説明

液処理装置、液処理方法および記憶媒体

【課題】被処理基板を、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた場合であっても、当該被処理基板にシミが発生することを防止すること。
【解決手段】液処理装置1は、ケーシング5と、ウエハ(被処理基板)Wを保持する基板保持機構20と、処理液を供給する処理液供給機構30と、処理液を受ける排液カップ12と、処理液を外方に排出する排液管13と、を備えている。処理液供給機構30は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給機構と、ウエハWを乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給機構43とを有している。制御部50は、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させた後、乾燥液供給機構43によって有機溶媒を供給させ、かつ、乾燥液供給機構43によって有機溶媒を供給させる前に、洗浄機構10によりケーシング5内のアルカリ成分を除去させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた液処理装置および液処理方法、並びにコンピュータに当該液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、処理対象となるウエハに付着したパーティクルを除去する方法としては、ウエハを回転させつつ、ウエハに対してアンモニア過酸化水素水混合水溶液を吐出した後、当該ウエハを回転させつつウエハに対してフッ酸を吐出して、ウエハを洗浄する液処理方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−329696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような液処理方法において、ウエハを乾燥させるために有機溶媒を用いると、ウエハにウオーターマークのようなシミが発生することがあることを発明者は発見した。すなわち、ウエハを、アンモニア成分(アルカリ成分)の処理液によって処理した後、フッ酸により処理し、その後、有機溶媒を用いて乾燥させると、ウエハにシミが発生するのである。
【0004】
このようにウエハにシミが発生する機構は未だ定かではないが、これはおそらく、フッ酸により活性化されたウエハの表面が、外部雰囲気内にアンモニア成分(アルカリ成分)が存在している状態で有機溶媒にさらされることにより、これらアンモニア成分と有機溶媒から何らかの攻撃を受けることによるものと推測される。
【0005】
また、本願の発明者が実験した結果によると、上述のように処理液としてアンモニア成分(アルカリ成分)からなるものを用いない場合であっても、外部雰囲気内に僅かなアンモニア成分(アルカリ成分)があるだけで、ウエハの表面にシミが発生しまうことが分かった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、被処理基板を、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた場合であっても、当該被処理基板にシミが発生することを防止することができる液処理装置および液処理方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、当該液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による液処理装置は、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、ケーシング内で基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、を備え、
前記処理液供給機構が、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給機構と、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給した後、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給機構とを有し、
ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去機構、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止機構が設けられ、
第一薬液供給機構および乾燥液供給機構、並びに、除去機構または侵入防止機構が、制御部により制御され、
制御部が、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させた後、乾燥液供給機構によって被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給させ、かつ、乾燥液供給機構によって有機溶媒を供給させる前に、除去機構によりケーシング内のアルカリ成分を除去させる、または、侵入防止機構によりケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止させる。
【0008】
このような構成によれば、被処理基板を、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた場合であっても、乾燥液供給機構によって有機溶媒を供給させる前に、除去機構によりケーシング内のアルカリ成分を除去させたり、または、侵入防止機構によりケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止させたりすることができ、当該被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【0009】
本発明による液処理装置において、制御部は、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させる前に、除去機構よってケーシング内のアルカリ成分を除去させることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、ケーシング内のアルカリ成分を除去させる際に、フッ酸系処理液により活性化した被処理基板の表面が不要な反応を起こすことを防止することができ、より確実に、被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【0011】
本発明による液処理装置において、侵入防止機構は、ケーシング内の気圧を高くする与圧機構からなることが好ましい。
【0012】
本発明による液処理装置において、除去機構は、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去する洗浄機構からなることが好ましい。
【0013】
