説明

液晶表示装置

【課題】出力配線に生じる抵抗差を抑えるための金属膜によるギャップ差を無くし、色ムラが発生しない高表示品位の液晶表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る液晶表示装置は、複数の一方電極を含んでなる一方部材と、複数の他方電極を含んでなる他方部材と、一方部材と他方部材との間に周設されるシール部と、シール部により囲まれた領域外に位置する駆動用接続端子20と、を備えている。この液晶表示装置は、表示領域5に位置する他方電極と駆動用接続端子20とを、シール部が周設される領域を介して電気的に接続し、表示領域側から駆動用接続端子20側にかけて集合する部位を有する配線パターン22と、シール部により囲まれた領域外においてのみ、配線パターン22に積層形成される金属膜23と、を更に備えている。金属膜23は、配線パターン22の配線抵抗の大きいものほど大きく形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はSTNなどの単純マトリックス型の液晶表示装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
STN型のカラー液晶表示装置によれば、ガラス基板上に透明電極および出力配線等をITOに形成しているが、透明電極から駆動素子接続用端子までを通電させる出力配線は、近年の実装高密度化に伴って、実装スペースが狭くなり、配線長、配線幅という点、その配線の条件が不利になっている。
【0003】
また、ITO材を用いると、抵抗値が高くなり、出力配線による抵抗差が生じるが、かかる課題に対し、透明電極と金属膜とを積層する技術が提示されている(特許文献1参照)。
【0004】
この技術を図7、図8および図9によって説明する。
【0005】
図7は液晶表示装置1の平面図、図8は液晶表示装置1の断面図、図9は図7中のA部の拡大図である。
【0006】
液晶表示装置1は二枚のガラス基板2,3を貼り合わせた構造であって、双方の間に液晶を封入するためのシール部4を方形状に周設させ、その内部に方形状の表示領域5をなし、そして、ガラス基板2上の表示領域5にて設けた透明電極6、7はシール部4を通過し、液晶駆動素子接続端子8,9まで延ばすことで、延在電極パターン10、11を形成し、また、シール部4には、たとえばガラスビーズもしくはガラスビーズに樹脂をコートしたものをスペーサ12として含有させている。
【0007】
このような構造において、前記延在電極パターン10、11上に同じ形状の金属(たとえばAl金属:厚み1μm)パターン13を形成することで低抵抗の配線にすることで、抵抗差が原因による表示ムラを解消している。
【特許文献1】特開平5−241139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、金属パターン13を液晶封入しているシール部4内に配設すると、金属パターン(たとえばアルミニウム膜でシート抵抗0.4Ω/□の抵抗が必要な場合)は、膜厚が約1.0μmにもなる。これでは、液晶を封入しているシール部4内の金属パターン13により、図8に示すように表示部の透明電極とのギャプ差が生じ、その結果、表示ムラが発生していた。
【0009】
したがって、本発明は上記事情に鑑らみて案出されたものであり、その目的は出力配線に生じる抵抗差を抑えるための金属膜によるギャップ差を無くし、色ムラが発生しない高表示品位の液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面に係る液晶表示装置は、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の一方電極を含んでなる一方部材と、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の他方電極を含んでなる他方部材と、前記一方部材の基板と前記他方部材の基板との間に液晶を封入するための空間を形成するように周設されるシール部と、前記シール部により囲まれた領域外に位置する駆動用接続端子と、を備え、前記シール部により囲まれた領域に表示領域が構成されるものであって、前記表示領域に位置する前記一方電極および前記他方電極の少なくとも一方と前記駆動用接続端子とを、前記シール部が周設される領域を介して電気的に接続し、前記表示領域側から前記駆動用接続端子側にかけて集合する部位を有する配線パターンと、前記シール部により囲まれた領域外においてのみ、前記配線パターンに積層形成される金属膜と、を更に備え、前記金属膜は、前記配線パターンの配線抵抗の大きいものほど大きく形成