説明

液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置

【課題】確実にノズル板の延長部分をヘッド外郭部材に接合でき、液室部品の接着剥離の問題も生じないようにすることができる液体吐出ヘッドの提供。
【解決手段】ノズル板3は、ノズル列方向及びノズル列と直交する方向に、流路板1の幅よりも伸びた延長部101を有し、延長部101が流路板1より伸びた部分でフレーム部材側に折り曲げられてフレーム部材に接合されており、折り曲げ後に流路板1及び振動板部材2の側面に対向するノズル板3内側に凹部104が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及びその製造方法、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙(紙に限定するものではなく、OHPなどを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体あるいは記録媒体、記録紙、記録用紙などとも称される。)に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。また、「画像」とは平面的画像(2次元画像)に限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、例えば液滴を吐出させるためにインクを加圧する個別液室(圧力室)を、振動板部材、流路部材、ノズル板を積層接合し、振動板部材、流路部材、ノズル板の端部に、部品加工時にバリが発生するため、ノズル面のワイピング時にワイピングブレードを損傷させないためにノズルカバーを設けるものがある(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、ノズルカバーを設ける構成では、部品点数が多くなりコストが高くなる。また、用紙の搬送異常により用紙がノズルカバーに当たった場合には、ノズルカバーが変形或いは離脱してしまうおそれがある。さらに、ノズルカバーとノズル板との段差部にインクが堆積し、正常な印字ができなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、ノズル板を記録ヘッド幅より伸びた延長部分を設け、ノズル板の延長部分をヘッド外郭形状に合わせて折り曲げて記録ヘッドの側面に固定することにより、ノズル板、流路部材、振動板部材のバリが露出する端部をワイピング部材の接触する部分に露出させない構成としたものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−175667号公報
【特許文献2】特開2001−277513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に開示されているように、ノズル板を記録ヘッド幅より伸びた延長部分を設け、ノズル板の延長部分をヘッド外郭形状に合わせて折り曲げて記録ヘッドの側面に固定しようとする場合、例えば、図12に示すように、ノズル板501、流路部材502、振動板部材503からなる流路ユニット500を、内部に圧電アクチュエータを収容するフレーム部材505に接合してヘッドを構成し、ノズル板501に延長部分506を設け、ノズル板501の延長部分506をヘッド外郭形状に合わせて折り曲げて、フレーム部材505の側面に接着剤508で固定しようとした場合、ノズル板502や振動板部材503のバリ510が干渉し、折り曲げ後にノズル板延長部分506がヘッド(フレーム部材505)の側面に達さないことがある。
【0009】
このとき、ノズル板延長部分506を折り曲げて無理にヘッド側面に接着剤で固定した場合、図13に示すように、干渉したバリ510の変形が戻るスプリングバックの力によりノズル板501の端部が流路部材502から剥がれるなど、液室部品間の接着に剥離を生じさせ、インクの外部への漏洩や、チャネル間リークによる不吐出などの問題を発生させるおそれがあるという課題がある。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、確実にノズル板の延長部分をヘッド外郭部材に接合でき、液室部品の接着剥離の問題も生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液体を吐出するノズル列を有するノズル板と液体を加圧する圧力室を有する流路部材とを含んで構成される流路ユニットと、前記圧力室を加圧するエネルギーを発生するアクチュエータと、前記流路ユニットへの液体供給路が形成されるフレーム部材とを有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板は、前記ノズル列方向或いは前記ノズル列と直交する方向に、前記流路部材の幅よりも伸びた延長部を有し、
前記延長部が前記流路部材より伸びた部分で前記フレーム部材側に折り曲げられて前記フレーム部材に接合されており、
折り曲げ後に前記流路部材の側面の少なくとも一部に対向する前記ノズル板内側に凹部が形成されている
構成とした。
【0012】
ここで、前記ノズル板の折り曲げ部にも凹部を有する構成とできる。
【0013】
この場合、前記折り曲げ部の凹部は、前記流路部材の側面に対向する凹部よりも深さが深く形成されている構成とできる。
【0014】
また、前記ノズル板の凹部がハーフエッチングにより形成されている構成とできる。
【0015】
また、前記ノズル板の凹部がプレスによる潰しにより形成されている構成とできる。
【0016】
また、前記ノズル板の凹部がノズル板の曲げにより形成されている構成とできる。
【0017】
また、前記流路部材の側面に対向する凹部がハーフエッチング又は曲げにより形成され、前記折り曲げ部の凹部はプレスによる潰しにより形成されている構成とできる。
