液晶パネル、液晶プロジェクタ装置
【課題】プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図る。
【解決手段】有効画素領域の周囲に形成されたダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続を断つ。これにより、光照射に伴う上記トランジスタの性能劣化に起因して生じる有効画素領域におけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、画質低下を防止する。トランジスタと信号線との電気的接続を断つには、接続するためのコンタクト部の形成を省略でき、同時に、別途の層を新たに形成するなどといったプロセスの増加を伴わない。
【解決手段】有効画素領域の周囲に形成されたダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続を断つ。これにより、光照射に伴う上記トランジスタの性能劣化に起因して生じる有効画素領域におけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、画質低下を防止する。トランジスタと信号線との電気的接続を断つには、接続するためのコンタクト部の形成を省略でき、同時に、別途の層を新たに形成するなどといったプロセスの増加を伴わない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、液晶パネルと該液晶パネルを備えて構成される液晶プロジェクタ装置とに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−85882号公報
【背景技術】
【0003】
画像信号に基づく画像表示を行うための装置として、スクリーン等の対象物に画像を投射表示する液晶プロジェクタ装置が広く普及している。
【0004】
図13は、液晶プロジェクタ装置が備える液晶表示パネル100の概略構成を表す回路図である。
この図に示すように、液晶表示パネル100には、垂直方向に沿って配線される複数の信号線(データ線)Ldと、水平方向に沿って配線される複数の走査線(ゲート線)Lgとが形成され、これら信号線Ldと走査線Lgとの各交点ごとに、画素Gが形成されている。
なお、この図では説明の簡単のため、信号線Ld、走査線Lgについてはそれぞれ2本のみ(図中、信号線Ld-1,Ld-2、及び走査線Lg-1,Lg-2)を示し、画素Gとしてはそれらの各交点に形成される画素G-11,G-12,G-21,G-22の4つのみを示している。走査線Lg-1と信号線Ld-1との交点に形成される画素Gが画素G-11であり、走査線Lg-1と信号線Ld-2との交点に形成される画素Gが画素G-12、走査線Lg-2と信号線Ld-1との交点に形成される画素Gが画素G-21、走査線Lg-2と信号線Ld-2との交点に形成される画素Gが画素G-22である。
【0005】
各画素Gは、例えばTFT(薄膜トランジスタ)などによる画素トランジスタTrと、液晶セルLCと、保持容量Cとを有して構成される。
画素トランジスタTrは、ゲート電極(制御端子)が走査線Lgと接続され、ソース電極(入力端子)が信号線Ldと接続される。
液晶セルLCは、その画素電極が画素トランジスタTrのドレイン電極(出力端子)と接続され、対向電極がVcom線に接続されている。
また、保持容量Cは、一方の電極が画素トランジスタTrのドレイン電極と、他方の電極がVcom線に対して接続される。
【0006】
このような液晶表示パネル100においては、或る走査線Lgに信号を供給することでその走査線Lgが共通に配線された画素G、すなわち或る水平ライン上の画素Gを選択でき、該選択状態にて信号線Ldを介した電圧供給を行うことで、該水平ライン上の各々の画素Gに対応する画素値の書き込みができる。
このような走査線Lgによる水平ラインの選択・信号線Ldを介した書き込みを水平ライン順次に行うことで、所要の画像表示を行うことができる。
【0007】
図14は、液晶プロジェクタ装置の光学系の概略構成図である。
先ず、図中の光線Liは、光源(図示は省略)からの入射光線を表しており、該光線Liは、液晶表示パネル100の手前側(光源側)に配された偏光板101に入射する。
偏光板101においては、光線Liのうち所定の直線偏光成分が選択的に透過し、液晶表示パネル100に入射する。
【0008】
液晶表示パネル100(画素G)を介した光線Liは、偏光板102に入射する。
該偏光板102は、液晶表示パネル100を介した光線Liのうち所定の直線偏光成分を選択的に透過する。
該偏光板102を透過した光線Liは例えばプリズム103を介して投射光学系へと導かれる。
【0009】
図15は、液晶表示パネル100と偏光板101,102とを用いて実現される偏光制御(白表示/黒表示の制御)についての説明図である。
図15Aは液晶変調時(白表示時)、図15Bは液晶無変調時(黒表示時)の様子を示している。
【0010】
先ず、前述のように液晶表示パネル100の手前側に配置された偏光板101は、光源側より入射する光線Liの所定の直線偏光成分を選択的に透過する。
図15Aに示す液晶変調時には、液晶表示パネル100(画素G)において、このように偏光板101を透過した光線Liについての偏光方向の変調が行われる。具体的に、この場合に液晶表示パネル100を透過した光線Liは、その偏光方向が偏光板101を透過した光線Liの偏光方向とは直交する方向に変調される。
偏光板102は、このような液晶表示パネル100による変調後の偏光状態による光線Liを選択的に透過するように構成されており、この結果、図15Aに示す液晶変調時には投射光学系に光線Liが導かれ、白表示(点灯状態)が実現される。
【0011】
一方、図15Bに示す液晶無変調時には、偏光板101を透過した光線Liについて液晶表示パネル100(画素G)での偏光方向の変調は行われないため、液晶表示パネル100を介した光線Liは偏光板102を透過せず、投射光学系には導かれないものとなる。これにより、黒表示(非点灯状態)が実現される。
【0012】
ここで、近年、液晶プロジェクタ装置では高輝度化及び装置サイズの小型化が進み、光学系内における光密度が急速に高まりつつある。
従前では、光学系内に配置された上記の偏光板(101,102)については、例えば有機材料を用いた偏光板を用いるものとし、光吸収による偏光制御(点灯/非点灯についての制御)を実現していた。
しかしながら、上記のように光学系内の光密度が高まると、有機材料を用いた偏光板ではその耐光性の面で問題が生じ、性能劣化による画質低下を招く虞があった。
そこで近年では、偏光板101,102として例えばワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板を用いるものとし、耐光性を高めている。
【0013】
このような無機材料による偏光板101,102を用いた場合は、偏光制御は吸収ではなく反射を用いた制御となる。すなわち、図15Bに示したような黒表示時において、液晶表示パネル100を介した光線Liは偏光板102にて吸収されず液晶表示パネル100側に反射されることで、非点灯状態が実現されるものである。
【0014】
ところで、液晶表示パネル100には、実際にスクリーン等に投射されるべき画像(有効画像)を表示するための有効画素領域と、その周囲に配されたダミー画素領域とが設けられる。
図16Aは、液晶表示パネル100に形成される有効画素領域100aとダミー画素領域100bとの関係を平面図により示している。
【0015】
ここで、ダミー画素領域100bは画像表示に寄与しない領域である。
従って、該ダミー画素領域100bの透過光が有効画素領域100aの透過光に影響して画質の低下を招来することを防止するため、ダミー画素領域100bに対しては、図16Bの断面図に示すように、遮光層104を設けるということが行われる。
このような遮光層104を設けることで、ダミー画素の透過光が液晶表示パネル100の後段に導かれて有効画素領域100aの透過光に混入してしまうことの防止が図られ、画質低下の防止が図られる。
【0016】
以上の前提を踏まえた上で、従来の液晶表示パネル100が備えるダミー画素領域100b内の画素(ダミー画素G-d’とする)の構造について図17を参照して説明する。
図17に示すように、従来の液晶表示パネル100におけるダミー画素G-d’には、対向基板30、透明電極31、液晶層32、透明電極33、第1遮光層34、信号線Ld、コンタクト部Ct、第1半導体層35、及び走査線Lgが形成されている。
対向基板30が形成される側の面を偏光板101からの光線Liの入射面、走査線Lgが形成される側の面を光線Liの出射面とすると、これらは入射面側から出射面側にかけて上記の順で配置されている。
【0017】
これらのうち、第1遮光層34は、図16Bに示した遮光層104に相当するもので、ダミー画素G-d’の遮光のために設けられたものである。
また、第1半導体層35は、前述の画素トランジスタTrが形成された半導体層となる。
コンタクト部Ctは、信号線Ldと第1半導体層35に形成された画素トランジスタTrとを電気的に接続するための部位となる。
【0018】
またこの場合、走査線Lgは、無機材料で構成された偏光板102からの反射光Lsが画素トランジスタTr(第1半導体層35)に直接照射されてしまうことを防止するための第2遮光層としても兼用されている。具体的に、この場合の走査線Lgは反射光Lsを反射し、画素トランジスタTrが反射光Lsに直接晒されることを防止している。
なお、第2遮光層は走査線とは別途に形成することも勿論可能である。
【0019】
ここで、画素トランジスタTrが反射光Lsに晒されることを防止するのは、画素トランジスタTrが光照射により経時的に劣化して画質低下を招いてしまうことの防止を図るためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のように従来のダミー画素G-d’においては、第2遮光層(図17の構成では走査線Ld)を設けることで、画素トランジスタTrに偏光板102からの反射光Lsが直接照射されてしまうことを防止するものとしている。
【0021】
しかしながら、このような第2遮光層を設けたのみでは、前述の光学系内における光密度の高まりも影響して、画質の低下が生じてしまうことが確認された。
【0022】
ここで、偏光板102からの反射光Lsに伴う画質の低下の防止を図るためには、第2遮光層を、図17に示した構成のように画素トランジスタTr(第1半導体層35)が形成される領域に対応した一部のみに形成するのではなく、ダミー画素G-d’の全面に形成するという対策を採ることが考えられる。
しかしながらその場合は、新たに遮光層を形成するプロセスが増えて液晶表示パネル100の生産性の低下を招くと共に、コストアップの要因となる。
また同時に、ダミー画素G-d’の全面に遮光層を設けてしまうと、迷光の発生量が増大して、かえって画質の低下を招いてしまう虞もある。
【0023】
本技術は上記の問題点に鑑み為されたものであり、その課題は、上記のようなプロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招くことなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題の解決のため、本技術では液晶表示パネルとして以下のような構成を提案する。
