説明

液滴吐出方法及び液滴吐出装置

【課題】パターンの直線性を高精度で確保する液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴吐出ヘッドの各ノズルを2個ずつのノズル群に仮想区分して、各ノズル群の第1番目のノズルを第1ブロック、第2番目のノズルを第2ブロックとする。第1ブロックのノズルと第2ブロックのノズルとから液滴を吐出するときに、第1ブロックのノズルから液滴を吐出した時の圧力変動の残留振動周期以上となる時間差を設けて第2ブロックのノズルから液滴を吐出する。また、前記時間差をTr、各ノズルとグリーンシートとの間の距離をG、ステージの走査速度をvs、前記相対移動方向における液滴間の目標距離をδ、第1ブロックのノズルからの液滴の飛行速度をva、第2ブロックのノズルからの液滴の飛行速度をvbとするとき、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度のうちいずれか1つを選択して各ブロックのノズルから吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出方法及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )技術は、グリーンシートと金属との一括焼成を可能にすることから、セラミックの層間に各種の受動素子を組み込んだ素子内蔵基板を具現できる。システム・オン・パッケージ(SOP)の実装技術においては、電子部品の複合化や表面実装部品に発生する寄生効果の最小化を図るため、この素子内蔵基板(以下単に、LTCC多層基板という。)に関わる製造方法が鋭意開発されている。
【0003】
LTCC多層基板の製造方法では、複数のグリーンシートの各々に受動素子や配線等のパターンを描画する描画工程と、該パターンを有する複数のグリーンシートを積層して圧着する圧着工程と、圧着体を一括焼成する焼成工程とが順に実施される。
【0004】
描画工程には、各種パターンの高密度化を図るため、導電性インクを微小な液滴にして吐出する液滴吐出装置を用いたインクジェット法が提案されている(例えば、特許文献1)。インクジェット法は、数ピコリットル〜数十ピコリットルの液滴を用い、該液滴の吐出位置の変更によってパターンの微細化や狭ピッチ化を可能にする。
【0005】
液滴吐出装置に搭載される吐出ヘッドには、1方向に沿って配列された複数のノズルからなるノズル列が設けられている。吐出ヘッドの内部では、各ノズルがそれぞれ仕切部材で仕切られることによって、ノズルごとのインク室が設けられている。各インク室には、それぞれ圧力変動を発生させる圧力発生素子が設けられている。そして、該圧力発生素子に駆動信号が供給されてインク室内に圧力変動が発生することにより、導電性インクが液滴として吐出される。
【0006】
ところで、ノズル列の方向に沿った直線パターンを描画するとき、各ノズルから同時に液滴を吐出して描画すると、各圧力発生素子へ同時に駆動信号を供給することになるため、吐出ヘッドに1度に供給される電流値が大きくなってしまう。そこで、特許文献2は、ノズルをn個(n≧2)毎に区分して得られるノズル群の各第m(m≧1)番目のノズルで複数のブロックを構成し、ブロックごとの吐出タイミングで液滴を吐出させることにより、1度に供給する電流値を抑える。そして、特許文献2は、ブロックごとの吐出タイミングの時間差が相殺されるように、後続するブロックの飛行速度を先行するブロックの飛行速度よりも速くして、ノズル列ごとの着弾タイミングの同期化を図っている。
【特許文献1】特開2005−57139号公報
【特許文献2】特開平10−166564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液滴吐出装置においては、1つのノズルから液滴を吐出するとき、該ノズルのインク室内における圧力変動やその圧力変動の残留振動が仕切部材や共通路などを介して隣接したノズルのインク室内に伝播し、該隣接したインク室内に圧力変動を発生させる(クロストークを発生させる)。クロストークが発生する場合には、隣接したノズルから吐出される液滴の飛行速度が大幅に変化してしまう。特許文献2では、このクロストークの影響による飛行速度の変化に対する配慮がなされていないため、ブロック間における飛行速度にバラツキを招き、着弾タイミングを高い精度の下で調整し難い問題があった。上述したLT
CC基板などでは、パターンの微細化や狭ピッチ化の進行に伴い、液滴の着弾位置に数μmの誤差がある場合には、配線が短絡してしまい、致命的な欠陥を招いてしまう。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ノズル列の方向に沿ったパターンの直線性を向上させた液滴吐出方法及び液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液滴吐出方法は、対象物が載置された移動部と1つの方向に配列された複数のノズルとを相対移動させながら、前記ノズル毎に設けられた圧力発生素子に駆動電圧波形を供給することによって該ノズル毎に設けられた貯留室に圧力変動を発生させて前記貯留室に貯留された液状体を液滴にして吐出する液滴吐出方法であって、1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差が、前記1つのノズルから液滴を吐出したことによる前記1つのノズルの貯留室における残留振動周期以上になるように、前記1つのノズルと前記他のノズルとからそれぞれ液滴を吐出するとともに、前記時間差をTr、前記ノズルと前記対象物との間の距離をG、前記移動部の走査速度をvs、前記1つのノズルからの液滴の飛行速度をva、前記他のノズルからの液滴の飛行速度をvb、前記相対移動方向における液滴間の目標距離をδとするとき、前記駆動電圧波形と、該駆動電圧波形から得た前記液滴の飛行速度とを関連付けた変換データを用い、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度からいずれか1組を選択して駆動電圧波形へ変換し、該飛行速度に対応するノズルに設けられた前記圧力発生素子へ前記変換した駆動電圧波形を供給する。
【0010】
本発明の液滴吐出方法は、変換データを用いて、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度を具現化する。そのため、隣接するノズルからの液滴の着弾タイミングが、時間差Trや距離G、走査速度vs、相対移動方向における液滴間の目標距離δの変更に応じて調整される。そして、この時間差Trが残留振動周期以上になることから、残留振動によって発生するクロストークの影響が十分に抑制され、隣接するノズルからの液滴の着弾タイミングが、高い精度の下で調整される。したがって、この液滴吐出方法は、隣接するノズルから吐出される液滴の着弾タイミングを高い精度の下で調整できることから、目標距離δを0に近づける場合にはノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。また、時間差Trを設けた場合における、隣接したノズルから吐出された液滴の着弾位置間の距離を予め求め、該距離を目標距離δに定める構成であってもよい。これによれば、隣接したノズル間のばらつきを加味して着弾位置を揃えることができる。
【0011】
この液滴吐出方法は、前記複数のノズルからなるノズル列をn個(nは2以上の整数)のノズル毎に区分したノズル群の第m番目(mは1以上)のノズルからなるブロックを第mブロックとするとき、第1ブロックから第mブロックまでを順番に繰り返して駆動して、第mブロックの吐出タイミングと、第m+1ブロックの吐出タイミングとの間の時間差を前記残留振動周期以上にする構成が好ましい。
【0012】
この液滴吐出方法は、各ブロックを順に繰り返して駆動させることから、ノズル列の全体にわたり、ノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。また、液滴の吐出動作を画一的に実行できることから、吐出動作の複雑化を抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0013】
この液滴吐出方法は、前記各ノズル群が隣接する2個のノズルからなる構成が好ましい。
この液滴吐出方法は、ノズル群に含まれるノズルの数量を最小の単位で構成することか
ら、吐出動作の複雑化を一層に抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0014】