本発明による液処理装置において、処理液供給機構は、制御部により制御され、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給機構を有し、制御部は、第二薬液供給機構によってアルカリ系処理液を供給させた後であって、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させる前に、洗浄機構によって排液カップに洗浄液を供給させることで、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0014】
本発明による液処理装置において、排液管に設けられ、当該排液管を通過する処理液の流れを止める閉塞機構をさらに備え、処理液供給機構は、基板保持機構に保持された被処理基板に洗浄液を供給する洗浄液供給機構を有し、前記洗浄液供給機構、前記排液管および前記閉塞機構によって、前記洗浄機構が構成され、制御部は、閉塞機構により排液管を閉塞させることによって、排液管および排液カップ内に洗浄液を貯留して排液カップに洗浄液を供給し、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、閉塞機構を閉じるだけで、排液カップに洗浄液を供給し、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することができ、被処理基板にシミが発生することを容易にかつ安価な構成で防止することができる。また、排液カップを洗浄液に浸すことができるので、排液カップに付着したアルカリ成分を、確実に洗浄して除去することができ、被処理基板にシミが発生することを高い確率で防止することができる。
【0016】
本発明による液処理装置において、前記洗浄機構は、排液カップに洗浄液を噴出することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去する洗浄液噴出機構を有することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、排液カップに向かって洗浄液を噴出させることで、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することができる。このため、被処理基板にシミが発生することを容易に防止することができる。
【0018】
本発明による液処理装置において、ケーシング内に配置され、基板保持機構に保持された被処理基板に上方から気体を供給する気体導入部と、ケーシング内で排液カップを囲繞して配置され、被処理基板を経た気体を取り込んで排気する排気カップと、をさらに備えたことが好ましい。
【0019】
本発明による液処理方法は、ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、ケーシング内で基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、を有する液処理装置を用いた液処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、
処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程と、当該第一薬液供給工程の後、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給工程と、を有し、
前記乾燥液供給工程の前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去工程、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止工程が実施される。
【0020】
このような方法によれば、被処理基板を、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた場合であっても、被処理基板を乾燥させる前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去したり、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止したりすることができ、当該被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【0021】
本発明による液処理方法において、前記除去工程は、フッ酸系処理液を供給する前記第一薬液供給工程の前に実施されることが好ましい。
【0022】
このような方法によれば、ケーシング内のアルカリ成分を除去させる際に、フッ酸系処理液により活性化した被処理基板の表面が不要な反応を起こすことを防止することができ、より確実に、被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【0023】
本発明による液処理方法において、前記侵入防止工程は、ケーシング内の気圧を高くすることによって、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止することが好ましい。
【0024】
本発明による液処理方法において、前記除去工程は、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0025】
本発明による液処理方法において、処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する前記第一薬液供給工程の前に、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給工程を有し、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給工程の後であって、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程の前に、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0026】
本発明による液処理方法において、排液管に設けられた閉塞機構によって、処理液供給機構から供給され排液管を通過する洗浄液の流れを止めることにより、排液管および排液カップ内に処理液を貯留して排液カップに洗浄液を供給し、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0027】
このような方法によれば、閉塞機構を閉じるだけで、排液カップに洗浄液を供給し、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することができ、被処理基板にシミが発生することを容易にかつ安価な構成で防止することができる。また、このような方法によれば、排液カップを洗浄液に浸すことができるので、排液カップに付着したアルカリ成分を、確実に洗浄して除去することができ、被処理基板にシミが発生することを高い確率で防止することができる。
【0028】
