説明

液晶表示装置

【課題】 環境温度の変化に拘らず、部分電極駆動による表示を良好に行うことを可能としたメモリ性液晶を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 第1の透明基板(11a)と、第2の透明基板(11b)と、第1及び第2の透明基板の間に挟持された液晶(10)と、第1又は第2の透明基板上に形成され且つ液晶を駆動するための複数の電極(13a)と、温度センサ(40)と、複数の電極の全てに電圧を印加する全電極駆動による表示及び複数の電極の一部に電圧を印加する部分電極駆動による表示を温度センサの出力に応じて切換える表示制御部(21)と、を有する液晶表示装置(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特にメモリ性液晶を用いた液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶には、複数の光学的な状態を有し、電圧を印加しなくても特定の状態を保持し続ける特性(メモリ特性)を有する液晶(メモリ性液晶)が存在する。したがって、メモリ性液晶を液晶表示装置に用いた場合、電圧を印加しなくても所定の表示を保持し続けるように制御することが可能である。このような特性を利用し、強誘電性液晶等のメモリ性液晶を用いた表示パネルにおいて、表示を変更する必要がある部分の電極のみを駆動し、表示を変更する必要が無い部分の電極の駆動を行わないように制御することが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、メモリ性液晶は、環境温度に応じて複数の相状態を取ることが知られている。例えば、メモリ性液晶では、通常の表示を行うための相状態ではメモリ特性を有しているが、温度が上昇して他の相に転移してしまうと、メモリ特性が消滅してしまう場合がある。
【0004】
【特許文献1】特開平2−131286号公報(第11、12頁、第12図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メモリ性液晶を用いた表示パネルにおいて、表示を変更する必要がある部分の電極のみを駆動している場合、環境温度が上昇し、一旦メモリ性液晶が他の相状態に転移してしまうと、メモリ特性が失われ、電極の駆動を行わない部分の表示が消滅又は乱れてしまい、表示パネル全体の表示内容が不適切なものになってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、環境温度の変化に拘らず、良好な表示を行うことを可能とした液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、環境温度の変化に拘らず、良好な表示を行うことを可能としたメモリ性液晶を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、環境温度の変化に拘らず、部分電極駆動による表示を良好に行うことを可能としたメモリ性液晶を用いた液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る液晶表示装置は、第1の透明基板と、第2の透明基板と、第1及び第2の透明基板の間に挟持された液晶と、第1又は第2の透明基板上に形成され且つ液晶を駆動するための複数の電極と、温度センサと、複数の電極の全てに電圧を印加する全電極駆動による表示及び複数の電極の一部に電圧を印加する部分電極駆動による表示を温度センサの出力に応じて切換える表示制御部と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る液晶表示装置では、部分電極駆動による表示中に、温度センサの出力が、所定の温度以上となり、その後所定の温度未満となったことを示した場合、表示制御部は、部分電極駆動による表示から全電極駆動による表示への切換えを行うことが好ましい。
【0011】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、部分電極駆動による表示中に、温度センサの出力が、所定の温度以上となり、その後所定の温度未満となったことを示した場合、表示制御部は、部分電極駆動による表示から全電極駆動による表示への切換えを行い、一定期間経過後、再度全電極駆動による表示から部分電極駆動による表示への切換えを行うことが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、部分電極駆動による表示中に、温度センサの出力が、所定の温度以上となり、その後所定の温度未満となったことを示した場合、表示制御部は、部分電極駆動による表示から全電極駆動による表示への切換えを行い、全電極駆動によって少なくとも1回以上複数の走査電極の全てに電圧が印加された後、再度全電極駆動による表示から部分電極駆動による表示への切換えを行うことが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、部分電極駆動による表示中に、全電極駆動のための第1の表示データを記憶するための第1の記憶部を更に有することが好ましい。
