液晶表示装置および電子機器
【課題】半透過型液晶表示装置において、透過モードでも反射モードでも、動画表示する際のぼやけ感を適切に低減する。
【解決手段】オーバードライブ回路80は、現フレームにおける映像データCdと前フレームにおける映像データPdとの二つの入力値に対して透過モード用の補償値βtを出力するルックアップテーブル811と、二つの入力値に対して反射モード用の補償値βrを出力するルックアップテーブル812とを備える。セレクター806は、透過モードが指定されたときにはルックアップテーブル811による補償値βtを選択し、反射モードが指定されたときにはルックアップテーブル812による補償値βrを選択する。演算回路808は、セレクター806により選択された補償値を現フレームにおける映像データCdに加算して、補償映像データVbとして出力する。
【解決手段】オーバードライブ回路80は、現フレームにおける映像データCdと前フレームにおける映像データPdとの二つの入力値に対して透過モード用の補償値βtを出力するルックアップテーブル811と、二つの入力値に対して反射モード用の補償値βrを出力するルックアップテーブル812とを備える。セレクター806は、透過モードが指定されたときにはルックアップテーブル811による補償値βtを選択し、反射モードが指定されたときにはルックアップテーブル812による補償値βrを選択する。演算回路808は、セレクター806により選択された補償値を現フレームにおける映像データCdに加算して、補償映像データVbとして出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる半透過型の液晶表示装置において動画表示の際のぼやけ感を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライトを光源とする透過型の液晶表示装置は、暗い場所で見やすい反面、消費電力が大きくなり、また、明るい場所では見えにくい、という難点がある。そこで、暗い場所ではバックライトからの透過光を視認させる透過型として機能し(透過モード)、明るい場所では外光の反射光を視認させる反射型として機能する(反射モード)、半透過(半反射)型の液晶表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
一方で、液晶表示装置では、動画を表示させる際に、液晶の光学的な応答速度が十分でないことに起因して、ぼやけ感が発生する。このぼやけ感を低減するために、いわゆるオーバードライブという技術もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−344839号公報(図5)
【特許文献2】特開2001−265298号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半透過型の液晶表示装置に、オーバードライブ技術を適用したときには、透過領域における液晶層の厚みと、反射領域における液晶層の厚みの違いに起因して、透過領域と反射領域とでは液晶の光学的な応答が異なってしまい、ぼやけ感を適切に低減できない、という懸念が生じた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、半透過型の液晶表示装置おいて、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る液晶表示装置にあっては、観察側の第1基板と、反射層を有する背面側の第2基板とを備え、前記第1基板のうち、前記第2基板との対向面側の第1透明電極と、前記第2基板のうち、前記第1基板との対向面側の第2透明電極とにより液晶層を挟持した画素を、複数有し、前記複数の画素の各々は、前記第2基板側からの入射光が前記第1基板側に出射する透過領域と、前記第1基板側からの入射光が前記反射層により反射して当該記第1基板側に出射する反射領域とをそれぞれ有し、前記透過領域における液晶層の厚さが、前記反射領域における液晶層の厚さとは異なる液晶表示装置であって、前記複数の画素の階調をそれぞれ指定する映像データを、過去の映像データで指定された階調との変化分に応じた補償値で補償して、補償映像データとして出力する補償回路であって、透過モードであるときの補償値を、反射モードであるときの補償値と異なるように設定された補償回路と、前記補償映像データに応じた電圧を前記複数の画素にそれぞれ書き込む駆動回路と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、透過モードであるときの補償値は、反射モードであるときの補償値と異なるので、液晶層の厚さに応じた適切な補償値を与えることが可能となる。
ここで、本発明において、前記透過領域における液晶層は、前記反射領域における液晶層よりも厚く、前記補償回路は、前記透過モードまたは前記反射モードのいずれかを指定するモード指定信号を入力し、前記モード指定信号によって前記透過モードが指定されたときの補償値を、反射モードが指定されたときの補償値よりも大きくする構成が好ましい。なお、モード指定信号については、周辺の明るさが閾値を下回る場合に透過モードを指定し、閾値以上である場合に反射モードを指定するようにしても良いし、第2基板側から光を照射するバックライトをオンさせるときに透過モードを指定し、当該バックライトをオフさせるときに反射モードを指定しても良い。さらに、ユーザーの操作に応じてモード指定信号が透過モードまたは反射モードのいずれかを指定しても良い。
【0006】
本発明において、前記補償回路は、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して前記透過モード用の補償値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記二つの入力値に対して前記反射モード用の補償値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記第1ルックアップテーブルによる補償値を選択し、前記反射モードが指定されたときには、前記第2ルックアップテーブルによる補償値を選択するセレクターと、前記セレクターにより選択された補償値を前記現フレームにおける映像データに加算して、前記補償映像データとして出力する演算回路と、を具備する構成としても良いし、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力するルックアップテーブルと、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには第1係数を出力し、前記反射モードが指定されたときには第2係数を出力する係数出力部と、前記ルックアップテーブルによる補償値に前記係数出力部による係数を乗算して、前記補償映像データとして出力する乗算回路と、を具備する構成としても良いし、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力する透過用ルックアップテーブルと、前記透過用ルックアップテーブルによる補償値を前記現フレームにおける映像データに加算する加算回路と、を備え、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記加算回路の出力を前記補償映像データとして出力し、前記反射モードが指定されたときには前記現フレームにおける映像データを前記補償映像データとして出力する構成としても良い。
なお、本発明は、液晶表示装置のみならず、当該液晶表示装置を含む電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る液晶表示装置を適用した電子機器の構成を示す図である。
【図2】同液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同液晶表示装置における画素の等価回路を示す図である。
【図4】同液晶表示装置における画素の平面構成を示す図である。
【図5】同液晶表示装置における画素の断面構成を示す図である。
【図6】同液晶表示装置におけるオーバードライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図7】同オーバードライブ回路による補償内容を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置を適用した携帯電話の構成を示す図である。
この図に示されるように、携帯電話1200は、複数の操作ボタン1202やカーソルキー1204のほか、受話口1206、送話口1208とともに、液晶表示装置の表示パネル100を備える。また、表示パネル100の下方には、光センサー1210の受光窓が設けられ、携帯電話周辺の明るさを検出する。
【0009】
図2は、第1実施形態に係る液晶表示装置1の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、液晶表示装置1は、表示パネル100と、表示制御回路60、モード指定回路70、LED駆動回路72、LED74、オーバードライブ回路80、Yドライバー130およびXドライバー140を有する。
なお、図2では、携帯電話1200のうち、表示以外の構成、例えば無線通信などの構成については省略している。なお、表示パネル100で表示すべき画像を規定する映像データCdは、携帯電話1200の動作を司る主制御回路(図示省略)から、同期信号Syncにしたがった画素の順でフレーム毎に供給される構成となっている。
【0010】
表示パネル100は、例えばアクティブマトリクス型の液晶パネルであり、その表示領域では、複数行の走査線112が図において横方向に延在し、また、複数列のデータ線114が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられるとともに、これらの走査線112とデータ線114との交差のそれぞれに対応して、画素110がそれぞれ配設されている。