本発明の液滴吐出装置は、1つの方向に配列された複数のノズルと、前記ノズル毎に設けられて液状体を貯留する貯留室と、前記ノズル毎に設けられて駆動電圧波形を受けることにより前記貯留室に圧力変動を発生させて前記ノズルから対象物に向けて液滴を吐出させる圧力発生素子と、前記複数のノズルと前記対象物とを前記1つの方向と交差する方向へ相対移動させる移動部とを備えた液滴吐出装置であって、前記圧力発生素子に供給する駆動電圧波形と、前記駆動電圧波形を用いたときの前記液滴の飛行速度とを関連付けて、前記飛行速度を前記駆動電圧波形へ変換するための変換データを記憶する記憶部と、1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差をTr、前記各ノズルと前記対象物との間の距離をG、前記移動部の走査速度をvs、前記1つのノズルからの液滴の飛行速度をva、前記隣接するノズルからの液滴の飛行速度をvb、前記相対移動方向における液滴間の目標距離をδとするとき、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度から選択された1組を、前記変換データを用いて変換して駆動電圧波形を生成する駆動電圧波形生成部と、1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差が、前記1つのノズルから液滴を吐出したことによる前記1つのノズルの貯留室における残留振動周期以上になるように、前記生成した駆動電圧波形を前記圧力発生素子へ供給する制御部とを備えた。
【0015】
本発明の液滴吐出装置は、変換データを用いて、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度を具現化する。そのため、隣接するノズルからの液滴の着弾タイミングが、時間差Trや距離G、走査速度vs、相対移動方向における液滴間の目標距離δの変更に応じて調整される。そして、この時間差Trが残留振動周期以上になることから、残留振動によって発生するクロストークの影響が十分に抑制され、隣接するノズルからの液滴の着弾タイミングが、高い精度の下で調整される。したがって、この液滴吐出方法は、隣接するノズルから吐出される液滴の着弾タイミングを高い精度の下で調整できることから、目標距離δを0に近づける場合にはノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。また、時間差Trを設けた場合における、隣接したノズルから吐出された液滴の着弾位置間の距離を予め求め、該距離を目標距離δに定める構成であってもよい。これによれば、隣接したノズル間のばらつきを加味して着弾位置を揃えることができる。
【0016】
この液滴吐出装置は、前記複数のノズルからなるノズル列をn個(nは2以上の整数)のノズル毎に区分したノズル群の第m番目(mは1以上)のノズルからなるブロックを第mブロックとするとき、前記制御部が、第1ブロックから第mブロックまでを順番に繰り返して駆動して、第mブロックの吐出タイミングと、第m+1ブロックの吐出タイミングとの間の時間差が前記残留振動周期以上になるように、前記生成した駆動電圧波形を前記圧力発生素子へ供給する構成が好ましい。
【0017】
この液滴吐出装置の制御部は、各ブロックを順に繰り返して駆動させることから、ノズル列の全体にわたり、ノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。また、液滴の吐出動作を画一的に実行できることから、吐出動作の複雑化を抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0018】
この液滴吐出装置は、前記圧力発生素子が圧電素子であり、前記変換データが、前記圧電素子の変位量を定める駆動電圧値と、前記駆動電圧値を用いた駆動電圧波形から得られる前記液滴の飛行速度とを関連付けたデータであり、前記駆動電圧波形生成部が、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度に関連付けられた前記駆動電圧値を用いる駆動電圧波形を生成する構成が好ましい。
【0019】
この液滴吐出装置は、駆動電圧波形を駆動電圧値で画一的に変調することから、吐出動作の複雑化を抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
この液滴吐出装置は、前記圧力発生素子が圧電素子であり、前記変換データが、前記圧電素子の変位速度を定める駆動電圧勾配と、前記駆動電圧勾配を用いた駆動電圧波形から得られる前記液滴の飛行速度とを関連付けたデータであり、前記駆動電圧波形生成部が、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度に関連付けられた前記駆動電圧勾配を用いる駆動電圧波形を生成する構成が好ましい。
【0020】
この液滴吐出装置は、駆動電圧波形を駆動電圧勾配で画一的に変調することから、吐出動作の複雑化を抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図17に従って説明する。図1は、本発明の液滴吐出装置及び液滴吐出方法を用いて製造したセラミック多層基板を有する回路モジュールの断面図である。
【0022】
図1において、回路モジュール1は、低温焼成セラミック(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics )多層基板2と、LTCC多層基板2に接続された半導体チップ3とを有する。
【0023】
LTCC多層基板2は、積層された複数のLTCC基板4を有する。各LTCC基板4は、それぞれ熱可塑性基板としてのグリーンシートの焼結体であって、厚みが数十μm〜数百μmで形成されている。各LTCC基板4の層間には、それぞれ抵抗素子、容量素子、コイル素子等の各種の内部素子5と、各内部素子5に電気的に接続する内部配線6とが内蔵され、各LTCC基板4には、それぞれスタックビア構造やサーマルビア構造を成すビア配線7が形成されている。
【0024】
内部素子5、内部配線6及びビア配線7は、それぞれ導電性微粒子の焼結体であり、導電性インクを用いるインクジェット法によって形成される。
次に、上記LTCC多層基板2の製造方法を説明する。
【0025】
LTCC多層基板2の製造方法では、LTCC基板4の前駆体であるグリーンシートにパターンを描画する描画工程と、該パターンを所定温度(例えば、80℃)加熱して乾燥させる乾燥工程とが順に実行される。また、LTCC多層基板2の製造方法では、複数のグリーンシートを積層して積層体を形成する積層工程と、該積層体を減圧包装する減圧包装工程と、積層体を圧着して圧着体を形成する圧着工程と、該圧着体を所定の焼成温度(例えば、800〜1000℃)で焼成する焼成工程とが順に実行される。
【0026】
次に、グリーンシートにパターンを描画する液滴吐出装置10について説明する。図2はグリーンシートにパターンを描画する液滴吐出装置10を模式的に示す全体斜視図であり、図3は液滴吐出ヘッド15を下側から見た図である。
【0027】
図2において、液滴吐出装置10の基台11には、基台11の長手方向に沿って往復移動可能な移動部としてのステージ12が搭載されている。本実施形態では、基台11の長手方向であって図2における左上方向を+X方向とし、+X方向の反対方向を−X方向と言う。また、+X方向と直交する水平方向であって、図2における右上方向を+Y方向とし、+Y方向の反対方向を−Y方向と言う。また、鉛直方向下方を−Z方向とし、−Z方向の反対方向を+Z方向と言う。
【0028】
基台11に搭載されるステージ12の上面には、対象物としてのグリーンシートGSが描画面GSaを上側にした状態でステージ12に位置決め固定されている。ステージ12は、基台11に設けられたステージモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、位置決めしたグリーンシートGSを所定の速度で+X方向又は−X方向へ走査する。
【0029】
基台11の上側には、門型に形成されたガイド部材13が+Y方向に沿って架設されている。ガイド部材13の上側には、液状体としての導電性インクIkを供給するインクタンク14が配設されている。インクタンク14は、導電性微粒子の分散系からなる導電性インクIkを貯留し、貯留する導電性インクIkを液滴吐出ヘッド15に所定圧力で供給する。導電性微粒子は、数nm〜数十nmの粒径を有する微粒子であり、例えば金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、イリジウム、鉄、錫、コバルト、ニッケル、クロム、チタン、タンタル、タングステン、インジウム等の金属、あるいはこれらの合金を用いることができる。分散媒は、導電性微粒子を均一に分散させるものであれば良く、例えば水や水を主成分とする水溶液系、あるいはテトラデカン等の有機溶剤を主成分とする有機系を用いることができる。
【0030】
ガイド部材13には、+Y方向及び−Y方向に移動可能なキャリッジ16が搭載され、キャリッジ16には、液滴吐出ヘッド15が搭載されている。キャリッジ16は、ガイド部材13に設けられたキャリッジモータ(図示せず)が正転又は逆転するとき、液滴吐出ヘッド15を+Y方向又は−Y方向へ走査する。
【0031】
図3において、液滴吐出ヘッド15は、キャリッジ16に位置決め固定されて+Y方向に延びるヘッド基板17と、ヘッド基板17に支持されるヘッド本体20とを有する。ヘッド基板17は、−Y方向の端部に接続端子17aを有し、外部から接続端子17aへ入力される各種制御信号をヘッド本体20へ出力し、ヘッド本体20から接続端子17aへ入力される各種検出信号を外部へ出力する。
【0032】
