説明

液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッド製造方法

【課題】精度よく圧力室を形成する。
【解決手段】圧電体プレートAは、第1溝68が形成された複数の圧電体プレート66を積層接合して形成され、その第1溝68内に圧力室が形成される。第1溝68を形成するほうが、孔を形成するのに比べ加工がしやすいため、精度よく圧力室が形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出ヘッド、その液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置及びその液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッド製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとしては、インクを吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録ヘッドが周知である。
【0003】
インク吐出に圧電素子を用いたインクジェット記録ヘッド、特に圧電素子の圧電縦効果又は圧電横効果を利用したアクチュエータを用いたヘッド構成においては、アクチュエータの変形効率を高めるために、圧力室の一部に剛性の低い部分を設ける必要がある。しかし、圧力室に低剛性部を設けることは、圧力の発生効率を低下させることになるため問題となる。
【0004】
一方、インクジェット記録ヘッドによる印字で高解像度化を図るには、ノズルピッチを狭めてノズルを高密度に、例えばマトリックス状に配置する必要があり、これに伴い、各ノズルに対応させて設ける圧電素子については小型で且つ高密度に配置できる構造が求められる。
【0005】
そこで、積層型の圧電素子を用いてその内部に圧力室を形成し、この圧電素子を積層方向に挟んでノズルプレートと供給路プレートを対向配置することにより、圧力室に低剛性部を設けなくとも圧力の発生効率が改善可能で、且つ、従来のカイザー型の圧電素子に比べてノズル配置を高密度化できるヘッド構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、上記の構成では、積層型の圧電素子を積層方向に長孔をあけて圧力室を形成するため、圧力室内に正負両極の電極が露出することになる。そのため、この電極部分を完全にシールする必要があり、さらに、電極に合わせて貫通孔や溝等の加工が必要となるため、製造上の課題がある。また、各ノズルに対応させて設ける圧電素子の間に電気的不活性領域を設ける必要があり、圧電素子をより高密度に実装する際の障害となる。また、圧電素子が積層方向へ圧縮/膨張変形する際に、供給路プレート側の端面の変形状態がフラットでないため、供給路プレートと圧電素子の接合部に応力が生じて故障を招く恐れがある。
【0007】
また、圧力の発生効率を向上するためには、上記構成のように、圧力室を一方向(圧電素子の積層方向)に変形させてインクに圧力(吐出エネルギー)を加えるよりも、圧力室を複数方向に変形させ、圧力室内の多くの面でインクに圧力を加える方が望ましい。
【特許文献1】特開平7−81055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高解像度を実現するためにノズルが高密度の配置されるインクジェット記録ヘッドにおいては、圧力室も高密度に配置されるため、圧力室を精度よく形成する必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1のような構成では、圧電素子が、積層されて積層方向に厚いため、積層方向へ長孔をあけて圧力室を形成する場合に、精度よく加工するのが難しい。
【0010】
本発明は上記事実を考慮して、精度よく圧力室を形成できる液滴吐出ヘッド、その液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置及びその液滴吐出ヘッドを製造する液滴吐出ヘッド製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る液滴吐出ヘッドは、液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる液滴ヘッドにおいて、前記圧電アクチュエータは、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、前記圧力室が前記溝内に形成されたことを特徴とする。
【0012】
この構成では、液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる。
【0013】
ここで、本発明の請求項1の圧電アクチュエータは、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、その溝内に圧力室が形成されている。溝を形成するほうが、孔を形成するのに比べ加工がしやすいため、請求項1の構成によれば、精度よく圧力室が形成できる。
【0014】
本発明の請求項2に係る液滴吐出ヘッドは、液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる液滴ヘッドにおいて、前記圧電アクチュエータは、貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、前記圧力室が前記貫通孔内に形成されたことを特徴とする。
【0015】
この構成では、液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる。
【0016】
ここで、本発明の請求項2の圧電アクチュエータは、貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、その貫通孔内に圧力室が形成されている。孔を形成した圧電体プレートを積層接合するほうが、圧電体プレート積層接合してから長孔を形成するのに比べ、加工がしやすいため、請求項2の構成によれば、精度よく圧力室が形成できる。
【0017】
