711がインク収容部内壁に衝突したときの衝突音も小さくなるため、ユーザーの耳にはこの衝突音がほとんど聞こえない。しかし、大気側収容部270のインクが供給側収容部290に供給されることによって大気側収容部の液面が低下すると、攪拌移動体に対するインクの抵抗が小さくなるため、攪拌移動体の移動速度が速くなりインク収容部内壁との衝突音も大きくなる。しかしながら、本実施形態では、図12、図13に示すように、インクの液面が低下すると、大気側収容部270に配置された浮遊体712がインクに沈んでいる攪拌移動体711と同レベルに位置するようになり、攪拌移動体711の移動が制限される。これにより、攪拌移動体711の移動可能スペースが減少するため、攪拌移動体711がインク収容部内壁に衝突しにくくなり、また衝突する場合であってもインク収容部内壁に対する攪拌移動体711の衝突速度が低下し、インク収容部内壁との衝突音が浮遊体712がない場合よりも小さくなる。このように、本実施形態では、浮遊体712を用いて、攪拌移動体711による不快な衝突音を発生させにくくしている。
【0058】
ここで、浮遊体712は、攪拌移動体711よりも軟らかい素材からなることが好ましい。浮遊体712が攪拌移動体711よりも軟らかい素材によって構成されていれば、浮遊体712が攪拌移動体711に衝突したときに浮遊体712が外表面が変形することにより衝突エネルギーを吸収することにより衝突速度を減少させることができる。また、浮遊体712が攪拌移動体711よりも軟らかい素材によって構成されていれば、浮遊体712自身がインク収容部内壁に衝突したときの衝突音を大きくさせないように構成することも可能である。
【0059】
次に、一つの隔壁上に、上下に離間させて2つ以上の連絡流路を設けると共に、上部の連絡流路は下部の連絡流路よりも流路抵抗を小さく設定したことによる撹拌動作について説明する。
本実施の形態では、下連絡流路512、上連絡流路514、及び、第2上連絡流路516を有する第1鉛直隔壁部510を設けたので、連通孔163からインクが流れ出ることによりさらにインクが連通孔163へ引っ張られる場合に、上連絡流路514、第2上連絡流路516を通って流れる薄いインクの流量が多くなる。よって、薄いインクの流れ(図中の矢印i、j)が濃いインクの流れ(図中の矢印h)よりも大きくなり、濃いインクのみならず、薄いインクも連通孔163へ流れ込むことができる。
また、流れの大きさの差により、連絡流路274と第1鉛直隔壁部510とで区切られる空間において、上下のインクの流れができ、濃いインクと薄いインク、特に上連絡流路514付近よりもさらに上方の薄いインクも巻き込んで攪拌することができる。
【0060】
特に、上連絡流路514が連通孔163と対向する供給側隔壁272aよりも上方に配されているので、低い272aで仕切られた上方の供給側収容部290へインクを容易に供給することができると共に、連絡流路274付近に溜まりやすい濃いインクよりも上方にある薄いインクを連絡流路274へ向けて流すことができる。また、第2上連絡流路516が大気側収容部270の隔壁272との間に配されているので、大気側収容部270のインク量が多くて濃度の差が大きくなった場合でも、上方の薄い液体を連通孔163へ向けて流し、下方の濃いインクと確実に混ぜて供給側収容部290に供給することができる。
【0061】
また、下連絡流路512は、第1鉛直隔壁部510の下端に設けられているので、第1鉛直隔壁部510によりインクがせき止められることなく、大気側収容部270のインクをほぼ使い切ることができる。さらに、第1鉛直隔壁部510と平行に、下連絡流路532、534、及び、第2上連絡流路536を有する第2鉛直隔壁部530を設けたので、連絡流路274付近において、濃いインクと薄いインクを確実に混ぜることができる。
【0062】
また、連通部162を介して大気側収容部270からのインクが流れ込む連絡流路295の上方には、傾斜壁部550が設けられている。よって、大気側収容部270から供給側収容部290へのインクの流れを傾斜壁部550で受けて、流れの向きを変えることにより、第1インク収容部292に収容されているインクを攪拌し、第1インク収容部292における濃い液体と薄い液体を混ぜることができる。
また、連絡流路276を有する鉛直な隔壁271及び連通部279を有する鉛直な隔壁288のような下連絡流路が小さい壁が複数あることにより、より下方の濃いインクと確実に混ぜて供給側収容部290に供給することができる。
【0063】
なお、図8から図10に示す実施形態において、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530における上連絡流路514と上連絡流路534は、互いに同じ上下位置に配されている。しかしながら、上下位置の配置はこれに限られず、上連絡流路514と上連絡流路534とは、互いに異なった上下位置に設けられていてもよい。同様に、第2上連絡流路516と第2上連絡流路536も、互いに異なった上下位置に設けられてもよい。これにより、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530で挟まれた領域において薄いインクの上下方向の流れを作り、濃いインクと薄いインクを確実に攪拌することができる。
【0064】
また、図8から図10に示す実施形態において、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530は鉛直に設けられているが、これに限られず、一対の壁部の両方または一方が鉛直方向に対して傾いていてもよい。
【0065】
このように、本実施形態のインク収容室4は、大気側収容部270における連通部162付近において、浮上している薄いインクの流量を大きくすることにより、沈降している濃い液体と浮上している薄い液体とが混ぜられて連通部162から供給側収容部290へ供給される。よって、外部へ供給されるインクの濃さのばらつきを抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態のインクカートリッジ1(図1参照)において、各インク収容室2,4,6,8には、それぞれ異なる色(種類)のインクが収容されており、色毎にインクの沈降率が異なっている。そこで、各インク収容室2,4,6,8に収容された攪拌移動体711の比重を、インクの沈降率に合わせてそれぞれ異ならせている。
【0067】
例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクについて、各インクの沈降率の大小が「イエロー>マゼンタ>シアン>ブラック」の関係である場合には、攪拌移動体711の比重の大小を「イエロー用攪拌移動体>マゼンタ用攪拌移動体>シアン用攪拌移動体>ブラック用攪拌移動体」の関係とする。そして、インクカートリッジ1において、インク収容室2にブラックのインク、インク収容室4にシアンのインク、インク収容室6にマゼンタのインク、インク収容室8にイエローのインクが収容されている場合には、各攪拌移動体711の比重を「インク収容室8の攪拌移動体711>インク収容室6の攪拌移動体711>インク収容室4の攪拌移動体711>インク収容室2の攪拌移動体711」の関係となるようにしている。