ヘッド本体20の底部には、グリーンシートGSと対向するノズルプレート21が貼り付けられている。ノズルプレート21は、ヘッド本体20がグリーンシートGSの直上に位置するとき、その底面(以下単に、ノズル形成面21aと言う)と描画面GSaとを略平行にして、ノズル形成面21aと描画面GSaとの間の距離(プラテンギャップ)を所定距離G(図4参照、本実施形態では1mm)に維持する。ノズルプレート21のノズル形成面21aには、ノズルプレート21をZ方向に貫通する複数のノズルNがY方向に沿って、ノズルピッチWnにて等間隔に配列されている。本実施形態においては、180個のノズルNがY方向に沿って配列されている。
【0033】
図4において、ヘッド本体20は、各ノズルNの上側にそれぞれ貯留室としてのキャビティ22と、振動板23と、圧力発生素子としての圧電素子PZを有する。各キャビティ22は、共通路24を介してそれぞれ連通しているとともに、共通するインクタンク14に接続されることによって、該インクタンク14からの導電性インクIkを収容し、その導電性インクIkをノズルNに供給する。振動板23は、各キャビティ22に対向する領域をZ方向に振動することにより、該キャビティ22の容積を拡大及び縮小させて圧力変動を発生させ、これに伴ってノズルNのメニスカスを振動させる。
【0034】
各圧電素子PZは、それぞれ駆動電圧波形を受けるとき、Z方向に収縮して伸張することにより、振動板23の各領域をZ方向に振動させる。各圧電素子PZは、それぞれ駆動電圧波形における駆動電圧値(ピーク電圧値)に基づいて、その収縮量や伸張量等の変位量が規定される。また、各圧電素子PZは、それぞれ駆動電圧波形における勾配に基づいて、その収縮速度や伸張速度等の変位速度が規定される。
【0035】
各キャビティ22は、それぞれ振動板23がZ方向に振動するとき、収容する導電性インクIkの一部を駆動信号に応じた液滴DにしてノズルNから吐出させる。吐出された液滴Dは、グリーンシートGSの描画面GSaに着弾する。本実施形態においては、各圧電素子PZに関して、第1ノズルN1、第2ノズルN2、第3ノズルN3、…、第iノズルNiに対応付けられる圧電素子PZを、それぞれ第1圧電素子PZ1、第2圧電素子PZ2、第3圧電素子PZ3、…、第i圧電素子PZiという。尚、図4では、液滴吐出ヘッド15の内部を説明する便宜上、ノズルピッチWnを十分に拡大して示している。
【0036】
グリーンシートGSの描画面GSaは、図5に示すように、ドットパターン格子DLによって仮想分割されている。ドットパターン格子DLは、+X方向の格子間隔と、+Y方向の格子間隔とが、それぞれ所定の間隔で設定される仮想格子である。例えば、ドットパターン格子DLの+X方向の格子間隔は、所定の周期とステージ12の走査速度vsとの積で形成され、またドットパターン格子DLの+Y方向の格子間隔は、ノズルピッチWnで形成される。液滴Dを吐出するか否かの選択は、このドットパターン格子DLの黒点で示した格子点Pごとに設定される。尚、図5では、ドットパターン格子DLの各格子点Pを説明する便宜上、ドットパターン格子DLの格子間隔を拡大して示している。
【0037】
第1圧電素子PZ1に駆動信号が供給されて振動板23が振動すると、第1圧電素子PZ1に対応するキャビティ22内に圧力変動が発生する。キャビティ22内に圧力変動が発生すると、第1ノズルN1から液滴Dが吐出され、該キャビティ22内には該圧力変動の残留振動が発生する。キャビティ22内の前記圧力変動と該圧力変動の残留振動とは、それぞれ振動板23、共通路24、及び隔壁25を介して第2ノズルN2などのキャビティ22に伝播する(以下、クロストークという)。
【0038】
図6は、第1ノズルN1からの液滴Dに対する第2ノズルN2からの液滴Dの相対速度を示す図であり、横軸は、第1ノズルN1の吐出タイミングから第2ノズルN2の吐出タイミングまでの経過時間(以下、時間差と言う。)を示す。
【0039】
図6において、第1ノズルN1と第2ノズルN2との間におけるクロストークは、第2ノズルN2からの液滴Dの飛行速度に、周期的な変動を発生させる。本実施形態では、隣接するノズルNの間において、後続するノズルNから吐出される液滴の飛行速度の変動周期を、残留振動周期Twと言う。なお、残留振動周期Twは、予め試験等で求められる時間であり、本実施形態ではTw=11μsである。
【0040】
液滴吐出装置10を利用する吐出処理においては、1つのノズル列が、連続するn個(nは2以上の整数)のノズルごとにノズル群に区分される。各ノズル群の第m番目(mは1以上の整数)のノズルNからなる第mブロックは、1つの吐出タイミングで液滴Dを吐出する。そして、第mブロックの吐出タイミングと第m+1ブロックの吐出タイミングとの時間差が、上記残留振動周期Tw以上になる。なお、本実施形態では、1つの吐出タイミングで選択され得るノズルNの数量の割合であって、全てのノズルNの数量に対する割合をデューティ比1/R(Rは2以上の整数)と言う。
【0041】
また、液滴吐出装置10を利用する吐出処理においては、まず、全ての圧電素子PZへ共通する基準駆動電圧波形が供給される。そして、全てのノズルNから得られる液滴Dの飛行速度(以下単に、初期速度v1と言う。)が予め計測される。液滴吐出ヘッド15の内部では、流路抵抗や剛性がノズルNごとに異なることから、各圧電素子PZがそれぞれ共通する基準駆動電圧波形を受ける場合であっても、液滴Dの飛行速度が厳密にはノズルNごとに異なってしまう。そこで、液滴吐出装置10を利用する吐出処理においては、液滴Dの着弾精度の向上を図るため、まず、各ノズルNが有する固有の初期速度v1が計測される。そして、各初期速度v1がそれぞれ4種類の第1速度vaに分類される、すなわ
ち各ノズルNがそれぞれ4種類のランクに分類される。
【0042】
次に、上記液滴吐出装置10の電気的構成を図7〜図16に従って説明する。図7は、液滴吐出装置10の電気的構成を示すブロック回路図である。
なお、以下では、説明の便宜上、デューティ比が1/2(R=2)の場合であって、1つの吐出タイミングで選択され得るノズルNが全ノズルの半数となる場合について説明する。詳述すると、1つのノズル列が2個(R=2)のノズルNからなる複数のノズル群に区分されて、奇数番目のノズルNからなる第1ブロックと、偶数番目のノズルNからなる第2ブロックとが交互に吐出される場合について説明する。
【0043】
また、以下では、グリーンシートGSの走査方向において、第1ブロックからの液滴Dの着弾位置と、第2ブロックからの液滴Dの着弾位置との間の距離(以下単に、目標距離δと言う。)を、内部配線6等の設計ルールに基づいて定められた値(δ=1μm)にする場合について説明する。
【0044】
図7において、制御装置30は、液滴吐出装置10に各種の処理動作を実行させるものである。制御装置30は、外部I/F31と、CPUなどからなる制御部32と、DRAM及びSRAMからなり各種のデータを格納して記憶部を構成するRAM33と、各種制御プログラムや各種データを格納して記憶部を構成するROM34とを有する。また、制御装置30は、クロック信号を生成する吐出タイミング生成部としての発振回路35と、駆動電圧波形を生成する駆動電圧波形生成部としての駆動電圧波形生成回路36と、ステージ12やキャリッジ16を走査するためのモータ駆動回路38と、各種の信号を送信する内部I/F39と、を有する。制御装置30は、外部I/F31を介して入出力装置40に接続されている。また、制御装置30は、内部I/F39を介してステージ12、キャリッジ16、及び、液滴吐出ヘッド15に対応するヘッド駆動回路41に接続されている。
【0045】
制御部32は、モータ駆動回路38に対応する駆動制御信号を出力する。モータ駆動回路38は、制御部32からの駆動制御信号に応答し、内部I/F39を介してステージ12、キャリッジ16を走査させる。
【0046】
発振回路35は、各種のデータや各種の駆動信号を同期させるためのクロック信号を生成する。発振回路35は、各種のデータのシリアル転送時に利用される転送クロックSCLKを生成する。発振回路35は、シリアル転送された各種のデータのパラレル変換時に利用されるラッチ信号(パターンラッチ信号LATAやコモンラッチ信号LATB)を生成する。また、発振回路35は、ステートを切り替えるためのステート切替信号CHAを生成する。パターンラッチ信号LATAとコモンラッチ信号LATBとは、第1ブロックが格子点Pの直上に位置するたびに生成される信号であって、吐出周期Trの2倍の周期で生成される。ステート切替信号CHAは、第1ブロックが格子点Pの直上を通過してから吐出周期Trが経過するごとに生成される。
【0047】
入出力装置40は、例えばCPU、RAM、ROM、ハードディスク、液晶ディスプレイなどを有した外部コンピュータである。入出力装置40は、ROM又はハードディスクに記憶された制御プログラムに従って液滴吐出装置10を駆動させるための各種の制御信号を外部I/F31に出力する。外部I/F31は、入出力装置40から描画データIp及びヘッドデータIhを受信する。
【0048】
描画データIpには、描画面GSaの各格子点Pに液滴Dを吐出させるための各種のデータが含まれる。例えば、描画データIpには、グリーンシートGSの位置に関するデータ、液滴Dの吐出位置に関するデータ、ステージ12の走査速度vsに関するデータ、プ