すなわち、本技術の液晶表示パネルは、有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されている。
そして、上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれているものである。
【0025】
また、本技術では液晶プロジェクタ装置として以下のような構成を提案する。
すなわち、本技術の液晶プロジェクタ装置は、光源と、上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルとを備えるものであって、上記液晶表示パネルが、上記本技術の液晶表示パネルとされたものである。
【0026】
ここで、後述もするように、ダミー画素内のトランジスタの光照射に伴う性能劣化に起因した画質の低下の問題は、該トランジスタの性能劣化に伴いドレイン電極側からソース電極側へのリーク電流が発生し、該リーク電流により信号線電位が変動し有効画素領域内の画素についての信号電位−透過率特性(いわゆるV−T特性)が変化してしまうことに起因するものと考えられる。
そこで本技術では、ダミー画素において、上記のように信号線とトランジスタとの電気的な接続を断つものとした。
これにより、ダミー画素において生じたトランジスタの性能劣化に起因して生じるとされる、有効画素領域におけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、結果、画質低下の防止を図ることができる。
また、上記のようにトランジスタと信号線との電気的接続を断つにあたっては、例えばそれらを接続するためのコンタクト部の形成を省略するなどプロセスの増加を伴わない手法を採ることが容易であり、同時に、別途の層を新たに形成するなどといった必要性もない。
すなわち、本技術によれば、プロセスの増加やコストアップなどの問題を伴わずに画質低下の防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
上記のように本技術によれば、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態の液晶プロジェクタ装置の内部構成についての説明図である。
【図2】実施の形態の液晶表示パネルの構成についての説明図である。
【図3】従来のダミー画素の概略構成図である。
【図4】画素トランジスタへの光照射に起因して画質が低下する原理について考察するための図である。
【図5】第1の実施の形態のダミー画素の構成についての説明図である。
【図6】従来のダミー画素の断面構造図である。
【図7】第1の実施の形態のダミー画素の断面構造図である。
【図8】ダミー画素内の画素トランジスタへの光照射時間に対する有効画素領域内の画素の輝度変動率の変化特性についての実験結果を示した図である。
【図9】経過時間(Aging Time)に対する表示画像の色度Δyの変化特性についての実験結果を示した図である。
【図10】第2の実施の形態のダミー画素の構成についての説明図である。
【図11】第2の実施の形態のダミー画素の断面構造図である。
【図12】液晶表示パネルにおける画素形成領域の平面図である。
【図13】液晶プロジェクタ装置が備える液晶表示パネルの概略構成を表す回路図である。
【図14】液晶プロジェクタ装置の光学系の概略構成図である。
【図15】液晶表示パネルと偏光板とを用いて実現される偏光制御(白表示/黒表示の制御)についての説明図である。
【図16】ダミー画素領域及びダミー画素に形成される遮光層についての説明図である。
【図17】従来の液晶表示パネルが備えるダミー画素の構造についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.液晶プロジェクタ装置の構成>
<2.液晶表示パネルの構成>
<3.第1の実施の形態としてのダミー画素の構成>
<4.第2の実施の形態としてのダミー画素の構成>
<5.変形例>
【0030】
<1.液晶プロジェクタ装置の構成>
図1は、本技術に係る実施の形態としての液晶プロジェクタ装置50の内部構成についての説明図である。
なお、この図1では液晶プロジェクタ装置50が備える主に光学系の構成のみを示し、他の部分の構成については図示を省略している。
本実施の形態の液晶プロジェクタ装置50は、透過型の液晶表示パネル1として、赤色、緑色、青色の各色に対応する液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bの3枚用いてカラー画像表示を行ういわゆる3板方式の投射型液晶表示装置とされる。
【0031】
図示するように、液晶プロジェクタ装置50には、光源部2、UV/IRカットフィルタ(紫外線/赤外線カットフィルタ)3、一対の第1及び第2レンズアレイ(フライアイレンズ)4,6、及びミラー5が設けられている。
【0032】
光源部2は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光、青色光および緑色光を含んだ白色光を発するようになっている。この光源部2は、白色光を発する発光体(図示せず)と、発光体から発せられた光を反射する凹面鏡とを含んで構成されている。上記発光体には、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプ等が使用される。上記凹面鏡は、例えば回転楕円面鏡や回転放物面鏡等の回転対称な面形状とされる。
【0033】
UV/IRカットフィルタ3は、光源部2より発せられた光について紫外線、赤外線をカットする。これにより、後段の各種光学部品の加熱・劣化の防止が図られる。
またミラー5は、第1,第2レンズアレイ4,6の間に設けられ、光路(光軸)を第2レンズアレイ6側に略90度曲げるようにされる。
【0034】
第1,第2レンズアレイ4,6には、それぞれ複数のマイクロレンズが2次元的に配列されている。これら第1,第2レンズアレイ4,6は、光の照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有している。従って、光源部2から発せられた白色光は、第1,第2レンズアレイ4,6を透過することにより、複数の小光束に分割される。
【0035】
第2レンズアレイ6の出射面側には、PS合成素子7、コンデンサレンズ8、ダイクロイックミラー9が同順で配置される。
【0036】
PS合成素子7には、第2レンズアレイ6における隣り合うマイクロレンズ間に対応する位置に、複数の1/2波長板が設けられている。PS合成素子7は、第2レンズアレイ6より入射した光を第1偏光光(例えばP偏光成分)と第2偏光光(例えばS偏光成分)とに分離し、一方の偏光光(例えばP偏光成分)を、その偏光方向を保ったままPS合成素子7から出射し、他方の偏光光(例えばS偏光成分)を上記1/2波長板の作用により他の偏光成分(例えばP偏光成分)に変換して出射する。これにより、分離された2つの偏光光の偏光方向が特定の方向(例えばP偏光)に揃えられる。
【0037】
PS合成素子7を出射した光は、コンデンサレンズ8を介した後、ダイクロイックミラー9に入射する。ダイクロイックミラー9は、入射した光を、赤色光Rとその他の色光とに分離する。
【0038】
図示するようにダイクロイックミラー9によって分離された赤色光Rの光路に沿っては、ミラー11、フィールドレンズ12-R、偏光板13-R、液晶表示パネル1-R、偏光板14-Rが同順に配置されている。
【0039】
ミラー11は、ダイクロイックミラー9によって分離された赤色光Rを液晶表示パネル1-Rに向けて反射する。ミラー11によって反射された赤色光Rはフィールドレンズ12-R→偏光板13-Rを介して液晶表示パネル1-Rに入射する。液晶表示パネル1-Rに入射した赤色光Rは、該液晶表示パネル1-Rにおいて、画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Rを介してクロスプリズム19に入射する。
【0040】
ここで、本実施の形態の場合、偏光板13、14としては、光学系内の光密度の高まりに対する耐光性を確保すべく、ワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板が用いられる。
【0041】
ダイクロイックミラー9によって分離された赤色光R以外の他の色光は、ダイクロイックミラー10に入射する。ダイクロイックミラー10は、入射した光を、緑色光Gと青色光Bとに分離する。
【0042】
ダイクロイックミラー10によって分離された緑色光Gの光路に沿っては、フィールドレンズ12-G、偏光板13-G、液晶表示パネル1-G、偏光板14-Gが同順に配置されている。
緑色光Gは、フィールドレンズ12-G→偏光板13-Gを介して液晶表示パネル1-Gに入射する。液晶表示パネル1-Gに入射した緑色光Gは、該液晶表示素子1-Gにおいて画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Gを介してクロスプリズム19に入射する。
【0043】
また、ダイクロイックミラー10により分離された青色光Bの光路に沿っては、図のようにリレーレンズ15、ミラー16、リレーレンズ17、ミラー18、フィールドレンズ12-B、偏光板13-B、液晶表示パネル1-B、偏光板14-Bが同順に配置される。
ミラー16は、リレーレンズ15を介して入射した青色光Bをミラー18に向けて反射する。ミラー18は、上記ミラー16にて反射されリレーレンズ17を介して入射した青色光Bを液晶表示パネル1-Bに向けて反射する。
ミラー18にて反射された青色光Bは、フィールドレンズ12-B→偏光板13-Bを介して液晶表示パネル1-Bに入射し、該液晶表示素子1-Bにおいて画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Bを介してクロスプリズム19に入射する。
【0044】
クロスプリズム19は、赤色光R、緑色光G、青色光Bの光路が交わる位置に設けられ、これら3つの色光を合成する。
クロスプリズム19から出射された合成光は、投射光学系20に導かれる。投射光学系20は、例えば液晶プロジェクタ装置50の外部に設けられたスクリーン等の対象物に向けて、上記合成光を投射する。これにより、液晶表示パネル1の変調に応じた画像が上記スクリーン等の対象物に投影(表示)される。
【0045】
なお、図示は省略したが、液晶プロジェクタ装置50には、液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bを入力画像信号に応じて駆動するための信号処理回路等が備えられるものとなる。
【0046】
<2.液晶表示パネルの構成>
図2は、図1に示した液晶プロジェクタ装置50が備える液晶表示パネル1の構成についての説明図である。
図示するように液晶表示パネル1には、画素形成領域1Eとしての、複数の画素Gが形成された領域と、水平転送回路1H、及び垂直転送回路1V-1、1V-2が形成されている。
図示は省略したが、画素形成領域1Eにおいては、行方向(紙面横方向)に配列される複数の画素Gごとにそれぞれ走査線(ゲート線)Lgが共通に配線され、また列方向(紙面縦方向)に配列される複数の画素Gごとにそれぞれ信号線(データ線)Ldが共通に配線されている。すなわち、行方向における画素Gの配列数(つまり水平方向画素数)をnh、列方向における画素Gの配列数(垂直方向画素数)をnvとすると、走査線Lgはnh本、信号線Ldはnv本形成されるものである。