本発明の請求項3に係る液滴吐出装置は、請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項4に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項1に記載の液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッド製造方法であって、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、前記溝内に圧力室となる空洞を形成する接合工程を備えたことを特徴とする。
【0019】
この構成では、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、溝内に圧力室となる空洞を形成する。溝を形成するほうが、孔を形成するのに比べ、加工がしやすいため、請求項4の構成によれば、精度よく圧力室が形成できる。
【0020】
本発明の請求項5に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項4の構成において、前記接合工程は、前記溝が形成された複数の圧電体プレートを積層し焼成して接合することを特徴とする。
【0021】
この構成では、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層し焼成して接合する。これにより、接着剤等を使用して接合する必要がなくなり、液体が供給される供給路等に接着剤等が侵入して、供給路等を塞ぐことがない。
【0022】
本発明の請求項6に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項4又は請求項5の構成において、前記接合工程において接合された圧電体プレートを前記溝が形成された溝形成方向と直交する方向に切断する切断工程を備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項7に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項2に記載の液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッド製造方法であって、貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、前記貫通孔内に圧力室となる空洞を形成する接合工程を備えたことを特徴とする。
【0024】
この構成では、貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、貫通孔内に圧力室となる空洞を形成する。圧電体プレート積層接合してから長孔を形成するのに比べ、孔を形成した圧電体プレートを積層接合するほうが、加工がしやすいため、請求項7の構成によれば、精度よく圧力室が形成できる。
【0025】
本発明の請求項8に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項4〜7のいずれか1項の構成において、前記接合工程において形成された空洞の周囲の表面に周囲溝を形成して、前記空洞の周辺部を筒状にする溝形成工程を備えたこと特徴とする。
【0026】
本発明の請求項9に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項8の構成において、前記圧電アクチュエータの電極へ駆動信号を送るための配線基板を前記圧電アクチュエータに接合する基板接合工程と、前記基板接合工程後、前記圧電アクチュエータの電極を形成する電極形成工程と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項10に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項9の構成において、前記電極形成工程は、さらに、前記電極と前記配線基板とを電気的に接続することを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項11に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項9又は請求項10の構成において、前記電極形成工程は、スパッタリング、又は、蒸着により電極を形成するものであることを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項12に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項9〜11のいずれか1項の構成において、前記電極形成工程は、筒状にされた前記空洞の周辺部の外周面から前記空洞の内周面に渡って電極を形成し、筒状にされた周辺部の端面を研磨して、前記空洞の周辺部の外周面と前記空洞の内周面とに前記電極を分離する分離工程を備えたことを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項13に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項9〜12のいずれか1項の構成において、前記電極を前記液体から保護する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項14に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項13の構成において、前記保護膜は、低透水性膜であることを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項15に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項13の構成において、前記保護膜は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜であることを特徴とする。
【0033】
