液体検知センサ
【課題】状態検知素子が過昇温により破損してしまうことを防止するための技術を提供する。
【解決手段】状態検知素子のヒータ部への通電時間である第2しきい値時間tt2内にそれぞれ取得される基準値,第1判定電圧値Vt1および第2判定電圧値Vt2に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する(s330〜s500)。また、この判定の過程においては、基準値の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミング(第2基準時間td2の経過時)で取得した第2基準電圧値Vd2,および,過昇温を判定するためのしきい値Qに基づき、状態検知素子32に過昇温が発生しているか否かを判定しており(s210)、過昇温が発生していると判定される場合には、状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させる(s220)。
【解決手段】状態検知素子のヒータ部への通電時間である第2しきい値時間tt2内にそれぞれ取得される基準値,第1判定電圧値Vt1および第2判定電圧値Vt2に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する(s330〜s500)。また、この判定の過程においては、基準値の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミング(第2基準時間td2の経過時)で取得した第2基準電圧値Vd2,および,過昇温を判定するためのしきい値Qに基づき、状態検知素子32に過昇温が発生しているか否かを判定しており(s210)、過昇温が発生していると判定される場合には、状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させる(s220)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の状態を検知するための液体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定するための技術として、次のような技術が提案されている。
それは、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体(発熱体および感温体)を有する状態検知素子(識別センサー部)を被測定液体に浸漬させ、その抵抗体(発熱体)に通電した場合における抵抗体(感温体)の抵抗値に応じた出力を異なるタイミングで取得した後、それら出力に基づいて被測定液体が尿素水溶液か砂糖水かを判定する、といった技術である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−337969号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ただ、上述した技術では、被測定液体が充填された容器内の環境に拘わらず、比較的に長い時間の発熱抵抗体への通電が行われるため、場合によっては状態検知素子が過昇温してしまう。
【0004】
それは、例えば、容器内の被測定液体が消費されて空になっていたり、軽油のように上記特定種類の液体よりも非常に熱伝導率の低い液体が被測定液体として充填された状態にある場合である。このような場合には、容器内に特定種類の液体が充填されている場合と比べて、発熱抵抗体に通電した場合における温度上昇が大きくなるため、発熱抵抗体ひいては状態検知素子が過昇温しやすくなる。
【0005】
このように状態検知素子が過昇温してしまうことは、状態検知素子そのものが破損する要因となるため好ましいことではない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、状態検知素子が過昇温により破損してしまうことを防止するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載の液体検知センサは、自身の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体を有し、特定種類の被測定液体に浸漬される状態検知素子と、該状態検知素子の抵抗体への通電を検出時間にわたり行う通電実行手段と、前記検出時間内に前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す基準値を取得する基準取得手段と、前記検出時間内で且つ前記基準値の取得後に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第1出力値を取得する第1出力取得手段と、前記第1出力値と前記基準値との差である第1出力差を算出する第1出力差算出手段と、前記検出時間が経過した時点において、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第2出力値を取得する第2出力取得手段と、前記第2出力値と前記基準値との差である第2出力差を算出する第2出力差算出手段と、前記第1出力差と前記第2出力差とに基づいて、前記被測定液体が前記特定種類の液体であるか否か判定する種類判定手段と、を備えている。
【0007】
さらに、この液体検知センサは、前記検出時間内であり、前記基準値の取得後且つ前記第1出力値の取得以前に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第3出力値を取得する第3出力取得手段と、前記第3出力値と前記基準値との差である第3出力差を算出する第3出力差算出手段と、前記第3出力差と前記状態検知素子の過昇温を判定する判定しきい値とに基づいて、前記状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定する過昇温判定手段と、該過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された場合に、前記通電実行手段による通電を前記検出時間の経過前に終了させる通電終了手段と、を備えている。
【0008】
このように構成された液体検知センサでは、状態検知素子の抵抗体への通電時間である検出時間内にそれぞれ取得される基準値,第1出力値および第2出力値に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する。
【0009】
そして、この判定の過程においては、基準値の取得から第1出力値の取得までのタイミングで取得した第3出力値,および,過昇温を判定する判定しきい値に基づき、状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定しており、過昇温が発生していると判定される場合には、検出時間が経過する前に状態検知素子の抵抗体への通電を終了させることになる。
【0010】
このように、上記構成では、被測定液体が空であったり、特定種類の液体よりも熱伝導率が非常に低いものであったりして、状態検知素子に過昇温が発生する環境であったとしても、検出時間が経過する前に状態検知素子の抵抗体への通電を終了させることができるため、その通電に伴う温度上昇を早期に抑制することができる。その結果、抵抗体ひいては状態検知素子が過昇温してしまうことを防止することができ、これにより、状態検知素子が破損してしまうことを防止することができる。
【0011】
なお、上記構成における通電実行手段は、例えば、電源から抵抗体へと至る経路中に設けたスイッチング素子を制御し、この経路を導通させることにより、電源による抵抗体への通電を実行する、といった構成とすればよい。
【0012】
また、上述した第3出力取得手段は、検出時間内であって、基準値の取得後かつ第1出力値の取得以前であれば、どのようなタイミングで第3出力値を取得することとしてもよい。具体的な例としては、基準値の取得後かつ第1出力値の取得前や、基準値の取得後かつ第1出力値の取得時に第3出力値を取得することが考えられる。
【0013】
この後者の場合、第1出力値と第3出力値とが同じタイミングで取得されることになるため、第1,第3出力取得手段を同一の手段とし、その手段により取得された出力値を、第1,第3出力値それぞれとして第1,第3出力差算出手段が第1,第3出力差を算出するように構成すればよい。
【0014】
また、上述した過昇温判定手段は、第3出力値と判定しきい値とに基づいて、状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定するが、その具体的な判定方法については特に限定されない。例えば、第3出力値と判定しきい値とを比較し、第3出力値が判定しきい値よりも大きくなっている場合に、状態検知素子に過昇温が発生していると判定するように構成することが考えられる。
【0015】
また、上述した通電終了手段は、状態検知素子に過昇温が発生していると判定された以降、検出時間が経過する前であれば、どのようなタイミングで通電を終了させることとしてもよい。例えば、請求項2に記載のように、前記過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、前記通電実行手段による通電を終了させる、ように構成することが考えられる。
【0016】
このように構成すれば、状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、その抵抗体への通電が終了するため、その通電に伴う温度上昇をより早期に抑制して、状態検知素子が過昇温してしまうことをより確実に防止することができる。
【0017】
また、上述した基準取得手段,第1〜第3出力取得手段は、抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す値として、例えば、抵抗体そのものを流れている電流値や、抵抗体に印加されている電圧値(両端電圧)を検出して特定するように構成することが考えられる。
【0018】
これらのうち、抵抗体そのものを流れている電流値を基準値,出力値として特定するためには、例えば、抵抗体に定電圧で通電する定電圧源を備え、通電実行手段が、定電圧源による抵抗体への通電を行わせ、基準取得手段が、抵抗体を流れる電流値を基準値として取得して、第1〜第3出力取得手段が、抵抗体を流れる電流値を第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する、ように構成することが考えられる。
【0019】
このように構成すれば、抵抗体そのものを流れている電流値を基準値,出力値として特定して被測定液体の判定を行うことができる。
また、抵抗体の両端電圧を基準値,出力値として特定するための構成としては、例えば、請求項3に記載の液体検知センサように構成することが考えられる。
【0020】
この液体検知センサは、前記状態検知素子の抵抗体に定電流を流す定電流源を備えている。そして、前記通電実行手段は、前記定電流源による前記抵抗体への通電を行い、前記基準取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記基準値として取得して、前記第1〜第3出力取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する、ように構成されている。
【0021】
このように構成すれば、抵抗体の両端電圧を基準値,出力値として特定して被測定液体の判定を行うことができる。
また、上述した状態検知素子の抵抗体は、単一の抵抗体からなる構成としてもよいし、発熱抵抗体および感温抵抗体からなる構成としてもよい。この後者の場合には、通電実行手段が、発熱抵抗体に対する通電を開始させると共に、基準取得手段および第1〜第3出力取得手段が、感温抵抗体の抵抗値に応じた基準値,出力値を特定するように構成すればよい。
【0022】
また、上述した課題については、上記いずれかの構成の備える全ての手段として機能させるための各種処理手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムにおいても、解決することができるものである。
