説明

液晶表示装置、さらにそれに用いる光学補償シート、及び偏光板

【課題】TN液晶表示装置の視野角表示特性、特に視野角コントラストを改良するための光学補償シートを提供すること、並びにこのような光学補償シートを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供すること。
【解決手段】TN(ツイストネマチック)配向モードの液晶セル、及び液晶セルの両側に配置された一対の偏光板からなる液晶表示装置であって、
少なくとも一方の偏光板の偏光膜と液晶セルとの間に、光学補償シートが配置され、該光学補償シートが
(1)特定範囲の正面及び膜厚方向のレターデーション値を満たす透明フィルム1、
(2)偏光膜の吸収軸と実質的に直交する遅相軸を有する光学異方性層1、
(3)透明フィルム2、
(4)塗布により形成される液晶性化合物からなる光学異方性層2、
の少なくとも4層を有することを特徴とする液晶表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置、さらにそれに用いる光学補償シート、及び偏光板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワードプロセッサやノートパソコン、パソコン用モニターなどのOA機器、携帯端末、テレビなどに用いられる表示装置としては、CRT(Cathode Ray Tube)がこれまで主に使用されてきたが、近年、薄型で軽量、また消費電力が小さいことから、液晶表示装置がCRTの代わりに広く使用されてきている。
【0003】
液晶表示装置は、主として液晶セルと偏光板からなる。偏光板は一般的に保護フィルムと偏光膜からなるもので、例えばポリビニルアルコールフィルムからなるフィルムを、ヨウ素にて染色し、延伸を行って偏光膜とし、その両面に保護フィルムを積層することにより得られる。透過型液晶表示装置では、この偏光板を液晶セルの両側に取り付け、さらには1枚以上の光学補償シートを配置することもある。反射型液晶表示装置では、反射板、液晶セル、1枚以上の光学補償シート、偏光板の順に配置する。
【0004】
液晶セルは、液晶分子、それを封入するための2枚の基板及び、液晶分子に電圧を加えるための電極層からなる。液晶セルは、液晶分子の配向状態の違いで、ON、OFF表示を行い、透過型、反射型及び反透過型のいずれにも適用できる、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)のような表示モードが提案されている。
【0005】
光学補償シートは、画像着色を解消したり、視野角を拡大したりするために、様々な液晶表示装置で用いられている。光学補償シートとしては、延伸複屈折ポリマーフィルムが従来から使用されていたが、最近では延伸複屈折フィルムからなる光学補償シートに代えて、透明支持体上に低分子又は高分子液晶性化合物から形成された光学異方性層を有する光学補償シートを使用することが提案されている。液晶性化合物には多様な配向形態があるため、液晶性化合物を用いることで、従来の延伸複屈折ポリマーフィルムでは得ることができない光学的性質を実現することが可能になった。このような光学補償シートはさらに偏光板の保護フィルムとしても機能させることができる。
【0006】
光学補償シートの光学的性質は、液晶セルの光学的性質、具体的には上記のような表示モードの違いに応じて決定することができる。液晶性化合物を用いると、液晶セルの様々な表示モードに対応する様々な光学的性質を有する光学補償シートを製造することができる。液晶性化合物を用いた光学補償シートでは、様々な表示モードに対応するものが提案されている。
【0007】
例えばTNモード液晶セルの場合には、電圧印加による液晶セル中の液晶分子はねじれ構造が解消されつつ基板面に傾斜した配向状態をとり、光学補償シートは、これに対する光学補償を行い、黒表示時の斜め方向の光漏れ防止によるコントラストの視角特性を向上させる。
【0008】
光学補償シートの代表例としては、位相差の同じ延伸フィルムの延伸軸を直交させて積
層し、面内レターデーションをゼロに近づけたフィルムの組を上下偏光板と液晶セルの間に各々配置したものが挙げられる。(特許文献1参照)。
しかし液晶セル中の分子は、電界印加時に、完全には基板に対して垂直配向せず、基板近傍では平行配向のままである。一方基板中央部の液晶分子は垂直配向しており、その間の液晶分子は連続的に傾斜配向している。
【0009】
このような液晶セルの配向状態を光学補償するには、光学補償シートも同じような光学性能にすればよく、例えば液晶性化合物をハイブリット配向させてフィルム状にする技術が知られており、液晶性化合物に円盤状液晶性化合物を使用したり(特許文献2参照)、棒状液晶性化合物を使用した例がある(特許文献3参照)。
【0010】
しかし円盤状液晶性化合物を、均一にハイブリッド配向させた光学補償シートを用いても、黒表示時には視野角での光漏れが生じる。この光漏れを減少させるためには、クロスニコル配置した偏光板の透過軸の2等分線方向に、視角を倒した場合の光漏れ抑制が必要である。
【0011】
この偏光板光漏れを補償するには、二軸位相差板が有用なことが知られている。二軸位相差板としては、ポリマーからなる一軸延伸フィルムの一対を、面内の遅相軸方向が直交するように積層した積層位相差板や、高分子フィルムにテンターによる横延伸又は二軸延伸を施した単層の位相差板が知られている(特許文献4、特許文献5)。しかし単層の二軸位相差板では、付与できる位相差の範囲が狭いことが問題であった。
【特許文献1】特開平4-162018号公報
【特許文献2】特開平6-214116号公報
【特許文献3】特開平10-186356号公報
【特許文献4】特開平3−33719号公報
【特許文献5】特開平3−24502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、TN液晶表示装置の視野角表示特性、特に視野角コントラストを改良するための光学補償シートを提供すること、並びにこのような光学補償シートを用いた偏光板及び液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、光学異方性を十分に低下させ、Reがゼロで、且つRthがゼロに近く、Re、Rthの波長分散が小さい透明フィルム1上に、光学異方性層1を形成し、またその光学異方性層の上に透明フィルム2を重ね、さらにその上に液晶性化合物の層が均一にハイブリッド配向した光学異方性層2を積層することにより、偏光板光漏れ補償のための所望の光学異方性(Re、Rth)を付与でき、TN配向モードの液晶表示装置をより正確に光学補償することが可能となることを見出した。
【0014】
すなわち本発明によれば、下記構成の光学補償シート、並びに該光学補償シートを用いた偏光板及び液晶表示装置が提供され、本発明の上記課題が達成される。
【0015】
[1] TN(ツイストネマチック)配向モードの液晶セル、及び液晶セルの両側に配置された一対の偏光板からなる液晶表示装置であって、
少なくとも一方の偏光板の偏光膜と液晶セルとの間に、光学補償シートが配置され、該光学補償シートが
(1)下記数式(1)及び(2)を満たす透明フィルム1、
(2)偏光膜の吸収軸と実質的に直交する遅相軸を有する光学異方性層1、
(3)透明フィルム2、
(4)塗布により形成される液晶性化合物からなる光学異方性層2、
の少なくとも4層を有することを特徴とする液晶表示装置。
数式(1):0≦Re630≦10で且つ|Rth630|≦25
数式(2):|Re400−Re700|≦10で且つ|Rth400−Rth700|≦35
[式中、Reλは波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλは波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
[2] 透明フィルム1がセルロースアシレートフィルムである前記[1]に記載の液晶表示装置。
[3] 透明フィルム2の正面レターデーション値(Reλ)及び/又は膜厚方向レターデーション値(Rthλ)が、透明フィルム1の正面レターデーション値(Reλ)及び/又は膜厚方向レターデーション値(Rthλ)とは異なる前記[1]又は[2]に記載の液晶表示装置。
[4] 光学異方性層1が液晶性化合物を含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[5] 光学異方性層2の液晶性化合物がディスコティック液晶性化合物である前記[1]〜[4]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[6] 透明フィルム1が、フィルム膜厚方向のレターデーション値(Rthλ)を低下させる化合物を少なくとも1種、下記数式(3)、(4)を満たす範囲で含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の液晶表示装置。
数式(3):(RthλA−Rthλ0)/A≦−1.0
数式(4):0.01≦A≦30
ここで、
RthλA:Rthλを低下させる化合物をA質量%含有したフィルムのRthλ(nm)、
Rthλ0:Rthλを低下させる化合物を含有しないフィルムのRthλ(nm)、
A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときのRthλを低下させる化合物の質量(%)、
である。
[7] セルロースアシレートフィルムが、アシル置換度2.85〜3.00のセルロースアシレートを含有して形成されたフィルムであり、且つ該セルロースアシレートフィルムが、Reλ及びRthλを低下させる化合物を少なくとも1種、該セルロースアシレートの固形分に対して0.01〜30質量%含む前記[2]〜[6]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[8] セルロースアシレートフィルムが、|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物少なくとも1種を、セルロースアシレートの固形分に対して0.01〜30質量%含む前記[2]〜[7]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[9] 透明フィルム1及び透明フィルム2の少なくともいずれかの膜厚が10〜120μmである前記[1]〜[8]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[10] 偏光膜に隣接して設けられる光学補償シートであって、
(1)下記数式(1)及び(2)を満たす透明フィルム1、
(2)偏光膜の吸収軸と実質的に直交する遅相軸を有する光学異方性層1、
(3)透明フィルム2、
(4)塗布により形成される液晶性化合物からなる光学異方性層2、
の少なくとも4層を有する光学補償シート。
数式(1):0≦Re630≦10で且つ|Rth630|≦25
数式(2):|Re400−Re700|≦10で且つ|Rth400−Rth700|≦35
[式中、Reλは波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλは波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
[11] 前記[10]記載の光学補償シートを、偏光膜の少なくとも一方の面の保護フ
ィルムとして有することを特徴とする偏光板。
【発明の効果】
【0016】
本発明者らの研究により、光学異方性が小さく、Re、Rthの波長分散が小さい透明フィルム1に光学異方性層1を積層し、さらにその上に、透明フィルム2上に液晶性化合物層2を積層した積層体とすることにより、視野角特性に優れる光学補償シート、偏光板などの光学材料、及びこれらを用いた表示品位の高いTN液晶表示装置を提供することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<透明フィルム>
〔各特性値の測定〕
[光学異方性(Re、Rth)の測定]
本明細書において、Reλ、Rthλは、それぞれ波長λにおける正面方向のレターデーション及び膜厚方向のレターデーションを表す。Reλは、“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}を用い、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthλは、該Reλ、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、及び面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の、合計3つの方向で測定したレターデーション値、平均屈折率の仮定値並びに、入力された膜厚値を基に“KOBRA 21ADH”が算出する。
【0018】
ここで平均屈折率の仮定値は、「ポリマーハンドブック」(“JOHN WILEY & SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
【0019】
[透明フィルムの光学特性]
本発明において、透明フィルム1は、光学異方性(Re、Rth)が小さく、波長分散が小さい。具体的には、光学異方性(Re、Rth)が小さいとは、波長630nmにおける正面方向のレターデーションRe630が10nm以下(0≦Re630≦10)で且つ、膜厚方向のレターデーションRth630の絶対値が25nm以下(|Rth630|≦25nm)である。望ましくは、0≦Re630≦5で且つ|Rth630|≦20nmであり、0≦Re630≦2で且つ|Rth630|≦15nmであることが特に望ましい。
【0020】
また、波長分散が小さいとは、|Re400−Re700|≦10で且つ|Rth400−Rth700|≦35である。望ましくは、|Re400−Re700)|≦5で且つ|Rth400−Rth700|≦25であり、|Re400−Re700|≦3で且つ|Rth400−Rth700|≦15であることが特に望ましい。
【0021】
また光学異方性(Re、Rth)が小さい透明フィルム1とは別に、これと併用される透明フィルム2は、透明フィルム1に対して大きな光学異方性(Re、Rth)を持つことが好ましく、その場合、レターデーション低下剤の変わりにレターデーション上昇剤を用いるのが好ましい。その光学異方性(Re、Rth)は、光学補償シートが用いられる液晶セルの設計や、光学補償シート中の光学異方性層の特性(Re、Rth)に応じて好
ましい範囲が異なるが、Re630は0〜200nm、Rth630は0〜400nm範囲であることが好ましい。
【0022】
〔透明フィルム〕
透明フィルムは、透明なポリマーフィルムであるのが好ましい。透明フィルムは、光透過率が80%以上であることが好ましい。ポリマーフィルムを構成するポリマーの例には、セルロースエステル(例えば、セルロースのモノ〜トリアシレート体)、ノルボルネン系ポリマー及びポリメチルメタクリレートが含まれる。市販のポリマー{ノルボルネン系ポリマーでは、「アートン」及び「ゼオネックス」(いずれも商品名)}を用いてもよい。また従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような、複屈折の発現しやすいポリマーは、国際公開第00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御したものを用いるのが好ましい。
【0023】
中でもセルロースエステルが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルがさらに好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2〜4のセルロースアシレートが好ましい。
【0024】
〔セルロースアシレートフィルム〕
以下に本発明に使用するのに好ましい、セルロースアシレートフィルムについて説明する。
本発明に使用するのに好ましいセルロースアシレートフィルムは、特定のセルロースアシレートを原料として用いて形成されている。光学異方性の発現性を大きくしようとする場合と、小さくしようとする場合とで使用するセルロースアシレートを使い分けることが望ましい。
【0025】
[透明フィルム1]
まず、透明フィルム1に対応する光学異方性を小さくする場合のセルロースアシレートフィルムについて詳細に説明する。
【0026】
(セルロースアシレート原料綿)
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0027】
(セルロースアシレート置換度)
次に上述のセルロースを原料に製造されるセルロースアシレートについて記載する。セルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については、特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTM D−817−91に準じて実施することができる。
【0028】
上記のようにセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることが望ましい。さらには置換度が2.60〜3.00であることが望ましく、2.6
5〜3.00であることがより望ましい。
【0029】
セルロースの水酸基を置換する、酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、また単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル又は芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、i−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0030】
上記のセルロースの水酸基を置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の中から選ばれる少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性をより低下でき、好ましい。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらに望ましくは2.65〜3.00である。
【0031】
(セルロースアシレートの重合度)
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が該上限値以下であれば、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなりすぎて、流延によりフィルム作製が困難になるなどの不具合が生じないので好ましい。重合度が該下限値以上であれば、作製したフィルムの強度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、「繊維学会誌」、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。また特開平9−95538号公報にも詳細に記載されている。
【0032】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0033】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。
【0034】
なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を該範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時において、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以
下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は、目的とする含水率になるものであれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0035】
本発明に用いられるセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一又は異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0036】
(セルロースアシレートへの添加剤)
以下に本発明に使用するのに好ましい添加剤について説明する。
本発明において、セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学異方性を低下させる化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0037】
本発明において、セルロースアシレートフィルムの光学異方性、特にフィルム膜厚方向のレターデーションRthλを低下させる化合物を、下記数式(3)、(4)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが望ましい。
数式(3):(RthλA−Rthλ0)/A≦−1.0
数式(4):0.01≦A≦30
上記数式(3)、(4)において、より望ましくは、
数式(3−1):(RthλA−Rthλ0)/A≦−2.0
数式(4−1):0.05≦A≦25
であり、さらに望ましくは、
数式(3−2):(RthλA−Rthλ0)/A≦−3.0
数式(4−2):0.1≦A≦20
である。
ここで、RthλAはRthλを低下させる化合物をA質量%含有したフィルムのRthλ(nm)、Rthλ0はRthλを低下させる化合物を含有しないフィルムのRthλ(nm)、Aはフィルム原料ポリマーの質量を100としたときのRthλを低下させる化合物の質量(%)である。
【0038】
(セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物の構造的特徴)
セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物について説明する。
光学異方性を十分に低下させ、Re、Rthがともにゼロに近くなるようにするためには、フィルム中のセルロースアシレートが、正面方向及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いることが好ましい。また、光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0039】
(LogP値)
本発明において、セルロースアシレートフィルムを作製するに当たっては、上述のように、フィルム中のセルロースアシレートが正面方向及び膜厚方向に配向するのを抑制して
光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物を選択することが好ましい。logP値が7以下の化合物であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、フィルムの白濁や粉吹きなどの不都合を生じない。またlogP値が0以上の化合物は、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させるなどの問題が生じないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
【0040】
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ震盪法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は、実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,27巻、p.21(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.comput.Sci.”,29巻、p.163(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p.71(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法がより好ましい。ある化合物のlogPの値が、測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断するものとする。
【0041】
オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物としては、下記の一般式(1)又は(2)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):
【0042】
【化1】