なお、各画素110は、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかに対応しており、RGBの3画素で、1つのドットのカラーを表現する。また、本実施形態における表示パネル100は、詳細については後述するが、バックライトによる透過光を視認させて表示を行う透過モードと、外光の反射光を視認させて表示を行う反射モードとを有する半透過型である。
【0011】
モード指定回路70は、光センサー1210で検出された周辺の明るさに基づいて、表示パネル100を透過モードとするか、反射モードとすべきかを決定して、モードを指定する信号Modを出力する。LED駆動回路72は、信号Modによって透過モードが指定されていれば、LED74を点灯させ、反射モードが指定されていれば、LED74を消灯させる。
LED74は、バックライトの光源として機能する白色LEDである。なお、バックライトとしては、ほかに光拡散板や反射板などを含むが、本発明では重要ではないので、光源としてLED74のみを図示している。
【0012】
なお、モード指定回路70は、透過モードが指定されていれば、明るくなるにつれて、LED74も明るくなるように、例えばPWM制御しても良い。
また、本実施形態では、信号Modによって表示パネル100のモードが指定されることになるが、表示パネル100において例えば透過モードが指定されたときであっても、反射光の成分が、少なからずあり、視認される光がすべて透過光であるとは限らない。すなわち、モード指定回路70が指定するモードは、実際に視認される光のモードと常に一致する訳ではない。
【0013】
表示制御回路60は、上記主制御回路から供給される同期信号Syncにしたがって各部の動作を制御する。
Yドライバー130は、表示制御回路60による制御にしたがって、複数行の走査線112を1フレームにわたってそれぞれ1、2、3、…、行目という順番で選択し、選択した走査線に選択電圧を、それ以外の走査線には非選択電圧を、それぞれ印加する走査線駆動回路である。
なお、1フレームとは、表示パネル100を駆動することによって、画像の1コマ分を表示させるのに要する期間をいい、同期信号Syncの垂直走査周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。また、選択電圧とは、後述する薄膜トランジスターのゲート電極に印加されたときに当該薄膜トランジスターがオン状態となる電圧であり、また、非選択電圧とは、薄膜トランジスターのゲート電極に印加されても当該薄膜トランジスターがオン状態とはならない、すなわちオフ状態とさせる電圧である。
【0014】
オーバードライブ回路80は、詳細については後述するが、同期信号Syncに同期して供給され、画素110の階調(明るさ)を指定する映像データCdを信号Modで指定されたモードに応じて応答性を補償し、補償映像データVbとして出力する補償回路である。
Xドライバー140は、表示制御回路60による制御にしたがって、補償映像データVbをアナログのデータ信号に変換するとともに、Yドライバー130によって選択された1行分の画素110の各々に対し、変換したデータ信号を、それぞれデータ線114を介して供給するデータ線駆動回路である。
【0015】
続いて、表示パネル100における画素110の構成について説明する。表示パネル100は、図5に示されるように、素子基板10と対向基板20とによって液晶層50を挟持した構成である。
このように構成される表示パネル100のうち、図3は、画素110の等価回路を示す図であり、図4は、素子基板の構成を示す平面図である。なお、図3および図4は、縦方向および横方向において互いに隣接する2×2の計4画素分の構成が示されている。また、図5は、図4におけるA−A’線の沿って対向基板を含めて破断したときの断面図である。
【0016】
図3および図4に示されるように、各画素110は、nチャネル型の薄膜トランジスター(thin film transistor:以下単に「TFT」と略称する)116と、液晶容量120とを有する。このうち、TFT116のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極はデータ線114に接続され、ドレイン電極は画素電極118に接続されている。
液晶容量120は、一端を画素毎の画素電極118とし、他端を全画素にわたって共通のコモン電極108として、両電極で液晶層50を挟持したものである。なお、コモン電極108は、電圧LCcomに保たれている。
【0017】
図5において、素子基板10は背面側に位置する第2基板である。素子基板10の基材たる透明基板11上には、半導体層が画素毎に島状に設けられ、さらに、この半導体層および透明基板11を覆うようにゲート絶縁膜12が形成されている。走査線112のうち、ゲート絶縁膜12を介し半導体層と交差する部分が、TFT116のゲート電極となっている。
ゲート絶縁膜12および走査線112の表面を覆うように、第1層間絶縁膜13が設けられているが、半導体層のソース領域およびドレイン領域へ通じるように開孔して、コンタクトホールC1、C2をそれぞれ形成している。
データ線114は、コンタクトホールC1を介して半導体層のソース領域に電気的に接続されている。同様に、接続電極115は、コンタクトホールC2を介して半導体層のドレイン領域に電気的に接続されている。
【0018】
さらに、第2層間絶縁膜14および第3層間絶縁膜15が順次積層されている。このうち、第2層間絶縁膜14は、データ線114および接続電極115の表面を保護するために設けられる。第2層間絶縁膜14および第3層間絶縁膜15は、接続電極115へ通じるように開孔してコンタクトホールC3を形成している。
【0019】
第3層間絶縁膜15の表面には、アルミニウム等による反射層119が、特に図4に示されるように矩形形状に、かつ、開口部119aを設けた状態で形成されている。
なお、反射層119は、図5では簡略化のために平坦面に形成されているように見えるが、実際には、光が散乱反射するように起伏のある散乱面に形成される。また、開口部119aは、実際には、反射層119を中抜きしたものである。
さらに、透明導電膜からなる第2透明電極としての画素電極118が、反射層119の表面を覆うように、かつ、コンタクトホールC3を介して接続電極115に接続するようにパターニングされている。なお、画素電極118および第3層間絶縁膜15の表面には、すなわち、液晶層50に接する面には、配向膜が設けられるが、図示省略している。
【0020】
他方、対向基板20は、観察側に位置する第1基板である。対向基板20の基材たる透明基板21のうち、素子基板10との対向面には、画素電極118との対向領域以外の領域を遮光するように、遮光膜22が設けられる一方、画素電極118との対向領域では、カラーフィルター23が設けられる。ただし、カラーフィルター23の厚さは、反射層119と対向する領域よりも、開口部119aと対向する領域の方が薄くなっている。
遮光膜119およびカラーフィルター23の表面を覆うように、対向面の全面にわたって透明導電膜からなる第1透明電極としてのコモン電極108が形成されている。なお、コモン電極108の表面には、すなわち、液晶層50に接する面には、素子基板10と同様に配向膜が設けられるが、図示省略している。
【0021】
このような構成の表示パネル100においては、背面側の素子基板10の外側、すなわち図5において下方側から、バックライトとしてのLED74による白色光が入射する。この白色光のうち、開口部119aを通過する光のみが、液晶層50に入射する。開口部119aを通過した光は、液晶層50で光変調されて、対向基板20の側、すなわち図5において上側の観察側に透過表示光として出射する(透過モード)。したがって、画素を平面視したときに、開口部119aが透過領域となる。
これに対して、観察側の対向基板20の外側から、すなわち図5において上方側から入射した外光のうち、遮光膜22で遮断されなかった光は、液晶層50を通過して反射層119に達し、再び液晶層50を通過して、観察側に、反射表示光として出射する(透過モード)。したがって、画素を平面視したときに、反射層119の存在領域、すなわち、開口部119aを除いた領域が、反射領域となる。
【0022】
ここで、透過表示光は、液晶層50を一度だけ通過するのに対して、反射表示光は、液晶層50を2度、通過する。このため、液晶層50の厚さを、透過領域と反射領域とで揃えてしまうと、液晶層を通過する光の経路長が透過領域と反射領域とで異なってしまうことになる。
そこで、本実施形態では、透過領域におけるカラーフィルター23の厚さを、反射領域よりも薄くして、透過領域における液晶層50の厚さ(セルギャップ)が、反射領域のセルギャップの約2倍となるようにしている。
このため、本実施形態では、液晶層を通過する光の経路長が透過領域と反射領域とでほぼ等しくなるので、透過表示光および反射表示光の双方において高い品位の表示が可能となっている。
なお、液晶層を通過する光の経路長を透過領域と反射領域とでほぼ等しくするために、図5以外の構成を採用しても良い。例えば、透過領域における第3層間絶縁膜15を、反射領域よりも薄くしても良い。
【0023】
ところで、セルギャップが透過領域と反射領域とで異なると、液晶分子の電圧応答も、透過領域と反射領域とで異なることになる。具体的には、透過領域におけるセルギャップが反射領域におけるセルギャップよりも厚いと、透過領域における液晶分子の電圧応答性は、反射領域における液晶分子の電圧応答性よりも低下する。換言すれば、反射領域における液晶分子の電圧応答性は、透過領域における液晶分子の電圧応答性よりも良好である。このため、半透過型の液晶表示装置おいてオーバードライブ技術を適用する場合、モードによる応答性の相違を考慮しなければ、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することができないことになる。
そこで、本実施形態では、オーバードライブ回路80を、次のように構成して、透過モードと反射モードとに応じて適切に応答性を補償している。