本発明による液処理方法において、前記洗浄工程は、排液カップに洗浄液を噴出することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することが好ましい。
【0029】
このような方法によれば、排液カップに向かって洗浄液を噴出させるだけで、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することができ、被処理基板にシミが発生することを容易に防止することができる。
【0030】
本発明による記憶媒体は、コンピュータに液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
当該液処理方法が、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、少なくとも、基板保持機構および排液カップを収容するケーシングと、を有する液処理装置を用いた方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、
処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程と、当該第一薬液供給工程の後、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給工程と、を有し、
前記乾燥液供給工程の前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去工程、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止工程が実施される方法である。
【0031】
このような構成によれば、液処理装置が、被処理基板を、フッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いて液処理を実施する場合であっても、被処理基板を乾燥させる前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去したり、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止したりすることができ、当該被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、被処理基板をフッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒により乾燥させる方法を用いた場合であっても、有機溶媒を供給して被処理基板を乾燥させる前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去させる、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止させることによって、当該被処理基板にシミが発生することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
第1の実施の形態
以下、本発明に係る液処理装置1、液処理方法および記憶媒体の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
【0034】
図1に示すように、液処理システムは、外部から被処理基板としての半導体ウエハW(以下、単にウエハWともいう)を収容したキャリアを載置するための載置台81と、キャリアに収容されたウエハWを取り出すためのトランスファーアーム82と、トランスファーアーム82によって取り出されたウエハWを載置するための棚ユニット83と、棚ユニット83に載置されたウエハWを受け取り、当該ウエハWを液処理装置11内に搬送するメインアーム84と、を含んでいる。そして、この液処理システムには、複数(本実施の形態では12個)の液処理装置1が組み込まれている。なお、この図1は、本実施の形態による液処理装置1を含む液処理システムを上方から見た上方平面図である。
【0035】
この液処理装置1は、図2に示すように、ケーシング5と、ケーシング5内に設けられ、ウエハWを保持する基板保持機構20と、基板保持機構20によって保持されたウエハWに処理液を供給する処理液供給機構30と、ケーシング5内で基板保持機構20によって保持されたウエハWを周縁外方から覆うとともに、基板保持機構20と一体となって回転可能な回転カップ61と、前記回転カップ61および前記基板保持機構20を一体的に回転させる回転機構70と、を備えている。なお、この図2は、本実施の形態による液処理装置1の縦断面図である。
【0036】
また、図2に示すように、ケーシング5内であって回転カップ61の周縁外方には、ウエハWを洗浄した後の処理液を受ける環状の排液カップ12が配置されている。そして、この排液カップ12には、排液カップ12を経た処理液を外方に排出する排液管13が連結されている。
【0037】
また、図2に示すように、ケーシング5の側壁には、ウエハWを出し入れするための出入口5aが設けられている。
【0038】
また、図2および図4に示すように、基板保持機構20は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート21と、回転プレート21の周縁端部に設けられ、ウエハWを保持する保持部材22と、回転プレート21の下面の中心部に連結され、下方鉛直に延びる円筒状の回転軸23とを有している。また、回転プレート21の中心部には、円筒状の回転軸23の孔23aに連通する円形の孔21aが形成されており、回転軸23の孔23aの内部には、昇降機構56により上下方向に昇降自在な昇降部材25が設けられている。なお、この図4は、本実施の形態による液処理装置1の一部を図2とは異なる断面で切断した縦断面図である。
【0039】
また、図2および図4に示すように、この昇降部材25内には、ウエハWの裏面(下面)側から処理液を供給する裏面処理液供給路26が設けられている。また、昇降部材25の上端部にはウエハ支持台27が設けられ、このウエハ支持台27の上面にはウエハWを支持するためのウエハ支持ピン28が設けられている。なお、回転軸23は、軸受け部材29を介してベースプレート6に回転可能に支持されている。
【0040】
また、図2および図4に示すように、回転機構70は、モータ軸71aを有するモータ71と、当該モータ軸71aに巻き掛けられるとともに、回転軸23の下端部にも巻き掛けられたベルト72とを有している。なお、ベルト72とモータ軸71aとの間にはプーリー74が設けられ、ベルト72と回転軸23との間にはプーリー73が設けられている。
【0041】
また、図2に示すように、ケーシング5内の上方部には、液処理システムのファン・フィルター・ユニット(FFU)(図示せず)からの気体を導入口5bを介して導入する気体導入部3が設けられており、基板保持機構20に保持されたウエハWに上方から清浄空気(気体)を供給するようになっている。FFUは、アルカリ成分を吸着させるケミカルフィルターを有しており、外部からケーシング5内に、アルカリ雰囲気が持ち込まれることを防止することができる。