【0068】
このように、インク毎の沈降率に合わせてそれぞれの攪拌移動体711の比重を設定しておくことで、各インク収容室2,4,6,8内において攪拌移動体711の転動性が良好となり、全てのインク収容室2,4,6,8内で同等の攪拌作用を得ることができる。さらに、各インクに合わせて攪拌移動体711の比重を最適化することで、各インクに対して特に良好な攪拌作用を得ることができる。また、比重とともに攪拌移動体711の大きさも攪拌作用を考慮して設定すると良い。なお、攪拌移動体711の比重は、ある程度大きい方が転動しやすくなって攪拌作用が向上するが、その場合インクカートリッジ1全体としての重量が大きくなってしまうため、インクカートリッジ1を搭載したキャリッジの往復移動の制御に不具合を発生させない程度の比重と大きさを設定することが望ましい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1によれば、インク収容室の構成によりインクの攪拌性能が良好であるだけでなく、インク収容部内に攪拌移動体711を設けて液体噴射ヘッドの往復移動によってインクを積極的に攪拌するようにし、さらにそれぞれのインクの沈降率に合わせてインク収容室毎に攪拌移動体711の比重を設定しているため、非常に良好なインクの攪拌作用を各インク収容室に対して同等に得ることができ、全ての色のインクについて常に均一な濃度を維持することができる。また、インク収容室に浮遊体を配置することによって、インクの残量低下に伴って発生する攪拌移動体とインク収容部内壁との衝突音を低減させることができる。したがって、本実施形態のインクカートリッジ1をインクジェット式記録装置の液体噴射ヘッドに搭載すれば、常に所望の色相が得られるようになり、優れたカラー印刷を行うことができる。さらに、インクインク残量低下後も外部に不快な音を伝達させることなくユーザーに故障音等と誤解される虞がなくなる。
【0070】
なお、本発明の液体収容体において、液体収容部に装備する撹拌移動体及び浮遊体の外形は、上記実施の形態に示した球形に限らない。例えば、円柱形、又は円筒形等も有効である。撹拌移動体の外形が円柱形、又は円筒形の場合には、撹拌移動体が連絡流路に最接近した時でも、連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体との間に、所定以上の断面積の流路を確保するための具体的手段として、上記実施の形態と同様に、撹拌移動体の外形を所定以上に大きく設定するという方法が有効である。
【0071】
上述の実施形態の例においては、液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジに着脱可能なインクカートリッジを例にとって説明したが、メインタンクを記録装置本体に固定し、このメインタンクとキャリッジ上に搭載したサブタンクとがチューブにより接続され、更にサブタンクのインクをヘッドに供給可能に構成された装置において、サブタンクを本願発明の構成とすることも可能であり、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る液体収容体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したインクカートリッジのうち、一つのインク収容室のみを示す斜視図である。
【図3】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の背面斜視図である。
【図4】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられた後の背面斜視図である。
【図5】図2に示したインク収容室の正面側の分解斜視図である。
【図6】図2に示したインク収容室の背面側の分解斜視図である。
【図7】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の背面図である。
【図8】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の正面図である。
【図9】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられた後の正面図である。
【図10】図8の要部の拡大斜視図である。
【図11】図2に示したインク収容室にインクを充填した後の正面図である。
【図12】図2に示したインク収容室のインク残量を表した要部の正面図である。
【図13】図11、図12の上面図である。
【符号の説明】
【0073】
1:インクカートリッジ(液体収容体)、2,4,6,8:インク収容室(液体収容室)、110:フィルム、111:インク収容部、120:収容室本体、120a:表面、122:開口部、130:フィルム、132:フィルム、140:蓋体、150:インク供給制御手段、162:連通部、163:連通孔、214:通路、270:大気側収容部、270a:凹部、272:隔壁、272a:供給側隔壁、274:連絡流路、290:供給側収容部、292:第1インク収容部、292a:凹部、294:第2インク収容部、294a:凹部、510:第1鉛直隔壁部、512:下連絡流路、513:下壁部、514:上連絡流路、515:上壁部、516:第2上連絡流路、530:第1鉛直隔壁部、530a:表面、532:下連絡流路、533:下壁部、534:上連絡流路、535:上壁部、536:第2上連絡流路、550:傾斜壁部、624:大気弁連通部、650:大気弁、652:押圧部材収容室、654:大気弁押圧部材、656:コイルバネ、669:大気弁室、711:撹拌移動体、712:浮遊体
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に収容した液体を外部に供給する液体収容体に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一例として挙げられるインクジェット式記録装置は、インクを収容したインクカートリッジが装着されることにより、当該インクカートリッジからインクの供給を受けて、被印刷物にインクを吐出して印刷を行う。インクジェット式記録装置に用いられるインクの種類には、染料系と顔料系があり、顔料系インクは、溶媒中に顔料等の分散粒子を均一に分散させて混合されたものである。このような顔料系インクは、長期間にわたって印刷が行われず、インク収容室内においてインクが循環しない状態に置かれると、溶媒と分散粒子との比重差で分散粒子が沈降する傾向がある。
【0003】
