説明

液滴吐出ヘッドの吐出制御方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配向膜の製造方法、

【課題】ノズルの吐出特性に起因する吐出ムラを低減して液状体を吐出することができる液滴吐出ヘッドの吐出制御方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配向膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法は、液滴Dの吐出量を制御する異なる複数の駆動波形のうちの1つを、ノズル52ごとに選択可能な複数の選択テーブル1,2に基づいて、液滴Dの吐出ごとに複数の選択テーブル1,2のうちの1つを選択し、ノズル52ごとに設けられた駆動素子に対応する駆動波形を印加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体をノズルから吐出する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配向膜の製造方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの印刷装置に採用されているインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)を用いて、機能性材料を含む液状体を基板などの被吐出物に吐出し、機能性材料からなる薄膜を形成する方法が、材料の無駄を省き環境負荷が少ない薄膜形成方法として注目されている。このような薄膜としては、例えば、カラーフィルタやEL(エレクトロルミネセンス)素子の発光層、金属配線などが挙げられる。
【0003】
このような液滴吐出ヘッドの吐出制御に関する技術としては、インク吐出量に対応した複数の駆動電圧波形を発生する共通波形発生手段を備え、複数の駆動電圧波形のうちの1つを、階調データ信号により選択して、インクを吐出するための駆動素子としての圧電体に印加するインクジェット記録ヘッドの駆動装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−174883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液滴吐出ヘッドから吐出される液状体の吐出量は、ノズルに連通する吐出室や液状体の流路などのヘッド構造や駆動素子間のクロストークなどによって、ノズルごとにバラツキを有している。そのため、上記薄膜を形成する場合、ノズルごとに吐出される液状体の吐出量を安定化するための工夫が必要である。
【0006】
そこで、上記インクジェット記録ヘッドの吐出制御技術を用いて、駆動素子ごとに印加される駆動電圧波形を異ならせることが考えられる。しかしながら、ノズルごとの吐出量のバラツキに対応して、これを補正するように異なる駆動電圧波形を印加しても、すべてのノズルにおいて吐出量を均一にすることは難しく、吐出量のバラツキによる吐出ムラを完全になくすことは困難であった。
【0007】
本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、ノズルの吐出特性に起因する吐出ムラを低減して液状体を吐出することができる液滴吐出ヘッドの吐出制御方法、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法、配向膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法は、複数のノズルと、液状体を液滴として吐出するノズルごとに設けられた駆動素子とを有する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法であって、液滴の吐出量を制御する異なる複数の駆動波形のうちの1つを、ノズルごとに選択可能な複数の選択テーブルに基づいて、液滴の吐出ごとに複数の選択テーブルのうちの1つを選択し、駆動素子ごとに対応する駆動波形を印加することを特徴とする。
【0009】
一定の駆動波形を駆動素子に印加して、複数のノズルから液滴を吐出すると、ノズルの吐出特性に起因する液滴の吐出量のバラツキによって、吐出ムラが顕著に現れるおそれがある。この方法によれば、液滴の吐出ごと、且つノズルごとに複数の駆動波形のうちの1つを選択することが可能となる。よって、複数のノズルから吐出される液滴の吐出量を、吐出ごとに調整することができる。ゆえに、ノズルの吐出特性に起因する吐出ムラを低減することができる液滴吐出ヘッドの吐出制御方法を提供することができる。
【0010】
上記選択テーブルの数を基準とした乱数を用いて、複数の選択テーブルのうちの1つを選択するとしてもよい。この方法によれば、複数の選択テーブルを一定の順番で選択する場合に比べて、乱数を用いて選択するので、ノズルから同じ吐出量の液滴が連続して吐出されることによる吐出ムラを低減できる。
【0011】
上記複数の選択テーブルは、同一ノズルにおいて異なる駆動波形が印加されるように設定され、液滴の吐出ごとに複数の選択テーブルを切り換えるとしてもよい。この方法によれば、液状体の吐出ごとに異なる駆動波形が同一ノズルの駆動素子に印加される。よって、常に液滴の吐出量の設定が変わるので、ノズルから同じ吐出量の液滴が連続して吐出されることによる吐出ムラをより低減できる。
【0012】
また、上記複数の選択テーブルは、複数のノズルのうち隣り合うノズルの駆動素子に印加される駆動波形が異なるように設定されていることが望ましい。この方法によれば、ノズルの配列方向に同じ吐出量の液滴が吐出されることによる吐出ムラを低減できる。
【0013】
また、上記複数の選択テーブルのうちの1つは、液滴の吐出量がねらいの吐出量またはねらいの吐出量に近づくように、ノズルごとに複数の駆動波形のうちの1つを対応させて補正した選択テーブルであるとしてもよい。この方法によれば、液滴の吐出量が補正された選択テーブルを選択することが可能となる。したがって、ノズルの吐出特性に起因する液滴の吐出量のバラツキを補正する方向に調整することができる。
【0014】
上記複数の選択テーブルのうちの1つが補正した選択テーブルであり、他の選択テーブルが、上記補正した選択テーブルを選択したときのノズルごとの駆動波形に対して、複数の駆動波形のうち液滴の吐出量が相対的に近い1つをノズルごとに対応させているとしてもよい。この方法によれば、補正された液滴の吐出量を基準として、当該吐出量を調整することができる。すなわち、液滴の吐出量をねらいの吐出量を基準として、分散させることができる。
【0015】
また、上記補正した選択テーブルを選択する割合を、他の選択テーブルを選択する割合よりも高く設定することが望ましい。この方法によれば、液滴の吐出量を基準となるねらいの吐出量により近づけて、分散させることができる。
【0016】
本発明の液状体の吐出方法は、少なくとも1つの吐出領域を有する基板と、複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドとの相対移動に同期して、複数のノズルから吐出領域に機能性材料を含む液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、液滴の吐出ごとに、相対移動の方向において、同一ノズルから吐出される液滴の吐出量の設定を変えて吐出する吐出工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
この方法によれば、基板上の吐出領域において、相対移動の方向に異なる吐出量の液滴を吐出する、言い換えれば、連続して同じ吐出量の液滴が吐出されないので、ノズルの吐出特性に起因する相対移動方向のスジ状の吐出ムラを低減することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0018】
上記吐出工程では、液滴の吐出ごとに、複数のノズルのうち隣り合うノズルから吐出される液滴の吐出量の設定を変えて吐出するとしてもよい。この方法によれば、ノズルの吐出特性に起因するノズルの配列方向のスジ状の吐出ムラを低減することができる。
【0019】
上記吐出工程では、相対移動の方向において、任意の吐出発数を単位として、液滴のねらいの吐出量を基準として吐出量の設定を変えて吐出する吐出動作を、複数の吐出領域に必要量の液状体がそれぞれ付与されるまで繰り返すとしてもよい。この方法によれば、任意の吐出発数を単位として、上記吐出動作を繰り返すので、基板や吐出領域の大きさが変わっても、それに対応して吐出ムラを低減して液状体を付与することができる。
【0020】
上記相対移動の往動または復動あるいは往復の動作ごとに、上記吐出動作における吐出発数を変えることが望ましい。この方法によれば、吐出発数を相対移動の往動または復動あるいは往復の動作ごとに変えることにより、上記吐出動作により得られる液滴の吐出量の分散範囲を変えることができる。
【0021】
また、上記相対移動の往動または復動あるいは往復の動作ごとに、上記吐出動作における液滴の着弾位置を変えることが望ましい。この方法によれば、各吐出領域において、片寄りなく液滴を配置させ、より吐出ムラを目立ち難くすることができる。
【0022】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板上に区画形成された複数の着色領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、着色材料を含む少なくとも3色の液状体を複数の着色領域に吐出する吐出工程と、吐出された液状体を固化して、少なくとも3色の着色層を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする。この方法によれば、ノズルの吐出特性に起因する液状体の吐出ムラが低減されるので、色ムラが少ないカラーフィルタを製造することができる。
【0023】
本発明の有機EL素子の製造方法は、基板上に区画形成された複数の発光層形成領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を複数の発光層形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された液状体を固化して、発光層を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする。この方法によれば、ノズルの吐出特性に起因する液状体の吐出ムラが低減されるので、発光ムラや輝度ムラが少ない有機EL素子を製造することができる。
【0024】
