説明

液晶装置とこれを用いた光学ピックアップ装置、光記録再生装置及び液晶装置の温度調整方法

【課題】低温時の応答時間の遅延を解消することが可能な液晶装置及びその温度調整方法を提供し、これを用いて実用的な光学ピックアップ装置及び光記録再生装置を提供する。
【解決手段】一対の基板21,22の間に液晶23が挟まれ、この一対の基板21,22の内側にそれぞれ電極24,25が設けられて成る液晶装置20であって、電極のうち少なくとも一方の電極25に、液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターン29が形成され、この微細パターン29の形成された電極25に、一対の電極端子が設けられて成る。電極端子に電圧を印加して電極25をヒーターとして機能させ、液晶23を加熱して温度調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を透過させて使用する液晶装置において、温度調整可能とすることによって、低温時の動作特性劣化を抑制することが可能な液晶装置とこれを用いた光学ピックアップ装置、光記録再生装置及び液晶装置の温度調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)やBD(Blu-ray Disc)などの光ディスクの記録及び/又は再生を行ういわゆる光ディスク装置、特にこれらの光ディスクの互換性を有する光ディスク装置において、コマ収差補正、非点収差補正や球面収差補正用として、液晶を利用した収差補正素子が用いられることが検討されている(例えば特許文献1及び2参照。)。
この収差補正素子においては、液晶に印加する電圧を部分的に変化させる構造を設けることによって、例えば求める収差補正に対応するように、液晶を透過する光に位相分布を生じさせ、収差の補正を行うものである。
【0003】
ところが、液晶材料は、低温になるとその粘度が高くなるなどの理由によって、その動作速度が著しく遅くなってしまうことが問題となっている。このため、特に低温動作時に液晶材料を加熱する機構が求められる。
【0004】
このため、例えば液晶表示装置においては、液晶材料を挟むガラス基板の、液晶材料側とは反対側に加熱抵抗層を設けていわゆるヒーター加熱を行う方法が提案されている(例えば特許文献3参照。)。
また、液晶表示装置の端部、すなわち透過させる光の光路の外に抵抗発熱体となる配線部を設けて、この配線部への電圧印加により液晶を加熱する構成も提案されている(特許文献4参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−251774号公報
【特許文献2】特開2003−67977号公報
【特許文献3】特開平6−258619号公報
【特許文献4】特開平8−211368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献3に記載された発明のように、ガラス基板の外側にヒーター構造を設ける場合においては、液晶材料までの距離が比較的遠いことにより、加熱するのに多くの熱量を要するという問題がある。また、ヒーター構造が液晶から比較的遠い場合は、光が透過する領域内に温度分布を生じさせてしまう恐れがある。上述したような光ディスク装置の収差補正素子として用いる場合には、このような温度分布により光学性能の悪化をもたらす恐れがある。また、透過させるレーザ光等の光に対し、不必要な収差及び回折損失を生じることを避けるためにも、基板の外側に加熱構造を設けることは好ましくない。
更に、上記特許文献4に記載の発明のように、ガラス基板の端部において、透過光の光路外にヒーターを配置する場合も同様であり、加熱まで時間がかかるとともに、多くの熱量の供給が必要となり、また光学性能に影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
上述のBDの記録及び/又は再生を行う光ディスク装置において、2層の記録層を設けるBDに対し記録再生を行う場合、この2層の記録層の間の球面収差補正行うためには、上述した液晶装置による位相補正が有効と考えられている。
しかしながら、このような低温時における液晶材料の応答時間の遅延は、所要の転送レートを達成できない要因となるため、その解決が強く望まれている。
【0008】
以上の問題に鑑みて、本発明は、特に光学ピックアップ装置や光記録再生装置において用いられる液晶装置において、低温時の応答時間の遅延を解消することが可能な液晶装置及びその温度調整方法を提供し、これを用いて実用的な光学ピックアップ装置及び光記録再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、この一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成る液晶装置であって、電極のうち少なくとも一方の電極に、この液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、この微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る構成とする。