本発明の請求項16に係る液体吐出ヘッド製造方法は、請求項13〜15のいずれか1項の構成において、前記圧電アクチュエータ及び前記電気配線基板の一方に、前記圧力室となる空洞へ液体を供給するための供給路が形成された供給プレートを接合する供給プレート接合工程と、前記圧電アクチュエータ及び前記電気配線基板の他方に、前記液滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートを接合するノズルプレート接合工程と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、上記構成としたので、精度よく圧力室を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に、本発明の液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッド製造方法に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0036】
まず、図1を用いて、液滴吐出装置としてのインクジェット記録装置100の概要を説明する。なお、記録媒体は記録紙Pとして説明する。また図1では、インクジェット記録装置100における記録紙Pの搬送方向を副走査方向として矢印Sで表し、その搬送方向と直交する方向を主走査方向として矢印Mで表す。
【0037】
図1に示されるように、本実施形態のインクジェット記録装置100は、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクジェット記録ユニット130(インクジェット記録ヘッド10)を搭載するキャリッジ112を備えている。キャリッジ112は、記録紙Pの搬送方向上流側に一対のブラケット114が突設されており(図では片側のブラケット114のみを示している)、この一対のブラケット114にそれぞれ形成された円形孔には、主走査方向に架設されたシャフト120が挿通されている。
【0038】
キャリッジ112に対し主走査方向の両端側には、主走査機構116を構成する駆動プーリー(図示省略)と従動プーリー(図示省略)が配設されている。これらの駆動プーリーと従動プーリーとに巻回されて、主走査方向に走行するタイミングベルト122の一部がキャリッジ112に固定されている。これにより、キャリッジ112は、駆動プーリーの回転駆動によってタイミングベルト122が主走査方向に走行すると、一対のブラケット114がシャフト120にガイドされて主走査方向に往復移動する。
【0039】
インクジェット記録装置100の前側下部には、画像印刷前の記録紙Pを束状にして収納しておく給紙トレイ126が設けられている。この給紙トレイ126の上方には、上記各色のインクジェット記録ユニット130によって画像が印刷された記録紙Pが排出される排紙トレイ128が設けられている。また、キャリッジ112及びシャフト120の下方には、給紙トレイ126から1枚ずつ給紙された記録紙Pを所定のピッチで副走査方向へ搬送する搬送ローラー及び排出ローラーからなる副走査機構118が設けられている。
【0040】
その他、このインクジェット記録装置100には、印刷時において各種設定を行うコントロールパネル124や、メンテナンスステーション(図示省略)等が設けられている。メンテナンスステーションは、キャップ部材、吸引ポンプ、ダミージェット受け、クリーニング機構等を含んで構成されており、吸引回復動作、ダミージェット動作、クリーニング動作等のメンテナンス動作を行うようになっている。
【0041】
また、各色のインクジェット記録ユニット130は、図2及び図3に示されるインクジェット記録ヘッド10と、それにインクを供給するインクタンク(図示省略)とが一体に構成されたものであり、インクジェット記録ヘッド10の下面(インク吐出面)に形成された複数のノズル22(図3参照)が、記録紙Pと対向するようにキャリッジ112上に搭載されている。これにより、インクジェット記録ヘッド10が主走査機構116によって主走査方向に移動しながら、記録紙Pに対してノズル22から選択的にインク滴を吐出することにより、所定のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録される。
【0042】
そして、主走査方向への1回の移動が終了すると、記録紙Pは、副走査機構118によって副走査方向に所定ピッチ搬送され、再びインクジェット記録ヘッド10(インクジェット記録ユニット130)が主走査方向(前述とは反対方向)に移動しながら、次のバンド領域に対して画像データに基づく画像の一部が記録されるようになっており、このような動作を複数回繰り返すことによって、記録紙Pに画像データに基づく全体画像がフルカラーで記録される。
【0043】
次に、このインクジェット記録装置100に搭載されたインクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)10について説明する。
【0044】
図2〜図4に示される本実施形態のインクジェット記録ヘッド10は、図の下側からノズルプレート12、プリント配線基板14、圧電素子基板(圧電アクチュエータ)16、供給路プレート18、及びインクプールプレート20の順に積層され、各部材が互いに接合されて構成されている。
【0045】
図2に示されるように、ノズルプレート12には円形貫通孔からなる複数のノズル22が形成されており、これらのノズル22は所定の間隔でマトリックス状に配置されている。
【0046】
プリント配線基板14には、ノズルプレート12の各ノズル22と対応する位置に、ノズル径よりも少し大径の円形貫通孔からなる連通路24がそれぞれ形成されている(図4(A)、(B)参照)。プリント配線基板14の上面には、各連通路24と対応する位置に、円環状のコンタクト電極26がそれぞれ形成されており、各コンタクト電極26は、基板上面に形成された配線パターン28を介して、基板上面の端部近傍に実装された駆動IC30と電気的に接続されている。また、この駆動IC30は、プリント配線基板14上に形成されたコンタクト部31を通して外部(ヘッド制御部)から制御信号(印字命令)が入力され、その制御信号に基づいて、以下に説明する圧電素子基板16の各圧電素子32に電気信号(駆動信号)を送信し、各圧電素子32をそれぞれ所定のタイミングで駆動させる。