本発明の配向膜の形成方法は、基板上の少なくとも1つの形成領域に、配向膜を形成する配向膜の形成方法であって、上記発明の液状体の吐出方法を用い、配向膜材料を含む液状体を形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された液状体を固化して、配向膜を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする。この方法によれば、ノズルの吐出特性に起因する液状体の吐出ムラが低減されるので、膜厚ムラが少ない配向膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(実施形態1)
本実施形態は、着色層を備えたカラーフィルタの製造方法を例に説明する。なお、説明に用いる図面の記載は、説明の都合上、寸法を適宜設定している。本実施形態のカラーフィルタは、基板上に区画された吐出領域としての着色領域に機能性材料としての着色層形成材料を含む液状体を吐出することにより形成する、所謂液滴吐出法(インクジェット方式)を採用して製造されている。
【0026】
<液滴吐出装置>
まず、液状体を液滴として吐出することができる液滴吐出ヘッドを備えた液滴吐出装置について図1〜図5を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
【0027】
図1に示すように、液滴吐出装置10は、ワークWを主走査方向(X軸方向)に移動させるワーク移動機構20と、ヘッドユニット9を副走査方向(Y軸方向)に移動させるヘッド移動機構30とを備えている。
【0028】
ワーク移動機構20は、一対のガイドレール21と、一対のガイドレール21に沿って移動する移動台22と、移動台22上に回転機構6を介して配設されたワークWを載置するステージ5とを備えている。移動台22は、ガイドレール21の内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示せず)により主走査方向に移動する。ステージ5はワークWを吸着固定可能であると共に、回転機構6によってワークW内の基準軸を正確に主走査方向、副走査方向に合わせることが可能となっている。
【0029】
ヘッド移動機構30は、一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31に沿って移動する移動台32とを備えている。移動台32には、回転機構7を介して吊設されたキャリッジ8が設けられている。キャリッジ8には、複数の液滴吐出ヘッド50(図2参照)が搭載されたヘッドユニット9が取り付けられている。また、液滴吐出ヘッド50に液状体を供給するための液状体供給機構(図示せず)と、複数の液滴吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバ48(図5参照)とが設けられている。移動台32がキャリッジ8をY軸方向に移動させてヘッドユニット9をワークWに対して対向配置する。
【0030】
液滴吐出装置10は、上記構成の他にも、ヘッドユニット9に搭載された複数の液滴吐出ヘッド50のノズルの目詰まりの解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構が、複数の液滴吐出ヘッド50を臨む位置に配設されている。また、液滴吐出ヘッド50ごとに吐出された液状体を受けて、その重量を計測する電子天秤などの計測器を有する重量計測機構60(図5参照)を備えている。図1では、メンテナンス機構および重量計測機構60は、図示省略した。
【0031】
図2は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略図である。同図(a)は概略分解斜視図、同図(b)はノズル部の構造を示す断面図である。図2(a)および(b)に示すように、液滴吐出ヘッド50は、液滴Dが吐出される複数のノズル52を有するノズルプレート51と、複数のノズル52がそれぞれ連通するキャビティ55を区画する隔壁54を有するキャビティプレート53と、各キャビティ55に対応する駆動素子としての振動子59を有する振動板58とが、順に積層され接合された構造となっている。
【0032】
キャビティプレート53は、ノズル52に連通するキャビティ55を区画する隔壁54と、キャビティ55に液状体を充填するための流路56,57とを有している。流路57は、ノズルプレート51と振動板58とによって挟まれ、出来上がった空間が、液状体が貯留されるリザーバの役目を果たす。
【0033】
液状体は、液状体供給機構から配管を通じて供給され、振動板58に設けられた供給孔58aを通じてリザーバに貯留された後に、流路56を通じて各キャビティ55に充填される。
【0034】
図2(b)に示すように、振動子59は、ピエゾ素子59cと、ピエゾ素子59cを挟む一対の電極59a,59bとからなる圧電素子である。外部から一対の電極59a,59bに駆動波形が印加されることにより接合された振動板58を変形させる。これにより隔壁54で仕切られたキャビティ55の体積が増加して、液状体がリザーバからキャビティ55に吸引される。そして、駆動波形の印加が終了すると、振動板58は元に戻り充填された液状体を加圧する。これにより、ノズル52から液状体を液滴Dとして吐出できる構造となっている。ピエゾ素子59cへ印加される駆動波形を制御することにより、それぞれのノズル52に対して液状体の吐出制御を行うことができる。
【0035】
液滴吐出ヘッド50における駆動素子は、圧電素子に限らない。振動板58を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、液状体を加熱してノズル52から液滴Dとして吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
【0036】
図3は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、ワークWに対向する側から見た図である。
【0037】
図3に示すように、ヘッドユニット9は、複数の液滴吐出ヘッド50が配設されるヘッドプレート9aを備えている。ヘッドプレート9aには、3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の液滴吐出ヘッド50が搭載されている。この場合、ヘッド群50AのヘッドR1(液滴吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(液滴吐出ヘッド50)とは同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0038】
各液滴吐出ヘッド50は、ほぼ等しい間隔(およそ140μmのノズルピッチ)で配設された複数(180個)のノズル52からなるノズル列52aを有している。ノズル52の径はおよそ20μmである。1つの液滴吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52aの有効長とする。以降、ノズル列52aとは、180個のノズル52から構成されるものを指す。
【0039】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル列52aが主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向に並列して配置されている。
【0040】
なお、液滴吐出ヘッド50に設けられるノズル列52aは、1列に限らない。例えば、複数のノズル列52aを互いにずらして配設すれば実質的なノズルピッチが狭くなり、高精細に液滴Dを吐出することが可能となる。
【0041】
図4は、液滴吐出ヘッドの吐出特性を示すグラフである。詳しくは、一方の軸をノズル52の番号とし、他方の軸をノズル52ごとに吐出される液滴Dの吐出量(Iw/ng)として、ノズル列52aにおける吐出量の分布を示したグラフである。
【0042】
図2(a)および(b)に示したように、複数のノズル52から吐出される液滴Dの吐出量は、キャビティ55、流路56,57の設計寸法やその加工精度によってキャビティ55ごとに流れる液状体の流動抵抗が異なることにより、ノズル52ごとに変動する。また、液状体が供給される供給孔58aが複数のキャビティ55に対してどのような位置に形成されたかにも影響される。さらには、キャビティ55ごとに設けられた振動子59の固有振動特性によっても影響される。すなわち、ノズル列52aから吐出される液滴Dの吐出量の分布が液滴吐出ヘッド50ごとに異なる場合がある。
【0043】
図4は、液滴吐出ヘッド50(ノズル列52a)の吐出特性を調べたものである。具体的には、所定の駆動電圧を有する駆動波形を振動子59に与え、数千から数万程度の吐出数(吐出発数)の液滴Dをノズル52から吐出させ、その液状体の重量を前述した重量計測機構60を用いて計測する。そして、計測された液状体の重量を上記吐出数で除して1滴あたりの重量を算出して液滴Dの吐出量とした。
【0044】
図4に示すように、その吐出特性の一つは、Iwアーチと呼ばれる曲線形状を示し、ノズル列52aの両端側に位置するノズル52から吐出される液滴Dの吐出量が、他のノズル52に対して増加する傾向を有している。後述する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法および液状体の吐出方法は、このようなノズル列52aの吐出特性に起因する吐出ムラを、極力小さくしようとするものである。
【0045】
次に液滴吐出装置10の制御系について説明する。図5は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。液滴吐出装置10の制御系は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20、ヘッド移動機構30等を駆動する各種ドライバを有する駆動部46と、駆動部46を含め液滴吐出装置10を制御する制御部4とを備えている。
【0046】
駆動部46は、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30の各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド50を吐出制御するヘッドドライバ48と、重量計測機構60の各ユニットを駆動制御する重量計測用ドライバ49と、メンテナンス機構の各メンテ用ユニットを駆動制御するメンテナンス用ドライバ(図示省略)とを備えている。
【0047】
制御部4は、CPU41と、ROM42と、RAM43と、P−CON44とを備え、これらは互いにバス45を介して接続されている。P−CON44には、上位コンピュータ11が接続されている。ROM42は、CPU41で処理する制御プログラム等を記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理等を行うための制御データ等を記憶する制御データ領域とを有している。
