説明

液浸露光装置用超純水の製造方法及び装置

【課題】レジスト上にナノサイズのバブル(気泡)や凹凸を発生させることのない液浸露光装置用超純水の製造方法及び製造装置を提供すること。
【解決手段】 超純水製造装置で処理され半導体製造工程へ洗浄水として供給される超純水を分取し脱気膜を通過させて溶存窒素ガス量が3mg/L以下、溶存酸素ガス量が50μg/L以下になるまで脱気する。脱気した超純水をイオン交換装置、限外濾過膜に通過させて超純水中のイオン成分と微粒子を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率の高い超純水をレンズとフォトレジストの間に介在させることによりパターニング露光を行う液浸露光装置に用いられる超純水の製造方法及び製造装置に係り、特に、半導体の製造工場における液浸露光工程において、露光欠陥の原因となる微小気泡を発生させない液浸露光用超純水の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化に伴い、露光微細加工技術分野においては、ナノスケールの微細加工を実現する技術の開発が進められている。
最先端露光技術として用いられているフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザー露光技術ではLSI線幅65nmが限界といわれているが、65nm以下の線幅に対応可能とするため、液浸露光技術が提案されている。
【0003】
液浸露光技術とは、露光装置の投影露光レンズとレジストとの間を液体で満たして光の屈折率を高め、解像度を向上させる技術である。
例えば、光源にArFエキシマレーザーを用いた露光では、投影レンズとレジストの間を屈折率1.44の水で満たした場合、理論上、通常露光の最小線幅65nmを、その1/1.44倍に縮小した45nmまでの微細加工が可能となる。
【0004】
このような液浸露光装置の屈折率調整用の水としては、半導体製造装置においてレジスト等の洗浄用として多量に用いられている超純水の使用が考えられる。
超純水は、例えば、前処理により固形微粒子を除去した水を、イオン交換装置、逆浸透膜装置、紫外線照射装置、混床式イオン交換装置、溶存酸素除去装置、限外濾過膜装置等で処理して、無機イオン、有機イオン、シリカ、微粒子等を極限まで除去した高純度の水である。
【0005】
なお、溶存酸素除去装置としては、真空脱気塔、不活性ガス注入型真空脱気塔、脱気膜装置、不活性ガス注入型脱気膜装置、還元性ガス注入型触媒樹脂脱酸素装置等が用いられている。
【0006】
しかし、液浸露光装置の屈折率調整用の水として、レジスト洗浄用の超純水を使用したところ、レジスト上にナノサイズのバブル(気泡)や凹凸が発生して解像度を劣化させることが判明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液浸露光装置の屈折率調整用の水として、半導体製造装置でレジスト等の洗浄用として用いられている超純水を使用すると、レジスト上にナノサイズのバブル(気泡)や凹凸が発生して解像度を劣化させるとい問題があった。
【0008】
本発明は、かかる従来の課題を解決するもので、レジスト上にナノサイズのバブル(気泡)や凹凸を発生させることのない液浸露光装置用超純水の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、かかる従来の課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、使用する超純水の溶存窒素ガス濃度を3mg/L以下、 溶存酸素ガス濃度を50μg/L以下とすることにより、レジスト上に形成されるナノサイズのバブルや凹凸が解消するとの知見を得た。
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0010】
本発明の液浸露光装置用超純水の製造方法は、超純水製造装置で処理され半導体製造工程へ洗浄水として供給される超純水を分取し脱気膜を通過させて溶存窒素ガス量が3mg/L以下、溶存酸素ガス量が50μg/L以下になるまで脱気する脱気工程と、前記脱気工程で脱気された超純水をイオン交換装置に通過させてイオン成分を0.1μg/L以下にまで除去する脱イオン工程と、前記脱イオン工程でイオン成分の除去された超純水を限外濾過膜に通過させて超純水中の微粒子を除去する微粒子除去工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の液浸露光装置用超純水の製造装置は、処理装置とユースポイント間を循環させつつ供給水及び循環水を精製するように構成された超純水製造装置と、前記処理装置と前記ユースポイント間の配管から分岐して液浸露光装置へ超純水を供給する分岐配管と、前記分岐配管に配管を介して順に介挿された脱気膜装置、イオン交換装置及び限外濾過膜装置とを具備することを特徴とする。
【0012】
図1は、本発明の液浸露光装置用超純水の製造装置の全体の構成を示したもので、符号1は、前述した公知の超純水製造装置であって、この超純水製造装置で製造された超純水は、配管2を介して半導体製造装置3へ供給する多数の枝管4を含むユースポイント5へ供給され、使用されなかった超純水は循環配管6を得て再び超純水製造装置1へ還流される。
【0013】
そして、本発明の液浸露光装置用超純水の製造装置においては配管2のユースポイント5の手前に液浸露光用に超純水を生成するための液浸露光装置用超純水の製造システム7が接続される。符号8は、製造システム7で精製された超純水が供給される液浸露光装置である。
