説明

液晶表示装置

【課題】シール材の基板側への接着性の向上を図るとともに、シール材と基板との間に介在される積層された絶縁膜の剥がれを防止し、かつ、該絶縁膜の下層に形成される配線あるいは回路を機械的衝撃から保護し得る液晶表示装置の提供。
【解決手段】第1基板および第2基板の間に画像表示部を囲んで形成され液晶を封止するシール材を備える液晶表示装置であって、少なくとも、前記第1基板の前記シール材の形成領域に、配線あるいは回路と、前記配線あるいは前記回路を被って形成された絶縁膜とを有し、前記絶縁膜は、少なくとも、前記シール材に近い側である表面側に配置される無機絶縁膜と前記無機絶縁膜に当接して前記無機絶縁膜の下層に配置される有機絶縁膜とを有して構成され、前記シール材の形成領域において、前記無機絶縁膜を貫通し前記有機絶縁膜を貫通することのない深さを有する凹陥部が、前記シール材の形成領域の周方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に係り、液晶を挟持する一対の基板が該液晶を封止するシール材によって貼り合わされた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(パネル)は、液晶を挟持して対向配置される一対の基板を外囲器とし、該液晶の広がり方向に複数の画素の集合からなる画像表示部を備え、一対の基板の間に画像表示部を囲むようにして形成されたシール材によって前記液晶が封入された構成となっている。
【0003】
この場合、シール材の各基板側への接着性を良好にすることは、シール材のシール効果を向上させ、信頼性ある液晶表示装置を得ることができる。
【0004】
また、液晶表示装置は、一対の基板のそれぞれの液晶側の面に、画像表示部において形成される絶縁膜等がたとえば複数に積層された状態でシール材の形成領域にまで延在されて形成されているのが通常となっている。
【0005】
このため、たとえば、下記特許文献1、2、3には、基板の液晶側の面に形成された絶縁膜等の構成の工夫によって、シール材の基板側への接着性の向上を図ったものが開示されている。
【0006】
すなわち、特許文献1には、前記絶縁膜等は基板上に順次形成されたゲート絶縁膜と有機絶縁膜の積層体からなり、該有機絶縁膜はシール材の形成領域においてゲート絶縁膜の表面が露出する貫通孔を設けた構成が開示されている。これにより、シール材を有機絶縁膜に形成した貫通孔を通してゲート絶縁膜にも接着させるようにしている。
【0007】
また、特許文献2には、前記絶縁膜等は基板上に形成された樹脂膜からなり、該樹脂膜はシール材の形成領域において基板の表面が露出する貫通孔を設けたものが開示されている。これにより、シール材を樹脂膜に形成した貫通孔を通して基板にも接着させるようにしている。
【0008】
さらに、特許文献3には、基板上に絶縁膜を介して形成される無機配向膜をシール材の形成領域に一部重畳するようにして延在させた構成のものが開示されている。シール材は前記絶縁膜よりも無機配向膜との密着性が高いので、密着性を向上でき、さらに、シール材の形成領域に無機配向膜が形成されていない部分をもたせることによって、無機配向膜の段差を形成し、この段差によって水分の侵入を低減できる効果も奏している。
【特許文献1】特開2007−256415号公報
【特許文献2】特開2007−199341号公報
【特許文献3】特開2007−248743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、液晶表示装置の種類によっては、シール材の近傍における構成が、上記特許文献1、2、3に示したものに限らず、基板の液晶側の面において、シール材の形成領域にまで延在されて形成される絶縁膜が、シール材に近い側である表面側に配置される無機絶縁膜とこの無機絶縁膜に当接して無機絶縁膜の下層に配置される有機絶縁膜とを有して構成されたものがある。
【0010】
そして、このような構成の場合、シール材と無機絶縁膜との接着性はよいが、無機絶縁膜と有機絶縁膜の界面における接着性が充分でなく、シール材の形成領域において、無機絶縁膜と有機絶縁膜との間に剥がれが生じ易いという問題が生じる。
【0011】
また、シール材の形成領域において、前記絶縁膜の下層には、画像表示部に形成された信号線の引き出し配線、あるいは画像表示部の各画素を駆動させる駆動回路などが形成されている場合がある。この場合、前記絶縁膜はこれら配線あるいは回路を機械的衝撃から保護する機能を備えることから、その機能を損なうことのない構成とすることが望ましい。
