説明

液体燃料燃焼装置

【課題】電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御を燃料残油量に応じて変更することで、実際の燃料残油量に則した点火の際の作動安定化を図ることができる液体燃料燃焼装置を提供する。
【解決手段】点火時において、制御装置は、給油タンク内の残油量に応じて、電磁ポンプが作動してから燃料ガスを噴射開始するまでの時間を補正する。S3の判定で給油タンク内の残油量が多い(油面高さが高い)場合、電磁ポンプの運転開始から気化器に供給するまでに経過する時間が短いため、気化器が作動して燃料ガスが噴出されるまでの時間(S5におけるT1)を、給油タンク内の残油量が少ない場合の時間(S15におけるT2)よりも短くする。実際の点火時の気化器の温度は残油量にかかわらずほぼ一定となり、また気化器への油の供給量もほぼ一定となるため、点火状態は安定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油ファンヒータ等搭載される液体燃料燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の液体燃料燃焼装置を搭載した石油ファンヒータの正面概略図、図6は同じくその液体燃料燃焼装置の概略図である。図示のごとく、石油ファンヒータ本体(以下、「本体」と略す)1は、箱形に形成されたものであって、着脱可能に設けられた前板2と、側面と一体に形成した天板3と、運転動作を操作する操作部4と、温風を吹出す吹出し口5と、天板3の上面右側に給油タンク6の出し入れをする開閉自在の蓋7とを備えている。万一、給油タンク6等の燃料供給系から液体燃料が漏れたときにこれを受けるため、本体1は、置台8に載置固定されている。
【0003】
本体1の内部は、図5及び図6に示したように、タンクガイド11及び仕切板16によって、給油タンク6を収容するタンク収容室1aと、気化器12や電磁ポンプ13等を収容する機能部品収容室1bと、バーナ14や燃焼室15が配置された燃焼部室1cとに区画されている。
【0004】
タンク収容室1aには、燃料を一時的に貯える取り外し自在なカートリッジ式の給油タンク6と、給油タンク6の燃料を気化器側に送油する送油経路300と給油タンク6とを着脱自在に接続する送油側接続手段9,10と、気化器12側から燃料ガスを給油タンク6に戻す戻り油経路301と給油タンク6とを着脱自在に接続する戻り油側接続手段21,22とが配置されている。タンク収容室1aの底部には、給油タンク6を収容するときに、接続手段9,10及び21,22にかかる衝撃を吸収・緩和するクッション性のある載置台1dが設けられている。また、タンク収容室1aには、給油タンク6を収容するときに送油側接続手段9,10及び戻り油側接続手段21,22が確実に嵌合接続するように、ガイド部を形成しておくのが好ましい。
【0005】
送油側接続手段9,10は、吸い上げ管と通路を開閉する弁を内蔵した送油ジョイント9と、この送油ジョイント9の弁を受ける送油ジョイント受け10とから構成されている。送油ジョイント受け10には、給油タンク6から電磁ポンプ13へ供給される送油経路300を遮断するために送油経路に空気を取り入れる空気弁20が接続されている。この送油ジョイント受け10は、上部が機能部品収容室1b側に突出したタンクガイド11の壁面に取付けられている。
【0006】
図5に示すように、機能部品収容室1bは、タンク収容室1aと燃焼部室1cとの間に配置されたものであって、給油タンク6からの燃料を気化する気化器12と、給油タンク6から気化器12に燃料を送る電磁ポンプ13が収容されている。
【0007】
燃焼部室1cは、仕切板16によって仕切られており、気化器12で気化した燃料ガスと一次燃焼空気と混合して燃焼するバーナ14と、燃焼するバーナ14を囲む燃焼室15と、バーナ14を収容するバーナボックス17とが収容されている。
【0008】
送油経路300は、送油ジョイント受け10と電磁ポンプ13を繋ぐ配管203、及び電磁ポンプ13と気化器12とを繋ぐ配管204とを備えている。また、戻り油経路301は、気化器12と戻り油ジョイント受け10を繋ぐ配管207を備えている。これらの配管203〜207はいずれも銅管で成形されている。
【0009】
図7〜図10を参照して給油タンク6の構成について説明する。図7は図5に示す石油ファンヒータに用いられる給油タンク6の概略図、図8は図7に示す給油タンク6の接続部を示す斜視図、図9は送油ジョイント9と給油タンク6内の吸上げ管27の接続状態を示す断面図、図10は戻り油ジョイント9の構造図である。図7及び図8に図示のごとく、給油タンク6は、燃料を入れて持ち運びをするために給油タンク6の上面に設置された取っ手23と、この取っ手23が設けられている面に形成された燃料供給用の給油口26と、この給油口26を開閉自在に閉塞する圧力弁付給油キャップ24と、この給油キャップ24に近い側面に設けられ、燃料が給油された状態を視認可能とする油量計25と、取っ手23が設けてある上面において、給油口26と反対側に配置された送油ジョイント9及び戻り油ジョイント21とを備えている。
【0010】
送油ジョイント9は、図9に示すように、給油タンク6の上面からタンク側方に張り出す横L字形の接続管43と、その接続管43の先端に設けられスピンドル方式の弁機構28を内蔵したジョイント本体9aとを備えている。ジョイント本体9aは、縦型円筒状に形成され、その下面に送油ジョイント受け10側に嵌合する円筒状の小径突出筒9bが形成され、その外周部に接続シール用のOリング41が外嵌密着されている。また、ジョイント本体9aの上端開口部には弁機構28を挿入するための開閉可能な蓋ナット38が螺合されている。
【0011】
ジョイント本体9a内の弁機構28は、ジョイント本体9aの小径突出筒9bの中央弁孔9cと、ジョイント本体9a内の下部に形成された逆円錐形の弁座9dに離着座自在なスピンドル状の弁体31と、この弁体31の上端と蓋ナット38との間に介在され弁体31を閉弁方向に付勢するスプリング35と、弁体31の弁座側周面に嵌着されたシール用Oリング33とを備え、閉弁状態で弁体31の下端が小径突出筒9bから下方に突出した状態となっている。
【0012】
接続管43は、その内部にジョイント本体9a内の弁室に連通する吸込み通路43aが形成され、そのタンク側方側に張り出した端部はジョイント本体9aの側部に一体的に接続されている。接続管43の下端部は給油タンク6の上面の挿入穴46から給油タンク6の内部に挿通され、下部に形成されたフランジ43bがゴムパッキン50を介して給油タンク6の上面の孔47に螺子により固定されている。接続管43の下端部の外周面には雄螺子が刻設され、この雄螺子に給油タンク6内の吸上げ管27の上端が螺着されている。吸上げ管27は、給油タンク6の底面近くまで達し、その下端に形成された吸込み口44に水や塵を通さないフィルタ45が設けられている。この吸込み口44は吸上げ管27の下端底面部以外の側面部に設けてもよい。