【0014】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、部分電極駆動による表示中に、部分電極駆動のための第2の表示データを記憶するための第2の記憶部を更に有することが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、表示制御部は、温度センサの出力が所定の温度以上となったことを示した場合、複数の走査電極への電圧の印加を停止することが好ましい。
【0016】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、複数の電極は、走査電極又は信号電極であることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、液晶はメモリ性液晶であることが好ましく、メモリ性液晶は強誘電性液晶又はコレステリック液晶であることが更に好ましい。
【0018】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、所定の温度は、液晶が表示可能な相状態から別の相状態へ転移する転移温度であることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明に係る液晶表示装置では、転移温度はスメクチックC相からスメクチックA相へ転移する転移温度、スメクチックC相からネマチック相へ転移する転移温度、スメクチックC相から等方性相へ転移する転移温度、又コレステリック相から等方性相へ転移する転移温度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、環境温度の変化に拘らず、液晶表示装置、特にメモリ性液晶を用いた液晶表示装置において、部分電極駆動を良好に行うことができ、表示動作を省電力によって行うことが可能となった。
【0021】
また、本発明によれば、液晶表示装置において、液晶の相移転によって生じる表示エラーを回避することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明に係る液晶表示装置100について説明する。
【0023】
最初に、強誘電性液晶を例にして、メモリ性液晶について説明する。メモリ性液晶とは、複数の光学的な状態を有し、電圧を印加しなくても特定の状態を保持し続ける特性を有する液晶を言い、例えば強誘電性液晶やコレステリック液晶が該当する。
【0024】
強誘電性液晶分子は、電界等の外部からの影響に応じ、円錐(液晶コーン)の側面に沿って安定した2ヶ所の位置の何れかの位置を取る。強誘電性液晶を一対の基板間に挟持し、液晶表示装置として用いる際には、強誘電性液晶に印加する電圧の極性に応じて、強誘電性液晶分子が前述した安定した2ヶ所のいずれか一方に位置するように制御する。2ヶ所の安定した位置の一方を第1の強誘電状態、他方を第2の強誘電状態と言う。
【0025】
図1に、強誘電性液晶10を用いた液晶パネル20の構成例を示す。図1において、偏光板15a(偏光軸の方向をa)及び15b(偏光軸の方向をb)をクロスニコルに合わせて配置した。ここで、第2の強誘電状態における強誘電性液晶10の分子の長軸方向を偏光軸aと一致させるように配置した。したがって、第1の強誘電状態の場合の液晶分子の長軸方向は、図1に示されるように、液晶コーンに沿った他の位置となる。
【0026】
図1に示すように、偏光板51a及び51bと強誘電性液晶10を配置し、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第2の強誘電状態とした場合(強誘電性液晶10の分子の長軸方向が偏光板51aの偏光軸aと一致した場合)、光は透過せず、液晶パネル20は黒表示(非透過状態)となる。また、印加電圧の極性を変化させて、強誘電性液晶10を第1の強誘電状態とした場合(強誘電性液晶10の分子の長軸方向が、偏光板15aの偏光軸a及び偏光板15bの偏光軸bの何れとも一致しない場合)、液晶分子の長軸方向が偏光軸に対してある角度を持って傾くため、光が透過し、液晶パネル20は白表示(透過状態)となる。
【0027】
次に、図2を用いて強誘電性液晶10のスイッチング、即ち一方の強誘電状態から他方の強誘電状態への転移について説明する。図2の201に示す様に、強誘電性液晶10に印加される電圧を増加させ、光透過率が増加し始める電圧値をV1、さらに電圧を増加させ、光透過率の増加が飽和する電圧値をV2とする。逆に、強誘電性液晶10に印加される電圧を減少させ、光透過率が減少し始める電圧値をV3,さらに電圧を減少させ、光透過率の減少が飽和する電圧値をV4とする。ここで、光透過率の高い状態が第1の強誘電状態であり、光透過率の低い状態が第2の強誘電状態である。