【0043】
式中、R11はアルキル基又はアリール基を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。R11、R12及びR13の炭素原子数の総和は10以上である。
【0044】
一般式(2):
【0045】
【化2】

【0046】
式中、R21はアルキル基又はアリール基を表し、R22及びR23はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
【0047】
(光学異方性を低下する化合物の物性)
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、また含有しなくてもよい。さらに光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0048】
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0049】
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
【0050】
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
【0051】
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0052】
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることが好ましい。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより、表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0053】
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
【0054】
一般式(1)の化合物について説明する。
前記一般式(1)において、R11はアルキル基又はアリール基を表し、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表す。また、R11、R12及びR13の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。
【0055】
置換基としては、フッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基及びスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6〜30のものが好ましく、6〜24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。一般式(1)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0056】
【化3】

【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
次に、以下に、一般式(2)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0060】
【化6】

【0061】
【化7】

【0062】
【化8】

【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
【化11】

【0066】
【化12】

【0067】
(波長分散調整剤)
次ぎに、セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物(以下、波長分散調整剤ともいう)について説明する。
【0068】
本発明においてセルロースアシレートフィルムの、Rthの波長分散を良化させるためには、下記数式(5)で表されるRthの波長分散ΔRth=|Rth400−Rth700|を低下させる化合物(波長分散調整剤)を、下記数式(6)、(7)をみたす範囲で少なくとも一種含有することが望ましい。
数式(5):ΔRth=|Rth400−Rth700
数式(6):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−2.0
数式(7):0.01≦B≦30
上記数式(6)、(7)において、より望ましくは、
数式(6−1):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−3.0
数式(7−1):0.05≦B≦25
であり、さらに望ましくは、
数式(6−2):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−4.0
数式(7−2):0.1≦B≦20
である。
ここでΔRthBは、波長分散調整剤をB質量%含有したフィルムのΔRth(nm)、Rth0は波長分散調整剤を含有しないフィルムのΔRth(nm)、Bはフィルム原料ポリマーの質量を100としたときの波長分散調整剤の質量(%)である。
【0069】
上記の波長分散調整剤は、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物であり、該波長分散調整剤を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して好ましくは0.01〜30質量%、より好ましくは0.1〜30質量%含有させることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整することもまた本発明の好適な態様である。
【0070】
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は、一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。従って、相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって、波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は、短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0071】
従って上記のような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe
、Rthの波長分散が、短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0072】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるのに、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物を、セルロースアシレートフィルムに添加する場合、得られるフィルムの分光透過率が優れていることが要求される。本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、且つ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることが望ましい。
【0073】
上記のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は、揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
【0074】
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0075】
(波長分散調整剤の添加量)
上記した、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートに対して0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが特に好ましい。
【0076】
(波長分散調整剤添加の方法)
これら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0077】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0078】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(3)で示されるものが本発明の波長分散調整剤として好ましく用いられる。
一般式(3):Q1−Q2−OH
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環、Q2は芳香族環を表す。)
【0079】
1は含窒素芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5〜7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5〜6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベン
ズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
【0080】
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は、更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0081】
2で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
【0082】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として、好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0083】
2で表される芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
【0084】
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、i−プロピル、t−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり
、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0085】
一般式(3)として、好ましくは下記一般式(3−1)で表される化合物である。
一般式(3−1):
【0086】
【化13】

【0087】
一般式(3)において、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37及びR38は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては上記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0088】
31及びR33として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0089】
32、及びR34として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0090】
35及びR38として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0091】
36及びR37として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0092】
一般式(3)として、より好ましくは下記一般式(3−2)で表される化合物である。
一般式(3−2):
【0093】
【化14】

【0094】
式中、R31、R33、R36及びR37は、上記一般式(3−1)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。
【0095】
以下に一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以上のものが、セルロースアシレートフィルムを作製した場合に、保留性の点で有利であることが確認さ
れた。
【0099】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(4)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(4):
【0100】
【化17】