このような分散粒子の沈降に対して、インクの濃度を一定に維持するためにインクを攪拌するインクジェット式記録装置が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1に記載されたインクジェット式記録装置は、ノズル開口からインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、該記録ヘッドを非印刷物に対して相対的に移動させるキャリッジと、前記記録ヘッドにインクを供給するインクカートリッジとを備え、前記インクカートリッジにインクよりも比重が大きな材料により形成された移動体が収容されていて、前記移動体が前記インクカートリッジ内のインクに沈澱が生じるよりも短い周期で移動されるものである。
【0004】
一方、特許文献2に記載されたインクジェット式記録装置は、インクカートリッジに対してインクの撹拌動作を付与したときにはインク室内で撹拌移動を行い、上記記録ヘッドからインク滴を吐出して印刷動作を行うときには上記インク室内の所定箇所に停止しているように構成されている。つまり、インクの顔料等が沈降して撹拌をするべき状態にあるときには上記撹拌を行い、上記印刷動作の状態にあるときには撹拌動作を行わないことから、撹拌動作と印刷動作が区分されて、撹拌に起因する不要な振動が印刷中に記録ヘッドへ伝達されるようなことがなく、均一に顔料等が分散したインク滴が印刷媒体上に吐出されて、良好な印字品質がえられるものである
【0005】
更に、上記分散粒子の沈降を制限する方法として、前記移動体に超音波振動子を用いて、インク成分に超音波振動を作用させることにより記インクを分散する方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、近年のインクジェット式記録装置は、複数色のインクでカラー印刷する形式のものが広く用いられている。複数色のインクは、例えばシアン、マゼンタ及びイエローの3色である。これら3色のインクのためのインクカートリッジの一例は、シアン、マゼンタ及びイエローの各々を収容した計3個のインク収容室を有するインクカートリッジである。また、他のインクカートリッジの例として、シアン、マゼンタ及びイエローの3色に加えてブラックのインクを収容したインク収容室を有する4色のインクカートリッジがある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−309212号公報
【特許文献2】特開2003−266730
【特許文献3】特許第3163628号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、インクジェット式記録装置において印字動作が開始されると、インクカートリッジは被印刷物に対して相対的に移動し、前記インクカートリッジ内に収容されている移動体がこのインクカートリッジの移動に伴い前記インクカートリッジ内を移動すると前記移動体がインクカートリッジの内壁と衝突し衝突音が発生する場合がある。この衝突音はインクの残量が十分である場合はインクの抵抗により軽減されほとんど気になるものではないが、インクの残量が少なくなってくると、ユーザーがこの衝突音を不快な衝突音、あるいは故障音として認識してしまうおそれがある。
【0009】
本発明は、攪拌移動体が液体収容体の内壁と衝突することによって発生する衝突音を軽減し、ユーザーがこの衝突音を故障音等として認識してしまうことのない液体収容体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明に係る液体収容体は、液体を収容する液体収容室を備えた液体収容体であって、
前記液体収容室には、前記液体に沈降する攪拌移動体と、前記液体に浮く少なくとも一つの浮遊体とが収容されていることを特徴としている。
【0011】
このような構成の液体収容体によれば、液体収容体内の液面が低下して、攪拌移動体とほぼ同レベルに浮遊体が位置することによって、攪拌移動体の移動が制限される。従って、液量が少なくなり攪拌移動体に対する液体の抵抗が少なくなった状態であっても、攪拌移動体が不要に移動して液体収容体の内壁に衝突し不快な衝突音を発生させにくくすることができる
【0012】
また、本発明に係る液体収容体における前記浮遊体は、例えば、前記液体よりも比重が小さい物質、内部に空洞を有する中空体等としてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液体収容体によれば、液体収容体内の液面が低下して攪拌移動体に対する液体の抵抗が少なくなった状態であっても、攪拌移動体が不要に移動して液体収容体の内壁に衝突し不快な衝突音を発生させにくくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の液体収容体は、液体噴射装置の液体噴射ヘッドに液体を供給するのに適したものである。ここで言う液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)、液晶ディスプレイのカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置の色剤噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、さらにはバイオチップを製造するバイオチップ製造装置の生体有機物噴射ヘッド及び精密ピペットしての試料噴射ヘッドなどが該当する。
【0015】
以下、本発明に係る液体収容体の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、液体収容体の一例として、インクジェット式記録装置に対して着脱して用いられるインクカートリッジについて説明する。
図1に、本実施の形態のインクカートリッジの斜視図を示す。図1に示すインクカートリッジ1は、複数色(複数種)のインクを色毎に収容した複数のインク収容室(液体収容室)2,4,6,8を有している。これらのインク収容室2,4,6,8は、全体の筐体が一体成形されているか、または互いに連結されて一体となっている。インク収容室2は、他のインク収容室より大きく、ブラックインクを収容している。また、インク収容室4,6,8は、それぞれシアン、マゼンタ、イエローのインクを収容している。
【0016】
また、このインクカートリッジ1の略中央に位置するインク収容室4の背面側の上部にはインクジェット式記録装置のキャリッジと係合する係合レバー180が、インク収容室4と一体的に形成されている。
このインクカートリッジ1は、キャリッジに搭載された状態でインク収容室2,4,6,8の並列方向(図中X方向)に往復移動され、各インク収容室内のインクを被印刷物に対して吐出する。
【0017】
ここで、各インク収容室2,4,6,8の構成例について、インク収容室4を例に挙げて説明する。なお、各インク収容室2,4,6,8の構成は、キャリッジの移動方向の幅を除き、略同様である。
図2は、図1に示したインクカートリッジ1のうち、インク収容室4のみを示した斜視
図である。
