説明

液晶装置及び電子機器

【課題】透過表示領域と反射表示領域とでV−T特性が略一致する液晶装置を得る。
【解決手段】液晶層50を介して対向配置された第1基板10及び第2基板11と、第1基板10の液晶層側に形成された第1電極と、第1電極21と誘電層34を介して対向する第2電極22と、を備える液晶装置1であり、第1電極21と第2電極22とのうちの一方の電極は所定の間隔28を有して延在する複数の帯状電極部27を有し、1画素領域内に反射表示領域Rと透過表示領域Tとを有する液晶装置1であって、反射表示領域Rの帯状電極部27の電極幅Lが、透過表示領域Tの帯状電極部27の電極幅Lよりも小さく、反射表示領域Rの間隔28の幅Sが、透過表示領域Tの間隔28の幅Sよりも小さく、反射表示領域Rの液晶層50のセル厚dが透過表示領域Tにおけるセル厚dよりも薄く、反射表示領域Rの誘電層34が透過表示領域Tの誘電層34よりも薄い液晶装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶装置の一形式であるFFS(Fringe・Field・Switch)方式は、誘電層を介して積層されたスリットを有する液晶層側の上部電極と平板状の下部電極との間に上述のスリットを介して電界を形成する方式であり、従来の装置に比べて視野角が向上している。そのため、特に半透過反射型のFFS方式の液晶装置が、携帯電話の表示部等に用いられている。
【0003】
かかる半透過反射型のFFS方式では、反射表示領域における構造(すなわち各要素の寸法)と透過表示領域の構造とを共通とした場合、反射表示領域における透過率が透過表示領域の透過率に比べて低下する傾向があった。そのため、例えば特許文献1においては、透過表示領域に比べて反射表示領域の上部電極の電極幅並びに電極間隔を縮小することによって、反射表示領域の透過率を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−170482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述の構成は、電極幅並びに電極間隔の縮小により、反射表示領域の最大透過率電圧(以下「Vmax」と称する。)が増加する。その結果、透過表示領域と反射表示領域とでV−T特性が不一致となり表示品質が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、上記第1の基板及び上記第2の基板との間に挟持された液晶層と、上記第1の基板の上記液晶層側に形成された第1の電極と、上記第1の電極と誘電層を介して対向する第2の電極と、を備え、上記第1の電極と上記第2の電極とのうちの一方の電極は所定の間隔を有して互いに平行に延在する複数の帯状電極部を有しており、1画素領域内に反射表示領域と透過表示領域とを有する液晶装置であって、上記反射表示領域における上記帯状電極部の電極幅が、上記透過表示領域における上記帯状電極部の電極幅よりも小さく形成されており、上記反射表示領域における上記間隔の幅が、上記透過表示領域における上記間隔の幅よりも小さく形成されており、上記反射表示領域における上記液晶層のセル厚が、上記透過表示領域における上記液晶層のセル厚よりも薄く形成されており、上記反射表示領域における上記誘電層の厚さが、上記透過表示領域における上記誘電層の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とする液晶装置。
【0008】
かかる構成の液晶装置であれば、透過表示領域のV−T特性と反射表示領域のV−T特性との差を低減できる。したがって、透過表示時と反射表示時との表示品質の差を抑制できる。
【0009】
[適用例2]上述の液晶装置であって、上記反射表示領域における、上記間隔をSR(μm)とし、上記帯状電極部の幅をLR(μm)とし、上記液晶層のセル厚をdR(μm)とし、上記誘電層の層厚をtR(nm)としたとき、下記の(1)式を満たすことを特徴とする液晶装置。
80≦tR≦(165×VIC−690)exp(0.2×(LR+SR)/dR)・・・・・・(1)
なお、VICはドライバーICの耐圧である。
【0010】
かかる構成の液晶装置であれば、上記誘電層の厚さを最適に設定できるため、表示品質をより一層向上できる。
【0011】
[適用例3]上述の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。
【0012】