【0023】
このようなプログラムにより制御されるコンピュータシステムは、請求項1から3のいずれかに記載の液体検知センサの一部を構成することができる。
なお、上述したプログラムは、各種記録媒体や通信回線を介してコンピュータシステムやこれを利用するユーザに提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
液体検知センサ1は、タンク内に貯留された液体の状態を検出するために用いられるものであって、図1に示すように、箱状の基体10,この基体10の下端(図1における下端)から突出する筒状の電極構造体20,この電極構造体20内に配置された素子構造体30などで構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、尿素水を貯留するタンクにつき、このタンク内に貯留された液体(被測定液体)の状態を検出するために用いる場合について例示する。
基体10には、液体検知センサ1全体を制御するための制御基板12が内蔵されており、この制御基板12(の後述するマイコン74)が、後述する状態検知処理を実行する。
【0026】
また、この基体10は、その下端に、タンクの被取付部(図示されない)との取付を実現するための取付部14が形成されており、この取付部14を介してタンク上部に基体10が取り付けられる。これにより、その被取付部からタンク内部へと、電極構造体20および素子構造体30を配置させることができる。
【0027】
電極構造体20は、タンク内部に貯留された被測定液体の液面レベルを検出するためのセンサとして用いられるものであって、それぞれ外径の異なる2つの筒状部材22,24と、それら筒状部材22,24がその長さ方向(図1における上下方向)と直交する断面において同心状に配置されるように位置決めをするスペーサー26と、外側の筒状部材22の下端側に嵌め込まれた整流部材28と、からなる。
【0028】
これらのうち、筒状部材22,24は、それぞれ導電性を有する一対の電極として機能するものであって、外側に位置する筒状部材22が、基体10を介してグランドレベルに接続されており、内側に位置する筒状部材24が、基体10における制御基板12に接続されている。なお、内側に位置する筒状部材24は、その外周面のうち、被測定液体に接触する領域に、フッ素樹脂からなる絶縁被膜25が形成されている。
【0029】
また、外側の筒状部材22は、内側の筒状部材24よりも下方向への突出量が多く、この内側の筒状部材24を、その下端側に取り付けられた素子構造体30と共に内部に収めている。なお、この外側の筒状部材22には、その内外にタンク内の液体を流通させるために複数の流通孔23が形成されている。
【0030】
また、スペーサー26は、絶縁材料(例えば、ゴムなど)で形成されており、両者間の電気的な絶縁を実現すると共に、筒状部材22,24を所定の間隔で配置すべく位置決めを行う。
【0031】
また、整流部材28は、外側の筒状部材22における下端側の中央部分を塞ぐように配置された板状の部材であって、タンク内の液体に急激な流れが発生した場合に、その急激な被測定液体の流れが筒状部材22内部に至ることを抑制する。
【0032】
このような電極構造体20においては、筒状部材22,24がそれぞれ間隔を空けて配置された電極として機能しているため、これら電極対をコンデンサとした場合におけるその静電容量は、筒状部材22,24がその長さ方向において液体に浸漬している割合により変化することとなる。そのため、この筒状部材22,24からなる電極対に電圧を印加した場合におけるその出力電流に基づいて、タンク内部における液体の液面レベルを検出することができる。
【0033】
素子構造体30は、図2に示すように、板状の状態検知素子32と、この状態検知素子32を内側の筒状部材24下端側に固定するためのホルダ34と、状態検知素子32の周辺における被測定液体の流れを制限するためのプロテクタ36と、からなる。
【0034】
これらのうち、状態検知素子32は、図3に示すように、それぞれ同一方向に延びる一対の絶縁セラミック層の間に導体層40を封止して形成された板状の素子である。なお、一対の絶縁セラミック層の積層により、平板状のセラミック絶縁基体39が形成される。
【0035】
この導体層40は、状態検知素子32の長さ方向(図3における上下方向)に沿って延びる一対のリード部42と、発熱抵抗体のパターンとしてリード部42の下端(図3における下端)から延びるヒータ部44と、からなる。このヒータ部44は、状態検知素子32の下端側においてその表面および裏面に沿って拡がるヒータパターンとして形成されている。なお、セラミック層表面のうち、ヒータ部44が配置される領域は、この発熱抵抗体への通電に応じて発熱する昇温領域46となる(図3参照)。
【0036】
この導体層40において、ヒータ部44の抵抗値は、その温度に応じて変化するが、この導体層40に定電流で通電すると、ヒータ部44の両端電圧(出力電圧)は、その抵抗値に応じた値となる。この抵抗値は、状態検知素子32の周辺に存在する被測定液体の状態(具体的には種類,濃度,温度)に応じて異なったものとなるため、その出力電圧も被測定液体の状態に応じて異なった値となる。こうして、ヒータ部44に通電した場合におけるその出力電圧に基づいて、後述のように、タンク内部における被測定液体の状態を検出することができる。
【0037】
なお、この導体層40への通電は、制御基板12によって、リード部42の上端(図3における上端)側から制御基板12へと至るケーブル37および中継端子38を介して実現される。
【0038】
また、ホルダ34は、下端(図1における下端)に向けてその外径および内径が小さくなった筒状の樹脂部材からなり、環状のシール部材52を介して、この筒状部材24の下端側に被せるようにして取り付けられている。
【0039】
また、このホルダ34の下端には、状態検知素子32を通すことができる程度の大きさの素子用孔54が形成されており、この素子用孔54から内側の筒状部材24内部に至る位置関係で状態検知素子32が固定されている。この状態検知素子32の固定は、ホルダ34内側と状態検知素子32との間に接着剤56を充填することにより実現されている。
【0040】
また、プロテクタ36は、筒状の部材からなり、ホルダ34下端から突出する状態検知素子32のうち、少なくとも昇温領域46を取り囲むような位置関係で、ホルダ34の下端側の外面に取り付けられている。
【0041】
このプロテクタ36の側面には、図4に示すように、その内外にタンク内の被測定液体が流通できるようにすべく、その上端(図1における上端)側に側面流通孔62が複数形成されている。また、このプロテクタ36の側面には、いずれかの側面流通孔62の下側に、この側面流通孔62からプロテクタ36の長さ方向に沿って延びるスリット64が形成されている。そして、プロテクタ36は、側面流通孔62およびスリット64が、状態検知素子32のうちでヒータ部44のヒータパターンと向かい合う面にあたる表面および裏面と正対しないような位置関係で取り付けられている。
【0042】
また、このプロテクタ36の底面には、その内外にタンク内の被測定液体が流通できるようにすべく、上述した側面流通孔62よりも径の小さい底面流通孔66が複数形成されている。これら底面流通孔66は、プロテクタ36の底面に投影した状態検知素子32(図4における波線参照)と重ならない位置にそれぞれ配置されている。
【0043】
なお、プロテクタ36および外側の筒状部材22は、状態検知素子32の表面および裏面からプロテクタ36の流通孔62,64を通るように延びる直線を想定した場合に、その直線全てが、外側の筒状部材22における流通孔23以外の領域に到達するような位置関係で取り付けられている。つまり、液体検知センサ1外部から、外側の筒状部材22に形成された流通孔23を介して内部を覗いたとしても、プロテクタ36の流通孔62,64を介して状態検知素子32が直接見えてしまうことがない。
【0044】
このような構成の液体検知センサ1において、基体10に内蔵された制御基板12は、図5に示すように、液体検知センサ1外部回路(具体的にはECU)との情報の入出力を制御する入出力回路72,液体検知センサ1全体の動作を制御するためのマイコン74,電極構造体20に対する電圧の印加および出力電流の検出を行う液面検知回路76,素子構造体30の状態検知素子32に対する通電および出力電圧の検出を行う状態検知回路78などからなる。
【0045】
これらのうち、液面検知回路76は、マイコン74からの指令を受けて電極構造体20に対する電圧の印加を行い、そのときに流れた出力電流を電圧値に変換し、その値をマイコン74へと出力する。マイコン74側では、電極構造体20への指令後、この電極構造体20から出力されてくる電圧値に基づいて、その時点における液面レベルを周知の手法にて特定する。
【0046】
また、状態検知回路78は、素子構造体30の導体層40への定電流による通電を行う定電流出力部82と、定電流出力部82による導体層40への通電経路を導通または開放させるスイッチ部84と、導体層40におけるヒータ部44両端の電位差を検出してマイコン74へと出力する差動増幅部86と、からなる。そして、マイコン74側では、状態検知回路78(のスイッチ部84)に対する指令後、この状態検知回路78(の差動増幅部86)から出力される電圧値に基づいて、その時点における被測定液体の状態を後述する状態検知処理にて特定する。
(2)マイコンによる状態検知処理
以下に、制御基板12のマイコン74が内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って実行する状態検知処理の処理手順を図6に基づいて説明する。この状態検知処理は、液体検知センサ1外部回路(ECU)からの指令を受けた際に開始される。
【0047】
この状態検知処理が起動されると、まず、素子構造体30への通電が開始される(s110)。ここでは、状態検知回路78のスイッチ部84に対し、通電経路を導通させるべき旨が指令され、この指令を受けたスイッチ部84が、定電流出力部82から素子構造体30の導体層40に至る経路を導通させることにより、この導体層40への通電が開始される。
【0048】
次に、s110による通電の開始から所定の第1基準時間td1(本実施形態では、10ms)だけ経過するまで待機状態となり(s120:NO)、基準時間td1が経過したら(s120:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される基準電圧値Vd1が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s130)。
【0049】
次に、s130にて取得された基準電圧値Vd1から素子構造体30における状態検知素子32の温度が演算され、この温度に基づいてタンク内における被測定液体の温度が算出される(s140)。
【0050】
次に、s140にて特定された被測定液体の温度が、被測定液体としてタンクに貯留されるべき尿素水の凍結する温度(−11°C)以下であるか否かがチェックされ(s150)、その凍結する温度以下であると判定された場合(s150:YES)、s110にて開始された状態検知素子32への通電が終了される(s160)。
【0051】
ここでは、状態検知回路78のスイッチ部84に対し、定電流出力部82による導体層40への通電経路を開放させるべき旨が指令され、この指令を受けたスイッチ部84が、定電流出力部82から導体層40に至る経路を開放させることにより、導体層40への通電が終了される。
【0052】
そして、所定の待機時間が経過するまで待機状態となった後(s170:NO)、待機時間が経過したら(s170:YES)、プロセスがs110へと戻る。
一方、上記s150で、s140にて特定された温度が凍結する温度より大きいと判定された場合(s150:NO)、s110により通電が開始された以降の経過時間が所定の第2基準時間td2(本実施形態においては300msec)を経過するまで待機状態となる(s180:NO)。
【0053】