【0018】
また、前記アクチュエータは圧電素子と前記圧電素子を支持するベース部材とからなり、
前記流路ユニットは前記圧力室の壁面を形成する振動板部材を含み、
前記流路部材の側面に対向する凹部は前記振動板部材の側面に対向する位置まで達して形成されている構成とできる。
【0019】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、ノズル板は、ノズル列方向或いはノズル列と直交する方向に、流路部材の幅よりも伸びた延長部を有し、延長部が流路部材より伸びた部分でフレーム部材側に折り曲げられてフレーム部材に接合されており、折り曲げ後に流路部材の側面の少なくとも一部に対向するノズル板内側に凹部が形成されている構成としたので、ノズル板の延長部の折り曲げが容易になり、確実にノズル板の延長部をヘッドフレーム部材の外面に接合でき、液室部品の接着剥離の問題も発生せず、液体のリークなどを防止できる。
【0021】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、液体リークが発生するおそれがなく、安定した画像形成を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面説明図である。
【図3】図1のB−B線に沿う要部断面説明図である。
【図4】同ヘッドの部分断面説明図である。
【図5】同ノズル板の製造方法の第1例の説明に供する説明図である。
【図6】同ノズル板の製造方法の第2例の説明に供する説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの部分断面説明図である。
【図8】同ヘッドの製造方法の説明に供する説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの部分断面説明図である。
【図10】本発明に係る画像形成装置の一例を示す機構部の全体構成を説明する概略構成図である。
【図11】同機構部の要部平面説明図である。
【図12】従来の液体吐出ヘッドに説明に供する部分断面説明図である。
【図13】同じく同ヘッドの課題の説明に供する部分断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの外観斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向:図1のA−A線)に沿う断面説明図、図3は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向:図1のB−B線)に沿う要部断面説明図である。
【0024】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板で形成した流路板(流路部材、流路基板、液室基板などとも称される。)1と、この流路板1の下面に接合した振動板を形成する振動板部材2と、流路板1の上面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル4がそれぞれ連通する個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6と連通する連通部8を形成し、連通部8に振動板部材2に形成した供給口9を介して後述するフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。なお、流路板1、振動板部材2、ノズル3で流路ユニット11を構成している。
【0025】
流路板1は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、加圧液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。なお、流路板1は、例えば単結晶シリコン基板をエッチングして形成することなどもできる。
【0026】
振動板部材2は、第1層2Aと第2層2Bとで形成されて、第1層2Aで薄肉部を形成し、第1層2A及び第2層2Bで厚肉部を形成している。そして、この振動板部材2は、各液室6に対応してその壁面を形成する第1層2Aで形成された各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、この振動領域2aの中に、面外側(液室6と反対面側)に第1層2A及び第2層2Bの厚肉部で形成された島状凸部である第1凸部2bが設けられ、この第1凸部2bに振動領域2aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ100を配置している。
【0027】
この圧電アクチュエータ100は、ベース部材13上に接着剤接合した複数(ここでは2つとする)の積層型圧電部材12を有し、圧電部材12にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材12に対して所要数の圧電柱12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動圧電柱(駆動柱)12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動圧電柱(非駆動柱)12Bとして区別している。
【0028】
そして、駆動圧電柱12Aの上端面(接合面)を振動板部材2の第1凸部2bに接合している。また、非駆動圧電柱12Bの上端面は液室間隔壁6Aに対応する位置で振動板部材2の厚肉部である第2凸部2cに接合している。
【0029】