このような構成によれば、消費電力や製造コストを上昇させることなく、表示品質が向上した電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態にかかる液晶装置の等価回路を示す図。
【図2】第1の実施形態にかかる液晶装置の画素の平面的な構成を模式的に示す図。
【図3】第1の実施形態にかかる液晶装置の模式断面図。
【図4】誘電層厚を変化させたときのV−T特性を示す図。
【図5】第1の実施形態におけるVmaxの低減効果を応用した結果を示す図。
【図6】反射表示領域において、透過率が95%となる時の誘電層厚を印加電圧毎に求めた結果を示す図。
【図7】第2の実施形態にかかる液晶装置の模式断面図。
【図8】第3の実施形態にかかる液晶装置の画素の平面的な構成を模式的に示す図。
【図9】第3の実施形態にかかる液晶装置の模式断面図。
【図10】電子機器の一例としての携帯型電話機を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
先ず、本実施形態にかかるFFS方式を用いた半透過反射型の液晶装置について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の全ての図においては、各構成要素を図面上で認識され得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法や比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
【0015】
図1は、本実施形態にかかる液晶装置1の等価回路を示す図である。液晶装置1の表示領域100には、X方向に延在する複数の走査線102及び共通線106とY方向に延在する複数のデータ線104とが格子状に形成されている。かかる格子状のデータ線104及び走査線102によって囲まれた略方形の領域が画素領域41であり、各画素領域41毎に画素40が形成されている。各々の画素40には、第1の電極としての画素電極21と該画素電極をスイッチング制御するTFT(薄膜トランジスター)20、及び後述する第2の電極としての共通電極22(図2参照)等が設けられている。なお、画素領域41とは平面的な領域を示しており、画素40は機能的な意味を含んでいる。
【0016】
画素40には、赤色光を射出する赤色画素40Rと緑色光を射出する緑色画素40Gと青色光を射出する青色画素40Bとがあり、夫々がX方向に規則的に配置されている。かかる三種類の画素40の発光強度が個別に制御されることで、該三種類の画素40からなる領域から任意の波長範囲を有する光が形成され射出される。なお、上述の三種類の画素40(40R,40G,40B)を「サブ画素」と表記し、三種類のサブ画素の組み合わせを「画素」と表記することもあるが、本明細書では「サブ画素」の表記は用いない。また、「画素40」の表記は上述の三種類の画素の総称として用いている。
【0017】
後述するように、TFT20のソース電極20s(図2参照)はデータ線104の一部が突出されたものであり、TFT20のゲート電極20g(図2参照)は走査線102の一部が突出されたものである。そして、TFT20のドレイン電極20d(図2参照)は画素電極21と電気的に接続されている。データ線104はデータ線駆動回路114に接続されており、該データ線駆動回路から供給される画像信号S1、S2、…、Snは、各画素40に供給される。走査線102は走査線駆動回路112に接続されており、該走査線駆動回路から供給される走査信号G1、G2、…、Gmは各画素40に供給される。データ線駆動回路114からデータ線104に供給される画像信号S1〜Snは、この順に線順次で供給されてもよく、互いに隣接する複数のデータ線104同士に対してグループ毎に供給されてもよい。また、走査線駆動回路112からは、走査線102に対して、走査信号G1〜Gmが所定のタイミングでパルス的に線順次で供給される。
【0018】
液晶装置1は、スイッチング素子であるTFT20が走査信号G1〜Gmの入力により一定期間だけオン状態とされることで、データ線104から供給される画像信号S1〜Snが所定のタイミングで画素電極21に書き込まれる構成となっている。そして、画素電極21を介して液晶層50(図3参照)に書き込まれた所定レベルの画像信号S1〜Snは、画素電極21と誘電層34(図3参照)を介して積層された後述する共通電極22(図3参照)との間で一定期間保持される。液晶層50は、画素電極21と共通電極22との間に生じる横電界によって駆動される。