その後、第2基準時間td2を経過したら(s180:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される基準電圧値Vd2が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s190)。
【0054】
次に、s190にて取得された基準電圧値Vd2とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV1(=Vd2−Vd1)が算出される(s200)。
次に、s200にて算出された電位差ΔV1が、第2基準時間td2を経過した時点における電位差として通常到達し得ないしきい値Qを超えている(Q<ΔV1)か否かがチェックされる(s210)。この「しきい値Q」は、状態検知素子32の過昇温を判定するためのしきい値であって、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている場合(いわゆる空焚き状態)や、水以外の熱伝導率が小さな液体(例えば、軽油)が貯留されている場合に、上記s200にて算出されうる電位差としてあらかじめ定められた値である(図7参照)。
【0055】
なお、このs210で電位差ΔV1がしきい値Qを超えていると判定されるということは、ヒータ部44の両端電圧が大きくなり、ヒータ部44が過昇温している恐れがあるということを意味している。つまり、このs210では、第2基準時間td2を経過した時点で電位差ΔV1がしきい値Qを超えていることをもって、過昇温が発生していると推定,判定することになる。
【0056】
このs210で、電位差ΔV1がしきい値Qを超えていると判定された場合(s210:YES)、s160と同様、上記s110にて開始された状態検知素子32への通電が終了される(s220)。
【0057】
次に、リセットフラグに「0」がセットされた後(s230)、s200にて算出された電位差ΔV1が、しきい値Qよりも所定値だけ大きいしきい値Rを超えている(R<ΔV1)か否かがチェックされる(s240)。この「しきい値R」は、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている場合に上記s200において算出されうる電位差としてあらかじめ定められた値である(図7参照)。
【0058】
このs240で、電位差ΔV1がしきい値Rを超えていると判定された場合(s240:YES)、第1異常カウンタK1に「1」が加算される(s250)。
次に、この第1異常カウンタK1のカウント値が所定値(例えば、5)以上(K1≧5)となっていれば(s260:YES)、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている(換言すれば、空焚き状態である)旨を通知するための第1異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと出力された後(s270)、所定の待機時間(例えば、60sec)が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0059】
この第1異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンクへの尿素水の補給を促すことができる。
【0060】
その後、上記s280にて所定の待機時間が経過したら(s280:YES)、プロセスがs110へと戻る。
一方、上記s260で、第1異常カウンタK1のカウント値が所定値以上となっていなければ(s260:NO)、s270が行われることなく、プロセスがs280へ移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0061】
また、上記s240で、電位差ΔV1がしきい値Rを超えていないと判定された場合(s240:NO)、第2異常カウンタK2に「1」が加算される(s290)。
次に、この第2異常カウンタK2のカウント値が所定値(例えば、5)以上(K2≧5)となっていれば(s300:YES)、水以外の熱伝導率が小さな液体(例えば、軽油)がタンクに貯留されている旨を通知するための第2異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと通知された後(s310)、プロセスがs280へと移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0062】
この第2異常通知信号を入力したECU側では、例えば、水以外の熱伝導率が小さな液体がタンクに貯留されている旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンク内の液体の入れ替えを促すことができる。
【0063】
一方、第2異常カウンタK2のカウント値が所定値以上となっていなければ(s300:NO)、s310が行われることなく、プロセスがs280へ移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0064】
また、上記s210で、電位差ΔV1がしきい値Qを超えていないと判定された場合(s210:NO)、s110により通電が開始された以降の経過時間が、第2基準時間td2よりも長い第1しきい値時間tt1(本実施形態においては700msec)を経過するまで待機状態となる(s320:NO)。
【0065】
その後、第1しきい値時間tt1を経過したら(s320:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される第1判定電圧値Vt1が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s330)。
【0066】
次に、s330にて取得された第1判定電圧値Vt1とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV2(=Vt1−Vd1)が算出される(s340)。
次に、s340にて算出された電位差ΔV2をその時点における被測定液体の濃度(尿素濃度)に換算した濃度判定値N1が特定される(s350)。
【0067】
濃度が異なる尿素水をタンク内に貯留した状態それぞれについて、導体層40への定電流による通電を行った場合、図8に示すように、いずれの濃度のときも通電時間に応じて出力電圧が上昇することとなるが、その上昇パターンは、濃度に応じて異なる。そして、各濃度の尿素水について、第1しきい値時間tt1が経過した時点における電位差ΔV2に着目すると、図9に示すように、濃度に比例して電位差ΔV2の値が大きくなるといった相関関係を示すことが分かる。そのため、このs350では、その相関関係を示すデータ(データテーブルなど)としてあらかじめ用意された濃度情報に基づいて、s340にて算出された電位差ΔV2のときにおける濃度が特定される。
【0068】
ただし、電位差ΔV2に基づいて尿素水の濃度判定値N1を特定した場合、例えば、濃度25%の砂糖水がタンク内に入っていたとしても、濃度33.1%の尿素水と電位差ΔV2が同等のため、尿素水の濃度判定値N1は33.1%と特定されることになる(図9参照)。そのため、尿素水の濃度判定値N1のみを用いていては、タンク内の被測定液体が特定種類の液体(即ち、適正濃度の尿素水)であるか否かを判定することができない。
【0069】
そこで、本実施形態の状態検知処理では、尿素水の濃度判定値N1のみでタンク内の被測定液体が特定種類の液体(即ち、適正濃度の尿素水)であるか否かを判定せずに、s350の処理が終了すると、次の処理へ移行する。
【0070】
具体的には、s350にて濃度判定値N1が特定された後、s110により通電が開始された以降の経過時間が、第1しきい値時間tt1よりも長い第2しきい値時間tt2(本実施形態においては3000msec)を経過するまで待機状態となる(s360:NO)。
【0071】
その後、第2しきい値時間tt2を経過したら(s360:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される第2判定電圧値Vt2が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として特定される(s370)。
【0072】
次に、s370にて取得された第2判定電圧値Vt2とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV3(=Vt2−Vd1)が算出される(s380)。
次に、s380にて算出された電位差ΔV3をその時点における液体の濃度(尿素濃度)に換算した濃度判定値N2が特定される(s390)。ここでは、上述した出力電圧の上昇パターン(図8)のうち、第2しきい値時間tt2が経過した時点における電位差ΔV3にのみ着目した場合の相関関係(図10参照)を示すデータ(データテーブルなど)としてあらかじめ用意された濃度情報に基づいて、s380にて算出された電位差ΔV3のときにおける尿素水の濃度が特定される。
【0073】
なお、電位差ΔV3に基づいて尿素水の濃度判定値N2を特定した場合には、例えば、濃度25%の砂糖水がタンク内に入っていると、尿素水の濃度判定値N2は図10には示していないが75%と特定される。即ち、タンク内の液体が濃度25%の砂糖水であった場合に、電位差ΔV2に基づいて特定される尿素水の濃度判定値N1と、電位差ΔV3に基づいて特定される濃度判定値N2とは大きくかけ離れた値となる。
【0074】
こうして、s390にて濃度判定値N2が特定された後、この時点におけるリセットフラグに「1」がセットされていれば(s400:YES)、第1,第2異常カウンタK1,K2がリセットされて(s410)から次の処理(s430)へ移行する一方、リセットフラグに「0」がセットされていれば(s400:NO)、リセットフラグに「1」がセットされて(s420)から次の処理(s430)へ移行する。
【0075】
次に、s350にて特定された濃度判定値N1が所定のしきい値T以上であるか否かがチェックされる(s430)。この「しきい値T」は、タンク内に貯留されている被測定液体を水とみなすことのできる程度の低い濃度として定められた値である。
【0076】
このs430にて所定のしきい値T以上でないと判定されたら(s430:NO)、タンク内に貯留されている被測定液体が水であると判定され(s440)、その旨を通知するための第3異常通知信号が、入出力回路72を介して液体検知センサ1外部のECUへと出力された後(s450)、プロセスがs280へと移行する。
【0077】
この第3異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が水である旨の報知などを行うことにより、ユーザに対して液体の入れ替えを促すことができる。
【0078】
一方、s430にて所定のしきい値T以上であると判定されたら(s430:YES)、s350にて特定された濃度判定値N1とs390にて特定された濃度判定値N2との差の絶対値が所定のしきい値SH(|N1−N2|≦SH)以下であるか否かがチェックされる(s460)。この「しきい値SH」は、タンク内に貯留された被測定液体が尿素水以外の不適切な液体(具体的には、砂糖水)である場合に、濃度判定値N1と濃度判定値N2との差の絶対値として到達しうる値として定められた値である。つまり、このs460では、被測定液体が尿素水であるか否かを、濃度判定値N1,N2の近似度に基づいて判定していることになる。
【0079】
このs460にて所定のしきい値SH以下であると判定された場合(s460:YES)、タンク内に貯留されている被測定液体が特定濃度の尿素水であると判定され(s470)、その旨を通知するための正常通知信号が、入出力回路72を介して液体検知センサ1外部へと出力された後(s480)、プロセスがs280へと移行する。
【0080】
この正常通知信号を入力したECU側では、例えば、正常である旨をユーザに報知する処理を行うことができる。