走査線Lgと信号線Ldのそれぞれの交点部に画素Gが配置されている。各画素Gは、それぞれ画素トランジスタTr、液晶セルCL、保持容量Cを有する(先の図13を参照)。
【0047】
水平転送回路1Hは走査線Lgを駆動するための回路部である。また、垂直転送回路1V-1、1V-2は信号線Ldを駆動するための回路部である。
【0048】
液晶表示パネル1において、画素形成領域1Eは、有効画素領域1E-eと、その周囲に配されたダミー画素領域1E-dとを有する。
有効画素領域1E-eは、画像表示領域であり、この有効画素領域1E-eに形成される各画素を介した光がスクリーン等の対象物に表示されるべきものとなる。
一方、ダミー画素領域1E-dは画像表示に寄与しない領域となる。
以下、ダミー画素領域1E-dに形成される画素Gについては、ダミー画素G-dと表記する。
【0049】
ここで、液晶表示パネル1において有効画素領域1E-eの周囲にダミー画素領域1E-dを配置する意義について説明しておく。
図2に示した通り、液晶表示パネル1においては、画素形成領域1Eと共に水平転送回路1H及び垂直転送回路1Vとしての周辺回路部とが形成されることになるが、これら画素形成領域1Eと周辺回路部とでは膜構成(層構造)が異なることから、ウエハー表面におけるそれらの境界部分において、起伏の差が生じることとなる。CMP(Chemical Mechanical Polishing )等の技術を適用することも考えられるが、このような起伏の差を完全に防止することは非常に困難である。
ウエハー表面の起伏が不連続となった部分では、画素の配向膜の厚みや、セルのギャップ制御のためのスペーサ厚も不均一となり、液晶の配向状態に悪影響を及ぼす。つまりその結果、画質の低下を招来してしまう。
【0050】
仮に、有効画素領域1E-eの周囲にダミー画素領域1E-dを配置しないとした場合には、有効画素領域1E-eの外縁部において上記のような起伏差が生じるものとなり、表示画像の画質低下が生じてしまう。
このような表示画像(つまり有効画素領域1E-eを介して投射される画像)についての画質低下を防止すべく、有効画素領域1E-eの周囲に対し、画像表示に寄与しないダミー画素領域1E-dを設けているものである。すなわち、上記のような起伏差が生じる画素領域をダミー画素領域1E-dに割り当てることで、有効画素領域1E-eの平坦性を確保し、それによって表示画像の画質低下の防止を図るというものである。
【0051】
ここで、先の図16に示したように、ダミー画素領域1E-eには、該ダミー画素領域1E-dの透過光が有効画素領域1E-eの透過光に影響を与えて画質低下を招来することを防止すべく、遮光層(図16では遮光層104)が設けられる。
また、ダミー画素領域1E-dの透過光に起因した画質低下の防止にあたっては、ダミー画素G-dの透過率が最小となるように変調をかけるということも行われており、上記の遮光層の形成と併せて行われる場合もある。
【0052】
<3.第1の実施の形態としてのダミー画素の構成>
ここで、前述もしたように従来においては、液晶表示パネル1の前後に配される偏光板(13,14)として、ワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板を設けたこと、すなわち吸収ではなく反射による偏光制御が行われることに対応して、ダミー画素G-d’に対し、偏光板14から液晶表示パネル1側への反射光が直接的に画素トランジスタTrに照射されてしまうことを防止するための第2遮光層を形成するようにされている。
【0053】
しかしながら、このような第2遮光層を設けたのみでは、前述の光学系内における光密度の高まりも影響して、画質の低下が生じてしまうことが確認された。
【0054】
ここで、確認のため、図3に従来のダミー画素G-d’の概略構成図を示す。
先の図17で説明した通り、従来のダミー画素G-d’には、対向基板30、透明電極31、液晶層32、透明電極33、第1遮光層34、信号線Ld、コンタクト部Ct、第1半導体層35、及び走査線Lgが同順で形成されている。
対向基板30が形成される側の面を偏光板13からの光線Liの入射面、走査線Lgが形成される側の面を光線Liの出射面とすると、これらは入射面側から出射面側にかけて上記の順で配置されている。
【0055】
第1遮光層34は、ダミー画素領域1E-dの透過光が有効画素領域1E-eの透過光に影響を与えて画質低下を招くことを防止するために設けられたものであり、図のように画素全体を覆うように形成されている(図16における遮光層104に相当)。
【0056】
また、第1半導体層35は、画素トランジスタTrが形成された半導体層である。
またコンタクト部Ctは、信号線Ldと第1半導体層35に形成された画素トランジスタTrとを電気的に接続するための部位となる。
【0057】
ここで、第2遮光層(この場合は走査線Lgが兼用)は、該第2遮光層による反射光が迷光となって画質の低下を招来してしまうことの防止を図るべく、ダミー画素G-d’の全面にわたって形成するのではなく、画素トランジスタTrが形成された第1半導体層35の形成部に対応した一部のみに形成するものとしている。
【0058】
このことによると、液晶表示パネル1の出射側に配された偏光板14からの反射光Lsは、図のように第1遮光層34の裏側に対して入射してしまい、該第1遮光層34にて反射されて第1半導体層35(画素トランジスタTr)に照射されてしまうことになる。
また、このような第1遮光層34での反射が生じることで、反射光Lsは、第1遮光層34→第2遮光層(Lg)を介しても第1半導体層35に照射されてしまうことになる。
【0059】
このような反射光Lsの照射の影響により、画素トランジスタTrの性能劣化が生じてしまう。
そして、画素トランジスタTrの性能劣化に起因して、有効画素領域1E-eの表示画像についての画質低下が生じることが確認されている。
【0060】
図4を参照して、画素トランジスタTrへの光照射に起因して画質が低下する原理について考察する。
図4においては、従来のダミー画素G-d’の回路図が示されている。
図のようにダミー画素G-d’は、走査線Lgと信号線Ldとの交点部において、画素トランジスタTr、液晶セルLC、及び保持容量Cを有して構成される。
画素トランジスタTrは、例えばTFT(薄膜トランジスタ)とされる。この画素トランジスタTrのゲート電極(制御端子)は、走査線Lgと接続され、ソース電極(入力端子)は、信号線Ldと接続される。
【0061】
液晶セルLCは、その画素電極が画素トランジスタTrのドレイン電極(出力端子)と接続され、対向電極がVcom線(コモン電位供給線)に接続されている。
また、保持容量Cは、一方の電極が画素トランジスタTrのドレイン電極と、他方の電極がVcom線と接続される。
【0062】
ここで、このようなダミー画素G-d’において、画素トランジスタTrが比較的強い光に晒されると、該画素トランジスタTrの性能が劣化し、図中の破線矢印Yで示すようなリーク電流(画素トランジスタTrのドレイン電極からソース電極側に流れる)が発生してしまうと考えられる。
このリーク電流が、先の図3に示したコンタクト部Ctを介して、信号線Ldに流入する。この結果、信号線Ldの電位に影響を与えてしまうと考えられる。
【0063】
言うまでもなく、信号線Ldには、有効画素領域1E-eにおける画素Gに書き込まれるべき信号(電位)が供給される。従って、上記のようにダミー画素G-d’で生じたリーク電流によって信号線Ldの電位が変化してしまうと、有効画素領域1E-eにおける画素Gについての信号電位−透過率特性(いわゆるV−T特性)が変化してしまい、これが画質の劣化に繋がるものと推測される。
【0064】
そこで、本実施の形態では、ダミー画素G-dにおける画素トランジスタTrに光照射に起因した性能劣化が生じても、その影響が信号線Ldを介して有効画素領域1E-eの表示画像に与えられないようにすべく、ダミー画素G-dにおいて、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つという構成を提案する。
具体的に、第1の実施の形態は、図3に示したコンタクト部Ctを省略することで、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つものである。
【0065】
図5は、第1の実施の形態の液晶表示パネル1に形成されるダミー画素G-dの構成についての説明図である。
図5Aはダミー画素G-dの概略構成を斜視図により示し、図5Bはダミー画素G-dの回路図である。
なお、以降の説明において、既に説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図5Aと先の図3との対比から明らかなように、本実施の形態のダミー画素G-dは、従来のダミー画素G-d’との比較で、信号線Ldと第1半導体層35(画素トランジスタTr)とを電気的に接続するためのコンタクト部Ctが省略された点が異なる。
これは、回路図によれば、図5B中の丸破線で囲ったように、画素トランジスタTrのソース電極と信号線Ldとの間を繋ぐ配線上において、信号線Ldとの接続部が切断されたものと表すことができる。
【0067】
ここで、従来のダミー画素G-d’と本実施の形態のダミー画素G-dの構造を、より詳細に対比してみる。
先ず、図6に従来のダミー画素G-d’のより詳細な断面構造図を示す。
この図6に示す通り、従来のダミー画素G-d’では、石英基板36上に第2遮光層と兼用の走査線Lgが形成され、さらにその上層に絶縁膜37が成膜される。
絶縁膜37の成膜後、第1半導体層35が形成され、その後、酸化膜38が成膜された上で、第2半導体層40a,40bが形成される。
ここで、第2半導体層40aは走査線Lgと電気的に接続し、ゲート電極として利用する。こうして画素トランジスタTrが形成される。
【0068】
第2半導体層40a,40bの形成後、絶縁膜39を成膜し、その後、信号線Ldとしての配線層を形成する。
図のように従来のダミー画素G-d’においては、この信号線Ldとしての配線層が、コンタクト部Ctを介して第1半導体層35と電気的に接続されている。
【0069】
信号線Ldとしての配線層を形成後、平坦化を兼ねた絶縁膜41を成膜する。そして、該絶縁膜41の成膜後、第1遮光層34を形成する。
【0070】
第1遮光層34の上層に絶縁膜42を成膜し、その後、透明電極33、配向膜43を形成する。
【0071】
さらに、対向基板30と透明電極31と配向膜44とが同順で積層された積層体と上記配向膜43との間に、液晶を封止して、液晶層32を形成する。このとき、液晶の封止は、上記積層体における配向膜44と配向膜43とが対向する向きとなるようにして行う。
これにより、ダミー画素G-d’が形成される。
【0072】
図7は、第1の実施の形態のダミー画素G-dのより詳細な断面構造図である。
図6に示す従来のダミー画素G-d’との差異は、コンタクト部Ctが省略された点である。
なお、ダミー画素G-dにおけるコンタクト部Ctの省略は、該コンタクト部Ctの形成工程で用いるマスクのパターンを変更するなどの手法により実現することができる。
【0073】
