液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法
【課題】基板上の被吐出部における副走査方向の液滴の配置密度に応じて好ましいノズル間隔を実現して液状体を吐出可能な液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】液滴吐出装置100は、マザー基板Pを載置するステージ104と、ステージ104をY軸方向に移動させるワーク移動機構101と、Y軸方向に対して直交するX軸方向にワーク移動機構101を跨いで延在する互いに平行な2本のヘッド移動機構105A,105Bと、ノズル群がX軸方向に配列するように搭載された複数のキャリッジ107A,107Bと、被吐出部のX軸方向における液滴の配置密度に応じて、ヘッド移動機構105A,105Bに支持された複数のキャリッジ107A,107BをX軸方向にそれぞれ移動させて複数のキャリッジ107A,107Bの位置決めを行わせる制御部110と、を備えた。
【解決手段】液滴吐出装置100は、マザー基板Pを載置するステージ104と、ステージ104をY軸方向に移動させるワーク移動機構101と、Y軸方向に対して直交するX軸方向にワーク移動機構101を跨いで延在する互いに平行な2本のヘッド移動機構105A,105Bと、ノズル群がX軸方向に配列するように搭載された複数のキャリッジ107A,107Bと、被吐出部のX軸方向における液滴の配置密度に応じて、ヘッド移動機構105A,105Bに支持された複数のキャリッジ107A,107BをX軸方向にそれぞれ移動させて複数のキャリッジ107A,107Bの位置決めを行わせる制御部110と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出装置としては、基体を保持するステージと、ノズル列を有する1または複数のノズルを含むヘッド群をそれぞれ保持し、且つ、1つの軸上または平行に配置された複数の軸上を副走査方向に移動する複数の移動手段と、複数の移動手段を独立に駆動すると共に、副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置関係を調整してノズルピッチを調整する位置制御手段とを備え、ステージに対してキャリッジを主走査方向に相対移動させてヘッド群で基体の被吐出部に液滴を吐出する液滴吐出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記液滴吐出装置の位置制御手段は、副走査方向のノズルピッチが等間隔となるように、または副走査方向のノズルの線密度が高くなるように副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置を調整している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−324130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法では、位置制御手段による副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置の調整後、ノズルピッチが調整されたとしても、1回の主走査における描画範囲内では、液滴がほぼ等間隔で被吐出部に着弾することになる。
したがって、基体上において、被吐出部の主走査方向または副走査方向における配置密度が異なる領域を有する場合は、それぞれの領域において好ましい状態に液滴が着弾しないおそれがあるという課題があった。
上記課題を解決するために、被吐出部の配置密度が異なる領域ごとにノズルピッチを変えた主走査を行う方法が考えられるが、その方法では主走査の回数が増えて生産性が低下するという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の液滴吐出装置は、複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する液滴吐出装置であって、前記基板を載置するステージと、前記ステージを前記主走査方向に移動させる第1移動機構と、Nは2以上の自然数であって、前記主走査方向に対して直交する副走査方向に前記第1移動機構を跨いで延在する互いに平行なN本の第2移動機構と、前記ノズル群が前記副走査方向に配列するように搭載された複数のキャリッジと、前記複数のキャリッジは、N本の前記第2移動機構において前記副走査方向にそれぞれ独立して移動可能な状態に支持され、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、前記複数のキャリッジを前記副走査方向にそれぞれ移動させて前記複数のキャリッジの位置決めを行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、制御部は、副走査方向に対して互いに平行なN本の第2移動機構に支持された複数のキャリッジを、基板上における被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて位置決めして、好ましいノズル群の配置を実現することができる。言い換えれば、基板上に副走査方向における液滴の配置密度が異なる被吐出部が配置されていたとしても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の液滴吐出装置において、前記キャリッジごとに搭載された前記ノズル群の前記副走査方向の配置が同一であって、前記制御部は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が1/Nとなるように、異なる前記第2移動機構に支持された少なくとも2つのキャリッジを前記副走査方向に移動させて、前記主走査方向に並列するように位置決め動作を行わせることが好ましい。
この構成によれば、主走査において、副走査方向における液滴の配置密度が高い被吐出部に対して、最も好ましいノズル群の配置を実現することができる。したがって、液滴の配置密度が高い被吐出部に対して最も効率よく液滴を吐出することができる。ゆえに、1回の主走査において、より効率的に液滴を被吐出部に吐出可能な高い生産性を有する液滴吐出装置を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の液滴吐出装置において、Mは2以上の自然数であって、N本の前記第2移動機構のうちの1つに、M個の前記キャリッジが支持され、前記制御部は、M個の前記キャリッジに搭載された前記ノズル群によって、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように当該第2移動機構におけるM個の前記キャリッジの位置決めを行わせるとしてもよい。