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明の第2の側面に係る液晶表示装置において基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の一方電極を含んでなる一方部材と、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の他方電極を含んでなる他方部材と、前記一方部材の基板と前記他方部材の基板との間に液晶を封入するための空間を形成するように周設されるシール部と、前記シール部により囲まれた領域外に位置する駆動用接続端子と、を備え、前記シール部により囲まれた領域に表示領域が構成されるものであって、前記表示領域に位置する前記一方電極および前記他方電極の少なくとも一方と前記駆動用接続端子とを、前記シール部が周設される領域を介して電気的に接続し、前記表示領域側から前記駆動用接続端子側にかけて集合する部位を有する配線パターンと、前記シール部により囲まれた領域外においてのみ、前記配線パターンに積層形成される金属膜と、を更に備え、前記金属膜は、前記配線パターンの長いものほど大きく形成されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の第1および第2の側面に係る液晶表示装置において前記金属膜は、前記配線パターンのうち最短のもの以外に形成されているのが好ましい。
【0013】
本発明の第1および第2の側面に係る液晶表示装置において前記金属膜は積層膜であるのが好ましい。
【0014】
本発明の第1および第2の側面に係る液晶表示装置において、前記配線パターンのうちの最小抵抗値に対する最大抵抗値の比が2.0以上であり、且つ、前記配線パターンの最小抵抗値が1000Ω以上であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上のとおり、本発明の液晶表示装置によれば、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の一方電極を含んでなる一方部材と基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の他方電極を含んでなる他方部材とを、双方の電極を直交させて方形状の表示部と成すように、シール部より囲まれた液晶層を介して貼り合わせるとともに、一方電極および/または他方電極を、シール部を通して表示部外に延在し、駆動用接続端子に通電すべく、この駆動用接続端子に向けて集合されるような配線パターンを形成した表示において、一方電極間または各他方電極間にて、それぞれ配線抵抗差を減少させるべく、配線パターンのシール部外の領域のみに対し、金属膜を積層したことで、色ムラが発生しない高表示品位の液晶表示装置が提供できた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を図1〜図6により詳述する。
【0017】
図1は液晶表示装置14の平面図、図2は図1の液晶表示装置14においてa−a線による断面図、図3および図4は図1の液晶表示装置14においてB部の拡大図、図5は図1の液晶表示装置14においてC部の拡大図、図6は図5に示す部分の断面図である。
【0018】
ガラス基板15の上にストライプ状に配列した透明導電材(ITOなど)からなる複数の一方電極17を形成し、この一方電極17上にポリイミド系樹脂の配向膜を被覆し、これによって前記一方部材とする。
【0019】
前記他方部材については、ガラス基板16の上にストライプ状に配列した透明導電材(ITOなど)からなる複数の他方電極18を形成し、この他方電極18上にポリイミド系樹脂の配向膜を被覆している。
【0020】
そして、一方部材と他方部材とを、一方電極17と他方電極18を直交させて方形状の表示領域5と成すように対向配置する。
【0021】
また、ガラス基板15とガラス基板16とは、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系などの熱硬化樹脂または紫外線硬化樹脂からなり、さらにガラスビーズましくはガラスビーズに樹脂をコートしたもの、ガラスファイバ等のスペーサを含むシール剤を周設してなる方形状のシール部4を介して固定される。
【0022】
このようにシール部4によって囲まれた空間を設け、シール部4を加熱し、硬化させる。
【0023】
そして、ガラス基板15上の一方電極17やガラス基板16上の他方電極18は、表示領域5よりシール部4を介して液晶駆動素子用接続端子19,20に接続されるよう、延在される。このようにして延在電極パターン21,22を形成する。
【0024】