【0013】
戻り油ジョイント21は、図8のごとく、送油ジョイント9と共に給油タンク6の上面に並設されたものであって、吸上げ管27が接続されていない点を除いて送油ジョイント9と基本的に同様な構造となっている。従って、その構造を簡単に説明すると、戻り油ジョイント21は、図10に示すように、給油タンク6の上面からタンク側方に張り出す横L字形の接続管30と、その接続管30の先端に設けられスピンドル方式の弁機構29を内蔵したジョイント本体21aとを備えている。
【0014】
ジョイント本体21aは、縦型円筒状に形成され、その下面に戻り油ジョイント受け22側に嵌合する円筒状の小径突出筒21bが形成され、その外周部に接続シール用のOリング42が外嵌密着されている。また、ジョイント本体21aの上端開口部には弁機構29を挿入するための開閉可能な蓋ナット40が螺合されている。ジョイント本体21a内の弁機構29は、ジョイント本体21aの小径突出筒21bの中央弁孔21cと、ジョイント本体21a内の下部に形成された逆円錐形の弁座21dに離着座自在なスピンドル状の弁体32と、この弁体32の上端と蓋ナット40との間に介在され弁体32を閉弁方向に付勢するスプリング36と、弁体32の弁座側周面に嵌着されたシール用Oリング34とを備え、閉弁状態で弁体32の下端が小径突出筒21bから下方に突出した状態となっている。
【0015】
接続管30は、その内部にジョイント本体21a内の弁室に連通する戻り通路30aが形成され、そのタンク側方側に張り出した端部はジョイント本体21aの側部に一体的に接続されている。接続管30の下端部は給油タンク6の上面の挿入穴48から給油タンク6内部に挿通され、下部に形成されたフランジ30bがゴムパッキン51を介して給油タンク6の上面の孔49にねじ込まれる螺子により固定されている。
【0016】
送油ジョイント9及び戻り油ジョイント21は、いずれもジョイント本体の弁体31、32が下向きに設定され、かつ同レベルに配置され、これらと対向して上向きに配置された送油ジョイント受け10及び戻り油ジョイント受け22と上下方向で嵌合接続するようになっている。従って、送油ジョイント9及び戻り油ジョイント21を備えた給油タンク6をタンク室1aの上方から装着するだけで、両ジョイント9,21は、各ジョイント受け10,22に対してスムーズに接続可能となっている。
【0017】
図11は図5に示す石油ファンヒータに用いられる給油キャップ部の縦断面図である。図示のごとく、圧力弁付き給油キャップ24は、給油タンク6の上面において、口金外側に螺子加工された給油口26に螺合するキャップ本体53と、当該本体53の底面中央に設けられた圧力弁機構54と、本体53の底面に配され給油口26の口金上面と接圧するゴム製パッキン55とを備えている。キャップ本体53の底面中央には圧力を抜く抜き穴56が形成され、燃料の温度差によるタンク内の空気圧での油面の上昇を解消し、電磁ポンプ13による燃料吸い上げがスムーズに行えるようになっている。キャップ本体53の側面は螺子加工され、その端末にはカール加工が施されている。ゴム製パッキン55は給油口26とキャップ本体53とのシールの役目を果たし、その中央に圧力を抜く圧力抜き穴57が形成されている。圧力弁機構54は、キャップ本体53の抜き穴56を開閉する弁体58と、この弁体58を開弁方向に付勢するために本体53の底面と弁体58の周囲との間に介在されたスプリング59とから構成されている。
【0018】
図12は図5に示す給油タンク6に適用される送油側接続手段9,10の構造図、図13は同じく図5に示す給油タンク6に適用される送油ジョイント受け部の構造図、図14は同じく図5に示す給油タンク6に適用される戻り油側接続手段の構造を示す縦断面図である。図5〜図8に示す如く、タンク収容室1aには、給油タンク6のタンク収容状態で、送油ジョイント9及び戻りジョイント21の下方に対向して送油ジョイント受け10及び戻り油ジョイント受け22が配置されている。送油ジョイント受け10は、図12に示すように、円柱状の受け本体10aの上面に開口し送油ジョイント9の下端となっている小径突出筒9b(図9)を挿入可能とする断面円形の凹状受け部61と、この受け部61に配され送油ジョイント9の弁機構28の弁体31との接圧・離間によって開閉する弁機構60とを備えている。
【0019】
凹状受け部61の上端には送油ジョイント9の小径突出筒9bの周囲と密接可能な環状のシール面67が形成されている。また、凹状受け部61の底面には弁受け収容部68が凹設され、この弁受け収容部68に弁受け65が嵌着されている。弁受け65は、受け本体10aの下部に形成された弁室60aに連通する弁孔60b(図13参照)が形成され、その周囲に燃料が流れる格子状の通路66が形成されている。
【0020】
図12、及び好ましくは図13に示すように、弁機構60は、弁室60aの弁座に離着座自在で上端が弁孔60bを通り凹状受け部61側に突出する弁体62と、この弁体62の頭部と弁受け65との間に介在され、弁体62を閉弁方向(図で上方向)に付勢するスプリング63と、弁体62の弁室60a側に外嵌密着され弁座との間をシールするOリング64とから構成されている。この弁機構60は、送油ジョイント9の弁体31が送油ジョイント受け10側の弁体62の頭部を接圧(図で下方へ接圧)することで開弁し、弁体62の頭部から離間することで閉弁するようになっている。また、受け本体10aの弁室60aの下部には、電磁ポンプ13と接続する配管203と連通する通路69が形成され、また、弁室60aの側部には、空気弁20の通路70が連通されている。
【0021】
空気弁20は、給油タンク6から電磁ポンプ13までの送油経路300の燃料を遮断する空気を送油経路300に取り入れるために設けられたものであり、弁本体の空気取り入れ通路に配置された弁子20aと、弁本体の外周部に配置されその励磁により弁子20aを通路70の閉弁方向に移動させる電磁コイル20bと、弁子20aを開弁方向に付勢するスプリング20cとを備えている。この空気弁20の動作は、運転中は空気弁20が閉弁状態であり、また、停止中は開放状態となって送油経路300の燃料を遮断する空気を取り入れる役割をする。また、空気弁20は、気化器12の空焼きクリーニング時には開放状態として空気を吸い込み、電磁ポンプ13を駆動させて気化器12に空気を送る役目もしている。
