説明

液体塗布装置及び液体塗布方法

【課題】画像上にガラスやフィルム等の保護部材を積層せず、画像の記録された記録媒体に対して液体を転写することによって生の画像の画質感を維持しつつ画像の耐性を高めることを可能とする液体塗布装置を提供すること。
【解決手段】インクによって画像の記録された記録物の記録面に対し、画像の耐性を高めるための液体を塗布する装置として、前記記録物と前記塗布装置の塗布部とが相対的に進行する方向に、前期液体を過剰に塗布する部分と余剰な液体を拭き取る一連の連続する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置によって記録された記録物の記録面に対して液体を転写する液体転写装置及び液体転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、紙に文字等のテキストを印字するばかりでなく、近年の小液滴化、多諧調化の技術開発により、写真調の記録も可能となった。同時に、デジタルカメラの普及もあり、テキストやデザインばかりでなく、写真調の記録物やグラフィックアーツについても、デイスプレイ同様の出力が可能となった今、適用分野が更に拡大している情況にある。その結果、その記録物の画像の保存性、高寿命化が課題となってきた。適切なメデイア(記録媒体)により、染料系のインクを用いた記録物では良好な発色が得られるが、耐久性、画像の保存性に劣る場合がある。
【0003】
一方、保存性は優れるが、発色や画像の耐擦過性に劣る場合があるのが、顔料系のインクで得られた記録物の現状である。
【0004】
その結果、画像の保存性を考えたとき、1つの対策は顔料による耐久性の高い記録を達成することであり、もう1つの対策は染料等の耐久性の低い色材を保護する方法である。保護の方法としては、ガラスで画像をカバーするものの他、造膜系の樹脂、例えば、アクリル系の保護膜や、シートを画像上にラミネートするものが知られている。
【0005】
しかしながら、ガラスでカバーしたり、樹脂でラミネートしたりする従来の保護方法は、画像を直接楽しむ画質感等を犠牲とし、いわばフィルム越し、ガラス越しに画像を見るもの、即ち、生の画像から離れてこれを観察する保護方法であった。
【0006】
一方、特許文献1に記載されるような記録物への水滴の付着による画像流れや、紫外線での画像劣化に対する処置を行った場合でも、更に長期に渡る実用レベル以上の耐久を達成することが要求されるようになってきた。例えば、染料系のインクで記録を行った記録物でも、記録媒体によっては、水との接触でも画像流れが生じることがなく、紫外線での耐久性試験においても10年レベルで劣化が起きないことが想定されるものが提供されつつある。
【0007】
【特許文献1】特開平9−048180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、壁等に画像を貼っておくと、防水性や紫外線に対する耐光性を付与した記録媒体を用いた場合でも、実際には、水分や空気中の微量成分ガス、例えばオゾン、窒素酸化物、イオウ酸化物等による劣化が生じる場合があることが判明してきた。
【0009】
本発明は、上記従来の技術のように、画像上にガラスやフィルム等の保護部材を積層せず、画像の記録された記録媒体に対して液体を転写することによって生の画像の画質感を維持しつつ画像の耐性を高めることを可能とする液体塗布装置及び液体塗布方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、インクによって画像の記録された記録物の記録面に対し、画像の耐性を高めるための液体を塗布する装置として、前記記録物と前記塗布装置の塗布部とが相対的に進行する方向に、前期液体を過剰に塗布する部分と余剰な液体を拭き取る一連の連続する工程を有することを特徴とする。
【0011】
又、本発明は、インクによって画像の記録された記録物の記録面に対し、画像の耐性を高めるための液体を塗布する方法として、
(1)印字
(2)排出/塗布工程への振り分け
(3)乾燥
(4)押し圧・緩和・押し圧・緩和・から成る塗布と浸透の繰り返し工程
(5)拭き取り
(6)排出
の一連の工程を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成を有する本発明によれば、インクによって画像の記録された記録物に対し、過不足のない適量の液量を塗布し得るようにしたため、インクジェット記録装置の大きな課題であった記録画像の耐性を、記録物上にガラスや樹脂等の光学的膜を形成することなく銀塩写真以上に高めることができ、インクジェット記録装置の優れた機能を生かした優れた画質のデジタル画像を安価に形成することが可能となる。
【0013】
又、適用し得る対象物としては、
・L版と呼ばれる写真サイズ(89mm・119mm)
・はがき(100mm・148mm)