上記のように本実施の形態のダミー画素G-dでは、コンタクト部Ctを省略して画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続が断たれることで、ダミー画素G-dにて生じた光照射に伴う画素トランジスタTrの性能劣化に起因して生じるとされる、有効画素領域1E-eにおけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、結果、画質低下の防止を図ることができる。
【0074】
そして、本実施の形態によれば、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つにあたっては、コンタクト部Ctの形成を省略すれば足るものであり、特段、プロセスの増加を伴うものではなく、また同時に別途の層(遮光層)を新たに形成するなどといった必要性もない。
すなわち、本実施の形態によれば、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【0075】
図8及び図9に、本実施の形態により画質低下の防止効果が得られる点を実証するための実験結果を示す。
図8は、ダミー画素内の画素トランジスタTrへの光照射時間に対する有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率の変化特性についての実験結果を示している。
なお、■プロットが従来例(従来のダミー画素G-d’を用いた場合)、▲プロットが本例(本実施の形態のダミー画素G-dを用いた場合)の結果を表す。
この図に示されるように、従来例では、光照射時間の経過と共に有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率が徐々に上昇していく傾向となる。この点からも理解されるように、従来例では、ダミー画素G-d’内の画素トランジスタTrへの光照射に応じて経時的に画質が低下していく傾向となる。
【0076】
これに対し本例の場合は、光照射時間に対して有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率は殆ど変化しないことが確認できる。この点より、本例によれば、ダミー画素G-d内の画素トランジスタTrへの光照射に起因した画質低下を効果的に抑制できることが分かる。
【0077】
図9は、経過時間(Aging Time)に対する表示画像の色度Δyの変化特性についての実験結果を示している。この図においても■プロットが従来例、▲プロットが本例の結果を表す。
図9を参照すると、従来例としての液晶プロジェクタ装置の場合は時間経過と共に表示画像の色度Δyが大きく変化していくことが分かる。
なお、色度Δyの変化態様は、液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bのそれぞれに対する入射光量のバランス(どのパネルでの劣化が表示画像の変化に大きく影響するかの度合い)に応じたものとなる。
【0078】
これに対し、本例の液晶プロジェクタ装置50の場合は、時間経過に伴う色度Δyの変動幅は、±0.02の範囲内に収まっている。すなわち、人間の視覚的に色変動が認知されない範囲内に収まっている。このことからも、本実施の形態によれば、画質の低下が効果的に抑制されていることが分かる。
【0079】
<4.第2の実施の形態としてのダミー画素の構成>
第1の実施の形態では、ダミー画素G-dにおけるコンタクト部Ctの形成を省略することで画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つものとしたが、第2の実施の形態は、画素トランジスタTrが形成される第1半導体層35の一部を切断することで、画素トランジスタTrと信号線Ldとの間の電気的接続を断つようにするものである。
【0080】
図10は、第2の実施の形態のダミー画素G-dの構成についての説明図であり、図10Aがその概略構成を表す斜視図、図10Bは回路図である。
図10Aと先の図5Aとを対比して分かるように、この場合のダミー画素G-dは、第1の実施の形態のダミー画素G-dとの比較で、コンタクト部Ctが設けられた代わりに、図中「C」と示すように、第1半導体層35がコンタクト部Ctとの接続部を含む部分(第1半導体層35aとする)とそれ以外の部分(第1半導体層35bとする)とに分断された点が異なる。
【0081】
これは、回路図によると、図10B内の丸破線で囲ったように、画素トランジスタTrのソース電極と信号線Ldとを繋ぐ配線上において、信号線Ldとの接続部と上記ソース電極との間が切断されたものと表すことができる。
【0082】
図11は、第2の実施の形態のダミー画素G-dのより詳細な断面構造図である。
この図11と先の図7とを対比して分かるように、この場合のダミー画素G-dは、第1の実施の形態のダミー画素G-dとの比較で、コンタクト部Ctが設けられた代わりに、第1半導体層35がコンタクト部Ctとの接続部を含む第1半導体層35aとそれ以外の部分としての第1半導体層35bとに分断されたものである(図中「C」)。
換言すれば、図6に示した従来のダミー画素G-d’との比較では、第1半導体層35が第1半導体層35aと第1半導体層35bとに分断された点のみが異なるものである。
【0083】
上記のような第2の実施の形態のダミー画素G-dの構成によっても、ダミー画素G-dにおける画素トランジスタTrと信号線Ldとの間の電気的接続を断つことができ、第1の実施の形態と同様の画質低下防止効果が得られる。
また、第2の実施の形態では第1半導体層35を分断するのみでよいことから、第1の実施の形態の場合と同様、プロセスの増加や別途の層を形成することによるコストアップも防止することができる。すなわち、第2の実施の形態によっても、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【0084】
<5.変形例>
以上、本技術に係る各実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、ダミー画素領域1E-d内に形成される全ダミー画素G-dについて信号線Ldとの電気的接続を断つことを前提としたが、有効画素領域1E-eの表示画像の画質低下防止を図るという効果を奏する上では、全ダミー画素G-dについて信号線Ldとの電気的接続を断つ必要性はない。
【0085】
図12は、液晶表示パネル1における画素形成領域1Eの平面図を示しているが、この図を参照すると、ダミー画素G-dのうち、その画素トランジスタTrの劣化の影響が信号線Ldを介して有効画素領域1E-e内の画素Gに及ぼされるのは、図中の斜線部Aで示した部分の画素G-dであることが分かる。すなわち、信号線Ldとの電気的接続を断つべきであるのは、少なくとも、ダミー画素G-dのうち有効画素領域1E-d内の画素Gと同じ画素列に配されるダミー画素G-d(換言すれば、有効画素領域1E-e内の画素Gと共通の信号線Ldが配線されるダミー画素G-d)とさればよいものである。
【0086】
また、これまでの説明では、本技術が3板方式の投射型液晶表示装置に適用される場合を例示したが、本技術は、液晶表示パネルを用いたプロジェクタ装置に広く好適に適用できるものである。
【0087】
また、画素の断面構造についても、先の図7や図11に示したものに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能なものである。
【0088】
また、本技術は以下に示す構成を採ることも可能である。
(1)
有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶表示パネル。
(2)
上記信号線と上記トランジスタとの間を接続するコンタクト部が省略されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)に記載の液晶表示パネル。
(3)
上記トランジスタを形成する半導体層の一部が分断されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)又は(2)に記載の液晶表示パネル。
(4)
全ての上記ダミー画素においてトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)〜(3)に記載の液晶表示パネル。
(5)
上記トランジスタと液晶層との間に第1の遮光層が形成されている上記(1)〜(4)に記載の液晶表示パネル。
(6)
上記トランジスタが形成される位置よりもパネル出射側となる位置に対して第2の遮光層が形成されている
上記(1)〜(5)に記載の液晶表示パネル。
(7)
光源と、
上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルを介した光を投射する投射光学系と
を備え、
上記液晶表示パネルは、
有効画素の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶プロジェクタ装置。
(8)
上記液晶表示パネルの入射側と出射側とに無機材料による偏光板が配置されている上記(7)に記載の液晶プロジェクタ装置。
【符号の説明】
【0089】
1-R,1-G,1-B 液晶表示パネル、2 光源部、3 UV/IRカットフィルタ、4 第1レンズアレイ、5,11,16,18 ミラー、6 第2レンズアレイ、7 PS合成素子、8 コンデンサレンズ、9,10 ダイクロイックミラー、12-R,12-G,12-B フィールドレンズ、13-R,13-G,13-B,14-R,14-G,14-B 偏光板、15,17 リレーレンズ、19 クロスプリズム、20 投射光学系、1E 画素形成領域、1E-e 有効画素領域、1E-d ダミー画素領域、1H 水平転送回路、1V-1,1V-2 垂直転送回路、30 対向基板、31,33 透明電極、32 液晶層、34 第1遮光層、35 第1半導体層(画素トランジスタ)、G-d ダミー画素、Lg 走査線(第2遮光層)、Ld 信号線、Tr 画素トランジスタ、CL 液晶セル、C 保持容量、36 石英基板、37,39,41,42 絶縁膜、38 酸化膜、40a,40b 第2半導体層、43,44 配向膜、Ct コンタクト部
【技術分野】
【0001】
本技術は、液晶パネルと該液晶パネルを備えて構成される液晶プロジェクタ装置とに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−85882号公報
【背景技術】
【0003】
画像信号に基づく画像表示を行うための装置として、スクリーン等の対象物に画像を投射表示する液晶プロジェクタ装置が広く普及している。
【0004】
図13は、液晶プロジェクタ装置が備える液晶表示パネル100の概略構成を表す回路図である。
この図に示すように、液晶表示パネル100には、垂直方向に沿って配線される複数の信号線(データ線)Ldと、水平方向に沿って配線される複数の走査線(ゲート線)Lgとが形成され、これら信号線Ldと走査線Lgとの各交点ごとに、画素Gが形成されている。
なお、この図では説明の簡単のため、信号線Ld、走査線Lgについてはそれぞれ2本のみ(図中、信号線Ld-1,Ld-2、及び走査線Lg-1,Lg-2)を示し、画素Gとしてはそれらの各交点に形成される画素G-11,G-12,G-21,G-22の4つのみを示している。走査線Lg-1と信号線Ld-1との交点に形成される画素Gが画素G-11であり、走査線Lg-1と信号線Ld-2との交点に形成される画素Gが画素G-12、走査線Lg-2と信号線Ld-1との交点に形成される画素Gが画素G-21、走査線Lg-2と信号線Ld-2との交点に形成される画素Gが画素G-22である。
