説明

液晶表示装置

【課題】複数の不良モードに対する検査パターンを同時に表示することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】表示制御部2は、ゲートドライバ回路3,データドライバ回路4に対して表示制御を行い、ゲートドライバ回路3,データドライバ回路4は、この表示制御にしたがって、一画面上に、市松表示領域21,24、段階階調表示領域22、中間階調表示領域23が同時に表示されるゲート選択信号およびデータ選択信号を、液晶表示パネル1に与える。市松表示領域21ではクロストーク不良を検出でき、段階階調表示領域22では階調不良を検出でき、中間階調表示領域23でフリッカズレを検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の検査パターンを一括して表示する液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、製造工程や駆動制御の設計や液晶表示装置を構成する各素子のバラツキ等により、クロストーク不良、階調不良、フリッカズレ等の各種の不具合が発生する可能性がある。
従来、駆動制御信号、素子、製造工程を改善したり、検査工程でこれらの不具合が発生しているかどうかを検査することにより、これらの不具合がユーザ側で発生しないようにしていた(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【特許文献1】特開2003−156725公報
【特許文献2】特開平10−161610号公報
【特許文献3】特開平05−127617号公報
【特許文献4】特開平05−143018号公報
【特許文献5】特開平04−219478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、各種制御信号、素子、および製造工程の改善を行っても、不具合の発生を完全に無くすことは難しく、やはり、最終的には、検査工程において、不具合の発生を検出することが重要となる。
【0004】
そして、従来の検査方法では、前述の各不良モードに合わせて、それぞれ個別に検査パターンを構成して順次表示していた。例えば、クロストーク不良用検査パターン、階調不良用検査パターン、フリッカズレ用検査パターン等を、順次操作ボタンを押しながら、表示させて検査していた。
【0005】
しかし、この方法では、不良モード毎に表示パターンを切り替えて検査を行うため、検査時間が長くなる。また、検査者の不注意等により操作ボタンの押し忘れや、押しすぎが発生し、所定パターンの検査を忘れてしまう可能性がある。
【0006】
さらには、各検査パターンはROM等に記憶されているが、検査パターンが増加すれば、その分記憶するパターンが多くなり、記憶容量をより多く必要としてしまう。
【0007】
したがって、本発明の目的は、複数の不良モードに対する検査パターンを同時に表示することができる液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ドットマトリクスパターンからなり、複数の輝度階調が表示可能に形成された液晶表示素子と、該液晶表示素子に所定パターンを表示させる表示駆動信号を生成する表示駆動手段と、を備えた液晶表示装置に関する。この発明の表示駆動手段は、ドットマトリクスの全領域を所定数のドット毎に区分して区分表示単位を設定し、
(1)隣り合う区分表示単位で、最高輝度と最低輝度とが繰り返される市松パターンと、
(2)最高輝度が表示される区分表示単位と、該最高輝度の区分表示単位から遠ざかっていくに従い順に輝度が1階調ずつ低くなるように設定された区分表示単位群とから構成される段階階調表示パターンと、
(3)最高輝度と最低輝度との中間値付近の階調でそれぞれ設定され、所定方向に隣り合う区分表示単位同士で輝度が所定階調ずつ異なるように設定された中間階調表示パターンと、
を一画面上の異なる領域に同時に表示する表示駆動信号を生成することを特徴としている。
【0009】
この構成では、一画面上に、(1)市松パターン、(2)段階階調表示パターン、(3)中間階調表示パターンが同時に表示される。
【0010】
(1)市松パターンは最高輝度の区分表示単位と最低輝度の区分表示単位とが繰り返されるため、クロストークが発生すると、最高輝度の区分表示単位の表示輝度が低下する。
(2)段階階調表示パターンは、最高輝度から一階調ずつ輝度が低下する構成となっているので、輝度設定(階調設定)を行うデータの下位ビットを発生する回路がショートしていれば、階調表示されず、全て同じ最高輝度となって表示される。
【0011】
(3)中間階調表示パターンは、輝度階調の中間値付近の階調で表示される区分表示単位が密集するので、フリッカが発生すると顕著に画面に現れる。
【0012】
これにより、一画面で、クロストーク不良、階調不良、フリッカズレが観測可能となる。