【0024】
図6は、液晶表示装置1におけるオーバードライブ回路80の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、オーバードライブ回路80は、フレームメモリー802、セレクター804、806、演算回路808、ルックアップテーブル(LUT)811および812を有する。
このうち、フレームメモリー802は、表示制御回路60(図2参照)による制御の下、主制御回路から供給され、表示すべき画像を示す映像データCdを一時的に記憶するとともに、1フレーム経過後に読み出し、映像データPdとして出力するものである。このため、映像データPdは、映像データCdに対して1フレーム前の画素の階調を指定するものとなる。なお、映像データPdが1フレーム前のものであることとの対比上、表示すべき画像を示す映像データCdについては、現フレームの映像データと呼ぶことがある。
【0025】
セレクター804は、信号Modによって透過モードが指定されていれば出力端Aを選択し、反射モードが指定されていれば出力端Bを選択して、フレームメモリー802
から読み出された映像データPdを選択した出力端から出力するものである。
【0026】
ルックアップテーブル811は、映像データCdと1フレーム前の映像データPdとを入力して、当該映像データCdで指定される画素の階調の変化分に応じた透過モード用の補償値βtを、セレクター806の入力端Aに供給する二次元変換テーブルである。詳細には、ルックアップテーブル811は、映像データCdで指定される階調値と映像データPdで指定される階調値との組み合わせの各々に対応して、補償値βtを予め記憶したものであり、映像データCdと映像データPdとが入力された場合に、これら2つのデータで指定される階調値の組み合わせに対応する補償値βtを出力する。
【0027】
ここで、補償値βtについて図7を参照して説明する。
図7の(a)に示されるように、ある画素に着目したときに、あるフレーム(Nフレームとする)において映像データCdで指定される階調T11が、1フレーム前の(N−1)フレームの映像データPdで指定される階調T10から変化するときを想定する。
この想定において、(N−1)フレームおよびNフレームのそれぞれにおいて、映像データCdを、データ信号に変換して当該着目画素の画素電極118に印加しても、液晶層の低応答性のために当該着目画素(液晶容量)における実際の透過率は、同図の(a)の破線で示されるように、Nフレームの終端までに、目的とする階調T11に応じた透過率に至らず、それよりも手前の透過率Taとなってしまい、これが原因で一種のぼやけ感が発生する。
そこで、図7の(b)に示されるように、Nフレームにおいて映像データCdが指定する階調を、階調変化方向に過剰に振った値に補正して、当該着目画素における実際の透過率が、Nフレームの終端において階調T11に応じた透過率とさせる。このときの階調変化方向に過剰に振る値を補償値βtとしている。
このような補償値βtは、透過モードとしたときの映像データCd、Pdに対して予め求められて、ルックアップテーブル811に記憶される。
【0028】
このルックアップテーブル811は、透過モードにおける補償値βtを記憶するものであるが、上述したように、液晶層の応答性は、透過モードと反射モードとにおいて互いに異なる。このため、反射モード用の補償値βrを記憶するのが、ルックアップテーブル812である。すなわち、ルックアップテーブル812は、現フレームの映像データCdと1フレーム前の映像データPdとを入力して、当該映像データCdで指定される画素の階調の変化分に応じた反射モード用の補償値βrを、セレクター806の入力端Bに供給するものである。
この補償値βrについては、特に図示しないが、Nフレームにおいて映像データCdが指定する階調を、階調変化方向に過剰に振った値に変更して、当該着目画素の実際の反射率が、Nフレームの終端において階調に応じた値にさせるものであり、このときの階調変化方向に過剰に振った値を補償値βrとしている。
【0029】
なお、補償値βt(βr)は、図7に示されるように、階調が暗から明に変化したときに正値であれば、逆に階調が明から負に変化したときには負値となる。すなわち、補償値βt、βrは、いずれも正負を伴う概念である。
また、透過領域における応答性が反射領域における応答性よりも低いことを考えると、透過モードの補償値βtは、同じ階調変化があったときの反射モードの補償値βrと比較して、絶対値でみて大きい。
【0030】
説明を図6に戻すと、セレクター806は、信号Modによって透過モードが指定されていれば入力端Aを選択し、反射モードが指定されていれば入力端Bを選択して、選択した入力端に供給された補償値を出力するものである。
演算回路808は、現フレームの映像データCdに、セレクター806によって選択された補償値を加算して、補償映像データVbとして出力するものである。
【0031】
この構成に係るオーバードライブ回路80において、信号Modによって透過モードが指定された場合、セレクター804は出力端Aを、セレクター806は入力端Aを、それぞれ選択するので、補償映像データVbは、現フレームの映像データCdに透過モード用の補償値βtを加算したものとなる。一方、信号Modによって反射モードが指定された場合、セレクター804は出力端Bを、セレクター806は入力端Bを、それぞれ選択するので、補償映像データVbは、現フレームの映像データCdに反射モード用の補償値βrを加算したものとなる。
【0032】
次に、実施形態に係る液晶表示装置1の表示動作について説明する。主制御回路からは、映像データCdが、1行1列〜1行最終列、2行1列〜2行最終列、3行1列〜3行最終列、…、最終行1列〜最終行最終列の画素の順番で1フレームにわたって供給される。
このうち、1行1列〜1行最終列の画素1行分の映像データCdが供給される期間において、表示制御回路60は、Yドライバー130に対して1行目の走査線112を選択させる一方、オーバードライブ回路80に対して次のようにして補償映像データVbを出力させる。すなわち、表示制御回路60は、オーバードライブ回路80に対して、信号Modによって透過モードが指定されていれば、1行1列の映像データCdが供給されたとき、1フレーム前における1行1列の映像データPdをフレームメモリー802から読み出して、供給された映像データCdと読み出した映像データPdとに応じた補償値βtを、当該映像データCdに加算させ、1行2列、1行3列、…、1行最終列の画素の映像データCdについても、同様に補償値βtを加算させて、それぞれ補償映像データVbとして出力させる。
また、表示制御回路60は、Xドライバー140に対して、オーバードライブ回路80から出力される1行1列〜1行最終列の画素の補償映像データVbをデータ信号に変換させるとともに、1列目から最終列目までのデータ線114に出力させる。
【0033】
1行目の走査線が選択されると、当該1行目の走査線のみに選択電圧が印加され、他の走査線には非選択電圧が印加されるので、1行目の画素110におけるTFT116のみがオンする。これにより、1列目、2列目、3列目、…、最終列目までのデータ線114に供給されたデータ信号は、それぞれオン状態にあるTFT116を介して、それぞれ1行1列、1行2列、1行3列、…、1行最終列の画素電極118に印加されるので、1行1列〜1行最終列の液晶素子には、それぞれ映像データCdを透過モードの補償値βtで補償した補償映像データVbに対応した電圧が書き込まれることになる。
【0034】
同様な動作が、2行目、3行目、…、最終行目の順番で実行されて、各液晶素子には、それぞれ補償映像データVbに基づいた電圧が書き込まれることになる。このように、透過モードが指定されたときに表示パネル100の各画素110では、映像データCdによる指定階調に応じた透過率となるように、液晶層の応答性が透過モードに合わせて補償されるので、透過モードで動画を表示する際のぼやけ感を、適切に低減することが可能となる。
【0035】
なお、信号Modによって反射モードが指定された場合、オーバードライブ回路80において、供給された映像データCdと読み出した映像データPdとに応じた補償値が、反射モードに応じたβrとなって、映像データCdに加算される以外、透過モードと同様な動作となる。
このため、反射モードが指定されたときに、表示パネル100の各画素110では、映像データCdによる指定階調に応じた反射率となるように液晶層の応答性が反射モードに合わせて補償されるので、反射モードで動画を表示する際のぼやけ感についても、適切に低減することが可能となる。
【0036】
このように本実施形態によれば、透過モード、反射モードのいずれのモードが指定された場合であっても、指定されたモードに応じてそれぞれ液晶層の応答性を適切に補償することができるので、いずれのモードにおいても、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、この第2実施形態に係る液晶表示装置は、オーバードライブ回路80を図8に示す回路としたものであり、他については、第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
図8に示されるように、第2実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路80では、第1実施形態のように、反射モード用の補償値βrを記憶するルックアップテーブル812が存在しない。このため、第2実施形態では、ルックアップテーブル812に映像データPdを供給するためのセレクター804、および、ルックアップテーブル812による補償値を選択するためにセレクター806についても存在しない。その代わりに、セレクター821および乗算回路822を備える。このうち、セレクター821は、信号Modによって透過モードが指定された場合に第1係数「1」を選択し、反射モードが指定された場合に第2係数「α」を選択して、それぞれ選択した係数を乗算回路822に供給する係数出力部である。乗算回路822は、ルックアップテーブル811からモードに関係なく出力される補償値βtに、セレクター821から出力される係数を乗じるものである。