また、ガラス基板15とガラス基板16との間の表示領域5には樹脂球状体から成る非導電性のスペーサ12が多く分散され、これによって両基板間隔を一定にして、その内部に液晶が封入されている。
【0025】
図1に示す液晶表示装置14においては、たとえば、5.7インチ、ドットフォーマット320×240、COF(Chip On Film)実装方式もしくはTAB(Tape Automated Bonding)実装方式のカラー型の液晶表示であり、一方電極17側は240出力×1箇所、他方電極18側は320×3に分割され、それぞれ表示領域5より一方電極17から液晶駆動素子用接続用端子19までを延在電極パターン21とし、他方電極18から液晶駆動素子用接続端子20までを延在電極パターン22として接続している。
【0026】
また、カラー表示用に一方部材もしくは他方部材にカラーフィルタを配設している。
【0027】
そして、本発明によれば、駆動用接続端子に通電すべく、これら液晶駆動素子用接続用端子19、20に向けて集合されるような配線パターンにて、延在電極パターン21と延在電極パターン22とを形成している。さらには各一方電極17の間にて、配線抵抗差を減少させるべく、延在電極パターン21のシール部4外の領域のみに対し、金属膜23(たとえば、厚み1μmのAl金属膜)を積層したことを特徴とする。
【0028】
同様に、各他方電極18の間にて、配線抵抗差を減少させるべく、延在電極パターン22のシール部4外の領域のみに対し、金属膜24(たとえば、厚み1μmのAl金属膜)を積層したことを特徴とする。
【0029】
そして、これら金属膜23によって、延在電極パターン21と延在電極パターン22の各々に対し、その配線パターンに伴う抵抗差を解消する。配線抵抗が大きい場合には、その金属膜を大きく形成し、配線抵抗が小さく場合には、その金属膜を小さく形成すればよい。
【0030】
とくに金属膜を形成しない場合の抵抗値の比(最大抵抗値/最小抵抗値)が2.0以上のとき、かつ、その抵抗値の絶対値(ここでは最小値)が1000Ω以上のときに金属膜の形成の範囲を上述したように形成するとさらに顕著な効果が得られる。
【0031】
本発明者が繰り返し行なった実験によれば、画面のサイズや、デューティーにより異なるが、この条件下においての抵抗値が問題となる表示のムラは発生したことが無いことを確認した。
【0032】
以下、3とおりの調整を図3〜図5により説明する。
【0033】
まず、図3に示す調整によれば、他方電極18側の要部を示すが、延在電極パターン22が、表示領域5よりシール部4を介し、液晶駆動用素子接続端子20まで設けた場合である。そして、延在電極パターン22上に金属膜23を形成するが、その範囲は同図3に示すように、シール部4より外で、最長パターン25に最も広く形成され、最短パターン26は形成されないように、金属膜23の範囲を調整している。
【0034】
つぎに図4に示す調整によれば、延在電極パターン21が、表示領域5部からではなく、シール部4より外から引き回された場合であり、このような構成においては、金属膜23を全面に形成すればよい。
【0035】
図5は一方電極17側の配線であり、表示領域5よりシール部4までガラス基板15上に電極延在パターン21aが形成されており、シール部4に混入させた導電性粒子27を介し、ガラス基板16上に形成された電極延在パターン21bに接続され、さらに液晶駆動用素子接続端子19まで延在形成し、前記電極延在パターン22b上には金属膜23が最長パターン28で最も広く形成され、最長パターン29では形成されないように金属膜23の範囲を調整している。
【0036】
かくして、延在電極パターン22の最長パターン25と最短パターン26、および延在電極パターン21(a,b)の最長パターン28と最短パターン29における、それぞれの配線抵抗の差が最小限に抑えられるようになった。
【0037】
たとえば、図3と図5に示す配線パターン構造によれば、表1に示すような配線抵抗値が得られた。
【表1】

【0038】
また、表2にて、本発明のごとき金属膜を被着しない延在電極パターンを形成し、その他の構成をまったく同じにした場合であり、比較例として示す。
【表2】

【0039】
表1と表2に示す結果から明らかなとおり、本発明の液晶表示装置によれば、配線抵抗の差を小さくすることができた。さらに本発明では、シール部4、およびシール部4より表示領域5までの間で、金属膜を形成しないことで、シール部4付近の基板間ギャップを均一にすることができた。
【0040】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更や改良等は差し支えない。
【0041】
