説明

液晶表示装置

【課題】パネル温度が変動しても対向電圧を最適値に設定することのできる液晶表示装置を実現する。
【解決手段】データバスラインに絵素の選択素子を介して接続された絵素電極と、絵素電極との間に液晶層が配置された対向電極とを備えたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、パネル温度(T1、T3)を検出する温度検出手段と、温度検出手段によるパネル温度(T1、T3)の検出結果に応じて、データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する電圧レベル中央値設定手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置が備える絵素電極電圧の引き込み現象に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクティブマトリクス型の液晶表示装置においては、図4に示すように、ゲートバスラインGLとソースバスラインSLとの各交差部に対応して絵素PIXが設けられる。絵素PIXをソースバスラインSLと接続するTFT11は、ゲートバスラインGLを介してゲートGに絵素PIXを選択期間とするゲート電圧Vgが印加された場合に導通状態となり、ゲートバスラインGLを介してゲートGに絵素PIXを非選択期間とするゲート電圧Vgが印加された場合に遮断状態となる。TFT11の導通期間には、ソースバスラインSLからTFT11のソースSおよびドレインDを介して絵素にデータ信号が供給され、TFT11の遮断期間には、絵素PIXは前回の導通期間に供給されたデータ信号が書き込まれた状態を保持する。
【0003】
絵素PIXは、液晶容量CLおよび補助容量Ccsを備えている。液晶容量CLは、絵素電極12と対向電圧Vcomに保持された対向電極13との間に形成される容量であり、補助容量Ccsは、絵素電極12と対向電圧Vcomなどの補助容量電圧が印加された電極14との間に形成される容量である。また、絵素PIXには、その他に、絵素電極12とゲートバスラインGLとの間に形成された寄生容量Cgdが存在する。
【0004】
図5に、1本のゲートバスラインGLに対するゲート電圧Vgの波形と、絵素PIXの絵素電極電圧Vpixの波形とを示す。ゲート電圧Vgは、絵素の選択期間t1にハイレベルVghとなり絵素の非選択期間t2にローレベルVglとなるパルスが1フレーム期間Tごとに繰り返される波形を有する。絵素電極電圧Vpixは、選択期間t1にソースバスラインSLから供給されるデータ信号の電圧値に向けて変化し、選択期間t1が終了してTFT11が遮断されると、選択期間t1の終了時点での電圧値を保持しようとする。しかし、絵素PIXには上述した寄生容量Cgdが存在するため、選択期間t1の終了後の絵素電極電圧Vpixは、終了直前よりも、次式で表される電圧ΔVdだけ低下する。
【0005】
【数1】

【0006】
この絵素電極電圧Vpixが電圧ΔVdだけ低下する現象は引き込み現象、また、電圧ΔVdは引き込み電圧と呼ばれる。データ信号が1フレーム期間Tごとに対向電圧Vcomに対する極性を変えて供給される交流駆動の液晶表示装置では、引き込み現象はデータ信号が正極性である期間と負極性である期間との両方で起こる。このような現象は例えば特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2005−292493号公報(2005年10月20日公開)
【特許文献2】特開2003−330413号公報(2003年11月19日公開)
【特許文献3】特開2007−12147号公報(2007年5月17日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように液晶表示装置では引き込み現象が起こるために、交流駆動を行う場合には、データ信号の極性に関わらず絵素電極電圧Vpixが常に減少する側にずれることとなって、絵素電極電圧Vpixの正極性範囲と負極性範囲とが対向電圧Vcomに対して互いに対称な位置とならない。そこで、液晶TVなどの製造工程においては、引き込み現象を考慮して、対向電圧Vcomを絵素電極電圧Vpixの範囲の中央値であるVcom’に一致させる調整を行う。図5に、このような対向電圧Vcom’を破線で示した。
【0008】
しかしながら、パネル温度が変動すると各容量CL・Ccs・Cgdが変動するために、数1で表される引き込み電圧ΔVdも変動する。従って、液晶TVなどのように対向電圧Vcomを調整した後にパネルを装置セットに組み込む場合には、組み込まれた状態でのパネル温度が組み込まれる前の状態から変動しやすいので、対向電圧Vcomは、調整工程を経たにも関わらず、絵素電極電圧Vpixの範囲の中央値からずれてしまう。対向電圧Vcomが中心からずれると、液晶に印加される電圧の実効値が正極性と負極性とで等しくならないため、フリッカや液晶劣化などによる表示品位が悪化する。
【0009】