一方、上記s460にて所定のしきい値SHより大きいと判定された場合(s460:NO)、タンク内に貯留されている被測定液体が不適切な液体(具体的には、砂糖水)であると判定され(s490)、その旨を通知するための第4異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと出力された後(s500)、プロセスがs280へと移行する。
【0081】
この第4異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が不適切な液体である旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンク内の液体の入れ替えを促すことができる。
【0082】
このようにして本実施形態の状態検知処理では、尿素水の濃度判定値N1,N2の近似度に基づいて、タンク内の被測定液体が特定種類の液体,即ち適正濃度の尿素水であるか否かを判定することができる。
(3)作用,効果
このように構成された液体検知センサ1は、状態検知素子32のヒータ部44への通電時間である第2しきい値時間tt2内にそれぞれ取得される第1基準電圧値Vd1,第1判定電圧値Vt1および第2判定電圧値Vt2に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する(図6のs330〜s500)。
【0083】
また、この判定の過程においては、第2基準時間td2の経過時に取得した第2基準電圧値Vd2,第1基準時間td1の経過時に取得した第1基準電圧値Vd1,および,過昇温を判定するためのしきい値Qに基づき、状態検知素子32に過昇温が発生しているか否かを判定しており(図6のs210)、過昇温が発生していると判定される場合には、状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了することになる(同図s220)。
【0084】
この判定に際して参照される第2基準電圧値Vd2は、第1基準電圧値Vd1の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミングで取得されるものである。そのため、過昇温が発生していると判定される場合に状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させるということは、その通電を、第1基準電圧値Vd1の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミング,つまり第2しきい値時間tt2が経過する前に終了させることができることを意味している。
【0085】
このように、状態検知素子32に過昇温が発生していたとしても、第2しきい値時間tt2が経過する前に状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させることができるため、その通電に伴う温度上昇を抑制することができる。その結果、ヒータ部44ひいては状態検知素子32が過昇温してしまうことを防止することができ、これにより、状態検知素子32が過昇温により破損してしまうことを防止することができる。
【0086】
ここで、状態検知素子32のヒータ部44への通電は、状態検知素子32に過昇温が発生していると判定された直後に終了するため、その通電に伴う温度上昇をより早期に抑制して、状態検知素子32が過昇温してしまうことをより確実に防止することができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0087】
例えば、上記実施形態においては、第1,第2判定電圧値Vt1,Vt2から第1,第2判定濃度N1,N2を特定したうえで、これら第1,第2判定濃度N1,N2に基づいて間接的に被測定液体の判定を行うように構成されたものを例示した(図6のs330〜s500)。しかし、被測定液体の判定については、第1,第2判定濃度N1,N2を特定することなく、第1,第2判定電圧値Vt1,Vt2に基づいて直接的に行うように構成してもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、状態検知素子32に過昇温が発生していると判定された直後に、そのヒータ部44への通電を終了させるように構成されたものを例示した(図6のs210→s220)。しかし、このような通電の終了は、第2しきい値時間tt2が経過する前であればどのタイミングで行うこととしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、図6のs350,s390で濃度を特定する際に参照する濃度情報がデータテーブルである構成を例示した。しかし、この濃度情報については、上述したような電位差と濃度との相関関係を通電時間毎に特定可能であればよく、例えば、数式などを採用してもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、図6のs130,s190,s330,s370にて、ヒータ部44に定電流で通電した場合におけるそのヒータ部44の両端電圧を出力値として取得するように構成されたものを例示した。しかし、これらにおいて取得する出力値としては、例えば、ヒータ部44そのものを流れている電流値としてもよい。
【0091】
このためには、例えば、定電流出力部82のかわりに、状態検知素子32のヒータ部44に定電圧で通電する定電圧源を備え、図6のs110では、その定電圧源によるヒータ部44への通電を開始させて、上記各処理にて、該当時間が経過した時点においてヒータ部44を流れている電流値を出力値として特定する、ように構成することが考えられる。
【0092】
このように構成すれば、ヒータ部44そのものを流れている電流値を出力値として特定して、被測定液体の判定を行うことができる。
また、上記実施形態においては、図6のs350で濃度判定値N1が算出された直後に、同図s430による濃度判定値N1がしきい値T以下であるか否かの判定を行い、以降の処理が行われるように構成してもよい。具体的には、同図s430による判定を、同図s350で濃度判定値N1が算出された直後に行い、「YES」と判定された場合に同図s360以降へと移行して、「NO」と判定された場合に同図s440以降へと移行すると共に、同図s410,s420の後、s430が行われることなく同図s460以降へと移行する、といった構成である。
【0093】
このように構成すれば、被測定液体が水であると推定される場合には、第2しきい値時間の経過を待たずにs440以降の処理を行うことができる。
また、上記実施形態においては、状態検知素子32におけるヒータ部44の両端電圧に基づいて被測定液体の判定を行うように構成されたものを例示した。
【0094】
しかし、図11に示すように、状態検知素子32を、定電流出力部82により定電流で通電するヒータ部44と、このヒータ部44への通電に伴う発熱により抵抗値が変化する感温抵抗体46と、からなるもの(いわゆる傍熱型の素子)とし、この感温抵抗体46の抵抗値に応じた出力(電流値,電圧値)に基づいて被測定液体の判定を行う、ように構成してもよい。
(5)本発明との対応関係
以上説明した実施形態においては、定電流出力部82が本発明における定電流源である。
【0095】
また、図6のs110は本発明の通電実行手段であり、同図s130は本発明の基準取得手段であり、同図s330は本発明の第1出力取得手段であり、同図s340は本発明の第1出力差算出手段であり、同図s370は本発明の第2出力特定手段であり、同図s380は本発明の第2出力差算出手段であり、同図s460,s470,s490は本発明の種類判定手段であり、同図s190は本発明の第3出力取得手段であり、同図s200は本発明の第3出力差算出手段であり、同図s210は本発明の過昇温判定手段であり、同図s220は本発明の通電終了手段である。
【0096】
また、第2しきい値時間tt2が本発明における検出時間である。
また、図6のs130にて取得される第1基準電圧値Vd1が本発明における基準値であり、同図s330にて取得される第1判定電圧値Vt1が本発明における第1出力値であり、同図s370にて取得される第2判定電圧値Vt2が本発明における第2出力値であり、同図s190にて取得される第2基準電圧値Vd2が本発明における第3出力値である。
【0097】
また、図6のs340にて算出される電位差ΔV2が本発明における第1出力差であり、同図s380にて算出される電位差ΔV3が本発明における第2出力差であり、同図s200にて算出される電位差ΔV1が本発明における第3出力差である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】液体検知センサの側面図(一部破断した断面となっている)
【図2】電極構造体20および素子構造体30の部分的な縦断面図
【図3】状態検出用素子の正面図
【図4】プロテクタの三面図
【図5】液体検知センサの全体構成を示すブロック図
【図6】状態検知処理を示すフローチャート
【図7】ヒータ部への通電時間と出力電圧との関係を示す図(尿素水,軽油,空焚き)
【図8】ヒータ部への通電時間と出力電圧との関係を示す図(水,尿素水,砂糖水)
【図9】第1しきい値時間tt1経過時点における出力電圧の変化量と被測定液体の濃度との関係を示す図
【図10】第2しきい値時間tt2経過時点における出力電圧の変化量と被測定液体の濃度との関係を示す図
【図11】別の実施形態における液体検知センサの全体構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0099】
1…液体検知センサ、10…基体、12…制御基板、14…取付部、20…電極構造体、22…筒状部材、23…流通孔、24…筒状部材、25…絶縁被膜、26…スペーサー、28…整流部材、30…素子構造体、32…状態検知素子、34…ホルダ、36…プロテクタ、37…ケーブル、38…中継端子、39…セラミック絶縁基体、40…導体層、42…リード部、44…ヒータ部、46…昇温領域、52…シール部材、54…素子用孔、56…接着剤、62…側面流通孔、64…スリット、66…底面流通孔、72…入出力回路、74…マイコン、76…液面検知回路、78…状態検知回路、82…定電流出力部、84…スイッチ部、86…差動増幅部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の状態を検知するための液体検知センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定するための技術として、次のような技術が提案されている。
それは、自身の温度に応じて抵抗値が変化する発熱抵抗体(発熱体および感温体)を有する状態検知素子(識別センサー部)を被測定液体に浸漬させ、その抵抗体(発熱体)に通電した場合における抵抗体(感温体)の抵抗値に応じた出力を異なるタイミングで取得した後、それら出力に基づいて被測定液体が尿素水溶液か砂糖水かを判定する、といった技術である(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−337969号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ただ、上述した技術では、被測定液体が充填された容器内の環境に拘わらず、比較的に長い時間の発熱抵抗体への通電が行われるため、場合によっては状態検知素子が過昇温してしまう。
【0004】
それは、例えば、容器内の被測定液体が消費されて空になっていたり、軽油のように上記特定種類の液体よりも非常に熱伝導率の低い液体が被測定液体として充填された状態にある場合である。このような場合には、容器内に特定種類の液体が充填されている場合と比べて、発熱抵抗体に通電した場合における温度上昇が大きくなるため、発熱抵抗体ひいては状態検知素子が過昇温しやすくなる。
【0005】