ラテンギャップGに関するデータ、目標距離δに関するデータが含まれる。また、描画データIpには、周期データが含まれる。
【0049】
周期データとは、液滴Dの吐出周期Trを規定するためのデータである。吐出周期Trは残留振動周期Tw以上の値に設定されて、本実施形態では、予め試験等で求めた残留振動周期Tw(本実施形態では11μs)に基づいて、Tr=20μsに設定されている。
【0050】
ヘッドデータIhには、各ノズルNの初期速度v1に関するデータ(初期速度データ)と、液滴吐出ヘッド15のデューティ比に関するデータ(デューティデータ)と、ランクを規定するためのデータ(ランクデータ)とが含まれている。
【0051】
初期速度データとは、全てのノズルNの各々に、該ノズルNの初期速度v1を関連付けたデータである。初期速度データは、RAM33に格納された後、各ノズルNのランク付けの際に利用される。
【0052】
デューティデータとは、液滴吐出ヘッド15のデューティ比を規定するためのデータである。デューティデータは、RAM33に格納された後、ノズル群を規定する際に利用される。なお、本実施形態においては、デューティ比が1/2であることを規定するためのデータである。
【0053】
ランクデータとは、初期速度v1の範囲と、4種類の第1速度va(ランク)とを関連付けたデータである。ランクデータは、RAM33に格納された後、各ノズルNのランク付けの際に利用される。本実施形態における初期速度v1の範囲は、図8に示すように、初期速度v1と基準速度vcen(例えば、全ての初期速度v1の平均値)との大小に応じて4種類に分類される。
【0054】
詳述すると、初期速度v1がvcen×1.1>v1≧vcen×1.05を満たす場合には、該ノズルNに対してランク「1」の第1速度va(例えば、vcen×1.075)が関連付けられる。初期速度v1がvcen×1.05>v1≧vcenを満たす場合には、該ノズルNに対してランク「2」の第1速度va(例えば、vcen×1.025)が関連付けられる。初期速度v1がvcen>v1≧vcen×0.95を満たす場合には、該ノズルNに対してランク「3」の第1速度va(例えば、vcen×0.975)が関連付けられる。そして、初期速度v1がvcen×0.95>v1≧vcen×0.9を満たす場合には、該ノズルNに対してランク「4」の第1速度va(例えば、vcen×0.925)が関連付けられる。
【0055】
なお、初期速度v1のばらつきは、ノズルN毎の流路抵抗や剛性に応じて発生する。そのため、隣接する2つのノズルNの間では、初期速度v1のばらつきが殆ど無視されることから、ランクの違いが生じ難い。そこで、本実施形態では、隣接する2つのノズルNの間、すなわち1つのノズル群内において、第1ブロックのランクが第2ブロックのランクとして利用される。
【0056】
RAM33は、受信バッファ33a、中間バッファ33b、出力バッファ33cとして利用される。ROM34は、制御部32が実行する各種の制御ルーチンと、該制御ルーチンを実行するための各種のデータとを格納する。ROM34は、速度電圧変換データと波形生成データとを格納する。
【0057】
速度電圧変換データとは、予め試験等に基づいて生成されるデータであって、液滴Dの飛行速度と駆動電圧値とを関連付けたデータである。速度電圧変換データは、例えば、4種類の第1速度vaを利用して、4種類のランクに対応する4種類の駆動電圧波形(第1
駆動電圧波形COMA,第2駆動電圧波形COMB,第3駆動電圧波形COMC,第4駆動電圧波形COMD)を生成する際に利用される。
【0058】
波形生成データは、駆動波形の立ち上がり期間、駆動電圧値の保持期間、駆動波形の立ち下がり期間などを規定したデータであって、各第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDを生成する際に利用される。
【0059】
制御部32は、RAM33に格納される初期速度データとランクデータとを読み出し、第1ブロックの各ノズルNに対してランク付けを実行する。そして、制御部32は、ノズル群ごとに、第1ブロックのノズルNに関連付けたランク(第1速度va)を利用して、第2ブロックのノズルNに関わる第2速度vbを演算する。
【0060】
詳述すると、制御部32は、第1速度va、吐出周期Tr、プラテンギャップG、走査速度vs、及び、目標距離δに基づいて、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす第2速度vbの範囲を演算し、その範囲から1つの飛行速度を選択する。尚、本実施形態の制御部32は、第2速度vbの再現性を得易くするため、該飛行速度範囲の中心値を選択する。例えば、va=7.0m/s、Tr=20μs、G=1mm、走査速度vs=250mm/s、目標距離δ=1μmとすると、制御部32は、第2速度vbの範囲を演算し、その中心値である8.14m/sを選択する。これによって、制御部32は、第2ブロックからの液滴Dの第2速度vbを決定する。
【0061】
制御部32は、第2速度vbを演算すると、ROM34に格納される速度電圧変換データを読み出し、各第1速度vaと各第2速度vbとをそれぞれ駆動電圧値へ変換する。詳述すると、制御部32は、速度電圧変換データに基づいて、ランク「1」の第1速度vaに関連付けられる駆動電圧値(第1駆動電圧Vh1a)を演算する。そして、制御部32は、該第1速度vaから得た第2速度vbに関連づけられる駆動電圧値(第2駆動電圧Vh2a)を演算する。
【0062】
同じく、制御部32は、速度電圧変換データに基づいて、ランク「2」の第1速度vaに関連付けられる駆動電圧値(第1駆動電圧Vh1b)を演算する。そして、制御部32は、該第1速度vaから得た第2速度vbに関連づけられる駆動電圧値(第2駆動電圧Vh2b)を演算する。また、制御部32は、速度電圧変換データに基づいて、ランク「3」の第1速度vaに関連付けられる駆動電圧値(第1駆動電圧Vh1c)を演算する。そして、制御部32は、該第1速度vaから得た第2速度vbに関連づけられる駆動電圧値(第2駆動電圧Vh2c)を演算する。また、制御部32は、速度電圧変換データに基づいて、ランク「4」の第1速度vaに関連付けられる駆動電圧値(第1駆動電圧Vh1d)を演算する。そして、制御部32は、該第1速度vaから得た第2速度vbに関連づけられる駆動電圧値(第2駆動電圧Vh2d)を演算する。
【0063】
駆動電圧波形生成回路36は、各駆動電圧値と波形生成データとを用いて、ランク「1」〜「4」に対応する第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDを生成する。詳述すると、駆動電圧波形生成回路36は、図9(a)に示すように、ランク「1」に対応する第1駆動電圧Vh1a、第2駆動電圧Vh2a、及び波形生成データを用いて、第1駆動電圧波形COMAを生成する。
【0064】
同じく、駆動電圧波形生成回路36は、図9(b)に示すように、ランク「2」に対応する第1駆動電圧Vh1b、第2駆動電圧Vh2b、及び波形生成データを用いて、第2駆動電圧波形COMBを生成する。また、駆動電圧波形生成回路36は、図9(c)に示すように、ランク「3」に対応する第1駆動電圧Vh1c、第2駆動電圧Vh2c、及び波形生成データを用いて、第3駆動電圧波形COMCを生成する。また、駆動電圧波形生
成回路36は、図9(d)に示すように、ランク「4」に対応する第1駆動電圧Vh1d、第2駆動電圧Vh2d、及び波形生成データを用いて、第4駆動電圧波形COMDを生成する。
【0065】
図7において、制御部32は、外部I/F31が受信した描画データIp及びヘッドデータIhを受信バッファ33aに一時的に格納する。制御部32は、描画データIp及びヘッドデータIhを中間コードに変換して中間コードデータとして中間バッファ33bに格納する。
【0066】
制御部32は、中間バッファ33bから中間コードデータを読み出してドットパターンデータを生成し、該ドットパターンデータを出力バッファ33cに格納させる。ドットパターンデータは、各格子点Pに1ビットの値(”0”、”1”)を対応付けたデータであって、2値の各々に応じて吐出あるいは非吐出を規定するデータである。
【0067】
制御部32は、ステージ12の1スキャン分に相当するドットパターンデータを生成すると、1列分の格子点Pに相当するドットパターンデータを利用して、転送クロックSCLKに同期したシリアルデータを生成し、該シリアルデータをヘッド駆動回路41へシリアル転送する。制御部32は、ドットパターンデータを利用してシリアル転送を実行すると、中間バッファ33bの内容を消去し、次の中間コードデータに対して展開処理を実行する。本実施形態では、1列分の格子点Pに相当するシリアルデータを、シリアルパターンデータSIAという。
【0068】
また、制御部32は、中間バッファ33bから中間コードデータ(初期速度データとランクデータと)を読み出してランク付けを実行し、各ノズル群とランクとを関連付けたコモン選択データを生成し、該コモン選択データを出力バッファ33cに格納する。コモン選択データは、各ノズル群に2ビットの値(”00”、”01”、”10”、”11”)を対応付けたデータであって、4値の各々にランクを対応付けたデータである。