【0005】
各画素Gは、例えばTFT(薄膜トランジスタ)などによる画素トランジスタTrと、液晶セルLCと、保持容量Cとを有して構成される。
画素トランジスタTrは、ゲート電極(制御端子)が走査線Lgと接続され、ソース電極(入力端子)が信号線Ldと接続される。
液晶セルLCは、その画素電極が画素トランジスタTrのドレイン電極(出力端子)と接続され、対向電極がVcom線に接続されている。
また、保持容量Cは、一方の電極が画素トランジスタTrのドレイン電極と、他方の電極がVcom線に対して接続される。
【0006】
このような液晶表示パネル100においては、或る走査線Lgに信号を供給することでその走査線Lgが共通に配線された画素G、すなわち或る水平ライン上の画素Gを選択でき、該選択状態にて信号線Ldを介した電圧供給を行うことで、該水平ライン上の各々の画素Gに対応する画素値の書き込みができる。
このような走査線Lgによる水平ラインの選択・信号線Ldを介した書き込みを水平ライン順次に行うことで、所要の画像表示を行うことができる。
【0007】
図14は、液晶プロジェクタ装置の光学系の概略構成図である。
先ず、図中の光線Liは、光源(図示は省略)からの入射光線を表しており、該光線Liは、液晶表示パネル100の手前側(光源側)に配された偏光板101に入射する。
偏光板101においては、光線Liのうち所定の直線偏光成分が選択的に透過し、液晶表示パネル100に入射する。
【0008】
液晶表示パネル100(画素G)を介した光線Liは、偏光板102に入射する。
該偏光板102は、液晶表示パネル100を介した光線Liのうち所定の直線偏光成分を選択的に透過する。
該偏光板102を透過した光線Liは例えばプリズム103を介して投射光学系へと導かれる。
【0009】
図15は、液晶表示パネル100と偏光板101,102とを用いて実現される偏光制御(白表示/黒表示の制御)についての説明図である。
図15Aは液晶変調時(白表示時)、図15Bは液晶無変調時(黒表示時)の様子を示している。
【0010】
先ず、前述のように液晶表示パネル100の手前側に配置された偏光板101は、光源側より入射する光線Liの所定の直線偏光成分を選択的に透過する。
図15Aに示す液晶変調時には、液晶表示パネル100(画素G)において、このように偏光板101を透過した光線Liについての偏光方向の変調が行われる。具体的に、この場合に液晶表示パネル100を透過した光線Liは、その偏光方向が偏光板101を透過した光線Liの偏光方向とは直交する方向に変調される。
偏光板102は、このような液晶表示パネル100による変調後の偏光状態による光線Liを選択的に透過するように構成されており、この結果、図15Aに示す液晶変調時には投射光学系に光線Liが導かれ、白表示(点灯状態)が実現される。
【0011】
一方、図15Bに示す液晶無変調時には、偏光板101を透過した光線Liについて液晶表示パネル100(画素G)での偏光方向の変調は行われないため、液晶表示パネル100を介した光線Liは偏光板102を透過せず、投射光学系には導かれないものとなる。これにより、黒表示(非点灯状態)が実現される。
【0012】
ここで、近年、液晶プロジェクタ装置では高輝度化及び装置サイズの小型化が進み、光学系内における光密度が急速に高まりつつある。
従前では、光学系内に配置された上記の偏光板(101,102)については、例えば有機材料を用いた偏光板を用いるものとし、光吸収による偏光制御(点灯/非点灯についての制御)を実現していた。
しかしながら、上記のように光学系内の光密度が高まると、有機材料を用いた偏光板ではその耐光性の面で問題が生じ、性能劣化による画質低下を招く虞があった。
そこで近年では、偏光板101,102として例えばワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板を用いるものとし、耐光性を高めている。
【0013】
このような無機材料による偏光板101,102を用いた場合は、偏光制御は吸収ではなく反射を用いた制御となる。すなわち、図15Bに示したような黒表示時において、液晶表示パネル100を介した光線Liは偏光板102にて吸収されず液晶表示パネル100側に反射されることで、非点灯状態が実現されるものである。
【0014】
ところで、液晶表示パネル100には、実際にスクリーン等に投射されるべき画像(有効画像)を表示するための有効画素領域と、その周囲に配されたダミー画素領域とが設けられる。
図16Aは、液晶表示パネル100に形成される有効画素領域100aとダミー画素領域100bとの関係を平面図により示している。
【0015】
ここで、ダミー画素領域100bは画像表示に寄与しない領域である。
従って、該ダミー画素領域100bの透過光が有効画素領域100aの透過光に影響して画質の低下を招来することを防止するため、ダミー画素領域100bに対しては、図16Bの断面図に示すように、遮光層104を設けるということが行われる。
このような遮光層104を設けることで、ダミー画素の透過光が液晶表示パネル100の後段に導かれて有効画素領域100aの透過光に混入してしまうことの防止が図られ、画質低下の防止が図られる。
【0016】
以上の前提を踏まえた上で、従来の液晶表示パネル100が備えるダミー画素領域100b内の画素(ダミー画素G-d’とする)の構造について図17を参照して説明する。
図17に示すように、従来の液晶表示パネル100におけるダミー画素G-d’には、対向基板30、透明電極31、液晶層32、透明電極33、第1遮光層34、信号線Ld、コンタクト部Ct、第1半導体層35、及び走査線Lgが形成されている。
対向基板30が形成される側の面を偏光板101からの光線Liの入射面、走査線Lgが形成される側の面を光線Liの出射面とすると、これらは入射面側から出射面側にかけて上記の順で配置されている。
【0017】
これらのうち、第1遮光層34は、図16Bに示した遮光層104に相当するもので、ダミー画素G-d’の遮光のために設けられたものである。
また、第1半導体層35は、前述の画素トランジスタTrが形成された半導体層となる。
コンタクト部Ctは、信号線Ldと第1半導体層35に形成された画素トランジスタTrとを電気的に接続するための部位となる。
【0018】
またこの場合、走査線Lgは、無機材料で構成された偏光板102からの反射光Lsが画素トランジスタTr(第1半導体層35)に直接照射されてしまうことを防止するための第2遮光層としても兼用されている。具体的に、この場合の走査線Lgは反射光Lsを反射し、画素トランジスタTrが反射光Lsに直接晒されることを防止している。
なお、第2遮光層は走査線とは別途に形成することも勿論可能である。
【0019】
ここで、画素トランジスタTrが反射光Lsに晒されることを防止するのは、画素トランジスタTrが光照射により経時的に劣化して画質低下を招いてしまうことの防止を図るためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上記のように従来のダミー画素G-d’においては、第2遮光層(図17の構成では走査線Ld)を設けることで、画素トランジスタTrに偏光板102からの反射光Lsが直接照射されてしまうことを防止するものとしている。
【0021】
しかしながら、このような第2遮光層を設けたのみでは、前述の光学系内における光密度の高まりも影響して、画質の低下が生じてしまうことが確認された。
【0022】
ここで、偏光板102からの反射光Lsに伴う画質の低下の防止を図るためには、第2遮光層を、図17に示した構成のように画素トランジスタTr(第1半導体層35)が形成される領域に対応した一部のみに形成するのではなく、ダミー画素G-d’の全面に形成するという対策を採ることが考えられる。
しかしながらその場合は、新たに遮光層を形成するプロセスが増えて液晶表示パネル100の生産性の低下を招くと共に、コストアップの要因となる。
また同時に、ダミー画素G-d’の全面に遮光層を設けてしまうと、迷光の発生量が増大して、かえって画質の低下を招いてしまう虞もある。
【0023】
本技術は上記の問題点に鑑み為されたものであり、その課題は、上記のようなプロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招くことなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題の解決のため、本技術では液晶表示パネルとして以下のような構成を提案する。
すなわち、本技術の液晶表示パネルは、有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されている。
そして、上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれているものである。
【0025】
また、本技術では液晶プロジェクタ装置として以下のような構成を提案する。
すなわち、本技術の液晶プロジェクタ装置は、光源と、上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルとを備えるものであって、上記液晶表示パネルが、上記本技術の液晶表示パネルとされたものである。
【0026】
ここで、後述もするように、ダミー画素内のトランジスタの光照射に伴う性能劣化に起因した画質の低下の問題は、該トランジスタの性能劣化に伴いドレイン電極側からソース電極側へのリーク電流が発生し、該リーク電流により信号線電位が変動し有効画素領域内の画素についての信号電位−透過率特性(いわゆるV−T特性)が変化してしまうことに起因するものと考えられる。
そこで本技術では、ダミー画素において、上記のように信号線とトランジスタとの電気的な接続を断つものとした。
これにより、ダミー画素において生じたトランジスタの性能劣化に起因して生じるとされる、有効画素領域におけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、結果、画質低下の防止を図ることができる。
また、上記のようにトランジスタと信号線との電気的接続を断つにあたっては、例えばそれらを接続するためのコンタクト部の形成を省略するなどプロセスの増加を伴わない手法を採ることが容易であり、同時に、別途の層を新たに形成するなどといった必要性もない。
すなわち、本技術によれば、プロセスの増加やコストアップなどの問題を伴わずに画質低下の防止を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
上記のように本技術によれば、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施の形態の液晶プロジェクタ装置の内部構成についての説明図である。
【図2】実施の形態の液晶表示パネルの構成についての説明図である。
【図3】従来のダミー画素の概略構成図である。
【図4】画素トランジスタへの光照射に起因して画質が低下する原理について考察するための図である。
【図5】第1の実施の形態のダミー画素の構成についての説明図である。
【図6】従来のダミー画素の断面構造図である。