【0014】
図2は、液浸露光装置用超純水の製造システム7の構成を示したもので、脱気膜装置9、イオン交換装置(図では非再生型混床式イオン交換装置)10、限外濾過膜装置11から構成され、ユースポイントの手前から分取された超純水は、脱気膜装置9で窒素ガス、酸素ガスともに所定の濃度以下にまで脱気され、脱気膜装置9で生成するイオン成分は、非再生型混床式イオン交換装置10で除去され、さらに、脱気膜装置9、非再生型混床式イオン交換装置10で発生する微粒子は限外濾過膜装置11で除去される。
【0015】
図3は、本発明に使用される図1の超純水製造装置1の具体的な構成を示したものである。
【0016】
この超純水製造装置1では、原水は一旦原水タンク12に貯留され、原水移送ポンプP1により圧力式濾過器13を経て、濾過水タンク14に送られる。次いでRO(逆浸透膜)ポンプP2により熱交換器15に送られ、RO高圧ポンプP3により、逆浸透膜装置16へ送られ、再生型混床式イオン交換装置17、脱気膜装置18を経て窒素ガスシールドされた純水タンク19に貯留される。
【0017】
純水タンク19中の純水は、サークルポンプP4により熱交換器20、有機物分解用紫外線照射装置21、非再生型混床式イオン交換装置22、限外濾過膜装置23を経て配管2によりユースポイント5へ送られ、使用されなかった超純水は還流配管6を介して再び純水タンク19に還流される。
【0018】
本発明の液浸露光装置用超純水の製造システム7に使用される脱気膜装置は、気体分離膜を挿着した脱気膜モジュールで仕切られた2つの室の一方に被処理水を流すとともに、他方を真空ポンプ等で減圧にして被処理水中に含まれるガスを気体分離膜を通して他方の室に移行させて除去する装置である。なお、脱酸素を目的とする場合には、減圧されている側の室に不活性ガスである窒素ガスを注入する方法も行われるが、この方法では、処理水中の溶存酸素ガス濃度は減少するが溶存窒素ガス濃度は上昇するので減圧側の室には何もガスを注入しないで減圧抽気する方法が好適している。
【0019】
脱気膜モジュールに用いられる気体分離膜の形態には、特に制限はなく、平膜型、スパイラル型、中空糸内圧型、中空糸外圧型等各種の形式のものを用いることができるが、スパイラル型膜モジュール又は中空糸膜モジュールが特に好適している。中空糸膜モジュールに用いられる気体分離膜としては、疎水性で中空糸形状に成形することができるものであればよく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ−4−メチルペンテン等が好ましく、ポリフッ化ビニリデン及びポリ−4−メチルペンテンが特に好適している。
【0020】
また後述するが、溶存酸素と同様、超純水中に残留している過酸化物類はレジスト表面荒れ(凹凸)の原因物質となるため、20μg/L以下、さらに好ましくは、10μg/L以下であることが望ましい。超純水中に残留する過酸化物類の例としては、185nm前後の紫外線を照射可能な紫外線照射有機物分解装置より意図せずに発生する過酸化水素(もしくは過酸化水素様態物質)を挙げることができる。前記過酸化物類は、本発明に使用するイオン交換装置においても除去可能であるが、より好ましくは、吸着等の手段による過酸化物類除去手段を前記本願発明のイオン交換装置以前に設置することが望ましい。
【0021】
本発明に使用するイオン交換装置としては、破砕や未反応物質の混入と溶出の極めて少ない粒径の均一な、ほぼ完全に再生されたH型強酸性カチオン交換樹脂とOH型強塩基性アニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換装置が適している。これらのイオン交換樹脂の残存イオン成分濃度は少なければ少ないほどよく、特に、化学増幅型レジストを変質させるアンモニア類やアミン類、アニオン成分は、好ましくは0.1μg/L以下、さらに好ましくは0.05μg/L以下であることが望ましい。
【0022】
また、本発明に使用する限外濾過膜装置に用いる限外濾過膜としては、一般的な限外濾過膜であれば特に限定されないが、分画分子量が10,000以下の清浄な有機系限外濾過膜が適している。
【発明の効果】
【0023】
超純水製造装置の多くは溶存酸素除去装置を装備しているので、このような超純水製造装置で製造された超純水を用いた場合には、液浸露光装置のレジスト上に形成されるナノボイドは主として溶存窒素ガスによるものと考えられる。本発明では、このようなナノボイドの発生原因となる溶存窒素ガス量を3mg/L以下、好ましくは1mg/L以下としたので、このようなレジスト上のナノボイドの発生が抑制される。
【0024】
また、溶存酸素はレジストに対して酸化剤として作用するためレジスト表面荒れ(凹凸)が発生して露光欠陥の原因となるが、本発明によれば、溶存酸素ガス濃度は、50μg/L以下、好ましくは10μg/L以下とされているので、表面荒れに起因する露光欠陥も解消される。
【実施例1】
【0025】
図3の超純水製造装置12で製造された抵抗率18.0MΩ・cm、TOC 3μg/L、シリカ濃度0.5μg/L、溶存窒素濃度19mg/L、溶存酸素濃度60μg/L、水温23±0.1℃に制御された超純水を、この装置から供給するユースポイントにおいて分岐し、図2の液浸露光装置用超純水製造システム7に送水して高純度化し、超純水使用ポイント(液浸露光装置設置予定ポイント)に供給した。分取されなかった超純水は図3の純水タンク19に戻した。