【0042】
また、図2および図4に示すように、排液カップ12の周縁外方には、気体導入部3から供給されてウエハWを経た清浄空気を取り込んで排気する環状の排気カップ66が配置されている。
【0043】
また、この排気カップ66には、排気カップ66を経た気体を外方に排出する排気管67が1本連結されている。また、排液カップ12の下端には、スリット状の通気孔66bが設けられており、排気カップ66を経た気体を排気管67に案内するようになっている(図2の点線矢印参照)。
【0044】
また、図2および図3に示すように、処理液供給機構30は、基板保持機構20によって保持されたウエハWの表面に処理液を供給するノズル31a,31bを有するノズルブロック31と、ノズルブロック31に連結され、当該ノズルブロック31を基板保持機構20に保持されたウエハWの表面に沿って移動させるノズルアーム32と、当該ノズルアーム32から下方鉛直方向に向かって延びるノズル揺動軸33と、当該ノズル揺動軸33を駆動するノズル駆動部75と、を有している。また、ノズル揺動軸33の下端にはノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33およびノズル駆動部75を上下方向に駆動するノズル昇降機構57が連結されている。なお、この図3は、本実施の形態による液処理装置1の処理液供給機構の構成を示す概略図である。
【0045】
そして、このノズル駆動部75は、モータ軸76aを有するモータ76と、当該モータ軸76aに巻き掛けられるとともに、ノズル揺動軸33の下端部にも巻き掛けられたベルト77とを有している。なお、ベルト77とモータ軸76aとの間にはプーリー79が設けられ、ベルト77とノズル揺動軸33との間には、プーリー78が設けられている。
【0046】
また、図3に示すように、処理液供給機構30のノズル31a,31bを有するノズルブロック31、ノズルアーム32およびノズル揺動軸33内には、処理液が通過する処理液流路35と、乾燥溶媒が通過する乾燥溶媒流路38が設けられている。また、処理液流路35と乾燥溶媒流路38は、処理液供給部40に連通されている。
【0047】
また、この処理液供給部40は、洗浄処理のための薬液として、フッ酸系の薬液である例えば希フッ酸(DHF)を供給するDHF供給源41と、アルカリ系の薬液である例えばアンモニア過水(SC1)を供給するSC1供給源42と、リンス液として例えば純水(DIW)を供給するDIW供給源45と、乾燥溶媒として例えばIPA(イソプロピルアルコール)を供給するIPA供給源43とを有している。なお、フッ酸系の薬液としては、上述のような希フッ酸(DHF)の他、BHF(HFとNHFの混合溶液)やLAL(BHFと界面活性剤との混合溶液)などを用いることができる。
【0048】
そして、処理液流路35は、第一バルブ46を介してDHF供給源41と連通され、第二バルブ47を介してSC1供給源42と連通され、第三バルブ48を介してDIW供給源45と連通されている。また、乾燥溶媒流路38は、第四バルブ49を介してIPA供給源43と連通されている。
【0049】
ところで、図3において、第一バルブ46のみが開けられて、処理液流路35とDHF供給源41とが連通されると、処理液供給機構30は、洗浄処理のための薬液として希フッ酸(DHF)を供給する。このように、ノズル31a,31bを有するノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33、処理液流路35、ノズル駆動部75(図2参照)、第一バルブ46およびDHF供給源41によって、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給機構が構成されている。
【0050】
他方、図3において、第二バルブ47のみが開けられて、処理液流路35とSC1供給源42とが連通されると、処理液供給機構30は、洗浄処理のための薬液としてアンモニア過水を供給する。このように、ノズル31a,31bを有するノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33、処理液流路35、ノズル駆動部75(図2参照)、第二バルブ47およびSC1供給源42によって、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給機構が構成されている。
【0051】
また、図3において、ノズル31a,31bを有するノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33、乾燥溶媒流路38、ノズル駆動部75(図2参照)、第四バルブ49およびIPA供給源43によって、ウエハWを乾燥させるためのIPA(有機溶媒)を供給する乾燥液供給機構43が構成されている。
【0052】
また、図3において、第三バルブ48のみが開けられて、処理液流路35にDIW供給源45を連通されると、処理液供給機構30は、薬液のリンス液としての純水(洗浄液)を供給する。このため、ノズル31a,31bを有するノズルブロック31、ノズルアーム32、ノズル揺動軸33、処理液流路35、ノズル駆動部75(図2参照)、第三バルブ48およびDIW供給源45によって、基板保持機構20に保持されたウエハWに純水(薬液のリンス液)を供給する洗浄液供給機構が構成されている。
【0053】
なお、図2および図4に示す裏面処理液供給路26へ処理液を供給する機構は、IPA供給源43が設けられていないことを除いて、上述した処理液供給部40と同様の構成からなっている。
【0054】
また、図2および図4に示すように、排液管13には、当該排液管13を通過する処理液の流れを止める閉塞バルブ(閉塞機構)11が設けられており、この閉塞バルブ11を閉じることによって、排液管13を閉塞することができる。このため、後述するように、洗浄液供給機構によって純水Dを供給する際、閉塞バルブ11によって、排液管13を閉塞することによって、排液管13および排液カップ12内に純水Dを貯留して、排液カップ12に純水Dを供給することができる。このため、洗浄液供給機構、排液管13および閉塞バルブ11によって、排液カップ12に純水Dを供給する洗浄機構(除去機構)10が構成されていることとなる。
【0055】
また、図2および図3に示すように、第一バルブ46、第二バルブ47、第三バルブ48、第四バルブ49および閉塞バルブ11の各々には制御部50が接続されており、第一薬液供給機構、乾燥液供給機構43および閉塞バルブ11の各々は、制御部50により制御される。
【0056】
また、図4に示すように、排気管67より回転軸23側には、ウエハWと基板保持機構20との間から漏れた処理液(図4では純水D)を受けて外部に排出する内方排出管68が設けられている。また、排気カップ66の下方には、排気カップ66の設けられた空間66a内に流入した処理液(図4では純水D)を受けて外部に排出する外方排出管69が設けられている。
【0057】