【0013】
また、この発明は、
(1)市松パターンをドットマトリクスからなる表示画面の第一角部から行方向および列方向に延びるパターンで表示し、
(2)段階階調表示パターンを、第一角部に対向する第二角部を最高輝度の区分表示単位として、行方向および列方向に延びるパターンで表示し、
(3)中間階調表示パターンを、表示画面の略中央部の領域に表示する
ことを特徴としている。
【0014】
この構成では、市松パターンと段階階調表示パターンとが表示画面の外枠を構成し、この外枠に囲まれる中央部に中間階調表示パターンが表示される。これにより、どの表示位置でも検知可能なクロストーク不良と階調不良とを外枠で検知でき、フリッカズレをフリッカの分かりやすい中央部で検知することができる。
【0015】
また、この発明は、市松パターンが、第一角部から中央部にかけて拡がるパターンからなり、市松パターンの最低輝度ではない区分表示単位が、第一角部から中央部に向けて、徐々に輝度が低下するように設定することを特徴としている。
【0016】
この構成では、市松パターンを2次元平面で表現し、輝度変化を付けることでよりクロストークの発生を検出しやすくなる。
【0017】
また、この発明は、表示パターンの表示操作を受け付ける操作入力手段を備えたことを特徴としている。
【0018】
この構成では、他の表示モードとは別に、操作入力手段による一操作で、前述の3種の不良モードを検出することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、一種の検査パターンで、クロストーク不良、階調不良、フリッカズレを同時に検査することができるので、検査工程の短縮および所定パターンの検査し忘れを防止することができる。
【0020】
また、各不良モードを個別の表示パターンで表示するよりも、検査パターンのデータ容量が小さくなり、内蔵パターンの容量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態に係る液晶表示装置について図を参照して説明する。
図1は、本実施形態の液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
液晶表示装置は、液晶表示パネル1、表示制御部2、ゲートドライバ回路3、データドライバ回路4、操作部5を備える。
【0022】
液晶表示パネル1は、二枚のガラス基板が所定間隔で配置され、これら二枚のガラス基板間に液晶が封入された構造からなる。二枚のガラス基板における一方のガラス基板には、液晶注入側(内面側)に、ゲート電極、カラーフィルタ、ブラックマスクが形成され、他方のガラス基板には、各画素に対応する画素電極および当該画素電極毎のTFT素子が形成されている。また、液晶表示パネル1の各ガラス基板の外面には、それぞれ偏光板が配置されており、液晶のツイスト状態の変化により、液晶表示パネル1で光を通過させる状態と、光を遮断する状態とを選択できるように、それぞれの偏光板の偏向方向が設定されている。
【0023】
ゲートドライバ回路3は、液晶表示パネル1の各行を順に選択する選択信号を発生する回路であり、データドライバ回路4は、液晶表示パネル1の所定列のデータ列信号を発生する回路である。そして、ゲートドライバ回路3から液晶表示パネル1のゲート電極にゲート選択信号(走査信号)を印加し、データドライバ回路4から液晶表示パネル1の各TFTに選択信号を印加することで、これらの選択信号の電位差から、対応する画素の液晶のツイスト状態が変化して、光の透過・遮断状態が選択される。
【0024】
このような構成により、液晶表示パネル1は、行方向および列方向にそれぞれ所定数の画素が配列された2次元配列画素からなる平面表示体として機能する。
【0025】
表示制御部2は、例えば、図示しないデータ入力部から受けた画像に基づいて、ゲート選択信号およびデータ選択信号の制御信号を生成し、ゲートドライバ回路3,データドライバ回路4に与える。
【0026】
操作部5は、各種操作子を備え、ユーザからの操作入力を受け付けて、表示制御部2に与える。
【0027】
図2は液晶表示パネル1の一角を拡大した平面図である。
【0028】
液晶表示パネル1は、前述のように最小の表示単位としての画素10が行列配置されて成り、各画素10はそれぞれ赤色、青色、緑色のサブ画素から構成される。そして、検査パターンの表示時には、前記ゲート選択信号とデータ選択信号とを組み合わせて、3×3で9画素の領域を区分表示単位100として、当該区分表示単位100内の全ての画素10で同じ輝度、色調で点灯するように制御される。
【0029】
このような構成の液晶表示装置において、操作部5から検査開始の操作入力が行われると、表示制御部2はこれを受け付けて、図3に示すような表示パターンが実行されるように、ゲートドライバ回路3,データドライバ回路4を制御する。