図3及び図4は図2のインク収容室4を斜め下方からみた背面斜視図で、図3はインク収容室4の収容室本体120の表面にフィルム110が貼り付けられる前の状態を示し、図4はインク収容室4の収容室本体120にフィルム110が貼り付けられた状態を示す。さらに、図5及び図6は、インク収容室4を構成する部材を分解して示す分解斜視図である。
【0018】
図1,図2及び図4に示した矢印Xは、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)の往復移動方向を示している。
図7は、図2のインク収容室4の背面図であり、図2のインク収容室4においてフィルム110が貼り付けられる前の状態を示す。図8は、図1のインク収容室4の正面図であり、インク収容室4の開口部122にフィルム130が貼り付けられる前の状態を示す。図9は、図2のインク収容室4の正面図であり、インク収容室4の開口部122にフィルム130が貼り付けられた後の状態を示す。
【0019】
図5及び図6に示すように、本実施の形態のインク収容室4は、インクジェット式記録装置の液体噴射ヘッド(印字ヘッド)の往復移動方向に対向する正面に開口部122を有する有底の略筐体形状の収容室本体120、この開口部122のほぼ全面を覆うフィルム130、及び、このフィルム130の外側を覆う蓋体140を備える。
【0020】
収容室本体120は合成樹脂による一体成形品で、収容室本体120の内部は、後述のように隔壁又はリブにより、開口部122側(即ち、印字ヘッドの往復移動方向に対向する面)が開放した複数の凹部270a,292a,294aに複数の凹部270a,292a,294aに複数の凹部270a,292a,294aに区画されている。
これらの各凹部270a,292a,294aの開放面は、フィルム130によって気密に塞がれて、インクを収容するインク収容部270,292,294を形成する。
【0021】
更に詳述すると、フィルム130は、収容室本体120よりも融点の低い透明又は半透明の樹脂製フィルムで、凹部270a,292a,294aを区画している隔壁又はリブに融着されることで、各インク収容部270,292,294を画成している。
なお、フィルム130の融着処理の前に、凹部270a,294aには、収容したインクを撹拌するための撹拌移動体711が投入される。
【0022】
蓋体140は、さらにフィルム130の外側を非密閉状態で被覆するように収容室本体120に固定される。また、この蓋体140が、インク収容室4と隣接したインク収容室6の収容室本体と一体成形されていても良い。
【0023】
収容室本体120は、インクを収容するインク収容部111(図8参照)と、インク収容部111からインク供給部160までのインク流路部と、インク収容部111を大気に連通させるインク側通路、大気弁収容部、及び大気側通路からなる大気連通部とを備え、例えばポリプロピレン(PP)により一体成形されている。
【0024】
インク収容室4はさらに、インク供給制御手段150と、インク供給部160と、記憶手段170と、係合レバー180とを有する。
インク供給部160は、収容室本体120の下面に配され、インク収容室4が装着されるキャリッジに形成されたインク供給針が挿入されて、インク収容部111に収容されたインクをインクジェット式記録装置の記録ヘッドへ供給する。
【0025】
図5及び図6に示すように、記憶手段170は、取付部190に加締められ、この取付
部190は、収容室本体120の側面の下方に加締められて取り付けられる。
また、記憶手段170は、インク収容室4の種類の情報、インク収容室4が保持するインクの色の情報、及び、インクの現存量等の情報を記憶し、表面に露出した複数の端子171により装置本体との間でこれらの情報を受け渡す。係合レバー180は、収容室本体120における取付部190と対向する側面の上部に形成され、インクジェット式記録装置のキャリッジと係合する。取り付け部190の側面は、キャリッジに形成された図示しないリブにより規制されて、上記端子171とキャリッジ側の弾性接点とが確実に当接するように構成されている。
【0026】
インク供給制御手段150は、インクの消費に伴って発生するインク収容部111とインク供給部160との圧力差により、インク収容部111のインクをインク供給部160へ供給する差圧弁から構成されている。インク供給制御手段150は、弾性変形可能であって、収容室本体120の凹部495に挿入される弁部材の一例である膜弁900と、凹部495を覆う弁蓋151と、膜弁900及び弁蓋151の間に配される付勢部材の一例としてのコイルバネ907とを有する。
【0027】
インク収容部111は、図8に示したように水平方向に延びる隔壁272により、上部と下部とに大きく分割され、この隔壁272の下部には連通孔242により大気と連通可能な大気側収容部270が、また上部には大気から遮断された2つの第1インク収容部292及び第2インク収容部294からなる供給側収容部290が形成されている。
【0028】
供給側収容部290は、隔壁272の近傍(下部領域)に連絡流路(連通部)276を有する鉛直な隔壁271により、第1、及び第2インク収容部292、294の2つに分割され、また第2インク収容部294に周りを囲まれるように配された流路部296が形成されている。
流路部296は下部の連絡流路278を介して、第2インク収容部294と接続されるとともに、通路298及び通孔918を介してインク供給制御手段150に接続されている。
【0029】
隔壁271は、隔壁272との間に下連絡流路276及び上面との間に上連絡流路277を有する。上連絡流路277の流路抵抗は、下連絡流路276の流路抵抗よりも小さい。
【0030】
また、第2インク収容部294には、短尺で鉛直な隔壁288が設けられ、隔壁288と隔壁272との間が流路279となっている。
また、インク供給制御手段150の下流側は、インク供給制御手段150と連通する通孔910、通孔910と連通する流路321、流路321の一端に形成され、表面側に向けて形成された通孔323、及び、通孔323と一端が連通した連通部304を介して、インク供給部160と連通するよう構成されている。
【0031】
大気側収容部270と第1インク収容部292とは垂直方向に延びる連絡流路295及び大気側収容部270の底面を貫通する連通部162(図3参照)を介して連通されている。従って、インク供給部160からインクが消費されると、それに対応して大気側収容部270のインクが第1インク収容部292に吸い上げられ、ここから第2インク収容部294、流路部296等を介してインク供給制御手段150に流れ込むように構成されている。
【0032】
インク収容部111の大気側収容部270からインク供給制御手段150へは、連絡流路274、連通部162、連通孔163、連絡流路295、連絡流路276,278、流路部296、通路298、及び通孔918をこの順に通ってインクが流れ込む。
【0033】
大気弁連通部624を境として大気と連通する側である大気側通路は、図7に示す開口212、蛇行した通路214、フィルタ収容部216、連通孔218及び、図8に示す連通部222、連通部222の側面に形成された通孔652b、及び押圧部材収容室652により構成されている。