【図7】第1の実施の形態のダミー画素の断面構造図である。
【図8】ダミー画素内の画素トランジスタへの光照射時間に対する有効画素領域内の画素の輝度変動率の変化特性についての実験結果を示した図である。
【図9】経過時間(Aging Time)に対する表示画像の色度Δyの変化特性についての実験結果を示した図である。
【図10】第2の実施の形態のダミー画素の構成についての説明図である。
【図11】第2の実施の形態のダミー画素の断面構造図である。
【図12】液晶表示パネルにおける画素形成領域の平面図である。
【図13】液晶プロジェクタ装置が備える液晶表示パネルの概略構成を表す回路図である。
【図14】液晶プロジェクタ装置の光学系の概略構成図である。
【図15】液晶表示パネルと偏光板とを用いて実現される偏光制御(白表示/黒表示の制御)についての説明図である。
【図16】ダミー画素領域及びダミー画素に形成される遮光層についての説明図である。
【図17】従来の液晶表示パネルが備えるダミー画素の構造についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本技術に係る実施の形態について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
<1.液晶プロジェクタ装置の構成>
<2.液晶表示パネルの構成>
<3.第1の実施の形態としてのダミー画素の構成>
<4.第2の実施の形態としてのダミー画素の構成>
<5.変形例>
【0030】
<1.液晶プロジェクタ装置の構成>
図1は、本技術に係る実施の形態としての液晶プロジェクタ装置50の内部構成についての説明図である。
なお、この図1では液晶プロジェクタ装置50が備える主に光学系の構成のみを示し、他の部分の構成については図示を省略している。
本実施の形態の液晶プロジェクタ装置50は、透過型の液晶表示パネル1として、赤色、緑色、青色の各色に対応する液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bの3枚用いてカラー画像表示を行ういわゆる3板方式の投射型液晶表示装置とされる。
【0031】
図示するように、液晶プロジェクタ装置50には、光源部2、UV/IRカットフィルタ(紫外線/赤外線カットフィルタ)3、一対の第1及び第2レンズアレイ(フライアイレンズ)4,6、及びミラー5が設けられている。
【0032】
光源部2は、カラー画像表示に必要とされる、赤色光、青色光および緑色光を含んだ白色光を発するようになっている。この光源部2は、白色光を発する発光体(図示せず)と、発光体から発せられた光を反射する凹面鏡とを含んで構成されている。上記発光体には、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプ等が使用される。上記凹面鏡は、例えば回転楕円面鏡や回転放物面鏡等の回転対称な面形状とされる。
【0033】
UV/IRカットフィルタ3は、光源部2より発せられた光について紫外線、赤外線をカットする。これにより、後段の各種光学部品の加熱・劣化の防止が図られる。
またミラー5は、第1,第2レンズアレイ4,6の間に設けられ、光路(光軸)を第2レンズアレイ6側に略90度曲げるようにされる。
【0034】
第1,第2レンズアレイ4,6には、それぞれ複数のマイクロレンズが2次元的に配列されている。これら第1,第2レンズアレイ4,6は、光の照度分布を均一化させるためのものであり、入射した光を複数の小光束に分割する機能を有している。従って、光源部2から発せられた白色光は、第1,第2レンズアレイ4,6を透過することにより、複数の小光束に分割される。
【0035】
第2レンズアレイ6の出射面側には、PS合成素子7、コンデンサレンズ8、ダイクロイックミラー9が同順で配置される。
【0036】
PS合成素子7には、第2レンズアレイ6における隣り合うマイクロレンズ間に対応する位置に、複数の1/2波長板が設けられている。PS合成素子7は、第2レンズアレイ6より入射した光を第1偏光光(例えばP偏光成分)と第2偏光光(例えばS偏光成分)とに分離し、一方の偏光光(例えばP偏光成分)を、その偏光方向を保ったままPS合成素子7から出射し、他方の偏光光(例えばS偏光成分)を上記1/2波長板の作用により他の偏光成分(例えばP偏光成分)に変換して出射する。これにより、分離された2つの偏光光の偏光方向が特定の方向(例えばP偏光)に揃えられる。
【0037】
PS合成素子7を出射した光は、コンデンサレンズ8を介した後、ダイクロイックミラー9に入射する。ダイクロイックミラー9は、入射した光を、赤色光Rとその他の色光とに分離する。
【0038】
図示するようにダイクロイックミラー9によって分離された赤色光Rの光路に沿っては、ミラー11、フィールドレンズ12-R、偏光板13-R、液晶表示パネル1-R、偏光板14-Rが同順に配置されている。
【0039】
ミラー11は、ダイクロイックミラー9によって分離された赤色光Rを液晶表示パネル1-Rに向けて反射する。ミラー11によって反射された赤色光Rはフィールドレンズ12-R→偏光板13-Rを介して液晶表示パネル1-Rに入射する。液晶表示パネル1-Rに入射した赤色光Rは、該液晶表示パネル1-Rにおいて、画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Rを介してクロスプリズム19に入射する。
【0040】
ここで、本実施の形態の場合、偏光板13、14としては、光学系内の光密度の高まりに対する耐光性を確保すべく、ワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板が用いられる。
【0041】
ダイクロイックミラー9によって分離された赤色光R以外の他の色光は、ダイクロイックミラー10に入射する。ダイクロイックミラー10は、入射した光を、緑色光Gと青色光Bとに分離する。
【0042】
ダイクロイックミラー10によって分離された緑色光Gの光路に沿っては、フィールドレンズ12-G、偏光板13-G、液晶表示パネル1-G、偏光板14-Gが同順に配置されている。
緑色光Gは、フィールドレンズ12-G→偏光板13-Gを介して液晶表示パネル1-Gに入射する。液晶表示パネル1-Gに入射した緑色光Gは、該液晶表示素子1-Gにおいて画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Gを介してクロスプリズム19に入射する。
【0043】
また、ダイクロイックミラー10により分離された青色光Bの光路に沿っては、図のようにリレーレンズ15、ミラー16、リレーレンズ17、ミラー18、フィールドレンズ12-B、偏光板13-B、液晶表示パネル1-B、偏光板14-Bが同順に配置される。
ミラー16は、リレーレンズ15を介して入射した青色光Bをミラー18に向けて反射する。ミラー18は、上記ミラー16にて反射されリレーレンズ17を介して入射した青色光Bを液晶表示パネル1-Bに向けて反射する。
ミラー18にて反射された青色光Bは、フィールドレンズ12-B→偏光板13-Bを介して液晶表示パネル1-Bに入射し、該液晶表示素子1-Bにおいて画像信号に応じて空間的に変調された後、偏光板14-Bを介してクロスプリズム19に入射する。
【0044】
クロスプリズム19は、赤色光R、緑色光G、青色光Bの光路が交わる位置に設けられ、これら3つの色光を合成する。
クロスプリズム19から出射された合成光は、投射光学系20に導かれる。投射光学系20は、例えば液晶プロジェクタ装置50の外部に設けられたスクリーン等の対象物に向けて、上記合成光を投射する。これにより、液晶表示パネル1の変調に応じた画像が上記スクリーン等の対象物に投影(表示)される。
【0045】
なお、図示は省略したが、液晶プロジェクタ装置50には、液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bを入力画像信号に応じて駆動するための信号処理回路等が備えられるものとなる。
【0046】
<2.液晶表示パネルの構成>
図2は、図1に示した液晶プロジェクタ装置50が備える液晶表示パネル1の構成についての説明図である。
図示するように液晶表示パネル1には、画素形成領域1Eとしての、複数の画素Gが形成された領域と、水平転送回路1H、及び垂直転送回路1V-1、1V-2が形成されている。
図示は省略したが、画素形成領域1Eにおいては、行方向(紙面横方向)に配列される複数の画素Gごとにそれぞれ走査線(ゲート線)Lgが共通に配線され、また列方向(紙面縦方向)に配列される複数の画素Gごとにそれぞれ信号線(データ線)Ldが共通に配線されている。すなわち、行方向における画素Gの配列数(つまり水平方向画素数)をnh、列方向における画素Gの配列数(垂直方向画素数)をnvとすると、走査線Lgはnh本、信号線Ldはnv本形成されるものである。
走査線Lgと信号線Ldのそれぞれの交点部に画素Gが配置されている。各画素Gは、それぞれ画素トランジスタTr、液晶セルCL、保持容量Cを有する(先の図13を参照)。
【0047】
水平転送回路1Hは走査線Lgを駆動するための回路部である。また、垂直転送回路1V-1、1V-2は信号線Ldを駆動するための回路部である。
【0048】
液晶表示パネル1において、画素形成領域1Eは、有効画素領域1E-eと、その周囲に配されたダミー画素領域1E-dとを有する。
有効画素領域1E-eは、画像表示領域であり、この有効画素領域1E-eに形成される各画素を介した光がスクリーン等の対象物に表示されるべきものとなる。
一方、ダミー画素領域1E-dは画像表示に寄与しない領域となる。
以下、ダミー画素領域1E-dに形成される画素Gについては、ダミー画素G-dと表記する。
【0049】
ここで、液晶表示パネル1において有効画素領域1E-eの周囲にダミー画素領域1E-dを配置する意義について説明しておく。
図2に示した通り、液晶表示パネル1においては、画素形成領域1Eと共に水平転送回路1H及び垂直転送回路1Vとしての周辺回路部とが形成されることになるが、これら画素形成領域1Eと周辺回路部とでは膜構成(層構造)が異なることから、ウエハー表面におけるそれらの境界部分において、起伏の差が生じることとなる。CMP(Chemical Mechanical Polishing )等の技術を適用することも考えられるが、このような起伏の差を完全に防止することは非常に困難である。
ウエハー表面の起伏が不連続となった部分では、画素の配向膜の厚みや、セルのギャップ制御のためのスペーサ厚も不均一となり、液晶の配向状態に悪影響を及ぼす。つまりその結果、画質の低下を招来してしまう。
【0050】
仮に、有効画素領域1E-eの周囲にダミー画素領域1E-dを配置しないとした場合には、有効画素領域1E-eの外縁部において上記のような起伏差が生じるものとなり、表示画像の画質低下が生じてしまう。
このような表示画像(つまり有効画素領域1E-eを介して投射される画像)についての画質低下を防止すべく、有効画素領域1E-eの周囲に対し、画像表示に寄与しないダミー画素領域1E-dを設けているものである。すなわち、上記のような起伏差が生じる画素領域をダミー画素領域1E-dに割り当てることで、有効画素領域1E-eの平坦性を確保し、それによって表示画像の画質低下の防止を図るというものである。
【0051】