【0012】
本発明の目的は、シール材の基板側への接着性の向上を図るとともに、シール材と基板との間に介在される積層された絶縁膜の剥がれを防止し、かつ、該絶縁膜の下層に形成される配線あるいは回路を機械的衝撃から保護し得る液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の液晶表示装置は、シール材の形成領域に及んで形成される絶縁膜が、シール材に近い側である表面側に配置される無機絶縁膜とこの無機絶縁膜に当接して無機絶縁膜の下層に配置される有機絶縁膜とを有して構成されるものであって、前記無機絶縁膜を貫通し前記有機絶縁膜を貫通することのない深さを有する凹陥部を前記シール材の形成領域にその周方向に沿って形成するようにしたものである。
【0014】
本発明の構成は、たとえば、以下のようなものとすることができる。
【0015】
(1)本発明の液晶表示装置は、液晶を挟持して対向配置される第1基板と第2基板と、
前記液晶の広がり方向に複数の画素の集合から形成される画像表示部と、
前記第1基板および前記第2基板の間に前記画像表示部を囲んで形成され前記液晶を封止するシール材と、を備える液晶表示装置であって、
少なくとも、前記第1基板の前記シール材の形成領域に、配線あるいは回路と、前記配線あるいは前記回路を被って形成された絶縁膜とを有し、
前記絶縁膜は、少なくとも、前記シール材に近い側である表面側に配置される無機絶縁膜と前記無機絶縁膜に当接して前記無機絶縁膜の下層に配置される有機絶縁膜とを有して構成され、
前記シール材の形成領域において、前記無機絶縁膜を貫通し前記有機絶縁膜を貫通することのない深さを有する凹陥部が、前記シール材の形成領域の周方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0016】
(2)本発明の液晶表示装置は、(1)において、前記凹陥部は前記シール材の周方向に沿って連続して形成されていることを特徴とする。
【0017】
(3)本発明の液晶表示装置は、(2)において、前記凹陥部は前記シール材の幅方向に複数並設されて形成されていることを特徴とする。
【0018】
(4)本発明の液晶表示装置は、(1)において、前記凹陥部は前記シール材の周方向に沿って断続して形成されていることを特徴とする。
【0019】
(5)本発明の液晶表示装置は、(4)において、前記凹陥部は前記シール材の幅方向に複数並設されて形成されていることを特徴とする。
【0020】
(6)本発明の液晶表示装置は、(1)において、前記シール材の周方向の各箇所において前記シール材の幅方向には少なくとも一つの前記凹陥部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
(7)本発明の液晶表示装置は、(1)において、前記凹陥部は前記シール材の形成領域において点状の凹陥部が散在されて形成されていることを特徴とする。
【0022】
なお、上記した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、上記した構成以外の本発明の構成の例は、本願明細書全体の記載または図面から明らかにされる。
【発明の効果】
【0023】
上述した液晶表示装置によれば、シール材の基板側への接着性の向上を図るとともに、シール材と基板との間に介在される積層された絶縁膜の剥がれを防止し、かつ、該絶縁膜の下層に形成される配線あるいは回路を機械的衝撃から保護することができるようになる。
【0024】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。なお、各図および各実施例において、同一または類似の構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0026】
〈実施例1〉
(全体の概略構成)
図2は、本発明の液晶表示装置の実施例1を示す平面図である。図2に示す液晶表示装置はたとえば携帯電話用の液晶表示装置を示している。
【0027】
図2において、たとえばガラスからなる基板SUB1、基板SUB2が対向して配置されている。基板SUB2は、基板SUB1よりも小さな面積で形成され、基板SUB1のたとえば図中下側の辺部を露呈させるように配置されている。基板SUB1の図中下側の辺部には画素駆動用の半導体装置(チップ)SECがフェースダウンされて搭載されている。
【0028】