【0048】
RAM43は、ワークWに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、ワークWおよび液滴吐出ヘッド50(実際には、ノズル列52a)の位置データを記憶する位置データ記憶部等の各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON44には、駆動部46の各種ドライバ等が接続されており、CPU41の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON44は、上位コンピュータ11からの各種指令等をそのままあるいは加工してバス45に取り込むと共に、CPU41と連動して、CPU41等からバス45に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部46に出力する。
【0049】
そして、CPU41は、ROM42内の制御プログラムに従って、P−CON44を介して各種検出信号、各種指令、各種データ等を入力し、RAM43内の各種データ等を処理した後、P−CON44を介して駆動部46等に各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置10全体を制御している。例えば、CPU41は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構20およびヘッド移動機構30を制御して、ヘッドユニット9とワークWとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット9とワークWとの相対移動に同期して、ヘッドユニット9に搭載された各液滴吐出ヘッド50の複数のノズル52からワークWに液状体を液滴Dとして吐出して描画を行う。この場合、X軸方向へのワークWの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、Y軸方向にヘッドユニット9を移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の液滴吐出装置10は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、液滴吐出ヘッド50に対して一方向へのワークWの移動に限らず、ワークWを往復させて行うこともできる。
【0050】
上位コンピュータ11は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を液滴吐出装置10に送出するだけでなく、これらの制御情報を修正することもできる。また、図4に示したノズル列52aのノズル情報(吐出特性)に基づいて、基板上の吐出領域ごとに必要量の液状体を液滴Dとして配置する配置情報を生成する配置情報生成部としての機能を有している。配置情報は、吐出領域における液滴Dの吐出位置(言い換えれば、ワークWとノズル52との相対位置)、液滴Dの配置数(言い換えれば、ノズル52ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル52のON/OFF、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして現したものである。
【0051】
<液滴吐出ヘッドの吐出制御方法および液状体の吐出方法>
次に、本実施形態の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法および液状体の吐出方法について、図6〜図10を参照して説明する。図6は、液滴吐出ヘッドの電気的な制御を示すブロック図である。
【0052】
図6に示すように、ヘッドドライバ48は、液滴Dの吐出量を制御する異なる複数の駆動波形としての駆動信号COMを、それぞれ独立して生成するD/Aコンバータ(以降、DACとする)71A〜71Dと、DAC71A〜71Dが生成する駆動信号COMのスルーレートデータ(以下、波形データ(WD1〜WD4)とする)の格納メモリを内部に有する波形データ選択回路72と、P−CON44を介して上位コンピュータ11から送信される吐出制御データを格納するためのデータメモリ73と、を備えている。COM1〜COM4の各COMラインに、DAC71A〜DAC71Dで生成された駆動信号がそれぞれ出力される。
【0053】
各液滴吐出ヘッド50には、ノズル52ごとに設けられた振動子59(図2参照)への駆動信号COMの印加をON/OFFするスイッチング回路74と、各COMラインのいずれか1つを選択して、各振動子59に接続したスイッチング回路74に駆動信号COMを送出する駆動信号選択回路75と、を備えている。
【0054】
ノズル列52aにおいて、振動子59の一方の電極59bは、DAC71A〜71Dのグランドライン(GND)に接続されている。また、振動子59の他方の電極59a(以下、セグメント電極59aとする)は、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75を介して、各COMラインに電気的に接続されている。また、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75、波形データ選択回路72には、クロック信号(CLK)や各吐出タイミングに対応したラッチ信号(LAT)が入力されるようになっている。
【0055】
データメモリ73には、各液滴吐出ヘッド50の走査位置に応じて周期的に設定される吐出タイミング毎に、次のデータが格納されている。すなわち、各振動子59への駆動信号COMの印加(ON/OFF)を規定する吐出データDAと、各振動子59に対応したCOMライン(COM1〜COM4)の選択を規定する駆動信号選択データDBと、DAC71A〜71Dに入力される波形データ(WD1〜WD4)の種別を規定する波形番号データWNである。本実施形態においては、吐出データDAは、1ノズルあたり1ビット(0,1)で、駆動信号選択データDBは、1ノズルあたり2ビット(0,1,2,3)で、波形番号データWNは、1D/Aコンバータあたり7ビット(0〜127)で構成されている。尚、データ構造は適宜変更可能である。
【0056】
図7は、駆動信号および制御信号のタイミング図である。上述の構成において、各吐出タイミングに係る駆動制御は次のように行われる。図7に示すように、タイミングt1〜t2の期間において、吐出データDA、駆動信号選択データDB、波形番号データWNが、それぞれシリアル信号化されて、スイッチング回路74、駆動信号選択回路75、波形データ選択回路72に送信される。そして、タイミングt2において各データがラッチされることで、吐出(ON)に係る各振動子59のセグメント電極59aが、駆動信号選択データDBで指定されたCOMライン(COM1〜COM4のいずれか)に接続された状態となる。例えば、振動子59のセグメント電極59aは、駆動信号選択データDBが「0」のときには、COM1に接続される。同様に駆動信号選択データDBが「1」のときにはCOM2に、駆動信号選択データDBが「2」のときはCOM3に、駆動信号選択データDBが「3」のときはCOM4に接続される。また、DAC71A〜71Dの生成に係る駆動信号の波形データ(WD1〜WD4)がこの選択に連動して設定される。
【0057】
タイミングt3〜t4の期間においては、タイミングt2で設定された波形データに従い、それぞれ電位上昇、電位保持、電位降下の一連のステップで駆動信号COMが生成される。そして、COM1〜COM4とそれぞれ接続された状態にある振動子59に、生成された駆動信号COMが供給され、ノズル52に連通するキャビティ55の容積(圧力)制御が行われる。
【0058】
ここで、タイミングt3における電位上昇成分はキャビティ55を膨張させ、液状体をキャビティ55内に引き込む役割を果たしている。また、タイミングt4における電位降下成分は、キャビティ55を収縮させ、液状体をノズル52外に押し出して吐出させる役割を果たしている。
【0059】
駆動信号COMにおける電位上昇、電位保持、電位降下に係る時間成分、電圧成分は、その供給によって吐出される液状体の吐出量に密接に依存している。とりわけ、圧電方式の液滴吐出ヘッド50では、電圧成分の変化に対して吐出量が良好な線形性を示すため、タイミングt3〜t4における電圧成分の変化(電位差)を駆動電圧Vhとして規定し、これを吐出量制御の条件として利用することができる。すなわち、駆動電圧Vhは、本発明における液滴Dの吐出量を制御する駆動波形の条件の一つである。尚、生成する駆動信号COMは、本実施形態で示すような単純な矩形波に限られるものではなく、例えば、台形波など公知の様々な形状の波形を適宜採用することも可能である。また、異なる駆動方式(例えばサーマル方式)の実施形態の場合、駆動信号のパルス幅(時間成分)を吐出量制御の条件として利用することも可能である。
【0060】
本実施形態では、駆動電圧Vhを段階的に違えた複数種の波形データを用意し、DAC71A〜71Dにそれぞれ独立した波形データ(WD1〜WD4)を入力することにより、各COMラインにそれぞれ異なる駆動電圧Vh1〜Vh4の駆動信号COMを出力することが可能である。用意できる波形データの種類は、波形番号データWNの情報量(7ビット)に相当する128種類であり、例えばこれを0.1V刻みの駆動電圧Vhに対応させている。言い換えれば、12.8Vの電位差の範囲でVh1〜Vh4の各駆動波形を0.1V刻みで設定することができる。
【0061】
かくして、本実施形態の液滴吐出装置10は、ノズル52ごとの吐出特性を考慮して、各振動子59(ノズル52)と各COMラインとの対応関係を規定する駆動信号選択データDBと、各COMラインと駆動信号の種類(駆動電圧Vh)との対応関係を規定する波形番号データWNとを適切に設定することにより、液滴Dの吐出量を調整して液状体を吐出することが可能である。逆の言い方をすれば、駆動信号選択データDBと波形番号データWNとの関係で定まる各ノズル52の駆動信号COMの設定を適切に行うことが、吐出量を管理するための重要事項であると言える。
【0062】
上記液滴吐出装置10において、本実施形態の液滴吐出ヘッド50の吐出制御方法は、液滴Dの吐出ごと、言い換えれば吐出タイミングごとに駆動信号選択データDBと波形番号データWNとを更新可能となっている。また、吐出データDAに対応させて駆動信号COMを精細に設定することも可能である。したがって、ノズル52ごとに吐出される液滴Dの吐出量を、吐出タイミングごとに少なくとも4段階に渡って変化させることができるので、一定の駆動信号COMを各振動子59に印加する場合に比べて、ノズル列52aの吐出特性に起因する液滴Dの吐出量のバラツキを、ノズル52ごと、且つ液滴Dの吐出ごとに調整することが可能である。ゆえに、ノズル列52aの吐出特性に起因する吐出ムラを低減して液状体を吐出することが可能である。