また、本発明は、上述の液晶装置において、微細パターンは、孔部が規則的に形成されたパターンとされ、この孔部は、液晶の分子より大きく、液晶を挟んで配置する配向膜の配向方向と平行な方向の大きさが、液晶装置に入射する光の波長の10倍以下の大きさとされる構成とする。
【0010】
また、本発明の光学ピックアップ装置は、上述の液晶装置を用いる構成とする。すなわち、光源からの出射光を記録媒体上に集光させる集光レンズと、この集光レンズを記録媒体の所定の位置に対向させる駆動部とを有する光学ピックアップ装置であって、光源と集光レンズとの間に液晶装置が配置され、液晶装置へ印加する電圧の出力を制御する制御部が設けられて成り、液晶装置は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、この一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成り、電極のうち少なくとも一方の電極に、この液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、この微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る構成とする。
【0011】
更に、本発明の光記録再生装置は、上述の液晶装置を用いる構成とする。すなわち、光源からの光を記録媒体に照射して記録及び/又は再生を行う光記録再生装置であって、光源からの出射光を記録媒体上に集光させる集光レンズと、集光レンズを記録媒体の所定の位置に対向させる駆動部とを有する光学ピックアップ装置を有し、光源と集光レンズとの間に液晶装置が配置され、液晶装置へ印加する電圧の出力を制御する制御部が設けられて成り、液晶装置は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成り、電極のうち少なくとも一方の電極に、この液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る構成とする。
【0012】
更に、本発明は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、前記一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成る液晶装置の温度調整方法であって、電極のうち少なくとも一方の電極に、この液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンを形成して、この微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子を設け、これら電極端子に電圧を印加することにより前記微細パターンの温度を上昇させる。
【0013】
上述の本発明の液晶装置においては、液晶を挟む基板の内側に、この液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンを有する電極を設けることから、この微細パターンにより抵抗が高められた電極に、一対の電極端子から電圧を印加することによって、この電極の抵抗加熱によって液晶を直接的に、すなわち比較的速く加熱することができるものである。このように、本発明の液晶装置においては、直接的に液晶を加熱することから、液晶材料内に温度分布を生じることなく、適切に温度上昇させることが可能となる。
特に、電極に設ける微細パターンとして、孔部が規則的に形成されたパターンとして、この孔部を、液晶分子よりも大きく、液晶を挟んで配置する配向膜の配向方向と平行な大きさが、この液晶装置を透過する光の波長の10倍以下の大きさとなる構成とすることによって、液晶装置の通常動作時において、この液晶装置を透過する光に回折損失を殆ど生じさせることなく、所望の屈折率変化を生じさせ、これにより透過光に例えば位相変化を生じさせて出射させることができる。
すなわち本発明によれば、光学的特性を損なうことなく応答時間の遅延が抑制された液晶装置、これを用いた光学ピックアップ装置及び光記録再生装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
上述したように、本発明の液晶装置及びその温度調整方法によれば、透過する光に影響を与えることなく液晶の温度調整を行い、低温時の応答速度の遅延を抑制することができる。
また、本発明の光学ピックアップ装置及び光記録再生装置によれば、低温時の応答速度の遅延が改善された液晶装置を用いることにより、実用的な光学ピックアップ装置及び光記録再生装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