なお、第2実施形態において、演算回路808は、乗算回路822による乗算値を現フレームの映像データCdに加算する。
【0038】
上述したように、透過領域における液晶分子の電圧応答性は反射領域における液晶分子の電圧応答性よりも低下するので、透過モードにおける補償値βtは、同じ階調変化があったときの反射モードにおける補償値βrと比較して、絶対値でみて大きい。換言すれば、反射モードにおける補償値βtは、同じ階調変化があったときの透過モードにおける補償値βtと比較して、絶対値でみて小さくて済む。また、液晶分子の電圧応答性は、セルギャップが小さくなるにつれて、向上すると考えられる。このため、第2実施形態では、反射モード用の補償値βrとして、透過モード用の補償値βrに係数α(αは1未満の値)を乗じた値を用いる構成となっている。
【0039】
このような構成において、信号Modによって透過モードが指定された場合、セレクター821が第1係数「1」を選択するので、乗算回路による乗算値は、補償値βtそのものである。このため、透過モードにおける補償映像データVbは、第1実施形態と同様に、現フレームの映像データCdに透過モード用の補償値βtを加算したものとなる。
一方、信号Modによって反射モードが指定された場合、セレクター821が第2係数「α」を選択するので、乗算回路による乗算値は、補償値βtに第2係数「α」を乗じた値となり、この値が反射モード用の補償値βrとして演算回路808に供給される。このため、反射モードにおける補償映像データVbは、映像データCdに、反射モード用の補償値βrとして(βt・α)を加算したものとなる。
【0040】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、透過モード、反射モードのいずれのモードが指定された場合であっても、指定されたモードに応じてそれぞれ液晶層の応答性を適切に補償することができるので、いずれのモードにおいても、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。さらに、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較すると、ルックアップテーブルに要する記憶容量が半分で済むので、構成の簡易化を図ることもできる。
また、第2実施形態において、補償値βtとして用いる(βt・α)は、透過モード用の補償値βtに「1」未満の第2係数「α」を乗じたものであるので、ルックアップテーブル811に記憶させた補償値βtに誤差があっても、当該誤差が縮小する方向に働く。このため、反射モードにおいてぼやけ感を低減するにあたって、補償値βtにおける誤差の影響を受けにくい、という効果もある。
【0041】
なお、第2実施形態では、透過モード用の補償値βtから反射モード用の補償値βrを演算して求めたが、逆に、ルックアップテーブルに、反射モード用の補償値βrを記憶させて、この補償値βrから透過モード用の補償値βtを演算して求める構成としても良い。詳細には、この構成では、透過モードが指定された場合に第1係数「α」を選択し、反射モードが指定された場合に第2係数「1」を選択して、ルックアップテーブルからモードに関係なく出力される補償値βrに、モードに応じて選択された係数を乗じることになる。ただし、この構成においては、第2係数αが「1」よりも大きくなることから、補償値βtとして用いる(βr・α)の算出にあたって、ルックアップテーブルに記憶させる補償値βrにおける誤差が拡大する方向に働く。このため、透過モードにおいてぼやけ感を低減するにあたって、補償値βrにおける誤差の影響を受けやすくなる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、この第3実施形態に係る液晶表示装置は、オーバードライブ回路80を図9に示す回路としたものであり、他については、第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
上述したように、反射領域における液晶分子の応答性は透過領域における応答性よりも良好である。また、そもそも反射モードは、外光の反射光を用いて表示を行う関係上、透過モードと比較して視認性が低い。
このため、反射モードにおいて、オーバードライブ回路80による補償をしなくても、動画表示の際のぼやけ感が知覚されにくいはずである。そこで、この第3実施形態では、オーバードライブ回路80は、透過モードが指定された場合だけ、応答性を補償することとしたものである。
【0043】
詳細には、図9に示されるように、第3実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路80は、信号Modによって透過モードが指定された場合には、現フレームの映像データCdに補償値βtを加算したデータを選択し、反射モードが指定された場合には、現フレームの映像データCdそのものを選択して、それぞれ選択したデータを、補償映像データVbとして出力するセレクター830を備える。
【0044】
第3実施形態によれば、透過モードおよび反射モードを有する表示パネルにおいて、特に透過モードが指定された場合に、動画を表示する際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。なお、第3実施形態においては、反射モードが指定された場合に、オーバードライブ回路80による応答補償はなされないが、動画表示の際のぼやけ感は知覚されにくい。また、第3実施形態によれば、第2実施形態と同様に、第1実施形態と比較すると、ルックアップテーブルに要する記憶容量が半分で済むので、構成の簡易化を図ることができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態では、光センサー1210で検出された周辺の明るさに基づいて、モード指定回路70がモードを指定する信号Modを出力したが、例えば、携帯電話1200の動作を司る主制御回路がパックライトのオンを命令したときに透過モードを、パックライトのオフを命令したときに反射モードを、それぞれ指定しても良い。また、ユーザーによる操作ボタン1202やカーソルキー1204の操作によって透過モードまたは反射モードを指定するようにしても良い。
【0046】
上述した実施形態では、いずれも液晶表示装置を適用した電子機器として携帯電話を例に挙げたが、動画を表示するものであって、透過モードおよび反射モードの双方を用いるものであれば、携帯電話以外の電子機器であっても良い。なお、このような電子機器としては、例えばデジタルスチルカメラや、ノートパソコン、液晶テレビ、ビューファインダ型(またはモニタ直視型)のビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0047】
1…液晶表示装置、100…表示パネル、70…モード指定回路、74…LED、80…オーバードライブ回路、130…Yドライバー、140…Xドライバー、811、812…ルックアップテーブル、808…演算回路、821…セレクター、822…乗算回路、1200…携帯電話、1210…光センサー
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる半透過型の液晶表示装置において動画表示の際のぼやけ感を低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バックライトを光源とする透過型の液晶表示装置は、暗い場所で見やすい反面、消費電力が大きくなり、また、明るい場所では見えにくい、という難点がある。そこで、暗い場所ではバックライトからの透過光を視認させる透過型として機能し(透過モード)、明るい場所では外光の反射光を視認させる反射型として機能する(反射モード)、半透過(半反射)型の液晶表示装置が提案されている(特許文献1参照)。
一方で、液晶表示装置では、動画を表示させる際に、液晶の光学的な応答速度が十分でないことに起因して、ぼやけ感が発生する。このぼやけ感を低減するために、いわゆるオーバードライブという技術もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−344839号公報(図5)
【特許文献2】特開2001−265298号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半透過型の液晶表示装置に、オーバードライブ技術を適用したときには、透過領域における液晶層の厚みと、反射領域における液晶層の厚みの違いに起因して、透過領域と反射領域とでは液晶の光学的な応答が異なってしまい、ぼやけ感を適切に低減できない、という懸念が生じた。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、半透過型の液晶表示装置おいて、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る液晶表示装置にあっては、観察側の第1基板と、反射層を有する背面側の第2基板とを備え、前記第1基板のうち、前記第2基板との対向面側の第1透明電極と、前記第2基板のうち、前記第1基板との対向面側の第2透明電極とにより液晶層を挟持した画素を、複数有し、前記複数の画素の各々は、前記第2基板側からの入射光が前記第1基板側に出射する透過領域と、前記第1基板側からの入射光が前記反射層により反射して当該記第1基板側に出射する反射領域とをそれぞれ有し、前記透過領域における液晶層の厚さが、前記反射領域における液晶層の厚さとは異なる液晶表示装置であって、前記複数の画素の階調をそれぞれ指定する映像データを、過去の映像データで指定された階調との変化分に応じた補償値で補償して、補償映像データとして出力する補償回路であって、透過モードであるときの補償値を、反射モードであるときの補償値と異なるように設定された補償回路と、前記補償映像データに応じた電圧を前記複数の画素にそれぞれ書き込む駆動回路と、を具備することを特徴とする。本発明によれば、透過モードであるときの補償値は、反射モードであるときの補償値と異なるので、液晶層の厚さに応じた適切な補償値を与えることが可能となる。