なお、共通線106は、各共通電極22(図3参照)を行毎に電気的に接続する配線である。かかる共通線106により、表示領域100内における全ての画素40の共通電極22は、共通の電位に保持されている。
【0019】
図2は、本実施形態にかかる液晶装置1の画素40の平面的な構成を模式的に示す図であり、後述する第1の基板としての素子基板10(図3参照)を同じく後述する第2の基板としての対向基板11(図3参照)側から垂直視した図である。ただし、反射層35(図3参照)は図示を省略している。本図はX方向に並ぶ上述の三種類の画素40(R,G,B)を示しているが、かかる画素の種類は対向基板11に形成された後述するカラーフィルター71(図3参照)のみで定められているため、素子基板10側の構成は全て共通している。
【0020】
図示するように各画素40は、素子基板10側において、格子状に形成された走査線102とデータ線104との交差部近傍に形成されたTFT20と、画素電極21と、共通電極22と、を有している。かかる各要素間には図示しない複数の絶縁層等が形成されている。TFT20はデータ線104の一部を突出させて形成されたソース電極20sと、走査線102の一部を突出させて形成されたゲート電極20gと、データ線104の構成する材料層と同一の層を島状にパターニングして形成されたドレイン電極20dと、島状にパターニングされたアモルファスシリコン層からなる半導体層20a等からなる。
【0021】
画素電極21は透明導電材料であるITO(酸化インジウム・すず合金)からなる略方形の部材であり、コンタクトホール20cを介してドレイン電極20dと電気的に接続されている。画素電極21は、略X方向に延在する帯状の部分(以下、「帯状電極部」と称する。)27と、Y方向に並ぶように等間隔に形成された複数の帯状電極部27間を隔てる(所定の間隔としての)スリット28と、からなる梯子状の平面形状を有している。帯状電極部27の延在方向は、X方向に対して5度の傾きを有している。
【0022】
共通電極22は、画素電極21と同様にITOからなる略方形の部材であり、コンタクトホール20cの近傍を除き、画素電極21と平面視で略重なる領域に形成されている。かかる画素電極21と共通電極22とが重なる領域が、実際に光(透過光又は反射光)が射出される領域である。共通電極22は、スリット等を有しない平板状であり、TFT20及び画素電極21とは電気的に絶縁されている。上述の光が射出される領域は、X方向に引かれた分割線(符号のない一点鎖線)によって透過表示領域Tと反射表示領域Rとに区画されている。スペーサー29は柱状の部材であり、対向基板11と素子基板10との間隔を保持する機能を果たしている。
【0023】
帯状電極部27の、延在方向に直交する方向の寸法、すなわち幅が帯状電極部幅Lであり、スリット28における同様の寸法、すなわち幅がスリット幅Sである。帯状電極部幅Lとスリット幅Sの和(L+S)が電極ピッチPである。本実施形態にかかる液晶装置1において、上述の各寸法は画素40(R,G,B)間では共通であるが、透過表示領域Tと反射表示領域Rとで異なっている。より具体的には、透過表示領域Tにおける各寸法値は反射表示領域Rにおける各寸法値よりも大きく設定されている。そこで、上記三要素(帯状電極部幅とスリット幅と電極ピッチ)には、透過表示領域の帯状電極部幅をLT、反射表示領域の帯状電極部幅をLR、透過表示領域のスリット幅をST、反射表示領域のスリット幅をSR、透過表示領域の電極ピッチをPT、反射表示領域の電極ピッチをPR、と夫々異なる符号を付与している。
各寸法の具体的な値は、LT=4.0μm、ST=6.0μm、PT=10.0μm、LR=2.0μm、SR=4.0μm、PR=6.0μm、である。かかる寸法の設定については後述する。
【0024】
図3は、図2のA−A’線における断面を模式的に示す図である。図示するように、液晶装置1は、素子基板10と、対向基板11と、該(素子基板10と対向基板11との)一対の基板間に挟持される液晶層50、及び素子基板10の液晶層50側の反対側に配置される図示しない光源等からなる。液晶装置1は半透過反射型であるため、透過表示時には上述の図示しない光源から照射される光を透過表示領域Tにおいて透過させて対向基板11側から射出する。したがって、上述の一対の基板は双方とも、ガラス等の透明性を有する材料で形成されている。
【0025】