ここで、圧電部材12は、圧電層21と内部電極22A、22Bとを交互に積層したものであり、内部電極22A、22Bをそれぞれ端面、即ち圧電部材12の振動板部材2に略垂直な側面(積層方向に沿う面)に引き出して、この側面に形成された端面電極である個別外部電極23、共通外部電極24に接続し、外部電極23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。なお、共通外部電極24は非駆動領域に設けられた内部電極を通じて個別外部電極23側の端面であって、圧電部材12の端部に引出されている。
【0030】
また、圧電部材12には駆動圧電柱12Aに駆動信号を与えるための可撓性を有する給電部材(配線部材)としてのフレキシブル配線基板であるFPC15が接続されている。FPC15には、駆動圧電柱12Aに駆動波形を与えるドライバIC(駆動回路)16が搭載されている。
【0031】
ノズル板3は、後述するようにステンレスなどから形成している。このノズル板3には各液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面には撥水層を設けている。
【0032】
さらに、これらの圧電素子12、ベース部材13及びFPC15などで構成される圧電アクチュエータ100の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部からインクを供給するための供給口を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0033】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば押し打ち方式で駆動する場合には、図示しない制御部から記録する画像に応じて駆動用圧電柱12Aに20〜50Vの駆動パルス電圧を選択的に印加することによって、パルス電圧が印加された圧電柱12Aが変位して振動板部材2の振動領域2aをノズル板3方向に変形させ、液室6の容積変化によって液室6内の液体を加圧することで、ノズル板3のノズル4から液滴が吐出される。そして、液滴の吐出に伴って液室6内の圧力が低下し、このときの液流れの慣性によって液室6内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、圧電柱12Aへの電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板2が元の位置に戻って液室6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填され、次の駆動パルスの印加に応じて液滴がノズル4から吐出される。
【0034】
なお、液体吐出ヘッドは、上記の押し打ち以外にも、引き打ち方式(振動板2を引いた状態から開放して復元力で加圧する方式)、引き−押し打ち方式(振動板2を中間位置で保持しておき、この位置から引いた後、押出す方式)などの方式で駆動することもできる。
【0035】
次に、この液体吐出ヘッドにおけるノズル板3によるヘッドカバー部の構成について図4も参照して説明する。なお、図4は同ヘッドの部分断面説明図である。
ノズル板3には、複数のノズル4を配列したノズル列の方向及びノズル列と直交する方向に、流路板1の幅より伸びた延長部101を有しており、このノズル板3の延長部101が折り曲げ部103からフレーム部材17の外周面側に折り曲げられ、流路板1、振動板部材2の側面を経て、延長部101の一部がフレーム部材17に接着剤102にて接合されている。
【0036】
ここで、ノズル板3には、折り曲げ後に流路板1の側面の少なくとも一部に対向する部分の内側に凹部104が形成されている。
【0037】
このように構成したノズル板の作用について説明する。
まず、流路板1及び振動板部材2の外形はプレスやエッチングにより抜き取り製作すると、外形の一部にはバリ110が発生してしまう。この場合、流路板1及び振動板部材2の外形抜きを工夫することによりバリ量を減らすことはできるが、バリ110を完全になくすることは難しい。また、流路板1及び振動板部材2の生産初期でバリを完全に無くすことができたとしても、これらを大量に生産するためには外形抜きを連続して行わなければならず、連続加工していく中で外形抜きの金型が磨耗して型合せ部のクリアランスが増えていくため、やがてバリが発生し、バリが徐々に大きくなっていくことは避けられない。
【0038】
ここで、ノズル板3には折り曲げ後に流路板1の側面の少なくとも一部に対向する部分の内側に凹部104が形成されているので、ノズル板3の延長部101を折り曲げ部103から折り曲げたときに、流路板1及び振動板部材2の外周部に生じたバリ110とノズル板3の延長部101が干渉しなくなる。
【0039】
また、ノズル板3の折り曲げ部103の内側に凹部104を設けることにより、折り曲げ部103の肉厚が薄くなって折り曲げ易くなり、ノズル板3の中で凹部が弱い部分となり、折り曲げ時に凹部から曲がることとなる。
【0040】
これにより、ノズル板3を流路板1及び振動板2の側面に沿って容易に曲げることができ、フレーム部材17の外形に沿って折り曲げ、フレーム部材17の外周面に確実に接合することができ、ノズル板3に曲げによる余分な凹凸が生じることもなく、干渉したバリ110の変形が戻るスプリングバックの力を受けることがない。これによって、流路部品(流路板1、振動板部材2)間の接着剥離を生じることがなく、インクの外部への漏洩や、チャネル間リークによる不吐出などの問題を発生しない。
【0041】
このように、ノズル板には折り曲げ後に流路部材の側面の少なくとも一部に対向するノズル板内側に凹部が形成されている構成とすることで、流路部材の近傍での折り曲げが可能になり、ヘッドの小型化に寄与するとともに、ノズル板の延長部の折り曲げが容易になり、確実にノズル板の延長部をヘッドフレーム部材の外面に接合でき、液室部品の接着剥離の問題も発生せず、液体のリークなどを防止できる。
【0042】
次に、この第1実施形態におけるノズル板の製造方法の第1例について図5を参照して説明する。