このように、従来は、パネル温度の変動によって対向電圧Vcomの最適値が変動するという問題があった。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、パネル温度が変動しても対向電圧を最適値に設定することのできる液晶表示装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、データバスラインに絵素の選択素子を介して接続された絵素電極と、前記絵素電極との間に液晶層が配置された対向電極とを備えたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、パネル温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段による前記パネル温度の検出結果に応じて、前記データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する電圧レベル中央値設定手段とを備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の発明によれば、温度検出手段がパネル温度を検出すると、電圧レベル中央値設定手段はパネル温度の検出結果に応じて、データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する。従って、パネル温度が変動して引き込み電圧が変動したとしても、対向電極に印加する電圧を最適値に設定することができる。
【0013】
以上により、パネル温度が変動しても対向電圧を最適値に設定することのできる液晶表示装置を実現することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記電圧レベル中央値設定手段は、前記電圧レベル範囲の中央値を、電圧レベルの上限値と下限値とを定めることで設定することを特徴としている。
【0015】
上記の発明によれば、電圧レベル中央値設定手段は、電圧レベル範囲の中央値を電圧レベルの上限値と下限値とを定めることで設定するので、データ信号の電圧レベル範囲を設定すると同時に中央値も設定することができる。従って、データ信号の電圧範囲設定を容易に行うことができるという効果を奏する。
【0016】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記電圧レベル範囲の中央値に関するデータが、予め定めたパネル温度範囲ごとに対応して記憶されており、前記電圧レベル中央値設定手段は、前記温度検出手段による前記パネル温度の検出結果に対応する前記温度範囲に対応して記憶された前記電圧レベル範囲の中央値に関するデータを選択することにより、前記データ信号の前記電圧レベル範囲の中央値を設定することを特徴としている。
【0017】
上記の発明によれば、電圧レベル中央値設定手段は、予め定めたパネル温度範囲ごとに対応して記憶された電圧レベル範囲の中央値に関するデータを、検出されたパネル温度に応じて選択することにより、データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する。従って、中央値の設定がデータの選択だけで済むので容易であるという効果を奏する。
【0018】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記電圧レベル中央値設定手段は、液晶コントローラ内に設けられていることを特徴としている。
【0019】
上記の発明によれば、電圧レベル中央値設定手段は液晶コントローラ内に設けられているので、電圧レベル範囲の中央値の設定動作を、液晶コントローラ内部の処理と連係させやすいという効果を奏する。また、電圧レベル範囲の中央値の設定機能を液晶コントローラ内のIC内に組み込むことが可能になるという効果を奏する。
【0020】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記対向電極に印加する電圧レベルは固定されていることを特徴としている。
【0021】
上記の発明によれば、電圧レベル中央値設定手段が、電圧レベル範囲の中央値を設定することで対向電極に印加する電圧レベルを最適値に設定するので、対向電極に印加する電圧レベルが固定されている液晶表示装置にとって、対向電極に印加する電圧レベルを最適化しやすいという効果を奏する。
【0022】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、ドット反転駆動方式により駆動されることを特徴としている。
【0023】
上記の発明によれば、ドット反転駆動方式では対向電極に印加する電圧が一定であるので、電圧レベル中央値設定手段で電圧レベル範囲の中央値を設定することにより、対向電極に印加する電圧レベルを最適化しやすいという効果を奏する。
【0024】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、液晶コントローラは供給される表示データに対するデジタルガンマ補正機能を有しており、デジタルガンマ補正処理を行うときに、前記電圧レベル中央値設定手段が前記表示データに対して割り当てる前記データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定することを特徴としている。
【0025】