【0047】
また、プリント配線基板14の上面の連通路24が設けられていない位置には、円環状のコンタクト電極26と並列に、共通接続用電極67が形成されている。共通接続用電極27は、プリント配線基板14の上面に形成された配線パターン69を介して、GND電位に接続されている。
【0048】
図5に示されるように、圧電素子基板16は、上記の駆動IC30によって個別に駆動される複数の圧電素子32及び、共通電極接続用圧電体73を備えている。これらの圧電素子32は、四角筒状をしており、内部に圧電素子基板16の厚み方向に沿って貫通する円形状の空洞Rが形成されている。この空洞Rの内径は、連通路24よりも少し大径とされている(図4(A)、(B)参照)。また、各圧電素子32は、上記の各ノズル22及び各連通路24に対応してマトリックス状に配置されるとともに、下端部が薄肉のベース基板部33に繋がれて一体化されている。
【0049】
また、共通電極接続用圧電体73は、圧電素子32と略同一形状とされ、共通接続用電極67に対応する位置に形成されている。共通電極接続用圧電体73の高さは、圧電素子32の高さよりも低く(少なくとも後述する電極38、電極34の厚み分低く)構成されている。
【0050】
図4(A)、(B)に示されるように、圧電素子32及び共通電極接続用圧電体73の外周面には、正極側の電極34が外周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電素子32及び共通電極接続用圧電体73の電極34は、ベース基板部33の上面に形成された共通電極36を介して互いに電気的に接続されている。また、圧電素子32及び共通電極接続用圧電体73の内周面には、負極側の電極38が内周面全面を被覆するよう形成されている。各圧電素子32の電極38は、下端部をプリント配線基板14上の各コンタクト電極26に接触させて電気的に接続されている。
【0051】
共通電極接続用圧電体73の先端面には、先端面電極73Cが形成されている。したがって、共通電極接続用圧電体73では、電極38、及び、先端面電極73Cは、電極34と接続されており、共通電極接続用圧電体73に設けられた空洞R部分から、各圧電素子32に共通の電極34が引き出され、配線パターン69を介してGND電位に接続されている。
【0052】
このように、筒状の圧電素子32では、正電極(電極38)を外周面に、負電極(電極34)を内周面に設けていることにより、分極方向が圧電素子32の内外方向となるよう、詳細には、圧電素子32の外側から内側へ向かう方向となるよう構成されている。なお、この正負電極については、圧電素子32の内外で逆に配置することも可能である。また、この圧電素子32は、分極方向の側面(外側面)が壁部(ベース基板部33)に繋がれた構造であることにより、所謂Wall型の圧電素子として構成さている。これにより、駆動IC30からの電気信号が電極34、38間に配置された圧電素子32に印加されると、圧電素子32は後述する所定の変形動作を行う。
【0053】
供給路プレート18には、圧電素子基板16の各圧電素子32と対応する位置に、圧電素子32の内径よりも少し小径の円形貫通孔からなる供給路40がそれぞれ形成されている(図4(A)、(B)参照)。供給路プレート18の下面における各圧電素子32との対応位置には、供給路40を中心として圧電素子32の外径と略同径の円形状に突出された突出部(厚肉部)42がそれぞれ設けられ、これらの突出部42は各圧電素子32に強固に接合されている。また、各突出部42はそれぞれ繋がれてその繋ぎ部(突出部42の周囲)は供給路プレート本体及び突出部42よりも薄肉とされており、この繋ぎ部によって低剛性のダンパ部44が形成されている。
【0054】
供給路プレート18を圧電素子基板16に積層すると、図4(A)、(B)に示されるように、四角筒状の圧電素子32内部の空洞Rに圧力室46が形成される。この圧力室46は、上壁面46Aが突出部42の下面(可動内壁面)によって形成され、周面状とされた内側壁面46Bが、電極38が被覆形成された圧電素子32の内周面(変形部)によって形成されている。
【0055】
図4(A)に示されるように、インクプールプレート20は、下面側に空洞部が形成されており、上面には、空洞部に連通されたインクインレット(インク供給路)48が設けられている。このインクプールプレート20を供給路プレート18に積層すると、上記の空洞部によって供給路プレート18との間にインクプール50が形成される。また、供給路プレート18のダンパ部44は、インクプール50の内壁の一部を構成する構成部位となっており、このインクプール50には、外部(インクタンク)からインクインレット48を通しインクが供給されて貯留される。
【0056】
本実施形態のインクジェット記録ヘッド10は以上の構成とされており、このインクジェット記録ヘッド10では、上述したように、ノズル22からインクプール50までの各部(ノズル22、連通路24、圧力室46(圧電素子32)、供給路40、及びインクプール50)が、各構成部材によって層状に配置されている。
【0057】
次に、上述した本実施形態のインクジェット記録ヘッド10による印字(インク吐出)動作及び作用について説明する。
【0058】
インクジェット記録ヘッド10による印字では、まず、インクプール50に貯留されたインクが供給路40を通して圧力室46に供給され、さらに、圧力室46から連通路24を通してノズル22まで充填される。
【0059】
ここで、圧電素子32は、電極34、38間に電気信号が加えられないと、図6(A)に示されるように、筒状のまま形状が保たれる。また、印字命令によって電極34、38間に電気信号が加えられると、圧電素子32は充電されて、図6(B)に示されるように、軸方向断面で見ると樽状に膨張するよう変形する。
【0060】
本実施形態の圧電素子32では、図6(C)に示されるように、分極方向に電気信号を加え、それと平行方向に歪みを生じさせる圧電縦効果(d33)により、矢印d33で示した内外方向に膨張変形し、さらに、分極方向に電気信号を加え、それと垂直方向に歪みを生じさせる圧電横効果(d31)により、矢印d31(a)で示した軸方向に圧縮変形し、矢印d31(b)で示した辺方向に収縮変形する。このように、この筒状の圧電素子32は、圧電縦効果による内外方向、圧電横効果による軸方向及び辺方向の3方向に変形する。