【0069】
制御部32は、コモン選択データを生成すると、コモン選択データを利用して転送クロックSCLKに同期したシリアルデータを生成し、該シリアルデータをヘッド駆動回路41へシリアル転送する。本実施形態では、コモン選択データを利用して生成するシリアルデータを、シリアルコモン選択データSIBと言う。
【0070】
図10において、シリアルパターンデータSIAは、1つのノズル列に対応する180ビットの第1ブロックデータSIHと、同ノズル列に対応する180ビットの第2ブロックデータSILとによって構成されている。第1ブロックデータSIHは、各ノズル群の第1ブロックにおける各圧電素子PZにオン状態あるいはオフ状態を規定するデータであり、かつ、第2ブロックにおける各圧電素子PZにオフ状態を規定するデータである。第2ブロックデータSILは、各ノズル群の第2ブロックにおける各圧電素子PZにオン状態あるいはオフ状態を規定するデータであり、第1ブロックにおける各圧電素子PZにオフ状態に規定するデータである。
【0071】
図11において、パターンラッチ信号LATAごとに規定される状態の中で、ステート切替信号CHAごとに規定される状態を、「ステート」という。ステート切替信号CHAは、パターンラッチ信号LATAごとの状態を、デューティ比(1/R)に基づいてR個のステートに区分する。本実施形態では、パターンラッチ信号LATAごとの状態を、デューティ比1/2に基づいて2個のステートに区分し、各ステートを、それぞれステート「0」とステート「1」と言う。
【0072】
図12において、シリアルコモン選択データSIBは、1つのノズル列に対応する18
0ビットの上位選択データSXHと、同ノズル列に対応する180ビットの下位選択データSXLとによって構成されている。図13に示すように、上位選択データSXHと下位選択データSXLとは、それぞれ真理値表に従って、180個のノズルNにそれぞれランク(第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの種別)を規定するためのデータである。例えば、上位選択データSXHが“0”、下位選択データSXLが“0”のノズルNには、それぞれランク「1」(第1駆動電圧波形COMA)が規定される。上位選択データSXHと下位選択データSXLとが“01”、“10”、“11”のノズルNには、それぞれランク「2」(第2駆動電圧波形COMB)、ランク「3」(第3駆動電圧波形COMC)、ランク「4」(第4駆動電圧波形COMD)が規定される。
【0073】
図14において、ヘッド駆動回路41は、出力制御信号生成回路50と、コモン制御信号生成回路60とを有する。また、ヘッド駆動回路41は、出力合成回路70と、ロジック系の信号を昇圧してアナログスイッチの駆動電圧レベルに昇圧するレベルシフタ71とを有する。また、ヘッド駆動回路41は、圧電素子PZに各駆動波形を供給するための4系統のスイッチ回路72を有する。
【0074】
図15において、出力制御信号生成回路50は、シフトレジスタ51と、ラッチ52と、ステートカウンタ53とパターンデータ合成回路55とを有する。シフトレジスタ51は、第2ブロックレジスタ51Bと、第1ブロックレジスタ51Cとを有し、制御装置30からシリアルパターンデータSIAと転送クロックSCLKとが入力される。
【0075】
第2ブロックレジスタ51Bは、シリアルパターンデータSIAの第2ブロックデータSILを転送クロックSCLKで順次シフトして、180ビットの第2ブロックデータSILを格納する。第1ブロックレジスタ51Cは、シリアルパターンデータSIAの第1ブロックデータSIHを転送クロックSCLKで順次シフトして、該第1ブロックデータSIHを格納する。
【0076】
ラッチ52は、第2ブロックラッチ52Bと第1ブロックラッチ52Cとを有し、制御装置30からパターンラッチ信号LATAが入力される。第2ブロックラッチ52Bは、パターンラッチ信号LATAが入力されるとき、第2ブロックレジスタ51Bに格納される第2ブロックデータSILをラッチする。第1ブロックラッチ52Cは、パターンラッチ信号LATAが入力されるとき、第1ブロックレジスタ51Cに格納される第1ブロックデータSIHをラッチする。
【0077】
ステートカウンタ53は、1ビットのカウンタ回路であり、ステート切替信号CHAの立ち上がりエッジによってカウントし、ステートを変化させる。ステートカウンタ53は、ステート切替信号CHAが入力されるごとに、ステートを「0」から「1」へ繰り上げ、パターンラッチ信号LATAが入力されるごとに、ステートを「1」から「0」へリセットする。ステートカウンタ53は、ステート切替信号CHAとパターンラッチ信号LATAが入力されるとき、ステートの値をパターンデータ合成回路55に出力する。
【0078】
パターンデータ合成回路55は、第2ブロックラッチ52Bがラッチした第2ブロックデータSILと、第1ブロックラッチ52Cがラッチした第1ブロックデータSIHとを読み込む。パターンデータ合成回路55は、ステートカウンタ53からのステートの値に基づいて、ステートが「0」のとき、第1ブロックデータSIHを出力制御信号PIとして出力する。パターンデータ合成回路55は、ステートカウンタ53からのステートが「1」のとき、第2ブロックデータSILを出力制御信号PIとして出力する。これによって、ステートが「0」になるとき、第1ブロックが吐出ノズルに選択され、ステートが「1」になるとき、第2ブロックが吐出ノズルに選択される。すなわち、隣接したノズルN
が交互に吐出可能ノズルに選択される。
【0079】
図16において、コモン制御信号生成回路60は、シフトレジスタ61と、ラッチ62と、コモン選択データデコード回路63とを有する。シフトレジスタ61は、下位選択レジスタ61Bと上位選択レジスタ61Cとを有し、制御装置30からシリアルコモン選択データSIBと転送クロックSCLKとが入力される。
【0080】
下位選択レジスタ61Bは、シリアルコモン選択データSIBの下位選択データSXLを転送クロックSCLKで順次シフトして、180ビットの下位選択データSXLを格納する。上位選択レジスタ61Cは、シリアルコモン選択データSIBの上位選択データSXHを転送クロックSCLKで順次シフトして、180ビットの上位選択データSXHを格納する。
【0081】
ラッチ62は、下位選択ラッチ62Bと上位選択ラッチ62Cとを有し、制御装置30からコモンラッチ信号LATBが入力される。下位選択ラッチ62Bは、コモンラッチ信号LATBが入力されるとき、下位選択レジスタ61Bに格納された下位選択データSXLをラッチする。上位選択ラッチ62Cは、コモンラッチ信号LATBが入力されるとき、上位選択レジスタ61Cに格納された上位選択データSXHをラッチする。
【0082】
コモン選択データデコード回路63は、下位選択ラッチ62Bがラッチした下位選択データSXLと、上位選択ラッチ62Cがラッチした上位選択データSXHとを読み込む。コモン選択データデコード回路63は、下位選択データSXLと上位選択データSXHとを用い、図13に示す真理値表に従って、4つの異なる第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの各々について使用するか否か(選択・非選択)を規定する。コモン選択データデコード回路63は、180個のノズルNの各々に対し、各駆動電圧波形の選択・非選択を規定したデータを生成する。
【0083】
本実施形態では、第1駆動電圧波形COMAの選択・非選択について規定したデータを、第1コモン制御信号PXAという。第2駆動電圧波形COMB、第3駆動電圧波形COMC、第4駆動電圧波形COMDの選択・非選択について規定したデータを、それぞれ第2コモン制御信号PXB、第3コモン制御信号PXC、第4コモン制御信号PXDと言う。
【0084】
例えば、コモン選択データデコード回路63は、第1ノズルN1に関連する上位選択データSXHと下位選択データSXLとが“00”である場合には、第1ノズルN1に関連する第1コモン制御信号PXAを“1”として出力する。そして、第2〜第4コモン制御信号PXB,PXC,PXDを“0”として出力する。また、第1ノズルN1に関連する上位選択データSXHと下位選択データSXLとが“01”、“10”、“00”である場合には、第1ノズルN1に関連する第2コモン制御信号PXB、第3コモン制御信号PXC、第4コモン制御信号PXDをそれぞれ“1”として出力する。
【0085】
図14において、出力合成回路70は、第1コモン出力合成回路70Aと、第2コモン出力合成回路70Bと、第3コモン出力合成回路70Cと、第4コモン出力合成回路70Dとを有する。各第1〜第4コモン出力合成回路70A,70B,70C,70Dには、それぞれ出力制御信号生成回路50から180ビットの出力制御信号PIが共通に入力される。また、各第1〜第4コモン出力合成回路70A,70B,70C,70Dには、それぞれコモン制御信号生成回路60から第1コモン制御信号PXA、第2コモン制御信号PXB、第3コモン制御信号PXC、第4コモン制御信号PXDが入力される。
【0086】