上記の発明によれば、液晶コントローラが、供給される表示データに対してデジタルガンマ補正処理を行うときに、電圧レベル中央値設定手段が、表示データに割り当てるデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定するので、データの変換処理が一度に行えて効率的であるという効果を奏する。
【0026】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記電圧レベル中央値設定手段は、前記データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を、液晶コントローラに供給される表示データの階調レベルを再設定することで行うことを特徴としている。
【0027】
上記の発明によれば、電圧レベル中央値設定手段は、データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を、液晶コントローラに供給される表示データの階調レベルを再設定することで行うので、データ信号を生成する電源電圧は変えずに、データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を行うことができるという効果を奏する。
【0028】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記温度検出手段は、温度センサーとしてサーミスタまたはサーマルダイオードを備えていることを特徴としている。
【0029】
上記の発明によれば、温度検出手段は温度センサーとしてサーミスタまたはサーマルダイオードを備えているので、容易にパネル温度を検出することができるという効果を奏する。
【0030】
本発明の液晶表示装置は、上記課題を解決するために、前記絵素電極との間で補助容量を形成するための電極を備えていることを特徴としている。
【0031】
上記の発明によれば、絵素電極と、補助容量を形成するための電極との間で補助容量が形成されるが、絵素電極の電圧変動分として、寄生容量による引き込み電圧以外に、補助容量を介した電圧変動分がさらに加わる場合にも、対向電極に印加する電圧をパネル温度に応じて最適化することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0032】
本発明の液晶表示装置は、以上のように、パネル温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段による前記パネル温度の検出結果に応じて、前記データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する電圧レベル中央値設定手段とを備えている。
【0033】
以上により、パネル温度が変動しても対向電圧を最適値に設定することのできる液晶表示装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1ないし図3に基づいて説明すると以下の通りである。
【0035】
図3に、本実施形態に係る液晶表示装置1の構成を示す。
【0036】
液晶表示装置1はアクティブマトリクス型の表示装置であり、液晶パネル2と、ソース基板3と、データ信号線駆動回路としての複数のソースドライバ4…と、走査信号線駆動回路としての複数のゲートドライバ5…と、コントロール基板6と、温度検出部7とを備えている。
【0037】
液晶パネル2は、複数本の走査信号線としてのゲートバスラインGL…と、それらのゲートバスラインGL…のそれぞれと交差する複数本のデータ信号線としてのソースバスラインSL…とを含む。また、液晶パネル2は、ゲートバスラインGL…とソースバスラインSL…との交差点にそれぞれ対応して設けられた複数個の絵素PIX…とを含む。絵素PIXの構成例は、前述の図4に示した通りである。また、ここでは図示しないが、液晶パネル2は、ゲートバスラインGL…と平行に補助容量バスラインを備えており、各絵素行に1本の補助容量バスラインが割り当てられている。図4では、この補助容量バスラインが電極14に接続されていて、対向電圧Vcomと同じ電圧に設定されている状態が示されている。
【0038】
複数の絵素PIX…はマトリクス状に配置されて絵素アレイを構成し、各絵素PIXは、図4示したように、絵素PIXの選択素子としてのTFT11と、液晶容量CLと、補助容量Csとを備えている。液晶容量CLは、絵素電極12と、絵素電極12に対向する対向電極13と、それらの間に配置された液晶層LCとから構成されている。対向電極12には図示しない電源回路から対向電圧Vcomが印加される。補助容量バスラインには電源回路から一般には補助容量電圧が印加される。液晶容量CLと補助容量Csとは絵素容量を構成しているが、絵素容量を構成する他の容量として、絵素電極と周辺配線との間に形成される寄生容量も存在する。
【0039】
ソース基板3はコントロール基板6から入力される表示駆動信号をソースドライバ4…およびゲートドライバ5…に供給する基板であり、液晶パネル2に対して外付けされる。ソースドライバ4…はSOF(System On Film)の形態で実装されており、液晶パネル2とソース基板3との間を接続している。ゲートドライバ5…もSOFの形態で実装されており、コントロール基板6からゲートドライバ5…へ至る配線は、ソース基板3からソースドライバ4…のSOFを介して液晶パネル2上を引き回されることにより形成されている。