ここで、本発明において、前記透過領域における液晶層は、前記反射領域における液晶層よりも厚く、前記補償回路は、前記透過モードまたは前記反射モードのいずれかを指定するモード指定信号を入力し、前記モード指定信号によって前記透過モードが指定されたときの補償値を、反射モードが指定されたときの補償値よりも大きくする構成が好ましい。なお、モード指定信号については、周辺の明るさが閾値を下回る場合に透過モードを指定し、閾値以上である場合に反射モードを指定するようにしても良いし、第2基板側から光を照射するバックライトをオンさせるときに透過モードを指定し、当該バックライトをオフさせるときに反射モードを指定しても良い。さらに、ユーザーの操作に応じてモード指定信号が透過モードまたは反射モードのいずれかを指定しても良い。
【0006】
本発明において、前記補償回路は、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して前記透過モード用の補償値を出力する第1ルックアップテーブルと、前記二つの入力値に対して前記反射モード用の補償値を出力する第2ルックアップテーブルと、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記第1ルックアップテーブルによる補償値を選択し、前記反射モードが指定されたときには、前記第2ルックアップテーブルによる補償値を選択するセレクターと、前記セレクターにより選択された補償値を前記現フレームにおける映像データに加算して、前記補償映像データとして出力する演算回路と、を具備する構成としても良いし、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力するルックアップテーブルと、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには第1係数を出力し、前記反射モードが指定されたときには第2係数を出力する係数出力部と、前記ルックアップテーブルによる補償値に前記係数出力部による係数を乗算して、前記補償映像データとして出力する乗算回路と、を具備する構成としても良いし、現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力する透過用ルックアップテーブルと、前記透過用ルックアップテーブルによる補償値を前記現フレームにおける映像データに加算する加算回路と、を備え、前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記加算回路の出力を前記補償映像データとして出力し、前記反射モードが指定されたときには前記現フレームにおける映像データを前記補償映像データとして出力する構成としても良い。
なお、本発明は、液晶表示装置のみならず、当該液晶表示装置を含む電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態に係る液晶表示装置を適用した電子機器の構成を示す図である。
【図2】同液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同液晶表示装置における画素の等価回路を示す図である。
【図4】同液晶表示装置における画素の平面構成を示す図である。
【図5】同液晶表示装置における画素の断面構成を示す図である。
【図6】同液晶表示装置におけるオーバードライブ回路の構成を示すブロック図である。
【図7】同オーバードライブ回路による補償内容を示す図である。
【図8】第2実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る液晶表示装置を適用した携帯電話の構成を示す図である。
この図に示されるように、携帯電話1200は、複数の操作ボタン1202やカーソルキー1204のほか、受話口1206、送話口1208とともに、液晶表示装置の表示パネル100を備える。また、表示パネル100の下方には、光センサー1210の受光窓が設けられ、携帯電話周辺の明るさを検出する。
【0009】
図2は、第1実施形態に係る液晶表示装置1の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、液晶表示装置1は、表示パネル100と、表示制御回路60、モード指定回路70、LED駆動回路72、LED74、オーバードライブ回路80、Yドライバー130およびXドライバー140を有する。
なお、図2では、携帯電話1200のうち、表示以外の構成、例えば無線通信などの構成については省略している。なお、表示パネル100で表示すべき画像を規定する映像データCdは、携帯電話1200の動作を司る主制御回路(図示省略)から、同期信号Syncにしたがった画素の順でフレーム毎に供給される構成となっている。
【0010】
表示パネル100は、例えばアクティブマトリクス型の液晶パネルであり、その表示領域では、複数行の走査線112が図において横方向に延在し、また、複数列のデータ線114が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線112と互いに電気的に絶縁を保つように設けられるとともに、これらの走査線112とデータ線114との交差のそれぞれに対応して、画素110がそれぞれ配設されている。
なお、各画素110は、R(赤)、G(緑)、B(青)のいずれかに対応しており、RGBの3画素で、1つのドットのカラーを表現する。また、本実施形態における表示パネル100は、詳細については後述するが、バックライトによる透過光を視認させて表示を行う透過モードと、外光の反射光を視認させて表示を行う反射モードとを有する半透過型である。
【0011】
モード指定回路70は、光センサー1210で検出された周辺の明るさに基づいて、表示パネル100を透過モードとするか、反射モードとすべきかを決定して、モードを指定する信号Modを出力する。LED駆動回路72は、信号Modによって透過モードが指定されていれば、LED74を点灯させ、反射モードが指定されていれば、LED74を消灯させる。
LED74は、バックライトの光源として機能する白色LEDである。なお、バックライトとしては、ほかに光拡散板や反射板などを含むが、本発明では重要ではないので、光源としてLED74のみを図示している。
【0012】
なお、モード指定回路70は、透過モードが指定されていれば、明るくなるにつれて、LED74も明るくなるように、例えばPWM制御しても良い。
また、本実施形態では、信号Modによって表示パネル100のモードが指定されることになるが、表示パネル100において例えば透過モードが指定されたときであっても、反射光の成分が、少なからずあり、視認される光がすべて透過光であるとは限らない。すなわち、モード指定回路70が指定するモードは、実際に視認される光のモードと常に一致する訳ではない。
【0013】
表示制御回路60は、上記主制御回路から供給される同期信号Syncにしたがって各部の動作を制御する。
Yドライバー130は、表示制御回路60による制御にしたがって、複数行の走査線112を1フレームにわたってそれぞれ1、2、3、…、行目という順番で選択し、選択した走査線に選択電圧を、それ以外の走査線には非選択電圧を、それぞれ印加する走査線駆動回路である。
なお、1フレームとは、表示パネル100を駆動することによって、画像の1コマ分を表示させるのに要する期間をいい、同期信号Syncの垂直走査周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。また、選択電圧とは、後述する薄膜トランジスターのゲート電極に印加されたときに当該薄膜トランジスターがオン状態となる電圧であり、また、非選択電圧とは、薄膜トランジスターのゲート電極に印加されても当該薄膜トランジスターがオン状態とはならない、すなわちオフ状態とさせる電圧である。
【0014】
オーバードライブ回路80は、詳細については後述するが、同期信号Syncに同期して供給され、画素110の階調(明るさ)を指定する映像データCdを信号Modで指定されたモードに応じて応答性を補償し、補償映像データVbとして出力する補償回路である。
Xドライバー140は、表示制御回路60による制御にしたがって、補償映像データVbをアナログのデータ信号に変換するとともに、Yドライバー130によって選択された1行分の画素110の各々に対し、変換したデータ信号を、それぞれデータ線114を介して供給するデータ線駆動回路である。
【0015】
続いて、表示パネル100における画素110の構成について説明する。表示パネル100は、図5に示されるように、素子基板10と対向基板20とによって液晶層50を挟持した構成である。
このように構成される表示パネル100のうち、図3は、画素110の等価回路を示す図であり、図4は、素子基板の構成を示す平面図である。なお、図3および図4は、縦方向および横方向において互いに隣接する2×2の計4画素分の構成が示されている。また、図5は、図4におけるA−A’線の沿って対向基板を含めて破断したときの断面図である。
【0016】
図3および図4に示されるように、各画素110は、nチャネル型の薄膜トランジスター(thin film transistor:以下単に「TFT」と略称する)116と、液晶容量120とを有する。このうち、TFT116のゲート電極は走査線112に接続され、ソース電極はデータ線114に接続され、ドレイン電極は画素電極118に接続されている。
液晶容量120は、一端を画素毎の画素電極118とし、他端を全画素にわたって共通のコモン電極108として、両電極で液晶層50を挟持したものである。なお、コモン電極108は、電圧LCcomに保たれている。
