説明

液晶表示装置、制御方法および電子機器

【課題】フリッカーの累積的な変化を抑える。
【解決手段】液晶表示装置10は、第1基板100aに設けられた画素電極118と第2基板100bに設けられたコモン電極108とにより液晶層50を挟持するとともに、正極性電圧と負極性電圧とがフレーム毎に交互に書き込まれる液晶素子を複数有する液晶表示パネル100と、電源オフが指示されると、液晶表示パネル100を加熱するヒーター40とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる液晶表示装置の焼き付き等を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に用いられる液晶素子は、画素電極およびコモン電極で液晶層を挟持した構成である。液晶層に直流成分が印加されると劣化するので、これを防止するため、画素電極に印加する電圧は、コモン電極に対して高位側の正極性電圧と低位側の負極性電圧とで交互に切り替えられる(交流駆動)。ただし、交流駆動の際に、正極性電圧の実効値と負極性電圧の実効値とがなんらかの理由で異なってしまうと、結果的に液晶層に直流成分が印加されて、過去に表示した画像が残像となって現れる。液晶への直流成分の印加による残像現象は、CRTにおいて同一画像を長期間にわたり表示することによって蛍光面が焼き付いたときの現象と似ていることから、同様に焼き付きと呼ばれることが多い。
【0003】
ところで、画素電極を画素電極基板に設け、コモン電極を対向基板に設けるとともに、両基板により液晶層を挟持する構成では、両基板における特性差の影響を受ける。このため、該フィールドスルーや該特性差に応じた補正電圧を予め印加することによって、焼き付き等を抑える技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−189460号公報(図6、図7参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、該特性差は、電源のオンオフに伴って時間的に変化(経時変化)する傾向があるだけでなく、電源オンの直後では、直前のオフ状態を起点として変化し始める、というように累積的に変化する性質も見られる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、該特性差の累積的な変化による影響を小さくする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る液晶表示装置は、第1基板に設けられた画素電極と第2基板に設けられたコモン電極とにより液晶層を挟持するとともに、予め定められた基準電圧に対して高位側の正極性電圧と前記基準電圧に対して低位側の負極性電圧とが交互に書き込まれる液晶素子を複数有する液晶表示パネルと、前記液晶素子の表示動作を開始するために電源オンが指示されたときの初期値から時間経過とともに増加するフリッカーが、前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示されたときに前記初期値の方向に戻るように、前記フリッカーの変化を促進させる促進手段と、を具備することを特徴とする。画素電極基板と対向基板との特性差はフリッカーとして顕在化するが、本発明によれば、前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示されると、その初期値の方向に戻るようにフリッカーの変化が促進されて、前記液晶素子の表示動作を開始するために再び電源オンが指示されたときには、フリッカーの変化は特性差が小さい状態を起点とするので、該特性差の累積的な性質による影響を小さくすることが可能となる。なお、フリッカーとは通常、交流駆動する際に液晶表示パネルの表示上の明滅をいうが、本件では、後述するように、前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示された後に対してはやや違った意味で用いている。前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示される前に対しては通常の意味で用いている。
本発明において、前記促進手段は、前記液晶表示パネルを加熱するヒーターであることが好ましい。液晶表示パネルに対する加熱によって、その初期値の方向に戻るようにフリッカーの変化が促進されるためである。
なお、本発明は、液晶表示装置のほか、該液晶表示装置の制御方法や、該液晶表示装置を有する電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係る液晶表示装置を適用したプロジェクターを示す図である。