【0040】
コントロール基板(液晶コントローラ)6はソース基板3に対してさらに外付けされており、ソースドライバ4…へはソーススタートパルス、ソースクロック、および、表示データを供給し、ゲートドライバ5…へはゲートスタートパルスおよびゲートクロックを供給する。ここで、表示データはデジタルデータであり、ソースドライバ4…はデジタルドライバとなっている。
【0041】
また、コントロール基板6内のASICには、表示データに割り当てるデータ信号の電圧レベルを複数種類の中から選択するシステムが作り込まれている。例えば液晶表示装置1をドット反転駆動する場合には、図1に示すように対向電圧VcomはDC値であり、画素ごとに、かつ、フレームごとにデータ信号の極性を反転させる。ここで、1つの画素はRGBの3つの絵素PIX…により構成されているものとする。引き込み電圧ΔVdが温度により変動することに対しては、対向電圧Vcomを固定したまま、データ信号の電圧レベル範囲の中央値(電圧レベルのpeak to peakの中央値)をシフトさせて対向電圧Vcomが最適値となるように調整する。この中央値のシフト量は、引き込み電圧ΔVdによる変動分を考慮したデータ信号書き込み後の絵素電極12の電圧範囲の中央値が、対向電圧Vcomに等しくなるように設定する。データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定することで対向電圧Vcomを最適値に設定するので、上記ドット反転駆動方式の液晶表示装置のように対向電圧Vcomが固定されている液晶表示装置にとって、対向電圧Vcomの最適化は行いやすい。
【0042】
ASICには、後述する図2に示すようなデータ信号の複数種類の電圧レベル範囲が記憶されており、温度検出部7によるパネル温度の検出結果に応じて特定の電圧レベル範囲が選択される。電圧レベル範囲が決まれば、その中央値が決まる。
【0043】
このように、コントロール基板6は、パネル温度に応じて、記憶された電圧レベル範囲を読み出して当該電圧レベル範囲の中央値を設定する電圧レベル中央値設定手段として機能する。電圧レベル中央値設定手段がコントロール基板6内に設けられているので、電圧レベル範囲の中央値の設定動作を、コントロール基板6内部の処理と連係させやすい。連係の一例を以下に挙げる。
【0044】
ASIC内には例えばデジタルガンマ補正機能を有する回路が含まれており、例えば8ビットの表示データを所定の周辺画素を考慮した誤差拡散等の技術を用いて拡張し、これらの画素に必要な階調データを再割り振りする。このとき、RGBの各絵素PIXの階調データの電圧レベル範囲に、図2の電圧レベル範囲から選択したものを割り当てるようにする。デジタルガンマ補正については例えば特許文献3に記載されている。
【0045】
図2では、電圧レベル範囲の種類として「階調1」〜「階調5」が用意されており、各階調に対してRGBごとに正極性の電圧ピーク値(上限値)に対応する「VH側」の階調レベルと負極性の電圧ピーク値(下限値)に対応する「VL側」の階調レベルとが決められている。例えば「階調1」ではRGBとも、VH側の階調レベル=1、VL側の階調レベル=1であり、「階調3」ではRGBとも、VH側の階調レベル=2、VL側の階調レベル=4である。「階調1」〜「階調5」のそれぞれは、互いに異なるパネル温度範囲に対応している。VH側の階調レベルおよびVL側の階調レベルは電圧レベル範囲を決めると同時にその中央値も決めるので、これらのデータは電圧レベル範囲の中央値に関するデータである。このように電圧レベル範囲の中央値を電圧レベルの上限値と下限値とを定めることで設定すれば、データ信号の電圧レベル範囲の設定を容易に行うことができる。これらのデータはテーブルとして上記ASIC内に格納されていてもよいし、別のIC内に格納されていてもよい。テーブルを用いれば中央値の設定がデータの選択だけで済むので容易である。
【0046】
上記設定を図1で説明すると次のようになる。対向電圧Vcomは固定されているとする。最初のパネル温度T1に対応する「階調1」に設定されていたデータ信号の電圧レベル範囲に対して、対向電圧Vcomは最適値Vcom(T1)に等しく、この状態からパネル温度がT3に変化して対向電圧の「階調1」での最適値がVcom(T3)に変動したとする。温度T3の状態で「階調1」のままでは対向電圧Vcomは最適値Vcom(T3)よりも高くなるので、対向電圧Vcomが最適値となるようにするために、データ信号の電圧レベル範囲をパネル温度T3に対応する「階調3」に設定する。これにより、VH側の電圧ピーク値と対向電圧Vcomとの差が、VL側の電圧ピーク値と対向電圧Vcomとの差よりも大きくなる方向にデータ信号の電圧レベル範囲が変化する、すなわち、電圧レベル範囲の中央値がVH側にシフトする。この結果、対向電圧Vcomは、パネル温度T3における引き込み電圧ΔVdによる変動分を考慮したデータ信号書き込み後の絵素電極12の電圧レベル範囲の中央値に一致する。
【0047】