【0017】
図5において、素子基板10は背面側に位置する第2基板である。素子基板10の基材たる透明基板11上には、半導体層が画素毎に島状に設けられ、さらに、この半導体層および透明基板11を覆うようにゲート絶縁膜12が形成されている。走査線112のうち、ゲート絶縁膜12を介し半導体層と交差する部分が、TFT116のゲート電極となっている。
ゲート絶縁膜12および走査線112の表面を覆うように、第1層間絶縁膜13が設けられているが、半導体層のソース領域およびドレイン領域へ通じるように開孔して、コンタクトホールC1、C2をそれぞれ形成している。
データ線114は、コンタクトホールC1を介して半導体層のソース領域に電気的に接続されている。同様に、接続電極115は、コンタクトホールC2を介して半導体層のドレイン領域に電気的に接続されている。
【0018】
さらに、第2層間絶縁膜14および第3層間絶縁膜15が順次積層されている。このうち、第2層間絶縁膜14は、データ線114および接続電極115の表面を保護するために設けられる。第2層間絶縁膜14および第3層間絶縁膜15は、接続電極115へ通じるように開孔してコンタクトホールC3を形成している。
【0019】
第3層間絶縁膜15の表面には、アルミニウム等による反射層119が、特に図4に示されるように矩形形状に、かつ、開口部119aを設けた状態で形成されている。
なお、反射層119は、図5では簡略化のために平坦面に形成されているように見えるが、実際には、光が散乱反射するように起伏のある散乱面に形成される。また、開口部119aは、実際には、反射層119を中抜きしたものである。
さらに、透明導電膜からなる第2透明電極としての画素電極118が、反射層119の表面を覆うように、かつ、コンタクトホールC3を介して接続電極115に接続するようにパターニングされている。なお、画素電極118および第3層間絶縁膜15の表面には、すなわち、液晶層50に接する面には、配向膜が設けられるが、図示省略している。
【0020】
他方、対向基板20は、観察側に位置する第1基板である。対向基板20の基材たる透明基板21のうち、素子基板10との対向面には、画素電極118との対向領域以外の領域を遮光するように、遮光膜22が設けられる一方、画素電極118との対向領域では、カラーフィルター23が設けられる。ただし、カラーフィルター23の厚さは、反射層119と対向する領域よりも、開口部119aと対向する領域の方が薄くなっている。
遮光膜119およびカラーフィルター23の表面を覆うように、対向面の全面にわたって透明導電膜からなる第1透明電極としてのコモン電極108が形成されている。なお、コモン電極108の表面には、すなわち、液晶層50に接する面には、素子基板10と同様に配向膜が設けられるが、図示省略している。
【0021】
このような構成の表示パネル100においては、背面側の素子基板10の外側、すなわち図5において下方側から、バックライトとしてのLED74による白色光が入射する。この白色光のうち、開口部119aを通過する光のみが、液晶層50に入射する。開口部119aを通過した光は、液晶層50で光変調されて、対向基板20の側、すなわち図5において上側の観察側に透過表示光として出射する(透過モード)。したがって、画素を平面視したときに、開口部119aが透過領域となる。
これに対して、観察側の対向基板20の外側から、すなわち図5において上方側から入射した外光のうち、遮光膜22で遮断されなかった光は、液晶層50を通過して反射層119に達し、再び液晶層50を通過して、観察側に、反射表示光として出射する(透過モード)。したがって、画素を平面視したときに、反射層119の存在領域、すなわち、開口部119aを除いた領域が、反射領域となる。
【0022】
ここで、透過表示光は、液晶層50を一度だけ通過するのに対して、反射表示光は、液晶層50を2度、通過する。このため、液晶層50の厚さを、透過領域と反射領域とで揃えてしまうと、液晶層を通過する光の経路長が透過領域と反射領域とで異なってしまうことになる。
そこで、本実施形態では、透過領域におけるカラーフィルター23の厚さを、反射領域よりも薄くして、透過領域における液晶層50の厚さ(セルギャップ)が、反射領域のセルギャップの約2倍となるようにしている。
このため、本実施形態では、液晶層を通過する光の経路長が透過領域と反射領域とでほぼ等しくなるので、透過表示光および反射表示光の双方において高い品位の表示が可能となっている。
なお、液晶層を通過する光の経路長を透過領域と反射領域とでほぼ等しくするために、図5以外の構成を採用しても良い。例えば、透過領域における第3層間絶縁膜15を、反射領域よりも薄くしても良い。
【0023】
ところで、セルギャップが透過領域と反射領域とで異なると、液晶分子の電圧応答も、透過領域と反射領域とで異なることになる。具体的には、透過領域におけるセルギャップが反射領域におけるセルギャップよりも厚いと、透過領域における液晶分子の電圧応答性は、反射領域における液晶分子の電圧応答性よりも低下する。換言すれば、反射領域における液晶分子の電圧応答性は、透過領域における液晶分子の電圧応答性よりも良好である。このため、半透過型の液晶表示装置おいてオーバードライブ技術を適用する場合、モードによる応答性の相違を考慮しなければ、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することができないことになる。
そこで、本実施形態では、オーバードライブ回路80を、次のように構成して、透過モードと反射モードとに応じて適切に応答性を補償している。
【0024】
図6は、液晶表示装置1におけるオーバードライブ回路80の構成を示すブロック図である。この図に示されるように、オーバードライブ回路80は、フレームメモリー802、セレクター804、806、演算回路808、ルックアップテーブル(LUT)811および812を有する。
このうち、フレームメモリー802は、表示制御回路60(図2参照)による制御の下、主制御回路から供給され、表示すべき画像を示す映像データCdを一時的に記憶するとともに、1フレーム経過後に読み出し、映像データPdとして出力するものである。このため、映像データPdは、映像データCdに対して1フレーム前の画素の階調を指定するものとなる。なお、映像データPdが1フレーム前のものであることとの対比上、表示すべき画像を示す映像データCdについては、現フレームの映像データと呼ぶことがある。
【0025】
セレクター804は、信号Modによって透過モードが指定されていれば出力端Aを選択し、反射モードが指定されていれば出力端Bを選択して、フレームメモリー802
から読み出された映像データPdを選択した出力端から出力するものである。
【0026】
ルックアップテーブル811は、映像データCdと1フレーム前の映像データPdとを入力して、当該映像データCdで指定される画素の階調の変化分に応じた透過モード用の補償値βtを、セレクター806の入力端Aに供給する二次元変換テーブルである。詳細には、ルックアップテーブル811は、映像データCdで指定される階調値と映像データPdで指定される階調値との組み合わせの各々に対応して、補償値βtを予め記憶したものであり、映像データCdと映像データPdとが入力された場合に、これら2つのデータで指定される階調値の組み合わせに対応する補償値βtを出力する。
【0027】
ここで、補償値βtについて図7を参照して説明する。
図7の(a)に示されるように、ある画素に着目したときに、あるフレーム(Nフレームとする)において映像データCdで指定される階調T11が、1フレーム前の(N−1)フレームの映像データPdで指定される階調T10から変化するときを想定する。
この想定において、(N−1)フレームおよびNフレームのそれぞれにおいて、映像データCdを、データ信号に変換して当該着目画素の画素電極118に印加しても、液晶層の低応答性のために当該着目画素(液晶容量)における実際の透過率は、同図の(a)の破線で示されるように、Nフレームの終端までに、目的とする階調T11に応じた透過率に至らず、それよりも手前の透過率Taとなってしまい、これが原因で一種のぼやけ感が発生する。
そこで、図7の(b)に示されるように、Nフレームにおいて映像データCdが指定する階調を、階調変化方向に過剰に振った値に補正して、当該着目画素における実際の透過率が、Nフレームの終端において階調T11に応じた透過率とさせる。このときの階調変化方向に過剰に振る値を補償値βtとしている。
このような補償値βtは、透過モードとしたときの映像データCd、Pdに対して予め求められて、ルックアップテーブル811に記憶される。
【0028】
このルックアップテーブル811は、透過モードにおける補償値βtを記憶するものであるが、上述したように、液晶層の応答性は、透過モードと反射モードとにおいて互いに異なる。このため、反射モード用の補償値βrを記憶するのが、ルックアップテーブル812である。すなわち、ルックアップテーブル812は、現フレームの映像データCdと1フレーム前の映像データPdとを入力して、当該映像データCdで指定される画素の階調の変化分に応じた反射モード用の補償値βrを、セレクター806の入力端Bに供給するものである。
この補償値βrについては、特に図示しないが、Nフレームにおいて映像データCdが指定する階調を、階調変化方向に過剰に振った値に変更して、当該着目画素の実際の反射率が、Nフレームの終端において階調に応じた値にさせるものであり、このときの階調変化方向に過剰に振った値を補償値βrとしている。
【0029】
なお、補償値βt(βr)は、図7に示されるように、階調が暗から明に変化したときに正値であれば、逆に階調が明から負に変化したときには負値となる。すなわち、補償値βt、βrは、いずれも正負を伴う概念である。
また、透過領域における応答性が反射領域における応答性よりも低いことを考えると、透過モードの補償値βtは、同じ階調変化があったときの反射モードの補償値βrと比較して、絶対値でみて大きい。
【0030】