このように状態検知素子が過昇温してしまうことは、状態検知素子そのものが破損する要因となるため好ましいことではない。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、状態検知素子が過昇温により破損してしまうことを防止するための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載の液体検知センサは、自身の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体を有し、特定種類の被測定液体に浸漬される状態検知素子と、該状態検知素子の抵抗体への通電を検出時間にわたり行う通電実行手段と、前記検出時間内に前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す基準値を取得する基準取得手段と、前記検出時間内で且つ前記基準値の取得後に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第1出力値を取得する第1出力取得手段と、前記第1出力値と前記基準値との差である第1出力差を算出する第1出力差算出手段と、前記検出時間が経過した時点において、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第2出力値を取得する第2出力取得手段と、前記第2出力値と前記基準値との差である第2出力差を算出する第2出力差算出手段と、前記第1出力差と前記第2出力差とに基づいて、前記被測定液体が前記特定種類の液体であるか否か判定する種類判定手段と、を備えている。
【0007】
さらに、この液体検知センサは、前記検出時間内であり、前記基準値の取得後且つ前記第1出力値の取得以前に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第3出力値を取得する第3出力取得手段と、前記第3出力値と前記基準値との差である第3出力差を算出する第3出力差算出手段と、前記第3出力差と前記状態検知素子の過昇温を判定する判定しきい値とに基づいて、前記状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定する過昇温判定手段と、該過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された場合に、前記通電実行手段による通電を前記検出時間の経過前に終了させる通電終了手段と、を備えている。
【0008】
このように構成された液体検知センサでは、状態検知素子の抵抗体への通電時間である検出時間内にそれぞれ取得される基準値,第1出力値および第2出力値に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する。
【0009】
そして、この判定の過程においては、基準値の取得から第1出力値の取得までのタイミングで取得した第3出力値,および,過昇温を判定する判定しきい値に基づき、状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定しており、過昇温が発生していると判定される場合には、検出時間が経過する前に状態検知素子の抵抗体への通電を終了させることになる。
【0010】
このように、上記構成では、被測定液体が空であったり、特定種類の液体よりも熱伝導率が非常に低いものであったりして、状態検知素子に過昇温が発生する環境であったとしても、検出時間が経過する前に状態検知素子の抵抗体への通電を終了させることができるため、その通電に伴う温度上昇を早期に抑制することができる。その結果、抵抗体ひいては状態検知素子が過昇温してしまうことを防止することができ、これにより、状態検知素子が破損してしまうことを防止することができる。
【0011】
なお、上記構成における通電実行手段は、例えば、電源から抵抗体へと至る経路中に設けたスイッチング素子を制御し、この経路を導通させることにより、電源による抵抗体への通電を実行する、といった構成とすればよい。
【0012】
また、上述した第3出力取得手段は、検出時間内であって、基準値の取得後かつ第1出力値の取得以前であれば、どのようなタイミングで第3出力値を取得することとしてもよい。具体的な例としては、基準値の取得後かつ第1出力値の取得前や、基準値の取得後かつ第1出力値の取得時に第3出力値を取得することが考えられる。
【0013】
この後者の場合、第1出力値と第3出力値とが同じタイミングで取得されることになるため、第1,第3出力取得手段を同一の手段とし、その手段により取得された出力値を、第1,第3出力値それぞれとして第1,第3出力差算出手段が第1,第3出力差を算出するように構成すればよい。
【0014】
また、上述した過昇温判定手段は、第3出力値と判定しきい値とに基づいて、状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定するが、その具体的な判定方法については特に限定されない。例えば、第3出力値と判定しきい値とを比較し、第3出力値が判定しきい値よりも大きくなっている場合に、状態検知素子に過昇温が発生していると判定するように構成することが考えられる。
【0015】
また、上述した通電終了手段は、状態検知素子に過昇温が発生していると判定された以降、検出時間が経過する前であれば、どのようなタイミングで通電を終了させることとしてもよい。例えば、請求項2に記載のように、前記過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、前記通電実行手段による通電を終了させる、ように構成することが考えられる。
【0016】
このように構成すれば、状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、その抵抗体への通電が終了するため、その通電に伴う温度上昇をより早期に抑制して、状態検知素子が過昇温してしまうことをより確実に防止することができる。
【0017】
また、上述した基準取得手段,第1〜第3出力取得手段は、抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す値として、例えば、抵抗体そのものを流れている電流値や、抵抗体に印加されている電圧値(両端電圧)を検出して特定するように構成することが考えられる。
【0018】
これらのうち、抵抗体そのものを流れている電流値を基準値,出力値として特定するためには、例えば、抵抗体に定電圧で通電する定電圧源を備え、通電実行手段が、定電圧源による抵抗体への通電を行わせ、基準取得手段が、抵抗体を流れる電流値を基準値として取得して、第1〜第3出力取得手段が、抵抗体を流れる電流値を第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する、ように構成することが考えられる。
【0019】
このように構成すれば、抵抗体そのものを流れている電流値を基準値,出力値として特定して被測定液体の判定を行うことができる。
また、抵抗体の両端電圧を基準値,出力値として特定するための構成としては、例えば、請求項3に記載の液体検知センサように構成することが考えられる。
【0020】
この液体検知センサは、前記状態検知素子の抵抗体に定電流を流す定電流源を備えている。そして、前記通電実行手段は、前記定電流源による前記抵抗体への通電を行い、前記基準取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記基準値として取得して、前記第1〜第3出力取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する、ように構成されている。
【0021】
このように構成すれば、抵抗体の両端電圧を基準値,出力値として特定して被測定液体の判定を行うことができる。
また、上述した状態検知素子の抵抗体は、単一の抵抗体からなる構成としてもよいし、発熱抵抗体および感温抵抗体からなる構成としてもよい。この後者の場合には、通電実行手段が、発熱抵抗体に対する通電を開始させると共に、基準取得手段および第1〜第3出力取得手段が、感温抵抗体の抵抗値に応じた基準値,出力値を特定するように構成すればよい。
【0022】
また、上述した課題については、上記いずれかの構成の備える全ての手段として機能させるための各種処理手順をコンピュータシステムに実行させるためのプログラムにおいても、解決することができるものである。
【0023】
このようなプログラムにより制御されるコンピュータシステムは、請求項1から3のいずれかに記載の液体検知センサの一部を構成することができる。
なお、上述したプログラムは、各種記録媒体や通信回線を介してコンピュータシステムやこれを利用するユーザに提供されるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
液体検知センサ1は、タンク内に貯留された液体の状態を検出するために用いられるものであって、図1に示すように、箱状の基体10,この基体10の下端(図1における下端)から突出する筒状の電極構造体20,この電極構造体20内に配置された素子構造体30などで構成されている。
【0025】
なお、本実施形態においては、尿素水を貯留するタンクにつき、このタンク内に貯留された液体(被測定液体)の状態を検出するために用いる場合について例示する。
基体10には、液体検知センサ1全体を制御するための制御基板12が内蔵されており、この制御基板12(の後述するマイコン74)が、後述する状態検知処理を実行する。
【0026】
また、この基体10は、その下端に、タンクの被取付部(図示されない)との取付を実現するための取付部14が形成されており、この取付部14を介してタンク上部に基体10が取り付けられる。これにより、その被取付部からタンク内部へと、電極構造体20および素子構造体30を配置させることができる。
【0027】
電極構造体20は、タンク内部に貯留された被測定液体の液面レベルを検出するためのセンサとして用いられるものであって、それぞれ外径の異なる2つの筒状部材22,24と、それら筒状部材22,24がその長さ方向(図1における上下方向)と直交する断面において同心状に配置されるように位置決めをするスペーサー26と、外側の筒状部材22の下端側に嵌め込まれた整流部材28と、からなる。
【0028】
これらのうち、筒状部材22,24は、それぞれ導電性を有する一対の電極として機能するものであって、外側に位置する筒状部材22が、基体10を介してグランドレベルに接続されており、内側に位置する筒状部材24が、基体10における制御基板12に接続されている。なお、内側に位置する筒状部材24は、その外周面のうち、被測定液体に接触する領域に、フッ素樹脂からなる絶縁被膜25が形成されている。
【0029】
また、外側の筒状部材22は、内側の筒状部材24よりも下方向への突出量が多く、この内側の筒状部材24を、その下端側に取り付けられた素子構造体30と共に内部に収めている。なお、この外側の筒状部材22には、その内外にタンク内の液体を流通させるために複数の流通孔23が形成されている。
【0030】
また、スペーサー26は、絶縁材料(例えば、ゴムなど)で形成されており、両者間の電気的な絶縁を実現すると共に、筒状部材22,24を所定の間隔で配置すべく位置決めを行う。
【0031】
また、整流部材28は、外側の筒状部材22における下端側の中央部分を塞ぐように配置された板状の部材であって、タンク内の液体に急激な流れが発生した場合に、その急激な被測定液体の流れが筒状部材22内部に至ることを抑制する。
【0032】
このような電極構造体20においては、筒状部材22,24がそれぞれ間隔を空けて配置された電極として機能しているため、これら電極対をコンデンサとした場合におけるその静電容量は、筒状部材22,24がその長さ方向において液体に浸漬している割合により変化することとなる。そのため、この筒状部材22,24からなる電極対に電圧を印加した場合におけるその出力電流に基づいて、タンク内部における液体の液面レベルを検出することができる。
【0033】
素子構造体30は、図2に示すように、板状の状態検知素子32と、この状態検知素子32を内側の筒状部材24下端側に固定するためのホルダ34と、状態検知素子32の周辺における被測定液体の流れを制限するためのプロテクタ36と、からなる。