【0063】
次に、本実施形態の液状体の吐出方法について、図8〜図10を参照して説明する。図8は比較例の液状体の吐出方法を示す概略図、図9は実施例1の液状体の吐出方法を示す概略図、図10は実施例2の液状体の吐出方法を示す概略図である。本実施形態の液状体の吐出方法は、液滴吐出装置10における液滴吐出ヘッド50の吐出制御方法を適用して実現するものであり、少なくとも主走査方向において、同一ノズル52から吐出される液滴Dの吐出量の設定を、液滴Dの吐出ごとに変えて吐出する吐出工程を備えている。以下、液状体の吐出方法の比較例、実施例1、実施例2について説明する。
【0064】
図8(a)は、比較例の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表である。図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド50の180個のノズル52に対して♯1〜♯180のノズル番号を与える。各ノズル52の吐出特性(図4参照)に基づいて、ノズル52ごとに液滴Dの吐出量がねらいの吐出量Iwt、またはねらいの吐出量Iwtに近づくように、複数の駆動信号COMのうちの1つを選択可能とした選択テーブル1を上位コンピュータ11により生成する。言い換えれば、ねらいの吐出量を基準として補正した選択テーブル1を生成する。補正した選択テーブル1を、以降、デフォルト選択テーブル1と呼ぶ。なお、上位コンピュータ11に限らず、他のコンピュータを用いて生成してもよい。
【0065】
図8(b)は、比較例の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。図8(b)に示すように、ワークWとしての基板上には、複数の吐出領域がマトリクス状に配置されている。ノズル列52aは、主走査方向に直交するように配置され、基板と液滴吐出ヘッド50との相対移動に同期して、複数のノズル52から各吐出領域に液状体が液滴Dとして必要な数だけ吐出される。この場合、主走査によって吐出領域には、4つのノズル52が掛かっている。図8(a)に示したデフォルト選択テーブル1に基づいて、1回の主走査により、ノズル52ごとに2回の吐出を各吐出領域に対して行う(各吐出領域に対する吐出発数が2)。1つの吐出領域には、合計8滴の液滴Dが着弾する。
【0066】
デフォルト選択テーブル1は、ノズル52ごとに液滴Dの吐出量が、ねらいの吐出量Iwt、またはねらいの吐出量Iwtに近づくように、複数の駆動信号COMのうちの1つを対応させている。よって、ノズル52ごとに、液滴Dの吐出量が補正された状態となる。この場合、駆動信号COMの駆動電圧Vhは、4段階に設定されているので、補正用に選択された駆動信号COMを振動子59ごとに印加しても、各ノズル52から吐出される液滴Dの吐出量が必ずしも同一とはならずバラツキを有する。よって、主走査方向に吐出量のバラツキの傾向が現れる。具体的には、ノズル番号が♯2、♯4のノズル52は、駆動信号COM3が選択されるので、他の♯1、♯3のノズル52に比べて、吐出量がやや多い液滴Dが主走査方向に連続して吐出される。よって、主走査方向にスジ状の吐出ムラが発生するおそれがある。着色材料を含む液状体を用いた場合には、吐出量のバラツキが大きいと、視認可能なスジムラ不良となる。当然ながら、デフォルト選択テーブル1において、吐出量の補正を一切考慮しなければ、さらに吐出量のバラツキは大きくなる。
【0067】
実際には、複数の吐出領域は、主走査方向において赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の順に配列している。すなわち、各色に対応する液滴吐出ヘッド50からそれぞれの吐出領域に液状体が吐出される。異なる色の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50ごとに、吐出特性が異なることがある。よって、デフォルト選択テーブル1は、液滴吐出ヘッド50ごとに用意される。ゆえに、R,G,Bの各吐出領域において、吐出ムラの状態が異なっていたとしても、同色の吐出領域では、同じ傾向の吐出ムラが現れるので、やはりスジムラとして視認されるおそれがある。従来は、このような吐出不具合を低減するために、キャリッジ8の副走査を伴う主走査を複数回に渡って行っていた。すなわち、基板に対する液滴吐出ヘッド50の配置を変え、同一吐出領域に対して異なるノズル52から液滴Dを吐出して、付与される液滴Dの吐出量を分散させ、吐出ムラが生ずることを抑制していた。このような従来の液状体の吐出方法は、1回の主走査における液滴Dの吐出数(吐出発数)が制限されるので、必要量の液状体を各吐出領域に付与するために、複数回の主走査を繰り返すため、吐出描画に時間を要するという課題があった。
【0068】
(実施例1)
図9(a)は、実施例1の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表である。同図(a)に示すように、実施例1の波形選択テーブルは、デフォルト選択テーブル1と、デフォルト選択テーブル1に対して、同一番号のノズル52に異なる駆動信号COMが印加されるように生成した選択テーブル2とを有している。
【0069】
図9(b)は、実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。図9(b)に示すように、複数の吐出領域とノズル列52aとの配置、1つの吐出領域に吐出される液滴Dの数は、比較例と同じである。一方、1つの吐出領域における2回の吐出において、1回の吐出ごとに、デフォルト選択テーブル1と選択テーブル2とを切り換えている。これにより、同一番号のノズル52から主走査方向に吐出量が異なる液滴Dが交互に吐出される。したがって、同一番号のノズル52から連続して同じ吐出量の液滴Dが吐出されないので、ノズル52ごとの吐出量のバラツキが分散され、上記スジムラが目立ち難くなる。すなわち、前述した従来の液状体の吐出方法における副走査を伴う主走査と同様な効果を1回の主走査で実現することができる。ゆえに、吐出ムラを低減するだけでなく、主走査の回数を低減することが可能である。
【0070】
(実施例2)
図10(a)は、実施例2の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表である。同図(a)に示すように、実施例2の波形選択テーブルは、デフォルト選択テーブル1と、デフォルト選択テーブル1に対して、同一番号のノズル52に異なる駆動信号COMが印加されるように生成した複数の選択テーブル2,3とを有している。また、デフォルト選択テーブル1に対して、他の選択テーブル2,3の選択比率を変えて設定しているという特徴を有している。
【0071】
図10(b)は、実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。同図(b)に示すように、複数の吐出領域とノズル列52aとの配置、1つの吐出領域に吐出される液滴Dの数は、比較例および実施例1と同じである。この場合、4つの吐出領域を1つのブロックとして定義し、1ブロック内で8回の吐出を行うので、吐出ごとに3つの選択テーブル1,2,3を切り換えることを前提としている。補正されたデフォルト選択テーブル1の選択比率を4/8とし、各吐出領域に少なくとも1回、デフォルト選択テーブル1を選択して吐出を行った。そして、吐出領域ごとに、デフォルト選択テーブル1を基準として、他の選択テーブル2,3のいずれかを選択し、同一の組み合わせが連続しないように設定した。デフォルト選択テーブル1の選択比率を他の選択テーブル2,3に比べて高く設定しているので、デフォルト選択テーブル1を基準として、液滴Dの吐出量を分散させることができる。
【0072】
実施例2の波形選択テーブルのさらなる特徴は、同一番号のノズル52における駆動信号COMの設定の仕方である。デフォルト選択テーブル1と他の選択テーブル2,3とを比較して分かるように、同一番号のノズル52において、4つの駆動信号COMのうち3つを選択している。そして、デフォルト選択テーブル1で選択した駆動信号COMに対して、近傍の駆動電圧Vhが振動子59に印加される他の駆動信号COMを選択している。具体的には、ノズル番号♯1のノズル52では、デフォルト選択テーブル1でCOM1を選択しているので、他の選択テーブル2,3では、COM2またはCOM3を選択するように設定している。すなわち、補正により選択した駆動信号COMに対して、駆動電圧Vhが大幅にシフトない駆動信号COMを選択している。このような実施例2の液状体の吐出方法によれば、主走査方向におけるノズル52ごとの吐出量のバラツキをより分散させることができる。
【0073】
また、ノズル列52aにおいて、隣り合うノズル52(振動子59)に印加される駆動信号COMが異なるように各選択テーブル1,2,3が設定されている。よって、副走査方向に吐出される液滴Dにおいても、吐出量のバラツキを分散させることができる。すなわち、吐出量のバラツキを起因とする主走査方向および副走査方向のスジムラを低減することができる。このような選択テーブル2,3の設定の仕方は、実施例1においても貫かれている。
【0074】
なお、上記実施例2のブロックの考え方は、同種の液状体を吐出する吐出領域に当てはめて説明したものであり、着色材料を含む液状体を吐出する場合には、同色の4つの吐出領域を1つのブロックとする。
【0075】
本発明の実施形態としては、実施例1、実施例2に限らず、例えば、波形選択テーブルにおいて、選択テーブルの数は、駆動信号COMの種類が4つなので、最大4つまで設定することが可能である。また、複数の選択テーブルの1つを、わざわざ補正したデフォルト選択テーブル1としなくてもよい。さらには、各選択テーブルの選択比率は、任意に設定可能であり、その選択の仕方として、選択テーブルの数を基準とした乱数を用いれば、ノズル52ごとの液滴Dの吐出量のバラツキを考慮しつつ、容易に選択テーブルを設定することができる。すなわち、どの選択テーブルを選択させるかという制御データを容易に生成することが可能である。
【0076】
このような波形選択テーブルの生成にあたっては、吐出領域のサイズ、ノズル52の配設ピッチ(ノズルピッチ)、1つの吐出領域に付与される液状体の総吐出量、液滴吐出ヘッド50(複数のノズル52)の吐出特性などを考慮して行う。例えば、吐出領域に多数の液滴Dを配置する場合には、液滴吐出装置10の吐出分解能に基づいて、1回の主走査における吐出数(吐出発数)を設定し、1つの吐出領域を1ブロックとして、ブロックあたりの選択テーブルの数を増やす方が、吐出量のバラツキをより分散可能である。
【0077】