【0101】
式中、Q41及びQ42は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X41はNR41(R41は水素原子又は置換基を表す。)、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0102】
41及びQ42で表される芳香族環は、芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0103】
41及びQ42で表される芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0104】
41及びQ42で表される芳香族ヘテロ環として、好ましくは酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のどれか1つを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0105】
41及びQ42であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換又は無置換のベンゼン環である。
【0106】
41及びQ42は更に置換基を有してもよく、前記の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0107】
41は、NR42(R42は水素原子又は置換基を表す。置換基としては前記の置換基Tが適用できる。)、酸素原子又は硫黄原子を表し、X41として好ましくは、NR42(R42として好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、又は酸素であり、特に好ましくは酸素である。
【0108】
一般式(4)として、好ましくは下記一般式(4−1)で表される化合物である。
一般式(4−1):
【0109】
【化18】

【0110】
式中、R411、R412、R413、R414、R415、R416、R417、R418及びR419は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。ま
たこれらの置換基は、更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0111】
411、R413、R414、R415、R416、R418及びR419として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0112】
412として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0113】
417として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0114】
一般式(4)として、より好ましくは下記一般式(4−2)で表される化合物である。
一般式(4−2):
【0115】
【化19】

【0116】
式中、R420は水素原子、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアルキニル基、置換又は無置換のアリール基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。R420として、好ましくは置換又は無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換又は無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換又は無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n-ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換又は無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0117】
一般式(4)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
【0118】
以下に一般式(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0119】
【化20】

【0120】
【化21】

【0121】
また本発明に用いられる波長分散調整剤の1つであるシアノ基を含む化合物としては一般式(5)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(5):
【0122】
【化22】

【0123】
式中、Q51及びQ52は、それぞれ独立に芳香族環を表す。X51及びX52は水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。Q51及びQ52であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0124】
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。更に好ましくはベンゼン環である。
【0125】
芳香族ヘテロ環として、好ましくは窒素原子又は硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0126】
51及びQ52であらわされる芳香族環として、好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。Q51及びQ52は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
【0127】
51及びX52は、水素原子又は置換基を表し、少なくともどちらか1つは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X51及びX52で表される置換基は、前記の置換基Tを適用することができる。また、X51及びX52はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X51及びX52は、それぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0128】
51及びX52として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR51(R51は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0129】
一般式(5)として、好ましくは下記一般式(5−1)で表される化合物である。
一般式(5−1):
【0130】
【化23】

【0131】
式中、R511、R512、R513、R514、R515、R516、R517、R518、R519及びR520
それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、置換基としては前記の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0132】
511、R512、R514、R515、R516、R517、R519及びR520として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0133】
513及びR518として、好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0134】
511及びX512は、それぞれ前記一般式(5)におけるX51及びX52と同義である。
【0135】
一般式(5)として、より好ましくは下記一般式(5−2)で表される化合物である。
一般式(5−2):
【0136】
【化24】

【0137】
式中、R513及びR518は一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0138】
513は水素原子又は置換基を表し、置換基としては、前記の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X513として、好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基{−C(=O)OR52(R52は、炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基及びこれらを組み合せたもの)}である。
【0139】
一般式(5)として、更に好ましくは一般式(5−3)で表される化合物である。
一般式(5−3):
【0140】
【化25】

【0141】
式中、R513及びR518は、一般式(5−1)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R52は炭素数1〜20のアルキル基を表す。R52として、好ましくは、R513及びR518が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−デシル基、n−ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0142】
52として、好ましくはR513及びR518が水素以外の場合には、一般式(5−3)で表
される化合物の分子量が300以上になり、且つ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0143】
本発明において、一般式(5)で表される化合物は、“J.Am.Chem.Soc.”,63巻、3452頁(1941年)記載の方法によって合成できる。
【0144】
以下に一般式(5)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0145】
【化26】

【0146】
【化27】

【0147】
【化28】

【0148】
(マット剤微粒子)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが、濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/L以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0149】
これらの微粒子は、通常、平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成しており、フィルム中では1次粒子の凝集体として存在して、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0150】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、「アエロジルR972」、「アエロジルR972V」、「アエロジルR974」、「アエロジルR812」、「アエロジル200」、「アエロジル200V」、「アエロジル300」、「アエロジルR202」、「アエロジルOX50」、「アエロジルTT600」{以上、日本アエロジル(株)製}などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、「アエロジルR976」及び「アエロジルR811」{以上、日本アエロジル(株)製}の商品名で市販されており、使用することができる。
【0151】
これらの中では「アエロジル200V」及び「アエロジルR972V」が、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見かけ比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0152】
本発明において、2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルム
を得るため、微粒子の分散液を調製する際に、いくつかの手法が考えられる。例えば、溶媒と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。他にも、溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は、5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0153】
使用される溶媒は、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール類が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
【0154】
(可塑剤、劣化防止剤、剥離剤)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムには、以上述べた光学的に異方性を低下する化合物、波長分散調整剤の他に、各調製工程において、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。また赤外吸収剤としては、例えば特開2001−194522号公報に記載されたものが使用できる。さらにその添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は、機能が発現する限りにおいて特に限定されない。またさらに、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよく、例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0155】
(各化合物添加の比率)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45質量%であることが望ましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらに望ましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては、上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が望ましく、2000以下がより望ましく、1000以下がさらに望ましい。これら化合物の総量が該下限値以上であれば、セルロースアシレート単体の性質が出すぎることがないので、例えば温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題が生じない。またこれら化合物の総量が該上限値以下であれば、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超えて、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じないので、これら化合物は総量として該範囲内で用いることが好ましい。
【0156】
(セルロースアシレート溶液の有機溶媒)
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、この方法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として、好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル及び、炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0157】
以上、本発明におけるセルロースアシレートフィルムに対しては、塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよく、特に限定されるものではない。
【0158】
その他、本発明におけるセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含めて以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876号公報、特開平12−95877号公報、特開平10−324774号公報、特開平8−152514号公報、特開平10−330538号公報、特開平9−95538号公報、特開平9−95557号公報、特開平10−235664号公報、特開平12−63534号公報、特開平11−21379号公報、特開平10−182853号公報、特開平10−278056号公報、特開平10−279702号公報、特開平10−323853号公報、特開平10−237186号公報、特開平11−60807号公報、特開平11−152342号公報、特開平11−292988号公報、特開平11−60752号公報、特開平11−60752号公報などに記載されている。これらの特許によると、本発明におけるセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0159】
[透明フィルム2]
(光学異方性を大きくする場合のセルロースアシレート)
次ぎに、本発明において用いられる、光学異方性の発現性を大きくする場合のセルロースアシレートについて詳細に記載する。本発明においては、異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いてもよい。
【0160】
このようなセルロースアシレートとしては、セルロースの水酸基をアセチル基及び炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(8)及び(9)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(8):2.0≦SA+SB≦3.0
数式(9):0<SB
式中SA及びSBは、セルロースの水酸基を置換しているアシル基の置換度を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
【0161】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化したポリマーである。アシル置換度は、2位、3位及び6位
のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
【0162】
本発明では、水酸基のSAとSBとの置換度の総和(SA+SB)は、上記数式(8)に示すように、2.0〜3.0であり、好ましくは2.2〜2.9であり、特に好ましくは2.40〜2.85である。またSBの置換度は、上記数式(9)に示すように、0より大きいことが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。SA+SBが上記範囲であれば、親水性が適度であり環境湿度の影響を受け難い。
【0163】
さらにSBは、その28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。
【0164】
また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低く濾過性のよい溶液の作製が可能となる。
【0165】
前記炭素原子数3以上のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族炭化水素基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステル又は芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、i‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましくはプロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などである。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイル基である。また、プロピオニル基の場合には置換度SBは1.3以上であるのが好ましい。
【0166】
前記混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0167】
{レターデーション上昇剤(発現剤)}
本発明では光学異方性を大きく発現させ、好ましいレターデーション値を実現する場合に、レターデーション上昇剤(発現剤)を用いるのが好ましい。
【0168】
本発明において用いることができるレターデーション上昇剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
【0169】
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。
【0170】
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量部の範囲で使用するこ
とがさらに好ましく、0.5〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション上昇剤を併用してもよい。
【0171】
棒状又は円盤状化合物からなる前記レターデーション上昇剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0172】
先ず円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
【0173】
芳香族性ヘテロ環は、一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には、例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が、円盤状化合物として好ましく用いられる。
【0174】
上記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
【0175】
2つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合、及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
【0176】
(a)の縮合環(2つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
【0177】
(b)の単結合は、2つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。2以上
の単結合で2つの芳香族環を結合して、2つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
【0178】
(c)の連結基も、2つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
【0179】
1:−CO−O−
2:−CO−NH−
3:−アルキレン−O−
4:−NH−CO−NH−
5:−NH−CO−O−
6:−O−CO−O−
7:−O−アルキレン−O−
8:−CO−アルケニレン−
9:−CO−アルケニレン−NH−
10:−CO−アルケニレン−O−
11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
14:−NH−CO−アルケニレン−
15:−O−CO−アルケニレン−
【0180】
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
【0181】
アルキル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
【0182】
アルケニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
【0183】
アルキニル基の炭素原子数は、2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
【0184】
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
【0185】
アルコキシ基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
【0186】
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0187】
アルキルチオ基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
【0188】
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
【0189】
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
【0190】
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
【0191】
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
【0192】
本発明では、以上述べた円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。
直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト[例えば、“WinMOPAC2000”{富士通(株)製}]を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最
も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140゜以上であることを意味する。
【0193】
棒状化合物としては、少なくとも2つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも2つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(6)で表される化合物が好ましい。
一般式(6):Ar1−L61−Ar2
上記一般式(6)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
【0194】
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
【0195】
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
【0196】
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)及び非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる

【0197】
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が好ましい。
【0198】
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基の、アルキル部分及びアルキル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
【0199】
一般式(6)において、L61は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる2価の連結基である。
【0200】
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
【0201】
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン又はエチニレン)である。
【0202】
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
【0203】
一般式(6)の分子構造において、L61を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140゜以上であることが好ましい。
【0204】
棒状化合物としては、下記式一般式(6−1)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(6−1):Ar1−L611−X61−L612−Ar2
上記一般式(6−1)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義及び例は、一般式(6)のAr1及びAr2と同様である。
【0205】
一般式(6−1)において、L611及びL612は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる2価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1
〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン又はエチレン)であることが最も好ましい。
【0206】
611及びL612は、−O−CO−又は−CO−O−であることが特に好ましい。またX61は、1,4-シクロへキシレン、ビニレン又はエチニレンである。
【0207】
一般式(6)又は(6−1)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕〜〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
その他、好ましい化合物を以下に示す。
【0208】
【化29】