【0034】
詳細には、図7に示すように、収容室本体120の表側に形成された迷路状に蛇行した1本の通路214の一端は開口212として大気に開放され、他端は撥インク性と通気性の機能を備えたフィルタ215(図5、図6)が収容されたフィルタ収容部216に接続されている。
フィルタ収容部216は、収容室本体120の表側から裏側に貫通する連通孔218と連通する。連通孔218は、収容室本体120の裏側において連通部222、及び連通部222の側面に形成された通孔652bを介して押圧部材収容室652と接続している。通路214の途中には、凹部からなるチャンバ930が設けられている。
【0035】
一方、図8に示すように大気弁連通部624を境としたインク側通路は、大気弁室669、連通孔238、連通溝240、及び連通孔242で形成されてインク収容部111の大気側収容部270と連通する。
【0036】
収容室本体120の裏側から表側に貫通する連通孔238は、連通孔238と連通する連通溝240、連通溝240と連通すると共に収容室本体120の表側から裏側に貫通する連通孔242を介して大気側収容部270と連通する。
【0037】
これらの大気側収容部270、供給側収容部290、大気弁室669、及び大気側通路、インク側通路は、それぞれを区画する隔壁にインク側通路は、それぞれを区画する隔壁にインク側通路は、それぞれを区画する隔壁にフィルム130、110を熱溶着などの方法で貼着することにより大気と隔離された領域となる。
【0038】
インク供給部160は、キャリッジに設けられたインク供給針が挿入される挿入口26を有するエラストマ等から形成されたシール部材12と、シール部材12の挿入口26を塞ぐ供給弁13と、供給弁13をシール部材12に向けて付勢するコイルスプリング等からなる付勢部材14とを有する。なお、シール部材12の挿入口26には、工場出荷時において、フィルム604が貼り付けられている。
【0039】
インク収容室4がインクジェット式記録装置のキャリッジに装着されると、キャリッジに設けられた凸部がフィルム480及び大気弁押圧部材654を介して大気弁650を上方に押し上げるとともに、キャリッジのインク供給針がインク供給部160の供給弁13を上方に押し上げる。
この結果、大気弁連通部624は、大気弁室669から連通孔242までの大気流路を大気と連通する。また、インク供給部160における供給弁13より上流は、インク供給針と連通する。
【0040】
連通孔242が大気と連通している状態において、インクジェット式記録装置が記録を始めると、インク供給部160からインク供給針を通して記録ヘッドへインクが供給される。インク供給部160からインクが供給されると、インク収容部111において図8に示す矢印a、通孔918の順に流れたインクが、インク供給制御手段150を経由して、図7に示す矢印b、c、d、eの順に流れて、インク供給部160に流れ込み、インク供給部160に挿入されたインク供給針にインクが供給される。
【0041】
このインクの流れにあわせてインク収容部111においては、大気側収容部270のイ
ンクが供給側収容部290に供給される。大気側収容部270のインクの消費に伴って、空気が図8における矢印f、gの経路を順に通って、連通孔242から大気側収容部270へ流入する。インク供給部160から記録ヘッドへインクが供給されて大気側収容部270の液面が下がるが、大気側収容部270と供給側収容部290とを接続する流路は、大気側収容部270の最も下部に連通口があるので、大気側収容部270の全てのインクが供給側収容部290へ移動するまで、供給側収容部290には空気が流入しない。
【0042】
大気側収容部270のインクがすべて消費された後に、供給側収容部290の第1インク収容部292及び第2インク収容部294のインクがこの順に消費される。この間、供給側収容部290と大気側収容部270とを連通する連通部162に形成されるインクのメニスカスによる表面張力により、供給側収容部290のインクが大気側収容部270に逆流することが防止される。
【0043】
第1インク収容部292のインクが消費され始めると、第1インク収容部292に空気が流入する。これにより、第1インク収容部292の液面が下がるが、第1インク収容部292と第2インク収容部294とは、下部のみが連絡流路276により連通しているので、まず、第1インク収容部292のインクが消費される。第1インク収容部292のインクが消費されて、液面が連絡流路276に到達すると、第2インク収容部294のインクが消費されるのにあわせて、空気は第2インク収容部294にも流入する。第2のインク収容部のインクが消費される間、連絡流路276にインクのメニスカスによる表面張力が生じるため、第2インク収容部294のインクが第1インク収容部292に逆流することが防止される。
【0044】
上述したように、大気側収容部270、第1インク収容部292及び第2インク収容部294のインクはこの順に消費されるが、インクの液面がいずれの収容部にあっても、インクは、インク収容部111を上下に略二分する隔壁272の近傍に配された連通部278から通路298を経由して通孔918を通ってインク供給部160へ供給される。
【0045】
図10は、図8の部分拡大斜視図である。大気側収容部270において、連通孔163(図3参照)が配された連絡流路274の上を区画している供給側隔壁272aは、大気側収容部270における他の隔壁272よりも装備位置が低くなっている。また、大気側収容部270は、連絡流路274の近傍において大気側収容部270の底面から鉛直上方に延伸する第1鉛直隔壁部510、及び、この第1鉛直隔壁部510に平行な第2鉛直隔壁部530を有する。
【0046】
第1鉛直隔壁部510は、下端において第1鉛直隔壁部510を貫通して大気側収容部270の底面との間で液体が流れる下連絡流路512を有する。下連絡流路512は、第1鉛直隔壁部510を切り欠いた切り欠きである。第1鉛直隔壁部510は、さらに下連絡流路512よりも上方にあって第1鉛直隔壁部510を貫通し、下連絡流路512よりも小さい流路抵抗でインクが流れる上連絡流路514を有する。
【0047】
図10に示す実施形態において、上連絡流路514は下連絡流路512よりも大きく切り欠かれた切り欠きである。これにより、上連絡流路514の流路抵抗は下連絡流路512の流路抵抗よりも小さくなっている。
さらに、上連絡流路514は、下連絡流路512との間に下壁部513を挟んで供給側隔壁272aよりも上方に配されている。第1鉛直隔壁部510は、さらに、上連絡流路514との間に上壁部515を挟んで、下連絡流路512よりも小さい流路抵抗でインクが流れる第2上連絡流路516を有する。図10に示す実施形態において、第2上連絡流路516は、隔壁272と第1鉛直隔壁部510の上端との間に生じる間隙である。
なお、第2鉛直隔壁部530は第1鉛直隔壁部510と同一の構成を有するため、説明
を省略する。
【0048】