基板SUB1と基板SUB2の間には液晶LC(図1参照)が挟持されている。この液晶LCは、基板SUB2の周辺に沿った環状のパターンからなり、基板SUB1と基板SUB2との固着を兼ねるシール材SL(たとえば膜厚3〜4μm、幅700μm)によって封止されるようになっている。なお、このシール材SLは、たとえば基板SUB2側の面にたとえばインクジェット方式、ディスペンサ、スクリーン印刷などを用いた塗布方法によって上述したパターンに形成されるようになっている。
【0029】
基板SUB1の液晶側の面であってシール材SLによって囲まれた領域には、図中x方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線GL、図中y方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLが形成されている。画素領域は、隣接する一対のゲート信号線GLと隣接する一対のドレイン信号線DLとで囲まれた領域で構成され、マトリックス状に配置される画素領域の集合からなる領域内に画像表示部ARが構成されるようになっている。また、この実施例で示す液晶表示装置は、たとえばIPS(In Plane Switching)あるいは横電界方式と称され、隣接する一対のゲート信号線GLの間にはコモン信号線CLが形成されている。後述の画素電極(図3にて符号PXで示す)とともに対向電極(図3にて符号CTで示す)は基板SUB1側に形成され、対向電極CTは前記コモン信号線CLに接続されるようになっているからである。尚、対向電極CT自体がコモン信号線CLの役割を兼ねていてもよい。
【0030】
図3は、各画素における等価回路を示す図で、たとえば図2の点線枠P内の回路を示している。画素領域には、ゲート信号線GLからの信号(走査信号)によってオンする薄膜トランジスタTFTと、オンされた薄膜トランジスタTFTを通してドレイン信号線DLからの信号(映像信号)が供給される画素電極PXと、該画素電極PXとの間に電界を発生させる対向電極CTが備えられている。対向電極CTにはコモン信号線CLを通して映像信号に対して基準となる信号(基準信号)が供給されるようになっている。
【0031】
前記各ゲート信号線GLはたとえばその一端部から引き出し配線WG(この明細書において単に配線と称する場合がある)が引き出され前記半導体装置SECの出力電極に接続されている。この実施例の場合、画像表示部ARの上方に形成されるゲート信号線GLは図中右側の端部から、下方に形成されるゲート信号線GLは図中左側の端部から各引き出し配線WGが引き出されるようになっている。しかし、これに限定されることはなく、全て同方向側の端部から引き出されるように構成してもよい。そして、これら引き出し配線WGは、半導体装置SECに接続されるため下辺側のシール材SLの形成領域を交差するようにして形成されているが、その手前において、幾つかの引き出し配線WGは左辺側あるいは右辺側のシール材SLの形成領域に重なり、さらに該形成領域に沿って形成されている。額縁領域を小さくし、画像表示部ARの占める面積をできるだけ大きく構成せんとするためである。前記各ドレイン信号線DLはたとえば図中下端部から引き出し配線WD(この明細書において単に配線と称する場合がある)が引き出され、これら引き出し配線WDは、半導体装置SECに接続されるためシール材SLの形成領域を交差するようにして形成されている。前記各コモン信号線CLはたとえば図中右端部において共通の引き出し配線WC(この明細書において単に配線と称する場合がある)によって引き出され、該引き出し配線WCは半導体装置SECに接続されるためシール材SLの形成領域を交差するようにして形成されている。
【0032】
(画素の構成)
図4(a)、(b)は、基板SUB1の液晶側の面に形成された画素の構成を示す図で、図2に示す点線枠P内における部分の構成を示している。図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のb−b線における断面図である。
【0033】
まず、基板SUB1の液晶側の面に、図中x方向に延在されy方向に並設されるゲート信号線GLが形成されている。基板SUB1の表面には、ゲート信号線GLをも被って絶縁膜GIが形成され、この絶縁膜GIは後述の薄膜トランジスタTFTの形成領域においてゲート絶縁膜として機能するようになっている。
【0034】