図1に、本発明による液晶装置の一例の概略断面構成図を示す。
本発明による液晶装置20は、ガラス等の光透過性材料より成る基板21及び22の間に液晶23が挟まれ、この一対の基板21及び22の内側にそれぞれ光透過性導電性材料より成る電極24及び25が設けられ、電圧印加部26に接続される。なお、電極24及び25の内側の液晶23と接触する面には、液晶の配向方向を制御するための配向膜27及び28が設けられる。これらの配向膜27及び28は同一の方向に配向される。
そして、電極24及び25のうち一方の電極25に、例えば図2にその一例の概略平面構成を示すように、例えばほぼ円形の孔部が規則的に、すなわち一定の方向に関してほぼ等間隔であり、一様な密度をもって配置された微細パターン29が形成される。このように、孔部が規則的に配置され、またその密度が一様なパターンとすることによって、電圧を印加しても液晶装置20を透過する光の位相分布に影響を与えないパターンとすることができる。そしてこの微細パターン29の形成された電極25には、例えばその両端部に、一対の電極端子31及び32が設けられ、一方の電極端子32に電圧印加部34が接続されて成る。
【0016】
そして本発明の液晶装置20における電極25に形成された微細パターン29は、液晶分子より大きく、配向膜27及び28の配向方向と平行な方向の大きさが、液晶装置20を透過するレーザ光等の光の波長の10倍以下の大きさとされ、例えば図3にその一例の概略平面構成を示すように、直径φの円形の孔部29aが多数配置されたパターンとすることができる。
図4に、図3に示す円形の孔部29aの直径を3μm、6μm、12μmとしたときの、電圧に対する回折損失の変化を調べた結果を示す。この場合、透過する光の波長は405nmとし、また孔部の面内の密度は、それぞれ20%とした。図4中、○は微細パターンの孔部の直径が3μm、△は直径6μm、▽は直径12μmの場合をそれぞれ示す。
図4の結果から、微細パターンの孔部の直径が3μmの場合は、殆ど回折損失がないことがわかる。一方、直径6μmの場合は電圧の増加により10%をやや超える程度となり、12μmの場合は回折損失が50%を超えることがわかる。
【0017】
以上の結果から、このように微細パターンを円形の孔部とする場合は、入射する光の波長の10倍以下の直径とすることによって、電圧を増加させても回折損失がほぼ生じないことがわかる。
また、電極25は、電極24との間に電圧を印加することによって液晶を配向させる機能も有するものであるので、液晶分子を適切に配向させるために、この電極25に設ける孔部の大きさは、液晶分子の大きさ以上であることが必要となる。
なお、微細パターンとして、円形の孔部のように等方性を有する形状の孔部ではなく、異方性を有する形状の孔部とする場合については、後述する。
【0018】
このような構成とすることによって、図2に示す微細パターン29を設けた電極25に、電極端子31及び32から電圧を与えると、微細パターン29が形成されたことによる電極25の抵抗増加により、電極25はヒーター膜として動作する。
【0019】
そして、液晶装置20の他方の電極24に、例えば位相を補正する位相補正構造40を設ける場合には、電極端子31及び32を両方接地し、図1に示す電圧印加部26により適切な電圧を電極24、25間に印加することによって、例えば球面収差を補正する位相補正素子として使用することができる。
このとき、上述したように、電極25の微細パターン29による回折損失がなく、通常の位相補正素子と同様に機能することができる。
【0020】
図5は、位相補正構造を設けた電極24の一例の概略平面構成図である。
この場合、電極24は、同心円状の低抵抗透明導電膜44と、それらの間を接続する高抵抗導電膜43より構成され、低抵抗導電膜44の中心部と半径方向の中央部、外縁部とにそれぞれ接続する電極45、46及び47に所要の異なる電圧を印加することによって、例えばBDの記録及び/又は再生を行う光学ピックアップ装置又は光記録再生装置において、2層の記録層への集光時に生じる球面収差を適切に補正することが可能となる。
【0021】
図6は、このような電極24による位相補正構造40を有する本発明構成の液晶装置20を用いた光学ピックアップ装置及び光記録再生装置の一例の要部の概略構成図である。
図6に示すように、この場合、半導体レーザ等より成る光源1から出射された光の光路上に、コリメートレンズ2、偏光ビームスプリッタ3、本発明構成の液晶装置20、4分の1波長板4、集光レンズ5が配置される。偏光ビームスプリッタ3により光路を例えば90°変換された位置に、集光レンズ7を介してフォトダイオード等の受光部8が配置され、その出力が自動パワー制御部9に入力される。また、偏光ビームスプリッタ3の集光レンズ7とは反対側には、集光レンズ10及び11を介して受光部12が配置される。