また、図2に示すように、ケーシングの上壁には、バルブ19を介して、低湿度の空気やNなどの乾燥気体を供給する乾燥気体供給部18が連結されている。
【0058】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。より具体的には、本実施の形態による液処理装置1により、ウエハWを洗浄処理する液処理方法について述べる。
【0059】
まず、メインアーム84によって保持されたウエハWが、出入口5aを介して液処理装置1のケーシング5内に搬送される。そして、このようにして搬送されたウエハWが、昇降部材25を上昇させた状態で、ウエハ支持台27に設けられたウエハ支持ピン28上にウエハWを受け渡される。その後、昇降部材25が下降し、保持部材22によりウエハWがチャッキングされて保持される(保持工程)(図1、図2および図4参照)。
【0060】
次に、回転機構70によって、基板保持機構20によって保持されたウエハWを回転カップ61と一体的に回転させる(回転工程)(図2および図4参照)。なお、後述する乾燥工程が終了するまで、ウエハWと回転カップ61は回転し続けている。
【0061】
より具体的には、モータ71のモータ軸71aを回転させることによって、モータ軸71aに巻き掛けられるとともに、回転軸23の下端部にも巻き掛けられたベルト72を回転させ、回転軸23を回転させる。ここで、回転カップ61は、基板保持機構20と一体となっているので、回転軸23を回転させることによって、この回転カップ61を基板保持機構20と一体的に回転させることができる。
【0062】
このとき、処理液供給機構30によって、基板保持機構20により保持されたウエハWに処理液が供給される(処理液供給工程)(図2乃至図4参照)。この処理液供給工程においては、具体的には、以下の工程が実施される。なお、処理液供給工程を行う前は、全てのバルブ46,47,48,49は閉じた状態になっている(図3参照)。
【0063】
まず、制御部50からの信号に基づいて、第二バルブ47が開けられ、SC1供給源42からアンモニア過水が供給される。そして、アンモニア過水が、ノズル31aを介して、基板保持機構20により保持されたウエハWに供給される(第二薬液供給工程91)(図3および図5参照)。
【0064】
次に、制御部50からの信号に基づいて、第二バルブ47が閉じられるとともに第三バルブ48が開けられ、DIW供給源45から純水Dが供給される。そして、ノズル31aを介して、ウエハWに純水Dが供給される(リンス工程92)(図3乃至図5参照)。
【0065】
所定の時間(例えば10秒ほど)、ウエハWに対して純水Dが供給されたら、制御部50からの信号に基づいて、閉塞バルブ11が閉じられる(洗浄工程93)(図2乃至図5参照)。このように閉塞バルブ11を閉じることによって、排液管13を通過する純水Dの流れを止めることができる。このため、排液管13および排液カップ12内に純水Dを貯留して、排液カップ12を純水Dに浸すことによって、排液カップ12に純水Dを供給することができる。このため、排液カップ12に付着したアンモニア成分(アルカリ成分)を除去することができる。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、アンモニア過水を供給した後のリンス工程92において、閉塞バルブ11を閉じるだけで、排液カップ12に純水Dを供給し、排液カップ12に付着したアンモニア成分を除去することができる(図4参照)。このため、ウエハWの表面がフッ酸系処理液によって処理された後有機溶媒にさらされる場合では、ケーシング5内に僅かにアンモニア成分が存在するだけで発生してしまうシミの発生を、容易にかつ安価な構成で防止することができる。
【0067】
また、排液管13および排液カップ12内に純水Dを貯留して、排液カップ12を純水Dに浸すことができる(図4参照)。このため、排液カップ12に付着したアンモニア成分を、確実に洗浄して除去することができ、ウエハWにシミが発生することを、高い確率で防止することができる。
【0068】
上述のように排液カップ12に純水Dを供給した後、制御部50からの信号に基づいて、閉塞バルブ11が開けられる(図2およじ図4参照)。このことによって、排液カップ12を浸していた純水Dが排液カップ12から除去される。
【0069】
次に、制御部50からの信号に基づいて、第三バルブ48が閉じられるとともに第一バルブ46が開けられ、DHF供給源41から希フッ酸が供給される。そして、希フッ酸が、ノズル31aを介して、ウエハWに供給される(第一薬液供給工程95)(図2乃至図5参照)。
【0070】
次に、制御部50からの信号に基づいて、第一バルブ46が閉じられるとともに第三バルブ48が開けられ、DIW供給源45から純水Dが供給される。そして、ノズル31aを介して、基板保持機構20によりウエハWに純水Dが供給される(リンス工程97)(図2乃至図5参照)。
【0071】
このリンス工程97において、ケーシング5内に流入される気体が、FFUから供給される清浄空気から、乾燥気体供給部18から供給される低湿度の空気やNなどの乾燥気体に切り換えられる。このように、乾燥気体をケーシング5内に供給することによって、ケーシング5内の湿度を低減することができ、ウエハWにウオーターマークが形成されることを防止することができる。
【0072】
次に、制御部50からの信号に基づいて、第三バルブ48を閉じられ、その後、第四バルブ49が開けられ、ウエハWを乾燥させるためのIPAが、ノズル31bを介してウエハWに供給される(乾燥液供給工程98)(図2乃至図5参照)。
【0073】
この際、ノズル駆動部75によってノズル揺動軸33が駆動され、ノズルアーム32に設けられたノズルブロック31のノズル31a,31bは、ノズル揺動軸33を中心として、ウエハW上方においてウエハWの表面に沿って揺動される(図1および図2参照)。
【0074】
上述のように、ウエハWにIPAを供給した後、基板保持機構20に保持されたウエハWを乾燥液供給工程98のときより高速に回転させることによって、ウエハWに付着したIPAを振り切り、ウエハWを乾燥させる(乾燥工程)。
【0075】
ところで、上述した処理液供給工程の各々において、回転カップ61は基板保持機構20と一体となって回転するため、ウエハWから振り切られた処理液が回転カップ61に当たった際に当該処理液には遠心力が働く。このため、当該処理液は外方へ飛び散りにくくミスト化しにくくなっている。
【0076】
最後に、処理済みのウエハWが、保持部材22によるチャッキングを解消した後、基板保持機構20から取り除かれ、出入口5aを介してケーシング5の外方に搬出される(図2参照)。
【0077】
上述では、アンモニア過水を供給した第二薬液供給工程91の後のリンス工程92において、閉塞バルブ11を閉じて、排液カップ12に純水Dを貯留したが、これに限らない。例えば、希フッ酸の供給する第一薬液供給工程95の後のリンス工程97において、閉塞バルブ11を閉じて、排液カップ12に純水Dを供給してもよい。しかしながら、希フッ酸を供給した後では、ウエハWの表面が活性化しているため、純水DにウエハWが浸る可能性のある洗浄工程においては、純水DとウエハWの表面とが不要な反応を起こす可能性がある。従って、上述したように、アンモニア過水を供給した第二薬液供給工程91の後のリンス工程92において、閉塞バルブ11を閉じて、洗浄工程93を実施する方が好ましい。