素子基板10の液晶層50側の反対側の面には第1の偏光板65が配置されており、対向基板11の液晶層50側の反対側の面には第2の偏光板66が配置されている。なお、以下の記載において素子基板10の液晶層50側の方向を「上方」、「上層」あるいは「上面」と称する。
【0026】
素子基板10の上面には共通線106及び走査線102の一部であるゲート電極20gが形成されている。そして透過表示領域Tと反射表示領域Rとにまたがる領域に該共通線を覆う共通電極22が形成されている。そして、反射表示領域Rにおいては、該共通電極と素子基板10との間に、反射層35と光散乱付与手段36とが順に形成されている。反射層35はAl(アルミニウム)あるいはAg(銀)等の反射率の高い金属材料からなり、反射表示時においては、対向基板11を介して入射した外光を反射して、対向基板11側から射出する。光散乱付与手段36は該反射層の表面に凹凸を付与するための下地として機能しており、感光性樹脂層をハーフ露光することで形成されている。
【0027】
共通電極22及びゲート電極20gの上層には、シリコン窒化物あるいはシリコン酸化物からなるゲート絶縁層33が、素子基板10の全面に形成されている。ゲート絶縁層33の上層には、ドレイン電極20dとソース電極20sと半導体層20aとが形成されている。上述したように、該ドレイン電極等と、ゲート絶縁層33及びゲート電極20gとでTFT20が構成されている。
【0028】
TFT20の上層には、シリコン窒化物あるいはシリコン酸化物からなる層間絶縁層30と画素電極21と第1の配向膜61とが順に形成されている。したがって、共通電極22と画素電極21との間には、ゲート絶縁層33と層間絶縁層30との積層体が形成されている。かかる積層体が誘電層34である。
【0029】
液晶装置1においては、誘電層34の層厚(以下、「誘電層厚t」と称することとして、領域によりT又はRを付して区別する。)が透過表示領域Tと反射表示領域Rとで異なっている。具体的には、透過表示領域Tの誘電層厚tTは400nmであり、反射表示領域Rの誘電層厚はtRは320nmである。かかる誘電層厚tの差は、透過表示領域Tにおける層間絶縁層30の層厚を反射表示領域Rにおける該層厚よりも厚くなるように、透過表示領域Tに予め層厚80nmのシリコン窒化物(またはシリコン酸化物)層を形成することで得られている。
【0030】
画素電極21とドレイン電極20dとを接続するコンタクトホール20cは、層間絶縁層30をパターニングして形成されている。液晶装置1においては、該誘電層を介して画素電極21と共通電極22との間に形成される電界により液晶層50を駆動して、外光の反射量あるいは図示しない光源から照射される光の透過量を制御している。
【0031】
液晶層50を構成する液晶材料は、誘電率異方性が負であるネガ型の液晶材料である。屈折率異方性Δnは0.12(波長589nm)である。なお、誘電率異方性が正であるポジ型の液晶材料を用いることも可能である。かかる場合は、対向基板11と第2の偏光板66との間に透明導電材料からなるシールド層を配置してもよい。
【0032】
対向基板11の液晶層50側の面における反射表示領域Rと透過表示領域Tとを除く領域には、遮光性材料を含有する樹脂からなるブラックマトリクス72が形成されている。そしてさらに、該ブラックマトリクスの形成領域を含む対向基板11の液晶層50側の全面にカラーフィルター71が形成されている。カラーフィルター71とブラックマトリクス72とでカラーフィルター層70となる。カラーフィルター71は赤色光、緑色光、青色光のいずれかの光に相当する波長域の光を透過させることで、上述の図示しない光源から照射される白色光あるいは外光を三原色のいずれかの色の光にしている。
【0033】
反射表示領域Rにおけるカラーフィルター層70の液晶層50側には、内面位相差層68が形成され、さらに該内面位相差層を覆うように(対向基板11の液晶層50側の全面に)第2の配向膜62が形成されている。また、素子基板10の画素電極21の上層には第1の配向膜61が同じく全面に形成されている。したがって、液晶層50は第1の配向膜61と第2の配向膜62とで挟持されている。該双方の配向膜のラビング方向すなわち配向規制方向はY方向(図2参照)すなわちデータ線104の延在方向であり、上記一対の電極間に電界が形成されていない状態における液晶層50中の液晶分子の長軸をY方向に揃えている。一方、上記一対の偏光板の偏光軸は、第1の偏光板65の偏光軸がY方向、第2の偏光板66の偏光軸がX方向と互いに直交している。