この構成によれば、N本のうちの1つの第2移動機構に支持されたM個のキャリッジのノズル群で、基板の副走査方向の長さ、すなわち幅に亘って液滴を吐出することができる。したがって、M個以外の他のキャリッジが他の第2移動機構に支持される。よって、基板の幅に亘って液滴を吐出する主走査と、液滴の配置密度が異なる被吐出部への主走査とを第2移動機構ごとに支持されたキャリッジに配分してほぼ同時に液滴の吐出を行うことができる。ゆえに、主走査の回数をより低減することができる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の液滴吐出装置において、M個の前記キャリッジが支持される前記第2移動機構は、前記主走査方向において前記主走査を開始する側の最も前記ステージ寄りに配置されているこが好ましい。
この構成によれば、基板の幅に亘って液滴を吐出する主走査における基板とキャリッジとの相対移動の距離、すなわち、主走査のストロークを短くすることができる。
【0012】
[適用例5]上記適用例の液滴吐出装置において、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように、N本の前記第2移動機構に前記複数のキャリッジが配分され支持されているとしてもよい。
この構成によれば、最も少ない数のキャリッジで、基板の幅に亘って液状体を吐出することができる。したがって、装置構成をより簡略化することができる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の液滴吐出装置において、N本の前記第2移動機構は、前記ステージにおける前記基板の搬入出側に対して反対側に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、基板搬送用のロボットなどを用いてステージに基板を載置する際に第2移動機構がじゃまにならず、効率的な基板の搬入出が可能となる。すなわちより高い生産性を有する液滴吐出装置を提供することができる。
【0014】
[適用例7]本適用例の液状体の吐出方法は、複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する吐出工程を有する液状体の吐出方法であって、前記ノズル群は、前記主走査方向と直交する副走査方向に平行して複数配置されると共に、それぞれ独立して前記副走査方向に移動可能であり、前記吐出工程は、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、複数の前記ノズル群を前記副走査方向にそれぞれ移動させて位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、位置決め工程では、基板上の被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて、複数のノズル群をそれぞれ好ましい状態に配置することができる。言い換えれば、基板上に副走査方向における液滴の配置密度が異なる被吐出部が配置されていたとしても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の液状体の吐出方法において、前記位置決め工程は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が均等且つ最小となるように、少なくとも2つの前記ノズル群を前記主走査方向に並列させて位置決めすることが好ましい。
この方法によれば、液滴を吐出する主走査において、副走査方向における液滴の配置密度が高い被吐出部に対して、最も好ましい状態でノズル群を配置することができる。したがって、液滴の配置密度が高い被吐出部に対して効率よく液滴を吐出することができる。ゆえに、1回の主走査において、より効率的に液滴を被吐出部に吐出可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0017】
[適用例9]本適用例のカラーフィルタの製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記適用例の液滴吐出装置を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、上記適用例の液滴吐出装置を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して、高い生産性でカラーフィルタを製造することができる。
【0019】
[適用例10]本適用例の他のカラーフィルタの製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記適用例の液状体の吐出方法を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、上記適用例の液状体の吐出方法を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して着弾不良を低減し、歩留りよくカラーフィルタを製造することができる。
【0021】
[適用例11]本適用例の有機EL素子の製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記適用例の液滴吐出装置を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、上記適用例の液滴吐出装置を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して、高い生産性で有機EL素子を製造することができる。
【0023】
[適用例12]本適用例の他の有機EL素子の製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記適用例の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、上記適用例の液状体の吐出方法を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して着弾不良を低減し、歩留りよく有機EL素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0026】
(実施形態1)
<液滴吐出装置>