【0022】
一方、戻り油ジョイント受け22は、送油ジョイント受け10には備わっていた空気弁20が存在しない点を除いて、基本的には送油ジョイント受け10と同様な構造となっている。従って、その構造を簡単に説明すると、戻り油ジョイント受け22は、図14に示すように、受け本体22aの上面に形成された凹状受け部72と、この凹状受け部72に配され戻り油ジョイント21の弁機構29の弁体32との接圧・離間によって開閉する弁機構71とを備えている。凹状受け部72の上端には環状のシール面78が形成され、また、凹状受け部72の底面に凹設された弁受け収容部79に弁受け76が嵌着されている。弁受け76は、受け本体22aの下部弁室71aに連通する弁孔71bが形成され、その周囲に燃料が流れる格子状の通路77を有している。
【0023】
弁機構71は、下部弁室71aの弁座に離着座自在で上端が弁孔71bを通り凹状受け部72側に突出する弁体73と、この弁体73の頭部と弁受け72との間に介在され、弁体73を閉弁方向(図で上方向)に付勢するスプリング74と、弁体73の弁室71a側に外嵌密着されたシール用Oリング75とから構成され、戻り油ジョイント21の弁体32が受け側の弁体73の頭部を接圧することで開弁し、弁体73の頭部から離間することで閉弁するようになっている。受け本体22aの弁室71aの下部には、ソレノイドバルブ84と接続する配管207と連通する通路80が形成されている。
【0024】
給油タンク6及び接続手段9,10及び21,22の構成においては、本体1のタンク収容室1aに給油タンク6を上方からセットすると、接続手段の送油ジョイント9と戻り油ジョイント21が、送油ジョイント受け10及び戻り油ジョイント受け22の所定の位置に装着され、各ジョイント本体9a,21aの小径突出部9b,21bの外側にあるOリング41,42が送油ジョイント受け10のシール面67と戻り油ジョイント受け22のシール面78でシールされて密閉状態になる。同時に、各ジョイントの弁機構28,29とその受け側弁機構60、71の弁体同士が互いに押圧することで、開弁状態となる。
【0025】
[気化器及びバーナの構成]
図15は図5に示す石油ファンヒータの気化器及びバーナ部の構成図である。図示のごとく、気化器12は、燃料を加熱して気化する気化素子81と、この気化素子81で気化された燃料ガスを噴出するノズル82と、このノズル82の穴を開閉するニードル83と、このニードル83に連接されてニードル83を移動させるソレノイドバルブ84と、気化素子81に燃料を供給する燃料入口85と、運転停止時に気化器12内部の燃料ガスを送り出す戻り回路86と、バーナ14の燃焼熱を回収する熱回収部87とから構成されている。気化素子81は、セラミックの細かい粒子を円筒状に焼結したもので、燃料を気化した際に発生するタール分は気化素子81の表面から内部に向かって堆積される。気化器12の燃料入口85は、外側のステンレスパイプ88と、内側の銅パイプ89との二重構造としている。ステンレスパイプ88としたのは、気化器12からの熱伝導を低下させ、気化器12に入ってくる燃料の温度上昇を抑えるためである。また、ステンレスパイプ88の径を銅パイプ89よりも大きく、ステンレスパイプ88から銅パイプ89に伝わる熱伝導を更に抑制している。なお、銅パイプ89の先端は、気化器12より外側の位置までとなっている。
【0026】
ソレノイドバルブ84は、電磁コイル90と、可動片91と、吸着片92と、押圧用スプリング93とから構成され、電磁コイル90への通電・非通電により、可動片91が吸着片92に吸着・離脱して、可動片91に装着されているニードル83が移動して、気化器12のノズル82の穴部を開・閉口するようになっている。バーナ14は、気化器12で気化した燃焼ガスと一次燃焼空気とを混合する混合管94と、混合された燃焼ガスを燃焼させる炎口95とから構成されている。
【0027】
[電磁ポンプの構成]
電磁ポンプ13は、図6に示すように、給油タンク6内の燃料を吸い上げて気化器12側に供給するためのものであって、送油経路300に介在され、後述の制御装置151によって、その燃料吐出量が制御されるようになっている。
【0028】
[制御装置の構成]
図16は主として、電磁ポンプ13の吐出量を制御する制御装置151の構成ブロック図である。制御装置151は、内部にCPU、ROM及びRAMを内蔵したマイクロコンピュータから成り、室内温度設定スイッチ157からの設定温度を入力判定するスイッチ判定手段151aと、給油タンク6の油面検知装置150からの油面検知信号を入力判定する油面判定手段151bと、室内温度検出手段である室温センサ153からの室温信号を入力判定する室温判定手段151cと、給油タンク6内の油温検知センサ152からの油温検知信号を入力判定する油温判定手段151dと、後述する油面高さ(残油量)、燃料温度、及び燃焼量に応じた補正値(補正係数)を記憶した補正手段151eと、判定手段151a〜151dからの判定結果、並びに補正手段151eから補正値データに基づき電磁ポンプの吐出量などを演算する演算部154と、この演算結果に基づいて最適燃料吐出量を電磁ポンプ13の駆動回路156に出力する制御部155とを備えている。
【0029】
[石油ファンヒータの動作]
上記石油ファンヒータの動作を説明する。空になった給油タンク6を本体1の蓋7を開けて、給油タンク6の取っ手23を持って取り出した後、取っ手23を上側にした状態で圧力弁付き給油キャップ24を緩めて外し、給油タンク6の給油口26から燃料を給油する。給油が完了したならば、燃料を入れた給油タンク6を本体1の蓋7を開けて、所定の位置にセットする。そうすると、図12及び図14に示すように、給油タンク6の送油ジョイント9の弁機構28と戻り油ジョイント21の弁機構29の夫々の弁体31,32が、送油ジョイント受け10の弁機構60と戻り油ジョイント受け22の弁機構71の夫々の弁体62,73を押え、弁体62,73を下げる。弁体62,73の頭部62a,73aが弁受け61,72の上面部にあたると、送油ジョイント9の弁機構28と戻り油ジョイント21の弁機構29の夫々の弁体31,32が上方に移動し、閉弁方向に付勢していたスプリング35,36が圧縮状態になり、弁体31,32の閉止面Oリング33,34が送油ジョイント9及び戻り油ジョイント21の夫々の閉止面から離脱して間に隙間が生じ、この隙間より燃料が電磁ポンプ13側に流れる送油経路300と、気化器12から給油タンク6への戻り油経路301とが開放される。
【0030】