第1〜第4コモン出力合成回路70A,70B,70C,70Dは、それぞれノズルN
(圧電素子PZ)ごとのANDゲートにより構成される。
第1コモン出力合成回路70Aに含まれる各ANDゲートには、それぞれ出力制御信号PIと第1コモン制御信号PXAとが入力される。第1コモン出力合成回路70Aに含まれる各ANDゲートは、それぞれ出力制御信号PIと第1コモン制御信号PXAとを用いて、対応する圧電素子PZに第1駆動電圧波形COMAを供給するか否か(供給・非供給)を規定した信号(以下単に、第1選択コモン出力制御信号CPAと言う。)を出力する。
【0087】
第2コモン出力合成回路70Bに含まれる各ANDゲートには、それぞれ出力制御信号PIと第2コモン制御信号PXBとが入力される。第2コモン出力合成回路70Bに含まれる各ANDゲートは、それぞれ出力制御信号PIと第2コモン制御信号PXBとを用いて、対応する圧電素子PZに第2駆動電圧波形COMBを供給するか否か(供給・非供給)を規定した信号(以下単に、第2選択コモン出力制御信号CPBと言う。)を出力する。
【0088】
第3コモン出力合成回路70Cに含まれる各ANDゲートには、それぞれ出力制御信号PIと第3コモン制御信号PXCとが入力される。第3コモン出力合成回路70Cに含まれる各ANDゲートは、それぞれ出力制御信号PIと第3コモン制御信号PXCとを用いて、対応する圧電素子PZに第3駆動電圧波形COMCを供給するか否か(供給・非供給)を規定した信号(以下単に、第3選択コモン出力制御信号CPCと言う。)を出力する。
【0089】
第4コモン出力合成回路70Dに含まれる各ANDゲートには、それぞれ出力制御信号PIと第4コモン制御信号PXDとが入力される。第4コモン出力合成回路70Dに含まれる各ANDゲートは、それぞれ出力制御信号PIと第4コモン制御信号PXDとを用いて、対応する圧電素子PZに第4駆動電圧波形COMDを供給するか否か(供給・非供給)を規定した信号(以下単に、第4選択コモン出力制御信号CPDと言う。)を出力する。
【0090】
例えば、第1コモン出力合成回路70Aは、出力制御信号PIが“1”であり、かつ、第1コモン制御信号PXAが“1”の場合、圧電素子PZに第1駆動電圧波形COMAを供給するための第1選択コモン出力制御信号CPA(ビット値が“1”の信号)を出力する。第1コモン出力合成回路70Aは、出力制御信号PIが“0”、あるいは、第1コモン制御信号PXAが“0”の場合、該圧電素子PZに対し第1駆動電圧波形COMAを供給しないための第1選択コモン出力制御信号CPA(ビット値が“0”の信号)を出力する。
【0091】
これによって、180個の各ノズルNは、それぞれ出力制御信号PIによって、液滴Dを吐出するか否か決定され、第1〜第4コモン制御信号PXA,PXB,PXC,PXDによって、各第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの何れを利用するかが決定される。
【0092】
レベルシフタ71は、第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの各々に対応する4系統のレベルシフタを有する。第1〜第4レベルシフタ71A,71B,71C,71Dには、それぞれ対応する出力合成回路70からの第1〜第4選択コモン出力制御信号CPA,CPB,CPC,CPDが入力される。第1〜第4レベルシフタ71A,71B,71C,71Dは、それぞれ第1〜第4選択コモン出力制御信号CPA,CPB,CPC,CPDをアナログスイッチの駆動電圧レベルに昇圧し、180個の圧電素子PZに対応する開閉信号を出力する。
【0093】
スイッチ回路72は、第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの各々に対応する4系統のスイッチ回路を有する。第1〜第4スイッチ回路72A,72B,72C,72Dは、それぞれ圧電素子PZへ接続された180個のアナログスイッチを有する。第1〜第4スイッチ回路72A,72B,72C,72Dには、それぞれ対応するレベルシフタ71からの開閉信号が入力される。各アナログスイッチの入力端には、それぞれ対応する駆動波形が入力され、各アナログスイッチの出力端には、それぞれ圧電素子PZが共通接続されている。各アナログスイッチは、それぞれ対応するレベルシフタ71から開閉信号が入力され、該開閉信号に基づいて圧電素子PZに駆動波形を出力する。
【0094】
これによって、180個の圧電素子PZは、それぞれ出力制御信号PIに基づいて吐出動作が選択されるとき、第1〜第4選択コモン出力制御信号CPA,CPB,CPC,CPDに基づいて第1〜第4駆動電圧波形COMA,COMB,COMC,COMDの何れか1つが供給される。
【0095】
次に、液滴吐出装置10を利用する液滴吐出方法について以下に説明する。図17は、各圧電素子PZに供給される駆動波形を説明するためのタイミングチャートである。
まず、グリーンシートGSが、その描画面GSaを上側にしてステージ12に載置される。このとき、ステージ12は、グリーンシートGSをキャリッジ16の−X方向に配置する。この状態から、入出力装置40は、描画データIpとヘッドデータIhとを制御装置30に入力する。
【0096】
制御装置30は、モータ駆動回路38を介してキャリッジ16を走査し、グリーンシートGSが+X方向に走査されるときに各液滴吐出ヘッド15がグリーンシートGSの上を通過するように、キャリッジ16を配置する。制御装置30は、キャリッジ16を配置すると、モータ駆動回路38を介してステージ12の走査を開始する。
【0097】
制御装置30は、ステージ12の走査を開始すると、入出力装置40から入力された描画データIpをドットパターンデータに展開する。制御装置30は、ステージ12の1スキャン分に相当するドットパターンデータを展開すると、図17に示すように、ドットパターンデータを用いてシリアルパターンデータSIAを生成し、該シリアルパターンデータSIAを転送クロックSCLKに同期させてヘッド駆動回路41にシリアル転送する。
【0098】
制御装置30は、ステージ12の走査を開始すると、入出力装置40から入力されたヘッドデータIh(初期速度データとランクデータ)を用いて、各ノズル群に対するランク付けを実行し、コモン選択データを生成する。制御装置30は、ステージ12の1スキャン分に相当するコモン選択データを展開すると、図17に示すように、コモン選択データを用いてシリアルコモン選択データSIBを生成し、該シリアルコモン選択データSIBを転送クロックSCLKに同期させてヘッド駆動回路41にシリアル転送する。
【0099】
制御装置30は、ステージ12が描画開始位置に到達すると、図17に示すように、パターンラッチ信号LATA及びコモンラッチ信号LATBをヘッド駆動回路41に出力し、ヘッド駆動回路41にシリアルパターンデータSIA及びシリアルコモン選択データSIBをラッチさせる。
【0100】
制御装置30は、ノズル群ごとに、第1ブロックのノズルNに関連付けられたランク(第1速度va)を利用して第2ブロックのノズルNに関わる第2速度vbを演算する。そして、制御装置30は、第1速度va、第2速度vb、及び速度電圧変換データに基づいて、第1駆動電圧波形COMA、第2駆動電圧波形COMB、第3駆動電圧波形COMC、第4駆動電圧波形COMDを生成する。制御装置30は、各第1〜第4駆動電圧波形C
OMA,COMB,COMC,COMDをそれぞれパターンラッチ信号LATAに同期させてヘッド駆動回路41に逐次出力する。
【0101】
ヘッド駆動回路41は、パターンラッチ信号LATAが入力されると、ステートカウンタ53のステートをリセットして、ステート「0」をパターンデータ合成回路55に出力する。パターンデータ合成回路55は、ステートカウンタ53からのステート「0」に応じて第1ブロックデータSIHを出力制御信号PIとして各出力合成回路70に出力する。
【0102】
制御装置30は、パターンラッチ信号LATAをヘッド駆動回路41に出力すると、ステート切替信号CHAをヘッド駆動回路41に出力する。ヘッド駆動回路41は、制御装置30からのステート切替信号CHAに応じて、ステートカウンタ53のステートを「0」から「1」に切り替え、ステート「1」をパターンデータ合成回路55へ出力する。パターンデータ合成回路55は、ステートカウンタ53からのステート「1」に応じて第2ブロックデータSILを出力制御信号PIとして各出力合成回路70に出力する。
【0103】
この間、ヘッド駆動回路41は、シリアルコモン選択データSIBをラッチするたびに、上位選択データSXHと下位選択データSXLとを用いて、図13に示す真理値表に従って、180個のノズルNの各々にランクに応じた駆動波形を規定する。
【0104】
例えば、第1及び第2圧電素子PZ1,PZ2からなるノズル群に対して、上位及び下位選択データSXH,SXLが“00”の場合、図13に示す真理値表に従って、第1及び第2圧電素子PZ1,PZ2には、第1駆動電圧波形COMAが関連付けられる。そして、第1及び第2圧電素子PZ1,PZ2からなるノズル群では、ステート「0」のとき第1圧電素子PZ1にのみ第1駆動電圧波形COMAが供給され、ステート「1」のときには第2圧電素子PZ2にのみ第1駆動電圧波形COMAが供給される。すなわち、第1圧電素子PZ1には、第1駆動電圧波形COMAにおいて第1駆動電圧Vh1aを用いる部分が供給され、第2圧電素子PZ2には第1駆動電圧波形COMAにおいて第2駆動電圧Vh2aを用いる部分が供給される。