・2Lサイズ(L版の2倍)(119mm・178mm)
・A4サイズ(210mm・297mm)
・A3サイズ(297mm×420mm)
・A3ノビ (329mm×483mm)
等の様々な大きさのメディア(記録媒体)を用いた記録物が挙げられ、こうした異なるサイズの記録物に対しても適量の液体を塗布することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、インクジェット記録装置によって記録された記録物に対し、過不足のない適量の液量を転写し得るようにしたため、インクジェット記録装置の大きな課題であった記録画像の耐性を、記録物上にガラスや樹脂等の光学的膜を形成することなく銀塩写真以上に高めることができ、インクジェット記録装置の優れた機能を生かした優れた画質のデジタル画像を安価に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
(記録物、記録媒体及び保護用液体の例)
先ず、図1及び図2に基づき本発明に適用する記録物及びこの記録物に塗布する保護用液体(以下単に液体とも言う)について説明する。
【0016】
本発明に係る保護処理が適用される(保護処理を受ける)記録物は、インク受容層としての多孔質層を有する記録媒体に色材を含むインクを付与して画像を形成したものである。本発明に係る保護処理には、記録物にシリコーンオイル類、脂肪酸エステル類等の液体を含浸させることで行われるので、記録媒体は液体の裏抜けが生じないものであること、例えば、支持体上に設けたインク受容層の多孔質構造を形成する微粒子に染料や顔料等の色材を少なくとも吸着させて記録を行う記録媒体を用いることが好ましい。このような構成の記録媒体は、記録にインクジェット法を利用する場合に特に好適である。
【0017】
更に、このようなインクジェット用の記録媒体としては支持体上のインク受容層に形成された空隙によりインクを吸収するいわゆる吸収タイプであることが好ましい。吸収タイプのインク受容層は、微粒子を主体とし、必要に応じて、バインダーやその他の添加剤を含有する多孔質層として構成することができる。
【0018】
微粒子の例としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、アルミナ或はアルミナ水和物等の酸化アルミニウム、珪藻土、
酸化チタン、ハイドロタルサイト、酸化亜鉛等の無機顔料や尿素ホルマリン樹脂、エチレン樹脂、スチレン樹脂等の有機顔料が挙げられ、これらの1種以上が使用される。
【0019】
バインダーとして好適に使用されているものには水溶性高分子やラテックスを挙げることができる。例えば、ポリビニルアルコール又はその変性体、澱粉又はその変性体、ゼラチン又はその変性体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロオイルメチルセルロース等のセルロース誘導体、SBRラテックス、NBRラテックス、メチルャクリレート−ブタジエン共重合体ラテックス、官能基変性重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体等のビニル系共重合体ラテックス、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸又はその共重合体、アクリル酸エステル共重合体等が使用される。これらは必要に応じて2種以上を組み合せて用いることができる。その他、添加剤を使用することもでき、例えば、必要に応じて分散剤、増粘剤、pH調整剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、離型剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が使用される。
【0020】
特に好適な記録媒体は、上述の微粒子として、平均粒子径が10μm以下、より好ましくは1μm以下の微粒子を主体としてインク受容層を形成したものが好ましい。上記の微粒子として、特に好ましいものは、例えばシリカ又は酸化アルミニウムの微粒子等が挙げられる。
【0021】
シリカ微粒子として好ましいものは、コロイダルシリカに代表されるシリカ微粒子である。コロイダルシリカ自体も市場より入手可能なものであるが、特に好ましいものとして、例えば特許第2803134号、同2881847号公報に掲載されたものを挙げることができる。
【0022】
酸化アルミニウム微粒子として好ましいものとしては、アルミナ水和物微粒子を挙げることができる。このようなアルミナ系顔料の1つとして下記一般式により表されるアルミナ水和物を好適なものとして挙げることができる。
【0023】
Al3−n (OH)2n・mH O …(1)