【0022】
このような構成において、光源1から出射された光は、コリメートレンズ2により平行光とされて偏光ビームスプリッタ3を通過し、本発明構成の液晶装置20により例えば収差を補正されて1/4波長板4を介して集光レンズ5により、記録媒体50のカバー層52を介して記録部51に集光される。集光レンズ5は2軸アクチュエータ等より成る駆動部6に保持されて、図示しないが所定の制御機構によってトラッキング及びフォーカシング調整される。
記録媒体50から反射された光は、レンズ5、1/4波長板4を介して本発明構成の液晶装置20に入射する。そして例えばこの液晶装置20において再び収差を補正されて出射され、偏光ビームスプリッタ3により反射されて、集光レンズ10,11により受光部12に集光される。
なお、光源1から出射された光のうち一部の光は偏光ビームスプリッタ3により反射されて、集光レンズ7により受光部8で検出される。その出力をもとに、自動パワー制御部9から光源1の出力が制御される。一方、受光部12において検出された光から、再生信号と、トラッキング信号及びフォーカス信号が生成される。例えばこれらトラッキング信号及びフォーカス信号から、制御部13において駆動部6を制御する制御信号が生成されて、図示しないが駆動部6に所望の記録再生位置に移動するように制御信号が出力される。
【0023】
この例においては、液晶装置20が、一対の位相補正構造を有する液晶装置20A、20Bより構成される場合を示す。
図7においては、この液晶装置20の一例の概略断面構成を示す。
この場合、液晶装置20は、3枚のガラス等より成る基板21A、22及び21Bの間にそれぞれ液晶23A、23Bが挟まれる構成とされる。基板21A及び21Bの液晶23A、23B側の内側面には、例えば図5において説明した位相構造部40A及び40Bを設けた電極24A及び24Bが形成される。
他方の基板22の両面に、本発明構成の微細パターン29A、29Bを有する電極25A及び25Bが形成される。
また、各電極上の液晶23A及び23Bと接する側には、配向膜27A及び28A、27B及び28Bが設けられる。
【0024】
このような液晶装置20を図6に示すように光学ピックアップ装置に配置することによって、光源1から出射された往路光は、例えば一方の液晶装置20Aにより収差補正されて記録媒体50に入射され、記録媒体50から反射された往路光が、他方の液晶装置20Bにより収差を補正されて、受光部12に入射される構成とすることができる。このように、往路光のみならず復路光も収差を補正する液晶装置20を設けることによって、より精度良く、良好に収差補正を行うことが可能となる。
【0025】
なお、図6に示すように、受光部12において検出された光に基づいて、制御部13により電圧を調整して位相補正構造40(40A、40B)に電圧を印加する構成として、補正する収差量を制御する構成とすることができる。
例えば、記録媒体50の記録層が2層構成とされる場合において、記録または再生する層に対応して、位相補正を行う電圧を調整することにより、異なる記録層に対して適切な位相補正を行って、精度良く記録及び/又は再生を行うことが可能となる。
【0026】
なお、収差補正のための位相補正構造40としては、上述の図5に示す例に限定されるものではない。例えば図8に示すように、中心部の電極領域61と、これに対しほぼ同心円状のリング状の電極領域62及び63を有し、これらの間に、微細な円形等の孔部を設けて高抵抗領域とした孔部形成領域64及び65を設ける構成の位相補正構造40を電極24に設けてもよい。この場合、中心部及び外側のリング状の電極領域61及び63と、内側のリング状の電極領域62との間に電極端子66及び67から電圧を印加して、所定の勾配の電位差を生じさせることによって、液晶に適切な屈折率分布を生じさせるものである。
また、この例に限定されることなく、本発明の液晶装置20に設ける位相補正構造40としては、その他種々の構成とすることが可能である。
【0027】
上述の各例において、微細パターン29の形状としては、円形の場合を示したが、その他楕円形、方形、多角形など異方性を有する各種形状とすることが可能である。
孔部の形状を、このように異方性を有する形状とする場合について、以下説明する。
【0028】
微細パターンを、円形以外の異方性をもつ形状とする場合、その最も長い開口幅が、液晶装置における配向膜の配向方向に対して平行な場合と、直交する場合では、回折損失が相違する。
一例として、図9A及びBに示すように、細長の楕円形状の微細パターン29を等間隔に設ける場合について検討した。この例では、図9Aに示すように、配向方向rに対して微細パターンの長手方向が平行である場合と、図9Bに示すように、配向方向rに対して微細パターンの長手方向が直交する場合とについて、それぞれ回折損失を調べた。各例共に、微細パターン29の孔部29aの最も短い開口幅aを3μm、最も長い開口幅bを12μmとし、また孔部29aの密度は40%とした。この場合の印加電圧に対する回折損失の変化を図10に示す。