【0105】
これによって、第1ブロックのノズルNから吐出される液滴Dと、第2ブロックのノズルNから吐出される液滴Dとが、それぞれY方向に沿って、同時に着弾する。しかも、第2ブロックからの液滴Dが残留振動の影響を受けないタイミングで吐出させることから、各第2速度vbが高い精度の下で具現化される。その結果、1列のノズル列から吐出される各液滴Dの着弾が高い精度の下で同期化されて、ノズル列の方向に沿った直線が高い精度の下で描画される。
【0106】
上記実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態において、第2ブロックのノズルNは、第1ブロックのノズルNが駆動し、その後、残留振動周期Tw以上の時間が経過した後に駆動する。そして、各ブロックから吐出される液滴Dの飛行速度は、それぞれ|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満足する1組の飛行速度が選択され、その選択した飛行速度に基づいて4種の駆動電圧波形がそれぞれ各圧電素子PZへ供給される。
【0107】
したがって、第2ブロックの各ノズルNは、第1ブロックからの残留振動を抑えた状態で液滴Dを吐出できる。その結果、液滴吐出装置10は、隣接するノズルNから吐出される液滴Dの着弾タイミングを高い精度の下で調整できることから、例えばδ=1μmとすることで、ノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。
【0108】
(2)さらに、液滴吐出装置10は、各ブロックを順に繰り返して駆動させることから
、ノズル列の全体にわたり、ノズル列の方向に沿った直線を高い精度の下で描画できる。また、液滴Dの吐出動作を画一的に実行できることから、吐出動作の複雑化を抑えながらノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0109】
(3)上記実施形態において、各ノズル群は隣接する2個のノズルからなる。したがって、液滴吐出装置10は、ノズル群に含まれるノズルNの数量を最小の単位で構成することから、吐出動作の複雑化を一層に抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0110】
(4)上記実施形態において、液滴吐出装置10は、駆動電圧値と飛行速度とを関連付けた速度電圧変換データを用い、第1速度va及び第2速度vbに応じた駆動電圧波形を生成する。したがって、液滴吐出装置10は、駆動電圧波形を駆動電圧値で画一的に変調することから、吐出動作の複雑化を抑えながら、ノズル列の方向に沿った直線を描画できる。
【0111】
(5)上記実施形態において、液滴吐出装置10は、初期速度v1に基づいて、各ノズルNのランク付けを実行する。したがって、液滴吐出装置10は、ノズルNごとの固有の誤差を補正した上で、第1速度vaと第2速度vbとを決定できる。その結果、液滴吐出装置10は、ノズル列の方向に沿った直線を、より高い精度の下で描画できる。
【0112】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態の液滴吐出装置10は、変換データを、速度電圧変換データに具体化した。これに限らず、変換データは、圧電素子PZの変位速度を定める駆動電圧勾配(例えば、駆動電圧波形の立下り期間)と飛行速度とを関連付けるデータであっても良い。すなわち、液滴吐出装置10は、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす第1速度vaと第2速度vbとを演算して選択し、第1速度vaと第2速度vbとに関連付けられた駆動電圧勾配を用いて駆動電圧波形を生成する構成であっても良い。さらに、変換データは、駆動電圧及び駆動電圧勾配と、飛行速度とを関連付けるデータであっても良い。これらによれば、駆動電圧波形の変調範囲を拡張させることができることから、液滴吐出装置10の適用範囲を拡大させられる。
【0113】
・上記実施形態では、駆動電圧波形生成回路36が、パターンラッチ信号LATAごとに、2つのピークを有した駆動電圧波形を生成する。これに限らず、駆動電圧波形生成回路36は、パターンラッチ信号LATA及びステート切替信号CHAごとに、すなわち吐出周期Trごとに、第1ブロックへの駆動電圧波形と第2ブロックへの駆動電圧波形とを交互に生成する構成であっても良い。なお、この際、制御装置30は、第1ブロックに対応するシリアルパターンデータSIA及びシリアルコモン選択データSIBと、第2ブロックに対応するシリアルパターンデータSIA及びシリアルコモン選択データSIBとを、吐出周期Trごとに交互に生成する構成が好ましい。
【0114】
・上記実施形態では、液滴吐出ヘッド15のデューティ比を1/2、すなわち液滴吐出ヘッド15のノズルNを2個のノズルNからなるノズル群で区分した。これに限らず、液滴吐出ヘッド15のデューティ比を1/k(kは3以上の整数)、すなわちノズル群をk個の以上のノズルからなる構成にしても良い。
【0115】
この際、制御装置30は、パターンラッチ信号LATA、コモンラッチ信号LATB、ステート切替信号CHA等、各種の構成をデューティ比に応じて適宜変更する構成が好ましい。例えば、デューティ比を1/3にする場合には、パターンラッチ信号LATA(コモンラッチ信号LATB)ごとに2つのステート切替信号CHAを生成し、ステート切替信号CHAごとに、ステートを「1」から「2」、「2」から「3」へ切り替える。また
、制御装置30は、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす第1速度vaと第2速度vbとを演算して選択し、さらに、|vs・(G/vc−G/vb+Tr)|≦δを満たす第3速度vcとを演算して選択する。そして、制御装置30は、第1速度va、第2速度vb、及び第3速度vcに関連付けられた各駆動電圧値を用いて駆動電圧波形を生成し、各駆動電圧値を、それぞれ対応する第1ブロック、第2ブロック、第3ブロックへ供給する構成が好ましい。また、この構成によれば同一ブロックのノズルを、より離間した位置に配置することができることから、同一ブロックのノズル間におけるクロストークを低減することができる。
【0116】
・上記実施形態では、各ノズルNに対して、ランク付けを実行した。これに限らず、ランク付けを実行せず、各初期速度v1を第1速度vaとして用いる構成であっても良い。すなわち、第1ブロックの初期速度v1を用いて、G/v1−G/vb=Trを満たす第2速度vbを演算し、第1ブロックにおける初期速度v1の種類の分だけ、駆動電圧波形を生成する構成であっても良い。なお、この際、駆動電圧波形の種類に応じて、出力合成回路70を変更する構成が好ましい。
【0117】
・上記実施形態では、第1速度vaが、初期速度v1に基づいて決定される。これに限らず、第1速度vaは、初期速度v1に関わらず、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす構成であれば良い。すなわち、液滴吐出装置10は、例えば、|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たす飛行速度の組み合わせの中から第1速度vaと第2速度vbとを選択する構成であっても良い。
【0118】
・上記実施形態では、ノズル列を複数のブロックに区分したが、これに限らず、ノズル列をブロックに区分しない構成であっても良い。すなわち、隣接する2つのノズルの吐出タイミングの時間差が残留振動周期以上であって、かつ、隣接する2つのノズルに設けられた圧電素子PZに、それぞれ|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δを満たすような飛行速度に基づく駆動電圧波形が供給される構成であれば良い。
【0119】
・上記実施形態では、目標距離δを、設計ルール基づいて定められたδ=1μmの場合について具体化した。これに限らず、目標距離δの値は、描画パターンの設計ルール、液滴吐出処理の前工程、液滴吐出処理の後工程等に応じて、適宜変更する構成であっても良い。この構成によれば、目標距離δに応じて、隣接したノズルNからの液滴の着弾タイミングが高い精度の下で調整されることから、さまざまなパターンを高精度に描画することができる。
【0120】
・上記実施形態では、液滴吐出ヘッドを圧電素子駆動方式に具体化した。これに限らず、圧電素子駆動方式を抵抗加熱方式や静電駆動方式に具体化しても良い。
・上記実施形態では、ノズル列の数量が一列であるが、これに限らず、ノズル列の数量は、2列以上であっても良い。
【0121】
・上記実施形態では、キャリッジ16に搭載した液滴吐出ヘッド15の数量が1つである液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、キャリッジ16に搭載する液滴吐出ヘッド15の数量は2以上であってもよいし、液滴吐出ヘッド15を搭載したキャリッジ16の数量も2以上であってもよい。