ここで、先の図16に示したように、ダミー画素領域1E-eには、該ダミー画素領域1E-dの透過光が有効画素領域1E-eの透過光に影響を与えて画質低下を招来することを防止すべく、遮光層(図16では遮光層104)が設けられる。
また、ダミー画素領域1E-dの透過光に起因した画質低下の防止にあたっては、ダミー画素G-dの透過率が最小となるように変調をかけるということも行われており、上記の遮光層の形成と併せて行われる場合もある。
【0052】
<3.第1の実施の形態としてのダミー画素の構成>
ここで、前述もしたように従来においては、液晶表示パネル1の前後に配される偏光板(13,14)として、ワイヤーグリッド等の無機材料による偏光板を設けたこと、すなわち吸収ではなく反射による偏光制御が行われることに対応して、ダミー画素G-d’に対し、偏光板14から液晶表示パネル1側への反射光が直接的に画素トランジスタTrに照射されてしまうことを防止するための第2遮光層を形成するようにされている。
【0053】
しかしながら、このような第2遮光層を設けたのみでは、前述の光学系内における光密度の高まりも影響して、画質の低下が生じてしまうことが確認された。
【0054】
ここで、確認のため、図3に従来のダミー画素G-d’の概略構成図を示す。
先の図17で説明した通り、従来のダミー画素G-d’には、対向基板30、透明電極31、液晶層32、透明電極33、第1遮光層34、信号線Ld、コンタクト部Ct、第1半導体層35、及び走査線Lgが同順で形成されている。
対向基板30が形成される側の面を偏光板13からの光線Liの入射面、走査線Lgが形成される側の面を光線Liの出射面とすると、これらは入射面側から出射面側にかけて上記の順で配置されている。
【0055】
第1遮光層34は、ダミー画素領域1E-dの透過光が有効画素領域1E-eの透過光に影響を与えて画質低下を招くことを防止するために設けられたものであり、図のように画素全体を覆うように形成されている(図16における遮光層104に相当)。
【0056】
また、第1半導体層35は、画素トランジスタTrが形成された半導体層である。
またコンタクト部Ctは、信号線Ldと第1半導体層35に形成された画素トランジスタTrとを電気的に接続するための部位となる。
【0057】
ここで、第2遮光層(この場合は走査線Lgが兼用)は、該第2遮光層による反射光が迷光となって画質の低下を招来してしまうことの防止を図るべく、ダミー画素G-d’の全面にわたって形成するのではなく、画素トランジスタTrが形成された第1半導体層35の形成部に対応した一部のみに形成するものとしている。
【0058】
このことによると、液晶表示パネル1の出射側に配された偏光板14からの反射光Lsは、図のように第1遮光層34の裏側に対して入射してしまい、該第1遮光層34にて反射されて第1半導体層35(画素トランジスタTr)に照射されてしまうことになる。
また、このような第1遮光層34での反射が生じることで、反射光Lsは、第1遮光層34→第2遮光層(Lg)を介しても第1半導体層35に照射されてしまうことになる。
【0059】
このような反射光Lsの照射の影響により、画素トランジスタTrの性能劣化が生じてしまう。
そして、画素トランジスタTrの性能劣化に起因して、有効画素領域1E-eの表示画像についての画質低下が生じることが確認されている。
【0060】
図4を参照して、画素トランジスタTrへの光照射に起因して画質が低下する原理について考察する。
図4においては、従来のダミー画素G-d’の回路図が示されている。
図のようにダミー画素G-d’は、走査線Lgと信号線Ldとの交点部において、画素トランジスタTr、液晶セルLC、及び保持容量Cを有して構成される。
画素トランジスタTrは、例えばTFT(薄膜トランジスタ)とされる。この画素トランジスタTrのゲート電極(制御端子)は、走査線Lgと接続され、ソース電極(入力端子)は、信号線Ldと接続される。
【0061】
液晶セルLCは、その画素電極が画素トランジスタTrのドレイン電極(出力端子)と接続され、対向電極がVcom線(コモン電位供給線)に接続されている。
また、保持容量Cは、一方の電極が画素トランジスタTrのドレイン電極と、他方の電極がVcom線と接続される。
【0062】
ここで、このようなダミー画素G-d’において、画素トランジスタTrが比較的強い光に晒されると、該画素トランジスタTrの性能が劣化し、図中の破線矢印Yで示すようなリーク電流(画素トランジスタTrのドレイン電極からソース電極側に流れる)が発生してしまうと考えられる。
このリーク電流が、先の図3に示したコンタクト部Ctを介して、信号線Ldに流入する。この結果、信号線Ldの電位に影響を与えてしまうと考えられる。
【0063】
言うまでもなく、信号線Ldには、有効画素領域1E-eにおける画素Gに書き込まれるべき信号(電位)が供給される。従って、上記のようにダミー画素G-d’で生じたリーク電流によって信号線Ldの電位が変化してしまうと、有効画素領域1E-eにおける画素Gについての信号電位−透過率特性(いわゆるV−T特性)が変化してしまい、これが画質の劣化に繋がるものと推測される。
【0064】
そこで、本実施の形態では、ダミー画素G-dにおける画素トランジスタTrに光照射に起因した性能劣化が生じても、その影響が信号線Ldを介して有効画素領域1E-eの表示画像に与えられないようにすべく、ダミー画素G-dにおいて、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つという構成を提案する。
具体的に、第1の実施の形態は、図3に示したコンタクト部Ctを省略することで、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つものである。
【0065】
図5は、第1の実施の形態の液晶表示パネル1に形成されるダミー画素G-dの構成についての説明図である。
図5Aはダミー画素G-dの概略構成を斜視図により示し、図5Bはダミー画素G-dの回路図である。
なお、以降の説明において、既に説明済みとなった部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図5Aと先の図3との対比から明らかなように、本実施の形態のダミー画素G-dは、従来のダミー画素G-d’との比較で、信号線Ldと第1半導体層35(画素トランジスタTr)とを電気的に接続するためのコンタクト部Ctが省略された点が異なる。
これは、回路図によれば、図5B中の丸破線で囲ったように、画素トランジスタTrのソース電極と信号線Ldとの間を繋ぐ配線上において、信号線Ldとの接続部が切断されたものと表すことができる。
【0067】
ここで、従来のダミー画素G-d’と本実施の形態のダミー画素G-dの構造を、より詳細に対比してみる。
先ず、図6に従来のダミー画素G-d’のより詳細な断面構造図を示す。
この図6に示す通り、従来のダミー画素G-d’では、石英基板36上に第2遮光層と兼用の走査線Lgが形成され、さらにその上層に絶縁膜37が成膜される。
絶縁膜37の成膜後、第1半導体層35が形成され、その後、酸化膜38が成膜された上で、第2半導体層40a,40bが形成される。
ここで、第2半導体層40aは走査線Lgと電気的に接続し、ゲート電極として利用する。こうして画素トランジスタTrが形成される。
【0068】
第2半導体層40a,40bの形成後、絶縁膜39を成膜し、その後、信号線Ldとしての配線層を形成する。
図のように従来のダミー画素G-d’においては、この信号線Ldとしての配線層が、コンタクト部Ctを介して第1半導体層35と電気的に接続されている。
【0069】
信号線Ldとしての配線層を形成後、平坦化を兼ねた絶縁膜41を成膜する。そして、該絶縁膜41の成膜後、第1遮光層34を形成する。
【0070】
第1遮光層34の上層に絶縁膜42を成膜し、その後、透明電極33、配向膜43を形成する。
【0071】
さらに、対向基板30と透明電極31と配向膜44とが同順で積層された積層体と上記配向膜43との間に、液晶を封止して、液晶層32を形成する。このとき、液晶の封止は、上記積層体における配向膜44と配向膜43とが対向する向きとなるようにして行う。
これにより、ダミー画素G-d’が形成される。
【0072】
図7は、第1の実施の形態のダミー画素G-dのより詳細な断面構造図である。
図6に示す従来のダミー画素G-d’との差異は、コンタクト部Ctが省略された点である。
なお、ダミー画素G-dにおけるコンタクト部Ctの省略は、該コンタクト部Ctの形成工程で用いるマスクのパターンを変更するなどの手法により実現することができる。
【0073】
上記のように本実施の形態のダミー画素G-dでは、コンタクト部Ctを省略して画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続が断たれることで、ダミー画素G-dにて生じた光照射に伴う画素トランジスタTrの性能劣化に起因して生じるとされる、有効画素領域1E-eにおけるV−T特性の変動を効果的に防止でき、結果、画質低下の防止を図ることができる。
【0074】
そして、本実施の形態によれば、画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つにあたっては、コンタクト部Ctの形成を省略すれば足るものであり、特段、プロセスの増加を伴うものではなく、また同時に別途の層(遮光層)を新たに形成するなどといった必要性もない。
すなわち、本実施の形態によれば、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【0075】
図8及び図9に、本実施の形態により画質低下の防止効果が得られる点を実証するための実験結果を示す。
図8は、ダミー画素内の画素トランジスタTrへの光照射時間に対する有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率の変化特性についての実験結果を示している。
なお、■プロットが従来例(従来のダミー画素G-d’を用いた場合)、▲プロットが本例(本実施の形態のダミー画素G-dを用いた場合)の結果を表す。
この図に示されるように、従来例では、光照射時間の経過と共に有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率が徐々に上昇していく傾向となる。この点からも理解されるように、従来例では、ダミー画素G-d’内の画素トランジスタTrへの光照射に応じて経時的に画質が低下していく傾向となる。
【0076】
これに対し本例の場合は、光照射時間に対して有効画素領域1E-e内の画素の輝度変動率は殆ど変化しないことが確認できる。この点より、本例によれば、ダミー画素G-d内の画素トランジスタTrへの光照射に起因した画質低下を効果的に抑制できることが分かる。
【0077】
図9は、経過時間(Aging Time)に対する表示画像の色度Δyの変化特性についての実験結果を示している。この図においても■プロットが従来例、▲プロットが本例の結果を表す。
図9を参照すると、従来例としての液晶プロジェクタ装置の場合は時間経過と共に表示画像の色度Δyが大きく変化していくことが分かる。
なお、色度Δyの変化態様は、液晶表示パネル1-R、1-G、1-Bのそれぞれに対する入射光量のバランス(どのパネルでの劣化が表示画像の変化に大きく影響するかの度合い)に応じたものとなる。
【0078】