【0209】
【化30】

【0210】
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて、最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、2種類以上併用してもよい。
【0211】
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、“Mol.Cryst.Liq.Cryst.”,53巻、p.229(1979年)、同89巻、p.93(1982年)、同145巻、p.111(1987年)、同170巻、p.43(1989年)、“J.Am.Chem.Soc.”,113巻、p.1349(1991年)、同118巻、p.5346(1996年)、同92巻、p.1582(1970年)、“J.Org.Chem.”,40巻、p.420(1975年)、“Tetrahedron”,48巻16号、p.3437(1992年)を挙げることができる。
【0212】
その他の添加剤や溶媒等については、光学異方性を小さくするセルロースアシレートフィルムの場合と同様のことがいえる。
【0213】
〔セルロースアシレートフィルムの製造工程〕
[溶解工程]
本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ溶液)の調製に際しては、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解でもよく、また冷却溶解法又は高温溶解方法でもよく、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、濾過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0214】
(ドープ溶液の透明度)
本発明におけるセルロースアシレート溶液である、ドープ溶液(以下、単にドープということがある)の透明度としては、85%以上であることが望ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることが望ましい。本発明においては、セルロースアシレートドープ溶液に、各種の添加剤が十分に溶解していることを確認する。具体的なドープの透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計“UV−3150”{(株)島津製作所製}を用いて550nmの吸光度を測定した。溶媒のみを予めブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度とドープの吸光度との比から、ドープの透明度を算出した。
【0215】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いたフィルムの製造方法について述べ
る。本発明において、セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供される溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)で調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調整をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、次いでドープを加圧型ダイの口金(スリット)から、エンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを、乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して、巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは、その目的により変わる。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0216】
得られるセルロースアシレートフィルムの厚さは、10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmがさらに好ましい。
【0217】
[セルロースアシレートフィルム物性評価]
(高湿度処理後のフィルムの光学性能変化)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの、環境変化による光学性能の変化については、60℃、90%RHに240時間処理したフィルムのReの及びRthの変化量が15nm以下であることが望ましい。より望ましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらに望ましい。
【0218】
(高温度処理後のフィルムの光学性能変化)
また、80℃、240時間処理したフィルムのRe及びRthの変化量は15nm以下であることが望ましい。より望ましくは12nm以下であり、10nm以下であることがさらに望ましい。
【0219】
(フィルム加熱処理後の化合物揮散量)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムに望ましく用いることができる、Rthを低下させる化合物及びΔRthを低下させる化合物は、80℃、240時間処理したフィルムからのそれら化合物の揮散量が、いずれも30%以下であることが望ましい。より望ましくは25%以下であり、20%以下であることがさらに望ましい。
【0220】
なお、フィルムからのそれら化合物の揮散量は、80℃、240時間処理したフィルム及び未処理のフィルムをそれぞれ溶媒に溶かし出し、液体高速クロマトグラフィーにて化合物を検出し、化合物のピーク面積をフィルム中に残存した化合物量として、下記数式(10)により算出した。
数式(10):揮散量(質量%)={(未処理品中の残存化合物量)−(処理品中の残存化合物量)}/(未処理品中の残存化合物量)×100
【0221】
(フィルムのガラス転移温度Tg)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度Tgは、通常80〜165℃である。耐熱性の観点から、Tgが100〜160℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。
ガラス転移温度Tgの測定は、本発明に用いるセルロースアシレートフィルム試料10mgを、常温から200℃まで昇降温速度5℃/分で示差走査熱量計“DSC2910”
(T.A.インスツルメント社製)で熱量測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出した。
【0222】
(フィルムのヘイズ)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムのヘイズは、0.01〜2.0%であることが望ましい。より望ましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらに望ましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。
ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}でJIS K−6714に従って測定した。
【0223】
(フィルムのRe、Rthの湿度依存性)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの、正面方向のレターデーションRe及び膜厚方向のレターデーションRthは、共に湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃、10%RHにおけるRth値と25℃、80%RHにおけるRth値の差ΔRthhum(=Rth10%RH−Rth80%RH)が、0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜35nmである。
【0224】
(フィルムの平衡含水率)
偏光板の保護フィルムとして、透明フィルム1のセルロースアシレートフィルムを用いる場合には、該セルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃、80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。平衡含水率が該上限値以下であれば、光学補償シートの支持体として用いる際に、レターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎることがなく好ましい。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器、試料乾燥装置“CA−03”、“VA−05”{共に三菱化学(株)製}を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0225】
(フィルムの透湿度)
本発明の光学補償シートに用いるセルロースアシレートフィルムの透湿度は、JIS Z−0208を基に、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して求める。フィルムの透湿度としては、400〜2000g/m2・24hであることが望ましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。フィルムの透湿度が該上限値以下であれば、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなることがないので好ましい。また、セルロースアシレートフィルムに光学異方性層を積層して、光学補償シートとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなることがないので好ましい。このような光学補償シートや、該光学補償シートを組み合わせた偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合には、色味の変化や視野角の低下などの不具合が生じないので好ましい。また、セルロースアシレートフィルムの透湿度が該下限値以上であれば、このようなフィルムを偏光膜の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、セルロースアシレートフィルムにより接着剤の乾燥が妨げられることがなく、接着不良などの不具合を生じることがないので好ましい。
【0226】
セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこで、どのような膜厚のサンプルでも、基準を80μmに設けて換算する必要がある。膜厚の換算は、下記数式(11)に従って行った。
数式(11):80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚(μm)/80μm
【0227】
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:「蒸気透過量の測定」(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。測定は、セルロースアシレートフィルム試料70mmφを、25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置“KK−709007”{東洋精機(株)製}にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めた。
【0228】
(フィルムの寸度変化)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率、及び90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0.5%以下であることが望ましい。より望ましくは0.3%以下であり、さらに望ましくは0.15%以下である。
【0229】
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ{新東科学(株)製}にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、この穴の間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後の穴の間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後の穴の間隔の寸法(L2)を測定した。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した。得られた結果に基づき、下記数式(12)及び(13)により寸度変化率を求めた。
数式(12):60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率(%)={|L0−L1|/L0}×100
数式(13):90℃、5%RH(高温)の寸度変化率(%)={|L0−L2|/L0}×100
【0230】
(フィルムの機械的弾性率)
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムの弾性率は、200〜500kgf/mm2であることが好ましい、より好ましくは240〜470kgf/mm2であり、さらに好ましくは270〜440kgf/mm2である。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン(株)製万能引張試験機“STM T50BP”を用い、23℃、70%RH雰囲気中、引張速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、機械的弾性率を求めた。
【0231】
(フィルムの光弾性係数)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの光弾性係数は、50×10-13cm2/dyne以下であることが好ましい。30×10-13cm2/dyne以下であることがより好ましく、20×10-13cm2/dyne以下であることがさらに好ましい。具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引張応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター“M150”{日本分光(株)製}で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
【0232】
(延伸前後におけるフィルムのReの変化及び遅相軸の検出)
試料のセルロースアシレートフィルム100×100mmを用意し、固定一軸延伸機を用いて、温度140℃の条件下で機械搬送方向(MD方向)又は幅方向(TD方向)に延伸を行った。延伸前後における各試料の正面方向のレターデーションReは自動複屈折計
“KOBRA 21ADH”を用いて測定した。遅相軸の検出は、このレターデーション測定の際に得られる配向角から決定した。延伸によってReの変化が小さいことが好ましく、具体的にはRe(n)をn(%)延伸したフィルムの正面方向のレターデーション(nm)、Re(0)を延伸していないフィルムの正面方向のレターデーション(nm)としたときに、下記数式(14)を満足することが好ましく、数式(14−1)を満足することがさらに好ましい。
数式(14):|Re(n)−Re(0)|/n≦1.0
数式(14−1):|Re(n)−Re(0)|/n≦0.3
【0233】
[遅相軸を有する方向]
偏光板の保護フィルムとして、透明フィルム1のセルロースアシレートフィルムを用いる場合、偏光膜が機械搬送方向(MD方向)に吸収軸を持つため、セルロースアシレートフィルムは、遅相軸がMD方向近傍又はTD近傍にあることが望ましい。遅相軸を偏光膜と平行又は直交させることにより、光漏れや色味変化を低減できる。ここでいう近傍とは、遅相軸とMD又はTD方向が0〜10°、好ましくは0〜5°の範囲にあることを表す。
【0234】
[固有複屈折が正であるセルロースアシレートフィルム]
本発明におけるセルロースアシレートフィルムは、フィルム面内において、遅相軸を有する方向に延伸すると、正面方向のレターデーションReが大きくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると、正面方向のレターデーションReが小さくなる。このことは、固有複屈折が正であることを示しており、フィルム中で発現したReを打ち消すには、遅相軸と垂直方向に延伸することが有効である。この方法としては、例えば、フィルムが機械搬送方向(MD方向)に遅相軸を有している場合に、MDとは垂直な方向(TD方向)にテンター延伸を行って、正面Reを小さくすることが考えられる。逆の例として、TD方向に遅相軸を有している場合には、MD方向の機械搬送ロールの張力を強めて延伸することによって正面Reを小さくすることが考えられる。
【0235】
[固有複屈折が負であるセルロースアシレートフィルム]
本発明におけるセルロースアシレートフィルムは、遅相軸を有する方向に延伸すると、正面レターデーションReが小さくなり、遅相軸を有する方向と垂直な方向に延伸すると、正面レターデーションReが大きくなる場合もある。このことは、固有複屈折が負であることを示しており、フィルム中で発現したReを打ち消すには、遅相軸と同一の方向に延伸することが有効である。この方法としては、例えば、フィルムが機械搬送方向(MD方向)に遅相軸を有している場合に、MD方向の機械搬送ロールの張力を強めて延伸することによって、正面Reを小さくすることが考えられる。逆の例として、TD方向に遅相軸を有している場合には、MDとは垂直な方向(TD方向)にテンター延伸を行って、正面Reを小さくすることが考えられる。
【0236】
[セルロースアシレートフィルムの評価方法]
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施した。
【0237】
(正面方向のレターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRth)
セルロースアシレートフィルム試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Reλの測定は、自動複屈折計“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}を用いて、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させることにより行った。またRthλは、このReλと、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°とし、フィルム試料を10°毎に50°まで傾斜させ、波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値とを基に、平均屈折率の仮定値1.48及び膜厚を入力し算出した