コントロール基板6が、供給される表示データに対してデジタルガンマ補正処理を行うときに、表示データに割り当てるデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定するようにすると、データの変換処理が一度に行えて効率的である。このようなデジタルガンマ補正処理や、電圧レベル範囲の中央値の設定処理などは、コントロール基板6内に設けられたマイクロコントローラやCPUなどの制御回路により制御される。
【0048】
また、上記例では、コントロール基板6は、データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を、供給される表示データの階調レベルを再設定することで行うので、データ信号を生成する電源電圧は変えずに、データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を行うことができる。
【0049】
温度検出部(温度検出手段)7は、パネル温度を検出して、検出温度に応じた選択制御信号aを出力する。選択制御信号aはコントロール基板6内の上記ASICに入力され、電圧レベル範囲の選択に用いられる。温度検出部7の温度センサーには、サーミスタやサーマルダイオードなどを用いることができる。サーミスタを用いる場合には、パネル温度によってサーミスタの抵抗値が変化することを利用して、サーミスタ自身やサーミスタに接続される回路の所定箇所の電圧降下を検出し、その検出電圧を検出温度として取得すればよい。サーマルダイオードは、ダイオードの電流−電圧特性(静特性)が温度に応じて変化することを利用して自身の電圧降下を温度検出に用いる場合のダイオードを指す。サーマルダイオードを用いる場合には、パネル温度によってサーマルダイオード自身やサーマルダオードに接続される回路の所定箇所の電圧降下を検出し、その検出電圧を検出温度として取得すればよい。また、パネル温度を検出するには、パネルの温度を直接測定するようにしてもよいし、パネル温度に対応した周囲の温度を測定することにより検出してもよい。このように温度検出手段が温度センサーとしてサーミスタまたはサーマルダイオードを備えていれば、容易にパネル温度を検出することができる。
【0050】
また、検出温度から選択制御信号aを生成するには、上記の検出電圧をアナログ電圧のまま、あるいはA/D変換して得たデジタル電圧として用いればよい。デジタル電圧の場合には、量子化の精度を設定することにより、各パネル温度範囲の大きさを任意に設定することが可能である。また、選択制御信号aは、検出温度に基づき、予めテーブルとして作成してメモリに記憶しておいた信号を読み出したものでもよい。
【0051】
このように、本実施形態によれば、温度検出部7がパネル温度を検出すると、コントロール基板6はパネル温度の検出結果に応じて、データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する。従って、パネル温度が変動して引き込み電圧ΔVdが変動したとしても、対向電圧Vcomを最適値に設定することができる。
【0052】
以上により、パネル温度が変動しても対向電圧Vcomを最適値に設定することのできる液晶表示装置を実現することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、引き込み電圧ΔVdによる変動分を考慮したデータ信号書き込み後(絵素PIXの非選択期間)の絵素電極12の電圧レベル範囲の中央値が、対向電圧Vcomに等しくなるように、データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定したが、これに限らず、補助容量電圧を対向電圧Vcom以外の値に設定したり交流的に変化させたりすることにより絵素電極12の電圧レベル範囲がさらにずれるときには、これらのさらなる変動分を考慮したデータ信号書き込み後(絵素PIXの非選択期間)の絵素電極12の電圧レベル範囲の中央値が、対向電圧Vcomに等しくなるように、データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定するようにしてもよい。いずれにしても、対向電圧Vcomを、パネル温度に応じて最適値に設定することが可能である。
【0054】
最後に、電圧レベル範囲の中央値の設定処理を行う部分は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、CPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。ハードウェア処理とソフトウェア処理との混在も可能である。ソフトウェア処理の場合には次のような構成が考えられる。
【0055】
すなわち、電圧レベル範囲の中央値の設定処理を行う部分は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである電圧レベル範囲の中央値の設定処理を行う部分の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記電圧レベル範囲の中央値の設定処理を行う部分に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0056】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0057】