【0030】
図3は検査パターンを模式化した図であり、各区分表示単位100の領域内に記載された数値は、輝度階調値を示す。ここで、輝度階調値は、8ビット、256階調で設定され、最低輝度の階調値を「0」とし、最高輝度の階調値を「255」と設定する。
【0031】
図3に示すように、本発明の特徴である検査パターンは、市松表示領域21,24、段階階調表示領域22、中間階調表示領域23の4つの領域からなる。
【0032】
液晶表示パターンは、前述の区分表示単位100を基準単位として階調が設定されており、以下では、説明の便宜上、この区分表示単位100を行列の基準セルとして説明する。例えば、正面視して左上を基準として、下方向に移動するに従い行番号がR101からR117となり、右方向に移動するに従い列番号がQ101からQ117となる。
【0033】
市松表示領域21は、R101行で全ての列(Q101列〜Q117列)の区分表示単位100と、Q101列で全ての行(R101行〜R117行)の区分表示単位からなり、最も左上の(R101,Q101)の階調を最低輝度に相当する「0」とし、行方向および列方向の双方に、順次最高輝度に相当する階調「225」と、最低輝度に相当する階調「0」とが順に繰り替えるパターンで構成される。
【0034】
段階階調表示領域22は、R117行でQ102列〜Q117列の区分表示単位100と、Q117列でR102行〜R117行の区分表示単位からなり、最も右下の(R117,Q117)の階調を最高輝度に相当する「255」とし、行方向および列方向の双方に、順次1階調ずつ階調が低下するパターンで構成される。すなわち、Q117列において、R102行からR117行へ順に、階調が「240」から「255」へ変化する。また、R117行において、Q102列からQ117列へ順に、階調が「240」から「255」へ変化する。
【0035】
そして、これら市松表示領域21と段階階調表示領域22とにより、画面の上端と左端が市松で、下端と右端が高輝度で1階調ずつ変化する枠が形成される。
【0036】
中間階調表示領域23は、表示画面の枠の内側で、中央部から右下方向の略三角形の領域が割り当てられており、表示画面の略中央に位置する(R109,Q110),(R110,Q109)の区分表示単位100で、全体の略中間階調となる「143」が設定され、(R110,Q110)の区分表示単位100で、「144」が設定されている。また、この中間階調表示領域23では、行番号と列番号とがともに1つ増える毎(右下に向かうほど)に、16階調増加する(高輝度化する)パターンが設定され、行番号と列番号とが一致する区分表示単位100を基準として、行方向および列方向に隣り合う区分表示単位100が順に1階調ずつ低下するパターンが設定されている。
【0037】
市松表示領域24は、市松表示領域21から表示画面の中央に向けて、市松が連続するパターンで設定されている。また、市松表示領域24は、行番号と列番号とがともに1つ増える毎(右下に向かうほど)に、低輝度の区分表示単位100の階調が16階調ずつ増加する(高輝度化する)パターンで設定されている。
【0038】
これらの各領域は、それぞれに異なる不良の検出に用いられる。
(1)市松表示領域21,24は高輝度の区分表示単位100と低輝度の区分表示単位100とが繰り返される表示パターンであるので、高輝度の区分表示単位100が、隣り合う低輝度の区分表示単位100の信号に影響され易く、クロストークが発生しやすいパターンとなる。したがって、この市松表示領域21,24によりクロストークを検出することができる。
【0039】
(2)段階階調表示領域22は、中間階調表示領域23、市松表示領域24のところで説明したように、右下方向に向けて16階調ずつ輝度が変化することを鑑み、順に1階調ずつ変化して、全体で16階調が変化するパターンとなっている。この16階調は、ビットデータ列で表すところの、下位4ビットを表すものであり、前述の16階調毎に階調を変化させる場合には、これら下位4ビットのショート等による表示パターンへの影響を検出することができない。このため、段階階調表示領域22で、下位4ビットに対応する階調の変化を表示することで、階調不良を検出することができる。
【0040】
(3)中間階調表示領域23は、特に画面の中心部付近で、行方向および列方向に1階調ずつ変化し、且つ全階調の略中間階調でそれぞれ区分表示単位100の輝度が設定されるパターンとなっている。このように、中間階調を中央部右下方向に集中させることで、フリッカによる画面のちらつきがこの領域で顕著化する。したがって、この中間階調表示領域23でフリッカズレを検出することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態に示す検査パターンが液晶パネルへ表示されることで、クロストーク不良、階調不良、フリッカズレを一括して検出することができる。
