説明

液体材料の塗布装置、塗布方法およびプログラム

【課題】液体材料の応答時間の遅れや経時的な粘度の変化などの問題を予め多数の制御データを準備しなくとも解消することができる液体材料の塗布装置、塗布方法およびプログラムの提供。
【解決手段】ワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を算出する応答時間算出工程を有する塗布方法であって、応答時間算出工程は、移動速度を一定とした塗布の途中でディスペンサに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶する第1工程と、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第2工程と、第1工程で記憶した時間と第2工程で記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間として記憶する第3工程と、を有する液体材料の塗布方法、塗布装置およびプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューの回転数を可変として液体材料の吐出量を非一定で連続塗布する方法および装置に関し、より具体的には、例えば、コーナー部と直線部とから構成される塗布パターンに基づき液体材料をパネル状部材に塗布する際に、移動速度の変更に応じた塗布量の調整を行うことができる塗布装置、塗布方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶やプラズマディスプレイパネル(PDP)に代表されるフラットパネルディスプレイを製造する装置において、パネルに対し粘性材料を所定のパターンに形成するためにディスペンサが多く用いられている。ディスペンサの中で多く用いられる方式として、圧縮空気源から供給される空気を貯留容器内の液体材料へ印加して貯留容器に連通されたノズルより吐出させるエア式ディスペンサがある。
【0003】
エア式ディスペンサを用いる塗布装置しては、例えば特許文献1に、基板上に四角形状のパターンを描画する塗布方法において、コーナー部の開始点でノズルと基板との相対速度を減速すると同時にペーストの吐出圧を減圧し、コーナー部を通過後、コーナー部の終了点に至る前にノズルと基板との相対速度を加速すると同時にペーストの吐出圧を増圧することで、コーナー部において振動の発生を抑制し、適正な量の塗布ができることが開示されている。また上記の制御は、マイクロコンピュータのRAMに格納されたパターンデータに基づき行われ、コーナー開始および終了位置の判定は、リニアスケールにより計測して行われるとしている。
【0004】
一方、高粘性液体材料やフィラーを含有した液体材料を吐出する場合、エア式ディスペンサを用いた吐出では、所望とする結果を得ることが困難である場合が多かった。そこで、この種の液体材料を吐出する方式として、棒状体の表面に軸方向へ螺旋状のツバを備えるスクリューを回転させ、このスクリューの回転によりツバ部が液体材料を吐出口へ搬送して液体材料を吐出するスクリュー式ディスペンサが用いられている。
【0005】
スクリュー式ディスペンサを用いる塗布装置としては、例えば、特許文献2に開示されるものがある。特許文献2には、ネジ溝式ディスペンサを用いて、基板上にペーストを吐出させることによりパターンを形成する方法において、吐出開始時には、ネジ軸の回転数を増加させた後に一定回転を維持して吐出を行い、吐出終了時には、ネジ軸の回転数を急速に減少して停止することで、塗布線の始終点での欠落、細り、ボタ落ちなどの発生を防止できること、また、ディスペンサの移動速度と同期した塗布量の制御は、制御装置に予めプログラミングされた塗布位置や速度の情報に基づき行われることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−218971号公報
【特許文献2】特許第3769261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、吐出圧力を変更することで吐出量を変更することが行われていたが、圧力変更信号が発せられてから実際に液体材料に圧力が伝播するまでの時間や、圧力伝播後の液体材料の応答時間などの遅れがあることから、コーナー部と直線部とで塗布量や形状を均一に保つことが困難であった。
また、従来、ディスペンサの移動速度、位置情報、塗布量等を関連付けた制御データを、制御装置に予め設定し、それに基づいて塗布量を変更する制御が行われていたが、かかる制御を行うためには、予め最適な制御情報を準備する必要があった。しかし、塗布パターン毎に、温度や湿度などの環境条件の変化、液体材料の経時的な粘度の変化など種々の要因を考慮した多数の制御データを準備しておくことは困難であった。
【0008】
本発明は、液体材料の応答時間の遅れや経時的な粘度の変化などの問題を予め多数の制御データを準備しなくとも解消することができる液体材料の塗布装置、塗布方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の[1]ないし[7]の液体材料の塗布装置を要旨とする。
[1]液体材料を吐出するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットと、ワークを載置するテーブルと、吐出ユニットとワークを相対移動させる駆動手段と、ワーク上に塗布された液体材料の吐出量を計測する計測ユニットと、これらの動作を制御する制御部とを備える塗布装置であって、前記制御部は、ワークと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定とする描画パターンに連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を算出する応答時間算出機能であって、移動速度を一定とした塗布の途中で吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶する第1ステップと、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第2ステップと、第1ステップで記憶した時間と第2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶する第3ステップと、を有する応答時間調整機能を備えることを特徴とする液体材料の塗布装置。