【0034】
これらのうち、状態検知素子32は、図3に示すように、それぞれ同一方向に延びる一対の絶縁セラミック層の間に導体層40を封止して形成された板状の素子である。なお、一対の絶縁セラミック層の積層により、平板状のセラミック絶縁基体39が形成される。
【0035】
この導体層40は、状態検知素子32の長さ方向(図3における上下方向)に沿って延びる一対のリード部42と、発熱抵抗体のパターンとしてリード部42の下端(図3における下端)から延びるヒータ部44と、からなる。このヒータ部44は、状態検知素子32の下端側においてその表面および裏面に沿って拡がるヒータパターンとして形成されている。なお、セラミック層表面のうち、ヒータ部44が配置される領域は、この発熱抵抗体への通電に応じて発熱する昇温領域46となる(図3参照)。
【0036】
この導体層40において、ヒータ部44の抵抗値は、その温度に応じて変化するが、この導体層40に定電流で通電すると、ヒータ部44の両端電圧(出力電圧)は、その抵抗値に応じた値となる。この抵抗値は、状態検知素子32の周辺に存在する被測定液体の状態(具体的には種類,濃度,温度)に応じて異なったものとなるため、その出力電圧も被測定液体の状態に応じて異なった値となる。こうして、ヒータ部44に通電した場合におけるその出力電圧に基づいて、後述のように、タンク内部における被測定液体の状態を検出することができる。
【0037】
なお、この導体層40への通電は、制御基板12によって、リード部42の上端(図3における上端)側から制御基板12へと至るケーブル37および中継端子38を介して実現される。
【0038】
また、ホルダ34は、下端(図1における下端)に向けてその外径および内径が小さくなった筒状の樹脂部材からなり、環状のシール部材52を介して、この筒状部材24の下端側に被せるようにして取り付けられている。
【0039】
また、このホルダ34の下端には、状態検知素子32を通すことができる程度の大きさの素子用孔54が形成されており、この素子用孔54から内側の筒状部材24内部に至る位置関係で状態検知素子32が固定されている。この状態検知素子32の固定は、ホルダ34内側と状態検知素子32との間に接着剤56を充填することにより実現されている。
【0040】
また、プロテクタ36は、筒状の部材からなり、ホルダ34下端から突出する状態検知素子32のうち、少なくとも昇温領域46を取り囲むような位置関係で、ホルダ34の下端側の外面に取り付けられている。
【0041】
このプロテクタ36の側面には、図4に示すように、その内外にタンク内の被測定液体が流通できるようにすべく、その上端(図1における上端)側に側面流通孔62が複数形成されている。また、このプロテクタ36の側面には、いずれかの側面流通孔62の下側に、この側面流通孔62からプロテクタ36の長さ方向に沿って延びるスリット64が形成されている。そして、プロテクタ36は、側面流通孔62およびスリット64が、状態検知素子32のうちでヒータ部44のヒータパターンと向かい合う面にあたる表面および裏面と正対しないような位置関係で取り付けられている。
【0042】
また、このプロテクタ36の底面には、その内外にタンク内の被測定液体が流通できるようにすべく、上述した側面流通孔62よりも径の小さい底面流通孔66が複数形成されている。これら底面流通孔66は、プロテクタ36の底面に投影した状態検知素子32(図4における波線参照)と重ならない位置にそれぞれ配置されている。
【0043】
なお、プロテクタ36および外側の筒状部材22は、状態検知素子32の表面および裏面からプロテクタ36の流通孔62,64を通るように延びる直線を想定した場合に、その直線全てが、外側の筒状部材22における流通孔23以外の領域に到達するような位置関係で取り付けられている。つまり、液体検知センサ1外部から、外側の筒状部材22に形成された流通孔23を介して内部を覗いたとしても、プロテクタ36の流通孔62,64を介して状態検知素子32が直接見えてしまうことがない。
【0044】
このような構成の液体検知センサ1において、基体10に内蔵された制御基板12は、図5に示すように、液体検知センサ1外部回路(具体的にはECU)との情報の入出力を制御する入出力回路72,液体検知センサ1全体の動作を制御するためのマイコン74,電極構造体20に対する電圧の印加および出力電流の検出を行う液面検知回路76,素子構造体30の状態検知素子32に対する通電および出力電圧の検出を行う状態検知回路78などからなる。
【0045】
これらのうち、液面検知回路76は、マイコン74からの指令を受けて電極構造体20に対する電圧の印加を行い、そのときに流れた出力電流を電圧値に変換し、その値をマイコン74へと出力する。マイコン74側では、電極構造体20への指令後、この電極構造体20から出力されてくる電圧値に基づいて、その時点における液面レベルを周知の手法にて特定する。
【0046】
また、状態検知回路78は、素子構造体30の導体層40への定電流による通電を行う定電流出力部82と、定電流出力部82による導体層40への通電経路を導通または開放させるスイッチ部84と、導体層40におけるヒータ部44両端の電位差を検出してマイコン74へと出力する差動増幅部86と、からなる。そして、マイコン74側では、状態検知回路78(のスイッチ部84)に対する指令後、この状態検知回路78(の差動増幅部86)から出力される電圧値に基づいて、その時点における被測定液体の状態を後述する状態検知処理にて特定する。
(2)マイコンによる状態検知処理
以下に、制御基板12のマイコン74が内蔵メモリに記憶されたプログラムに従って実行する状態検知処理の処理手順を図6に基づいて説明する。この状態検知処理は、液体検知センサ1外部回路(ECU)からの指令を受けた際に開始される。
【0047】
この状態検知処理が起動されると、まず、素子構造体30への通電が開始される(s110)。ここでは、状態検知回路78のスイッチ部84に対し、通電経路を導通させるべき旨が指令され、この指令を受けたスイッチ部84が、定電流出力部82から素子構造体30の導体層40に至る経路を導通させることにより、この導体層40への通電が開始される。
【0048】
次に、s110による通電の開始から所定の第1基準時間td1(本実施形態では、10ms)だけ経過するまで待機状態となり(s120:NO)、基準時間td1が経過したら(s120:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される基準電圧値Vd1が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s130)。
【0049】
次に、s130にて取得された基準電圧値Vd1から素子構造体30における状態検知素子32の温度が演算され、この温度に基づいてタンク内における被測定液体の温度が算出される(s140)。
【0050】
次に、s140にて特定された被測定液体の温度が、被測定液体としてタンクに貯留されるべき尿素水の凍結する温度(−11°C)以下であるか否かがチェックされ(s150)、その凍結する温度以下であると判定された場合(s150:YES)、s110にて開始された状態検知素子32への通電が終了される(s160)。
【0051】
ここでは、状態検知回路78のスイッチ部84に対し、定電流出力部82による導体層40への通電経路を開放させるべき旨が指令され、この指令を受けたスイッチ部84が、定電流出力部82から導体層40に至る経路を開放させることにより、導体層40への通電が終了される。
【0052】
そして、所定の待機時間が経過するまで待機状態となった後(s170:NO)、待機時間が経過したら(s170:YES)、プロセスがs110へと戻る。
一方、上記s150で、s140にて特定された温度が凍結する温度より大きいと判定された場合(s150:NO)、s110により通電が開始された以降の経過時間が所定の第2基準時間td2(本実施形態においては300msec)を経過するまで待機状態となる(s180:NO)。
【0053】
その後、第2基準時間td2を経過したら(s180:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される基準電圧値Vd2が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s190)。
【0054】
次に、s190にて取得された基準電圧値Vd2とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV1(=Vd2−Vd1)が算出される(s200)。
次に、s200にて算出された電位差ΔV1が、第2基準時間td2を経過した時点における電位差として通常到達し得ないしきい値Qを超えている(Q<ΔV1)か否かがチェックされる(s210)。この「しきい値Q」は、状態検知素子32の過昇温を判定するためのしきい値であって、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている場合(いわゆる空焚き状態)や、水以外の熱伝導率が小さな液体(例えば、軽油)が貯留されている場合に、上記s200にて算出されうる電位差としてあらかじめ定められた値である(図7参照)。
【0055】
なお、このs210で電位差ΔV1がしきい値Qを超えていると判定されるということは、ヒータ部44の両端電圧が大きくなり、ヒータ部44が過昇温している恐れがあるということを意味している。つまり、このs210では、第2基準時間td2を経過した時点で電位差ΔV1がしきい値Qを超えていることをもって、過昇温が発生していると推定,判定することになる。
【0056】
このs210で、電位差ΔV1がしきい値Qを超えていると判定された場合(s210:YES)、s160と同様、上記s110にて開始された状態検知素子32への通電が終了される(s220)。
【0057】
次に、リセットフラグに「0」がセットされた後(s230)、s200にて算出された電位差ΔV1が、しきい値Qよりも所定値だけ大きいしきい値Rを超えている(R<ΔV1)か否かがチェックされる(s240)。この「しきい値R」は、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている場合に上記s200において算出されうる電位差としてあらかじめ定められた値である(図7参照)。
【0058】
このs240で、電位差ΔV1がしきい値Rを超えていると判定された場合(s240:YES)、第1異常カウンタK1に「1」が加算される(s250)。
次に、この第1異常カウンタK1のカウント値が所定値(例えば、5)以上(K1≧5)となっていれば(s260:YES)、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている(換言すれば、空焚き状態である)旨を通知するための第1異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと出力された後(s270)、所定の待機時間(例えば、60sec)が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0059】
この第1異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が少なくなっている旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンクへの尿素水の補給を促すことができる。
【0060】
その後、上記s280にて所定の待機時間が経過したら(s280:YES)、プロセスがs110へと戻る。
一方、上記s260で、第1異常カウンタK1のカウント値が所定値以上となっていなければ(s260:NO)、s270が行われることなく、プロセスがs280へ移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0061】