説明を図6に戻すと、セレクター806は、信号Modによって透過モードが指定されていれば入力端Aを選択し、反射モードが指定されていれば入力端Bを選択して、選択した入力端に供給された補償値を出力するものである。
演算回路808は、現フレームの映像データCdに、セレクター806によって選択された補償値を加算して、補償映像データVbとして出力するものである。
【0031】
この構成に係るオーバードライブ回路80において、信号Modによって透過モードが指定された場合、セレクター804は出力端Aを、セレクター806は入力端Aを、それぞれ選択するので、補償映像データVbは、現フレームの映像データCdに透過モード用の補償値βtを加算したものとなる。一方、信号Modによって反射モードが指定された場合、セレクター804は出力端Bを、セレクター806は入力端Bを、それぞれ選択するので、補償映像データVbは、現フレームの映像データCdに反射モード用の補償値βrを加算したものとなる。
【0032】
次に、実施形態に係る液晶表示装置1の表示動作について説明する。主制御回路からは、映像データCdが、1行1列〜1行最終列、2行1列〜2行最終列、3行1列〜3行最終列、…、最終行1列〜最終行最終列の画素の順番で1フレームにわたって供給される。
このうち、1行1列〜1行最終列の画素1行分の映像データCdが供給される期間において、表示制御回路60は、Yドライバー130に対して1行目の走査線112を選択させる一方、オーバードライブ回路80に対して次のようにして補償映像データVbを出力させる。すなわち、表示制御回路60は、オーバードライブ回路80に対して、信号Modによって透過モードが指定されていれば、1行1列の映像データCdが供給されたとき、1フレーム前における1行1列の映像データPdをフレームメモリー802から読み出して、供給された映像データCdと読み出した映像データPdとに応じた補償値βtを、当該映像データCdに加算させ、1行2列、1行3列、…、1行最終列の画素の映像データCdについても、同様に補償値βtを加算させて、それぞれ補償映像データVbとして出力させる。
また、表示制御回路60は、Xドライバー140に対して、オーバードライブ回路80から出力される1行1列〜1行最終列の画素の補償映像データVbをデータ信号に変換させるとともに、1列目から最終列目までのデータ線114に出力させる。
【0033】
1行目の走査線が選択されると、当該1行目の走査線のみに選択電圧が印加され、他の走査線には非選択電圧が印加されるので、1行目の画素110におけるTFT116のみがオンする。これにより、1列目、2列目、3列目、…、最終列目までのデータ線114に供給されたデータ信号は、それぞれオン状態にあるTFT116を介して、それぞれ1行1列、1行2列、1行3列、…、1行最終列の画素電極118に印加されるので、1行1列〜1行最終列の液晶素子には、それぞれ映像データCdを透過モードの補償値βtで補償した補償映像データVbに対応した電圧が書き込まれることになる。
【0034】
同様な動作が、2行目、3行目、…、最終行目の順番で実行されて、各液晶素子には、それぞれ補償映像データVbに基づいた電圧が書き込まれることになる。このように、透過モードが指定されたときに表示パネル100の各画素110では、映像データCdによる指定階調に応じた透過率となるように、液晶層の応答性が透過モードに合わせて補償されるので、透過モードで動画を表示する際のぼやけ感を、適切に低減することが可能となる。
【0035】
なお、信号Modによって反射モードが指定された場合、オーバードライブ回路80において、供給された映像データCdと読み出した映像データPdとに応じた補償値が、反射モードに応じたβrとなって、映像データCdに加算される以外、透過モードと同様な動作となる。
このため、反射モードが指定されたときに、表示パネル100の各画素110では、映像データCdによる指定階調に応じた反射率となるように液晶層の応答性が反射モードに合わせて補償されるので、反射モードで動画を表示する際のぼやけ感についても、適切に低減することが可能となる。
【0036】
このように本実施形態によれば、透過モード、反射モードのいずれのモードが指定された場合であっても、指定されたモードに応じてそれぞれ液晶層の応答性を適切に補償することができるので、いずれのモードにおいても、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、この第2実施形態に係る液晶表示装置は、オーバードライブ回路80を図8に示す回路としたものであり、他については、第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
図8に示されるように、第2実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路80では、第1実施形態のように、反射モード用の補償値βrを記憶するルックアップテーブル812が存在しない。このため、第2実施形態では、ルックアップテーブル812に映像データPdを供給するためのセレクター804、および、ルックアップテーブル812による補償値を選択するためにセレクター806についても存在しない。その代わりに、セレクター821および乗算回路822を備える。このうち、セレクター821は、信号Modによって透過モードが指定された場合に第1係数「1」を選択し、反射モードが指定された場合に第2係数「α」を選択して、それぞれ選択した係数を乗算回路822に供給する係数出力部である。乗算回路822は、ルックアップテーブル811からモードに関係なく出力される補償値βtに、セレクター821から出力される係数を乗じるものである。
なお、第2実施形態において、演算回路808は、乗算回路822による乗算値を現フレームの映像データCdに加算する。
【0038】
上述したように、透過領域における液晶分子の電圧応答性は反射領域における液晶分子の電圧応答性よりも低下するので、透過モードにおける補償値βtは、同じ階調変化があったときの反射モードにおける補償値βrと比較して、絶対値でみて大きい。換言すれば、反射モードにおける補償値βtは、同じ階調変化があったときの透過モードにおける補償値βtと比較して、絶対値でみて小さくて済む。また、液晶分子の電圧応答性は、セルギャップが小さくなるにつれて、向上すると考えられる。このため、第2実施形態では、反射モード用の補償値βrとして、透過モード用の補償値βrに係数α(αは1未満の値)を乗じた値を用いる構成となっている。
【0039】
このような構成において、信号Modによって透過モードが指定された場合、セレクター821が第1係数「1」を選択するので、乗算回路による乗算値は、補償値βtそのものである。このため、透過モードにおける補償映像データVbは、第1実施形態と同様に、現フレームの映像データCdに透過モード用の補償値βtを加算したものとなる。
一方、信号Modによって反射モードが指定された場合、セレクター821が第2係数「α」を選択するので、乗算回路による乗算値は、補償値βtに第2係数「α」を乗じた値となり、この値が反射モード用の補償値βrとして演算回路808に供給される。このため、反射モードにおける補償映像データVbは、映像データCdに、反射モード用の補償値βrとして(βt・α)を加算したものとなる。
【0040】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、透過モード、反射モードのいずれのモードが指定された場合であっても、指定されたモードに応じてそれぞれ液晶層の応答性を適切に補償することができるので、いずれのモードにおいても、動画表示の際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。さらに、第2実施形態によれば、第1実施形態と比較すると、ルックアップテーブルに要する記憶容量が半分で済むので、構成の簡易化を図ることもできる。
また、第2実施形態において、補償値βtとして用いる(βt・α)は、透過モード用の補償値βtに「1」未満の第2係数「α」を乗じたものであるので、ルックアップテーブル811に記憶させた補償値βtに誤差があっても、当該誤差が縮小する方向に働く。このため、反射モードにおいてぼやけ感を低減するにあたって、補償値βtにおける誤差の影響を受けにくい、という効果もある。
【0041】
なお、第2実施形態では、透過モード用の補償値βtから反射モード用の補償値βrを演算して求めたが、逆に、ルックアップテーブルに、反射モード用の補償値βrを記憶させて、この補償値βrから透過モード用の補償値βtを演算して求める構成としても良い。詳細には、この構成では、透過モードが指定された場合に第1係数「α」を選択し、反射モードが指定された場合に第2係数「1」を選択して、ルックアップテーブルからモードに関係なく出力される補償値βrに、モードに応じて選択された係数を乗じることになる。ただし、この構成においては、第2係数αが「1」よりも大きくなることから、補償値βtとして用いる(βr・α)の算出にあたって、ルックアップテーブルに記憶させる補償値βrにおける誤差が拡大する方向に働く。このため、透過モードにおいてぼやけ感を低減するにあたって、補償値βrにおける誤差の影響を受けやすくなる。
【0042】
次に、本発明の第3実施形態に係る液晶表示装置について説明する。なお、この第3実施形態に係る液晶表示装置は、オーバードライブ回路80を図9に示す回路としたものであり、他については、第1実施形態と同様なので、その説明を省略する。
上述したように、反射領域における液晶分子の応答性は透過領域における応答性よりも良好である。また、そもそも反射モードは、外光の反射光を用いて表示を行う関係上、透過モードと比較して視認性が低い。
このため、反射モードにおいて、オーバードライブ回路80による補償をしなくても、動画表示の際のぼやけ感が知覚されにくいはずである。そこで、この第3実施形態では、オーバードライブ回路80は、透過モードが指定された場合だけ、応答性を補償することとしたものである。