【0026】
液浸露光装置用超純水システム7にポンプ等の発熱源を介さずに分取された超純水は、水封式真空ポンプを備えた脱気膜装置(G284;リキセル製)9により脱気された後、ほぼ完全に再生されたH型強酸性カチオン交換樹脂とOH型強塩基性アニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換装置(MBGP;ローム&ハース製)10により脱イオンされ、限外濾過膜(OLT−3026;旭化成製)11により微粒子を除去して超純水使用ポイント8に供給された。
【0027】
溶存窒素ガス濃度の計測には、MOCA3610/31560(Orbisphere製)を使用し、溶存酸素ガス濃度の計測には、MOCA3600/31120.01(Orbisphere製)を用い、評価は図4に示す方法で行った。
【0028】
すなわち、深さ50cm、奥行き50cm、幅50cmの上部開放の無色透明石英槽24の底部にスプレーノズル25を設置し、液浸露光装置用超純水装置7より高純度化された液浸露光用超純水を、PVDF配管にてスプレーノズル25に供給した。供給圧力は3kg/cmである。ナノバブル(微小気泡)発生の有無は、槽24底部スプレーノズルより水中にて液浸露光装置用超純水を噴射しオーバーフローさせながら目視で確認した。
【0029】
比較例1は、図2の液浸露光装置用超純水システム7において、バイパスラインにて脱気膜装置9をバイパスした以外は実施例1と同様に試験を行った結果であり、本発明との比較のために示したものである。
【0030】
評価の結果を表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の製造方法及び装置によれば、液浸露光工程においてナノバブル(微小気泡)のない、レジストの浸食のない液浸露光装置用超純水を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の構成を概略的に示すブロック図。
【図2】本発明の要部の構成を概略的に示すブロック図。
【図3】本発明に使用する超純水製造装置の構成を示す図。
【図4】本発明により得られた超純水の評価方法を説明するための図。
【符号の説明】
【0033】
1…超純水製造装置、2…配管、3…半導体製造装置、4…枝管、5…ユースポイント、6…循環配管、7…液浸露光装置用超純水の製造システム、8…液浸露光装置、9…脱気膜装置、10…イオン交換装置(非再生型混床式イオン交換装置)、11…限外濾過膜装置、12…原水タンク、13…圧力式濾過器、14…濾過水タンク、15…熱交換器、16…逆浸透膜装置、17…再生型混床式イオン交換装置、18…脱気膜装置、19…純水タンク、20…熱交換器、21…有機物分解用紫外線照射装置、22…非再生型混床式イオン交換装置、23…限外濾過膜装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水製造装置で処理され半導体製造工程へ洗浄水として供給される超純水を分取し脱気膜を通過させて溶存窒素ガス量が3mg/L以下、溶存酸素ガス量が50μg/L以下になるまで脱気する脱気工程と、
前記脱気工程で脱気された超純水をイオン交換装置に通過させてイオン成分を0.1μg/L以下にまで除去する脱イオン工程と、
前記脱イオン工程でイオン成分の除去された超純水を限外濾過膜に通過させて超純水中の微粒子を除去する微粒子除去工程と
を有することを特徴とする液浸露光装置用超純水の製造方法。
【請求項2】
前記イオン交換装置が、H型強酸性カチオン交換樹脂とOH型強塩基性アニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換装置であることを特徴とする請求項1記載の液浸露光装置用超純水の製造方法。
【請求項3】
前記限外濾過膜は、分画分子量が10,000以下の有機系限外濾過膜であることを特徴とする請求項1又は2記載の液浸露光装置用超純水の製造方法。
【請求項4】
処理装置とユースポイント間を循環させつつ供給水及び循環水を精製するように構成された超純水製造装置と、
前記処理装置と前記ユースポイント間の配管から分岐して液浸露光装置へ超純水を供給する分岐配管と、
前記分岐配管に配管を介して順に介挿された脱気膜装置、イオン交換装置及び限外濾過膜装置と
を具備することを特徴とする液浸露光装置用超純水の製造装置。
【請求項5】
前記イオン交換装置が、H型強酸性カチオン交換樹脂とOH型強塩基性アニオン交換樹脂を混合した混床式イオン交換装置であることを特徴とする請求項4記載の液浸露光装置用超純水の製造装置。
【請求項6】
前記限外濾過膜は、分画分子量が10,000以下の有機系限外濾過膜であることを特徴とする請求項4又は5記載の液浸露光装置用超純水の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−152235(P2007−152235A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351303(P2005−351303)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000245531)野村マイクロ・サイエンス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】