また、上記s240で、電位差ΔV1がしきい値Rを超えていないと判定された場合(s240:NO)、第2異常カウンタK2に「1」が加算される(s290)。
次に、この第2異常カウンタK2のカウント値が所定値(例えば、5)以上(K2≧5)となっていれば(s300:YES)、水以外の熱伝導率が小さな液体(例えば、軽油)がタンクに貯留されている旨を通知するための第2異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと通知された後(s310)、プロセスがs280へと移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0062】
この第2異常通知信号を入力したECU側では、例えば、水以外の熱伝導率が小さな液体がタンクに貯留されている旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンク内の液体の入れ替えを促すことができる。
【0063】
一方、第2異常カウンタK2のカウント値が所定値以上となっていなければ(s300:NO)、s310が行われることなく、プロセスがs280へ移行し、所定の待機時間が経過するまで待機状態となる(s280:NO)。
【0064】
また、上記s210で、電位差ΔV1がしきい値Qを超えていないと判定された場合(s210:NO)、s110により通電が開始された以降の経過時間が、第2基準時間td2よりも長い第1しきい値時間tt1(本実施形態においては700msec)を経過するまで待機状態となる(s320:NO)。
【0065】
その後、第1しきい値時間tt1を経過したら(s320:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される第1判定電圧値Vt1が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として取得される(s330)。
【0066】
次に、s330にて取得された第1判定電圧値Vt1とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV2(=Vt1−Vd1)が算出される(s340)。
次に、s340にて算出された電位差ΔV2をその時点における被測定液体の濃度(尿素濃度)に換算した濃度判定値N1が特定される(s350)。
【0067】
濃度が異なる尿素水をタンク内に貯留した状態それぞれについて、導体層40への定電流による通電を行った場合、図8に示すように、いずれの濃度のときも通電時間に応じて出力電圧が上昇することとなるが、その上昇パターンは、濃度に応じて異なる。そして、各濃度の尿素水について、第1しきい値時間tt1が経過した時点における電位差ΔV2に着目すると、図9に示すように、濃度に比例して電位差ΔV2の値が大きくなるといった相関関係を示すことが分かる。そのため、このs350では、その相関関係を示すデータ(データテーブルなど)としてあらかじめ用意された濃度情報に基づいて、s340にて算出された電位差ΔV2のときにおける濃度が特定される。
【0068】
ただし、電位差ΔV2に基づいて尿素水の濃度判定値N1を特定した場合、例えば、濃度25%の砂糖水がタンク内に入っていたとしても、濃度33.1%の尿素水と電位差ΔV2が同等のため、尿素水の濃度判定値N1は33.1%と特定されることになる(図9参照)。そのため、尿素水の濃度判定値N1のみを用いていては、タンク内の被測定液体が特定種類の液体(即ち、適正濃度の尿素水)であるか否かを判定することができない。
【0069】
そこで、本実施形態の状態検知処理では、尿素水の濃度判定値N1のみでタンク内の被測定液体が特定種類の液体(即ち、適正濃度の尿素水)であるか否かを判定せずに、s350の処理が終了すると、次の処理へ移行する。
【0070】
具体的には、s350にて濃度判定値N1が特定された後、s110により通電が開始された以降の経過時間が、第1しきい値時間tt1よりも長い第2しきい値時間tt2(本実施形態においては3000msec)を経過するまで待機状態となる(s360:NO)。
【0071】
その後、第2しきい値時間tt2を経過したら(s360:YES)、この時点において状態検知回路78の差動増幅部86から出力される第2判定電圧値Vt2が、状態検知素子32(詳細にはヒータ部44)からの出力電圧を示す値として特定される(s370)。
【0072】
次に、s370にて取得された第2判定電圧値Vt2とs130にて取得された基準電圧値Vd1との電位差を示す値ΔV3(=Vt2−Vd1)が算出される(s380)。
次に、s380にて算出された電位差ΔV3をその時点における液体の濃度(尿素濃度)に換算した濃度判定値N2が特定される(s390)。ここでは、上述した出力電圧の上昇パターン(図8)のうち、第2しきい値時間tt2が経過した時点における電位差ΔV3にのみ着目した場合の相関関係(図10参照)を示すデータ(データテーブルなど)としてあらかじめ用意された濃度情報に基づいて、s380にて算出された電位差ΔV3のときにおける尿素水の濃度が特定される。
【0073】
なお、電位差ΔV3に基づいて尿素水の濃度判定値N2を特定した場合には、例えば、濃度25%の砂糖水がタンク内に入っていると、尿素水の濃度判定値N2は図10には示していないが75%と特定される。即ち、タンク内の液体が濃度25%の砂糖水であった場合に、電位差ΔV2に基づいて特定される尿素水の濃度判定値N1と、電位差ΔV3に基づいて特定される濃度判定値N2とは大きくかけ離れた値となる。
【0074】
こうして、s390にて濃度判定値N2が特定された後、この時点におけるリセットフラグに「1」がセットされていれば(s400:YES)、第1,第2異常カウンタK1,K2がリセットされて(s410)から次の処理(s430)へ移行する一方、リセットフラグに「0」がセットされていれば(s400:NO)、リセットフラグに「1」がセットされて(s420)から次の処理(s430)へ移行する。
【0075】
次に、s350にて特定された濃度判定値N1が所定のしきい値T以上であるか否かがチェックされる(s430)。この「しきい値T」は、タンク内に貯留されている被測定液体を水とみなすことのできる程度の低い濃度として定められた値である。
【0076】
このs430にて所定のしきい値T以上でないと判定されたら(s430:NO)、タンク内に貯留されている被測定液体が水であると判定され(s440)、その旨を通知するための第3異常通知信号が、入出力回路72を介して液体検知センサ1外部のECUへと出力された後(s450)、プロセスがs280へと移行する。
【0077】
この第3異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が水である旨の報知などを行うことにより、ユーザに対して液体の入れ替えを促すことができる。
【0078】
一方、s430にて所定のしきい値T以上であると判定されたら(s430:YES)、s350にて特定された濃度判定値N1とs390にて特定された濃度判定値N2との差の絶対値が所定のしきい値SH(|N1−N2|≦SH)以下であるか否かがチェックされる(s460)。この「しきい値SH」は、タンク内に貯留された被測定液体が尿素水以外の不適切な液体(具体的には、砂糖水)である場合に、濃度判定値N1と濃度判定値N2との差の絶対値として到達しうる値として定められた値である。つまり、このs460では、被測定液体が尿素水であるか否かを、濃度判定値N1,N2の近似度に基づいて判定していることになる。
【0079】
このs460にて所定のしきい値SH以下であると判定された場合(s460:YES)、タンク内に貯留されている被測定液体が特定濃度の尿素水であると判定され(s470)、その旨を通知するための正常通知信号が、入出力回路72を介して液体検知センサ1外部へと出力された後(s480)、プロセスがs280へと移行する。
【0080】
この正常通知信号を入力したECU側では、例えば、正常である旨をユーザに報知する処理を行うことができる。
一方、上記s460にて所定のしきい値SHより大きいと判定された場合(s460:NO)、タンク内に貯留されている被測定液体が不適切な液体(具体的には、砂糖水)であると判定され(s490)、その旨を通知するための第4異常通知信号が、入出力回路72を介してECUへと出力された後(s500)、プロセスがs280へと移行する。
【0081】
この第4異常通知信号を入力したECU側では、例えば、タンク内に貯留されている被測定液体が不適切な液体である旨の報知などを行うことにより、ユーザに対してタンク内の液体の入れ替えを促すことができる。
【0082】
このようにして本実施形態の状態検知処理では、尿素水の濃度判定値N1,N2の近似度に基づいて、タンク内の被測定液体が特定種類の液体,即ち適正濃度の尿素水であるか否かを判定することができる。
(3)作用,効果
このように構成された液体検知センサ1は、状態検知素子32のヒータ部44への通電時間である第2しきい値時間tt2内にそれぞれ取得される第1基準電圧値Vd1,第1判定電圧値Vt1および第2判定電圧値Vt2に基づいて、被測定液体が特定種類の液体であるか否かを判定する(図6のs330〜s500)。
【0083】
また、この判定の過程においては、第2基準時間td2の経過時に取得した第2基準電圧値Vd2,第1基準時間td1の経過時に取得した第1基準電圧値Vd1,および,過昇温を判定するためのしきい値Qに基づき、状態検知素子32に過昇温が発生しているか否かを判定しており(図6のs210)、過昇温が発生していると判定される場合には、状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了することになる(同図s220)。
【0084】
この判定に際して参照される第2基準電圧値Vd2は、第1基準電圧値Vd1の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミングで取得されるものである。そのため、過昇温が発生していると判定される場合に状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させるということは、その通電を、第1基準電圧値Vd1の取得から第1判定電圧値Vt1の取得までのタイミング,つまり第2しきい値時間tt2が経過する前に終了させることができることを意味している。
【0085】
このように、状態検知素子32に過昇温が発生していたとしても、第2しきい値時間tt2が経過する前に状態検知素子32のヒータ部44への通電を終了させることができるため、その通電に伴う温度上昇を抑制することができる。その結果、ヒータ部44ひいては状態検知素子32が過昇温してしまうことを防止することができ、これにより、状態検知素子32が過昇温により破損してしまうことを防止することができる。
【0086】
ここで、状態検知素子32のヒータ部44への通電は、状態検知素子32に過昇温が発生していると判定された直後に終了するため、その通電に伴う温度上昇をより早期に抑制して、状態検知素子32が過昇温してしまうことをより確実に防止することができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0087】
例えば、上記実施形態においては、第1,第2判定電圧値Vt1,Vt2から第1,第2判定濃度N1,N2を特定したうえで、これら第1,第2判定濃度N1,N2に基づいて間接的に被測定液体の判定を行うように構成されたものを例示した(図6のs330〜s500)。しかし、被測定液体の判定については、第1,第2判定濃度N1,N2を特定することなく、第1,第2判定電圧値Vt1,Vt2に基づいて直接的に行うように構成してもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、状態検知素子32に過昇温が発生していると判定された直後に、そのヒータ部44への通電を終了させるように構成されたものを例示した(図6のs210→s220)。しかし、このような通電の終了は、第2しきい値時間tt2が経過する前であればどのタイミングで行うこととしてもよい。