絶縁膜GIの表面であってゲート信号線GLの一部に重畳する薄膜トランジスタTFTの形成領域に、たとえばアモルファスSiからなる半導体層ASが島状に形成されている。前記薄膜トランジスタTFTは、前記半導体層ASの表面に、互いに対向配置されたドレイン電極DT、ソース電極STが形成されることにより、ゲート信号線GLの一部をゲート電極とする逆スタガ構造のMIS(Metal Insulator Semiconductor)型トランジスタが構成されるようになる。
【0035】
前記基板SUB1の表面には図中y方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLが形成され、このドレイン信号線DLの一部を前記半導体層ASの表面に延在させることにより、該延在部を薄膜トランジスタTFTのドレイン電極DTとするようになっている。また、ドレイン信号線DLの形成の際に、薄膜トランジスタTFTのソース電極STが形成され、このソース電極STは半導体層ASの形成領域を超えて画素領域に延在するパッド部PDを具備して構成されている。このパッド部PDは後述の画素電極PXと電気的に接続される部分として構成される。
【0036】
前記基板SUB1の表面にはドレイン信号線DL等をも被って保護膜PASが形成されている。この保護膜PASは薄膜トランジスタTFTの液晶との直接の接触を回避するための絶縁膜からなり、たとえば、無機絶縁膜からなる保護膜PAS1(たとえば膜厚300nm)および有機絶縁膜からなる保護膜PAS2(たとえば膜厚2000nm)の積層構造から構成される。保護膜PAS2において有機絶縁膜を用いるのはたとえば保護膜PASの表面を平坦化する効果を奏するためである。
【0037】
保護膜PASの表面であって隣接する一対のゲート信号線GLの間には、該ゲート信号線GLの走行方向に沿って形成されるコモン信号線CLが形成されている。このコモン信号線CLは図中x方向に並設される各画素領域のほぼ全域を被って形成され、各画素領域における対向電極CTを兼備した構成となっている。このコモン信号線CL(対向電極CT)は、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性導電膜から構成されている。
【0038】
基板SUB1の表面には、コモン信号線CL(対向電極CT)をも被って無機絶縁膜からなる層間絶縁膜LI(たとえば膜厚300nm)が形成され、この層間絶縁膜LIの上面には各画素領域に画素電極PXが形成されている。画素電極PXは、たとえば図中y方向に延在されx方向に並設された複数(図ではたとえば3個)の線状の電極からなり、これら各電極は、前記薄膜トランジスタTFT側の端部において互いに接続された接続部JNを備えている。画素電極PXは、たとえばITO(Indium Tin Oxide)からなる透光性導電膜から構成されている。画素電極PXの接続部JNの一部は、層間絶縁膜LIおよび保護膜PASに形成されたスルーホールTHを通して前記ソース電極STのパッド部PDに電気的に接続されるようになっている。また、この場合において、コモン信号線CL(対向電極CT)において、予め、前記スルーホールTHとほぼ同軸で該スルーホールTHよりも充分に径の大きな開口OPが形成され、前記画素電極PXが対向電極CTと電気的にショートしてしまうのを回避させている。
【0039】
また、基板SUB1の表面には、画素電極PXをも被って配向膜ORI1が形成されている。この配向膜ORI1は液晶LCと当接する膜からなり、後述する基板SUB2側に形成された配向膜ORI2とともに、液晶LCの分子の初期配向方向を決定するように機能する。
【0040】
(シール材の近傍の構成)
図1は、液晶表示装置のシール材SLの近傍の構成を示す図で、図2のI−I線における断面図となっている。
【0041】
基板SUB1の液晶側の面には、回路構成層COL、保護膜PAS1、保護膜PAS2、層間絶縁膜LI、配向膜ORI1が順次積層されて形成されている。
【0042】
ここで、基板SUB1の画像表示部ARはマトリックス状に配置された複数の画素によって形成されていることから、その詳細な断面は、図4(b)に示すようになっている。しかし、図1では、上述した層構造によって簡略化して示している。
【0043】
すなわち、画素表示部ARにおいて、回路構成層COLは、図4(b)に示したゲート信号線GL、絶縁膜GI、半導体層AS、ドレイン信号線DL、ドレイン電極DT、ソース電極ST、パッド部PDを備えて構成され、保護膜PAS2と層間絶縁膜LIの間には対向電極CTが、層間絶縁膜LIと配向膜ORI1の間には画素電極PXが配置されている。