石油ファンヒータの運転スイッチ(図示せず)を操作して電源をONにすると、気化器12に取り付けられた気化器ヒータ(図示せず)により、気化器12が加熱される。このとき、気化器サーミスタ(図示せず)により気化器12の温度を検出しており、所定温度(予熱完了温度)まで気化器12が加熱されると、電磁ポンプ13が駆動して給油タンク6内の液体燃料を吸上げ、吸上げ管27を通じて吸み上げ、送油ジョイント9、送油ジョイント受け10を経由して気化器12に送る。加熱された気化器12により液体燃料はガス化し、バーナ14の炎口95から吹き出され、この炎口95において点火されて燃焼室15内で燃焼する。
【0031】
このとき、室温センサ153(サーミスタ)により検知した室温と、操作部4の室内温度設定スイッチ157により設定した設定温度との差に基づき、制御装置151が電磁ポンプ13の駆動を制御して気化器12へ送る液体燃料の量を変化させることにより、燃焼による発熱量を適切に調節する。燃焼が開始され、炎センサ(図17の114参照;フレームセンサ)が予め設定した電流値以上の炎電流(フレーム電流)を検出すると、ファンモータに通電されて送風ファンが回転し室内の空気を吸い込む。なお、その回転速度は制御装置151によって制御される。吸い込まれた室内の空気は、燃焼室15内で得られる幅射熱を奪い、燃焼ガスとともに温風として吹出し口5より本体1の外部(室内)へ吹き出し、室内温度が上昇して最適温度で制御する。
【0032】
ここでブンゼン式液体燃料燃焼器の点火時の動作を更に詳しく説明する。気化器12が予熱完了温度に達すると、電磁ポンプ13が運転開始し、同時に送油経路中の空気弁(エアバルブ)20が閉止され、給油タンク6の吸上げ管27より油の吸上げが始まり、気化器12に供給される。電磁ポンプ13の運転開始から気化器12のノズル82を閉止していたニードル83が取り付けられたソレノイドバルブ84がONし、ニードル83が後退し、ノズル82が開となり、気化ガスがバーナ14に噴出される。バーナ14の炎口95から吹き出した気化ガスは、点火手段により点火される。点火すると、バーナ14の炎口95の上方に設置されたフレームセンサ114とバーナ14の炎口95間に炎電流が流れる。この炎電流値が所定値以上に達した場合は、着火が完了したと判定して燃焼が継続される。ノズル82が開となり、気化ガスが噴出してから数十秒程度は、炎電流値が所定値に達しなくとも、強制的に燃焼を保持する。これを強制保持時間と称している。この強制保持時間内に炎電流値が所定値に達しない場合は、着火に失敗したと判定して燃焼が停止される。
【0033】
運転を続けると、図7のごとく、給油タンク6内の燃料が減少し、給油タンク6に予め所定の位置に複数設けられている油面検知装置150が、所定の位置毎に検知・作動して、その判定結果が演算部154に送られる。また、給油タンク6内の燃料の温度を検出している油温検知センサ(サーミスタ)152により検出された温度も演算部154に送られる。更に、室温センサ153により検知した室温と、操作部4の室内温度設定スイッチ157から設定した設定温度との差に基づき、制御部155から電磁ポンプ13へ送られる駆動信号に応じた燃焼量データが演算部154に送られる。これらのデータは演算部154で、次のような計算式で正規の燃焼量として算出し、その算出結果に基づいて電磁ポンプ13が最適な吐出量となるように制御する。
正規燃焼量=燃焼量*(A*B*C)
Aは、給油タンク6内の燃料の残油量(例えば、油面高さ)による補正値(補正係数)であり残油量に応じて表1のごとき補正値とする。
BとCは、次のような補正値であるが、考慮しない場合もある。
Bは、給油タンク6内の燃料温度の補正値(補正係数)であり、燃料温度に応じて表 2のごとき補正値とする。
Cは、燃焼量の補正値(補正係数)であり、室温サーミスタにより検知した室温と設 定温度との差に基づく燃焼量に応じて表3のごとき補正値とする。
【表1】

【表2】

【表3】

最大出力は機器の仕様として決定される(石油FHの場合機種名の数字が最大出力
(KW)を示す)。ここで機器の出力をQ(KW)、燃料消費量をA(L/h)とすると、灯油の場合には比重0.8、発熱量11060Kcal/Kg、1KW=860Kcal/hであるので、
Q=A×0.8×11060/860=10.2884A
即ち、A=Q/10.2884となる。
【0034】
制御装置151の演算部154では、上記計算式に基づいて算出された正規燃焼量を制御部155から電磁ポンプ13の駆動回路156に指令を出し、電磁ポンプ13への電圧を計算式に基づいて算出された正規燃焼量に相当する電圧に変更して印加し、電磁ポンプ13で給油タンク6内の燃料を吸い上げて気化器12に送り、加熱気化した燃料をバーナ14に送り燃焼する。このように、電磁ポンプ13で給油タンク6の燃料を吸い上げることにより、給油タンク6内の燃料が減少、つまり油面の高さが変化することによるポンプの揚程能力が減少し、電磁ポンプ13の吐出量が低下するので、給油タンク6内の燃料の油面の高さに応じて補正することにより、電磁ポンプ13の正規燃焼量(吐出量)を給油タンク6より吸い上げ、気化器12に送ることができる。なお、給油タンク6内の燃料の油面の高さの算出を、液面装置(油面検知装置150)で検出する代わりに、給油タンク6の重量で検出し、これを油面高さに算出変換するようにしてもよい。また、電磁ポンプ13で給油タンク6の燃料を吸い上げる量は、燃焼量によっても異なり、更にまた、給油タンク6の燃料温度も同じように影響を及ぼすので、これらパラメータにより電磁ポンプ13の吐出量を補正することにより、正規燃焼量(吐出量)に応じた燃料を吸い上げて気化器12に送れば、最適な燃焼が可能となる。従って、給油タンク6より直接に気化器12に燃料を送る送油経路300を構成しても、安定した燃焼を得ることができる。
【0035】
上記のように、従来の石油ファンヒータでは、燃焼時においては定化するために、種々の補正係数を用いて、ポンプの出力を補正しており燃焼量を安定させるようにしている。しかし、点火時において給油タンクの残油量が少なくなると、油面高さが低くなり、給油タンク内の吸い込み管の油面高さも同様に低くなるため、吸い込み管内の空間部が長くなる。したがって、点火時の予熱完了検知後に電磁ポンプが運転開始してから、実際に電磁ポンプに油が到達するまでの時間が、給油タンク内の残油量が多い場合よりも長くなる。特に、極端に残油量が少ない場合には、電磁ポンプから気化器への油の供給が間に合わず、点火不良を起こすことがある。この場合、予熱完了検知から実際の点火(気化器のノズルよりガスが噴出、ソレノイドバルブがONし、ノズルが開く)までの時間を長く取ればよいのであるが、逆に給油タンクの残油量が多い場合には、電磁ポンプに直ぐに油が到達するため、気化器に必要以上に油が送り込まれ、気化器の内圧が過度に上昇し、点火が不安定にあることがあった。