【0034】
内面位相差層68は、第2の配向膜62上に塗布した高分子液晶の溶液や液晶性モノマーの溶液等を所定方向に配向させた状態で固化する方法により形成されている。そして、該内面位相差層を透過する光に対して(基準となる緑色光に対して)略λ/2の位相差を付与している。
【0035】
また、内面位相差層68は、透過表示領域Tの液晶層50の層厚と反射表示領域Rの液晶層50の層厚とを異ならせる液晶層厚調整層としても機能している。なお、以下の記載において、液晶層50の層厚をセル厚dと表記し、領域によりT又はRを付して区別する。すなわち、透過表示領域Tの液晶層50の層厚はセル厚dTと表記し、反射表示領域Rの液晶層50の層厚はセル厚dRと表記する。
【0036】
内面位相差層68の層厚は略1.6μmであり、その分、反射表示領域Rのセル厚dRは薄くなるように調整されている。具体的には、透過表示領域Tのセル厚dTは3.0μmであり、反射表示領域Rのセル厚dRは1.4μmである。
【0037】
以上述べたように、本実施形態にかかる液晶装置1は、反射表示領域Rにおける帯状電極部幅Lとスリット幅Sと電極ピッチPとセル厚dと誘電層厚tとの各要素の全ての寸法が、透過表示領域Tの該寸法よりも小さくなるように形成されている。そして、かかる寸法差により、透過表示領域のV−T特性と反射表示領域のV−T特性との差を低減して、液晶装置としての表示品質を向上させている。
以下、上記の寸法差を設定する理由と誘電層厚tを最適化する手法について述べる。
【0038】
(寸法設定)
上述したように、本実施形態にかかる液晶装置は、画素電極21と共通電極22との間に、誘電層34すなわち層間絶縁層30とゲート絶縁層33の積層体を介して形成された電界により液晶層50を駆動して画像を表示する。したがって、誘電層34の層厚(誘電層厚t)を最適化することで、表示品質を向上できる。本実施形態にかかる液晶装置1では、かかる誘電層厚を以下のように設定することにより反射表示領域と透過表示領域とのV−T特性を近づけて、表示品質を向上させている。
【0039】
図4は、誘電層厚を変化させたときのV−T特性を示す図である。図示するように、誘電層厚を薄くするのに伴い最大透過率は略0.27の値を保ちつつVmaxが低下する。上述の特許文献1にも記載されているように、FFS方式の液晶装置において、電極幅並びに電極間隔等を縮小することで最大透過率は向上するが、一方でVmaxも増加することが知られている。ここで、図4に示す結果に基づき、電極幅並びに電極間隔を縮小させると共に誘電層厚も薄くすることで、Vmaxを上昇することなく透過率すなわちV−T特性を向上できる可能性が生じてくる。
【0040】
図5は、本実施形態の効果、すなわち上述の図4に示すVmaxの低減効果を応用した結果を示す図である。Tは透過表示領域、Rは反射表示領域であり、各数値は左側から順に帯状電極部幅L、スリット幅S、誘電層厚tを示している。1の線は上述の特許文献1に記載された液晶装置の透過表示領域におけるV−T特性を示す線であり、3の線は特許文献1に記載された液晶装置の反射表示領域におけるV−T特性を示す線である。2の線は、反射表示領域の各寸法を透過表示領域の該寸法と同一としたときのV−T特性を示す線である。そして4の線は、反射表示領域における帯状電極部幅Lとスリット幅Sとを縮小すると共に、誘電層厚も200nmと透過表示領域の該寸法の半分にした場合のV−T特性を示す線である。
【0041】
1の線と3の線とに示すように、特許文献1に記載の液晶装置は、反射表示領域における帯状電極部幅Lとスリット幅Sとを、透過表示領域における該寸法よりも縮小することで、反射表示領域と透過表示領域とを同一の構造とした場合に比べて大幅にV−T特性を向上させている。
【0042】
その結果、1の線と3の線とに示すように、特許文献1に記載の液晶装置は、反射表示領域のV−T特性が透過表示領域のV−T特性に近づいている。しかし、誘電層厚は(反射表示領域と透過表示領域とで)共通なため、双方の領域のV−T特性が充分に近づいているとはいえない。
【0043】
それに対して、4の線に示すように、誘電層厚を200nmとするとV−T特性が大きく向上している。すなわち、帯状電極部幅Lとスリット幅Sとを縮小すると共に、誘電層厚tも透過表示領域における当該層厚よりも縮小させることで、V−T特性をより一層一致することが判る。
【0044】