【0061】
ここで、圧電素子32の圧電横効果による軸方向への圧縮変形により、圧電素子32の上端面に接合された供給路プレート18の突出部42、すなわち圧力室46の上壁面46Aがノズル22側へ移動し(図6(B)の矢印A)、圧力室46内のインクを加圧し圧縮する。さらに、圧電素子32の圧電縦効果による内外方向への膨張変形と、圧電横効果による辺方向への収縮変形とが合わされて、圧電素子32の内周面(変形部)、すなわち圧力室46の内側壁面46Bが内方へ膨出し(図6(B)の矢印B)、圧力室46内のインクを加圧し圧縮する。そして、これらの2つの変形動作による圧力室46の2方向への変形によって加圧された圧力室46内のインクは、連通路24を介しノズル22からインク滴として吐出される。
【0062】
続いて、電極34、38間への電気信号の印加を停止し、圧電素子32に蓄積された電荷を放電すると、圧電素子32は、図6(B)の状態から図6(A)に示される元の筒形状に戻る。そしてこれに伴い、ノズル22内に形成されたメニスカスの復帰力によって、吐出された分のインクがインクプール50から供給路40を通して圧力室46内に補充される。
【0063】
このインク吐出動作を繰り返すことにより、インクジェット記録ヘッド10のノズル22からインク滴が連続的に吐出されて、用紙等に印字される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態のインクジェット記録ヘッド10では、インクプール50から供給路40を介して圧力室46に供給されたインクを、ノズル22からインク滴として吐出させるため、圧電素子32の変形によって圧力室46を変形させ、圧力室46内のインクに圧力を加える構成であるが、この圧電素子32は圧電縦効果及び圧電横効果の変形によって圧力室46を2方向へ変形させるため、例えば圧電縦効果のみ、又は、圧電横効果のみの変形によって圧力室を変形させる場合に比べ、圧力の発生効率が向上する。
【0065】
また、本実施形態では、圧力室46の内側壁面46Bを形成する圧電素子32の変形部である内周面が、圧力室46内のインクを直接的に加圧するため、インクに加えられる圧力の損失が小さくされ、圧電素子32の変形によって発生された圧力がインクに効率よく伝達される。
【0066】
また、本実施形態では、圧電素子32の変形に伴って圧力室46の上壁面46Aが移動し、圧力室46内のインクを吐出方向(ノズル22側)へ加圧/減圧する構成であり、これにより、圧力室46のインク吐出方向への変形が可能となり、圧力の発生効率を向上することができている。また、この可動構造とした圧力室46の上壁面46A(可動内壁面)を供給路プレート18(突出部42)によって形成していることにより、このような可動内壁面を形成するために専用のプレート等を設ける場合に比べて、インクジェット記録ヘッド10を小型に構成できる。
【0067】
また、本実施形態では、上述したインク吐出動作で圧電素子32が高速駆動されるが、この高速駆動に伴い圧電素子32及び圧力室46の上壁面46A(突出部42)が振動する際に、突出部42同士を繋いで給路プレート本体よりも低剛性とされたダンパ部44によってその振動が減衰される。これにより、隣接する圧電素子32間での駆動動作の影響(クロストーク)を低減することができる。
【0068】
また、このダンパ部44はインクプール50の内壁の一部を構成する構成部位であるため、インク滴を吐出するために圧力室46で発生された圧力はダンパ部44によって吸収される。これにより、インク滴吐出時に特定の圧力室46で発生した圧力が供給路40からインクプール50へ伝わり、隣接する圧力室46での圧力発生に及ぼす悪影響を改善することができる。したがって、インク吐出性能が安定する。
【0069】
また、本実施形態のインクジェット記録装置100では、上記のインクジェット記録ヘッド10を備えることで低消費電力化が図られる。
【0070】
なお、図7(A)に示されるように、圧電素子基板60に複数設けられた圧電素子62は、内部に圧電素子基板16の厚み方向に沿って貫通する断面四角形状の空洞Rを形成してもよい。この圧電素子62も、電極34、38間に電気信号が加えられると、図7(B)に示されるように、圧電縦効果(d33)により、矢印d33で示した内外方向に膨張変形し、さらに、圧電横効果(d31)により、矢印d31(a)で示した軸方向に圧縮変形し、矢印d31(b)で示した辺方向に収縮変形して、軸方向断面で見ると、図6(B)に示した矢印A、B方向に変形する。
【0071】
したがって、このような断面四角形状の空洞Rを形成した圧電素子62の場合でも、圧電縦効果及び圧電横効果の各変形が合わせられ、圧力の発生効率を向上することができる。
【0072】
ここで、インクジェット記録ヘッド10の製造方法について説明する。
【0073】
本実施形態のインクジェット記録ヘッド10の製造方法は、マトリックス状に空洞Rが形成された圧電体プレートAを製造する工程、圧電体プレートAから電極形成前の圧電素子基板16を製造する工程、電極形成前の圧電素子基板16とプリント配線基板14を接合し電極を形成する工程、形成された電極を液体から保護する保護膜を形成する保護膜形成工程、圧電素子基板16及びプリント配線基板14に各プレートを積層して接合する工程とを備えている。
【0074】
マトリックス状に空洞Rが形成された圧電体プレートAを製造する工程は、第1溝形成工程、接合工程、切断工程を備えている。第1溝形成工程では、図8に示すように、矩形状の圧電体プレート(板状の圧電体)66に、その側面66Aに対して平行となるように、複数の第1溝68を形成する。複数の第1溝は、所定の深さに削られた矩形状をしており、等間隔で互いが平行となるように形成されている。この第1溝68は、カッター等を用いて溝部分を削り取って加工することにより形成される。この溝内の空洞の一部は、最終的に、インクジェット記録ヘッド10の圧力室46の空間となる。
【0075】