【0036】
点火時に給油タンクの残油量が少ない場合の第2の対策として、着火時の強制保持時間(ノズルが開いてから、炎電流値が所定の値に達しなくても、燃焼を強制的に保持する時間)を長くすることが考えられている。この対策によれば、たとえ給油タンク内の残油量が少なくなって電磁ポンプが運転開始してから実際に電磁ポンプに油が到達するまでの時間が長くなり、その結果、気化器への油の供給が遅れる場合でも、強制保持時間内において点火装置が作動させたままの状態にしておくことにより、気化ガスがバーナから噴出した時点で着火し、その後、炎電流値が増大し、所定値以上になり、燃焼を維持させることが可能である。しかしながら、点火装置等に不具合があった場合には、気化ガスが長時間にわたって出続けることになる。
【特許文献1】特開2001−343116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
そこで、液体燃料燃焼装置においては、従来、給油タンク内の燃料の残油量の大きさに応じて点火状況が不安定になるという問題があることを認識して、電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御を燃料残油量に応じて変更することで、点火の際の作動を実際の燃料残油量に則して安定化を図る点で解決すべき課題がある。
【0038】
この発明の目的は、電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御を燃料残油量に応じて変更することで、実際の燃料残油量に則して点火の際の作動安定化を図り、従来の液体燃料燃焼装置において電磁ポンプから気化器への油の供給が間に合わず点火不良を起こすこと、或いは気化器に必要以上に油が送り込まれて気化器の内圧が過度に上昇し点火が不安定になることを回避する液体燃料燃焼装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0039】
上記課題を解決するため、本発明による液体燃料燃焼装置は、本体内のタンク収容室に着脱自在に収容されたカートリッジ式の給油タンクと、前記給油タンク内の燃料を直接に汲み上げる電磁ポンプと、前記電磁ポンプから供給される前記燃料を気化し燃料ガスとして噴出する気化器と、前記燃料ガスを点火装置で着火させて燃焼させるバーナと、前記気化器の温度を検知する温度検知手段と、当該温度検知手段からの信号を受けて前記電磁ポンプ及び前記気化器の動作を制御する制御装置と、前記給油タンクの残油量を検知する残油量検知手段とを備えた液体燃料燃焼装置であって、前記制御装置は、前記電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御について、前記給油タンクの前記残油量に応じて補正をすることから成っている。
【0040】
この発明の液体燃料燃焼装置によれば、通常時には、本体内のタンク収容室に着脱自在に収容されたカートリッジ式の給油タンクからは、電磁ポンプが給油タンク内の燃料を直接に汲み上げて気化器に供給し、気化器においては供給された燃料を気化し燃料ガスとする。気化器から噴出された燃料ガスはバーナにおいて点火装置で着火されて燃焼される。気化器の温度は温度検知手段によって検知され、制御装置は、当該温度検知手段からの信号を受けて電磁ポンプ及び気化器の動作を制御している。また、残油量検知手段は給油タンク内の残油量を、例えば油面高さとして検出している。点火時において、制御装置は、検出された残油量(油面高さ)に応じて電磁ポンプや気化器の動作制御を補正制御する。電磁ポンプや気化器の動作の要素としては、電磁ポンプの運転タイミング、運転強度、又は強制保持時間の長さがあり、点火時には、これらが、通常の運転状態から補正して制御される。
【0041】
上記電磁ポンプや気化器の動作の例として、制御装置は、給油タンク内の残油量に応じて、電磁ポンプが作動してから気化器が作動して燃料ガスを噴射開始するまでの時間について補正をすることができる。給油タンク内の残油量が多い場合、つまり油面高さが高い場合は、電磁ポンプを運転開始したときに、その運転開始から油の吸上げを開始し気化器に供給するまでに経過する時間が短いため、制御装置は電磁ポンプが作動してから、気化器が作動して燃料ガスが噴出されるまでの時間を短くする。逆に、給油タンク内の残油量が少ない場合は、電磁ポンプが運転開始してから実際に油を吸い上げるまでに時間がかかり、気化器に油が供給まで時間を要するため、制御装置は電磁ポンプが運転開始してから気化器が作動して燃料ガスが噴出されるまでの時間を長くする。気化器の動作としては、例えば、燃料を加熱して気化させるためのソレノイドバルブのON・OFF、及び燃料ガスを燃焼室に噴出させるノズルの開閉がある。これにより、実際の点火の際(ノズル開時)には、給油タンクの残油量にかかわらず、ほぼ一定量の油を気化器に供給することができ、点火状態が安定する。
【0042】
また、この液体燃料燃焼装置において、制御手段は、温度検知手段からの信号に基づく気化器の予熱完了判定とする設定温度について、給油タンクの残油量に応じて補正をすることができる。即ち、電磁ポンプにその運転を開始するタイミングを与えるためには、気化器が予熱完了と判定される必要があるが、気化器が到達すべき設定温度を給油タンクの残油量に応じて変化させることにより、実際の点火(ノズル開)の際の気化器温度の変化を少なくすることができる。制御装置は、予熱完了温度の変更については、通常の場合と比較して、そのような設定温度になるように補正をすることで行うことができる。つまり、給油タンクの残油量が多い場合は、ポンプの運転開始からノズル開までの時間が短くなるので、予熱完了温度を高く設定しておくことにより短時間でも実際の点火時の気化器の温度が十分な温度に上昇する。また、給油タンクの残油量が少ない場合は、ポンプの運転開始からノズル開までの時間が長くなるので、予熱完了温度を低く設定しておくことにより長い時間で実際の点火時の気化器の温度が設定温度に上昇する。これにより、実際の点火時の気化器の温度は残油量にかかわらずほぼ一定となり、また気化器への油の供給量もほぼ一定となるため、点火状態は安定する。
【0043】