【0044】
一方、画像表示部ARの外方であってシール材SLの形成領域を超えて形成される回路構成層COLは、絶縁膜GI、ゲート信号線GLの引き出し配線WGあるいはドレイン信号線DLの引き出し配線WDの何れか(図1では、ゲート信号線GLの引き出し配線WGが形成される領域を示している)の積層体で構成され、その上層に順次形成される保護膜PAS1、保護膜PAS2、層間絶縁膜LIは、画像表示部ARに形成された保護膜PAS1、保護膜PAS2、層間絶縁膜LIが延在されて形成されたものとなっている。
【0045】
このような構成において、シール材SLの形成領域における層間絶縁膜(無機絶縁膜)LIの表面には凹陥部DNTが形成され、この凹陥部DNTは該層間絶縁膜LIの下層の保護膜(有機絶縁膜)PAS2が露出するようにして形成されている。換言すれば、前記凹陥部DNTは、層間絶縁膜LIを貫通し保護膜PAS2を貫通することのない深さを有して形成されている。このようにした理由は、後に詳述するが、有機絶縁膜からなる保護膜PAS2を残存させ(残存された保護膜PAS2の膜厚は500〜1500nm)、回路構成層COL内の引き出し配線WG(あるいは引き出し配線WD)への機械的衝撃に対する保護(クッション機能)を図らんとしているからである。また、この凹陥部DNTは、シール材SLの長手方向に沿ってたとえば連続して形成され、図2の点線枠A'の拡大図Aにも示すように、シール材SLの短手(幅)方向にたとえば2個形成されている。なお、この凹陥部DNTは、2個に限定されることはなく、1個であってもよく、また3個以上であってもよい。
【0046】
層間絶縁膜LI、その下層の保護膜PAS2にまで至って形成される凹陥部DNTはシール材SLの形成領域に形成されていることから、該シール材SLは、凹陥部DNT内に充填され、層間絶縁膜LIの表面のみならず凹陥部DNTの側壁面および底面にまで接触して形成されるようになる。このため、シール材SLは、前記凹陥部DNTによって層間絶縁膜LI、保護膜PAS2との接着面積が増大し、これにより、基板SUB1側への接着強度を増大させることができる。
【0047】
また、シール材SLは、前記凹陥部DNTによって、層間絶縁膜LIのみならず保護膜PAS2との接着がなされるようになる。保護膜PAS2にも形成される凹陥部DNTが該保護膜PAS2を貫通することなく該保護膜PAS2による底部を有することから、シール材SLと保護膜PAS2との接着強度は強固なものとなる。このことは、凹陥部DNTによって層間絶縁膜LIと保護膜PAS2との接着が少なくとも凹陥部DNTの形成領域において強固にでき、該層間絶縁膜LIと保護膜PASとの剥がれを防止することができる。
【0048】
また、本実施例に示したように、凹陥部DNTがシール材SLの長手方向に沿って連続して形成されていることによって、たとえば、図1に対応して描いた図5に示すように、層間絶縁膜LIと保護膜PAS2との間の界面から水分Wが侵入するようなことがあっても、凹陥部DNTに充填されたシール材SLによって侵入が阻止され、画像表示部ARへの影響を未然に防ぐことができる効果を奏する。
【0049】
なお、図1において、基板SUB2の液晶側の面には、ブラックマトリックス(遮光膜)BMが形成されている。ブラックマトリックスBMは、画像表示部ARにおいて、隣接する画素の間を遮光することによってコントラストの向上を図るようになっている。また、ブラックマトリックスBMは、シール材SLの形成領域を超える範囲にまで形成され、液晶表示装置の背面に配置されるバックライト(図示せず)からの光が、前記シール材SLおよびその近傍を透過してしまうことによって発生する光漏れを回避している。そして、ブラックマトリックスBMの表面には、各画素におけるブラックマトリックスBMの開口を塞ぐようにしてカラーフィルタFILが形成されている。このカラーフィルタFILは、隣接する3個の画素において、赤(R)、緑(G)、青(B)の色を呈し、これら3個の画素によってカラー表示用の単位画素を構成するようになっている。ブラックマトリックスBM、カラーフィルタFILはたとえば樹脂からなる平坦化膜OCによって被われ、この平坦化膜OCの画像表示部ARに相当する領域には配向膜ORI2が形成されている。
【0050】
〈実施例2〉
図6は本発明の液晶表示装置の実施例2の構成図で、図2と対応した図となっている。
【0051】