たとえば、本発明によれば、COF実装(もしくはTAB実装)を例に挙げているが、図10に示すようにCOG(Chip On Glass)や他の実装方式の液晶表示装置に用いてもよい。
【0042】
あるいは、金属膜の材質の材質をCr(クロム)や、Mo(モリブデン)等の金属や、積層膜、例えばAl/Cr、Al/Mo等にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の液晶表示装置の平面図である。
【図2】図1の液晶表示装置におけるa−a線による断面図である。
【図3】図1の液晶表示装置におけるB部の拡大図である。
【図4】図1の液晶表示装置におけるB部の拡大図である。
【図5】図1の液晶表示装置におけるC部の拡大図である。
【図6】図5に示す液晶表示装置の要部断面図である。
【図7】従来の液晶表示装置の平面図である。
【図8】従来の液晶表示装置の断面図である。
【図9】図7中のA部の拡大図である。
【図10】本発明の他の液晶表示装置の要部平面図である。
【符号の説明】
【0044】
4・・・シール部
5・・・表示領域
14・・・液晶表示装置
15、16・・・ガラス基板
17・・・一方電極
18・・・他方電極
19,20・・・液晶駆動素子用接続端子
21、22・・・延在電極パターン
23、24・・・金属膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の一方電極を含んでなる一方部材と、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の他方電極を含んでなる他方部材と、前記一方部材の基板と前記他方部材の基板との間に液晶を封入するための空間を形成するように周設されるシール部と、前記シール部により囲まれた領域外に位置する駆動用接続端子と、を備え、前記シール部により囲まれた領域に表示領域が構成される液晶表示装置であって、
前記表示領域に位置する前記一方電極および前記他方電極の少なくとも一方と前記駆動用接続端子とを、前記シール部が周設される領域を介して電気的に接続し、前記表示領域側から前記駆動用接続端子側にかけて集合する部位を有する配線パターンと、
前記シール部により囲まれた領域外においてのみ、前記配線パターンに積層形成される金属膜と、を更に備え、
前記金属膜は、前記配線パターンの配線抵抗の大きいものほど大きく形成されていることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項2】
基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の一方電極を含んでなる一方部材と、基板上にストライプ状に配列した透明導電材からなる複数の他方電極を含んでなる他方部材と、前記一方部材の基板と前記他方部材の基板との間に液晶を封入するための空間を形成するように周設されるシール部と、前記シール部により囲まれた領域外に位置する駆動用接続端子と、を備え、前記シール部により囲まれた領域に表示領域が構成される液晶表示装置であって、
前記表示領域に位置する前記一方電極および前記他方電極の少なくとも一方と前記駆動用接続端子とを、前記シール部が周設される領域を介して電気的に接続し、前記表示領域側から前記駆動用接続端子側にかけて集合する部位を有する配線パターンと、
前記シール部により囲まれた領域外においてのみ、前記配線パターンに積層形成される金属膜と、を更に備え、
前記金属膜は、前記配線パターンの長いものほど大きく形成されていることを特徴とする、液晶表示装置。
【請求項3】
前記金属膜は、前記配線パターンのうち最短のもの以外に形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記金属膜は積層膜である、請求項1から3のいずれかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記配線パターンのうちの最小抵抗値に対する最大抵抗値の比が2.0以上であり、且つ、前記配線パターンの最小抵抗値が1000Ω以上であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−15538(P2008−15538A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197322(P2007−197322)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【分割の表示】特願2002−79399(P2002−79399)の分割
【原出願日】平成14年3月20日(2002.3.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】