この液体燃料燃焼装置において、このほかに、制御手段は、点火後の着火判定に際して、強制的な燃焼を保持すべき期間としての強制保持時間について、給油タンクの残油量に基づいて補正をすることができる。即ち、点火後の燃焼強制保持時間を給油タンクの残油量に応じて変化させても良い。残油量が多い場合は、気化器への油の供給が速いため、ノズル開後ほぼ瞬時に着火する制御を行う。これにより、炎電流値が所定値に達するのも速くなる。このことから、燃焼強制保持時間を短くできる。このようにすることにより、点火装置などの不具合により、着火ミスを起こした場合でも、気化ガスの噴出時間は短くできる。残油量が少ない場合は、気化器に油が供給されるまでに時間がかかり、実際の点火時(ノズル開時)に気化ガスの噴出が遅れる事態も考えられるが、強制保持時間を長くとってあるため、仮に、着火が遅れてフレーム電流値が所定値に達するまで時間がかかっても、点火ミスと判定されることはない。
【0044】
この液体燃料燃焼装置において、制御手段は、前記電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御についての前記補正を、前記給油タンクの前記残油量によって定められる補正係数によって行うことができる。補正係数については、上記表1を参照して定めることができる。
【発明の効果】
【0045】
以上説明したように、本発明の液体燃料燃焼装置よれば、点火の際には、給油タンクの残油量(油面高さ)に応じて、電磁ポンプや気化器の動作運転状態を、通常時のそれとは変化させることにより、より安定した点火状態を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の液体燃料燃焼装置は、基本的な構成については従来の技術の構成と同様であるので、その説明及び通常の動作の説明は省略する。
本発明による液体燃料燃焼装置はその燃焼制御に特徴があり、以下、各実施例において図面を参照して燃焼制御について説明をする。図1には、本発明の液体燃料燃焼装置の第1実施例における点火時の動作の制御の手順を示すフローチャートが示されている。図1において、石油ファンヒータの運転スイッチ(図示せず)をONにする(ステップ1;「S1」と略す。以下同じ。)と、気化器12に取り付けられた気化器ヒータ(図示せず)により、気化器12が加熱される。このとき、気化器サーミスタ(図示せず)により気化器12の温度が検出されている。検出温度が所定温度に達するかどうかで予熱完了判定温度に達したか否かが判定される(S2)。予熱完了判定温度に達していなければ、温度上昇を待つ。予熱完了判定温度に達した場合、給油タンク6内の油面が設定値よりも高いか否かが判定される(S3)。
【0047】
検出温度が所定温度に達すると、油面高さの検出値に応じて、電磁ポンプ13が駆動され運転開始をする(S4,S14)。電磁ポンプ13の駆動が所定の時間T(T1又はT2)経過したか否かを判定し(S5,S15)、経過していなければ経過を待ってから、時間Tの経過後に気化器12に取り付けられたソレノイドバルブ84を駆動し、ソレノイドバルブ84に連結されたニードル83が気化器12のノズル82を開放する(S6,S16)。開放されたノズル82から気化ガスが噴出し、バーナ14上で点火装置により着火する(S7,S17)。ノズル82が開となり、気化ガスが噴出してから数十秒程度の強制保持時間は炎電流値が所定値に達しなくとも強制的に燃焼が保持されるが、そうした強制保持時間が経過したか否かが判定される(S8,S18)。強制保持時間が経過していなければその経過を待つ。強制保持時間経過時に炎センサ114により検知された炎電流値が所定値以上か否かが判定される(S9,S19)。炎電流値が所定値に達していると判定される場合には燃焼が継続され(S10,S20)、炎電流値が所定値に達していないと判定される場合には、着火に失敗したと判定して燃焼が停止される(S11,S21)。
【0048】
電磁ポンプ13が駆動開始してから、ソレノイドバルブ84が駆動し、気化ガスの噴出が開始されるまでの時間Tは、油面検知装置150により検出された油面高さに応じて変更される。つまり、S3での判定において、給油タンク6の油面が設定値よりも高いと判定される場合には、ポンプ13駆動からソレノイドバルブ84駆動開始までの時間TはT1に設定され、給油タンク6の油面が設定値よりも低いと判定される場合には、ポンプ13駆動からソレノイドバルブ84駆動開始までの時間TはT2に設定される。ここで、時間Tの設定については、T1<T2である。これにより実際の点火時(ノズル開時)には、給油タンク6の残油量にかかわらず、ほぼ一定量の油を気化器に供給することができ、点火状態が安定する。
【0049】
次に、本発明の液体燃料燃焼装置の第2実施例の点火時の装置の動作について説明する。図2には、本発明の液体燃料燃焼装置の第2実施例における点火時の動作の制御の手順を示すフローチャートが示されている。図2において、石油ファンヒータの運転スイッチ(図示せず)をONにする(S31)と、油面検知装置150により給油タンクの油面高さが検出される(S32)。次に、気化器12に取り付けられた気化器ヒータ(図示せず)により、気化器12が加熱される。このとき気化器サーミスタ(図示せず)により気化器12の温度が検出されており、検出温度が所定温度に達するかどうかで予熱完了判定温度に達したか否かが判定される(S33、S43)。各予熱完了判定温度に達していなければ、温度上昇を待つ。予熱完了判定温度に達した場合、電磁ポンプ13の駆動を開始する(S34、S44)。ここで、電磁ポンプ13の駆動を開始する温度である予熱完了温度THは、給油タンクの油面高さに応じて変更されている。つまり、油面高さが設定値より高い場合は、S33における予熱完了温度がTH1とされ、油面高さが設定値より低い場合はS43における予熱完了温度がTH2とされる。ここで、TH1>TH2と設定する。つまり油面高さが高い場合は予熱完了温度を高くする。
【0050】
電磁ポンプ13が駆動を開始(S34、S44)してから、ソレノイドバルブ84が駆動され(S36、S46)、気化器12のノズル82が開放される。ノズル82が開放されてからの動作は第1実施例と同様であり、気化ガスが噴出し、着火し、燃焼を開始する等(S37〜S41、S47〜S51)についての重複する説明を省略する。電磁ポンプ13の駆動開始からソレノイドバルブ84の駆動までの時間Tは、油面高さにより変更する。即ち、時間Tについて、T1<T2として、油面高さが所定値より高い場合の時間をT1(S35)、油面高さが所定値より低い場合の時間をT2(S45)と設定する。これにより実際の点火時の気化器12の温度は残油量にかかわらずほぼ一定となり、また気化器12への油の供給量もほぼ一定となるため、点火状態は安定する。
【0051】