図6において、図2の場合と比較して異なる構成は、画像表示部ARの図中左右側のそれぞれにおいて、走査信号駆動回路V(なお、この明細書においては単に回路と称する場合がある)が形成されていることにある。この走査信号駆動回路Vは、実施例1の場合、半導体装置SEC内に組み込まれたものとなっているが、実施例2の場合は、該半導体層SEC内の回路とは別個の回路として設けられている。
【0052】
この走査信号駆動回路Vは基板SUB1の表面において複数の薄膜トランジスタを含んで形成されている。また、この走査信号駆動回路Vは画像表示部ARの形成の際に同時に並行して形成されることから、その層構造も画像表示部ARの層構造とほぼ同じになっている。
【0053】
そして、走査信号駆動回路Vは、画像表示部ARの占める面積をできるだけ大きくしようとするため、シール材SLの形成領域に一部重複して形成されるようになっている。この場合、走査信号駆動回路Vを被って形成される前記層間絶縁膜LIおよび保護膜PAS2において、図1に示した凹陥部DNTが形成されていても、該凹陥部DNTの形成領域において、保護膜(有機絶縁膜)PAS2の一部が残存されていることから、該有機保護膜PAS2によって機械的衝撃に対する保護がなされた構成となっている。
【0054】
なお、図6において、走査信号駆動回路Vはゲート信号線GLに接続され、該ゲート信号線GLのそれぞれに走査信号を供給するともに、この走査信号駆動回路Vを通して各コモン信号線CLに基準信号を供給する構成となっている。
【0055】
〈実施例3〉
図7は本発明の液晶表示装置の実施例3の構成図で、図2の拡大図Aと対応した図となっている。
【0056】
図7において、該拡大図Aの場合と比較して異なる構成は、層間絶縁膜LIおよびその下層の保護膜PAS2に形成する凹陥部DNTにある。該凹陥部DNTはシール材SLの長手方向に沿って断続的に形成されている。図7の場合、凹陥部DNTはシール材SLの短手方向に2個(この数に限定されることはない)並設されて形成され、いずれもシール材SLの長手方向に沿って断続的に形成されている。
【0057】
このように構成した凹陥部DNTは、実施例1のように連続的に形成されていなくても、層間絶縁膜LIおよび保護膜PAS2は該凹陥部DNTの形成領域において強固に接続され、それらの剥がれを防止できることから、このように構成してもよい。
【0058】
また、この場合、図7に示すように、シール材SLの短手方向に並設される一方の側の凹陥部DNTにおいて、その断続的な配置によってシール材SLの長手方向に凹陥部DNTが形成されていない領域(図中PTで示す)があっても、該領域に相当するシール材SLの短手方向に他方の側の凹陥部DNTが存在するようになっている。
【0059】
このようにした場合、シール材SLの長手方向に断続された凹陥部DNTが形成されていても、複数に並設された他の凹陥部によって、シール材SLの長手方向に沿って観る限り連続して配置されているのと同様の効果を奏する。したがって、層間絶縁膜LIと保護膜PAS2との間の界面から水分が侵入するようなことがあっても、シール材SLの短手方向に並設される複数の凹陥部DNTによって侵入が阻止され、画像表示部ARへの影響を防ぐことができる。
【0060】
このような効果は、シール材SLの短手方向に3個あるいはそれより大きな数で並設された凹陥部であって、それぞれの列における凹陥部が断続して形成されている場合にも適用することができる。いずれの場合でも、前記シール材SLの周方向の各箇所において該シール材SLの幅方向には少なくとも一つの前記凹陥部が形成されるようになっていればよい。
【0061】
〈実施例4〉
図8は本発明の液晶表示装置の実施例4の構成図で、図7と対応した図となっている。
【0062】
図8において、図7の場合と比較して異なる構成は、凹陥部DNTは点状のパターンで形成され、これら各凹陥部DNTはシール材SLの形成領域に散在して形成されていることにある。この場合でも、全体で見ればこれら複数の凹陥部DNTが、シール材SLの形成領域の周方向に沿って形成されていることとなる。
【0063】
このようにした場合であっても、層間絶縁膜LIおよび保護膜PAS2は該凹陥部DNTの形成領域において強固に接続され、それらの剥がれを防止できる効果を奏する。
【0064】
図8の場合、点状のパターンからなる各凹陥部DNTは面積を比較的小さく形成したものであるが、より大きな面積で構成し、シール材SLの周方向の各箇所において該シール材SLの幅方向には少なくとも一つの前記凹陥部DNTが形成されるようにすることによって、層間絶縁膜LIと保護膜PAS2の周辺における界面からの水分の侵入を各凹陥部DNTによって阻止できるようにすることもできる。