[2]前記制御部は、ワークと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定とする描画パターンに連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を調整する応答時間調整機能であって、(A)テーブルと吐出ユニットを一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶するA1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第A2ステップ、および、A1ステップで記憶した時間とA2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶するA3ステップと、(B)テーブルと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、前記相対移動の速度を変化させ、その時間を記憶するとともに前記応答遅れ時間(Td)に基づき、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信して塗布を行うB1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶するB2ステップ、B1ステップで記憶した時間とB2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答ずれ時間(Tdd)として記憶するB3ステップと、(C)液体材料の吐出量変化の傾きを調整し、応答遅れ時間(Td)と応答ずれ時間(Tdd)とを一致させるCステップとを含む応答時間調整機能を備えることを特徴とする[1]の液体材料の塗布装置。
[3]前記制御部は、塗布開始前に塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積が一定となるよう調整する吐出量調整機能であって、ワークに塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積を計測し、測定塗布量として記憶する第1ステップと、予め設定された目標値を測定塗布量で除算して得られる増減率を算出し、記憶する第2ステップと、現在の吐出量に第2ステップで記憶した増減率を乗算した値に基づき次回の吐出量条件を算出し、記憶する第3ステップとを含む吐出量調整機能を備えることを特徴とする[1]または[2]の液体材料の塗布装置。ここで、吐出量条件とは、液体材料に印加する圧力やスクリューの回転数などの設定値のことである。
[4]前記制御部は、前記第2ステップにおいて、前記測定塗布量が前記目標値の許容範囲を越える場合にのみ、前記増減率を算出し、前記第3ステップを実行することを特徴とする[3]の液体材料の塗布装置。
[5]前記制御部は、前記スクリューの回転数および液体材料に印加される圧縮気体の圧力を制御することを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかの液体材料の塗布装置。
[6]前記計測ユニットは、カメラおよび/またはレーザー変位計を備えることを特徴とする[1]ないし[5]のいすれかの液体材料の塗布装置。
[7]さらに、調整用ワークを載置する調整用テーブルを備えることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかの液体材料の塗布装置。
【0010】
また、本発明は、以下の[8]ないし[14]の液体材料の塗布方法および[15]のプログラムを要旨とする。
[8]テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットを一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を算出する応答時間算出工程を有する塗布方法であって、応答時間算出工程は、移動速度を一定とした塗布の途中で吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶する第1ステップと、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第2ステップと、第1ステップで記憶した時間と第2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶する第3ステップと、を有することを特徴とする液体材料の塗布方法。
[9]テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサ9を備えた吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を調整する応答時間調整工程を有する塗布方法であって、応答時間調整工程は、(A)テーブルと吐出ユニットを一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶するA1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第A2ステップ、および、A1ステップで記憶した時間とA2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶するA3ステップと、(B)テーブルと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、前記相対移動の速度を変化させ、その時間を記憶するとともに前記応答遅れ時間(Td)に基づき、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信して塗布を行うB1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶するB2ステップ、B1ステップで記憶した時間とB2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答ずれ時間(Tdd)として記憶するB3ステップと、(C)液体材料の吐出量変化の傾きを調整し、応答遅れ時間(Td)と応答ずれ時間(Tdd)とを一致させるCステップとを含むことを特徴とする液体材料の塗布方法。
[10]前記相対移動の速度を複数回変化させる場合において、前記A2ステップおよび前記B2ステップは、前記相対移動の速度が変化したそれぞれの位置の近傍複数箇所にて塗布された液体材料の計測を行い、当該それぞれの計測値から吐出量変化の平均値を求め、それに基づき、前記吐出量の変化開始時間を算出すること、および、前記Cステップは、前記B2ステップで算出した吐出量変化の平均値に基づき、前記液体材料の吐出量変化の傾きを算出することを特徴とする[9]の液体材料の塗布方法。