【図2】同液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同液晶表示装置における画素の等価回路を示す図である。
【図4】同液晶表示装置における表示動作を示す図である。
【図5】同液晶表示装置におけるヒーターの制御動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。図1は、実施形態に係る液晶表示装置を適用したプロジェクターの構成を示す図である。
この図に示されるように、プロジェクター2100の内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット2102が設けられている。このランプユニット2102から射出された光は、内部に配置された3枚のミラー2106および2枚のダイクロイックミラー2108によってR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色に分離されるとともに、各原色に対応する液晶表示パネル100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。この液晶表示パネル100R、100G、100Bは、アクティブ・マトリクス型の透過型である。
なお、B色の光は、R色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ2122、リレーレンズ2123および出射レンズ2124からなるリレーレンズ系2121を介して導かれる。
【0009】
液晶表示パネル100R、100Gおよび100Bによってそれぞれ変調された光(透過像)は、ダイクロイックプリズム2112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム2112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、投射レンズ2114によってカラー画像がスクリーン2120に投射されることとなる。
【0010】
また、液晶表示パネル100R、100Gおよび100Bの近傍には、これらのパネルを加熱するヒーター40が設けられる。
なお、液晶表示パネル100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー2108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。液晶表示パネル100R、100Bの透過像は、ダイクロイックプリズム2112により反射した後に投射されるのに対し、液晶表示パネル100Gの透過像はそのまま投射されるので、液晶表示パネル100R、100Bによる水平走査方向は、液晶表示パネル100Gによる水平走査方向と逆向きにして、その透過像を左右反転とする。
【0011】
液晶表示パネル100R、100Gおよび100Bについては、構成的には同一であるので、色を特定しないで代表的な構成について説明することにする。図2は、色を特定しない液晶表示パネル100を含む液晶表示装置の全体構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、液晶表示装置10は、上述したヒーター40および液晶表示パネル100のほか、表示制御回路20、ヒーター制御回路30、コモン電極駆動回路50、Yドライバー130およびXドライバー140を含む。
【0012】
説明の便宜上、液晶表示パネル100の構成について説明する。液晶表示パネル100は、第1基板100aと第2基板100bとを一定の間隙を保って貼り合わせるとともに、この間隙に液晶層105を挟持した構成となっている。
第1基板100aのうち、第2基板100bとの対向面には、例えば480行の走査線112が図において横方向に延在し、また、例えば640列のデータ線114が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられている。なお、走査線112を区別するために、図において上から順に1、2、3、…、480行目という呼び方をする場合がある。同様に、データ線114を区別するために、図において左から順に1、2、3、…、640列目という呼び方をする場合がある。
【0013】
第1基板100aでは、さらに、走査線112とデータ線114との交差のそれぞれに対応して、nチャネル型のTFT116と矩形形状で透明性を有する画素電極118との組が設けられている。TFT116のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極はデータ線114に接続され、ドレイン電極が画素電極118に接続されている。