図10から、微細パターンの長手方向(最も長い開口幅の延長する方向)が配向膜の配向方向に対し平行である場合と比較すると、微細パターンの長手方向が配向方向と直交する場合は回折損失が明らかに低いことがわかる。
【0029】
この結果から、微細パターンの孔部として異方性を有する形状とするときに、その最も長い開口幅の延長方向が、配向膜の配向方向と直交する場合は、この方向の長さは、入射光の波長の10倍を超える長さであっても回折損失は比較的低く抑えられる。
したがって、孔部が異方性を有する形状とされる場合に、その配向膜の配向方向と直交する方向の長さとしては、目的とする位相補正に対応する印加電圧のもとで、十分回折損失が低い範囲となる長さであればよいことがわかる。
この図10の結果及び前述の図4の結果から、本発明においては、微細パターンの孔部の大きさとしては、液晶分子より大きく、また液晶を挟む配向膜の配向方向と平行な方向については、液晶装置に入射する光の波長の10倍以下の大きさとするものである。
【0030】
以上説明したように、本発明の液晶装置20によれば、電極25に電圧を印加することによってこれを加熱して、液晶23を適切な温度に調整して、その応答時間の遅延を抑制することができる。
本発明においては、このように液晶材料の直近に加熱機構を配置する構成とするので、液晶材料を極めて短時間に加熱することができる。
更に、本発明は、液晶装置の側面から加熱させる構成ではないので、光が透過する面内に温度分布を与えることなく、均一に加熱することができる。したがって、応答速度の分布を生じさせることがなく、収差の悪化を回避することができる。
【0031】
また、本発明の光ピックアップ装置及び光記録再生装置によれば、本発明構成の液晶装置を用いることから、比較的低温時での切り替え時間の短縮が容易になされるので、低温時の応答速度の遅延による不具合を防止することができる。
【0032】
なお、本発明の液晶装置20において、電極25による液晶23の温度調整は、この液晶装置20を使用する際の環境温度が低温である例えば電源投入時など、液晶装置の動作時間が遅い場合、または応答時間の遅延が見込まれる場合に、その利用を限定してもよい。
すなわち、液晶装置の環境温度が比較的高温であり、液晶の応答時間の遅延がまったく危惧されない場合は図2に示す電極端子32を常に接地側に接続するなどの制御を行ってもよい。
【0033】
また、液晶装置20を透過するレーザ等の光の収差補正を行っている場合において、電極25の端子32に液晶材料が応答しない周波数、例えば20kHzの交流波形を印加することにより、液晶の屈折率変化に影響を与えることなく液晶装置20内の液晶材料の加熱を行うことができる。なお、対向する電極24に位相補正構造40を設け、収差を補正する電圧を印加する場合は、この印加電圧に影響を与えないために、電極端子32に印加する交流波形の平均電圧はGND(0V)であることが望ましい。
【0034】
なお、本発明による液晶装置、光学ピックアップ装置及び光記録再生装置は、その材料構成等において上述の各例に限定されるものではなく、その他本発明を逸脱しない範囲において種々の変形、変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による液晶装置の一実施形態例の概略断面構成図である。
【図2】本発明による液晶装置の一実施形態例の要部の概略平面構成図である。
【図3】本発明による液晶装置の一実施形態例の要部の概略平面構成図である。
【図4】液晶の印加電圧に対する回折損失の変化を示す図である。
【図5】位相補正構造の一例の概略平面構成図である。
【図6】本発明による光学ピックアップ装置及び光記録再生装置の一実施形態例の要部の概略構成図である。
【図7】本発明による液晶装置の一実施形態例の概略断面構成図である。
【図8】位相補正構造の一例の概略平面構成図である。
【図9】Aは本発明による液晶装置の一実施形態例の要部の概略平面構成図である。Bは本発明による液晶装置の一実施形態例の要部の概略平面構成図である。
【図10】液晶の印加電圧に対する回折損失の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
1.光源、2.コリメートレンズ、3.偏光ビームスプリッタ、4.4分の1波長板、5.対物レンズ、6.駆動部、7.集光レンズ、8.受光部、9.自動パワー制御部、10.集光レンズ、11.集光レンズ、12.受光部、13.制御部、20.液晶装置、21.基板、22.基板、23.液晶、24.電極、25.電極、26.電圧印加部、27.配向膜、28.配向膜、29.微細パターン、29a.孔部、31.電極端子、32.電極端子、34.電圧印加部、40.位相補正構造部、50.記録媒体、51.記録部、52.カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板の間に液晶が挟まれ、前記一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成る液晶装置であって、