また、電圧レベル範囲の中央値の設定処理を行う部分を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、筐体の中でパネル温度が変動するTV装置などに用いられる液晶表示装置に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態を示すものであり、液晶表示装置が備えるコントロール基板が、表示データにパネル温度に応じたデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定することを説明する図である。
【図2】本発明の実施形態を示すものであり、データ信号の電圧レベル範囲の中央値に関するデータが記述されたテーブルを説明する図である。
【図3】本発明の実施形態を示すものであり、液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図4】従来技術を示すものであり、絵素の等価回路を示す回路図である。
【図5】従来技術を示すものであり、ゲート電圧および絵素電極電圧と対向電圧の調整との関係を示す波形図である。
【符号の説明】
【0061】
1 液晶表示装置
6 コントロール基板(電圧レベル中央値設定手段、液晶コントローラ)
7 温度検出部(温度検出手段)
12 絵素電極
13 対向電極
LC 液晶層
Vcom 対向電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データバスラインに絵素の選択素子を介して接続された絵素電極と、前記絵素電極との間に液晶層が配置された対向電極とを備えたアクティブマトリクス型の液晶表示装置において、
パネル温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段による前記パネル温度の検出結果に応じて、前記データバスラインに出力するデータ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定する電圧レベル中央値設定手段とを備えていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記電圧レベル中央値設定手段は、前記電圧レベル範囲の中央値を、電圧レベルの上限値と下限値とを定めることで設定することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記電圧レベル範囲の中央値に関するデータが、予め定めたパネル温度範囲ごとに対応して記憶されており、
前記電圧レベル中央値設定手段は、前記温度検出手段による前記パネル温度の検出結果に対応する前記温度範囲に対応して記憶された前記電圧レベル範囲の中央値に関するデータを選択することにより、前記データ信号の前記電圧レベル範囲の中央値を設定することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記電圧レベル中央値設定手段は、液晶コントローラ内に設けられていることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記対向電極に印加する電圧レベルは固定されていることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
ドット反転駆動方式により駆動されることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
液晶コントローラは供給される表示データに対するデジタルガンマ補正機能を有しており、デジタルガンマ補正処理を行うときに、前記電圧レベル中央値設定手段が前記表示データに対して割り当てる前記データ信号の電圧レベル範囲の中央値を設定することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
前記電圧レベル中央値設定手段は、前記データ信号の電圧レベル範囲の中央値の設定を、液晶コントローラに供給される表示データの階調レベルを再設定することで行うことを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項9】
前記温度検出手段は、温度センサーとしてサーミスタまたはサーマルダイオードを備えていることを特徴とする請求項1から8までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項10】
前記絵素電極との間で補助容量を形成するための電極を備えていることを特徴とする請求項1から9までのいずれか1項に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−25667(P2009−25667A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190106(P2007−190106)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】