【0238】
(Re、Rthの波長分散測定)
セルロースアシレートフィルム試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、エリプソメーター“M−150”{日本分光(株)製}において、波長780nmから380nmの光をフィルム法線方向に入射させることにより、各波長でのReを求め、Reの波長分散を測定した。またRthの波長分散については、このRe並びに、面内の遅相軸を傾斜軸として、フィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から780〜380nmの波長の光を入射させて測定したレターデーション値、及びフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長780〜380nmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48及び膜厚を入力して算出した。
【0239】
(分子配向軸)
セルロースアシレートフィルム試料70mm×100mmを、25℃、65%RHで2時間調湿し、自動複屈折計“KOBRA 21DH”{王子計測(株)製}にて、垂直入射における入射角を変化させた時の位相差より分子配向軸を算出した。
【0240】
(軸ズレ)
また、自動複屈折計“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}を用いて、セルロースアシレートフィルムの軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。また遅相軸角度(軸ズレ)のレンジは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
【0241】
(透過率)
セルロースアシレートフィルム試料20mm×70mmを、25℃、60%RHで、透明度測定器「AKA光電管比色計」{KOTAKI製作所(株)製}で可視光(615nm)の透過率を測定した。
【0242】
(分光特性)
セルロースアシレートフィルム試料13mm×40mmを、25℃、60%RHで分光光度計“U−3210”{(株)日立製作所製}にて、波長300〜450nmにおける透過率を測定した。傾斜幅は(72%の波長−5%の波長)で求めた。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表した。吸収端は、透過率0.4%の波長で表す。これより380nm及び350nmの透過率を評価した。
【0243】
(フィルム表面の性状)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの表面は、JIS B−0601−1994に基づく、該フィルムの表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。より好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.2μm以下である。膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することができる。
【0244】
(セルロースアシレートフィルムのレターデーションの面内ばらつき)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムは、次の数式(15)を満たすことが望ましい。
数式(15):|Remax−Remin|≦3で且つ|Rthmax−Rthmin|≦5
(式中、Remax及びRthmaxは、任意に切り出した1m四方のフィルムのレターデーション値の最大値、Remin及びRthminはその最小値である。]
【0245】
(フィルムの保留性)
本発明に用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、フィルムに添加した各種化合物の保留性が要求される。具体的には、セルロースアシレートフィルムを80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の、フィルムの質量変化が0〜5%であることが好ましい。より好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0〜2%である。
【0246】
(保留性の評価方法)
セルロースアシレートフィルム試料を10cm×10cmのサイズに断裁し、23℃、55%RHの雰囲気下で24時間放置後の質量を測定して、80±5℃、90±10%RHの条件下で48時間放置した。処理後の試料の表面を軽く拭き、23℃、55%RHで1日放置後の質量を測定して、以下の数式(16)に従って保留性を計算した。
数式(16):保留性(質量%)={(放置前の質量−放置後の質量)/放置前の質量}×100
【0247】
(フィルムの力学特性)
(カール)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。本発明におけるセルロースアシレートフィルムには、後述する表面処理、光学異方性層を塗設する際のラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の塗設や貼合などを長尺で行う際に、該セルロースアシレートフィルムの幅方向のカール値が、該範囲内であれば、フィルムのハンドリングに支障をきたしてフィルムの切断が起きるなどの不都合が生じにくい。またフィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触して発塵しやすくなったり、フィルム上への異物付着が多くなったりして、光学補償シートの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えるなどの不具合が生じないので好ましい。また、カールを該範囲内とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光膜貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
【0248】
(引裂き強度)
JIS K7128−2−1998の引裂き試験方法に基づく引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)は、セルロースアシレートフィルムの膜厚が20〜80μmの範囲においては、2g以上であることが好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。またフィルムの膜厚の60μm換算では8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
【0249】
(フィルムの残留溶媒量)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムは、その残留溶媒量が0.01〜1.5質量%の範囲となるような条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明に用いる透明フィルムの残留溶媒量は1.5%以下とすることでカールを抑制できる。1.0%以下であることがより好ましい。これは、前記のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶媒量を少なくすることで、自由体積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。
【0250】
(フィルムの吸湿膨張係数)
本発明におけるセルロースアシレートフィルムの吸湿膨張係数は、30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが
好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、該セルロースアシレートフィルムを光学補償シート支持体として用いた際、光学補償シートの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0251】
(表面処理)
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと光学異方性層や必要性に応じて付与される各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。
ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。このような条件においてプラズマ励起される気体をプラズマ励起性気体といい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0252】
(アルカリ鹸化処理によるフィルム表面の接触角)
偏光板の保護フィルムとして、透明フィルム1のセルロースアシレートフィルムを用いる場合、該フィルムの表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面の接触角が55°以下であることが望ましい。より望ましくは50°以下であり、45°以下であることがさらに望ましい。接触角の評価法は、アルカリ鹸化処理後のフィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角を求める通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
【0253】
(耐光性)
本発明におけるセルロースアシレートの光耐久性の指標として、スーパーキセノン光を240時間照射したときの、フィルムの色差ΔE*abが20以下であることが望ましい。より望ましくは18以下であり、15以下であることがさらに望ましい。色差の測定は、“UV3100”{(株)島津製作所製}を用いた。測定の仕方は、フィルムを25℃、60%RHに2時間以上調湿した後に、キセノン光照射前のフィルムのカラー測定を行い、初期値(L0*、a0*、b0*)を求めた。その後、フィルム単体で、スーパーキセノンウェザーメーター“SX−75”{スガ試験機(株)製}にて、150W/m2、60℃、50%RH条件にてキセノン光を240時間照射した。所定時間の経過後、フィルムを恒温槽から取り出し、25℃、60%RHに2時間調湿した後に、再びカラー測定を行い、照射経時後の値(L1*、a1*、b1*)を求めた。これらから、下記数式(17)に従って色差ΔE*abを求めた。
数式(17):ΔE*ab=[(L0*−L1*2+(a0*−a1*2+(b0*−b1*20.5
【0254】
<光学補償シート>
〔光学異方性層〕
次に、本発明の光学補償シートにおける光学異方性層について詳細に説明する。
【0255】
[光学異方性層1]
本発明における光学異方性層1は、Reが60〜200nmであるのが好ましく、70
〜180nmであるのがより好ましく、90〜160nmであるのがさらに好ましい。また、Rthは30〜100nmであるのが好ましく、35〜90nmであるのがより好ましく、45〜80nmであるのがさらに好ましい。本発明における光学異方性層1は、このような光学特性を有し、且つ長尺であることが好ましく、その材料及び形態についても特に制限されない。例えば、複屈折ポリマーフィルムからなる位相差膜、透明フィルム上に高分子化合物を塗布後に加熱した膜、及び透明フィルム上に低分子又は高分子液晶性化合物を、塗布又は転写することによって形成された位相差層を有する位相差膜など、いずれも使用することができる。また、それぞれを積層して使用することもできる。
【0256】
光学異方性層1は、光軸が層平面に対して実質的に平行であるのが好ましい。そのような光学異方性層は、延伸したポリマーフィルムであってもよいし、実質的に水平(ホモジニアス)配向した液晶性化合物を固定化させてなる層であってもよく、より好ましくは、液晶性化合物を固定化させてなる層である。
【0257】
(液晶性化合物による光学異方性層1の形成)
液晶分子の実質的な水平(ホモジニアス)配向とは、液晶分子のダイレクター方向と層平面との平均角度が0〜20゜の範囲内であることを意味する。液晶分子は、配向状態で固定化されているのが好ましく、重合により固定化されているのがより好ましい。上記光学的特性を満たす限り、液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を、液晶状態においてネマティック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマティック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることができる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。
【0258】
上記光学異方性層1が液晶分子の配向を固定してなる態様では、光学異方性層1は、液晶性化合物を含有する組成物から形成することができる。該液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物を用いるのが好ましい。液晶性化合物は、ネマティック配向している状態で固定されていることが好ましく、重合反応により固定されていることがさらに好ましい。棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0259】
以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶分子には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は1〜6個、好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、“Makromol.Chem.”,190巻、2255頁(1989年)、“Advanced Materials”,5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同第5622648号明細書、同第5770107号明細書、国際公開第95/22586号パンフレット、同第95/24455号パンフレット、同第97/00600号パンフレット、同第98/23580号パンフレット、同第98/52905号パンフレット、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0260】
光学異方性層1は、液晶性化合物及び、必要に応じて、重合性開始剤や任意の成分を含
む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハリド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハリド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。塗布液の塗布は、公知の方法(例、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。光学異方性層の厚さは、0.5〜100μmであることが好ましく、0.5〜30μmであることがさらに好ましい。
【0261】
[光学異方性層2]
次に、液晶性化合物からなる光学異方性層2の好ましい態様について詳細を記述する。
光学異方性層2は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶性化合物を補償するように設計することが好ましい。黒表示における液晶セル中の液晶性化合物の配向状態は、液晶表示装置のモードにより異なる。この液晶セル中の液晶性化合物の配向状態に関しては、“IDW’00、FMC7−2”p.411〜414に記載されている。光学異方性層2は、ラビング軸等の配向軸によって配向制御され、その配向状態に固定された液晶性化合物を含有する。
【0262】
光学異方性層2に用いる液晶性化合物には、棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物が含まれる。棒状液晶性化合物及びディスコティック液晶性化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。光学異方性層の作製に棒状液晶性化合物を用いた場合は、棒状液晶性化合物は、配向軸に対してその長軸を平行にして配向しているのが好ましい。また、光学異方性層の作製にディスコティック液晶性化合物を用いた場合も、ディスコティック液晶性化合物はその長軸(円盤面)を配向軸に平行にして配向しているのが好ましが、円盤面と層平面とのなす角(傾斜角)が深さ方向に変化する、後述のハイブリッド配向がより好ましい。
【0263】
(棒状液晶性化合物)
棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
【0264】
なお、棒状液晶性化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性化合物として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
【0265】
棒状液晶性化合物については、「季刊化学総説」第22巻「液晶の化学」(1994)日本化学会編の第4章、第7章及び第11章、及び「液晶デバイスハンドブック」日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0266】
棒状液晶性化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
【0267】
棒状液晶性化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基又はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、
例えば特開2002−62427号公報段落番号[0064]〜[0086]記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0268】
(ディスコティック液晶性化合物)
ディスコティック(円盤状)液晶性化合物には、C.Destradeらの研究報告“Mol.Cryst.”,71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告“Mol.Cryst.”,122巻、141頁(1985年)及び“Physics lett,A”,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告“Angew.Chem.”,96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体、並びにJ.M.Lehnらの研究報告“J.Chem.Commun.”,1794頁(1985年)及びJ.Zhangらの研究報告“J.Am.Chem.Soc.”,116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0269】
ディスコティック液晶性化合物としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。ディスコティック液晶性化合物から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物がディスコティック液晶性化合物である必要はなく、例えば、低分子のディスコティック液晶性化合物が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合又は架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。ディスコティック液晶性化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0270】
ディスコティック液晶性化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報段落番号[0151]〜「0168」記載の化合物等が挙げられる。
【0271】
ハイブリッド配向では、ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)と透明フィルムの面との角度、すなわち傾斜角が、光学異方性層の深さ(すなわち、透明フィルムに垂直な)方向で、且つ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加又は減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、傾斜角の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、又は、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加又は減少していればよい。しかしながら、傾斜角は連続的に変化することが好ましい。
【0272】
ディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)の平均方向(各分子の長軸方向の平均)は、一般にディスコティック液晶性化合物又は配向膜の材料を選択することにより、又はラビング処理方法を選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)のディスコティック液晶性化合物の長軸(円盤面)方向は、一般にディスコティック液晶性化合物又はディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
ディスコティック液晶性化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。長軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0273】
光学異方性層2の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0274】
(光学異方性層2中の他の添加物)
光学異方性層2中には、上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、フッ素系化合物、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性化合物と相溶性を有し、液晶性化合物の傾斜角の変化を与えられるか、又は配向を阻害しないことが好ましい。
【0275】
重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。上記化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0276】
フッ素系化合物としては、従来公知の化合物が挙げられるが、具体的には、例えば特開2001−330725号公報段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物や特願2004−274396号公報に記載のフッ素系化合物等が挙げられる。
【0277】
液晶性化合物とともに使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましく、とくにディスコティック液晶性化合物とともに使用するポリマーは、ディスコティック液晶性化合物に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
【0278】
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性化合物の配向を阻害しないように、該ポリマーの添加量は、液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。ディスコティック液晶性化合物の、ディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0279】
(光学異方性層2の形成)
光学異方性層2は、液晶性化合物及び、必要に応じて、後記の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
【0280】
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0281】
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スロットダイコーティング法)により実施できる。スロットダイコーティング法の具体的塗布方法としては、特願2004−276545号公報の段落番号[0
293]〜[0294]記載されている方法等を用いることができる。
【0282】
連続走行するウェブに各種液状組成物を塗布して形成した、長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法及び装置については、E.B.Gutoff, E.d.Cohen著の“Coating and Drying Defects”(Wiley−Interscience, John Wiley & Sons, Inc.)に、非塗布面側をロールで支持し、塗布面側にエア・ノズルから風を吹かせて乾燥させる乾燥方法や、塗布面、非塗布面ともにエア・ノズルから風を吹かせて、ウェブを浮上させた状態、すなわち支持体がロール等に接触しないで乾燥させる非接触式のエア・フローティング乾燥方法について記されている。この非接触式の乾燥方法については、スペースを効率よく利用し、且つ効率よく乾燥させる方法として、特公昭60−59250号公報に開示されているような、弦巻き型の乾燥装置を用いた乾燥方法等がある。また特開2003−106767号公報に開示されているような、塗布手段の直後に塗布液の溶媒を凝縮・回収するドライヤを配設し、ドライヤの各種条件を最適化することで、乾燥ムラを抑制し、且つ効率よく乾燥させる方法もある。
【0283】
(液晶性化合物の配向状態の固定)
配向させた液晶性化合物を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同第2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同第2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)が含まれる。
【0284】
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0285】
液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
【0286】
なお、保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0287】
(配向膜)
配向膜は、液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有する。従って、配向膜は本発明の好ましい態様を実現する上では必須である。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の構成要素としては必ずしも必須のものではない。すなわち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを透明フィルム上に転写して、本発明の偏光板を作製することも可能である。
【0288】
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、又はラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロラ
イド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与又は光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
【0289】
配向機能を生じさせる手段は特に限定されないが、ポリマーのラビング処理によることが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
【0290】
本発明では、液晶分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、又は、液晶分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0291】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマー又は架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
【0292】
ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。
【0293】
配向膜に使用されるポリマーとしては、水溶性ポリマー{例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール}が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0294】
液晶分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶分子の種類及び必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性又はブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0295】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、又は、液晶分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入することにより、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
【0296】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。
【0297】
配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール及びジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
【0298】
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、又は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0299】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤を含む透明フィルム上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明フィルム上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。
【0300】
ポリビニルアルコールのような、水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水の混合溶媒とすることが好ましい。その比率は、質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0301】
配向膜の塗布方法は、ワイヤーバーコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法、スロットダイコーティング法、又はロールコーティング法等、公知の方法で実施できる。また、乾燥後の配向膜の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分〜36時間で行うことができるが、好ましくは1分〜30分である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0302】
配向膜は、透明フィルム上又は透明フィルム上に必要に応じて設けられた下塗層上に設けられる。配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
【0303】
前記のラビング処理は、液晶表示装置(LCD)の液晶配向処理工程として、広く採用されている処理方法を適用することができる。すなわち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、レーヨン、ゴム又はナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0304】
次に、配向膜を機能させて、配向膜の上に設けられる光学異方性層2の液晶分子を配向
させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、又は、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
【0305】
<偏光板>
偏光板は通常、偏光膜の両側に保護フィルムを有する。偏光板の保護フィルムとしては、公知のいずれの保護フィルムも用いることができるがセルロースアシレートフィルムを用いることが好ましい。該セルロースアシレートフィルムとしては、本発明において透明フィルム1として用いられるセルロースアシレートフィルムも好適に用いることが出来る。
本発明の光学補償シートは、偏光板と貼り合せるか、偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとして使用することで、その機能を著しく発揮することができる。
【0306】
<偏光膜>
本発明に用いられる偏光膜は、Optiva社製のものに代表される塗布型偏光膜、又は皮膜形成ポリマーと、ヨウ素又は二色性色素からなる偏光膜が好ましい。
【0307】
偏光膜におけるヨウ素及び二色性色素は、ポリマー皮膜中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、ポリマー分子に沿って配向するか、又は二色性色素が、液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
【0308】
汎用の偏光膜は、例えば、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素又は二色性色素の溶液に浸漬し、ポリマー皮膜中にヨウ素又は二色性色素を浸透させることで作製することができる。
【0309】
汎用の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素又は二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みを有することが望ましい。浸透度は、ヨウ素又は二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
【0310】
上記のように、ポリマー皮膜の厚みの下限は、10μmであることが好ましい。一方、厚みの上限については、特に限定はしないが、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在、汎用の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下がさらに好ましい。20μm以下であると、17インチの液晶表示装置では、光漏れ現象が観察されなくなる。
【0311】
偏光膜のポリマーは架橋していてもよい。架橋しているポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーを用いることで達成できる。官能基を有するポリマー又はポリマーに官能基を導入して得られる架橋性ポリマーを、光、熱又はpH変化により、ポリマー間で反応させて偏光膜を形成することができる。
【0312】
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いて、ポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0313】
架橋は、一般に、ポリマー又はポリマーと架橋剤の混合物を含む塗布液を、透明支持体上に塗布したのち、加熱を行うことにより実施される。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
【0314】
偏光膜を形成するポリマーは、それ自体架橋可能なポリマー又は架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例えば、アクリル酸/メタクリル酸重合体、スチレン/マレインイミド重合体、スチレン/ビニルトルエン重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル重合体、エチレン/酢酸ビニル重合体)が含まれる。水溶性ポリマー{例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール}が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。
【0315】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましく、95〜100%が最も好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000が好ましい。
【0316】
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性又はブロック重合変性により変性基を導入して得られる。
【0317】
共重合変性では、変性基として、−COONa、−Si(OH)3、N(CH33・Cl、C919COO−、−SO3Na、−C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、−COONa、−SH、−SC1225を導入することができる。
【0318】
変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号、同9−152509号及び同9−316127号の各公報に記載がある。
【0319】
ケン化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0320】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールは、2種以上を併用してもよい。
【0321】
ポリマーの架橋剤は、多く添加すると、偏光膜の耐湿熱性を向上させることができるが、ヨウ素又は二色性色素の配向性を良好に保つためには、ポリマーに対して架橋剤を50質量%より少なく添加することが好ましい。架橋剤の添加量は、ポリマーに対して、0.1〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。
【0322】
ポリマー皮膜は、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、ポリマー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。バインダー層中の架橋剤の量が該上限値以下であれば、耐久性に問題が生じることがないので好ましい。すなわち、架橋剤の残留量を少なくすることによって、偏光膜を液晶表示装置に組み込み、長期使用、又は高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下などの不具合を防止することができる。
【0323】
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載がある。また、ホウ素化合物(例えば、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
【0324】
二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素又はアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
【0325】
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリーン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。二色性色素については、特開平1−161202号、同1−172906号、同1−172907号、同1−183602号、同1−248105号、同1−265205号、同7−261024号の各公報に記載がある。
【0326】
二色性色素は、遊離酸、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩又はアミン塩として用いられる。2種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光膜を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光膜、又は黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光膜又は偏光板が、単板透過率及び偏光率とも優れており好ましい。
【0327】
本発明においては、偏光膜と透明フィルム1を、接着剤を介して配置することも可能性である。接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を用いることができる。その中でもポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0328】
〔偏光膜の製造〕
偏光膜は、歩留まりの観点から、ポリマーフィルムを偏光膜の長手方向(MD方向)に対して、10〜80゜傾斜して延伸するか(延伸法)、又はラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。傾斜角度は、液晶表示装置(LCD)を構成する液晶セルの両側に貼り合わされる、2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦又は横方向のなす角度に合わせるように延伸することが好ましい。
【0329】
通常の傾斜角度は45゜である。しかし、最近は、透過型、反射型及び半透過型LCDにおいて必ずしも45゜でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0330】
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。
【0331】
延伸工程は、斜め延伸を含め数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。斜め延伸前に、横又は縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。
【0332】
延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を、左右異なる工程で行うことによって実施で
きる。該二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。二軸延伸では、左右異なる速度によって延伸されるため、延伸前のポリマーフィルムの厚みが、左右で異なるようにする必要がある。流延製膜では、ダイにテーパーを付けることにより、ポリマー溶液の流量に左右の差をつけることができる。
以上のように、偏光膜のMD方向に対して10〜80゜斜め延伸されたバインダーフィルムが製造される。
【0333】
ラビング法では、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、レーヨン、ゴム又はナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。ロール自身の真円度、円筒度、振れ(偏芯)がいずれも30μm以下であるラビングロールを用いて実施することが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90゜が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360゜以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。
【0334】
長尺フィルムをラビング処理する場合は、フィルムを搬送装置により一定張力の状態で1〜100m/分の速度で搬送することが好ましい。ラビングロールは、任意のラビング角度設定のためフィルム進行方向に対し水平方向に回転自在とされることが好ましい。0〜60゜の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。
【0335】
〔偏光板の性能〕
液晶表示装置のコントラスト比を高めるためには、偏光板の透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30〜50%の範囲にあることが好ましく、35〜50%の範囲にあることがさらに好ましく、40〜50%の範囲にある(偏光板の単板透過率の最大値は50%である)ことが最も好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90〜100%の範囲にあることが好ましく、95〜100%の範囲にあることがさらに好ましく、99〜100%の範囲にあることが最も好ましい。
【0336】
〔光学補償シート、偏光板を構成する各層の積層順、積層角度〕
本発明の光学補償シートは、偏光膜と液晶セルの間に、偏光膜側から透明フィルム1、光学異方性層1、透明フィルム2、液晶性化合物からなる光学異方性層2の順番で積層されることが必要である。偏光膜と光学異方性層1とは、偏光膜の吸収軸と光学異方性層1の遅相軸とが、実質的に直交するようにして積層される。また、偏光板にするときは、偏光板の片側の保護フィルムを該光学補償シートが兼ねるようにすることが好ましい。
上記各層の間には、配向膜や粘着層、さらなる光学異方性層等、必要に応じて適宜追加することができる。
【0337】
〔ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム〕
本発明の光学補償シート及び偏光板、並びに次ぎに記す液晶表示装置の表面にはハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか、又は全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されている。
【0338】
<液晶表示装置>
〔TN型液晶表示装置〕
本発明の光学補償シートを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置に用い
てもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くからよく知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【実施例】
【0339】
以下に本発明を、実施例を挙げて一層詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0340】
実施例1
<光学補償シートの作製>
〔透明フィルム1の作製〕
[セルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製]
{ドープ(D−1)の調製}
{セルロースアセテート原液(CAL−1)の調製}
先ず下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート原液(CAL−1)を調製した。
【0341】
{セルロースアセテート原液(CAL−1)組成}
セルロースアセテート(酢化度2.86) 100.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
【0342】
(マット剤溶液の調製)
平均粒径16nmのシリカ粒子“AEROSIL R972”{日本アエロジル(株)製}を20質量部及びメタノール80質量部を、30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
【0343】
(マット剤溶液組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm)の分散液 10.0質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアセテート原液(CAL−1) 10.3質量部
【0344】
(添加剤溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
【0345】
(添加剤溶液組成)
光学異方性を低下する化合物(119) 49.3質量部
波長分散調整剤(UV−102) 7.6質量部
メチレンクロリド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアセテート原液(CAL−1) 12.8質量部
【0346】
{セルロースアシレートフィルム(CA−1)の作製}
上記セルロースアセテート原液(CAL−1)94.6質量部、マット剤溶液1.3質
量部及び添加剤溶液4.1質量部のそれぞれを濾過後に混合して、ドープ(D−1)を調製した。次いで得られたドープ(D−1)を、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学異方性を低下する化合物及び波長分散調整剤の、セルロースアセテートに対する質量比は、それぞれ12質量%、1.8質量%であった。残留溶媒量30質量%となった時点でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させ、セルロースアシレートフィルム(CA−1)を製造した。出来上がったセルロースアシレートフィルム(CA−1)の残留溶媒量は0.2質量%であり、膜厚は80μmであった。また該フィルム(CA−1)のRe630は0.3nm、Rth630は3.2nmであり、|Re400−Re700|は1.2nm、|Rth400−Rth700|は6.8nmであった。
また、波長630nmにおけるRthλ0は34nmであり、数式(3)の値は、−2.57であった。
【0347】
〔光学異方性層1の形成〕
[セルロースアシレートフィルムの鹸化処理]
上記のセルロースアシレートフィルム(CA−1)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて14mL/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター{(株)ノリタケカンパニー製}の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3mL/m2塗布した。このときのフィルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。
【0348】
(アルカリ溶液組成)
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
界面活性剤 1.0質量部
1633O(CH2CH2O)10
【0349】
[配向膜の形成]
下記構造のアクリル酸コポリマー及びトリエチルアミン(中和剤)を、メタノール/水の混合溶媒(質量比=30/70)に溶解して、4質量%溶液を調製した。表面をケン化したロール状のセルロースアシレートフィルム(CA−1)を搬送しながら、この上に上記溶液を、バーコーターを用いて連続的に塗布し、次いで120℃で5分間加熱して、乾燥し、厚さ1μmの塗布層を形成した。次ぎに塗布層を設けたロール状セルロースアセテートフィルムを搬送しながら、長手方向(搬送方向)に連続的に塗布層の表面をラビング処理して、配向膜を形成した。
【0350】
【化31】