【0028】
例えば、強誘電性液晶10に、V2以上の電圧値を印加すると、強誘電性液晶は第1の強誘電性状態に転移し、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)、強誘電液晶は第1の誘電性状態を保持する。同様に、強誘電性液晶に、V4以下の電圧値を印加すると、強誘電性液晶は第2の強誘電性状態に転移し、その後電圧を印加せずとも(即ち、0V印加)、強誘電液晶は第2の誘電性状態を保持する。このように、強誘電性液晶は、所定の正の閾値以上又は負の閾値以下の電圧を印加して、所定の強誘電性状態に転移させた後は、電圧を印加せずとも、そのままの状態を保持することとなる。
【0029】
図3に、本発明に係る液晶パネル20の断面図を示す。液晶パネル20は、図3に示されるように、第1の透明ガラス基板11a、第2の透明ガラス基板11b、第1の透明ガラス基板11a上に設けられた走査電極13a、第2の透明ガラス基板11b上に設けられた信号電極13a、走査電極13a上に塗布され且つラビング処理された高分子配向膜14a、信号電極13b上に塗布され且つラビング処理された高分子配向膜14b、シール部材12、第1及び第2の透明ガラス基板11a及び11bの間に挟持されシール部材12によって封入された強誘電性液晶10、第1の透明ガラス基板11aの外側に設けられた第1の偏光板15a、及び第2の透明ガラス基板11bの外側に設けられた第2の偏光板15b等から構成した。
【0030】
前述した様に、第1の偏光板15aの偏光軸aは、第2の誘電状態にある場合の強誘電性液晶10の分子の長軸方向と一致させた。また、第2の偏光板15bの偏光軸bが、偏光軸aと90°方向が異なるように、第2の偏光板15bを配置した。
【0031】
図3には、便宜上5本の走査電極13aを示したが、本実施形態では、透明導電膜パターンにより構成した40本の走査電極13aを液晶パネル20の全体に渡って配置した。また。図3には明記されていないが、本実施形態では、透明導電膜パターンにより構成した50本の信号電極13bを、走査電極13aと直行するように液晶パネル20の全体に渡って配置した。走査電極13aと信号電極13bが交差する各ポイントが、液晶パネル20の各画素(2000画素)となるように構成した。
【0032】
強誘電性液晶10としては、クラリアント社製の「フェリックス015」を用い、第1及び第2の透明ガラス基板11a及び11bの間に約1.7μmの厚さで挟持した。
【0033】
図4に、本実施形態で用いる強誘電性液晶10の温度特性を示す。強誘電性液晶10は、−20℃〜72℃の温度範囲では、スメクチックC相の状態にあり、図2の201として示したヒステリシス特性を示す。また、72℃〜80℃の温度範囲ではスメクチックA相の状態を、80℃〜85℃の温度範囲ではネマチック相の状態を、85℃以上では等方性相の状態を示す。所定の相状態から他の相状態に転移する温度を転移温度と言う。
【0034】
強誘電性液晶10は、72℃以上となると、図2の202のような印加電圧に対して透過光量が正比例するような特性を示し、スメクチックC相の状態で示していたメモリ特性を喪失してしまう。したがって、本実施形態では、強誘電性液晶10が、スメクチックC相の状態にある場合を液晶表示装置の標準利用可能温度としている。なお、一旦72℃以上となっても、その後温度が低下して、スメクチックC相へ復帰すれば(図4の矢印401参照)、強誘電性液晶10は、再度メモリ特性を示すようになる。しかしながら、スメクチックC相へ復帰した場合、スメクチックA相に転移する前に保持していた状態に復帰するとは限らない。
【0035】
図5に、本実施形態における液晶表示装置100の概略ブロック構成図を示す。液晶表示装置100は、液晶パネル20、CPU、ROM及びRAM等から構成される表示制御回路21、駆動電圧波形制御回路22、各走査電極13aに電圧波形を印加するための走査駆動電圧波形発生回路23、各信号電極13bに電圧波形を印加するための信号駆動電圧波形発生回路24、全ての走査電極13aを駆動するモードである全電極駆動モード時の表示データを記憶するための全面書き込み表示データメモリ30、走査電極13aの一部のみを駆動する部分電極駆動モード時の表示データを記憶するための部分書き込み用表示データメモリ31、及び液晶パネル20の近傍に設けられた温度センサ40等から構成される。
【0036】
後述するように、表示制御回路21は、温度センサ40からの出力信号に基づいて、強誘電性液晶10の温度を確認し、スメクチックC相からスメチックA相への転移温度を超えた場合に、表示制御方法を切換えるように制御を行う。