また、任意の吐出数を単位として、1つのブロックを構成し、ブロック内で複数の選択テーブルを選択可能とする吐出動作を、複数の吐出領域ごとに必要量の液状体が付与されるまで、ブロック単位で繰り返すようにしてもよい。このようにすれば、前述した液滴Dの配置情報を比較的容易に生成することができる。基板や吐出領域の大きさが変わっても同様な考え方でブロックを構成すればよい。
【0078】
さらには、主走査における往動または復動、あるいは往復ごとに、上記実施例1または上記実施例2のような吐出動作における吐出発数を変えて行ってもよい。これにより、ブロック単位での上記吐出動作に起因する微妙な吐出ムラも解消することができる。また、吐出領域のサイズが大きく、多数のノズル52がこれに掛かる場合には、吐出領域に液滴Dが片寄って着弾しないように、主走査における往動または復動、あるいは往復ごとに、液滴Dの着弾位置を変えることが望ましい。具体的には、主走査方向に連続して同じ吐出量の液滴Dが吐出されないので、着弾後に複数の液滴Dが互いに接触して、吐出領域の隅々まで濡れ広がるように着弾位置を調整する。
【0079】
<カラーフィルタの製造方法>
次に、上記液状体の吐出方法を適用したカラーフィルタの製造方法について図11〜図13を参照して説明する。図11は液晶表示装置の構造を示す分解斜視図、図12はカラーフィルタの製造工程を示すフローチャート、図13(a)〜(e)はカラーフィルタの製造工程を示す概略断面図である。
【0080】
まず、カラーフィルタを備えた電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。図11に示すように、液晶表示装置500は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520を照明する照明装置516とを備えている。液晶表示パネル520は、着色層を有するカラーフィルタ505を具備した対向基板501と、画素電極510に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子511を有する素子基板508と、両基板501,508によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶表示パネル520の外面側となる両基板501,508の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板514と下偏光板515とが配設される。
【0081】
対向基板501は、透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に複数の着色領域をマトリクス状に区画するバンクとしての隔壁部504と、区画された複数の着色領域にRGB3色の着色層505R,505G,505Bとを備えている。隔壁部504は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク502と、下層バンク502の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク503とにより構成されている。また対向基板501は、隔壁部504と隔壁部504によって区画された着色層505R,505G,505Bとを覆う平坦化層としてのオーバーコート層(OC層)506と、OC層506を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極507とを備えている。カラーフィルタ505は後述する製造方法を用いて製造されている。
【0082】
素子基板508は、同じく透明なガラス等の材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜509を介してマトリクス状に形成された画素電極510と、画素電極510に対応して形成された複数のTFT素子511とを備えている。TFT素子511の3端子のうち、画素電極510に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極510を囲むように格子状に配設された走査線512とデータ線513とに接続されている。
【0083】
照明装置516は、光源として白色のLED、EL、冷陰極管等を用い、これらの光源からの光を液晶表示パネル520に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板等の構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
【0084】
なお、液晶を挟む対向基板501と素子基板508の表面には、液晶の分子を一定の方向に配列させるための配向膜がそれぞれ形成されているが、図示省略した。また、上下偏光板514,515は、視角依存性を改善する目的等で用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。液晶表示パネル520は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよい。さらには、少なくとも一方の基板にカラーフィルタ505を備えるものであれば、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の液晶表示装置でもよい。
【0085】
図12に示すように、本実施形態のカラーフィルタ505の製造方法は、対向基板501の表面にバンクを形成する工程(ステップS1)と、バンクによって区画された着色領域を表面処理する工程(ステップS2)とを備えている。また、表面処理された着色領域に着色層形成材料を含む3種(3色)の液状体を吐出する吐出工程(ステップS3)と、吐出された液状体を乾燥してカラーフィルタ505を成膜する乾燥・成膜工程(ステップS4)とを備えている。さらに隔壁部504とカラーフィルタ505とを覆うようにOC層506を形成する工程(ステップS5)と、OC層506を覆うようにITOからなる透明な対向電極507を形成する工程(ステップS6)とを備えている。
【0086】
図12のステップS1は、バンクを形成する工程である。ステップS1では、図13(a)に示すように、まずブラックマトリクスとしての下層バンク502を対向基板501上に形成する。下層バンク502の材料は、例えば、Cr、Ni、Al等の不透明な金属、あるいはこれらの金属の酸化物等の化合物を用いることができる。下層バンク502の形成方法としては、蒸着法あるいはスパッタ法で上記材料からなる膜を対向基板501上に成膜する。膜厚は、遮光性が保たれる膜厚を選定された材料に応じて設定すればよい。例えば、Crならば、100〜200nmが好ましい。そして、フォトリソグラフィ法により開口部502a(図11参照)に対応する部分以外をレジストで膜を覆い、上記材料に対応する酸等のエッチング液を用いて膜をエッチングする。これにより開口部502aを有する下層バンク502が形成される。
【0087】
次に上層バンク503を下層バンク502の上に形成する。上層バンク503の材料としては、アクリル系の感光性樹脂材料を用いることができる。また、感光性樹脂材料は、遮光性を有することが好ましい。上層バンク503の形成方法としては、例えば、下層バンク502が形成された対向基板501の表面に感光性樹脂材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、着色領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを対向基板501と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク503を形成する方法が挙げられる。これにより対向基板501上に複数の着色領域Aをマトリクス状に区画するバンクとしての隔壁部504が形成される。そしてステップS2へ進む。
【0088】
図12のステップS2は、表面処理工程である。ステップS2では、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、着色領域Aが親液処理され、その後感光性樹脂からなる上層バンク503の表面(壁面を含む)が撥液処理される。そしてステップS3へ進む。
【0089】
図12のステップS3は、液状体の吐出工程である。ステップS3では、図13(b)に示すように、表面処理された各着色領域Aのそれぞれに、対応する液状体80R,80G,80Bを液滴Dとして吐出する。液状体80RはR(赤色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80GはG(緑色)の着色層形成材料を含むものであり、液状体80BはB(青色)の着色層形成材料を含むものである。各液状体80R,80G,80Bは、上記液状体の吐出方法を用い、主走査において、液滴Dの吐出ごとに、複数の選択テーブルのうちの1つを選択することにより、同一色の着色領域Aに対して対応する液状体80R,80G,80Bを吐出する。このような主走査を必要量の液状体80R,80G,80Bが対応する着色領域に付与されるまで繰り返す。これにより、着色領域Aごとに、ノズル列52aの吐出特性に起因する液状体80R,80G,80Bの吐出ムラが低減される。吐出された液状体80R,80G,80Bは、着色領域Aに濡れ拡がり、表面張力によって盛り上がる。そしてステップS4へ進む。
【0090】
図12のステップS4は、液状体の乾燥・成膜工程である。ステップS4では、図13(c)に示すように、吐出された液状体80R,80G,80Bを一括乾燥し、溶剤成分を除去して着色層505R,505G,505Bを成膜する。乾燥方法としては、溶剤成分を均質に乾燥可能な減圧乾燥などの方法が望ましい。そしてステップS5へ進む。
【0091】
図12のステップS5は、OC層形成工程である。ステップS5では、図13(d)に示すように、着色層505R,505G,505Bと上層バンク503とを覆うようにOC層506を形成する。OC層506の材料としては、透明なアクリル系樹脂材料を用いることができる。形成方法としては、スピンコート法、オフセット印刷などの方法が挙げられる。OC層506は、カラーフィルタ505が形成された対向基板501の表面の凹凸を緩和して、後にこの表面に膜付けされる対向電極507を平担化するために設けられている。また、対向電極507との密着性を確保するために、OC層506の上にさらにSiO2などの薄膜を形成してもよい。そしてステップS6へ進む。
【0092】
図12のステップS6は、対向電極507を形成する工程である。ステップS6では、図13(e)に示すように、スパッタ法や蒸着法を用いてITOなどの透明電極材料を真空中で成膜して、OC層506を覆うように全面に対向電極507を形成する。
【0093】