[11]直線部とコーナー部とから構成される塗布パターンにおいて、コーナー部での塗布速度を直線部での塗布速度と比べ低速とすることを特徴とする[9]または[10]の液体材料の塗布方法。
[12]コーナー部が曲線からなる略四角形状の塗布パターンであることを特徴とする[11]の液体材料の塗布方法。
[13]テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積が一定となるよう調整する吐出量調整工程を有する塗布方法であって、吐出量調整工程は、ワークに塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積を計測し、測定塗布量として記憶する第1ステップと、予め設定された目標値を測定塗布量で除算して得られる増減率を算出し、記憶する第2ステップと、現在の吐出量に第2ステップで記憶した増減率を乗算した値に基づき次回の吐出量条件を算出し、記憶する第3ステップと、を有することを特徴とする液体材料の塗布方法。吐出量条件の意義は、上記[3]と同じである。
[14]前記第2ステップにおいて、前記測定塗布量が前記目標値の許容範囲を越える場合にのみ、前記第2ステップは前記増減率を算出し、前記第3ステップが実行されることを特徴とする[13]の液体材料の塗布方法。
[15][8]ないし[14]のいずれかに記載の液体材料の塗布方法を塗布装置に実施させるプログラム。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、実際に塗布した液体材料を計測し、この計測結果に基づき相対移動速度と吐出量等を調整するので、塗布パターン毎に、温度や湿度などの環境条件の変化、液体材料の経時的な粘度の変化など種々の要因を考慮した多数の制御データを準備することは不要である。
また、環境条件の変化や経時的粘度の変化などにも迅速に対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。以下では、ノズルから流出する液体材料の単位時間当たりの体積を吐出量といい、ワークに塗布される液体材料の単位長さ当たりの体積を塗布量というものとする。
(1)応答遅れ時間の算出
スクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットの吐出量を変更する際に、吐出量変更信号を送信してから、実際に液体材料の量が変更するまでの応答遅れ時間を算出する手順を、図3(b)を参照しながら説明する。なお、スクリュー式ディスペンサの移動速度Vおよび回転数ωが一定の場合の吐出量は図3(a)のとおりである。
初めに、移動速度Vを変更せず、スクリュー式ディスペンサのスクリューの回転数ωのみ変更した場合の塗布を実行する。次に、塗布された液体材料のスクリュー回転数ωの変更開始点Aを中心とした前後複数箇所での塗布量(断面積、幅、高さ等)を計測する。この複数の計測結果から、液体材料の吐出量Lωが実際に変化し始める実吐出量変更開始点Bの位置を求める。そして、変更開始点Aおよび実吐出量変更開始点Bの距離と、移動速度Vとに基づき、吐出量変更信号を送信してから実際に吐出量が変更するまでの時間Tを算出する。これが応答遅れ時間Tである。ここでは、塗布パターンにコーナー部を含んでいる必要はなく、直線部のみからなる塗布パターンでよい。
なお、安定化を図るためには、複数回同じ塗布と計測とを繰り返して平均するのが好ましい。
【0013】
(2)吐出量の調整
吐出量の調整について、一つのコーナー部と、それを間に挟む二つの直線部とからなる図4の塗布パターンを参照しながら説明する。
コーナー部を有する塗布パターンに基づき塗布を実行する場合、コーナー部においては移動速度を減速して塗布を行う。コーナー部での速度変化は次のとおりである。
まず、ノズルが図4の左側から右側へ向かって、液体材料を吐出しながら速度Vで移動してくる。コーナー部の手前C点に差し掛かるとノズルは減速を始め、コーナー部直前のD点までの間に速度Vへと減速する。速度Vを一定に維持したままコーナー部を曲がり、コーナー部直後のE点に差し掛かると加速を始め、F点に至るまでの間に速度Vへと加速し、そのまま一定速度で図4の上側へ移動する。
ここで、コーナー部で速度を変更する際には、ノズルの移動速度の変更に合わせて液体材料の吐出量も変更しなくては、塗布量や塗布形状が不均一になってしまうという問題が生じる。そこで、本実施の形態では、スクリューの回転数の変更によって吐出量の変更を行っている。スクリューの回転数の変更により吐出量の調整は、圧力により調整する場合に比べて応答性がよく、移動速度の変更前後において吐出量や形状を均一に保つことができるので好ましい。
【0014】
まず、直線部とコーナー部とで塗布量が所望とする量になるよう吐出量を仮調整する。
初めに、コーナー部において移動速度とスクリュー回転数とを変更した塗布を実行する。そして、コーナー部と隣接する直線部(CD間およびEF間)において塗布した液体材料の塗布量(断面積、幅、高さ)をそれぞれ複数箇所で測定する。CD間およびEF間のそれぞれにおける複数箇所の測定値から、それぞれにおける塗布量の測定値の平均値を求める。
塗布量の測定値が、目標値に対する許容範囲(閾値)を超える場合には、吐出量の調整を行う。吐出量の調整は、測定直前の吐出量条件に、増減率を乗じ、新たな吐出量条件として設定することにより行う。ここで、増減率とは、塗布量の目標値を、塗布量の測定値(平均値)で割ることにより得られる値である。吐出量条件は、貯留容器内の液体材料に印加する圧縮気体の圧力や、モータによるスクリューの回転数を調整することにより設定する。
測定値が許容範囲内に収束するまで、上記の手順が繰り返される。
【0015】
(3)XYZ動作とスクリュー式ディスペンサ動作との調整
コーナー部での速度変更に応じた吐出量の調整方法を説明する。減速と加速とで考え方は基本的に同様であるので、以下では減速の場合についてのみ説明する。
ノズルの移動速度を減速する場合、吐出量を一定とすると減速時に塗布量が増えるので、減速に合わせて吐出量を減らすよう調整を行う。
初めに、移動速度の減速に応じて吐出量を減少し、速度変更の前後で塗布量が均一になるよう、(1)で求めた応答遅れ時間Tを考慮に入れ、スクリュー回転数減少の開始位置の調整を行う。好ましくは、応答遅れ時間Tを考慮に入れただけでは調整しきれない、例えば、環境条件の変化や液体材料の性質の変化(粘度などの経時的変化)による吐出量条件の変化に対する調整を行う。