【0042】
なお、前述の説明で示した画素数、階調数、表示パターンは一例であり、画素数、階調数は製品仕様に応じて適宜設定すればよい。また、表示パターンは、市松表示パターン、段階階調表示パターン、中間階調表示パターンを同時に出力することができれば、表示パターンも適宜設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の液晶表示装置の主要部の構成を示すブロック図である。
【図2】液晶表示パネル1の一角を拡大した平面図である。
【図3】本発明の検査パターンを模式化した図である。
【符号の説明】
【0044】
1−LCD、10−画素、100−区分表示単位、2−表示制御部、3−ゲートドライバ回路、4−データドライバ回路4、5−操作部、
21,24−市松表示領域、22−段階階調表示領域、23−中間階調表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドットマトリクスパターンからなり、複数の輝度階調が表示可能に形成された液晶表示素子と、
該液晶表示素子に所定パターンを表示させる表示駆動信号を生成する表示駆動手段と、を備えた液晶表示装置において、
前記表示パターンの表示操作を受け付ける操作入力手段を備え、
前記表示駆動手段は、
前記操作入力手段が検査パターン表示操作入力を受け付けると、
前記ドットマトリクスの全領域を所定数のドット毎に区分して区分表示単位を設定し、
隣り合う区分表示単位で、最高輝度と最低輝度とが繰り返され、前記ドットマトリクスからなる表示画面の第一角部から行方向および列方向に延びるパターンで表示され、さらに、前記第一角部から前記中央部にかけて拡がるパターンからなり、前記市松パターンの最低輝度ではない区分表示単位が前記第一角部から前記中央部に向けて、徐々に輝度が低下するように設定される市松パターンと、
最高輝度が表示される区分表示単位と、該最高輝度の区分表示単位から遠ざかっていくに従い順に輝度が1階調ずつ低くなるように設定された区分表示単位群とから構成され、前記第一角部に対向する第二角部を最高輝度の区分表示単位として、行方向および列方向に延びるパターンで表示される段階階調表示パターンと、
前記最高輝度と前記最低輝度との中間値付近の階調でそれぞれ設定され、所定方向に隣り合う区分表示単位同士で輝度が1階調ずつ異なるように設定され、前記表示画面の略中央部の領域に表示される中間階調表示パターンと、
を一画面上の異なる領域に同時に表示する表示駆動信号を生成する、液晶表示装置。
【請求項2】
ドットマトリクスパターンからなり、複数の輝度階調が表示可能に形成された液晶表示素子と、
該液晶表示素子に所定パターンを表示させる表示駆動信号を生成する表示駆動手段と、を備えた液晶表示装置において、
前記表示駆動手段は、
前記ドットマトリクスの全領域を所定数のドット毎に区分して区分表示単位を設定し、
隣り合う区分表示単位で、最高輝度と最低輝度とが繰り返される市松パターンと、
最高輝度が表示される区分表示単位と、該最高輝度の区分表示単位から遠ざかっていくに従い順に輝度が1階調ずつ低くなるように設定された区分表示単位群とから構成される段階階調表示パターンと、
前記最高輝度と前記最低輝度との中間値付近の階調でそれぞれ設定され、所定方向に隣り合う区分表示単位同士で輝度が1階調ずつ異なるように設定された中間階調表示パターンと、
を一画面上の異なる領域に同時に表示する表示駆動信号を生成する、液晶表示装置。
【請求項3】
前記市松パターンは、前記ドットマトリクスからなる表示画面の第一角部から行方向および列方向に延びるパターンで表示され、
前記段階階調表示パターンは、前記第一角部に対向する第二角部を最高輝度の区分表示単位として、行方向および列方向に延びるパターンで表示され
前記中間階調表示パターンは、前記表示画面の略中央部の領域に表示される請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記市松パターンは、前記第一角部から前記中央部にかけて拡がるパターンからなり、前記市松パターンの最低輝度ではない区分表示単位は、前記第一角部から前記中央部に向けて、徐々に輝度が低下するように設定される請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記表示パターンの表示操作を受け付ける操作入力手段を備えた請求項2〜4のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−310307(P2007−310307A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141786(P2006−141786)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】