【0037】
図6に、液晶パネル20の各画素に印加さえる駆動電圧波形の一例等を示す。図6(a)は1本の走査電極13aに印加される走査電圧波形の一例を示し、図6(b)は1本の信号電極13bに印加される信号電圧波形の一例を示し、図6(c)は(a)及び(b)の合成電圧波形を示し、図6(d)は合成電圧波形(c)が印加された画素の光透過率の一例を示す。
【0038】
図6には2フレーム分の駆動電圧波形が示されており、図中「ON」は白表示、「OFF」は黒表示を示している。ここでは、1回の表示データに基づく表示を実行するために1つの走査期間を利用している。1フレームはリセット期間(Rs)及び走査期間から成り、1走査期間は選択期間(Se)及び非選択期間(NSe)から成る。
【0039】
リセット期間(Rs)において、強誘電性液晶10は、直前の表示状態に拘らず、前半は白表示(透過状態)となる第1の強誘電状態に、後半は黒表示(非透過状態)となる第2の強誘電状態に、強制的にリセットされる。リセット期間(Rs)において、走査電圧波形(a)は前半では+20Vが、後半では−20Vが印加されている。また、信号電圧波形(b)は所定間隔で+5Vと−5Vの電圧が繰り返し印加されることとした。この結果、強誘電性液晶10の画素には、合成電圧波形(c)に応じた電圧、即ちリセット期間(Rs)の前半に正の閾値V2(図2参照)以上の電圧が、後半に負の閾値V4(図2参照)以下の電圧が印加されて、それぞれの強誘電状態にリセットされることとなる。リセット期間を設けることによって、強誘電性液晶を用いた液晶パネルにおいて、良好な表示を持続することが可能となる。
【0040】
所定画素の表示データがON(白表示)の場合には、選択期間(Se)中に正の閾値V2以上の電圧の合成電圧波形(c)が印加され、強誘電性液晶10は白表示(透過状態)となる第1の強誘電状態に選択される。また、非選択期間(NSe)では、この状態が保持され、白表示が持続する。
【0041】
所定画素の表示データがOFF(黒表示)の場合には、選択期間(Se)中に負の閾値V4以下の電圧の合成電圧波形(c)が印加され、強誘電性液晶10は黒表示(非透過状態)となる第2の強誘電状態に選択される。また、非選択期間(NSe)では、この状態が保持され、黒表示が持続する。
【0042】
図7に、本実施形態における液晶パネル20の表示例を示す。図7(a)は、強誘電性液晶10がスメクチックC相の状態にある、通常の状態での表示例を示している。図中701側が走査電極13a側であり、702が信号電極13b側である。第1の領域711は、上部25本の走査電極及び所定の信号電極によって時刻表示がおこなわれる領域である。第1の領域711は、液晶表示装置100がストップウオッチとして機能する場合には、1/100秒までの表示を行うことが好ましい。同様に、第2の領域712は、下部15本の走査電極及び所定の信号電極によって、AM/PM選択表示、月日表示及び曜日表示等の機能表示がおこなわれる領域である。
【0043】
表示制御回路21は、強誘電性液晶10のメモリ特性を利用して、最初のフレームにおいて、全ての走査電極13aに駆動電圧波形を印加して、例えば図7(a)に示すような第1及び第2の領域の表示を行う。しかしながら、第1の領域711の時刻表示は、頻繁(例えば、1/100秒毎)に書き換える必要があるが、第2の領域712の機能表示は、頻繁に表示を書き換える必要はない(例えば、10分間隔)。したがって、表示制御回路21は、一旦、全ての走査電極13aに上から順次駆動電圧波形を印加して所定の表示(全電極駆動)を行った後は、上部25本の走査電極のみに上から順次駆動電圧波形を印加する部分電極駆動を行い、表示電力を極力小さくするように制御する。なお、本実施形態では、常に全ての信号電極13bに駆動電圧波形が印加されているものとする。また、走査電極に駆動電圧波形を印加する順番は、上から順次印加するだけでなくランダムや所定の規則に従って行っても良い。
【0044】
図7(b)は、部分電極駆動を行っている最中に、強誘電性液晶10の温度が、スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度以上となり、図2の202に示すような特性に変化してしまった結果、黒表示が適切に行えなくなった表示状況を示している。
【0045】
図7(c)は、部分電極駆動を行っている最中に、強誘電性液晶10の温度が、一旦スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度以上となり、その後再度転移温度未満に下降した直後の表示状況を示している。部分電極駆動によって、第1の領域711については所定の時間毎(例えば、1/100秒毎)に駆動電圧波形が印加されるので、第1の領域711の強誘電性液晶10は適切な動作に復帰している。しかしながら、第2の領域712では、部分電極駆動によって、頻繁に書き換えが行われないことから(例えば、10分間隔)、次に書き換えが行われるまでは、適切に動作されない可能性がある。