前記電極のうち少なくとも一方の電極に、前記液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、
前記微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る
ことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記微細パターンは、孔部が規則的に形成されたパターンとされ、
前記孔部は、前記液晶の分子より大きく、前記液晶を挟んで配置する配向膜の配向方向と平行な方向の大きさが、前記液晶装置に入射する光の波長の10倍以下の大きさとされて成る
ことを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項3】
前記微細パターンが形成される電極と対向する他の電極側に、前記液晶装置を透過する光の位相を補正する位相補正構造が形成されて成る
ことを特徴とする請求項1記載の液晶装置。
【請求項4】
光源からの出射光を記録媒体上に集光させる集光レンズと、前記集光レンズを前記記録媒体の所定の位置に対向させる駆動部とを有する光学ピックアップ装置であって、
前記光源と前記集光レンズとの間に液晶装置が配置され、
該液晶装置へ印加する電圧の出力を制御する制御部が設けられて成り、
前記液晶装置は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、前記一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成り、
前記電極のうち少なくとも一方の電極に、前記液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、
前記微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る
ことを特徴とする光学ピックアップ装置。
【請求項5】
前記光学ピックアップ装置に、前記液晶装置が2つ設けられ、
前記液晶装置は、前記微細パターンが形成される電極と対向する他の電極側に、位相を補正する位相補正構造が形成されて成り、
前記各液晶装置がそれぞれ感度を有する偏光方向が略直交するように配置されて成る
ことを特徴とする請求項4記載の光学ピックアップ装置。
【請求項6】
光源からの光を記録媒体に照射して記録及び/又は再生を行う光記録再生装置であって、
光源からの出射光を記録媒体上に集光させる集光レンズと、前記集光レンズを前記記録媒体の所定の位置に対向させる駆動部とを有する光学ピックアップ装置を有し、
前記光源と前記集光レンズとの間に液晶装置が配置され、
該液晶装置へ印加する電圧の出力を制御する制御部が設けられて成り、
前記液晶装置は、一対の基板の間に液晶が挟まれ、前記一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成り、
前記電極のうち少なくとも一方の電極に、前記液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンが形成され、
前記微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子が設けられて成る
ことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項7】
一対の基板の間に液晶が挟まれ、前記一対の基板の内側にそれぞれ電極が設けられて成る液晶装置の温度調整方法であって、
前記電極のうち少なくとも一方の電極に、前記液晶装置を透過する光の位相分布に影響を与えない微細パターンを形成して、
前記微細パターンの形成された電極に、一対の電極端子を設け、
前記電極端子に電圧を印加することにより前記微細パターンの温度を上昇させる
ことを特徴とする液晶装置の温度調整方法。
【請求項8】
前記電極端子に、前記液晶が応答しない周波数の交流電圧を印加する
ことを特徴とする請求項7記載の液晶装置の温度調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−350227(P2006−350227A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179526(P2005−179526)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】