【0043】
詳細には、図9に示されるように、第3実施形態に係る液晶表示装置のオーバードライブ回路80は、信号Modによって透過モードが指定された場合には、現フレームの映像データCdに補償値βtを加算したデータを選択し、反射モードが指定された場合には、現フレームの映像データCdそのものを選択して、それぞれ選択したデータを、補償映像データVbとして出力するセレクター830を備える。
【0044】
第3実施形態によれば、透過モードおよび反射モードを有する表示パネルにおいて、特に透過モードが指定された場合に、動画を表示する際のぼやけ感を適切に低減することが可能となる。なお、第3実施形態においては、反射モードが指定された場合に、オーバードライブ回路80による応答補償はなされないが、動画表示の際のぼやけ感は知覚されにくい。また、第3実施形態によれば、第2実施形態と同様に、第1実施形態と比較すると、ルックアップテーブルに要する記憶容量が半分で済むので、構成の簡易化を図ることができる。
【0045】
なお、上述した各実施形態では、光センサー1210で検出された周辺の明るさに基づいて、モード指定回路70がモードを指定する信号Modを出力したが、例えば、携帯電話1200の動作を司る主制御回路がパックライトのオンを命令したときに透過モードを、パックライトのオフを命令したときに反射モードを、それぞれ指定しても良い。また、ユーザーによる操作ボタン1202やカーソルキー1204の操作によって透過モードまたは反射モードを指定するようにしても良い。
【0046】
上述した実施形態では、いずれも液晶表示装置を適用した電子機器として携帯電話を例に挙げたが、動画を表示するものであって、透過モードおよび反射モードの双方を用いるものであれば、携帯電話以外の電子機器であっても良い。なお、このような電子機器としては、例えばデジタルスチルカメラや、ノートパソコン、液晶テレビ、ビューファインダ型(またはモニタ直視型)のビデオレコーダ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0047】
1…液晶表示装置、100…表示パネル、70…モード指定回路、74…LED、80…オーバードライブ回路、130…Yドライバー、140…Xドライバー、811、812…ルックアップテーブル、808…演算回路、821…セレクター、822…乗算回路、1200…携帯電話、1210…光センサー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察側の第1基板と、反射層を有する背面側の第2基板とを備え、
前記第1基板のうち、前記第2基板との対向面側の第1透明電極と、前記第2基板のうち、前記第1基板との対向面側の第2透明電極とにより液晶層を挟持した画素を、複数有し、
前記複数の画素の各々は、
前記第2基板側からの入射光が前記第1基板側に出射する透過領域と、前記第1基板側からの入射光が前記反射層により反射して当該記第1基板側に出射する反射領域とをそれぞれ有し、
前記透過領域における液晶層の厚さが、前記反射領域における液晶層の厚さとは異なる液晶表示装置であって、
前記複数の画素の階調をそれぞれ指定する映像データを、過去の映像データで指定された階調との変化分に応じた補償値で補償して、補償映像データとして出力する補償回路であって、透過モードであるときの補償値を、反射モードであるときの補償値と異なるように設定された補償回路と、
前記補償映像データに応じた電圧を前記複数の画素にそれぞれ書き込む駆動回路と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記透過領域における液晶層は、前記反射領域における液晶層よりも厚く、
前記補償回路は、前記透過モードまたは前記反射モードのいずれかを指定するモード指定信号を入力し、前記モード指定信号によって前記透過モードが指定されたときの補償値を、反射モードが指定されたときの補償値よりも大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して前記透過モード用の補償値を出力する第1ルックアップテーブルと、
前記二つの入力値に対して前記反射モード用の補償値を出力する第2ルックアップテーブルと、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記第1ルックアップテーブルによる補償値を選択し、前記反射モードが指定されたときには、前記第2ルックアップテーブルによる補償値を選択するセレクターと、
前記セレクターにより選択された補償値を前記現フレームにおける映像データに加算して、前記補償映像データとして出力する演算回路と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力するルックアップテーブルと、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには第1係数を出力し、前記反射モードが指定されたときには第2係数を出力する係数出力部と、
前記ルックアップテーブルによる補償値に前記係数出力部による係数を乗算して、前記補償映像データとして出力する乗算回路と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力する透過用ルックアップテーブルと、
前記透過用ルックアップテーブルによる補償値を前記現フレームにおける映像データに加算する加算回路と、
を備え、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記加算回路の出力を前記補償映像データとして出力し、前記反射モードが指定されたときには前記現フレームにおける映像データを前記補償映像データとして出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶表示装置を有することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
観察側の第1基板と、反射層を有する背面側の第2基板とを備え、
前記第1基板のうち、前記第2基板との対向面側の第1透明電極と、前記第2基板のうち、前記第1基板との対向面側の第2透明電極とにより液晶層を挟持した画素を、複数有し、
前記複数の画素の各々は、
前記第2基板側からの入射光が前記第1基板側に出射する透過領域と、前記第1基板側からの入射光が前記反射層により反射して当該記第1基板側に出射する反射領域とをそれぞれ有し、
前記透過領域における液晶層の厚さが、前記反射領域における液晶層の厚さとは異なる液晶表示装置であって、
前記複数の画素の階調をそれぞれ指定する映像データを、過去の映像データで指定された階調との変化分に応じた補償値で補償して、補償映像データとして出力する補償回路であって、透過モードであるときの補償値を、反射モードであるときの補償値と異なるように設定された補償回路と、
前記補償映像データに応じた電圧を前記複数の画素にそれぞれ書き込む駆動回路と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記透過領域における液晶層は、前記反射領域における液晶層よりも厚く、
前記補償回路は、前記透過モードまたは前記反射モードのいずれかを指定するモード指定信号を入力し、前記モード指定信号によって前記透過モードが指定されたときの補償値を、反射モードが指定されたときの補償値よりも大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して前記透過モード用の補償値を出力する第1ルックアップテーブルと、
前記二つの入力値に対して前記反射モード用の補償値を出力する第2ルックアップテーブルと、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記第1ルックアップテーブルによる補償値を選択し、前記反射モードが指定されたときには、前記第2ルックアップテーブルによる補償値を選択するセレクターと、
前記セレクターにより選択された補償値を前記現フレームにおける映像データに加算して、前記補償映像データとして出力する演算回路と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力するルックアップテーブルと、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには第1係数を出力し、前記反射モードが指定されたときには第2係数を出力する係数出力部と、
前記ルックアップテーブルによる補償値に前記係数出力部による係数を乗算して、前記補償映像データとして出力する乗算回路と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記補償回路は、
現フレームにおける映像データと前フレームにおける映像データとの二つの入力値に対して補償値を出力する透過用ルックアップテーブルと、
前記透過用ルックアップテーブルによる補償値を前記現フレームにおける映像データに加算する加算回路と、
を備え、
前記モード指定信号によって、前記透過モードが指定されたときには前記加算回路の出力を前記補償映像データとして出力し、前記反射モードが指定されたときには前記現フレームにおける映像データを前記補償映像データとして出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の液晶表示装置を有することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−164622(P2010−164622A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4651(P2009−4651)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】
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