一方、第2基板100bのうち、第1基板100aとの対向面には、透明性を有するコモン電極108が全面にわたって設けられている。
【0014】
したがって、液晶表示パネル100における等価回路は、図3に示される通りとなり、走査線112とデータ線114との交差に対応して、画素電極118とコモン電極108とで液晶層105を挟持した液晶素子120が設けられることになる。
コモン電極108には、コモン電極駆動回路50によって電圧Vcomが印加される。
なお、液晶素子120では、画素電極118およびコモン電極108の電位差に相当する電圧が保持されるとともに、両電極間で生じる電界に応じて液晶の分子の配向状態が変化する。このため、液晶表示パネル100では、液晶素子120毎に、保持した電圧の実効値に応じた透過率となる。
【0015】
液晶層105に直流成分が印加されるのを防止するため、データ信号の電圧は、ビデオ振幅中心電圧(基準電圧)Vcに対して高位側の正極性電圧と低位側の負極性電圧とに一定周期毎に、例えばフレーム毎に交互に切り替えられる。
ここで、フレームとは、液晶表示パネル100を駆動することによって、画像の1コマ分を表示させるのに要する時間をいい、垂直走査周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。また、電圧については、液晶素子120の保持電圧を除き、特に説明のない限り、図示省略した電源の接地電位を電圧ゼロの基準としている。
なお、1フレームにおいて画素の書込極性を空間的にどのような配列させるかについては、走査線毎に反転させる行反転方式、データ線毎に反転させる列反転方式、走査線およびデータ線方向に対して隣り合う画素毎に反転させる画素反転方式などがあり、いずれも適用可能であるが、本実施形態では、すべて同一極性とする面反転方式とする。
【0016】
表示制御回路20は、タイミング制御回路22とデータ信号変換回路24とに分けられる。このうち、タイミング制御回路22は、図示省略した上位装置から供給される垂直同期信号Vsync、水平同期信号Hsyncおよびドットクロック信号Dckに基づいて各部を制御する。詳細には、タイミング制御回路22は、Yドライバー130に対し、垂直同期信号Vsyncによって規定される垂直走査期間(フレーム)の開始タイミングにスタートパルスDyを出力するとともに、水平同期信号Hsyncの供給周期で規定される水平走査期間の2倍の周期を有するクロック信号Clyを出力する一方、Xドライバー140に対し、水平走査期間の開始タイミングにスタートパルスDxを出力するとともに、ドットクロック信号Dckの供給周期に応じた周期のクロック信号Clxを出力する。
また、タイミング制御回路22は、データ信号変換回路24に対し信号Frpによって書込極性を指定する。上述したように本実施形態では、面反転方式としているので、信号Frpの論理レベルは、図4に示されるようにフレーム毎に反転する。なお、信号Frpは、Hレベルであるときに正極性書込を指定し、Lレベルであるときに負極性書込を指定するものとする。
【0017】
データ信号変換回路24は、上記上位装置から供給されるデジタルの映像信号Vidを、信号Frpにより指定される極性のアナログのデータ信号dsに変換して出力するものである。ここで、映像信号Vidは、液晶表示パネル100の各画素の明るさ(階調)のうち、対応する色成分をそれぞれ指定するデジタルデータである。例えば、液晶表示パネル100が、R色に対応する液晶表示パネル100Rであれば、供給される映像信号Vidは、表示すべき画像のカラー成分のうち、R成分を指定するデータである。
【0018】
Yドライバー130は、1行目の画素に対応する映像信号Vidが供給される水平走査期間において走査信号G1をHレベルとし、同様に2、3、4、…、480行目の画素に対応する映像信号Vidが供給される水平走査期間において走査信号G2、G3、G4、…、G480を順次Hレベルとする走査線駆動回路である。
詳細には、Yドライバー130は、図4に示されるように、スタートパルスDyをクロック信号Clyにしたがって順次シフトさせるとともに、パルス幅をクロック信号Clyの半周期に狭めた走査信号G1、G2、G3、G4、…、G480を、1、2、3、4、…、480行目の走査線112に供給する構成となっている。
なお、フレームのうち、走査信号G1〜G480がHレベルとなる期間が垂直有効走査期間Faであり、残りの期間が垂直帰線期間Fbである。また、走査信号のHレベルは、TFT116をオン(導通)状態とさせる選択電圧VHであり、走査信号のLレベルは、TFT116をオフ(非導通)状態とさせる非選択電圧VLである。