しかし、誘電層厚は、一方的に薄くすればいいというものではない。薄くしすぎると、共通電極22の表面の凹凸のために損傷等が発生し、電極間(画素電極21と共通電極22との間)の絶縁が不完全になり得るという問題も出てくる。そこで本実施形態では、誘電層厚を図6に示す測定結果を元にして、以下のように設定している。
【0045】
図6は、反射表示領域において、電極ピッチPR(帯状電極部幅LR+スリット幅SR)とセル厚dRの比を略2〜7.2の範囲に振りつつ、透過率が95%となる時の誘電層厚を印加電圧毎に求めた結果を示す図である。一般的なドライバーICの耐圧は5.0(V)以下であるため、駆動電圧としては4.5(V)、5.0(V)、5.5(V)の3段階を図示している。上述したように誘電層厚tを薄くするのに伴いVmaxを上昇させることなく透過率を向上できるため、(P/d)に合わせて誘電層厚tを薄くすることで、駆動電圧の上限を一定値以下に保ちつつ透過率等の表示品質を向上できる。
【0046】
図6に示された曲線より、反射表示領域における最適な誘電層厚tR(nm)を設定する式(1)は、以下のように導出できる。なお、LR、SR、及びdRは反射表示領域に置ける帯状電極部幅、スリット幅、及びセル厚である。
80≦tR≦(165×VIC−690)exp(0.2×(LR+SR)/dR)・・・・・(1)
【0047】
上述したように、VICはドライバーICの耐圧である。また、誘電層厚tRの下限を80nmとした理由は、反射層35の凹凸に起因する共通電極22の上層の凹凸を考慮したものである。かかる式(1)により、例えば、セル厚dRが1.4μm、電極ピッチPRが6.0μmである場合、誘電層厚tRを略320nm以下にすることで、透過表示領域のV−T特性と反射表示領域のV−T特性とが略一致した表示品質の高いFFS型の半透過反射型の液晶装置を得ることができる。
【0048】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態にかかる液晶装置2について説明する。図7は、第2の実施形態にかかる液晶装置2の模式断面図である。第1の実施形態における図2のA−A’線と同様の位置における模式断面図である。本実施形態にかかる液晶装置2はオーバーレイヤー構造を用いていることが特徴である。かかる構造の違いを除くと、液晶装置2は第1の実施形態の液晶装置1と略同一の構成を有している。そこで共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略する。
【0049】
オーバーレイヤー構造とは、TFT20の上層に共通電極22等が形成されている構造である。すなわち、TFT20の上層には第1の層間絶縁層31が形成され、共通電極22は該第1の層間絶縁層の上層に形成されている。そして画素電極21は、第2の層間絶縁層32を介して共通電極22と対向している。したがって、第2の層間絶縁層32のみが誘電層34として機能している。コンタクトホール20cは、第1の層間絶縁層31と第2の層間絶縁層32との積層体を貫通するように形成されている。
【0050】
液晶装置2の画素電極21の図示しない帯状電極部幅Lとスリット幅S、及び電極ピッチPの各寸法は、第1の実施形態にかかる液晶装置1の各寸法と同一である。すなわち、透過表示領域Tにおける各寸法はLT=4.0μm、ST=6.0μm、PT=10.0μm、であり、反射表示領域Rにおける各寸法はLR=2.0μm、SR=4.0μm、PR=6.0μm、であり、誘電層厚tTは400nmである。同じくセル厚dは、透過表示領域Tのセル厚dTが3.0μm、反射表示領域Rのセル厚dRが1.4μmと、内面位相差層68により差が設けられている。そして、かかる各寸法値と上述の式(1)により、反射表示領域Rにおける誘電層厚tRすなわち第2の層間絶縁層32の層厚は320nmに設定されている。その結果、第1の実施形態にかかる液晶装置1と同様に、透過表示領域TのV−T特性と反射表示領域RのV−T特性とが略一致しており、表示品質が向上している。
【0051】
本実施形態にかかる液晶装置2のようなオーバーレイヤー構造の液晶装置は、ゲート絶縁層33が誘電層34に含まれていないため、該ゲート絶縁層の層厚を自由に設定できるという特徴がある。したがって、各構成要素の寸法設定の自由度が向上し、工程数は若干増加するものの、表示品質の向上効果をより一層容易に得ることができる。
【0052】
(第3の実施形態)