続いて、本発明の液体燃料燃焼装置の第3実施例の点火時の装置の動作について説明する。図3には、本発明の液体燃料燃焼装置の第3実施例における点火時の動作の制御の手順を示すフローチャートが示されている。図3において、石油ファンヒータの運転スイッチ(図示せず)をONする(S61)と、気化器12に取り付けられた気化器ヒータ(図示せず)により、気化器12が加熱される。このとき、気化器サーミスタ(図示せず)により気化器12の温度が検出されている。検出温度が所定温度に達するかどうかで予熱完了判定温度に達したか否かが判定される(S62)。予熱完了判定温度に達していなければ、温度上昇を待つ。予熱完了判定温度に達した場合、給油タンク6内の油面が設定値よりも高いか否かが判定される(S63)。
【0052】
検出温度が所定温度に達すると、油面高さの検出値に応じて、電磁ポンプ13が駆動されて運転開始をし(S64,S74)、電磁ポンプ13の駆動が所定の時間T経過したか否かを判定し(S65,S75)、経過していなければ経過を待ってから、時間Tの経過後に気化器12に取り付けられたソレノイドバルブ84を駆動し、ソレノイドバルブ84に連結されたニードル83が気化器12のノズル82を開放する(S66,S76)。開放されたノズル82から気化ガスが噴出し、バーナ14上で点火装置により着火する(S67,S77)。ノズル82が開となり、気化ガスが噴出してから数十秒程度の強制保持時間内は炎電流値が所定値に達しなくとも強制的に燃焼が保持され消火しないが、そうした強制保持時間が経過したか否かが判定される(S68,S78)。強制保持時間が経過していなければその経過を待つ。
【0053】
強制保持時間経過時に炎センサ114により検知された炎電流値が所定値以上か否かが判定される(S69,S79)。炎電流値が所定値に達していると判定される場合には燃焼が継続され(S70,S80)、炎電流値が所定値に達していないと判定される場合には、着火に失敗したと判定して燃焼が停止される(S71,S81)。S68,S78において、炎電流値が所定値以上かどうかを判定するまでの強制保持時間Tは給油タンク6の油面高さに応じて変更される。給油タンク6の油面高さが所定値よりも高い場合の強制保持時間をT1とし、油面高さが所定値よりも低い場合の強制保持時間をT2とし、この際、T1<T2と設定する。これにより、残油量が多い場合は(油面高さが高い場合)、気化器12への油の供給が速いため、ノズル82開の後にはほぼ瞬時に着火する。これにより、炎電流地値が所定値に達するのも速くなる。このことから、燃焼強制保持時間T1を短くできる。このようにすることにより、点火装置などの不具合により、着火ミスを起こした場合でも、気化ガスの噴出時間は短くできる。残油量が少ない場合は、(油面高さが低い場合)気化器12に油が供給されるまでに時間がかかり、実際の点火時(ノズル82開の時)に気化ガスの噴出が遅れる事態も考えられるが、強制保持時間T2を長くとってあるため、仮に、着火が遅れ炎電流値が所定値に達するまで時間がかかっても、点火ミスと判定されることはない。
【0054】
更に続いて、本発明の液体燃料燃焼装置の第4実施例の点火時の装置の動作について説明する。図4には、本発明の液体燃料燃焼装置の第4実施例における点火時の動作の制御の手順を示すフローチャートが示されている。図4において、石油ファンヒータの運転スイッチ(図示せず)をONする(S91)と、気化器12に取り付けられた気化器ヒータ(図示せず)により、気化器12が加熱される。このとき、気化器サーミスタ(図示せず)により気化器12の温度が検出されている。検出温度が所定温度に達するかどうかで予熱完了判定温度に達したか否かが判定される(S92)。予熱完了判定温度に達していなければ、温度上昇を待つ。予熱完了判定温度に達した場合、給油タンク6内の油面が設定値よりも高いか否かが判定される(S93)。
【0055】
検出温度が所定温度に達すると、油面高さの検出値に応じて、電磁ポンプ13が駆動されて運転開始をする(S94,S104)。電磁ポンプ13の駆動が所定の時間T経過したか否かを判定し(S95,S105)、経過していなければ経過を待つ。時間Tの経過後に気化器12に取り付けられたソレノイドバルブ84を駆動し、ソレノイドバルブ84に連結されたニードル83が気化器12のノズル82を開放する(S96,S106)。開放されたノズル82から気化ガスが噴出し、バーナ14上で点火装置により着火する(S97,S107)。ノズル82が開となり、気化ガスが噴出してから数十秒程度の強制保持時間内は炎センサ114により検知された炎電流値が所定値に達しなくとも強制的に燃焼が保持され消火しないが、そうした強制保持時間が経過したか否かが判定される(S98,S108)。強制保持時間が経過していなければその経過を待つ。
【0056】
強制保持時間経過時に炎センサ114により検知された炎電流値が所定値以上か否かが判定される(S99,S109)。炎電流値が所定値に達していると判定される場合には燃焼が継続され(S100,S110)、炎電流値が所定値に達していないと判定される場合には、着火に失敗したと判定して燃焼が停止される(S101,S111)。この際、電磁ポンプ13の運転開始から、ソレノイドバルブ84が駆動し、ノズル82が開くまでの運転強度を、給油タンク6の油面高さに応じて変更しても良い。ここで、給油タンク6の油面高さが所定値以上の場合の運転強度をA、所定値以下の場合の運転強度をBとするとき、A<Bと設定する。給油タンク6内の残油量が多い場合は(油面高さが高い場合)、気化器12への油の供給に時間があまりかからないため、電磁ポンプ13の運転強度を小さくすることができる。給油タンク6内の残油量が少ない場合(油面高さが低い場合)には、電磁ポンプ13の運転強度を大きくすれば良い。これにより、実際の点火時での気化器12への油の供給量はほぼ一定となり、点火状態を安定させることができる。
【0057】
[その他の実施形態]
本発明の実施例は上記で説明した第1〜第4実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正・変更を加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による液体燃料燃焼装置の第1実施例における点火時の装置の動作のフローチャート。
【図2】本発明による液体燃料燃焼装置の第2実施例における点火時の装置の動作のフローチャート。
【図3】本発明による液体燃料燃焼装置の第3実施例における点火時の装置の動作のフローチャート。
【図4】本発明による液体燃料燃焼装置の第4実施例における点火時の装置の動作のフローチャート。
【図5】本発明による液体燃料燃焼装置の第1実施例に係る石油ファンヒータの正面部分断面図。
【図6】図5に示す液体燃料燃焼装置の構成図。
【図7】図5に示す液体燃料燃焼装置に用いられる給油タンクの概略図。