【0019】
Xドライバー140は、走査信号がHレベルとなっている行であって1〜640列目の画素に対応して供給されたデータ信号dsを、それぞれ1〜640列目のデータ線114にサンプリングするデータ線駆動回路である。Xドライバー140の詳細については省略するが、スタートパルスDxをクロック信号Clxにしたがって順次シフトするとともに、パルス幅をクロック信号Clxの半周期に狭めたサンプリング信号を、1、2、3、…、640列目に対応して生成する一方で、データ信号変換回路24によって変換されたデータ信号dsを、生成したサンプリング信号にしたがってそれぞれデータ線114にサンプリングする構成となっている。
なお、1、2、3、…、640列目のデータ線114にサンプリングされるデータ信号を、図1において、それぞれd1、d2、d3、…、d640と表記している。
【0020】
次に、実施形態に係る液晶表示装置10において、電源オンしているときの表示動作について説明する。上位装置からは、映像信号Vidが、1行1列〜1行640列、2行1列〜2行640列、3行1列〜3行640列、…、480行1列〜480行640列の画素の順番でフレームにわたって供給される。
ここで、正極性書込が指定される奇数nフレームにおいて、1行1列〜1行640列の映像信号Vidが供給される水平走査期間では、当該映像信号Vidがデータ信号変換回路24によって正極性のデータ信号dsに変換されるとともに、当該データ信号dsがXドライバー140によって1、2、3、…、640列目のデータ線114にデータ信号d1、d2、d3、…、d640としてサンプリングされる。一方、Yドライバー130によって走査信号G1だけがHレベルとなるので、1行目のTFT116がオン状態となる。これにより、データ線114にサンプリングされたデータ信号は、オン状態にあるTFT116を介して画素電極118に印加されるので、1行1列〜1行640列の液晶素子には、それぞれ階調に応じた正極性電圧が書き込まれる。
続いて、2行1列〜2行640列の映像信号Vidが供給される水平走査期間では、同様にして、当該映像信号Vidが正極性のデータ信号dsに変換されるとともに、当該データ信号dsがデータ線114にサンプリングされる。一方、走査信号G2だけがHレベルとなるので、2行目のTFT116がオン状態となる。これにより、データ線114にサンプリングされたデータ信号が、画素電極118に印加されるので、2行1列〜2行640列の液晶素子には、それぞれ階調に応じた正極性電圧が書き込まれる。なお、1行目では、TFT116がオフ状態になるが、該TFT116がオン状態のときに液晶素子120に書き込まれた電圧は、その容量性によりに保持される。
以下同様な書込動作が3、4、…、480行目に対して実行され、これにより、各液晶素子に、階調に応じた正極性電圧が印加・保持されて、奇数nフレームに応じた透過像が作成されることなる。
【0021】
次の偶数(n+1)フレームにおいては、信号Frpの反転により、映像信号Vi dが負極性のデータ信号dsに変換される以外、同様な書込動作が実行される。これにより、各液晶素子には、それぞれ階調に応じた負極性電圧が印加・保持されて、偶数(n+1)フレームに応じた透過像が作成されることなる。
【0022】
ところで、TFT116では、オンからオフした瞬間にドレイン電極、すなわち画素電極118の電圧を変動させるフィールドスルー(プッシュダウン、突き抜け)が発生する。ここで、コモン電極108に印加する電圧Vcomを、正負振幅の基準電圧Vcに一致させると、液晶素子に印加される電圧の実効値は、フィールドスルーのために、負極性の方が正極性よりも大きくなってしまう(TFT116がnチャネル型の場合)。
このため、コモン電極108に印加する電圧Vcomについては、図4に示されるように、基準電圧Vcよりも若干低位側にオフセットするとともに、そのオフセット量については、フリッカーが最小となるように、すなわち、同じ階調に相当するデータ信号を正極性と負極性とで供給したときに正極性電圧の実効値と不極性電圧の実効値との差が最も小さくなるように(図においてハッチングで示される領域の面積がほぼ同じとなるように)、予め調整されている。
【0023】
なお、図4は、走査信号G1〜G480のほか、j列目(jは1≦j≦640を満たす整数)のデータ線に供給されるデータ信号dj、および、1行j列の液晶素子120に保持される電圧の実効値等についても示している。