次に、接合工程では、図9に示すように、溝が形成されていない圧電体プレート70の間に、第1溝形成工程で第1溝68が形成された圧電体プレート66を複数枚挟み込んで、圧電体プレート66、70を積層する。圧電体プレート66は、溝が形成された面を一方向(図9において上方)へ向けて積層される。積層された圧電体プレート66、70を一体焼成して、各圧電体プレート66、70を接合する。圧電体プレート66、70は、積層後に焼成して接合されるので、接着剤等を使用する必要がなくなる。
【0076】
なお、焼成した後に圧電体プレート66に第1溝68を形成して、圧電体プレート66及び焼成した圧電体プレート70を積層し、接着剤等により接合してもよい。
【0077】
次に、切断工程では、接合工程において接合された圧電体プレート66、70を、所定の厚みになるように、第1溝68が形成された溝形成方向と直交する方向に切断する。
【0078】
このように、第1溝形成工程、接合工程、切断工程を経て、マトリックス状に空洞Rが形成された圧電体プレートAが製造される。
【0079】
第1溝68は、図10に示すように、断面が半円形状の溝であってもよい。この場合の第1溝形成工程では、3枚の圧電体プレート66の両面に半円形状の第1溝68を形成し、2枚の圧電体プレート66の片面に半円形状の第1溝68を形成する。
【0080】
接合工程では、両面に第1溝68が形成された圧電体プレート66を中央部に配置し、その両側に、片面に第1溝68が形成された圧電体プレート66を挟むように配置する。さらにその両側には、溝が形成されていない圧電体プレート70を配置し、圧電体プレート66、70を積層する。圧電体プレート66は、第1溝68が互いに対向し、第1溝68同士が合わさって断面円形状の空洞Rが形成されるように、積層される。積層された圧電体プレート66、70を一体焼成して、各圧電体プレート66、70を接合する。
【0081】
切断工程で、所定の厚みに切断され、マトリックス状に断面円形状の空洞Rが形成された圧電体プレートAが製造される。
【0082】
次に、マトリックス状に空洞Rが形成された圧電体プレートAを製造する工程の他の例について説明する。
【0083】
この例では、図11に示すように、圧電体プレートAよりも薄い矩形状の圧電体プレート72に断面四角形状の貫通孔74をマトリックス状に形成する。貫通孔74が形成された圧電体プレート72の複数枚(本実施形態では、3枚)を積層して接合し、圧電体プレートAを製造する。なお、図12に示すように、圧電体プレート72に形成される貫通孔は、断面が円形状の貫通孔76であってもよい。
【0084】
貫通孔74、76は、サンドブラスト加工、ウォータージェット加工、超音波加工等により形成される。また、圧電体プレート72は、焼成前にパンチにより貫通孔74、76を形成した後、焼成しても良い。圧電体プレート72の接合方法は、焼成前に圧電体プレート72を積層して一体で焼成する方法や、各圧電体プレート72を焼成後に接着接合する方法でも良い。
【0085】
次に、圧電体プレートAから電極形成前の圧電素子基板16を製造する工程が行われる。
この工程では、まず、図13(A)に示す圧電体プレートA上の共通電極接続用圧電体73が配置される部分(K)を直線上に所定の深さ分除去する(図13(B)参照)。ここでの除去は、ダイシング加工等によりおこなうことができる。
【0086】
次に、圧電体プレートAに形成された複数の空洞Rの周囲に周囲溝を形成する周囲溝形成工程が行われる。周囲溝形成工程では、まず、図13(C)示すように、圧電素子32が配置される部分に、共通電極接続用圧電体73が配置されるK部分と平行な第2溝78を複数形成する。複数の第2溝78は、所定の深さに削られた矩形状をしており、等間隔で互いが平行となるように形成されている。
【0087】
そして、図13(D)示すように、第2溝78と直交する第3溝80を複数形成して、圧電素子32及び共通電極接続用圧電体73に分離する。なお、第2溝78及び第3溝80は、ワイヤー加工、ダイシング加工等により形成することができる。このように、直交する第2溝78及び第3溝80を形成することにより、空洞Rの周囲に周囲溝を形成し、空洞Rの周辺部が四角筒状にされ、圧電素子32及び共通電極接続用圧電体73が形成される。
【0088】
なお、共通電極接続用圧電体73が配置される部分を除去する工程、第2溝78を形成する工程、第3溝80を形成する工程を行う順序は、順不同で行うことが可能である。また、サンドブラスト加工やウォータージェットなどのブラスティング加工を用いることにより、第2溝78及び第3溝80を同時に形成してもよい。
【0089】
また、図14に示すように、断面四角形状の空洞が形成された圧電体プレートAにおいても、同様の工程を経て、電極形成前の圧電素子基板が製造される。この場合では、図7(A)に示す圧電素子基板60が製造される。
【0090】
次に、圧電素子基板16とプリント配線基板14を接合し電極を形成する工程が行われる。この工程では、電極形成前の圧電素子基板16のベース基板部33の裏面側(圧電素子32が形成されていない側)にプリント配線基板14を接合する。プリント配線基板14には、圧電素子32の空洞に対応する位置に連通路24が形成されている。連通路24は、空洞の内径よりも小径とされている。
【0091】
プリント配線基板14と電極形成前の圧電素子基板16の接合は、図15(A)に示すように、圧電素子基板16のベース基板部33側とプリント配線基板14の配線面とを対向させ、プリント配線基板14上面のコンタクト電極26が圧電素子32の空洞Rへ露出されるように、また、共通接続用電極67が共通電極接続用圧電体73の空洞Rへ露出されるようにして接合する。
【0092】
次に、図15(B)に示すように、圧電素子基板16側の全面、及び、プリント配線基板14の連通路24の内壁に、電極膜Dを形成する。電極膜Dの形成は、Cuの蒸着、スパッタリング等により行うことができる。これにより、電極膜Dとプリント配線基板14のコンタクト電極26、共通接続用電極67も接続される。
【0093】
そして、図15(C)に示すように、圧電素子32の先端面32Cに形成された電極膜Dを、除去する。電極膜Dの除去は、CMPなどの片側研磨により行うことができる。これにより、電極膜Dは圧電素子32の内側壁32Aに形成された電極38と、圧電素子32の外側壁32Bに形成された電極34とに分離される。