上記の調整には、(イ)液体材料の応答に対する調整、(ロ)吐出量を変更する割合の調整、がある。(イ)および(ロ)の調整方法を図5および図6を参照しながら説明する。なお、図5および図6において、塗布は向かって左から右へ進行するものとする。
【0016】
(イ)液体材料の応答に対する調整
図5(a)は移動速度Vの変化とスクリュー回転数ωの変化との関係を表す。スクリュー回転数ωの変化は(1)で求めた応答遅れ時間Tの分だけ先に変化するよう調整している。以下では、スクリュー回転数の変化による吐出量の変化の割合は一定であるとして説明を進める。
スクリュー回転数ωの減少による吐出量Lωの減少開始位置が、移動速度Vの減速による塗布量Lの増加に対して適切である場合、図5(b)に示すように、Lに対してLωがきちんと整合し、塗布結果である線幅Wは一定となる。この場合、塗布量は一定であることから、吐出量の調整が必要ないことは言うまでもない。
移動速度Vの減速による塗布量Lの増加開始に対して、スクリュー回転数ωの減少による吐出量Lωの減少開始位置が早い場合、図5(c)に示すように、Lに対してLωが先に減少を開始するため、塗布結果である線幅Wは初め減少する。その後Lが増加を開始すると、LωとLとの関係から線幅Wは増加或いは一定となる。そして、Lに対してLωが先に変化を終えるため、線幅WはLが変化を終えるまで増加することになる。Lが変化を終えると線幅Wは変化前の状態と同じになる。
【0017】
図5(c)のずれの原因である、スクリュー回転数ωの減少開始に対する吐出量Lωの減少開始位置を求めるため、まず、移動速度Vの減速開始位置を中心とした前後複数箇所で塗布量、例えば、線幅Wを計測する。計測した線幅Wのうち、線幅Wが減少開始する箇所が存在する場合、Lωの減少開始が早いと判定し、この位置をLωが減少開始する位置とする。そして、スクリュー回転数ωの減少開始から吐出量Lωが減少開始するまでの時間を求め、これを応答ずれ時間Tddとする。この応答ずれ時間Tddが(1)で求めた応答遅れ時間Tを一致するようスクリュー回転数ωの減少開始位置を遅らせることで調整を行う。
移動速度Vの減速による塗布量Lの増加開始に対して、スクリュー回転数ωの減少による吐出量Lωの減少開始位置が遅い場合、図5(d)に示すように、Lωに対してLが先に増加を開始するため、塗布結果である線幅Wは初め増加する。その後Lωが減少を開始すると、LωとLとの関係から線幅Wは減少或いは一定となる。そして、Lωに対してLが先に変化を終えるため、線幅WはLωが変化を終えるまで減少することになる。Lωが変化を終えると線幅Wは変化前の状態と同じになる。
図5(d)のずれの原因である、スクリュー回転数ωの減少開始に対する吐出量Lωの減少開始位置を求めるため、まず、移動速度Vの減速開始位置を中心とした前後複数箇所で線幅Wを計測する。計測した線幅Wのうち、線幅Wが増加から減少(或いは一定)へ変化する箇所が存在する場合、Lωの減少開始が遅いと判定し、この位置をLωが減少開始する位置とする。そして、スクリュー回転数ωの減少開始から吐出量Lωが減少開始するまでの時間を求め、これを応答ずれ時間Tddとする。この応答ずれ時間Tddが(1)で求めた応答遅れ時間Tと一致するようスクリュー回転数ωの減少開始位置を早めることで調整を行う。
【0018】
(ロ)吐出量の変更割合に対する調整
図6(a)は移動速度Vの変化とスクリュー回転数ωの変化との関係を表す。スクリュー回転数ωの変化は(1)で求めた応答遅れ時間Tの分だけ先に変化するよう調整している。以下では、スクリュー回転数の変化による吐出量変化の開始位置は一定であるとして説明を進める。
移動速度Vの減速区間S内での塗布量Lの増加の割合に対して、減速区間S内での吐出量Lωの減少の割合(傾きで表される)が適切である場合、図6(b)に示すように、Lに対してLωがきちんと整合し、塗布結果である線幅Wは一定となる。この場合、塗布量は一定であることから、調整が必要ないことは言うまでもない。
【0019】
減速区間S内での塗布量Lの増加に対して、減速区間S内での吐出量Lωの減少の割合が大きい場合、図6(c)に示すように、Lωの減少の割合が大きいため、塗布結果である線幅Wは初め減少する。その後Lωが先に変化を終えるため、線幅WはLが変化を終えるまで増加することになる。Lが変化を終えると線幅Wは変化前の状態と同じになる。
【0020】
図6(c)のずれの原因である、スクリュー回転数ωの減少の割合に対する吐出量Lωの減少の割合を求めるため、まず、減速区間S内の複数箇所で線幅Wを計測する。計測した線幅Wのうち、線幅Wが減少する区間が存在する場合、Lω減少の割合が大きいと判定し、この区間での線幅Wの減少の割合と移動速度Vの減速の割合とから吐出量Lωの減少の割合を求め、移動速度Vの減速の割合と一致するようスクリュー回転数ωの減少の割合を小さくすることで調整を行う。
【0021】
減速区間S内での塗布量Lの増加に対して、減速区間S内での吐出量Lωの減少の割合が小さい場合、図6(d)に示すように、Lωの減少の割合が小さいため、塗布結果である線幅Wは初め増加する。その後Lが先に変化を終えるため、線幅WはLωが変化を終えるまで減少することになる。Lωが変化を終えると線幅Wは変化前の状態と同じになる。
【0022】
図6(d)のずれの原因である、スクリュー回転数ωの減少の割合に対する吐出量Lωの減少の割合を求めるため、まず、減速区間S内の複数箇所で線幅Wを計測する。計測した線幅Wのうち、線幅Wが増加する区間が存在する場合、Lω減少の割合が小さいと判定し、この区間での線幅Wの減少の割合と移動速度Vの減速の割合とから吐出量Lωの減少の割合を求め、移動速度Vの減速の割合と一致するようスクリュー回転数ωの減少の割合を大きくすることで調整を行う。
【0023】
上記(イ)および(ロ)のずれは、個別に発生するものではなく、実際の塗布では同時に発生しえるものであるので、(イ)による調整を行った後、続けて(ロ)による調整を行い調整の精度を向上させることが好ましい。また、上記(イ)および(ロ)の一連の手法を複数回繰返すことにより、さらに精度を向上させることが好ましい。
【0024】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0025】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