【図8】図7に示す給油タンクの接続部の斜視図。
【図9】図7に示す給油タンクに適用される送油ジョイントの構造を示す縦断面図。
【図10】図7に示す給油タンクに適用される戻り油ジョイントの構造を示す縦断面図。
【図11】図7に示す給油タンクに適用される給油キャップ部の構造を示す縦断面図。
【図12】図7に示す給油タンクに適用される送油側接続手段の構造を示す縦断面図。
【図13】図7に示す給油タンクに適用される送油ジョイント受け部の構造を示す縦断面図。
【図14】図7に示す給油タンクに適用される戻り油側接続手段の構造を示す縦断面図。
【図15】図5に示す石油ファンヒータの気化器及びバーナの構造を示す断面図。
【図16】図5に示す石油ファンヒータにおける電磁ポンプのための制御ブロック図。
【図17】図5に示す石油ファンヒータの一例を示す一部省略正面断面図。
【符号の説明】
【0059】
1 石油ファンヒータ本体 1a タンク収容室
1b 機能部品収容室 1c 燃焼部室 1d 載置台
2 前板 3 天板
4 操作部 5 吹出し口
6 給油タンク 7 蓋
8 置台 9 送油ジョイント
9a ジョイント本体 9b 小径突出筒
9c 中央弁孔 9d 弁座
10 送油ジョイント受け 10a 受け本体
11 タンクガイド 12 気化器
13 電磁ポンプ 14 バーナ
15 燃焼室 16 仕切板
17 バーナボックス 20 空気弁
20a 弁子 20b 電磁コイル 20c スプリング
21 戻り油ジョイント 21a ジョイント本体
21b 小径突出筒 21c 中央弁孔 21d 弁座
22 戻り油ジョイント受け 22a 受け本体
23 取っ手
24 圧力弁付き給油キャップ 25 油量計
26 給油口 27 吸上げ管
28 送油ジョイント9の弁機構 29 戻り油ジョイント21の弁機構
30 接続管 30a 戻り通路 30b フランジ
31 弁体 32 弁機構29の弁体
33 シール用Oリング 35 スプリング
36 スプリング 38 蓋ナット
40 蓋ナット 41 Oリング
42 Oリング
43 接続管 43a 吸込み通路 43b フランジ
44 吸込み口 45 フィルタ
46 挿入穴 47 孔
48 挿入穴 49 孔
50 ゴムパッキン 51 ゴムパッキン
53 キャップ本体 54 圧力弁機構
55 ゴム製パッキン 56 抜き穴
57 圧力抜き穴 58 弁体
59 スプリング
60 弁機構 60a 弁室 60b 弁孔
61 凹状受け部 62 弁体
63 スプリング 64 Oリング
65 弁受け 66 通路
67 シール面 68 弁受け収容部
69 通路 70 通路
71 弁機構 71a 下部弁室 71b 弁孔
72 凹状受け部 73 弁体
74 スプリング 75 シール用Oリング
76 弁受け 77 格子状の通路
78 シール面 79 弁受け収容部
80 通路 81 気化素子
82 ノズル 83 ニードル
84 ソレノイドバルブ 85 燃料入口
86 戻り回路 87 熱回収部
88 ステンレスパイプ 89 銅パイプ
90 電磁コイル 91 可動片
92 吸着片 93 押圧用スプリング93
94 混合管 95 炎口
114 炎センサ 150 油面検知装置
151 制御装置 151a スイッチ判定手段 151b 油面判定手段
151c 室温判定手段 151d 油温判定手段 151e 補正手段
152 油温検知センサ 153 室温センサ
154 演算部 155 制御部
156 駆動回路 157 室内温度設定スイッチ
203,204,207 配管
300 給油経路 301 戻り油経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内のタンク収容室に着脱自在に収容されたカートリッジ式の給油タンクと、前記給油タンク内の燃料を直接に汲み上げる電磁ポンプと、前記電磁ポンプから供給される前記燃料を気化し燃料ガスとして噴出する気化器と、前記燃料ガスを点火装置で着火させて燃焼させるバーナと、前記気化器の温度を検知する温度検知手段と、当該温度検知手段からの信号を受けて前記電磁ポンプ及び前記気化器の動作を制御する制御装置と、前記給油タンクの残油量を検知する残油量検知手段とを備えた液体燃料燃焼装置において、
前記制御装置は、前記電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御について前記給油タンクの前記残油量に応じて補正をすることを特徴とする液体燃料燃焼装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記電磁ポンプが作動してから前記気化器が作動して前記燃料ガスを噴射開始するまでの時間について、前記給油タンク内の残油量に応じて補正をすることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料燃焼装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記温度検知手段からの信号に基づく前記気化器の予熱完了判定とする設定温度について、前記給油タンクの前記残油量に応じて補正をすることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料燃焼装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記気化器の前記予熱完了を判定した場合、前記電磁ポンプのその後の運転強度について前記給油タンクの前記残油量に基づいて補正をすることを特徴とする請求項3に記載の液体燃料燃焼装置。
【請求項5】
前記制御手段は、点火後の着火判定に際して、強制的な燃焼を保持すべき期間としての強制保持時間について、前記給油タンクの前記残油量に基づいて補正をすることを特徴とする請求項1に記載の液体燃料燃焼装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電磁ポンプ及び前記気化器の点火時の動作制御についての前記補正を、前記給油タンクの前記残油量によって定められる補正係数によって行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体燃料燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−170135(P2008−170135A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−6133(P2007−6133)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】