【0094】
次に、コンタクト電極26及び電極38をインク(液体)から保護する保護膜を形成する保護膜形成工程が行われる。
【0095】
圧電素子基板16の表面に保護膜樹脂を充填し、コンタクト電極26を含む電極38の表面に保護膜88を形成する。インクに触れる部分である電極38及びコンタクト電極26が被覆されればよいが、すべての電極膜に保護膜88を形成してもよい。
【0096】
保護膜としては、低透水性膜を用いることができ、具体的には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜を用いることができる。なお、図16において、黒塗り部分が電極38、コンタクト電極26を含む電極膜を示し、白抜き部分が保護膜を示す。
【0097】
次に、図4に示すように、ノズルプレート12をプリント配線基板14の下側に接合し、供給路プレート18を圧電素子基板16の上側に接合する。このとき、ノズル22と連通路24とが連通されるように、また、圧電素子32の空洞Rと供給路40とが連通されるように位置合わせを行って接合する。
【0098】
そして、供給路プレート18の上部にインクプールプレート20を接合して、インクジェット記録ヘッド10が製造される。
【0099】
上記製造方法によれば、圧電素子基板16は、第1溝68が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、その第1溝68内に圧力室46が形成される。溝を形成するほうが、孔を形成するのに比べ加工がしやすいため、精度よく圧力室46が形成できる。
【0100】
また、電極膜Dを形成し、その後、圧電素子32の先端面32C部分の電極膜Dを除去することにより、容易に電極38と電極34とを形成することができる。また、コンタクト電極26、共通接続用電極67と電極膜との接続も電極膜形成の工程で行うことができる。
【0101】
さらに、共通電極接続用圧電体73を圧電素子32よりも低くしているので、圧電素子32の先端面32C部分の電極膜Dを除去する際に、共通電極接続用圧電体73の先端面73Aの電極膜は研磨により除去されず、駆動を経由させて共通の電極を容易にプリント配線基板14側に引き出すことができる。
【0102】
また、このような四角筒状の場合、エッチング加工等を用いて一枚の基板に複数の圧電素子を配列形成する際に、円筒状等に比べて個々の圧電素子の形成が容易であり、且つ、より狭い間隔で配置することができる。これにより、複数の圧電素子をマトリックス状に配置した場合に、円筒状よりも四角筒状の圧電素子の方が無駄なスペースを生じさせることなくより高密度に配置することができ、更なるノズルの高密度化が可能となる。
【0103】
また、本実施形態では、インクジェット記録ヘッド10に設ける各部(ノズル22、連通路24、圧力室46(圧電素子32)、供給路40、及びインクプール50)を異なる層に配置していることにより、それらの各部を複数の構成部材に振り分けて形成し、各構成部材を積層することでインクジェット記録ヘッド10を製造することができる。これにより、インクジェット記録ヘッド10の製造性が向上する。
【0104】
また、上記の実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出装置として、インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録装置について説明し、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドとして、インクを吐出して画像を記録するインクジェット記録ヘッドについて説明した。しかし、本発明に係る液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドとしては、記録用紙上へ画像を記録するものに限定されるものではなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。
【0105】
例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成する装置、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置など、工業的に用いられる液滴吐出装置及びその液滴吐出装置に用いられる液滴吐出ヘッド全般に対して、本発明を適用することができる。
【0106】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変形、変更、改良が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの分解状態を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの外観を示す斜視図である。
【図4】図4は、本実施形態にかかるインクジェット記録ヘッドの断面を示し、(A)は図3の4A−4A線断面図、(B)は(A)の4B部を拡大した断面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係る圧電素子基板の外観を示す斜視図である。
【図6】図6(A)は、本実施形態に係る圧電素子及び圧力室の未変形状態を示す断面図、図6(B)は、変形状態を示す断面図、図6(C)は、圧電素子の変形方向を示す拡大斜視図である。
【図7】図7は、本実施形態に係る圧電素子基板の変形例を示し、(A)は、変形例に係る圧電素子基板の外観を示す斜視図、(B)は、圧電素子の変形方向を示す拡大斜視図である。
【図8】図8は、本実施形態に係る第1溝形成工程を示す図である。
【図9】図9は、本実施形態に係る接合工程及び切断工程を示す図である。
【図10】図10は、本実施形態に係る圧電体プレートに円形状の空洞を形成する場合の接合工程及び切断工程を示す図である。
【図11】図11は、本実施形態に係る断面四角形状の空洞が形成された圧電体プレートを製造する工程の他の例を示す図である。
【図12】図12は、本実施形態に係る断面円形状の空洞が形成された圧電体プレートを製造する工程の他の例を示す図である。