【0078】
なお、上述した本実施の形態において、アルカリ成分としてアンモニア成分を用いて説明したが、これに限らず、別のアルカリ成分であってもよい。
【0079】
また、本実施の形態によれば、上述したような液処理方法をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムや、このようなコンピュータプログラムを格納した記憶媒体も提供することができる。
【0080】
また、上記では、排気カップ66を経た清浄空気を外方に排出する排気管67が、排気カップ66に1本連結されている態様を用いて説明したが、これに限らず、複数本(例えば2本)の排気管が、排気カップ66に連結されていてもよい。
【0081】
このように、排気カップ66に、排気カップ66を経た清浄空気を外方に排出する排気管を複数本連結することによって、第二薬液供給工程91で供給されたアンモニア過水によるアンモニア成分を、ケーシング5内からより確実に排気することができる。このため、ウエハWにシミが発生してしまうことを、より確実に防止することができる。
【0082】
また、上記では、DHF供給源41から供給される希フッ酸と、SC1供給源42から供給されるアンモニア過水とが、一つのノズルアーム32と、ノズル31a,31bを有する一つのノズルブロック31を用いてウエハWに供給される態様を用いて説明したが、これに限らず、DHF供給源41から供給される希フッ酸と、SC1供給源42から供給されるアンモニア過水の各々が、専用のノズルアームと専用のノズルブロック(ノズルを含む)を用いてウエハWに供給されてもよい。
【0083】
図1乃至図5に示す第1の実施の形態では、DHF供給源41とSC1供給源42とが、同じ一つのノズルアーム32とノズルブロック31(ノズル31a,31bを含む)を用いてウエハWに処理液を供給している。このため、これらノズルアーム32およびノズルブロック31(ノズル31a,31bを含む)の外面に付着した、第二薬液供給工程91において用いられたアンモニア成分(ほんの僅かな量ではあるが)が、洗浄工程93より後の工程においてウエハWに付着する可能性が否定できない。そして、上述のように、僅かなアンモニア成分が存在するだけでウエハWにシミが発生する原因となるので、このようなアンモニア成分によってウエハWにシミが発生することも否めない。
【0084】
この点、DHF供給源41から供給される希フッ酸と、SC1供給源42から供給されるアンモニア過水の各々が、専用のノズルアームと専用のノズルブロック(ノズルを含む)を用いてウエハWに供給されることによって、第二薬液供給工程91が終了した時点で、これらノズルアームとノズルブロック(ノズルを含む)を待機位置に移動させることができる。このため、第二薬液供給工程91が終了するとそれ以降、アンモニア過水を供給する際に用いられたノズルアームとノズルブロック(ノズルを含む)をウエハWから離れた位置に移動させることができる。この結果、これらのノズルアームとノズルブロック(ノズルを含む)の外面に付着したアンモニア成分がウエハWに付着することを防止することができ、ウエハWにシミが発生することをより確実に防止することができる。
【0085】
第2の実施の形態
次に、図6により、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6に示す第2の実施の形態は、排液カップ12に付着したアルカリ成分を除去する洗浄機構(除去機構)10が、洗浄液供給機構、排液管13および閉塞バルブ11から構成される代わりに、排液カップ12に純水(洗浄液)Dを噴出することによって、排液カップ12に付着したアルカリ成分を除去する洗浄液噴出機構15から構成されるものである。また、排液カップ12の周縁外方に配置された環状の排気カップ66が上下方向に移動自在となっている(図6の矢印A2参照)。その他の構成は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0086】
図6に示す第2の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0087】
図6に示すように、洗浄液噴出機構15は、ケーシング5内で揺動軸16を中心に上下方向に揺動自在に配置されている。また、この洗浄液噴出機構15は、排液カップ12に向かって純水Dを噴出する噴出ノズル17を有している。
【0088】
さらに、図6に示すように、この洗浄液噴出機構15には制御部50が接続されており、洗浄液噴出機構15は制御部50により制御されるようになっている。
【0089】
以下に、この洗浄液噴出機構15の作用について述べる。
【0090】
まず、アンモニア過水が供給される第二薬液供給工程91の間、洗浄液噴出機構15の噴出ノズル17は、上方位置に位置している。このとき、排気カップ66も上方位置に位置している。
【0091】
そして、この第二薬液供給工程91が終わり次のリンス工程92が開始されて所定の時間が経過すると、排気カップ66が下方へ移動し始める。
【0092】
その後、制御部50からの信号に基づいて、噴出ノズル17が、揺動軸16を中心に揺動され(図6の矢印A1参照)、下方位置(図6に示している位置)に配置される。そして、制御部50からの信号に基づいて、下方位置に位置した噴出ノズル17から、排液カップ12に向かって純水Dが勢いよく噴出され、排液カップ12に付着したアンモニア成分(アルカリ成分)が除去される(図6参照)。
【0093】
このように、本実施の形態によれば、アンモニア過水を供給した後のリンス工程92において、下方位置に位置した噴出ノズル17から、排液カップ12に向かって洗浄液を噴出させることによって、排液カップ12に洗浄液を供給し、排液カップ12に付着したアンモニア成分を除去することができる。このため、ケーシング5内に僅かにアンモニア成分が存在するだけで発生してしまうシミがウエハW上で発生することを、容易に防止することができる。
【0094】
そして、上述したアンモニアを供給した後のリンス工程92が終わると、制御部50からの信号に基づいて、噴出ノズル17は、揺動軸16を中心に揺動され、上方位置に達する。
【0095】
その後は、第1の実施の形態で示したのと同様、第一薬液供給工程95、リンス工程97および乾燥液供給工程98が順次実施される(図5参照)。
【0096】
ところで、上記では、第1の実施の形態で示した洗浄機構(除去機構)10の代わりに、洗浄液噴出機構15から構成される洗浄機構(除去機構)10を用いて説明した。しかしながら、これに限らず、第1の実施の形態の態様に、洗浄液噴出機構15をさらに加えることによって、洗浄機構(除去機構)10を構成してもよい。
【0097】
第3の実施の形態