続いて、第3の実施形態にかかる液晶装置3について説明する。液晶装置3は、上述の液晶装置1及び液晶装置2と同様の、表示領域内に各々が制御用TFTを備える画素が規則的に配置されたアクティブマトリクス型の半透過反射型の液晶装置である。回路構成は、上述の液晶装置1及び液晶装置2の該構成と略同一である。そこで、回路構成等は図示を省略し、平面図と断面図とを用いて説明する。
【0053】
図8は、本実施形態にかかる液晶装置3の画素40の平面的な構成を模式的に示す図であり、素子基板10(図9参照)を対向基板11(図9参照)側から垂直視した図である。本実施形態の液晶装置3は、帯状電極部幅L等が透過表示領域Tと反射表示領域Rとで異なるのみでなく、三種類の画素間でも異なっていることが特徴である。かかる構造の違いを除くと、液晶装置3は第1の実施形態の液晶装置1と略同一の構成を有している。そこで共通する構成要素には同一の符号を付与し、説明の記載は一部省略する。
【0054】
図8に示すように、液晶装置3の画素電極21を構成する帯状電極部幅L、スリット幅S、電極ピッチPの夫々は、透過表示領域Tと反射表示領域Rとの双方の領域で、画素40の色が(射出する光の色)毎に異なっている。具体的には波長(カラーフィルターを透過する波長範囲のピーク波長)が大きくなるに伴い、上述の各寸法値は増加している。なお、上述の各要素に付けられた符号の小文字アルファベットは画素の色を示している。したがって、LbRは青色反射表示領域の帯状電極部幅、LbTは青色透過表示領域の帯状電極部幅、PbRは青色反射表示領域の電極ピッチ、PbTは青色透過表示領域の電極ピッチ、SbRは青色反射表示領域のスリット幅、SbTは青色透過表示領域のスリット幅、LgRは緑色反射表示領域の帯状電極部幅、LgTは緑色透過表示領域の帯状電極部幅、PgRは緑色反射表示領域の電極ピッチ、PgTは緑色透過表示領域の電極ピッチ、SgRは緑色反射表示領域のスリット幅、SgTは緑色透過表示領域のスリット幅、LrRは赤色反射表示領域の帯状電極部幅、LrTは赤色透過表示領域の帯状電極部幅、PrRは赤色反射表示領域の電極ピッチ、PrTは赤色透過表示領域の電極ピッチ、SrRは赤色反射表示領域のスリット幅、SrTは赤色透過表示領域のスリット幅、を夫々意味している。透過表示領域Tの上記の各寸法値は同一色の反射表示領域Rの該寸法よりも大きく、一画素内で、上記各寸法はb、g、rの順に大きく設定されている。
【0055】
画素内の各要素の寸法が画素の色毎に異なることは、厚さ方向の寸法についても同様である。図9は、上述の液晶装置3の図8のB−B’線における模式断面図である。液晶装置1の断面図とは異なり、データ線104に直交する方向の断面を示している。光源が不図示である点は、図3に示す液晶装置1の断面図と同様である。
【0056】
図示するように、液晶装置3は、素子基板10と、対向基板11と、該(素子基板10と対向基板11との)一対の基板間に挟持される液晶層50、及び素子基板10の液晶層50側の反対側に配置される図示しない光源等からなる。各画素40(B,G,R)の色に合わせてカラーフィルター71にもアルファベットを付与している。透過表示領域の断面図であるため、反射層35と光散乱付与手段36と内面位相差層68は不図示である。また、図示した構成要素の説明も一部を除き省略する。
【0057】
図示するように、液晶装置3は、誘電層厚tとセル厚dとが、B,G,Rの順に、すなわち画素40が射出する光の波長に合わせて大きくなるように設定されている。すなわち、緑色領域の誘電層厚tGは青色領域の誘電層厚tBよりも厚く設定されており、赤色領域の誘電層厚tRは緑色領域の誘電層厚tGよりも厚く設定されている。同様に、緑色領域のセル厚dGは青色領域のセル厚dBよりも厚く設定されており、赤色領域のセル厚dRは緑色領域のセル厚dGよりも厚く、設定されている。
【0058】
また図示はしていないが、液晶装置1及び液晶装置2と同様に液晶装置3においても、同一画素40内において反射表示領域Rの誘電層厚t及びセル厚dは透過表示領域Tの誘電層厚t及びセル厚dよりも薄く設定されている。このように液晶装置3は、領域間(透過表示領域Tと反射表示領域Rとの間)と画素40間(青色画素40Bと緑色画素40Gと赤色画素40Rとの間)の双方で各構成要素の寸法を異ならせることで、領域間のみでなく画素40の色間でもV−T特性を互いに略一致させている。したがって、液晶装置3はカラー表示時における表示品質がより一層向上している。
【0059】
(電子機器)