【図13】図13は、本実施形態に係る圧電体プレートに形成された断面円形状の空洞の周囲に周囲溝を形成する周囲溝形成工程を示す図である。
【図14】図14は、本実施形態に係る圧電体プレートに形成された断面四角形状の空洞の周囲に周囲溝を形成する周囲溝形成工程を示す図である。
【図15】図15は、本実施形態に係る電極形成工程を示す図である。
【図16】図16は、本実施形態に係る保護膜形成工程を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
10 インクジェット記録ヘッド
12 ノズルプレート
14 プリント配線基板(配線基板)
16 圧電素子基板(圧電アクチュエータ)
18 供給路プレート
34 電極
36 共通電極
38 電極
46 圧力室
66 圧電体プレート
68 第1溝(溝)
70 圧電体プレート
72 圧電体プレート
74 貫通孔
76 貫通孔
78 第2溝(周囲溝)
80 第3溝(周囲溝)
88 保護膜
100 インクジェット記録装置
R 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる液滴ヘッドにおいて、
前記圧電アクチュエータは、溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、前記圧力室が前記溝内に形成されたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
液体が供給される圧力室を圧電アクチュエータが加圧して液滴を吐出させる液滴ヘッドにおいて、
前記圧電アクチュエータは、貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して形成され、前記圧力室が前記貫通孔内に形成されたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッド製造方法であって、
溝が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、前記溝内に圧力室となる空洞を形成する接合工程を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド製造方法。
【請求項5】
前記接合工程は、前記溝が形成された複数の圧電体プレートを積層し焼成して接合することを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項6】
前記接合工程において接合された圧電体プレートを前記溝が形成された溝形成方向と直交する方向に切断する切断工程を備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッド製造方法であって、
貫通孔が形成された複数の圧電体プレートを積層接合して、前記貫通孔内に圧力室となる空洞を形成する接合工程を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項8】
前記接合工程において形成された空洞の周囲の表面に周囲溝を形成して、前記空洞の周辺部を筒状にする溝形成工程を備えたこと特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項9】
前記圧電アクチュエータの電極へ駆動信号を送るための配線基板を前記圧電アクチュエータに接合する基板接合工程と、
前記基板接合工程後、前記圧電アクチュエータの電極を形成する電極形成工程と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項10】
前記電極形成工程は、さらに、前記電極と前記配線基板とを電気的に接続することを特徴とする請求項9に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項11】
前記電極形成工程は、スパッタリング、又は、蒸着により電極を形成するものであることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項12】
前記電極形成工程は、筒状にされた前記空洞の周辺部の外周面から前記空洞の内周面に渡って電極を形成し、
筒状にされた周辺部の端面を研磨して、前記空洞の周辺部の外周面と前記空洞の内周面とに前記電極を分離する分離工程を備えたことを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項13】
前記電極を前記液体から保護する保護膜を形成する保護膜形成工程を備えたことを特徴とする請求項9〜12のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項14】
前記保護膜は、低透水性膜であることを特徴とする請求項13に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項15】
前記保護膜は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコンのいずれかを含む無機系保護膜であることを特徴とする請求項13に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。
【請求項16】
前記圧電アクチュエータ及び前記電気配線基板の一方に、前記圧力室となる空洞へ液体を供給するための供給路が形成された供給プレートを接合する供給プレート接合工程と、
前記圧電アクチュエータ及び前記電気配線基板の他方に、前記液滴を吐出するノズルが形成されたノズルプレートを接合するノズルプレート接合工程と、
を備えたことを特徴とする請求項13〜15のいずれか1項に記載の液滴吐出ヘッド製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−168319(P2007−168319A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−370438(P2005−370438)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】