これに対し、本例の液晶プロジェクタ装置50の場合は、時間経過に伴う色度Δyの変動幅は、±0.02の範囲内に収まっている。すなわち、人間の視覚的に色変動が認知されない範囲内に収まっている。このことからも、本実施の形態によれば、画質の低下が効果的に抑制されていることが分かる。
【0079】
<4.第2の実施の形態としてのダミー画素の構成>
第1の実施の形態では、ダミー画素G-dにおけるコンタクト部Ctの形成を省略することで画素トランジスタTrと信号線Ldとの電気的接続を断つものとしたが、第2の実施の形態は、画素トランジスタTrが形成される第1半導体層35の一部を切断することで、画素トランジスタTrと信号線Ldとの間の電気的接続を断つようにするものである。
【0080】
図10は、第2の実施の形態のダミー画素G-dの構成についての説明図であり、図10Aがその概略構成を表す斜視図、図10Bは回路図である。
図10Aと先の図5Aとを対比して分かるように、この場合のダミー画素G-dは、第1の実施の形態のダミー画素G-dとの比較で、コンタクト部Ctが設けられた代わりに、図中「C」と示すように、第1半導体層35がコンタクト部Ctとの接続部を含む部分(第1半導体層35aとする)とそれ以外の部分(第1半導体層35bとする)とに分断された点が異なる。
【0081】
これは、回路図によると、図10B内の丸破線で囲ったように、画素トランジスタTrのソース電極と信号線Ldとを繋ぐ配線上において、信号線Ldとの接続部と上記ソース電極との間が切断されたものと表すことができる。
【0082】
図11は、第2の実施の形態のダミー画素G-dのより詳細な断面構造図である。
この図11と先の図7とを対比して分かるように、この場合のダミー画素G-dは、第1の実施の形態のダミー画素G-dとの比較で、コンタクト部Ctが設けられた代わりに、第1半導体層35がコンタクト部Ctとの接続部を含む第1半導体層35aとそれ以外の部分としての第1半導体層35bとに分断されたものである(図中「C」)。
換言すれば、図6に示した従来のダミー画素G-d’との比較では、第1半導体層35が第1半導体層35aと第1半導体層35bとに分断された点のみが異なるものである。
【0083】
上記のような第2の実施の形態のダミー画素G-dの構成によっても、ダミー画素G-dにおける画素トランジスタTrと信号線Ldとの間の電気的接続を断つことができ、第1の実施の形態と同様の画質低下防止効果が得られる。
また、第2の実施の形態では第1半導体層35を分断するのみでよいことから、第1の実施の形態の場合と同様、プロセスの増加や別途の層を形成することによるコストアップも防止することができる。すなわち、第2の実施の形態によっても、プロセスの増大に伴う生産性の低下やコストアップなどの問題を招来することなく、ダミー画素へのパネル出射面側からの光入射に起因した画質低下の防止を図ることができる。
【0084】
<5.変形例>
以上、本技術に係る各実施の形態について説明したが、本技術はこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えばこれまでの説明では、ダミー画素領域1E-d内に形成される全ダミー画素G-dについて信号線Ldとの電気的接続を断つことを前提としたが、有効画素領域1E-eの表示画像の画質低下防止を図るという効果を奏する上では、全ダミー画素G-dについて信号線Ldとの電気的接続を断つ必要性はない。
【0085】
図12は、液晶表示パネル1における画素形成領域1Eの平面図を示しているが、この図を参照すると、ダミー画素G-dのうち、その画素トランジスタTrの劣化の影響が信号線Ldを介して有効画素領域1E-e内の画素Gに及ぼされるのは、図中の斜線部Aで示した部分の画素G-dであることが分かる。すなわち、信号線Ldとの電気的接続を断つべきであるのは、少なくとも、ダミー画素G-dのうち有効画素領域1E-d内の画素Gと同じ画素列に配されるダミー画素G-d(換言すれば、有効画素領域1E-e内の画素Gと共通の信号線Ldが配線されるダミー画素G-d)とさればよいものである。
【0086】
また、これまでの説明では、本技術が3板方式の投射型液晶表示装置に適用される場合を例示したが、本技術は、液晶表示パネルを用いたプロジェクタ装置に広く好適に適用できるものである。
【0087】
また、画素の断面構造についても、先の図7や図11に示したものに限定されるべきものではなく、実際の実施形態に応じて適宜変更が可能なものである。
【0088】
また、本技術は以下に示す構成を採ることも可能である。
(1)
有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶表示パネル。
(2)
上記信号線と上記トランジスタとの間を接続するコンタクト部が省略されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)に記載の液晶表示パネル。
(3)
上記トランジスタを形成する半導体層の一部が分断されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)又は(2)に記載の液晶表示パネル。
(4)
全ての上記ダミー画素においてトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
上記(1)〜(3)に記載の液晶表示パネル。
(5)
上記トランジスタと液晶層との間に第1の遮光層が形成されている上記(1)〜(4)に記載の液晶表示パネル。
(6)
上記トランジスタが形成される位置よりもパネル出射側となる位置に対して第2の遮光層が形成されている
上記(1)〜(5)に記載の液晶表示パネル。
(7)
光源と、
上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルを介した光を投射する投射光学系と
を備え、
上記液晶表示パネルは、
有効画素の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶プロジェクタ装置。
(8)
上記液晶表示パネルの入射側と出射側とに無機材料による偏光板が配置されている上記(7)に記載の液晶プロジェクタ装置。
【符号の説明】
【0089】
1-R,1-G,1-B 液晶表示パネル、2 光源部、3 UV/IRカットフィルタ、4 第1レンズアレイ、5,11,16,18 ミラー、6 第2レンズアレイ、7 PS合成素子、8 コンデンサレンズ、9,10 ダイクロイックミラー、12-R,12-G,12-B フィールドレンズ、13-R,13-G,13-B,14-R,14-G,14-B 偏光板、15,17 リレーレンズ、19 クロスプリズム、20 投射光学系、1E 画素形成領域、1E-e 有効画素領域、1E-d ダミー画素領域、1H 水平転送回路、1V-1,1V-2 垂直転送回路、30 対向基板、31,33 透明電極、32 液晶層、34 第1遮光層、35 第1半導体層(画素トランジスタ)、G-d ダミー画素、Lg 走査線(第2遮光層)、Ld 信号線、Tr 画素トランジスタ、CL 液晶セル、C 保持容量、36 石英基板、37,39,41,42 絶縁膜、38 酸化膜、40a,40b 第2半導体層、43,44 配向膜、Ct コンタクト部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶表示パネル。
【請求項2】
上記信号線と上記トランジスタとの間を接続するコンタクト部が省略されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
上記トランジスタを形成する半導体層の一部が分断されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
全ての上記ダミー画素においてトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項5】
上記トランジスタと液晶層との間に第1の遮光層が形成されている請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項6】
上記トランジスタが形成される位置よりもパネル出射側となる位置に対して第2の遮光層が形成されている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項7】
光源と、
上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルを介した光を投射する投射光学系と
を備え、
上記液晶表示パネルは、
有効画素の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶プロジェクタ装置。
【請求項8】
上記液晶表示パネルの入射側と出射側とに無機材料による偏光板が配置されている請求項7に記載の液晶プロジェクタ装置。
【請求項1】
有効画素領域の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素領域内の画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、少なくとも当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶表示パネル。
【請求項2】
上記信号線と上記トランジスタとの間を接続するコンタクト部が省略されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項3】
上記トランジスタを形成する半導体層の一部が分断されたことで、上記同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項4】
全ての上記ダミー画素においてトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項5】
上記トランジスタと液晶層との間に第1の遮光層が形成されている請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項6】
上記トランジスタが形成される位置よりもパネル出射側となる位置に対して第2の遮光層が形成されている
請求項1に記載の液晶表示パネル。
【請求項7】
光源と、
上記光源より出射された光について画素単位で光変調を施す液晶表示パネルと、
上記液晶表示パネルを介した光を投射する投射光学系と
を備え、
上記液晶表示パネルは、
有効画素の周囲にダミー画素が形成されており、
上記ダミー画素のうち上記有効画素と同じ画素列に配されるダミー画素を同列ダミー画素としたとき、当該同列ダミー画素が有するトランジスタと信号線との間の電気的接続が断たれている
液晶プロジェクタ装置。
【請求項8】
上記液晶表示パネルの入射側と出射側とに無機材料による偏光板が配置されている請求項7に記載の液晶プロジェクタ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−105116(P2013−105116A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250380(P2011−250380)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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