このようにして出来上がった対向基板501のカラーフィルタ505は、吐出領域としての着色領域Aに液状体80R,80G,80Bを液滴Dとして、その吐出量が分散されるように吐出されている。各ノズル列52aの吐出特性に起因する主走査方向および副走査方向へのスジ状の色ムラが低減されている。この対向基板501と素子基板508とを接着剤を用いて所定の位置で接着し、対向基板501と素子基板508との隙間に液晶を充填すれば、色ムラが目立ちにくい、見映えのよい表示品質を有する液晶表示装置500を製造することができる。
【0094】
上記実施形態1の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態1の液滴吐出ヘッド50の吐出制御方法は、液滴Dの吐出ごとに、DAC71A〜DAC71Dにより生成された4つの駆動信号(COM1〜COM4)のうち1つを選択して、ノズル52ごとの振動子59に印加することができる。したがって、液滴Dの吐出ごとに、同一ノズル52から吐出される液滴Dの吐出量を変化させることができる。また、駆動信号COM1〜COM4に係る駆動電圧Vhの設定は、0.1V刻みで精細に設定することができるので、ノズル列52aの吐出特性に対応して、吐出量の制御を高精度に調整することができる。すなわち、ノズル列52aの吐出特性に対応して、吐出量をコントロールすることにより、これに起因する液状体の吐出ムラを低減することができる。
【0095】
(2)上記実施形態1の液状体の吐出方法は、液滴Dの吐出ごとに、同一番号のノズル52および隣り合うノズル52において、異なる駆動信号COMが印加されるように設定された複数の選択テーブルのうちの1つを選択することにより、主走査方向において、同一番号のノズル52から吐出される液滴Dの吐出量の設定を変えて吐出する吐出工程を備えている。したがって、主走査方向および副走査方向に連続して同じ吐出量の液滴Dが吐出されないので、ノズル列52aの吐出特性に起因する主走査方向および副走査方向のスジ状の吐出ムラを低減することができる。また、上記複数の選択テーブルにおいて、そのうちの1つが、ノズル52ごとの液滴Dの吐出量を補正したデフォルト選択テーブル1であるので、これを基準として液滴Dの吐出量を分散させることができる。さらには、副走査を伴う主走査を複数回繰り返す従来の液状体の吐出方法に比べて、主走査の回数を低減することができる。
【0096】
(3)上記実施形態1のカラーフィルタ505の製造方法において、液状体の吐出工程では、対向基板501の着色領域Aに、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて3種の液状体80R,80G,80Bを吐出する。したがって、複数の液滴吐出ヘッド50の各ノズル列52aの吐出特性に起因する色ムラを低減し、且つ高い生産性を実現してカラーフィルタ505を歩留まりよく製造することができる。
【0097】
(4)上記実施形態1の液晶表示装置500の製造方法は、上記カラーフィルタ505の製造方法を用いて製造された対向基板501を備えているため、色ムラが目立ちにくい、見映えのよい表示品質を有する液晶表示装置500を製造することができる。
【0098】
(実施形態2)
次に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を適用した他の実施形態として、有機EL素子の製造方法および有機EL表示装置の製造方法について図14および図15を参照して説明する。図14は有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図、図15(a)〜(f)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
【0099】
<有機EL表示装置の製造方法>
まず、有機EL(エレクトロルミネセンス)素子を有する電気光学装置の一例である有機EL表示装置の製造方法について簡単に説明する。
図14に示すように、有機EL表示装置600は、有機EL素子としての発光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着された封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、有機EL発光層としての3色の発光層617R,617G,617Bがそれぞれの発光層形成領域Aに形成され、ストライプ状となっている。素子基板601は、3色の発光層617R,617G,617Bに対応する3つの発光層形成領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上にマトリクス状に配置されたものである。有機EL表示装置600は、発光素子部603からの発光が素子基板601側に出射するものである。
【0100】
封止基板620は、ガラスまたは金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した水または酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水または酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤621は省略しても良い。
【0101】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の発光層形成領域Aを有するものであって、複数の発光層形成領域Aを区画する隔壁部618と、複数の発光層形成領域Aに形成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えている。また複数の発光層形成領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を備えている。隔壁部618は、下層バンク618aと発光層形成領域Aを実質的に区画する上層バンク618bとからなり、下層バンク618aは、発光層形成領域Aの内側に張り出すように設けられて、電極613と各発光層617R,617G,617Bとが直接接触して電気的に短絡することを防止するためにSiO2等の無機絶縁材料により形成されている。
【0102】
素子基板601は、例えばガラス等の透明な基板からなり、素子基板601上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。なお、半導体膜607には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜608上にはAl、Mo、Ta、Ti、W等からなるゲート電極609が形成され、ゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a,612bが形成されている。そして、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され(電極形成工程)、一方のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部602には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている。なお、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図14ではこれらの図示を省略している。
【0103】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔注入/輸送層617a、各発光層617R,617G,617B(総称して発光層Lu)と、上層バンク618bと発光層Luとを覆うように積層された陰極604とを備えている。正孔注入/輸送層617aと発光層Luとにより発光が励起される機能層617を構成している。なお、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構成すれば、封止基板620側から発光する光を出射させることができる。
【0104】
有機EL表示装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソース領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ615のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、さらに正孔注入/輸送層617aと発光層Luとを介して陰極604に電流が流れる。発光層Luは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL表示装置600は、このような発光素子部603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また、有機EL表示装置600は、発光層Luが上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて形成されているため、各ノズル列52aの吐出特性に起因する発光ムラ、輝度ムラ等の表示不具合の少ない高い表示品質を有している。
【0105】
<有機EL素子の製造方法>
次に本実施形態の有機EL素子としての発光素子部603の製造方法について図15を参照して説明する。なお、図15(a)〜(f)においては、素子基板601上に形成された回路素子部602は、図示を省略している。
【0106】
本実施形態の発光素子部603の製造方法は、素子基板601の複数の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する工程と、電極613に一部が掛かるように下層バンク618aを形成し、さらに下層バンク618a上に実質的に発光層形成領域Aを区画するように上層バンク618bを形成する隔壁部形成工程とを備えている。また上層バンク618bで区画された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体を付与して正孔注入/輸送層617aを吐出描画する工程と、吐出された液状体を乾燥して正孔注入/輸送層617aを成膜する工程とを備えている。また、正孔注入/輸送層617aが形成された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体を吐出する吐出工程と、吐出された3種の液状体を乾燥して発光層Luを成膜する工程とを備えている。さらに、上層バンク618bと発光層Luを覆うように陰極604を形成する工程を備えている。各液状体の発光層形成領域Aへの付与は、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて行う。よって、図3に示したヘッドユニット9における液滴吐出ヘッド50の配置を適用する。