図1に本実施例に係る方法を実施するための塗布装置の概略斜視図を示す。
塗布装置1は、液体材料を吐出する吐出ユニット2、ワーク6上に塗布された液体材料の塗布量を計測する計測ユニット3、液体材料が塗布されるワーク6を載置するテーブル7、吐出ユニット2および計測ユニット3が配設され、テーブル7上をXYZ方向へ相対移動させるXYZ駆動手段とを備えている。
また、ワーク6を載置するテーブル7とは別に、調整用の塗布を行う調整用ワークを載置する調整用テーブル8が設けられている。
【0026】
液体材料を吐出する吐出ユニット2は、スクリューをモータで回転させ、貯留容器より圧送される液体材料をノズルから吐出するスクリュー式ディスペンサである。このスクリュー式ディスペンサは、図示しない吐出制御手段であるディスペンスコントローラに繋がれ、このディスペンスコントローラによりモータ回転数および貯留容器内の液体材料へ印加する圧縮気体の圧力を制御している。
計測ユニット3は、塗布された液体材料を撮像した画像から塗布線幅を求めるカメラおよび、ワーク面と液体材料表面との距離の差をレーザーにより計測して塗布された液体材料の高さまたは断面積を求めるレーザー変位計のどちらか一方または両方から構成されている。吐出ユニット2と計測ユニット3とはそれぞれ個別に設けてもよく、吐出ユニットの近傍に計測ユニットを設けて一体として設けてもよい。また、吐出ユニット2および計測ユニット3は、Z駆動手段によりワーク面に垂直な方向へ移動可能とすることが好ましい。上記の構成要素は、主記憶部および演算部を備えた図示しない制御部に繋がれてその動作を制御される。
【0027】
図2は、本実施例のスクリュー式ディスペンサを説明するための要部断面図である。
本実施例のスクリュー式ディスペンサは、本体部100と、棒状体の表面に軸方向へ螺旋状のつばを備えるスクリュー101と、スクリュー101を回転させる回転駆動機構であるモータ102と、スクリュー先端部107側に装着されスクリュー挿設孔103と連通するノズル105と、スクリュー101が挿通されるシール部材106とを備える。
本体部100には、スクリュー101が挿設されるスクリュー挿設孔103と、スクリュー挿設孔103側面に配設され、液体材料300が供給される液材供給口104と、連通流路200が形成されている。
連通流路200は、液体材料300を液材供給口104へ流入する流路であり、貯留容器であるシリンジ201を取付ける貯留容器取付口202と、貯留容器取付口202と連通して流れ方向がスクリュー挿設孔103の中心軸へ向かうよう傾斜を持つ第一の流路203と、第一の流路203と本体部100の液材供給口104とを連通して流れ方向がスクリュー挿設孔103の中心軸に対して直角である第二の流路204とから構成される。本実施例では、連通流路200と本体部100が、一体形成されているため、シール部材の数は最小限に抑えられている。
【0028】
シリンジ201は、貯留容器取付口202に接続されており、その上部に取付けられたアダプタチューブ205から圧縮気体が供給されることで、連通流路200を通じて液体材料300を本体部液材供給口104へと圧送する。本実施例では、第一の流路203に傾斜を設けることで、圧送時の抵抗を低くしている。
また、第一の流路203と共に貯留容器取付口202に取付けられるシリンジ201も傾斜させることで、シリンジ201の形状の自由度を高めている。例えば、シリンジ201のサイズが幅方向に大きくなっても本体部100と干渉しにくく、回避のため連通流路200を延長する必要がない。すなわち、シリンジサイズの大型化に伴う連通流路200の延長が最小限に抑えられる構造であるので、シリンジサイズの大型化に伴う圧送圧力の増大を抑制することができる。
【0029】
吐出工程においては、シリンジ201内にアダプタチューブ205を介して圧縮気体を供給することで、シリンジ201内に貯留された液体材料300が、貯留容器取付口202から連通流路200へ供給され、液材供給口104よりスクリュー挿設孔103へ流入する。
スクリュー挿設孔103に流入する液体材料300は、圧縮空気により押圧されているため、その一部が上方へ向かうことが想定される。しかし、シール部材106と隣接する防液空間が設けられているため、液体材料300がシール部材106へ直接到達することは無く、また液材供給口104より上方に位置するつばにより下方へ移送されるので、シール部材106近傍に液体材料300が残留することもない。このように、シール部材106へ液体材料が到達することが無いので、シール部材106とスクリュー101との接触面圧力を下げ、摩耗の問題を最小限とすることができる。
【0030】
液材供給口104よりスクリュー挿設孔103に流入した液体材料300は、モータ102により回転されるスクリュー101の回転により、スクリュー挿設孔103内をスクリュー先端部107側へ移送され、スクリュー挿設孔103下端に装着されたノズル105より吐出される。
以上に説明した、シリンジ201からノズル105までの液体材料300の流れは、図2の矢印301に示すとおりである。
吐出終了時には、モータ102の回転を停止することでスクリュー101の回転を停止し、且つシリンジ201に供給されていた圧縮気体の供給を停止して吐出を終了することができる。
【0031】
《吐出量の調整手順》
コーナー部と直線部とから構成される塗布パターンに基づき液体材料を塗布する際に、ノズルとワークとの相対移動速度の変更に応じた吐出量の調整の手順を、図7から図10を参照しながら説明する。
第一に、図7に示す応答遅れ時間Tの算出を行う。まず、ワークまたは調整用ワークに、移動速度を一定としたまま、スクリュー式ディスペンサのスクリューの回転数のみを変更して塗布を行う(STEP101)。次に、液体材料の塗布量をスクリュー回転数の変更開始点を中心とした前後複数箇所で計測する(STEP102)。次に、STEP102での計測結果から吐出量が変化開始する点を求め(STEP103)、スクリュー回転数を変更開始した点およびSTEP103で求めた点と、移動速度とから応答遅れ時間Tdを算出し(STEP104)、終了する。
【0032】