【0046】
図8に、本実施形態に係わる、表示制御の手順を示したフローチャートを示す。
【0047】
最初に、全電極駆動用のタイマ(例えば、10分)をスタートさせる(ステップ801)。
【0048】
次に、表示制御回路21は、メモリ30に記憶されている全画面用のデータに基づいて、液晶パネル20の40本の全走査電極13aに上から順次駆動電圧波形を印加する全電極駆動を行う(ステップ802)。
【0049】
次に、表示制御回路21は、メモリ31に記憶されている部分画面用のデータ(例えば、時刻表示を行う図7(a)の第1の領域711について表示データ)に基づいて、第1の領域に配置された25本の走査電極13aに上から順次駆動電圧波形を印加する部分電極駆動を行う(ステップ803)。
【0050】
タイマが設定値に達した場合には(ステップ804)、タイマを一旦クリアして(ステップ805)、ステップ801に戻り、全電極駆動を行う。即ち、タイマに設定される時間間隔(例えば、10分間隔)で、全電極駆動が行われる。
【0051】
タイマが設定値に達しない場合には(ステップ804)、表示制御回路21は、温度40からの出力によって、強誘電性液晶10の温度が、スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度(例えば、72℃)以上となったか否かを判断する(ステップ806)。
【0052】
ステップ804で、転移温度未満の場合には、ステップ803へ戻って、部分電極駆動を行う。以下、転移温度未満且つタイマが設定値に達しない限り、表示制御回路21は、メモリ31のデータに基づいて、部分電極駆動を1/100秒間隔で繰り返す。
【0053】
ステップ804で、転移温度以上となった場合には、表示制御回路21は、液晶パネル20の表示を停止する、即ち全ての走査電極13a及び信号電極13bへの駆動波形の印加を停止する(ステップ807)。
【0054】
次に、表示制御回路21は、温度40からの出力によって、強誘電性液晶10の温度が、再度スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度(例えば、72℃)未満となったか否かを判断する(ステップ808)。以後、スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度未満になるまで、所定ステップ間隔で、ステップ808の判断が繰り返される。
【0055】
スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度未満となった場合には、タイマの設定をクリアして、ステップ801に戻り、メモリ30に記憶された全画面表示データに基づいて再度全電極駆動を行う。
【0056】
以上のように、本実施形態では、強誘電性液晶10の温度が、スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度以上となった場合には、表示を停止し、その後スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度未満に降下した場合には、全電極駆動を行った後に、部分電極駆動を再開するように制御した。したがって、一旦スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度以上となった後に、再度転移温度未満に降下した場合にも、適切な表示を継続することが可能となった。
【0057】
上記の実施形態においては、転移温度以上となった場合、表示を停止したが(図8のステップ807参照)、再度転移温度未満に低下するまで、部分電極駆動を継続するように制御することもできる。図9に、その場合の手順を示したフローチャートを示す。図9の手順において図8の手順と異なる点は、転移温度以上となった場合(ステップ906)、表示を停止することなく、引き続き部分電極駆動を繰り返す(ステップ908)点のみである。スメクチックC相からスメクチックA相への転移温度以上となった場合には、いずれにしても適切な表示を行うことが困難となるので、そのままの表示制御を継続することとしたものである。
【0058】
上記の実施形態においては、全電極駆動と部分電極駆動との場合で、選択される走査電極13aの本数を可変(25本又は40本)するように制御したが、走査電極13aの代わりに、選択される信号電極13bの本数を可変するように制御しても良い。さらに、走査電極13aの選択に合わせて、信号電極13bに関しても、同様に全ての信号電極を駆動する場合と、一部分の信号電極のみを駆動する場合とに分けて制御しても良い。これらの制御により、部分電極駆動を行う領域が更に狭まれば、さらに表示電力の省電力化を図ることができる。