さらに、第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530は、図3に示す通路214の裏面に配されている。よって、通路214に図4に示すフィルム110を貼り付ける場合に、通路214が設けられた収容室本体120の側面が凹んでフィルム110が貼りにくくなる「逃げ」を防ぐことができる。
【0049】
また、図8に示すように供給側収容部290の第1インク収容部292は、上下方向について傾斜している傾斜壁部550を有する。傾斜壁部550は、上下方向に延伸している連絡流路295の上方に配される。
【0050】
図11はインク収容室4の正面図であり、大気側収容部270にインクが充填されている状態を示す。本実施の形態の場合、図11に示すように、一番基端の液体収容部である大気側収容部270と、インク供給制御手段150の直前の液体収容部である第2インク収容部294のそれぞれに、収容されたインクより比重が大きい撹拌移動体711が配置され、大気側収容部270には、浮遊体712が配置されている。
撹拌移動体711は、球形の金属製ボールで、キャリッジによるインク収容室4の移動動作時に受ける慣性によって収容部内を転動して、それぞれの収容部内に貯留しているインクを撹拌する。また、浮遊体712は、インクよりも比重が小さいまたは内部に空洞を有する中空体であり、インクに対して浮遊する。撹拌移動体711、浮遊体712の外形は、球形に限らず、例えば、円柱形、又は円筒形等としても良い。また、撹拌移動体711、浮遊体712を構成する材質も金属に限られず、ナイロン、ポリアセタール(POM)、フッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のプラスチックや、ガラス、セラミックス(例えば、Al2O3、ZrO2)、ゴム等を用いることができる。
【0051】
大気側収容部270内には、第1鉛直隔壁部510と第2鉛直隔壁部530との間の区間、及び第2鉛直隔壁部530を挟んで第1鉛直隔壁部510とは逆側の区間に、それぞれ撹拌移動体711、浮遊体712が配置されている。また、第2インク収容部294の場合は、流路279を有した隔壁288と連絡流路278との間の区間に撹拌移動体711が装備されている。
【0052】
各収容部に装備した撹拌移動体711は、連絡流路を有した隔壁側に転動した場合に、その隔壁の底部側に開口している連絡流路(例えば、連絡流路278,279、下連絡流路512,532)に接近する。その場合に、それらの連絡流路に最接近した時でも、その連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体711との間に、それらの連絡流路の断面積(開口面積)よりも大きな断面積の流路が確保されるように、連絡流路の開口に対して、前記撹拌移動体711の外径を所定以上の大きさに規制している。
【0053】
以上の構成において、大気側収容部270及び供給側収容部290には顔料インクが収容されている場合の、インクの供給動作について説明する。図3及び図8に示すように、大気側収容部270のインクをなるべく使い切るべく、連通部162は、大気側収容部270の底面を貫通して配され、連通部162を通過したインクを供給側収容部290に供給する。
【0054】
通常、顔料インクの色材である顔料は、溶媒中に分散した分散粒子であるため長期間放置した場合にはこの分散粒子が沈降し、特に連通部162が配された連絡流路274付近には顔料の濃度が高くなった濃いインクが溜まりやすい。
【0055】
しかし、本実施の形態においては、大気側収容部270及び第2インク収容部294に装備した撹拌移動体711が、これらの収容部内に貯留しているインクの撹拌を行って、インク中の色材の沈降自体を抑止することができるので、連絡流路274付近に顔料の濃度が高いインクが溜まる現象を防止できる。更に、本実施例においては一つの隔壁(第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530)に上下に分けて分散配置された連絡流路が
インク供給時に撹拌を促進させる上下方向の流動を起こすことができ、双方の撹拌作用の相乗で、活発な撹拌が行われ、インク供給部160に供給するインクに濃度のばらつきが生じにくい。つまり、連絡流路274付近の濃いインクがそのまま連通部162から流れ出た後に、その上方にあった濃度の薄いインクが流れ出るといったことが防止でき、外部へ供給されるインクの濃さが不均一になることが防止できる。
また、前記撹拌移動体711の外径を、連絡流路の開口に対して所定以上の大きさに規制しているので、大気側収容部270及び第2インク収容部294に装備した撹拌移動体711は、連絡流路を塞ぐことがなく、インクの供給不良を招くことがない。従って、濃度のばらつきがない高品位なインク供給を維持できる。
【0056】
次に、撹拌移動体711の撹拌動作について説明する。
本実施の形態のインク収容室4によれば、大気側収容部270や第2インク収容部294内に装備されている撹拌移動体711がそれぞれのインク収容部内を移動した場合に、前記撹拌移動体711が隔壁530,510,288等に貫通形成された連絡流路532,512,279,278に最接近した時でも、これらの連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体711との間には、連絡流路の断面積よりも大きな断面積の流路が確保される。
従って、撹拌移動体711が、これらの連絡流路532,512,278を塞いでこれらの連絡流路532,512,278におけるインクの流通を妨げることがなく、インク収容部270,294内の上下に分散する濃度差を持った液体を撹拌移動体711によって再混合して均一濃度の液体を連絡流路から安定供給することができ、インクジェット式記録装置におけるインクカートリッジとして使用された場合であれば、記録するインク濃度に濃淡のばらつきが生じない高品位な安定した記録が可能になる。
【0057】
次に、インクの残量変化に対する攪拌移動体711と浮遊体712の動作について説明する。
インク収容室4にインクが充分に充填されている場合には、攪拌移動体に対するインクの抵抗が大きいため大気側インク収容部270、供給側インク収容部294内での攪拌移動体の移動速度は小さい。そのため、インク収容部内壁に対する撹拌移動体711の衝突速度が小さく、攪拌移動体711がインク収容部内壁に衝突したときの衝突音も小さくなるため、ユーザーの耳にはこの衝突音がほとんど聞こえない。しかし、大気側収容部270のインクが供給側収容部290に供給されることによって大気側収容部の液面が低下すると、攪拌移動体に対するインクの抵抗が小さくなるため、攪拌移動体の移動速度が速くなりインク収容部内壁との衝突音も大きくなる。しかしながら、本実施形態では、図12、図13に示すように、インクの液面が低下すると、大気側収容部270に配置された浮遊体712がインクに沈んでいる攪拌移動体711と同レベルに位置するようになり、攪拌移動体711の移動が制限される。これにより、攪拌移動体711の移動可能スペースが減少するため、攪拌移動体711がインク収容部内壁に衝突しにくくなり、また衝突する場合であってもインク収容部内壁に対する攪拌移動体711の衝突速度が低下し、インク収容部内壁との衝突音が浮遊体712がない場合よりも小さくなる。このように、本実施形態では、浮遊体712を用いて、攪拌移動体711による不快な衝突音を発生させにくくしている。