第二に、図8に示す吐出量の調整を行う。まず、ワークまたは調整用ワークに、コーナー部と直線部とで構成される塗布パターンに基づき、コーナー部において移動速度およびスクリュー回転数を変更した塗布を行う(STEP201)。次に、塗布した液体材料の塗布量を各コーナー部で、コーナー部と隣接する直線部についてそれぞれ複数箇所計測する(STEP202)。次に、STEP202での計測結果からコーナー部および直線部のそれぞれの平均値を求める(STEP203)。求めた平均値と予め設定しておいた目標値に対する許容範囲とを比較し(STEP204)、許容範囲内であれば終了する。許容範囲を越える場合、それぞれの平均値(測定値)と目標値との比をもとに増減率を算出する(STEP205)。元の吐出量条件にSTEP205で算出した増減率を乗じた値を新たな吐出量条件として設定する(STEP206)。そして、再びSTEP201からSTEP203を実行し、STEP204にて判定を行った結果が許容範囲内であれば終了する。上記手順を許容範囲内になるまで繰返す。なお、上記STEP204は、STEP203の前に行うようにしてもよい。
例えば、直線部の断面積の目標値を6000[μm]、許容範囲を目標値の±5%と設定したとき、測定値が6600[μm]であったとすると、許容範囲の上限値(目標値+5%=6300[μm])を越えているので調整が行われる。まず、目標値と測定値との比を求めると、(目標値)/(測定値)=約0.9となる。これを増減率とする。塗布実行時の吐出量条件であるスクリューの回転数が3000[rpm]であった場合、この回転数と前記増減率とを掛け合わせた値(3000×0.9=2700[rpm])を新たな吐出量条件であるスクリュー回転数として設定する。コーナー部においても同様の手順で吐出量の調整を行う。
【0033】
第三に、図9および図10に示すXYZ動作とスクリュー動作との調整を行う。ここでは、移動速度を減速する場合についてのみ説明する。
初めに、図9に示す液体材料の応答に対する調整を行う。まず、ワークまたは調整用ワークに、コーナー部と直線部とで構成される塗布パターンに基づき、コーナー部において移動速度とスクリュー回転数とを変更した塗布を行う(STEP301)。次に、塗布した液体材料の塗布量を、移動速度の変更開始点を中心とした前後複数箇所で計測する(STEP302)。次に、STEP302での計測結果と予め設定しておいた許容範囲とを比較し(STEP304)、許容範囲内であれば調整をせず(STEP312)に後述する吐出量変更割合に対する調整手順(STEP401)へと移行する。許容範囲を越える場合、STEP302で計測した複数点での結果から塗布量の減少する箇所が存在するかを判定する(STEP304)。存在しない場合、STEP308へ移行する。存在する場合、スクリュー回転数の減少開始に対する吐出量の減少開始が早いと判定する(STEP305)。そして、スクリュー回転数減少開始から吐出量減少開始までの時間(ずれ時間Tdd)を算出し(STEP306)、このずれ時間TddがSTEP104で求めた遅れ時間Tdと一致するようスクリュー回転数減少開始位置を遅らせる調整を行う(STEP307)。調整後は再びSTEP301からの手順を実行する。STEP304にて塗布量の減少する箇所が存在しないとされた場合、STEP302で計測した複数点での結果から塗布量が増加から減少に変化する箇所が存在するかを判定する(STEP308)。存在しない場合、後述するSTEP401へ移行する。存在する場合、スクリュー回転数の減少開始に対する吐出量の減少開始が遅いと判定する(STEP309)。そして、スクリュー回転数減少開始から吐出量減少開始までの時間(ずれ時間Tdd)を算出し(STEP310)、このずれ時間TddがSTEP104で求めた遅れ時間Tdと一致するようスクリュー回転数減少開始位置を早める調整を行う(STEP311)。調整後は再びSTEP301からの手順を実行する。上記手順を許容範囲内になるまで繰返す。なお、応答に対する調整を単独で行う場合には、STEP401へ移行することはせずにそこで終了とする。
【0034】
次に、図10に示す吐出量の変更割合に対する調整を行う。まず、ワークまたは調整用ワークに、コーナー部と直線部とで構成される塗布パターンに基づき、コーナー部において移動速度とスクリュー回転数とを変更した塗布を行う(STEP401)。次に、塗布した液体材料の塗布量を移動速度の変更区間内の複数箇所で計測する(STEP402)。次に、STEP402での計測結果と予め設定しておいた許容範囲とを比較し(STEP404)、許容範囲内であれば調整をせず(STEP412)に手順を終了する。許容範囲を越える場合、STEP402で計測した複数点での結果から塗布量の減少する区間が存在するかを判定する(STEP404)。塗布量の減少区間が存在しない場合、STEP408へ移行し、存在する場合、スクリュー回転数の減少割合(吐出量の減少割合)に対する塗布量の減少割合が大きいと判定する(STEP405)。そして、この区間での塗布量の減少割合と移動速度の減速割合とからスクリュー吐出ユニットからの吐出量の減少割合を求め(STEP406)、移動速度の減速割合と一致するようスクリュー回転数の減少割合を小さくして調整を行う(STEP407)。調整後は再びSTEP401からの手順を実行する。
STEP404にて塗布量の減少する区間が存在しないとされた場合、STEP402で計測した複数点での結果から塗布量が増加する区間が存在するかを判定する(STEP408)。塗布量の増加区間が存在しない場合、手順を終了し、存在する場合、スクリュー回転数の減少割合(吐出量の減少割合)に対する塗布量の減少割合が小さいと判定する(STEP409)。そして、この区間での塗布量の減少割合と移動速度の減速割合とからスクリュー吐出ユニットからの吐出量の減少割合を求め(STEP410)、移動速度の減速割合と一致するようスクリュー回転数の減少割合を大きくして調整を行う(STEP411)。調整後は再びSTEP401からの手順を実行する。上記手順を許容範囲内になるまで繰返す。
なお、STEP308またはSTEP312からSTEP401へ続けて移行する場合、STEP401を行わずに次のステップへ進んでもよい。また、図9に示した調整手順と図10に示した調整手順とは順序が逆に行われてもよい。つまり、図10に示した手順を先に行い、図9に示した手順を後に行ってもよい。
【0035】
直線部とコーナー部とで移動速度を変更した塗布を行い、吐出量の調整を行った結果の具体例を以下に示す。例えば、塗布量の計測を断面積により行う場合を考える。目標とする断面積を6000[μm]にて塗布する場合、直線部を速度150[mm/s]で移動するとき断面積が目標値6000[μm]となるスクリュー回転数は3000[rpm]となり、コーナー部を速度50[mm/s]まで減速して移動したとき断面積が目標値6000[μm]となるスクリュー回転数は1000[rpm]となる。
【0036】