上記式において、nは1,2又は3の整数の何れかを表し、mは0〜10、好ましくは0〜5の値を表す。但し、mとnは同時には0にはならない。mH Oは、多くの場合mH O結晶格子の形成に関与しない脱離可能な水相をも表すものであるため、mは整数又整数でない値を取ることもできる。又、この種の材料を加熱するとmは0の値に達することがあり得る。アルミナ水和物は一般的には、米国特許第4242271号、米国特許第4202870号に記載されているようなアルミニウムアルコキシドの加水分解やアルミン酸ナトリウムの加水分解のような、又、特公昭57−44605号公報に記載されているアルミン酸ナトリウム等の水溶液に硫酸ナトリウム、塩化アルミニウム等の水溶液を加えて中和を行う方法等の公知の方法で製造されたものを使用したものが好適である。
【0024】
酸化アルミニウムやシリカの微粒子を多孔質層として用いるものに対し、特に保護用液体を適用することが効果的な理由としては以下の様に考えられる。
【0025】
即ち、酸化アルミニウム微粒子、シリカに吸着された色材は、NOX 、SOX 、オゾン等のガスによる色材の褪色が大きいことが分かったが、これらの粒子はガスを引き寄せ易く、色材の近傍にガスが存在することになり、色材が褪色し易くなるためと思われる。
【0026】
更に、これらのアルミナ水和物等の酸化アルミニウム微粒子や、シリカ微粒子を使用したインクジェット記録用媒体は、保護用液体との親和性、吸収性、定着性が優れる上、前述したような写真画質を実現するために必要とされる透明性、光沢、染料等、記録液中色材の定着性等の特性が得られることより、本発明に係る保護方法を適用するのには最も好適である。記録媒体の微粒子とバインダーの混合比は、重量比で、好ましくは1:1〜100:1の範囲にあることが好ましい。
【0027】
バインダーの量を上記範囲とすることで、インク受容層への保護用の液体の含浸に最適な細孔容積の維持が可能となる。酸化アルミニウム微粒子又はシリカ微粒子のインク受容層中の好ましい含有量としては、50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは、80重量%以上であり、99重量%以下であることが最も好適である。インク受容層の塗工量としては、画像堅牢性向上剤の含浸性を良好とするために乾燥固形分換算で10g/m 以上であることが好ましく、10〜30g/m が最も好適である。
【0028】
尚、記録媒体の支持体としては、特段の制限がなく、上記したような微粒子を含むインク受容層の形成が可能であって、且つ、インクジェットプリンタ等の搬送機構によって搬送可能な剛度を与えるものであれば、何れのものでも使用できる。そして、少なくともインク受容層が形成される側の面に、適度なサイジングを施した紙や、繊維状の支持体の上に例えば硫酸バリウム等の無機顔料等をバインダーと共に塗工して形成した緻密な多孔性の層(いわゆる、バライタ層)を表面を有するもの(例えば、バライタ紙等)は、支持体として特に好適に用いることができる。
【0029】
即ち、このような支持体を用いた場合、前述した堅牢性向上処理を施した記録物を、高温・高湿環境下に長時間放置したような場合であっても、記録物表面への向上化剤の染み出し等による表面のべたつき等が生じることを極めて有効に抑制でき、保管性においても極めて優れた記録物とすることができる。尚、記録媒体における表層に多孔質層を有している形態としては、上記の支持体上に多孔質のインク受容層を形成したものに限らず、アルマイト等も使用できる。
【0030】
本発明において用いられる記録物保護用の液体は、記録媒体の多孔質層に付与された色材を溶解せず定着画像に影響を与えないもので、且つ、不揮発性であって、多孔質層内の空隙がこれにより充填されることで色材が保護され、画像の耐久性等が向上する効果を有するものが利用される。又、画像の色調等に悪影響を与えず、且つ、多孔質層の空隙を埋めることで画像の品位を向上させる無色透明なものが汎用性に優れているが、場合によっては着色するものであっても良い。又、通常は保護用の液体は無臭である方が汎用性が高いと考えられるが、画像への影響がない範囲内であれば、例えば香料等の添加によって画像に合った香りを放つものでも良い。
【0031】
保護用の液体としては、例えば脂肪酸エステル、シリコーンオイル、変性シリコーン及びフッ素系オイルから選択された少なくとも1種を利用することができる。特に、記録媒体の細孔分布や細孔サイズに対して、拡散均一化するものが好ましく、記録されている基材の存在領域(二次元、三次元)を全体的に覆うものが良い。
【0032】
保護用液体は、塗布用具や塗布装置が保持でき、且つ、記録物の色材が定着している多孔質層内への適度な浸透性を有することが好ましく、例えば10〜400cp(センチポワーズ;0.01〜0.4Pa・s)程度の粘度を有するものが好ましい。このような粘度の液体を用いることで、転写直後の横方向1mm程度以下の小さな塗布量むらを、液体の流動による展性を用いて効果的に均一化することができる。
【0033】
このような保護用の液体を記録物に塗布した状態を図1に示した。