【0089】
また、上記実施形態においては、図6のs350,s390で濃度を特定する際に参照する濃度情報がデータテーブルである構成を例示した。しかし、この濃度情報については、上述したような電位差と濃度との相関関係を通電時間毎に特定可能であればよく、例えば、数式などを採用してもよい。
【0090】
また、上記実施形態においては、図6のs130,s190,s330,s370にて、ヒータ部44に定電流で通電した場合におけるそのヒータ部44の両端電圧を出力値として取得するように構成されたものを例示した。しかし、これらにおいて取得する出力値としては、例えば、ヒータ部44そのものを流れている電流値としてもよい。
【0091】
このためには、例えば、定電流出力部82のかわりに、状態検知素子32のヒータ部44に定電圧で通電する定電圧源を備え、図6のs110では、その定電圧源によるヒータ部44への通電を開始させて、上記各処理にて、該当時間が経過した時点においてヒータ部44を流れている電流値を出力値として特定する、ように構成することが考えられる。
【0092】
このように構成すれば、ヒータ部44そのものを流れている電流値を出力値として特定して、被測定液体の判定を行うことができる。
また、上記実施形態においては、図6のs350で濃度判定値N1が算出された直後に、同図s430による濃度判定値N1がしきい値T以下であるか否かの判定を行い、以降の処理が行われるように構成してもよい。具体的には、同図s430による判定を、同図s350で濃度判定値N1が算出された直後に行い、「YES」と判定された場合に同図s360以降へと移行して、「NO」と判定された場合に同図s440以降へと移行すると共に、同図s410,s420の後、s430が行われることなく同図s460以降へと移行する、といった構成である。
【0093】
このように構成すれば、被測定液体が水であると推定される場合には、第2しきい値時間の経過を待たずにs440以降の処理を行うことができる。
また、上記実施形態においては、状態検知素子32におけるヒータ部44の両端電圧に基づいて被測定液体の判定を行うように構成されたものを例示した。
【0094】
しかし、図11に示すように、状態検知素子32を、定電流出力部82により定電流で通電するヒータ部44と、このヒータ部44への通電に伴う発熱により抵抗値が変化する感温抵抗体46と、からなるもの(いわゆる傍熱型の素子)とし、この感温抵抗体46の抵抗値に応じた出力(電流値,電圧値)に基づいて被測定液体の判定を行う、ように構成してもよい。
(5)本発明との対応関係
以上説明した実施形態においては、定電流出力部82が本発明における定電流源である。
【0095】
また、図6のs110は本発明の通電実行手段であり、同図s130は本発明の基準取得手段であり、同図s330は本発明の第1出力取得手段であり、同図s340は本発明の第1出力差算出手段であり、同図s370は本発明の第2出力特定手段であり、同図s380は本発明の第2出力差算出手段であり、同図s460,s470,s490は本発明の種類判定手段であり、同図s190は本発明の第3出力取得手段であり、同図s200は本発明の第3出力差算出手段であり、同図s210は本発明の過昇温判定手段であり、同図s220は本発明の通電終了手段である。
【0096】
また、第2しきい値時間tt2が本発明における検出時間である。
また、図6のs130にて取得される第1基準電圧値Vd1が本発明における基準値であり、同図s330にて取得される第1判定電圧値Vt1が本発明における第1出力値であり、同図s370にて取得される第2判定電圧値Vt2が本発明における第2出力値であり、同図s190にて取得される第2基準電圧値Vd2が本発明における第3出力値である。
【0097】
また、図6のs340にて算出される電位差ΔV2が本発明における第1出力差であり、同図s380にて算出される電位差ΔV3が本発明における第2出力差であり、同図s200にて算出される電位差ΔV1が本発明における第3出力差である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】液体検知センサの側面図(一部破断した断面となっている)
【図2】電極構造体20および素子構造体30の部分的な縦断面図
【図3】状態検出用素子の正面図
【図4】プロテクタの三面図
【図5】液体検知センサの全体構成を示すブロック図
【図6】状態検知処理を示すフローチャート
【図7】ヒータ部への通電時間と出力電圧との関係を示す図(尿素水,軽油,空焚き)
【図8】ヒータ部への通電時間と出力電圧との関係を示す図(水,尿素水,砂糖水)
【図9】第1しきい値時間tt1経過時点における出力電圧の変化量と被測定液体の濃度との関係を示す図
【図10】第2しきい値時間tt2経過時点における出力電圧の変化量と被測定液体の濃度との関係を示す図
【図11】別の実施形態における液体検知センサの全体構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0099】
1…液体検知センサ、10…基体、12…制御基板、14…取付部、20…電極構造体、22…筒状部材、23…流通孔、24…筒状部材、25…絶縁被膜、26…スペーサー、28…整流部材、30…素子構造体、32…状態検知素子、34…ホルダ、36…プロテクタ、37…ケーブル、38…中継端子、39…セラミック絶縁基体、40…導体層、42…リード部、44…ヒータ部、46…昇温領域、52…シール部材、54…素子用孔、56…接着剤、62…側面流通孔、64…スリット、66…底面流通孔、72…入出力回路、74…マイコン、76…液面検知回路、78…状態検知回路、82…定電流出力部、84…スイッチ部、86…差動増幅部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体を有し、特定種類の被測定液体に浸漬される状態検知素子と、
該状態検知素子の抵抗体への通電を検出時間にわたり行う通電実行手段と、
前記検出時間内に前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す基準値を取得する基準取得手段と、
前記検出時間内で且つ前記基準値の取得後に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第1出力値を取得する第1出力取得手段と、
前記第1出力値と前記基準値との差である第1出力差を算出する第1出力差算出手段と、
前記検出時間が経過した時点において、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第2出力値を取得する第2出力取得手段と、
前記第2出力値と前記基準値との差である第2出力差を算出する第2出力差算出手段と、
前記第1出力差と前記第2出力差とに基づいて、前記被測定液体が前記特定種類の液体であるか否か判定する種類判定手段と、
を備える液体検知センサであって、
前記検出時間内であり、前記基準値の取得後且つ前記第1出力値の取得以前に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第3出力値を取得する第3出力取得手段と、
前記第3出力値と前記基準値との差である第3出力差を算出する第3出力差算出手段と、
前記第3出力差と前記状態検知素子の過昇温を判定する判定しきい値とに基づいて、前記状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定する過昇温判定手段と、
該過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された場合に、前記通電実行手段による通電を前記検出時間の経過前に終了させる通電終了手段と、を備えている
ことを特徴とする液体検知センサ。
【請求項2】
前記通電終了手段は、前記過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、前記通電実行手段による通電を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体検知センサ。
【請求項3】
前記状態検知素子の抵抗体に定電流を流す定電流源を備えており、
前記通電実行手段は、前記定電流源による前記抵抗体への通電を行い、
前記基準取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記基準値として取得して、
前記第1〜第3出力取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体検知センサ。
【請求項1】
自身の温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体を有し、特定種類の被測定液体に浸漬される状態検知素子と、
該状態検知素子の抵抗体への通電を検出時間にわたり行う通電実行手段と、
前記検出時間内に前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す基準値を取得する基準取得手段と、
前記検出時間内で且つ前記基準値の取得後に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第1出力値を取得する第1出力取得手段と、
前記第1出力値と前記基準値との差である第1出力差を算出する第1出力差算出手段と、
前記検出時間が経過した時点において、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第2出力値を取得する第2出力取得手段と、
前記第2出力値と前記基準値との差である第2出力差を算出する第2出力差算出手段と、
前記第1出力差と前記第2出力差とに基づいて、前記被測定液体が前記特定種類の液体であるか否か判定する種類判定手段と、
を備える液体検知センサであって、
前記検出時間内であり、前記基準値の取得後且つ前記第1出力値の取得以前に、前記抵抗体の抵抗値に応じた出力を示す第3出力値を取得する第3出力取得手段と、
前記第3出力値と前記基準値との差である第3出力差を算出する第3出力差算出手段と、
前記第3出力差と前記状態検知素子の過昇温を判定する判定しきい値とに基づいて、前記状態検知素子に過昇温が発生しているか否かを判定する過昇温判定手段と、
該過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された場合に、前記通電実行手段による通電を前記検出時間の経過前に終了させる通電終了手段と、を備えている
ことを特徴とする液体検知センサ。
【請求項2】
前記通電終了手段は、前記過昇温判定手段により前記状態検知素子に過昇温が発生していると判定された直後に、前記通電実行手段による通電を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の液体検知センサ。
【請求項3】
前記状態検知素子の抵抗体に定電流を流す定電流源を備えており、
前記通電実行手段は、前記定電流源による前記抵抗体への通電を行い、
前記基準取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記基準値として取得して、
前記第1〜第3出力取得手段は、前記抵抗体の両端電圧を前記第1〜第3出力値としてそれぞれ取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液体検知センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−170396(P2008−170396A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6327(P2007−6327)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】
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