図11に、四角形状をした塗布パターンに基づき塗布を行う例を示す。塗布は、ワークの手前略中央から開始し、反時計周りに進行する。そして、再び開始位置に戻り塗布を終了する。つまり、塗布は開始点と終了点がつながり、閉じた塗布パターンとなる。塗布パターンは、四つの直線部と四つのコーナー部とからなり、コーナー部は同じ大きさの半径をもつ円弧になっている。四つのコーナー部それぞれで移動速度を減速し、減速に併せてスクリュー回転数を減少させる塗布を行う。そのため、四つのコーナー部それぞれについて調整を行う必要がある。コーナー部での調整は、それぞれ個別に行うこともできるが、四つのコーナー部での計測をまとめて行い、計測結果の平均値を求めてから、この平均値に基づいて四つのコーナー部の調整をまとめて行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、粘性液体材料やフィラーを含有する液体材料を吐出するための方法および装置に関し、例えば、半導体機器やFPD(Flat Panel Display)の製造において、クリーム半田、銀ペーストや樹脂系接着剤などを吐出するために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例に係る塗布装置の概略斜視図である。
【図2】実施例のスクリュー式ディスペンサを説明するための要部断面図である。
【図3】応答遅れ時間の算出を説明するための説明図である。
【図4】コーナー部における移動速度変化を説明するための説明図である。
【図5】XYZ動作とスクリュー動作との調整における液体材料の応答に対する調整を説明するための説明図である。
【図6】XYZ動作とスクリュー動作との調整における吐出量を変更する割合に対する調整を説明するための説明図である。
【図7】応答遅れ時間の算出手順を示すフローチャートである。
【図8】吐出量の調整手順を示すフローチャートである。
【図9】XYZ動作とスクリュー動作との調整における液体材料の応答に対する調整手順を示すフローチャートである。
【図10】XYZ動作とスクリュー動作との調整における吐出量を変更する割合に対する調整手順を示すフローチャートである。
【図11】塗布の様子を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1 塗布装置
2 吐出ユニット
3 計測ユニット
5 駆動部
6 塗布対象物
7 テーブル
8 調整用テーブル
9 塗布パターン
10 ノズル
11 コーナー部
12 塗布開始点
13 塗布方向
100 本体部
101 スクリュー
102 回転駆動機構(モータ)
103 スクリュー挿設孔
104 液材供給口
105 ノズル
106 シール部材
107 スクリュー先端部
108 スクリュー根元部
200 連通流路
201 貯留容器(シリンジ)
202 貯留容器取付口
203 第一の流路
204 第二の流路
205 アダプタチューブ
300 液体材料
301 液体材料の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体材料を吐出するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットと、ワークを載置するテーブルと、吐出ユニットとワークを相対移動させる駆動手段と、ワーク上に塗布された液体材料の吐出量を計測する計測ユニットと、これらの動作を制御する制御部とを備える塗布装置であって、
前記制御部は、ワークと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定とする描画パターンに連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を算出する応答時間算出機能であって、移動速度を一定とした塗布の途中で吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶する第1ステップと、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第2ステップと、第1ステップで記憶した時間と第2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶する第3ステップと、を有する応答時間調整機能を備えることを特徴とする液体材料の塗布装置。
【請求項2】
前記制御部は、ワークと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定とする描画パターンに連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を調整する応答時間調整機能であって、
(A)テーブルと吐出ユニットを一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶するA1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第A2ステップ、および、A1ステップで記憶した時間とA2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶するA3ステップと、
(B)テーブルと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、前記相対移動の速度を変化させ、その時間を記憶するとともに前記応答遅れ時間(Td)に基づき、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信して塗布を行うB1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶するB2ステップ、B1ステップで記憶した時間とB2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答ずれ時間(Tdd)として記憶するB3ステップと、
(C)液体材料の吐出量変化の傾きを調整し、応答遅れ時間(Td)と応答ずれ時間(Tdd)とを一致させるCステップとを含む応答時間調整機能を備えることを特徴とする請求項1の液体材料の塗布装置。
【請求項3】
前記制御部は、塗布開始前に塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積が一定となるよう調整する吐出量調整機能であって、