【0122】
・上記実施形態では、ステージ12を移動させることによって、液滴吐出ヘッド15とグリーンシートGSとを相対移動させた。これに限らず、液滴吐出ヘッド15を移動させることによって、液滴吐出ヘッド15とグリーンシートGSとを相対移動させても良い。
【0123】
・上記実施形態では、制御装置30は第2速度vbを演算して求めた。これに限らず、
例えば、作業者によって予め第2速度vbを求めておき、該第2速度vbを記憶させたヘッドデータIhを制御装置30に入力してもよい。
【0124】
・上記実施形態の残留振動周期は、予め試験等によって得られるデータに基づいて決定される。これに限らず、残留振動周期は、公知の計算方法によって算出した周期の値を用いて吐出周期Trを決定しても良い。
【0125】
・上記実施形態では、グリーンシートGSに配線パターンを描画する液滴吐出装置10に具体化した。これに限らず、例えば、絶縁層を形成する液滴吐出装置、カラーフィルタを形成するために液滴吐出装置、配向膜を形成する液滴吐出装置等、各種の液滴吐出装置に応用してもよい。
【0126】
・上記実施形態では、第2速度vbは飛行速度範囲の中心値とした。これに限らず、飛行速度範囲内であれば他の値としてもよい。
・上記実施形態では、予め設定された設計ルールに基づいて目標距離δを所定の値に定めた例について説明した。これに限らず、例えば、時間差Trを設けた場合における、隣接したノズルNから吐出された液滴Dの着弾位置間の距離を予め求め、該距離に基づいて目標距離δに定める構成であってもよい。これによれば、隣接したノズルN間のばらつきを加味して着弾位置を揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】回路モジュールを示す断面図。
【図2】本実施形態の液滴吐出装置を示す斜視図。
【図3】液滴吐出ヘッドを示す斜視図。
【図4】液滴吐出ヘッドの内部を示す側断面図。
【図5】ドットパターン格子を示す平面図。
【図6】隣接するノズル間における吐出動作の時間差と相対速度の関係を示すグラフ。
【図7】液滴吐出装置の電気的構成を説明する電気ブロック回路図。
【図8】飛行速度とノズルのランクとの関係を示す図。
【図9】(a)〜(d)は、それぞれ駆動電圧波形を示す図。
【図10】シリアルパターンデータの構成を示す図。
【図11】ステート切替信号とステートとの関係を示すタイミングチャート。
【図12】シリアルコモン選択データの構成を示す図。
【図13】ランクと駆動電圧波形との関係を示す図。
【図14】ヘッド駆動回路を示す電気ブロック回路図。
【図15】出力制御信号生成回路を示す電気ブロック回路図。
【図16】コモン選択制御信号生成回路を示す回路図。
【図17】ヘッド駆動回路の駆動タイミングを示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0128】
D…液滴、G…距離、N…ノズル、PZ…圧力発生素子としての圧電素子、COM,COMA,COMB,COMC,COMD…駆動電圧波形、vs…走査速度、δ…目標距離、10…液滴吐出装置、32…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が載置された移動部と1つの方向に配列された複数のノズルとを相対移動させながら、前記ノズル毎に設けられた圧力発生素子に駆動電圧波形を供給することによって該ノズル毎に設けられた貯留室に圧力変動を発生させて前記貯留室に貯留された液状体を液滴にして吐出する液滴吐出方法であって、
1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差が、前記1つのノズルから液滴を吐出したことによる前記1つのノズルの貯留室における残留振動周期以上になるように、前記1つのノズルと前記他のノズルとからそれぞれ液滴を吐出するとともに、
前記時間差をTr、前記ノズルと前記対象物との間の距離をG、前記移動部の走査速度をvs、前記1つのノズルからの液滴の飛行速度をva、前記他のノズルからの液滴の飛行速度をvb、前記相対移動方向における液滴間の目標距離をδとするとき、前記駆動電圧波形と、該駆動電圧波形から得た前記液滴の飛行速度とを関連付けた変換データを用い
|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δ
を満たす飛行速度からいずれか1組を選択して駆動電圧波形へ変換し、該飛行速度に対応するノズルに設けられた前記圧力発生素子へ前記変換した駆動電圧波形を供給することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出方法であって、
前記複数のノズルからなるノズル列をn個(nは2以上の整数)のノズル毎に区分したノズル群の第m番目(mは1以上)のノズルからなるブロックを第mブロックとするとき、
第1ブロックから第mブロックまでを順番に繰り返して駆動して、第mブロックの吐出タイミングと、第m+1ブロックの吐出タイミングとの間の時間差を前記残留振動周期以上にすることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出方法であって、
前記各ノズル群は、隣接する2個のノズルからなることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
1つの方向に配列された複数のノズルと、前記ノズル毎に設けられて液状体を貯留する貯留室と、前記ノズル毎に設けられて駆動電圧波形を受けることにより前記貯留室に圧力変動を発生させて前記ノズルから対象物に向けて液滴を吐出させる圧力発生素子と、前記複数のノズルと前記対象物とを前記1つの方向と交差する方向へ相対移動させる移動部とを備えた液滴吐出装置であって、
前記圧力発生素子に供給する駆動電圧波形と、前記駆動電圧波形を用いたときの前記液滴の飛行速度とを関連付けて、前記飛行速度を前記駆動電圧波形へ変換するための変換データを記憶する記憶部と、
1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差をTr、前記各ノズルと前記対象物との間の距離をG、前記移動部の走査速度をvs、前記1つのノズルからの液滴の飛行速度をva、前記隣接するノズルからの液滴の飛行速度をvb、前記相対移動方向における液滴間の目標距離をδとするとき、
|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δ
を満たす飛行速度から選択された1組を、前記変換データを用いて変換して駆動電圧波形を生成する駆動電圧波形生成部と、
1つのノズルの吐出タイミングと、前記1つのノズルに隣接する他のノズルの吐出タイミングとの時間差が、前記1つのノズルから液滴を吐出したことによる前記1つのノズルの貯留室における残留振動周期以上になるように、前記生成した駆動電圧波形を前記圧力発生素子へ供給する制御部とを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置であって、
前記複数のノズルからなるノズル列をn個(nは2以上の整数)のノズル毎に区分したノズル群の第m番目(mは1以上)のノズルからなるブロックを第mブロックとするとき、
前記制御部は、
第1ブロックから第mブロックまでを順番に繰り返して駆動して、第mブロックの吐出タイミングと、第m+1ブロックの吐出タイミングとの間の時間差が前記残留振動周期以上になるように、前記生成した駆動電圧波形を前記圧力発生素子へ供給することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記圧力発生素子は圧電素子であり、
前記変換データは、前記圧電素子の変位量を定める駆動電圧値と、前記駆動電圧値を用いた駆動電圧波形から得られる前記液滴の飛行速度とを関連付けたデータであり、
前記駆動電圧波形生成部は、
|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δ
を満たす飛行速度に関連付けられた前記駆動電圧値を用いる駆動電圧波形を生成することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の液滴吐出装置であって、
前記圧力発生素子は圧電素子であり、
前記変換データは、前記圧電素子の変位速度を定める駆動電圧勾配と、前記駆動電圧勾配を用いた駆動電圧波形から得られる前記液滴の飛行速度とを関連付けたデータであり、
前記駆動電圧波形生成部は、
|vs・(G/vb−G/va+Tr)|≦δ
を満たす飛行速度に関連付けられた前記駆動電圧勾配を用いる駆動電圧波形を生成することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−208019(P2009−208019A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54763(P2008−54763)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】