【0065】
点状のパターンからなる前記凹陥部DNTは、丸状でなくても、たとえば三角、四角等の他の形状であってもよい。
【0066】
以上、本発明を実施例を用いて説明してきたが、これまでの各実施例で説明した構成はあくまで一例であり、本発明は、技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。また、それぞれの実施例で説明した構成は、互いに矛盾しない限り、組み合わせて用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の液晶表示装置のシール材の近傍の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の液晶表示装置の実施例1を示す平面図である
【図3】本発明の液晶表示装置の画素における等価回路を示す図である。
【図4】本発明の液晶表示装置の一方の基板の液晶側の面に形成される画素の構成を示す図である。
【図5】本発明の液晶表示装置の効果を示す説明図である。
【図6】本発明の液晶表示装置の実施例2の構成図である。
【図7】本発明の液晶表示装置の実施例3の構成図である。
【図8】本発明の液晶表示装置の実施例4の構成図である。
【符号の説明】
【0068】
SUB1、SUB2……基板、SEC……半導体装置、LC……液晶、SL……シール材、GL……ゲート信号線、DL……ドレイン信号線、CL……コモン信号線、PX……画素電極、CT……対向電極、TFT……薄膜トランジスタ、WG、WD、WC……引き出し配線、GI……絶縁膜、AS……半導体層、DT……ドレイン電極、ST……ソース電極、PD……パッド部、PAS……保護膜、PAS1……保護膜(無機絶縁膜)、PAS2……保護膜(有機絶縁膜)、LI……層間絶縁膜(無機絶縁膜)、TH……スルーホール、OP……開口、DNT……凹陥部、W……水分、V……走査信号駆動回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶を挟持して対向配置される第1基板と第2基板と、
前記液晶の広がり方向に複数の画素の集合から形成される画像表示部と、
前記第1基板および前記第2基板の間に前記画像表示部を囲んで形成され前記液晶を封止するシール材と、を備える液晶表示装置であって、
少なくとも、前記第1基板の前記シール材の形成領域に、配線あるいは回路と、前記配線あるいは前記回路を被って形成された絶縁膜とを有し、
前記絶縁膜は、少なくとも、前記シール材に近い側である表面側に配置される無機絶縁膜と前記無機絶縁膜に当接して前記無機絶縁膜の下層に配置される有機絶縁膜とを有して構成され、
前記シール材の形成領域において、前記無機絶縁膜を貫通し前記有機絶縁膜を貫通することのない深さを有する凹陥部が、前記シール材の形成領域の周方向に沿って形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記凹陥部は前記シール材の周方向に沿って連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記凹陥部は前記シール材の幅方向に複数並設されて形成されていることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記凹陥部は前記シール材の周方向に沿って断続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記凹陥部は前記シール材の幅方向に複数並設されて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記シール材の周方向の各箇所において前記シール材の幅方向には少なくとも一つの前記凹陥部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記凹陥部は前記シール材の形成領域において点状の凹陥部が散在されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−91896(P2010−91896A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263465(P2008−263465)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】