ワークに塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積を計測し、測定塗布量として記憶する第1ステップと、
予め設定された目標値を測定塗布量で除算して得られる増減率を算出し、記憶する第2ステップと、
現在の吐出量に第2ステップで記憶した増減率を乗算した値に基づき次回の吐出量条件を算出し、記憶する第3ステップとを含む吐出量調整機能を備えることを特徴とする請求項1または2の液体材料の塗布装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2ステップにおいて、前記測定塗布量が前記目標値の許容範囲を越える場合にのみ、前記増減率を算出し、前記第3ステップを実行することを特徴とする請求項3の液体材料の塗布装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記スクリューの回転数および液体材料に印加される圧縮気体の圧力を制御することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの液体材料の塗布装置。
【請求項6】
前記計測ユニットは、カメラおよび/またはレーザー変位計を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいすれかの液体材料の塗布装置。
【請求項7】
さらに、調整用ワークを載置する調整用テーブルを備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの液体材料の塗布装置。
【請求項8】
テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットを一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を算出する応答時間算出工程を有する塗布方法であって、
応答時間算出工程は、移動速度を一定とした塗布の途中で吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶する第1ステップと、
塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第2ステップと、
第1ステップで記憶した時間と第2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶する第3ステップと、を有することを特徴とする液体材料の塗布方法。
【請求項9】
テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に吐出量を変化させる際の応答遅れ時間を調整する応答時間調整工程を有する塗布方法であって、
応答時間調整工程は、
(A)テーブルと吐出ユニットを一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信し、その時間を記憶するA1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶する第A2ステップ、および、A1ステップで記憶した時間とA2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答遅れ時間(Td)として記憶するA3ステップと、
(B)テーブルと吐出ユニットを非一定速度で相対移動させて行う塗布の途中で、前記相対移動の速度を変化させ、その時間を記憶するとともに前記応答遅れ時間(Td)に基づき、吐出ユニットに吐出量を変化させる信号を送信して塗布を行うB1ステップ、塗布された液体材料を計測することで吐出量の変化開始時間を算出し、その時間を記憶するB2ステップ、B1ステップで記憶した時間とB2ステップで記憶した時間との差分値を吐出量を変化させる際の応答ずれ時間(Tdd)として記憶するB3ステップと、
(C)液体材料の吐出量変化の傾きを調整し、応答遅れ時間(Td)と応答ずれ時間(Tdd)とを一致させるCステップとを含むことを特徴とする液体材料の塗布方法。
【請求項10】
前記相対移動の速度を複数回変化させる場合において、
前記A2ステップおよび前記B2ステップは、前記相対移動の速度が変化したそれぞれの位置の近傍複数箇所にて塗布された液体材料の計測を行い、当該それぞれの計測値から吐出量変化の平均値を求め、それに基づき、前記吐出量の変化開始時間を算出すること、および、
前記Cステップは、前記B2ステップで算出した吐出量変化の平均値に基づき、前記液体材料の吐出量変化の傾きを算出することを特徴とする請求項9の液体材料の塗布方法。
【請求項11】
直線部とコーナー部とから構成される塗布パターンにおいて、コーナー部での塗布速度を直線部での塗布速度と比べ低速とすることを特徴とする請求項9または10の液体材料の塗布方法。
【請求項12】
コーナー部が曲線からなる略四角形状の塗布パターンであることを特徴とする請求項11の液体材料の塗布方法。
【請求項13】
テーブル上に載置されたワークと、ワークと対向するスクリュー式ディスペンサを備えた吐出ユニットを非一定速度で相対移動させ、液体材料の吐出量を非一定で連続塗布するにあたり、塗布開始前に塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積が一定となるよう調整する吐出量調整工程を有する塗布方法であって、
吐出量調整工程は、
ワークに塗布された液体材料の単位長さ当たりの体積を計測し、測定塗布量として記憶する第1ステップと、
予め設定された目標値を測定塗布量で除算して得られる増減率を算出し、記憶する第2ステップと、
現在の吐出量に第2ステップで記憶した増減率を乗算した値に基づき次回の吐出量条件を算出し、記憶する第3ステップと、を有することを特徴とする液体材料の塗布方法。
【請求項14】
前記第2ステップにおいて、前記測定塗布量が前記目標値の許容範囲を越える場合にのみ、前記第2ステップは前記増減率を算出し、前記第3ステップが実行されることを特徴とする請求項13の液体材料の塗布方法。
【請求項15】
請求項8ないし14のいずれかに記載の液体材料の塗布方法を塗布装置に実施させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−82859(P2009−82859A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258115(P2007−258115)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】