【0059】
上記の実施形態では、図4に示されるような温度特性を有する強誘電性液晶10を用いた。しかしながら、他のメモリ性液晶を用いることも可能である。他のメモリ性液晶の例を図10に示す。
【0060】
図10(a)に示すのは、メモリ特性を有する他の強誘電性液晶の温度特性であって、60℃までの温度範囲では、スメクチックC相の状態にあり、図2の201として示した様なヒステリシス特性を示す。また、60℃〜75℃の温度範囲ではスメクチックA相の状態を、75℃以上では等方性相の状態を示す。また、この強誘電性液晶も、強誘電性液晶10と同様に、60℃以上となると、図2の202のような印加電圧に対して透過光量が正比例するような特性を示し、スメクチックC相の状態で示していたメモリ特性を喪失してしまう。したがって、上記の実施形態の強誘電性液晶10の代わりに、この強誘電性液晶を利用する場合には、転移温度を60℃に設定して同様の制御を行えば良い。
【0061】
図10(b)に示すのは、メモリ特性を有する更に他の強誘電性液晶の温度特性であって、75℃までの温度範囲では、スメクチックC相の状態にあり、図2の201として示した様なヒステリシス特性を示す。また、75℃〜82℃の温度範囲ではネマチック相の状態を、82℃以上では等方性相の状態を示す。また、この強誘電性液晶も、強誘電性液晶10と同様に、75℃以上となると、図2の202のような印加電圧に対して透過光量が正比例するような特性を示し、スメクチックC相の状態で示していたメモリ特性を喪失してしまう。したがって、上記の実施形態の強誘電性液晶10の代わりに、この強誘電性液晶を利用する場合には、転移温度を75℃に設定して同様の制御を行えば良い。
【0062】
図10(c)に示すのは、メモリ特性を有する更に他の強誘電性液晶の温度特性であって、80℃までの温度範囲では、スメクチックC相の状態にあり、図2の201として示した様なヒステリシス特性を示す。また、80℃以上では等方性相の状態を示す。また、この強誘電性液晶も、強誘電性液晶10と同様に、80℃以上となると、図2の202のような印加電圧に対して透過光量が正比例するような特性を示し、スメクチックC相の状態で示していたメモリ特性を喪失してしまう。したがって、上記の実施形態の強誘電性液晶10の代わりに、この強誘電性液晶を利用する場合には、転移温度を80℃に設定して同様の制御を行えば良い。
【0063】
図10(d)に示すのは、メモリ特性を有するコレステリック液晶の温度特性であって、100〜90℃までの温度範囲では、コレステリック相の状態にあり、図2の201として示した様なヒステリシス特性を示す。しかしながら、それ以上の温度では等方性相の状態を示し、コレステリック相の状態で示していたメモリ特性を喪失してしまう。したがって、上記の実施形態の強誘電性液晶10の代わりに、コレステリック液晶を利用する場合には、転移温度を100〜90℃に設定して同様の制御を行えば良い。なお、メモリ性液晶の種類によっては、表示可能な相状態が複数ある可能性があるが、その場合には、表示可能な相状態から、表示が不適当な相状態への転移温度を基準に制御を行えば良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係わる液晶パネルの構成例を示す図である。
【図2】本発明に用いられるメモリ性液晶の印加電圧と光透過率との関係を示す図である。
【図3】液晶パネルの断面を示す概念図である。
【図4】本発明に用いられる強誘電性液晶の温度特性を示す図である。
【図5】本発明に係る液晶表示装置のブロック構成図である。
【図6】液晶パネルに印加される駆動電圧波形の一例を示す図である。
【図7】(a)〜(b)は、液晶パネルへ表示される画面の表示例である。
【図8】本発明に係る液晶表示装置の表示制御の手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明に係る液晶表示装置の他の表示制御の手順を示すフローチャートである。
【図10】(a)〜(c)は本発明に用いられる他の強誘電性液晶の温度特性を示し、(d)は本発明に用いられるコレステリック液晶の温度特性を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
10 強誘電性液晶
11a、11b 透明ガラス基板
13a 走査電極
13b 信号電極
20 液晶パネル
21 表示制御回路
23 走査駆動電圧波形発生回路
24 信号駆動電圧波形発生回路
30 全画像データ用メモリ
31 部分画像用メモリ
40 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示装置であって、
第1の透明基板と、
第2の透明基板と、