【0351】
[光学異方性層1の形成]
上記配向膜の上に、以下の組成の塗布液を、バーコーターを用いて連続的に塗布した。塗布層を100℃で1分間加熱して、棒状液晶分子を配向させた後、紫外線を照射して棒状液晶分子を重合させ、配向状態を固定し、セルロースアシレートフィルム(CA−1)上に、光学異方性層1が形成されている光学補償シート1を作製した。光学異方性層1のみの光学特性を算出したところ、Reは140nm、Rthは70nm、棒状液晶分子の長軸の層平面に対する平均傾斜角は0°であり、フィルム平面に対して平行に配向していた。また、棒状液晶分子は、長軸方向がロール状セルロースアシレートフィルム(CA−1)の長手方向と直交するように配向していた(すなわち、光学異方性層1の遅相軸方向
はロール状セルロースアシレートフィルム(CA−1)の長手方向と直交していた)。
【0352】
(光学異方性層1の塗布液組成)
界面活性剤 1.0質量部
下記構造の棒状液晶性化合物 38.4質量部
増感剤 0.38質量部
「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製
光重合開始剤 1.15質量部
「イルガキュア907」チバガイギー社製
下記構造の空気界面水平配向剤 0.06質量部
メチルエチルケトン 60.0質量部
【0353】
【化32】