まず、図5(a)に示すようにノズル板3の材料となる基板301を用意する。基板には微細なプレスを加工したときに残留応力による変形などが生じにくいSUS304−HTAなどの内部応力を極力除去したテンションアニール材料を使用することが好ましい。
【0043】
次いで、同図(b)に示すように、基板301に感光性樹脂302によるパターニングを行う。パターニングは、一般的な感光性樹脂に対する露光、現像により作成することができる。ここで感光性樹脂302は、液状レジストやドライフィルムレジスト(DFR)を用いることができる。
【0044】
その後、同図(c)に示すように、感光性樹脂302によりパターニングされた基板301をエッチング液に浸し、パターニングされた開口部302aからエッチング液が基板201を溶かすことにより基板301に凹部104をけいせいする。凹部104の深さは、エッチング液濃度、エッチング液温度、エッチング液に浸漬させる時間によりコントロールすることができる。そして、同図(d)に示すように、感光性樹脂302を除去することにより凹部104が形成された基板301を得ることができる。
【0045】
次いで、同図(e)に示すように、基板301に液体吐出のためのノズル4をパンチ303により開口することにより、同図(d)に示すようにノズル板3を完成する。
【0046】
なお、ノズル4の形成は凹部104の形成後に限らず、先にノズル4を形成後に凹部104を形成してもよい。
【0047】
次に、この第1実施形態におけるノズル板の製造方法の第2例について図6を参照して説明する。
まず、図6(a)に示すようにノズル板3の材料となる基板301を用意する。基板には微細なプレスを加工したときに残留応力による変形などが生じにくいSUS304−HTAなどの内部応力を極力除去したテンションアニール材料を使用することが好ましい。
【0048】
次に、同図(b)に示すように、凹部形状のパンチ305により、基板301が所定の厚さになるように潰しを入れるプレスを実施する。この潰しにより、同図(c)に示すように、基板301に凹部104が形成される。
【0049】
その後、前記第1例と同様に、パンチによりノズル4を形成してノズル板3を得る(同図(d)、(e))。
【0050】
この例でも、ノズル4と凹部104の形成の先後は逆でもよい。
【0051】
次に、本発明の第2実施形態について図7を参照して説明する。なお、図7は同実施形態に説明に供する部分断面説明図である。
ここでは、ノズル板3を延長部101との間で構造的に曲げて凹部104を形成している。
【0052】
このように構成しても前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
次に、この第2実施形態のノズル板3の製造方法について図8を参照して説明する。
まず、図8(a)に示すようにノズル板3の材料となる基板301を用意する。基板には微細なプレスを加工したときに残留応力による変形などが生じにくいSUS304−HTAなどの内部応力を極力除去したテンションアニール材料を使用することが好ましい。
【0054】
次に、同図(b)に示すように、製作したい凹部に応じたパンチ306、ダイ307を用意し、基板301をプレスすることにより、同図(c)に示すように凹部104が形成された基板301を形成する。
【0055】
その後、前記第1例と同様に、パンチによりノズル4を形成してノズル板3を得る(同図(d)、(e))。このように形成することで、ノズル板3の板厚が凹部104においてもほとんど変わらず、ヘッドの強度を維持できるので、凹部104の外側にジャム紙などが接触してもヘッドにダメージを与えることがない。
【0056】
この例でも、ノズル4と凹部104の形成の先後は逆でもよい。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態について図9を参照して説明する。なお、図9は同実施形態に説明に供する部分断面説明図である。
ここでは、ノズル板3の折り曲げ部103に対応する凹部104bを流路板1の側面に対向する凹部104aよりも深さを深く形成している。
【0058】
すなわち、流路板1の側面に対向する位置と折り曲げ部103は近接しており、単純な凹部構成であると、折り曲げ位置がずれて流路板1の側面に対向するはずの凹部位置で折れ曲がる場合がある。凹部を二段構成にすることで折り曲げ部の凹部で確実に折り曲げることが可能となり、流路板に対向する凹部の変形を防止できる。
【0059】
ここで、流路板1の側面に対向する凹部104aが前述したようにハーフエッチング又は曲げにより形成し、折り曲げ部103の凹部104bはプレスによる潰しにより形成することが好ましい。
【0060】
すなわち、流路板1の側面に対向する位置は、特に流路板1が複数層積層された構成である場合などには広い領域となり、プレスによる潰しでは部品の変形、反り等が大きくなるため、エッチングや曲げで形成することで変形防止に効果がある。一方、折り曲げ部は、折り曲げ位置を特定するため、深く細く形成することが好ましく、プレスによる潰しが適している。両方を併用することで、オリフィスプレートの形状、折り曲げ位置を安定して形成することができる。
【0061】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図10及び図11を参照して説明する。なお、図10は同装置の機構部の全体構成を説明する概略構成図、図12は同機構部の要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0062】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドと同ヘッドに供給するインクを収容するタンクを一体化した液体吐出ヘッドユニットからなる記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0063】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッドユニット234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したもので、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、1ヘッド当たり4ノズル列配置とし、1個のヘッドで4色の各色を吐出させることもできる。