【0034】
図1において、M1,M2及びM3は、それぞれベースペーパー(支持体)、反射層及びインク受容層を表す。尚、図1(a)は液体が塗布される前の状態を、同図(b)は液体が塗布された直後において記録物の表面に転写された液体の過剰分が現れて光学的に認識できる状態を、同図(c)は2〜5分後にその過剰分がベースペーパーに吸収されて記録物の表面には過剰分が現れなくなっている状態をそれぞれ示している。
【0035】
図2は本発明に係る液体塗布装置によって適量の液体が記録物PMに転写される前後の状態を断面図にて示している。
【0036】
図2(a)に示すように、色材CM(ここでは染料)が受容層M3に浸透した状態の記録物PMに対し、同図(b)に示すように適量の液体Lが塗布された場合には、受容層全体に液体Lが均一に行き渡り、色材CMを確実に保持すると共に、液体が受容層M3の上面から余分に溢れ出さず、光学的にも確認し得ないようないような状態を保っている。
【0037】
このような液体の適量塗布を実現することにより、光学濃度(OD:Optical Density)が上がり、耐久性の改善が見られた。記録物の色材が定着した多孔質層へは、色材が定着している多孔質層内の空隙を充填するための必要量、或はその必要量よりやや多い液体量が付与される。
【0038】
但し、この記録物に付与される液体量が前述の必要量を大きく上回った場合には、その過剰な液体によって記録物の表面に層が形成される可能性があり、これによって画質の低下を招くこととなる。このため、記録媒体の表面に大量に液体が付与された場合には、これを記録物の表面から除去する作業が必要となるが、必要十分な液量が残るよう過不足なく液体の除去を行うことは困難であり、しかも、作業の中に液体が手に付着するといった煩わしさもあって、実際の液体除去作業はかなり面倒な作業となる。又、無駄な液体消費量が多くなるためランニングコストの増大を招く場合もある。
【0039】
ここで、実際に官製葉書1枚分の寸法形状を有するインク受容層を備えた記録媒体に対し、液体の塗布を行った結果を以下に示す。
【0040】
【表1】

本発明では、このような適量の液体を記録媒体に塗布することが可能な液体転写作業を以下の実施形態に示すような構成によって実現した。
【0041】
<実施の形態1>
本実施の形態における流体塗布装置は、前記記録物と前期塗布装置の塗布部とが相対的に進行する方向に、前期液体を過剰に塗布する部分と余剰な液体を拭き取る一連の連続する工程を有することを特徴とする液体塗布装置である。
【0042】
本実施の形態では、液体保持力(毛管力)の異なる複数の吸収体(ここでは、2つ)によって構成されている
本実施の形態について図3に部品の組み立て方、使用方法を、左側は、概略図で右側にはそれぞれ対応する断面図で示した。(a)は部品、(b)は組み立て後、(c)は全体の様子、(d)は液体の供給方法、(e)は塗布作業時の様子を示す。
【0043】
図3に示すように、把手を有する枠体31、密度の大きな吸収体32、密度の小さな吸収体33を嵌合により組み立て、塗布用具34を得た。
【0044】
保護液体の充填されたビン35から、受け皿、36に保護液体を供給する。
【0045】
その後、吸収体に十分な液体を吸収させ、38のように塗布をする。液体の流れの概略を矢印で断面図に示した。
【0046】
ここで均一に過剰になることなく塗布するには、塗布具とメディアが相対的に移動する時、その送り方向の先頭側に、突出した密度の低い吸収体の遅れた側に、密度の高い吸収体があると良い。
【0047】
ここではポリウレタン製の吸収体を用い、その送り方向の先頭側に、突出した密度の低い吸収体(密度を100kg/m )、その遅れた側に、密度の高い吸収体(密度を400kg/m )とした。
【0048】
その突出高さを5mmにして塗布したところ、柔らかい、密度の低い吸収体は潰され、硬い、密度の高い吸収体がメディアに当接するまで潰れることが分かった。
【0049】
このとき、送り方向の先側に、密度の低い吸収体がある場合、先ず、密度の低い吸収体によって塗布が行われ、次に密度の高い吸収体によって、吸収、掻き取られが起こり、適量の塗布が行われることが分かった。
【0050】
<実施の形態2>
実施の形態2における流体塗布装置は、実施の形態1の変形で密度の高い吸収体で密度の低い吸収体が取り囲まれて、塗布の方向性を選ばなくなった点が改良されている。
【0051】
概略を図4に示した。
【0052】
<実施の形態3>
実施の形態3における流体塗布装置は、更に発展させ、ロール形状で塗布部と拭き取り部を作用するように、やや柔らか目の吸収体を用いて、ローラの表面を押し込み、実施した例である。
【0053】
概略を図5に示した。
【0054】
<実施の形態4>
実施の形態1における流体塗布装置は、実施の形態3の変形で更に発展させ、ロールを複数個設け、塗布欠陥がリペアーされることを狙ったものである。