【0107】
電極(陽極)形成工程では、図15(a)に示すように、回路素子部602がすでに形成された素子基板601の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITO等の透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成する方法が挙げられる。そして隔壁部形成工程へ進む。
【0108】
隔壁部形成工程では、図15(b)に示すように、素子基板601の複数の電極613の一部を覆うように下層バンク618aを形成する。下層バンク618aの材料としては、無機材料である絶縁性のSiO2(酸化珪素)を用いている。下層バンク618aの形成方法としては、例えば、後に形成される発光層Luに対応して、各電極613の表面をレジスト等を用いてマスキングする。そしてマスキングされた素子基板601を真空装置に投入し、SiO2をターゲットあるいは原料としてスパッタリングや真空蒸着することにより下層バンク618aを形成する方法が挙げられる。レジスト等のマスキングは、後に剥離する。なお、下層バンク618aは、SiO2により形成されているため、その膜厚が200nm以下であれば十分な透明性を有していおり、後に正孔注入/輸送層617aおよび発光層Luが積層されても発光を阻害することはない。
【0109】
続いて、各発光層形成領域Aを実質的に区画するように下層バンク618aの上に上層バンク618bを形成する。上層バンク618bの材料としては、後述する発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フッソ系ガスを処理ガスとするプラズマ処理により撥液化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった有機材料が好ましい。上層バンク618bの形成方法としては、例えば、下層バンク618aが形成された素子基板601の表面に感光性の上記有機材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2μmの感光性樹脂層を形成する。そして、発光層形成領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板601と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、上層バンク618bを形成する方法が挙げられる。これにより下層バンク618aと上層バンク618bとを有する隔壁部618が形成される。そして、表面処理工程へ進む。
【0110】
発光層形成領域Aを表面処理する工程では、隔壁部618が形成された素子基板601の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極613の表面、下層バンク618aの張り出し部および上層バンク618bの表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。次にCF4等のフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなる上層バンク618bの表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、正孔注入/輸送層形成工程へ進む。
【0111】
正孔注入/輸送層形成工程では、図15(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を発光層形成領域Aに付与する。液状体90を付与する方法としては、図3のヘッドユニット9を備えた液滴吐出装置10を用いる。液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体90は、液滴Dとして素子基板601の電極613に着弾して濡れ拡がる。液状体90は発光層形成領域Aの面積に応じて必要量が液滴Dとして吐出される。そして乾燥・成膜工程へ進む。
【0112】
乾燥・成膜工程では、素子基板601を例えばランプアニール等の方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極613の下層バンク618aにより区画された領域に正孔注入/輸送層617aが形成される。本実施形態では、正孔注入/輸送層形成材料としてPEDOT(Polyethylene Dioxy Thiophene;ポリエチレンジオキシチオフェン)を用いた。なお、この場合、各発光層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層617aを形成したが、後に形成される発光層Luに対応して正孔注入/輸送層617aの材料を発光層形成領域Aごとに変えてもよい。そして次の表面処理工程へ進む。
【0113】
次の表面処理工程では、上記の正孔注入/輸送層形成材料を用いて正孔注入/輸送層617aを形成した場合、その表面が、3種の液状体100R,100G,100Bに対して撥液性を有するので、少なくとも発光層形成領域Aの領域内を再び親液性を有するように表面処理を行う。表面処理の方法としては、3種の液状体100R,100G,100Bに用いられる溶媒を塗布して乾燥する。溶媒の塗布方法としては、スプレー法、スピンコート法等の方法が挙げられる。そして液状体の吐出工程へ進む。
【0114】
液状体の吐出工程では、図15(d)に示すように、液滴吐出装置10を用いて複数の液滴吐出ヘッド50から複数の発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bを付与する。液状体100Rは発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは発光層617B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体100R,100G,100Bは、発光層形成領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。これらの液状体100R,100G,100Bを付与する方法としては、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いた。そして、乾燥・成膜工程へ進む。
【0115】
乾燥・成膜工程では、図15(e)に示すように、吐出された各液状体100R,100G,100Bの溶媒成分を乾燥させて除去し、各発光層形成領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R,617G,617Bが積層されるように成膜する。各液状体100R,100G,100Bが吐出された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすることが可能な、減圧乾燥が好ましい。そして陰極形成工程へ進む。
【0116】
陰極形成工程では、図15(f)に示すように、素子基板601の各発光層617R,617G,617Bと上層バンク618bの表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、Ba、Al等の金属やLiF等のフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層617R,617G,617Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAl等の膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiN等の保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法等が挙げられる。特に発光層617R,617G,617Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0117】
このようにして出来上がった素子基板601は、必要量の各液状体100R,100G,100Bが対応する発光層形成領域Aに吐出ムラなく付与され、乾燥・成膜化後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する。
【0118】
上記実施形態2の効果は、以下の通りである。
(1)上記実施形態2の発光素子部603の製造方法において、液状体100R,100G,100Bの吐出工程では、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて素子基板601の発光層形成領域Aに、各液状体100R,100G,100Bが液滴Dとして吐出されている。ゆえに、複数の液滴吐出ヘッド50の各ノズル列52aの吐出特性に起因する吐出ムラが低減され、乾燥・成膜後の膜厚がほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bが得られる。
【0119】
(2)上記実施形態2の発光素子部603の製造方法を用いて、有機EL表示装置600を製造すれば、各発光層617R,617G,617Bの膜厚がほぼ一定であるため、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗がほぼ一定となる。よって、回路素子部602により発光素子部603に駆動電圧を印加して発光させると、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラ等が低減される。すなわち、発光ムラや輝度ムラ等が少なく、見映えのよい表示品質を有する有機EL表示装置600を製造することができる。
【0120】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に対しては、本発明の趣旨から逸脱しない範囲で様々な変形を加えることができる。例えば上記実施形態以外の変形例は、以下の通りである。
【0121】
(変形例1)上記実施形態1の液滴吐出ヘッド50の吐出制御方法において、液滴Dの吐出量を制御する異なる駆動波形としての駆動信号の種類は、4つに限定されない。ヘッドドライバ48の電気回路構成を工夫すれば、さらにその種類を増やすことが可能である。当然ながら、それに関連して選択テーブルの数も増やすことができる。
【0122】
(変形例2)上記実施形態1の液滴吐出ヘッド50の吐出制御方法において、選択テーブルは、1つの液滴吐出ヘッド50(ノズル列52a)を基準とすることに限定されない。例えば、同種の液状体を吐出する複数の液滴吐出ヘッド50を、その描画幅が副走査方向に連続するように配置した場合には、複数の液滴吐出ヘッド50の各ノズル列52aを一まとめにして、ノズル番号を与え、これに基づいて選択テーブルを構成してもよい。