【0064】
また、記録ヘッド234のタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0065】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0066】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0067】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0068】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0069】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0070】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0071】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0072】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0073】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0074】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0075】
このように、この画像形成装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えるので、液体リークが発生するおそれがなく、安定した画像形成を行なうことができる。
【0076】
なお、上記実施形態では本発明をシリアル型画像形成装置及びそれで使用する液体吐出ヘッドに適用した例で説明したが、これに限るものではなく、ライン型画像形成装置及びそれで使用する液体吐出ヘッドに適用することもできる。また、前述したように狭義のインク以外の液体や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 流路板
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
6 液室
10 共通液室
11 流路ユニット
17 フレーム部材
100 圧電アクチュエータ
101 延長部
103 折り曲げ部
104 凹部
110 バリ
233 キャリッジ
234a、234b 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル列を有するノズル板と液体を加圧する圧力室を有する流路部材とを含んで構成される流路ユニットと、前記圧力室を加圧するエネルギーを発生するアクチュエータと、前記流路ユニットへの液体供給路が形成されるフレーム部材とを有する液体吐出ヘッドにおいて、
前記ノズル板は、前記ノズル列方向或いは前記ノズル列と直交する方向に、前記流路部材の幅よりも伸びた延長部を有し、
前記延長部が前記流路部材より伸びた部分で前記フレーム部材側に折り曲げられて前記フレーム部材に接合されており、
折り曲げ後に前記流路部材の側面の少なくとも一部に対向する前記ノズル板内側に凹部が形成されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記ノズル板の折り曲げ部にも凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記折り曲げ部の凹部は、前記流路部材の側面に対向する凹部よりも深さが深く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記ノズル板の凹部がハーフエッチングにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記ノズル板の凹部がプレスによる潰しにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記ノズル板の凹部がノズル板の曲げにより形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記流路部材の側面に対向する凹部がハーフエッチング又は曲げにより形成され、前記折り曲げ部の凹部はプレスによる潰しにより形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記アクチュエータは圧電素子と前記圧電素子を支持するベース部材とからなり、
前記流路ユニットは前記圧力室の壁面を形成する振動板部材を含み、
前記流路部材の側面に対向する凹部は前記振動板部材の側面に対向する位置まで達して形成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1ないし9のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−61606(P2012−61606A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205104(P2010−205104)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】