【0055】
概略を図6に示した。
【0056】
<実施の形態5>
実施の形態5における流体塗布装置は、実施の形態1〜4の変形で更に発展させ、液体貯蔵部を設けた、塗布用具である。
【0057】
概略を図7に示した。
【0058】
<実施の形態6>
実施の形態6における流体塗布装置は、実施の形態5の変形で更に発展させ、液体貯蔵部を交換タイプにしたものである。
【0059】
概略を図8に示した。
【0060】
<実施の形態7>
実施の形態7における流体塗布装置は、実施の形態3,4の変形で更に発展させ、ローラを用いた塗布を装置化、プリンタに組み込んだものである。
【0061】
図9にそのプロセスフローを示す。又、図10にそのプロセスの概略、紙mの送られ方、印字と塗布について断面図で概略を示したものである。
(液体転写後の記録物に対する試験)
実施の形態1における液体転写装置によって液体を転写した記録物に対し、以下のようにして画像濃度の測定試験と加速劣化試験とを行った。
【0062】
この試験において使用する記録物は、インクジェットプリンターとしてキヤノン(株)製950iを用い、疑ベイマイトを受容層に持つ記録媒体に写真調の画像を記録したものとなっている。使用する記録媒体は、ベースペーパー(支持体)の上に、反射層(BaSO4
によって厚さ約15μmに形成された層)と、約30μmの疑ベーマイト系のアルミナから成る受容層とを設けたものを用いた。この記録メディアに上記プリンター仕様の染料から成る色材を含むインクを用いて記録を行うと、アルミナを含む受容層に色材が吸着されて記録画像が形成され、これを記録物とした。この記録後の受容層には、液体を吸収し得る空隙が残存した状態となった。
【0063】
又、画像保護用の液体としては、油脂のうち、黄色みと匂いの元となる、不飽和分を除いた透明、無臭の脂肪酸エステル(日清製油製、サラコス6318R(商品名))を用い、これを上記液体転写装置によって前記記録物の画像の形成された面(記録面)全体に転写した。
【0064】
尚、各試験は以下の条件で行われた。
(1)画像濃度の測定試験
画像濃度は、マクベス社製反射型光度計RD−918(商品名)を用いて測定した画像の黒部分OD(Optical Density )として表した。
(2)加速劣化試験
スガ試験機株式会社製のオゾンウエザオメータ(商品名)を用いて、オゾン3ppmの雰囲気で2時間暴露処理した後の画像濃度値(OD値)を測定し、暴露前後でのODの変化率(ΔE={[暴露後OD−暴露前のOD]/[暴露前OD]}・100)を求めて耐光性を評価した。
(3)結果
本実施形態との比較を行うため、銀塩写真におけるΔEの値を計測したところ、その値は0.2程度であった。これに対し、本実施形態で得られたΔEの値は、0.2であった。従って、本実施形態の液体転写装置によって液体の転写された画像は、大気暴露で銀塩写真同等の耐久性を持つと推定される。これは、銀塩写真が2〜数十年の大気暴露で変色が始まるのに対して、この実施形態における液体転写装置によって保護処理した画像では、銀塩写真と同等程度の期間に亘って初期の画像品位を楽しむことが可能になることを表している。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、上記の保護処理により、ガラスやフィルムといった保護部材の存在なしに、生の画質を長期に亘って楽しむことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】保護用の液体が記録物に転写される前後の状態を示す断面図であり、(a)は液体が転写される前の状態を、(b)は液体が転写された直後の状態を、(c)は2〜5分後の状態をそれぞれ示している。
【図2】本発明の実施形態1における液体転写装置によって適量の液体が記録物PMに転写される前後の状態を示す拡大断面図であり、(a)は色材が受容層に浸透した状態の記録物を示し、(b)は適量の液体が転写され、受容層全体に液体が均一に行き渡った状態を示している。
【図3】本発明の実施の形態1における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は組み立て後、(c)は全体の様子、(d)は液体の供給方法、(e)は塗布作業時の様子、構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は組み立て後、(c)は全体の様子、(d)は液体の供給方法、(e)は塗布作業時の様子、構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は組み立て後に使用の様子、(c)は液体塗布時の液体の供給を様子を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態4における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は組み立て後に使用の様子、(c)は液体塗布時の液体の供給を様子を断面図で示す図である。