【0058】
ここで、浮遊体712は、攪拌移動体711よりも軟らかい素材からなることが好ましい。浮遊体712が攪拌移動体711よりも軟らかい素材によって構成されていれば、浮遊体712が攪拌移動体711に衝突したときに浮遊体712が外表面が変形することにより衝突エネルギーを吸収することにより衝突速度を減少させることができる。また、浮遊体712が攪拌移動体711よりも軟らかい素材によって構成されていれば、浮遊体712自身がインク収容部内壁に衝突したときの衝突音を大きくさせないように構成することも可能である。
【0059】
次に、一つの隔壁上に、上下に離間させて2つ以上の連絡流路を設けると共に、上部の連絡流路は下部の連絡流路よりも流路抵抗を小さく設定したことによる撹拌動作について説明する。
本実施の形態では、下連絡流路512、上連絡流路514、及び、第2上連絡流路516を有する第1鉛直隔壁部510を設けたので、連通孔163からインクが流れ出ることによりさらにインクが連通孔163へ引っ張られる場合に、上連絡流路514、第2上連絡流路516を通って流れる薄いインクの流量が多くなる。よって、薄いインクの流れ(図中の矢印i、j)が濃いインクの流れ(図中の矢印h)よりも大きくなり、濃いインクのみならず、薄いインクも連通孔163へ流れ込むことができる。
また、流れの大きさの差により、連絡流路274と第1鉛直隔壁部510とで区切られる空間において、上下のインクの流れができ、濃いインクと薄いインク、特に上連絡流路514付近よりもさらに上方の薄いインクも巻き込んで攪拌することができる。
【0060】
特に、上連絡流路514が連通孔163と対向する供給側隔壁272aよりも上方に配されているので、低い272aで仕切られた上方の供給側収容部290へインクを容易に供給することができると共に、連絡流路274付近に溜まりやすい濃いインクよりも上方にある薄いインクを連絡流路274へ向けて流すことができる。また、第2上連絡流路516が大気側収容部270の隔壁272との間に配されているので、大気側収容部270のインク量が多くて濃度の差が大きくなった場合でも、上方の薄い液体を連通孔163へ向けて流し、下方の濃いインクと確実に混ぜて供給側収容部290に供給することができる。
【0061】
また、下連絡流路512は、第1鉛直隔壁部510の下端に設けられているので、第1鉛直隔壁部510によりインクがせき止められることなく、大気側収容部270のインクをほぼ使い切ることができる。さらに、第1鉛直隔壁部510と平行に、下連絡流路532、534、及び、第2上連絡流路536を有する第2鉛直隔壁部530を設けたので、連絡流路274付近において、濃いインクと薄いインクを確実に混ぜることができる。
【0062】
また、連通部162を介して大気側収容部270からのインクが流れ込む連絡流路295の上方には、傾斜壁部550が設けられている。よって、大気側収容部270から供給側収容部290へのインクの流れを傾斜壁部550で受けて、流れの向きを変えることにより、第1インク収容部292に収容されているインクを攪拌し、第1インク収容部292における濃い液体と薄い液体を混ぜることができる。
また、連絡流路276を有する鉛直な隔壁271及び連通部279を有する鉛直な隔壁288のような下連絡流路が小さい壁が複数あることにより、より下方の濃いインクと確実に混ぜて供給側収容部290に供給することができる。
【0063】
なお、図8から図10に示す実施形態において、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530における上連絡流路514と上連絡流路534は、互いに同じ上下位置に配されている。しかしながら、上下位置の配置はこれに限られず、上連絡流路514と上連絡流路534とは、互いに異なった上下位置に設けられていてもよい。同様に、第2上連絡流路516と第2上連絡流路536も、互いに異なった上下位置に設けられてもよい。これにより、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530で挟まれた領域において薄いインクの上下方向の流れを作り、濃いインクと薄いインクを確実に攪拌することができる。
【0064】
また、図8から図10に示す実施形態において、一対の第1鉛直隔壁部510及び第2鉛直隔壁部530は鉛直に設けられているが、これに限られず、一対の壁部の両方または一方が鉛直方向に対して傾いていてもよい。
【0065】
このように、本実施形態のインク収容室4は、大気側収容部270における連通部162付近において、浮上している薄いインクの流量を大きくすることにより、沈降している濃い液体と浮上している薄い液体とが混ぜられて連通部162から供給側収容部290へ供給される。よって、外部へ供給されるインクの濃さのばらつきを抑えることができる。
【0066】
また、本実施形態のインクカートリッジ1(図1参照)において、各インク収容室2,4,6,8には、それぞれ異なる色(種類)のインクが収容されており、色毎にインクの沈降率が異なっている。そこで、各インク収容室2,4,6,8に収容された攪拌移動体711の比重を、インクの沈降率に合わせてそれぞれ異ならせている。
【0067】
例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクについて、各インクの沈降率の大小が「イエロー>マゼンタ>シアン>ブラック」の関係である場合には、攪拌移動体711の比重の大小を「イエロー用攪拌移動体>マゼンタ用攪拌移動体>シアン用攪拌移動体>ブラック用攪拌移動体」の関係とする。そして、インクカートリッジ1において、インク収容室2にブラックのインク、インク収容室4にシアンのインク、インク収容室6にマゼンタのインク、インク収容室8にイエローのインクが収容されている場合には、各攪拌移動体711の比重を「インク収容室8の攪拌移動体711>インク収容室6の攪拌移動体711>インク収容室4の攪拌移動体711>インク収容室2の攪拌移動体711」の関係となるようにしている。
【0068】