本実施形態において液晶素子120をノーマリーホワイトモードとしたとき、データ信号djは、正極性であれば、白表示させるときの低位電圧Vw(+)から黒表示させるときの高位電圧Vb(+)までの範囲をとり、負極性であれば、正極性の電圧範囲を、基準電圧Vcを中心にして対称とした範囲、すなわち高位電圧Vw(-)から低位電圧Vb(-)までの範囲をとる。このとき、垂直帰線期間Fbでは、タイミングズレ等によって書き込まれたとしても表示に寄与させない等の理由により、黒表示とさせる電圧Vb(+)、Vb(-)となっている。
また、1行j列の液晶素子120における画素電極118の電圧Px(1,j)は、走査信号G1がHレベルとなったときのデータ信号djの電圧Vg(+)、Vg(-)となり、走査信号G1がLレベルに変化したときにフィールドスルーによって電圧ΔVだけ低下して、再び走査信号G1がHレベルとなるまで、保持される。
【0024】
ところで、第1基板100aと第2基板100bとでは、電極材料や配向膜の厚さなどの相違に基づく特性差が存在する。この特性差も、液晶に直流成分が印加される原因の一つである。
ここで、フィールドスルーよりも特性差の影響が大きければ、図5の(a)に示されるように、前記液晶素子の表示動作を開始するために時刻t1において液晶表示パネル100に電源オンが指示されたとき、初期値a1となるように調整したはずのフリッカーは、時間が経過するにつれて、液晶表示パネル固有の時定数で増加し、やがて値a3にてほぼ飽和する。
【0025】
一方、前記液晶素子の表示動作を停止するために時刻t2において液晶表示パネル100の電源オフが指示されたときに、フリッカーは、同図において破線で示されるように、ある時定数で減少する。
ここで、電源オンオフとは、プロジェクター2100に設けられる操作子(図示省略)によって指定されるものであり、液晶表示パネル100における駆動のほか、ランプユニット2102等を含むプロジェクター全体のパワーオン/オフの指定である。
このため、例えば電源オンが指示されたとき、所定のオンシーケンス動作を経て表示が開始され、また、電源オフが指示されたとき、所定のオフシーケンス動作を経て、電源が遮断される。
したがって、電源オフが指示された後においては、ランプユニット2102が消灯している場合がある。また、電源オフの指示がなされると、オフシーケンス動作によって、液晶素子に直流成分が残留しないように、オフ電圧を複数フレームにわたって印加する動作が実行されるので、液晶素子に保持されている電圧がゼロである場合がある。
このため、本明細書において、電源オフが指示された後の「フリッカー」とは、表示において実際に視認される明滅ではなく、もし仮にその時点でランプユニット2102のような光源を点灯させるとともに液晶表示パネル100を駆動したとしたら、直後に表れるであろう明滅、または、単に液晶素子に保持される(保持されるであろう)正極性電圧と負極性電圧の非対称性、を意味する。
【0026】
電源オフの指示後であって、フリッカーが十分に小さな値に戻らない状態において、例えば値a2となっている状態の時刻t3において電源オンが指示されると、フリッカーは、値a2を起点として再び増加し始める。このように、値a2を起点として増加すると、フリッカーが累積することになるので、液晶層への直流成分の印加を回避する、という観点からいえば、好ましい状態ではない。
【0027】
ここで、本件発明者は、電源オフが指示されたときに、液晶表示パネル100を加熱すると、より小さな時定数でフリッカーが減少する現象を確認した。
そこで、本実施形態では、液晶表示パネル100の近傍にヒーター40を設けるとともに、図5の(b)に示されるように、電源オフが指示されたときに、ヒーター制御回路30が該ヒーター40を一定時間tpだけオンさせる動作をオフシーケンス動作に含ませる構成とした。
このように、ヒーター40がオンすると、図5の(a)において実線で示されるように、フリッカーの減少が促進されるので、時刻t3において再び電源オンが指示されたとき、初期値a1から増加することになる。このため、本実施形態によれば、フリッカーの累積を抑えることが可能となる。
【0028】
なお、時間tpは、フリッカーが飽和値a3から初期値a1まで減少するのに十分な時間とするのが好ましい。また、ヒーター40については、液晶表示パネル100の近傍ではなく、パネルに直接貼り付けた構成としても良い。
【0029】
液晶表示パネル100の加熱については、ヒーター40のほかに、ランプユニット2102や図示省略した主電源などの熱源で発生した熱(余熱を含む)を、ファンなどの熱転送手段によって液晶表示パネル100に供給する構成としても良い。この構成において、熱源および熱転送手段が促進手段に相当することになる。このように構成すると、エネルギーの効率的な使用が可能となる。