次に、図7により、本発明の第3の実施の形態について説明する。図7に示す第3の実施の形態は、ケーシング5内のアルカリ成分を除去する洗浄機構10を設ける代わりに、乾燥気体供給部18がケーシング5内へのアルカリ成分の侵入を防止する与圧機構(侵入防止機構)としての機能を果たすようにしたものである。具体的には、乾燥気体供給部18からケーシング5内へ流入される乾燥気体の気圧を高くすることによってケーシング5内へのアルカリ成分の侵入を防止する。その他の構成は図1乃至図5に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0098】
図7に示す第3の実施の形態において、図1乃至図5に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0099】
図7に示すように、ケーシング5に、ケーシング5内の気圧を高くすることによって、ケーシング5内へアンモニア成分などのアルカリ成分が侵入することを防止する与圧機構18が連結されている。また、この与圧機構18は、制御部50に接続されており、当該制御部50からの信号に基づいて制御される。
【0100】
上述のように、ウエハWの表面がフッ酸系処理液によって処理された後、有機溶媒にさらされる場合では、ケーシング5内に僅かにアンモニア成分(アルカリ成分)が存在するだけで、ウエハWにシミが発生してしまう。この点、本実施の形態では、乾燥気体供給部18によって、ケーシング5内の気圧を高くすることができ、外部(例えば、クリーンルーム内)の空気に存在しているアンモニア成分が、ケーシング5内に侵入することを防止することができる。このため、ウエハWをフッ酸系処理液によって処理した後、有機溶媒によって乾燥させる場合であっても、ウエハWにシミが発生してしまうことを容易に防止することができる。
【0101】
なお、ケーシング5内の気圧を高くすることによって、ケーシング5内へのアルカリ成分の侵入を防止する工程(侵入防止工程)は、処理対象となるウエハWがケーシング5内の基板保持機構20上に載置されてから、処理されたウエハWがケーシング5の外方に搬出されるまでの間、継続して実施される(図2参照)。
【0102】
ところで、本実施の形態による与圧機構(侵入防止機構)としての乾燥気体供給部18は、アルカリ系処理液であるアンモニア過水(SC1)を供給するSC1供給源42を有しておらず、アンモニア過水(SC1)を供給しない場合にも有効である。
【0103】
また、上記では、ケーシング5内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止機構として、ケーシング5内の気圧を高くする乾燥気体供給部18を用いて説明したが、これに限られることなく、ケーシング5内へのアルカリ成分の侵入を防止するものであれば、あらゆるものを侵入防止機構として用いることができる。
【0104】
なお、上記では、第1の実施の形態、第2の実施の形態および第3の実施の形態の各々を別個に説明したが、これらを任意に組合せたり、あるいは、これら全てを組合せたりしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の第1の実施の形態による液処理装置を含む液処理システムを上方から見た上方平面図。
【図2】本発明の第1の実施の形態による液処理装置の縦断面図。
【図3】本発明の第1の実施の形態による液処理装置の処理液供給機構の構成を示す概略図。
【図4】本発明の第1の実施の形態による液処理装置の一部を図2とは異なる断面で切断した縦断面図。
【図5】本発明の第1の実施の形態による液処理方法に含まれる工程の一部を示すフロー図。
【図6】本発明の第2の実施の形態による液処理装置の一部を図4に対応する断面で切断した縦断面図。
【図7】本発明の第3の実施の形態による液処理装置の縦断面図。
【符号の説明】
【0106】
1 液処理装置
3 気体導入部
5 ケーシング
10 洗浄機構(除去機構)
11 閉塞バルブ(閉塞機構)
12 排液カップ
13 排液管
15 洗浄液噴出機構
16 揺動軸
17 噴出ノズル
18 乾燥気体供給部(与圧機構(侵入防止機構))
20 基板保持機構
30 処理液供給機構
31a,31b ノズル
31 ノズルブロック
32 ノズルアーム
33 ノズル揺動軸
35 処理液流路
38 乾燥溶媒流路
42 SC1供給源
43 IPA供給源
45 DIW供給源
46 第二バルブ
47 第二バルブ
48 第三バルブ
49 第四バルブ
50 制御部
61 回転カップ
66 排気カップ
70 回転機構
91 第二薬液供給工程
92 リンス工程
93 洗浄工程
95 第一薬液供給工程
97 リンス工程
98 乾燥液供給工程
W ウエハ(被処理基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、
ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、
基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、
ケーシング内で基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、
排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、を備え、
前記処理液供給機構は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給機構と、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給機構とを有し、
ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去機構、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止機構が設けられ、
第一薬液供給機構および乾燥液供給機構、並びに、除去機構または侵入防止機構は、制御部により制御され、
制御部は、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させた後、乾燥液供給機構によって被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給させ、かつ、
乾燥液供給機構によって有機溶媒を供給させる前に、除去機構によりケーシング内のアルカリ成分を除去させる、または、侵入防止機構によりケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止させることを特徴とする液処理装置。
【請求項2】
制御部は、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させる前に、除去機構よってケーシング内のアルカリ成分を除去させることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