【図7】本発明の実施の形態5における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は液体供給、(c)は完成体、全体の様子、(d)は塗布時の液体の様子を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態6における液体塗布装置の(a)は部品、(b)は完成体の全体の様子、(c)塗布時の液体の様子を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態7における液体塗布装置のプロセスフローを示したものである。
【図10】本発明の実施の形態7における液体塗布装置のプロセスフローを示したものである。
【符号の説明】
【0067】
M 記録媒体
M1 ベースペーパー(支持体紙)
M2 反射層
M3 受容層
MP 記録物
CM 色材
L 画像保護用の液体
31 枠体
32 吸収体(密度大)
33 吸収体(密度小)
34 塗布用具
35 液体貯蔵ビン
36 塗布用具充填用受け皿
37 液体を充填する様子
38 液体塗布の様子
41 枠体
42 支持プレート
43 吸収体(密度小)
44 吸収体(密度大)
45 塗布用具
46 液体貯蔵ビン
47 塗布用具の液体充填用受け皿
48 液体を充填する様子
49 液体塗布の様子
51 枠体
52 塗布ローラ
53 塗布用具
54 吸収体1
55 吸収体2
56 芯材
57 軸
58 メディアの受溶層
59 メディアの基材
61 枠体
62 塗布ローラ
63 塗布用具
64 吸収体1
65 吸収体2
66 芯材
67 軸
68 メディアの受溶層
69 メディアの基材液体貯蔵ビン
71 枠体
72 中間支持プレート
73 枠体(下)
74 吸収体(密度小)
75 吸収体(密度大)
76 液体貯蔵ビン
77 塗布用具の中間部品
78 完成した塗布用具
79 液体塗布の様子
81 液体貯蔵ビン
82 枠体
83 中間支持プレート
84 枠体(下)
85 吸収体(密度小)
86 吸収体(密度大)
87 パッキング部材
88 メディア(受容層)
89 液体貯蔵ビン
101 ガイドローラ
102 塗布体ベルト
103 塗布体送り機構
104 拭き取りローラ
105 絞りローラ
106 塗布用液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクによって画像の記録された記録物の記録面に対し、画像の耐性を高めるための液体を塗布する装置であって、
前記記録物と前記塗布装置の塗布部とが相対的に進行する方向に、前期液体を過剰に塗布する部分と余剰な液体を拭き取る一連の連続する工程を有することを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記液体の塗布が液体を保持する部材の荷重変形により、液体が塗布されることを特徴とする請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項3】
塗布される前記記録物と前記塗布装置の塗布部とが相対的に進行する方向に密度の異なる少なくとも2つ以上の吸収体から成り、先行側の吸収体が密度が低く、前記液体を過剰に塗布する部分を成し、進行方向の後方側の吸収体が密度が高く、余剰な液体を拭き取る部分を成す、一連の連続する工程を有することを特徴とする請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記液体の塗布と拭き取りの一連の連続する工程が少なくとも1回以上から成ることを特徴とする請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記液体の貯蔵部を有することを特徴とする請求項1記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記液体の貯蔵部が交換可能であることを特徴とする請求項4記載の液体塗布装置。
【請求項7】
インクによって画像の記録された記録物の記録面に対し、画像の耐性を高めるための液体を塗布する方法であって、
(1)印字
(2)排出/塗布工程への振り分け
(3)乾燥
(4)押し圧・緩和・押し圧・緩和・から成る塗布と浸透の繰り返し工程
(5)拭き取り
(6)排出
の一連の工程を有することを特徴とする液体塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−175327(P2006−175327A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369491(P2004−369491)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】