【0354】
【化33】

【0355】
〔透明フィルム2の作製〕
[セルロースアシレートフィルム(CA−2)の作製]
{内層用ドープ(D−2)及び外層用ドープ(D−3)の調製}
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、内層用ドープ(D−2)及び外層用ドープ(D−3)を調製した。
【0356】
{内層用ドープ(D−2)及び外層用ドープ(D−3)組成(質量部)}
D−2 D−3
セルロースアセテート(酢化度60.9%) 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロリド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子 0 0.8
“AEROSIL R972”日本アエロジル(株)製
下記レターデーション上昇剤 1.5 0
【0357】
【化34】

【0358】
{セルロースアシレートフィルム(CA−2)の作製}
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶媒量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定し、搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶媒量が10質量%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶媒が0.3質量%のセルロースアシレートフィルム(CA−2)(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm)を作製した。得られたセルロースアシレートフィルム(CA−2)の幅は1340mmであり、厚さは80μmであった。また該セルロースアシレートフィルム(CA−2)のRe630は8nm(流延方向に遅相軸)であり、Rth630は80nmであった。
【0359】
〔光学異方性層2の形成〕
[配向膜の形成]
セルロースアシレート(CA−2)に対し前記セルロースアシレート(CA−1)と同
様の鹸化処理を行い、その後さらに、下記の組成の塗布液を#16のワイヤーバーコーターで28mL/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、形成した膜に、セルロースアシレートフィルム(CA−2)の流延方向と平行な方向に配向するようにラビング処理を実施した{すなわち、ラビング軸はセルロースアシレートフィルム(CA−2)の流延方向と平行であった}。
【0360】
(配向膜塗布液組成)
下記構造の変性ポリビニルアルコール 20質量部
水 360質量部
メタノール 120質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 1.0質量部
【0361】
【化35】

【0362】
[光学異方性層2の形成]
配向膜上に、下記塗布液を、#4のワイヤーバーを932回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、24m/分で搬送されている上記ロールフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶性化合物層にあたる膜面風速が、フィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶性化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶性化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。以上により、三層構造のセルロースアシレートフィルム(CA−2)上に、光学異方性層2が形成されている光学補償シート2を作製した。
【0363】
(光学異方性層2の塗布液組成)
下記の組成物を、107質量部のメチルエチルケトンに溶解して塗布液を調製した。
下記構造のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキシド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
“V#360”大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート 0.9質量部
“CAB551−0.2”イーストマンケミカル社製
セルロースアセテートブチレート 0.21質量部
“CAB531−1”イーストマンケミカル社製
フルオロ脂肪族基含有ポリマー 0.14質量部
「メガファックF780」大日本インキ(株)製
光重合開始剤 1.35質量部
「イルガキュア907」チバガイギー社製
増感剤 0.45質量部
「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製
【0364】
【化36】