まず、本実施形態の液滴吐出装置について図1〜図4を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置100は、マザー基板Pを載置するステージ104と、ステージ104を主走査方向(Y軸方向)に移動させる第1移動機構としてのワーク移動機構101と、ワーク移動機構101の上方において、主走査方向と直交する副走査方向(X軸方向)にワーク移動機構101を跨いで延在する互いに平行な2本の第2移動機構としてのヘッド移動機構105A,105Bとを備えている。
【0028】
ワーク移動機構101は、一対のガイドレール102と、一対のガイドレール102上を移動する移動台103とを有し、ステージ104が移動台103上に設けられている。
移動台103は、内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示省略)により主走査方向に移動する。移動台103には、エンコーダ109(図4参照)が設けられている。
エンコーダ109は、移動台103の主走査方向への相対移動に伴って、ガイドレール102に並設されたリニアスケール(図示省略)の目盛を読み取って、タイミング信号としてのエンコーダパルスを生成する。
ステージ104はマザー基板Pを吸着固定可能であると共に、回転機構(図示省略)によってマザー基板P内の基準軸を正確に主走査方向、副走査方向に合わせることが可能となっている。なお、エンコーダ109の配設は、これに限らず、例えば、移動台103を回転軸に沿ってY軸方向に相対移動するよう構成し、回転軸を回転させる駆動部を設けた場合には、エンコーダ109を駆動部に設けてもよい。駆動部としては、サーボモータなどが挙げられる。
【0029】
ヘッド移動機構105Aは、一対のガイドレール106と、リニアモータなどの駆動源により一対のガイドレール106上を移動するキャリッジ移動台108Aとを有し、キャリッジ移動台108Aには、キャリッジ107Aが取り付けられている。
【0030】
キャリッジ107Aは、後述する液滴吐出ヘッド50(図2参照)が下方に向けて搭載されたヘッドユニット10Aが取り付けられている。
【0031】
同様にもう一方のヘッド移動機構105Bは、一対のガイドレール106と、リニアモータなどの駆動源により一対のガイドレール106上を移動するキャリッジ移動台108Bとを有し、キャリッジ移動台108Bには、キャリッジ107Bが取り付けられている。
【0032】
キャリッジ107Bは、ヘッドユニット10Aと同様に液滴吐出ヘッド50(図2参照)が搭載されたヘッドユニット10Bが取り付けられている。
【0033】
なお、各ヘッドユニット10A,10Bは、搭載された液滴吐出ヘッド50の相対的な位置を各キャリッジ107A,107B間で調整可能な状態で取り付けられており、キャリッジ107A,107Bは、ステージ104と対向する平面内においてヘッドユニット10A,10Bをそれぞれ回転させる回転機構(図示省略)を有している。
【0034】
各キャリッジ107A,107Bには、搭載された液滴吐出ヘッド50に液状体を供給するための液状体供給機構(図示省略)と、複数の液滴吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバ48(図4参照)とが設けられている。
キャリッジ移動台108A,108Bがそれぞれのキャリッジ107A,107Bを副走査方向に移動させて、ヘッドユニット10A,10Bに搭載された液滴吐出ヘッド50をマザー基板Pに対して対向配置する。
【0035】
液滴吐出装置100は、上記構成の他にも、キャリッジ107A,107Bに搭載された液滴吐出ヘッド50のノズル目詰まり解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構(図示省略)が、各ヘッド移動機構105A,105Bに沿った位置に配設されている。
また、液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体を受けて、その重量を計測する電子天秤などの計測器を有する重量計測機構(図示省略)を備えている。さらに、これらの構成を統括的に制御する制御部110を備えている。
【0036】
図2は、液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルの配置状態を示す平面図である。
【0037】
図2に示すように、液滴吐出ヘッド50は、所謂2連のものであり、2連の接続針54を有する液状体の導入部53と、導入部53に積層されたヘッド基板55と、ヘッド基板55上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本体56とを備えている。接続針54は、前述した液状体供給機構(図示省略)に配管を経由して接続され、液状体をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板55には、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介してヘッドドライバ48(図4参照)に接続される2連のコネクタ58が設けられている。
【0038】
ヘッド本体56は、圧電素子で構成されたキャビティを有する加圧部57と、ノズル面51aに2つのノズル列52a,52bが相互に平行に形成されたノズルプレート51とを有している。
【0039】
図2(b)に示すように、2つのノズル列52a,52bは、それぞれ複数(180個)のノズル52がピッチP1でほぼ等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた状態でノズルプレート51に配設されている。この場合、ピッチP1は、およそ141μmである。よって、ノズル列52cに直交する方向から見ると360個のノズル52がおよそ70.5μmのノズルピッチで配列した状態となっている。以降説明上、ノズル52の間隔は、ノズルピッチP2とする。また、ノズル52の径は、およそ27μmである。
【0040】
液滴吐出ヘッド50は、ヘッドドライバ48から電気信号としての駆動信号が圧電素子に印加されると加圧部57のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル52から液状体を液滴として吐出することができる。
【0041】
液滴吐出ヘッド50における駆動手段は、圧電素子に限らない。アクチュエータとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、液状体を加熱してノズル52から液滴として吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
【0042】
図3は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、マザー基板Pに対向する側から見た図である。