侵入防止機構は、ケーシング内の気圧を高くする与圧機構からなることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
除去機構は、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去する洗浄機構からなることを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項5】
処理液供給機構は、制御部により制御され、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給機構を有し、
制御部は、第二薬液供給機構によってアルカリ系処理液を供給させた後であって、第一薬液供給機構によってフッ酸系処理液を供給させる前に、洗浄機構によって排液カップに洗浄液を供給させることで、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項4に記載の液処理装置。
【請求項6】
排液管に設けられ、当該排液管を通過する処理液の流れを止める閉塞機構をさらに備え、
処理液供給機構は、基板保持機構に保持された被処理基板に洗浄液を供給する洗浄液供給機構を有し、
前記洗浄液供給機構、前記排液管および前記閉塞機構によって、前記洗浄機構が構成され、
制御部は、閉塞機構により排液管を閉塞させることによって、排液管および排液カップ内に洗浄液を貯留して、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項4に記載の液処理装置。
【請求項7】
前記洗浄機構は、排液カップに洗浄液を噴出することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去する洗浄液噴出機構を有することを特徴とする請求項4に記載の液処理装置。
【請求項8】
ケーシング内に配置され、基板保持機構に保持された被処理基板に上方から気体を供給する気体導入部と、
ケーシング内で排液カップを囲繞して配置され、被処理基板を経た気体を取り込んで排気する排気カップと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の液処理装置。
【請求項9】
ケーシングと、ケーシング内に設けられ、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、ケーシング内で基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、を有する液処理装置を用いた液処理方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、
処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程と、当該第一薬液供給工程の後、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給工程と、を有し、
前記乾燥液供給工程の前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去工程、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止工程が実施されることを特徴とする液処理方法。
【請求項10】
前記除去工程は、フッ酸系処理液を供給する前記第一薬液供給工程の前に実施されることを特徴とする請求項9に記載の液処理方法。
【請求項11】
前記侵入防止工程は、ケーシング内の気圧を高くすることによって、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止することを特徴とする請求項9に記載の液処理方法。
【請求項12】
前記除去工程は、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項9に記載の液処理方法。
【請求項13】
処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する前記第一薬液供給工程の前に、アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給工程を有し、
アルカリ系処理液を供給する第二薬液供給工程の後であって、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程の前に、排液カップに洗浄液を供給することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項12に記載の液処理方法。
【請求項14】
排液管に設けられた閉塞機構によって、処理液供給機構から供給され排液管を通過する洗浄液の流れを止めることにより、排液管および排液カップ内に処理液を貯留して排液カップに洗浄液を供給し、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項12に記載の液処理方法。
【請求項15】
前記洗浄工程は、排液カップに洗浄液を噴出することによって、排液カップに付着したアルカリ成分を除去することを特徴とする請求項12に記載の液処理方法。
【請求項16】
コンピュータに液処理方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体において、
当該液処理方法は、被処理基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給機構と、基板保持機構によって保持された被処理基板を周縁外方から覆うとともに、被処理基板を洗浄した後の処理液を受ける排液カップと、排液カップに連結され、排液カップを経た処理液を外方に排出する排液管と、少なくとも、基板保持機構および排液カップを収容するケーシングと、を有する液処理装置を用いた方法であって、
基板保持機構によって、被処理基板を保持する保持工程と、
回転機構によって、基板保持機構によって保持された被処理基板を回転させる回転工程と、
処理液供給機構によって、基板保持機構により保持された被処理基板に処理液を供給する処理液供給工程と、を備え、
処理液供給工程は、フッ酸系処理液を供給する第一薬液供給工程と、当該第一薬液供給工程の後、被処理基板を乾燥させるための有機溶媒を供給する乾燥液供給工程と、を有し、
前記乾燥液供給工程の前に、ケーシング内のアルカリ成分を除去する除去工程、または、ケーシング内へのアルカリ成分の侵入を防止する侵入防止工程が実施される方法であることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−59895(P2009−59895A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225868(P2007−225868)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】