【0365】
光学異方性層2のディスコティック液晶性化合物は、支持体から距離が増すにつれて、その円盤面と支持体面のなす角度が増加するようにハイブリッド配向していた。
【0366】
〔光学補償シート(C−1)の作製〕
前記光学補償シート1を、55℃の1.5モル/L水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、35℃の0.005モル/L希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。また光学補償シート2についても、同様に鹸化処理を行った。
【0367】
このように鹸化処理を行った光学補償シート1の光学異方性層1側と、同じく鹸化処理を行った光学補償シート2のセルロースアシレートフィルム(CA−2)側を合わせるようにして、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ、光学補償シート(C−1)を作製した。得られた光学補償シートの構成を表1に示す。
【0368】
比較例1
実施例1において、光学補償シート1を用いる代わりに、セルロースアシレートフィルム(CA−1)上に、光学異方性層1を形成しない以外は光学補償シート1の作製と同様にして作製した光学補償シートR1を用い、以下実施例1と同様にして光学補償シート(RC−1)を作製した。得られた光学補償シートの構成を表1に示す。
【0369】
比較例2
実施例1において、セルロースアシレートフィルム(CA−1)を用いる代わりに、セルロースアシレートフィルム(CA−2)を用いる以外は光学補償シート1の作製と同様にして作製した光学補償シートR2を用い、以下実施例1と同様にして、光学補償シート(RC−2)を作製した。得られた光学補償シートの構成を表1に示す。
【0370】
【表1】

【0371】
実施例11
<偏光板(P−1)の作製>
〔偏光膜の作製〕
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
【0372】
〔偏光板(P−1)の作製〕
前記のように鹸化処理を行った光学補償シート(C−1)を、同様に鹸化処理を行った市販のセルロースアシレートフィルムと組合せて、光学補償シート(C−1)の鹸化処理面と該市販のセルロースアシレートフィルムの鹸化処理面とを上記の偏光膜に向け、該偏光膜を挟むようにして、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板(P−1)を得た。ここで市販のセルロースアシレートフィルムとしては「フジタックTF80UL」{富士写真フイルム(株)製}を用いた。このとき、偏光膜並びに、偏光膜両側の保護フィルムである光学補償シート(C−1)及び「フジタックTF80UL」は、いずれもロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わせることができる。従って光学補償シートロール長手方向(セルロースアシレートフィルムの流延方向)と偏光子吸収軸とは平行な方向となる。
【0373】
比較例11
実施例11において、光学補償シート(C−1)を用いる代わりに、光学補償シート(RC−1)を用いる以外は実施例11と同様にして、偏光板(RP−1)を作製した。
【0374】
比較例12
実施例11において、光学補償シート(C−1)を用いる代わりに、光学補償シート(RC−2)を用いる以外は実施例11と同様にして、偏光板(RP−2)を作製した。
【0375】
比較例13
実施例11において、光学補償シート(C−1)を用いる代わりに、光学補償シート2を用いる以外は実施例11と同様にして、偏光板(RP−3)を作製した。得られた偏光板の構成を表2に示す。
【0376】
[TN液晶セルでの評価]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置“Syncmaster172X”{三星電子(株)製}に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに上記で作製した各偏光板(P−1)、(RP−1)〜(RP−4)を、光学補償シートが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
【0377】
作製した液晶表示装置について、測定機“EZ−Contrast160D”(ELDIM社製)を用いて、黒表示(L0)と白表示(L7)で全方位視野角の輝度を測定した。上下左右で、コントラスト比(白透過率/黒透過率)が10以上の領域を視野角として求めた。測定結果を、使用した偏光板の構成と共に表2に示す。
【0378】
【表2】

【0379】
上記表2の結果から分かるように、本発明の構成により、コントラスト視野角特性が良好な液晶表示装置を提供することができる。
【0380】
実施例2−1〜2−3
実施例1において、透明フィルム1として、膜厚80μmのセルロースアシレートフィルム(CA−1)を用いる代わりに、セルロースアシレートフィルム(CA−1)と同様にドープ(D−1)を用いて、膜厚が50、60又は100μmとなるように調整してセルロースアシレートフィルム(CA−3)〜(CA−5)を作製し、以下実施例1と同様にして光学補償シート(C−21)〜(C−23)を作製した。
【0381】
以下に、実施例1および実施例2で得られた光学補償シートの構成を表3に示す。
【0382】
【表3】

【0383】
実施例12−1〜12−3
実施例11において、光学補償シート(C−1)を用いる代わりに、実施例2−1〜2−3で作製した光学補償シート(C−21)〜(C−23)を用いる以外は実施例11と同様にして偏光板(P−21)〜(P−23)を作製し、これらの偏光板を実施例11と同様に液晶表示装置に貼って性能評価を行ったところ、これらの視野角表示特性も実施例11と同様に良好であることが確認された。
【0384】
実施例3
実施例1において、光学異方性層2の塗布液組成を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、光学補償シート(C−3)を作製した。
【0385】
実施例13
光学補償シート(C−1)を用いる代わりに、この光学補償シート(C−3)を用いる以外は実施例11と同様にして偏光板(P−3)を作製し、これを実施例11と同様に液晶表示装置に貼って性能評価を行ったところ、その視野角表示特性も実施例11
と同様に良好であることが確認された。
【0386】
(光学異方性層2の塗布液組成)
下記の組成物を、メチルエチルケトン107質量部に溶解して塗布液を調製した。
セルロースアセテートブチレート 0.21質量部
前記構造のディスコティック液晶性化合物(1) 41.01質量部
エチレンオキシド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
“V#360”大阪有機化学(株)製 4.06質量部
セルロースアセテートブチレート 0.34質量部
“CAB551−0.2”イーストマンケミカル社製
セルロースアセテートブチレート 0.11質量部
“CAB531−1”イーストマンケミカル社製
下記構造フルオロ脂肪族基含有ポリマー1 0.03質量部
下記構造フルオロ脂肪族基含有ポリマー2 0.23質量部
光重合開始剤 1.35質量部
「イルガキュア907」チバガイギー社製
増感剤 0.45質量部
「カヤキュアーDETX」日本化薬(株)製
【0387】
【化37】

【0388】
【化38】

【0389】
実施例4〜5
実施例1又は3において、光学異方性層2の塗布手段をスロットダイコーティング法にし、40m/分で搬送して塗布した以外は実施例1又は3と同様にして光学補償シート(C−4)及び(C−5)を作製した。
【0390】
実施例14〜15
光学補償シート(C−1)又は(C−3)を用いる代わりに、これらの光学補償シート(C−4)又は(C−5)を用いる以外は実施例11と同様にして偏光板(P−4)及び(P−5)を作製し、これを実施例11と同様に液晶表示装置に貼って性能評価を行ったところ、その視野角表示特性も実施例11と同様に良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0391】
光学異方性が小さく、Re、Rthの波長分散が小さい透明フィルム1に光学異方性層1を積層し、さらにその上に、透明フィルム2上に液晶性化合物層2を積層した光学補償シートを、TNモード液晶表示装置に適用することで、TNモード液晶表示装置の視野角コントラストを著しく改善できた。すなわち表示特性の改善された画像表示装置の分野に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TN(ツイストネマチック)配向モードの液晶セル、及び液晶セルの両側に配置された一対の偏光板からなる液晶表示装置であって、
少なくとも一方の偏光板の偏光膜と液晶セルとの間に、光学補償シートが配置され、該光学補償シートが
(1)下記数式(1)及び(2)を満たす透明フィルム1、
(2)偏光膜の吸収軸と実質的に直交する遅相軸を有する光学異方性層1、
(3)透明フィルム2、
(4)塗布により形成される液晶性化合物からなる光学異方性層2、
の少なくとも4層を有することを特徴とする液晶表示装置。
数式(1):0≦Re630≦10で且つ|Rth630|≦25
数式(2):|Re400−Re700|≦10で且つ|Rth400−Rth700|≦35
[式中、Reλは波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλは波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項2】
透明フィルム1がセルロースアシレートフィルムである請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
透明フィルム2の正面レターデーション値(Reλ)及び/又は膜厚方向レターデーション値(Rthλ)が、透明フィルム1の正面レターデーション値(Reλ)及び/又は膜厚方向レターデーション値(Rthλ)とは異なる請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
光学異方性層1が液晶性化合物を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
光学異方性層2の液晶性化合物がディスコティック液晶性化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
透明フィルム1が、フィルム膜厚方向のレターデーション値(Rthλ)を低下させる化合物を少なくとも1種、下記数式(3)、(4)を満たす範囲で含有する請求項1〜5のいずれかに記載の液晶表示装置。
数式(3):(RthλA−Rthλ0)/A≦−1.0
数式(4):0.01≦A≦30
ここで、
RthλA:Rthλを低下させる化合物をA質量%含有したフィルムのRthλ(nm)、
Rthλ0:Rthλを低下させる化合物を含有しないフィルムのRthλ(nm)、
A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときのRthλを低下させる化合物の質量(%)、
である。
【請求項7】
セルロースアシレートフィルムが、アシル置換度2.85〜3.00のセルロースアシレートを含有して形成されたフィルムであり、且つ該セルロースアシレートフィルムが、Reλ及びRthλを低下させる化合物を少なくとも1種、該セルロースアシレートの固形分に対して0.01〜30質量%含む請求項2〜6のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項8】
セルロースアシレートフィルムが、|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物少なくとも1種を、セルロースアシレートの固形分に対して0.0
1〜30質量%含む請求項2〜7のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項9】
透明フィルム1及び透明フィルム2の少なくともいずれかの膜厚が10〜120μmである請求項1〜8のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項10】
偏光膜に隣接して設けられる光学補償シートであって、
(1)下記数式(1)及び(2)を満たす透明フィルム1、
(2)偏光膜の吸収軸と実質的に直交する遅相軸を有する光学異方性層1、
(3)透明フィルム2、
(4)塗布により形成される液晶性化合物からなる光学異方性層2、
の少なくとも4層を有する光学補償シート。
数式(1):0≦Re630≦10で且つ|Rth630|≦25
数式(2):|Re400−Re700|≦10で且つ|Rth400−Rth700|≦35
[式中、Reλは波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rthλは波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項11】
請求項10記載の光学補償シートを、偏光膜の少なくとも一方の面の保護フィルムとして有することを特徴とする偏光板。

【公開番号】特開2006−195363(P2006−195363A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9247(P2005−9247)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】