図10は、本実施形態にかかる電子機器の一例としての携帯型電話機を示す斜視図である。図10に示す携帯型電話機90は、上記実施形態の液晶装置(1〜3)を表示部92として備え、複数の操作ボタン94、受話口96、及び送話口98を備えて構成されている。液晶装置1〜3は駆動電圧を上げることなく透過率が改善されているため、表示品質が向上した携帯型電話機90が、消費電力や製造コストを上昇させることなく実現されている。
【0060】
上記実施形態にかかる液晶装置は、上記携帯型電話機90に限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型或いはモニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器、フィールドシーケンシャル(FS)表示方式を用いた3D液晶装置、2画面液晶装置等々の画像表示手段として好適に用いることができる。いずれの電子機器においても、消費電力や製造コストを上昇させることなく表示品質が向上されている。
【符号の説明】
【0061】
1…液晶装置、2…液晶装置、3…液晶装置、10…第1の基板としての素子基板、11…第2の基板としての対向基板、20…TFT、20a…半導体層、20c…コンタクトホール、20d…ドレイン電極、20g…ゲート電極、20s…ソース電極、21…第1の電極としての画素電極、22…第2の電極としての共通電極、27…帯状電極部、28…所定の間隔としてのスリット、29…スペーサー、30…層間絶縁層、31…第1の層間絶縁層、32…第2の層間絶縁層、33…ゲート絶縁層、34…誘電層、35…反射層、36…光散乱付与手段、40B…青色画素、40G…緑色画素、40R…赤色画素、41…画素領域、50…液晶層、61…第1の配向膜、62…第2の配向膜、65…第1の偏光板、66…第2の偏光板、68…内面位相差層、70…カラーフィルター層、71…カラーフィルター、72…ブラックマトリクス、90…電子機器としての携帯型電話機、92…表示部、94…操作ボタン、96…受話口、98…送話口、100…表示領域、102…走査線、104…データ線、106…共通線、112…走査線駆動回路、114…データ線駆動回路、d…セル厚、L…帯状電極部幅、P…電極ピッチ、R…反射表示領域、S…スリット幅、t…誘電層厚、T…透過表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配置された第1の基板及び第2の基板と、
前記第1の基板及び前記第2の基板との間に挟持された液晶層と、
前記第1の基板の前記液晶層側に形成された第1の電極と、
前記第1の電極と誘電層を介して対向する第2の電極と、
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極とのうちの一方の電極は所定の間隔を有して互いに平行に延在する複数の帯状電極部を有しており、
1画素領域内に反射表示領域と透過表示領域とを有する液晶装置であって、
前記反射表示領域における前記帯状電極部の電極幅が、前記透過表示領域における前記帯状電極部の電極幅よりも小さく形成されており、
前記反射表示領域における前記間隔の幅が、前記透過表示領域における前記間隔の幅よりも小さく形成されており、
前記反射表示領域における前記液晶層のセル厚が、前記透過表示領域における前記液晶層のセル厚よりも薄く形成されており、
前記反射表示領域における前記誘電層の厚さが、前記透過表示領域における前記誘電層の厚さよりも薄く形成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液晶装置であって、
前記反射表示領域における、前記間隔をSR(μm)とし、前記帯状電極部の幅をLR(μm)とし、前記液晶層のセル厚をdR(μm)とし、前記誘電層の層厚をtR(nm)としたとき、下記の(1)式を満たすことを特徴とする液晶装置。
80≦tR≦(165×VIC−690)exp(0.2×(LR+SR)/dR)・・・・・・(1)
なお、VICはドライバーICの耐圧である。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−186037(P2010−186037A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29920(P2009−29920)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】