このように、インク毎の沈降率に合わせてそれぞれの攪拌移動体711の比重を設定しておくことで、各インク収容室2,4,6,8内において攪拌移動体711の転動性が良好となり、全てのインク収容室2,4,6,8内で同等の攪拌作用を得ることができる。さらに、各インクに合わせて攪拌移動体711の比重を最適化することで、各インクに対して特に良好な攪拌作用を得ることができる。また、比重とともに攪拌移動体711の大きさも攪拌作用を考慮して設定すると良い。なお、攪拌移動体711の比重は、ある程度大きい方が転動しやすくなって攪拌作用が向上するが、その場合インクカートリッジ1全体としての重量が大きくなってしまうため、インクカートリッジ1を搭載したキャリッジの往復移動の制御に不具合を発生させない程度の比重と大きさを設定することが望ましい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のインクカートリッジ1によれば、インク収容室の構成によりインクの攪拌性能が良好であるだけでなく、インク収容部内に攪拌移動体711を設けて液体噴射ヘッドの往復移動によってインクを積極的に攪拌するようにし、さらにそれぞれのインクの沈降率に合わせてインク収容室毎に攪拌移動体711の比重を設定しているため、非常に良好なインクの攪拌作用を各インク収容室に対して同等に得ることができ、全ての色のインクについて常に均一な濃度を維持することができる。また、インク収容室に浮遊体を配置することによって、インクの残量低下に伴って発生する攪拌移動体とインク収容部内壁との衝突音を低減させることができる。したがって、本実施形態のインクカートリッジ1をインクジェット式記録装置の液体噴射ヘッドに搭載すれば、常に所望の色相が得られるようになり、優れたカラー印刷を行うことができる。さらに、インクインク残量低下後も外部に不快な音を伝達させることなくユーザーに故障音等と誤解される虞がなくなる。
【0070】
なお、本発明の液体収容体において、液体収容部に装備する撹拌移動体及び浮遊体の外形は、上記実施の形態に示した球形に限らない。例えば、円柱形、又は円筒形等も有効である。撹拌移動体の外形が円柱形、又は円筒形の場合には、撹拌移動体が連絡流路に最接近した時でも、連絡流路の周囲の隔壁と撹拌移動体との間に、所定以上の断面積の流路を確保するための具体的手段として、上記実施の形態と同様に、撹拌移動体の外形を所定以上に大きく設定するという方法が有効である。
【0071】
上述の実施形態の例においては、液体噴射ヘッドを搭載したキャリッジに着脱可能なインクカートリッジを例にとって説明したが、メインタンクを記録装置本体に固定し、このメインタンクとキャリッジ上に搭載したサブタンクとがチューブにより接続され、更にサブタンクのインクをヘッドに供給可能に構成された装置において、サブタンクを本願発明の構成とすることも可能であり、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る液体収容体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したインクカートリッジのうち、一つのインク収容室のみを示す斜視図である。
【図3】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の背面斜視図である。
【図4】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられた後の背面斜視図である。
【図5】図2に示したインク収容室の正面側の分解斜視図である。
【図6】図2に示したインク収容室の背面側の分解斜視図である。
【図7】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の背面図である。
【図8】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられる前の正面図である。
【図9】図2に示したインク収容室のフィルムが貼り付けられた後の正面図である。
【図10】図8の要部の拡大斜視図である。
【図11】図2に示したインク収容室にインクを充填した後の正面図である。
【図12】図2に示したインク収容室のインク残量を表した要部の正面図である。
【図13】図11、図12の上面図である。
【符号の説明】
【0073】
1:インクカートリッジ(液体収容体)、2,4,6,8:インク収容室(液体収容室)、110:フィルム、111:インク収容部、120:収容室本体、120a:表面、122:開口部、130:フィルム、132:フィルム、140:蓋体、150:インク供給制御手段、162:連通部、163:連通孔、214:通路、270:大気側収容部、270a:凹部、272:隔壁、272a:供給側隔壁、274:連絡流路、290:供給側収容部、292:第1インク収容部、292a:凹部、294:第2インク収容部、294a:凹部、510:第1鉛直隔壁部、512:下連絡流路、513:下壁部、514:上連絡流路、515:上壁部、516:第2上連絡流路、530:第1鉛直隔壁部、530a:表面、532:下連絡流路、533:下壁部、534:上連絡流路、535:上壁部、536:第2上連絡流路、550:傾斜壁部、624:大気弁連通部、650:大気弁、652:押圧部材収容室、654:大気弁押圧部材、656:コイルバネ、669:大気弁室、711:撹拌移動体、712:浮遊体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容する液体収容室を備えた液体収容体であって、
前記液体収容室には、前記液体に沈降する攪拌移動体と、前記液体に浮く少なくとも一つの浮遊体とが収容されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項2】
前記浮遊体は、前記液体よりも比重が小さい物質からなることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項3】
前記浮遊体は、内部に空洞を有する中空体であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体収容体であって、複数の液体収容体を有する液体収容体。
【請求項1】
液体を収容する液体収容室を備えた液体収容体であって、
前記液体収容室には、前記液体に沈降する攪拌移動体と、前記液体に浮く少なくとも一つの浮遊体とが収容されていることを特徴とする液体収容体。
【請求項2】
前記浮遊体は、前記液体よりも比重が小さい物質からなることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項3】
前記浮遊体は、内部に空洞を有する中空体であることを特徴とする請求項1に記載の液体収容体。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液体収容体であって、複数の液体収容体を有する液体収容体。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【公開番号】特開2006−69129(P2006−69129A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−257762(P2004−257762)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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