【0123】
(変形例3)上記実施形態1の液状体の吐出方法において、液滴Dの吐出量は、重量に限定されず、体積を用いてもよい。例えば、ノズル52から吐出された飛行中の液滴Dを撮像してその体積を求める方法や、ワークWなどに着弾した後の液滴Dの形状を撮像してその体積を求める方法が挙げられる。
【0124】
(変形例4)上記実施形態1の液状体の吐出方法において、各吐出領域には、同一吐出発数にて液滴Dが吐出されているが、これに限定されない。例えば、図9(b)に示したノズル番号#1,#4のノズル52と、ノズル番号#2,#3のノズル52から液滴Dを吐出する主走査を別にして、相互の主走査における吐出発数を異ならせてもよい。このようにすれば、液滴Dが濡れ広がり難い吐出領域の角部側に、より多くの液滴Dを配置することも可能である。
【0125】
(変形例5)上記実施形態1のカラーフィルタ505の製造方法および上記実施形態2の発光素子部603の製造方法において、着色領域Aおよび発光層形成領域Aの配置は、ストライプ方式に限定されない。デルタ方式や、モザイク方式の配置であっても、上記実施形態1の液状体の吐出方法を適用することができる。また、3色の着色層505R,505G,505Bに限定されず、RGB3色に他色を加えた多色のカラーフィルタ505の製造方法においても適用可能である。
【0126】
(変形例6)上記実施形態1の液状体の吐出方法を適用可能なデバイスの製造方法は、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法に限定されない。例えば、図6の液晶表示装置500において、表示領域に対応して形成される配向膜の形成方法についても適用可能である。例えば、ポリイミドなどの配向膜材料とこれを溶解する少なくとも1種の溶媒とを含む液状体を用いる。そして、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて当該液状体を基板上の形成領域に吐出する工程と、液状体が吐出された基板を所定の温度で加熱乾燥して、溶媒を蒸発させ、配向膜を形成する固化工程としての乾燥工程とを備える。これによれば、液状体の吐出ムラが低減され、膜厚ムラが少ない配向膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】液滴吐出装置の構造を示す概略斜視図。
【図2】(a)は液滴吐出ヘッドの構造を示す概略分解斜視図、(b)はノズル部の構造を示す断面図。
【図3】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図4】液滴吐出ヘッドの吐出特性を示すグラフ。
【図5】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図6】液滴吐出ヘッドの電気的な制御を示すブロック図。
【図7】駆動信号および制御信号のタイミング図。
【図8】(a)は比較例の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表、(b)は比較例の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図9】(a)は実施例1の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表、(b)は実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図10】(a)は実施例2の液状体の吐出方法における波形選択テーブルを示す表、(b)は実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図11】液晶表示装置の構造を示す概略分解斜視図。
【図12】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図13】(a)〜(e)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図14】有機EL表示装置の要部構造を示す概略断面図。
【図15】(a)〜(f)は発光素子部の製造方法を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0128】
50…液滴吐出ヘッド、52…ノズル、59…駆動素子としての振動子、80R,80G,80B…着色材料を含む液状体、100R,100G,100B…発光層形成材料を含む液状体、501…基板としての対向基板、505…カラーフィルタ、505R,505G,505B…着色層、600…有機EL表示装置、601…基板としての素子基板、603…有機EL素子としての発光素子部、617R,617G,617B…発光層、A…吐出領域としての着色領域または発光層形成領域、D…液滴、Iwt…ねらいの吐出量、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルと、液状体を液滴として吐出する前記ノズルごとに設けられた駆動素子とを有する液滴吐出ヘッドの吐出制御方法であって、
前記液滴の吐出量を制御する異なる複数の駆動波形のうちの1つを、前記ノズルごとに選択可能な複数の選択テーブルに基づいて、
前記液滴の吐出ごとに前記複数の選択テーブルのうちの1つを選択し、前記駆動素子ごとに対応する前記駆動波形を印加することを特徴とする液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項2】
前記選択テーブルの数を基準とした乱数を用いて、前記複数の選択テーブルのうちの1つを選択することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項3】
前記複数の選択テーブルは、同一ノズルにおいて異なる駆動波形が印加されるように設定され、前記液滴の吐出ごとに前記複数の選択テーブルを切り換えることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項4】
前記複数の選択テーブルは、前記複数のノズルのうち隣り合うノズルの駆動素子に印加される駆動波形が異なるように設定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項5】
前記複数の選択テーブルのうちの1つは、前記液滴の吐出量がねらいの吐出量またはねらいの吐出量に近づくように、前記ノズルごとに前記複数の駆動波形のうちの1つを対応させて補正した選択テーブルであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項6】
前記複数の選択テーブルのうちの1つが前記補正した選択テーブルであり、他の選択テーブルが、前記補正した選択テーブルを選択したときの前記ノズルごとの駆動波形に対して、前記複数の駆動波形のうち前記液滴の吐出量が相対的に近い1つを前記ノズルごとに対応させていることを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項7】
前記補正した選択テーブルを選択する割合を、前記他の選択テーブルを選択する割合よりも高く設定することを特徴とする請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの吐出制御方法。
【請求項8】
少なくとも1つの吐出領域を有する基板と、複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドとの相対移動に同期して、前記複数のノズルから前記吐出領域に機能性材料を含む液状体を液滴として吐出する液状体の吐出方法であって、
前記液滴の吐出ごとに、前記相対移動の方向において、同一ノズルから吐出される前記液滴の吐出量の設定を変えて吐出する吐出工程と、を備えることを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項9】
前記吐出工程では、前記液滴の吐出ごとに、前記複数のノズルのうち隣り合うノズルから吐出される前記液滴の吐出量の設定を変えて吐出することを特徴とする請求項8に記載の液状体の吐出方法。
【請求項10】
前記吐出工程では、前記相対移動の方向において、任意の吐出発数を単位として、前記液滴のねらいの吐出量を基準として吐出量の設定を変えて吐出する吐出動作を、前記複数の吐出領域に必要量の前記液状体がそれぞれ付与されるまで繰り返すことを特徴とする請求項8または9に記載の液状体の吐出方法。
【請求項11】
前記相対移動の往動または復動あるいは往復の動作ごとに、前記吐出動作における前記吐出発数を変えることを特徴とする請求項10に記載の液状体の吐出方法。
【請求項12】
前記相対移動の往動または復動あるいは往復の動作ごとに、前記吐出動作における前記液滴の着弾位置を変えることを特徴とする請求項10に記載の液状体の吐出方法。
【請求項13】
基板上に区画形成された複数の着色領域に少なくとも3色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、着色材料を含む少なくとも3色の液状体を前記複数の着色領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、前記少なくとも3色の着色層を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項14】
基板上に区画形成された複数の発光層形成領域に少なくとも発光層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の発光層形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、前記発光層を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項15】
基板上の少なくとも1つの形成領域に、配向膜を形成する配向膜の形成方法であって、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載の液状体の吐出方法を用い、配向膜材料を含む液状体を前記形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して、前記配向膜を形成する固化工程と、を備えたことを特徴とする配向膜の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−268558(P2008−268558A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111356(P2007−111356)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】