このファンとは別に、プロジェクター2100には、通常、内部冷却のための排気(または吸気)ファンが設けられるので、この排気(または吸気)ファンを停止することによっても、液晶表示パネル100を加熱することが可能である。ただし、このような排気(または吸気)ファンを停止させると、液晶表示パネル100以外の部材の温度を上昇させて、該部材の短寿命化を招く可能性があるので、上述したように促進手段としてはヒーター40や、熱源およびその転送手段などから構成するのが望ましい。
【0030】
また、フリッカーの減少を促進するには、液晶表示パネル100への加熱のほかに、オフシーケンス動作において液晶素子の駆動電圧を変更させることによっても可能である。
すなわち、図5の(a)におけるフリッカーは、液晶素子に保持される正極性電圧の実効値または負極性電圧の実効値のいずれか一方が大きくなっている状態が原因であるから、これを是正すべく、表示オフが指示された後、オフ電圧を書き込む前に、いずれか他方が大きくなるように、データ信号の電圧、または、コモン電極の電圧Vcom(もしくは双方の電圧)を変更して駆動することによって、表示オフ指示後におけるフリッカーの減少を促進することが可能である。たとえば、液晶素子に保持される正極性電圧の実効値が負極性電圧の実効値よりも大きくなっている場合は、負極性電圧の実効値が正極性電圧の実効値よりも大きくなるように、データ信号の電圧、または、コモン電極の電圧Vcom(もしくは双方の電圧)を変更してオフ電圧を書き込めばよい。
この構成において、Xドライバー140、または、コモン電極駆動回路50(もしくは双方)が促進手段に相当することになる。このように構成すると、ヒーター40などの別途に追加する構成が不要となり、構成の簡易化を図ることが可能となる。
【0031】
なお、本実施形態では、液晶表示装置10を適用した電子機器としてプロジェクター2100を例に挙げて説明したが、このほかにも、テレビジョンや、ビューファインダー型・モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。そして、これらの各種の電子機器に対して、本発明に係る液晶表示装置が適用可能なのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
10…液晶表示装置、20…表示制御回路、30…ヒーター制御回路、40…ヒーター、50…コモン電極駆動回路、108…コモン電極、116…TFT、118…画素電極、120…液晶素子、2100…プロジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板に設けられた画素電極と第2基板に設けられたコモン電極とにより液晶層を挟持するとともに、予め定められた基準電圧に対して高位側の正極性電圧と前記基準電圧に対して低位側の負極性電圧とが交互に書き込まれる液晶素子を複数有する液晶表示パネルと、
前記液晶素子の表示動作を開始するために電源オンが指示されたときの初期値から時間経過とともに増加するフリッカーが、前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示された後、該初期値の方向に戻るように、前記フリッカーの変化を促進させる促進手段と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記促進手段は、前記液晶表示パネルを加熱するヒーターである
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
第1基板に設けられた画素電極と第2基板に設けられたコモン電極とにより液晶層を挟持するとともに、予め定められた基準電圧に対して高位側の正極性電圧と前記基準電圧に対して低位側の負極性電圧とが交互に書き込まれる液晶素子を複数有する液晶表示装置の制御方法であって、
前記液晶素子の表示動作を開始するために電源オンが指示されたときの初期値から時間経過とともに増加したフリッカーが、前記液晶素子の表示動作を停止するために電源オフが指示されたときに該初期値の方向に戻るように、前記フリッカーの変化を促進させる
ことを特徴とする液晶表示装置の制御方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の液晶表示装置を有することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−197806(P2010−197806A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43771(P2009−43771)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】