前記第1及び第2の透明基板の間に挟持された液晶と、
前記第1又は第2の透明基板上に形成され、前記液晶を駆動するための複数の電極と、
温度センサと、
前記複数の電極の全てに電圧を印加する全電極駆動による表示と、前記複数の電極の一部に電圧を印加する部分電極駆動による表示とを、前記温度センサの出力に応じて切換える表示制御部と、
を有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記部分電極駆動による表示中に、前記温度センサの出力が所定の温度以上となり、その後前記所定の温度未満となったことを示した場合、前記表示制御部は、前記部分電極駆動による表示から前記全電極駆動による表示への切換えを行う、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記部分電極駆動による表示中に、前記温度センサの出力が所定の温度以上となり、その後前記所定の温度未満となったことを示した場合、前記表示制御部は、前記部分電極駆動による表示から前記全電極駆動による表示への切換えを行い、
さらに前記表示制御部は、一定期間経過後、再度前記全電極駆動による表示から前記部分電極駆動による表示への切換えを行う、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記部分電極駆動による表示中に、前記温度センサの出力が所定の温度以上となり、その後前記所定の温度未満となったことを示した場合、前記表示制御部は、前記部分電極駆動による表示から前記全電極駆動による表示への切換えを行い、
さらに前記表示制御部は、前記全電極駆動によって、少なくとも1回以上、前記複数の電極の全てに電圧が印加された後、再度前記全電極駆動による表示から前記部分電極駆動による表示への切換えを行う、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記部分電極駆動による表示中に、前記全電極駆動のための第1の表示データを記憶するための第1の記憶部を更に有する、請求項1〜4の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記部分電極駆動による表示中に、前記部分電極駆動のための第2の表示データを記憶するための第2の記憶部を更に有する、請求項1〜5の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記表示制御部は、前記温度センサの出力が所定の温度以上となったことを示した場合、前記複数の電極への電圧の印加を停止する、請求項1〜6の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記複数の電極は、走査電極又は信号電極である請求項1〜7の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記液晶は、メモリ性液晶である、請求項1〜8の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記メモリ性液晶は、強誘電性液晶又はコレステリック液晶である、請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記所定の温度は、前記液晶が表示可能な相状態から別の相状態へ転移する転移温度である、請求項1〜10の何れか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記転移温度は、スメクチックC相からスメクチックA相へ転移する転移温度である、請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記転移温度は、スメクチックC相からネマチック相へ転移する転移温度である、請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記転移温度は、スメクチックC相から等方性相へ転移する転移温度である、請求項11に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記転移温度は、コレステリック相から等方性相へ転移する転移温度である、請求項11に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−23452(P2006−23452A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200484(P2004−200484)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000001960)シチズン時計株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】