【0043】
図3に示すように、ヘッドユニット10A(10B)には、3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の液滴吐出ヘッド50が搭載されている。この場合、ヘッド群50AのヘッドR1(液滴吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(液滴吐出ヘッド50)とは同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0044】
1つの液滴吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52cの有効長とする。以降、ノズル列52cとは、360個のノズル52から構成されるものを指す。また、説明上、360個のノズル52からなるノズル群52cとして扱うこともある。
【0045】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル列52cが主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向に並列して配置されている。
【0046】
なお、液滴吐出ヘッド50に設けられるノズル列52cは、2連に限らず、1連でもよい。
【0047】
次に液滴吐出装置100の制御系について説明する。図4は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。図4に示すように、液滴吐出装置100の制御系は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構101、ヘッド移動機構105A,105Bなどを駆動する各種ドライバを有する駆動部40と、駆動部40を含め液滴吐出装置100を制御する制御部110とを備えている。
【0048】
駆動部40は、ワーク移動機構101およびヘッド移動機構105A,105Bの各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド50を吐出制御するヘッド駆動部としてのヘッドドライバ48とを備えている。この他にも重量計測用ドライバと、メンテナンス用ドライバとを備えているが図示省略した。
【0049】
制御部110は、CPU111と、ROM112と、RAM113と、P−CON114とを備え、これらは互いにバス115を介して接続されている。P−CON114には、上位コンピュータ116が接続されている。ROM112は、CPU111で処理する制御プログラムなどを記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理などを行うための制御データなどを記憶する制御データ領域とを有している。
【0050】
RAM113は、マザー基板Pに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、マザー基板Pおよび液滴吐出ヘッド50(実際には、ノズル列52a,52b)の位置データを記憶する位置データ記憶部などの各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON114には、駆動部40の各種ドライバなどが接続されており、CPU111の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON114は、上位コンピュータ116からの各種指令などをそのままあるいは加工してバス115に取り込むと共に、CPU111と連動して、CPU111などからバス115に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部40に出力する。
【0051】
そして、CPU111は、ROM112内の制御プログラムに従って、P−CON114を介して各種検出信号、各種指令、各種データなどを入力し、RAM113内の各種データなどを処理した後、P−CON114を介して駆動部40などに各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置100全体を制御している。例えば、CPU111は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構101およびヘッド移動機構105A,105Bを制御して、ヘッドユニット10A,10Bとマザー基板Pとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット10A,10Bとマザー基板Pとの相対移動に同期して、ヘッドユニット10A,10Bに搭載された各液滴吐出ヘッド50の複数のノズル52からマザー基板Pに液状体を液滴として吐出するようにヘッドドライバ48に制御信号を送出する。この場合、Y軸方向へのマザー基板Pの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、X軸方向にヘッドユニット10A,10Bを移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の液滴吐出装置100は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、液滴吐出ヘッド50に対して一方向へのマザー基板Pの移動に限らず、マザー基板Pを往復させて行うこともできる。
【0052】
エンコーダ109は、ヘッドドライバ48に電気的に接続され、主走査に伴ってエンコーダパルスを生成する。主走査では、所定の移動速度で移動台103を移動させるので、エンコーダパルスが周期的に発生する。
【0053】
上位コンピュータ116は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を液滴吐出装置100に送出する。また、基板上の被吐出部ごとに必要量の液状体を液滴として配置する吐出制御データとしての配置情報を生成する配置情報生成部の機能を有している。配置情報は、被吐出部における液滴の吐出位置(言い換えれば、マザー基板Pとノズル52との相対位置)、液滴の配置数(言い換えれば、ノズル52ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル52のON/OFF(言い換えれば、複数のノズル52の選択パターン)、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして表したものである。上位コンピュータ116は、上記配置情報を生成するだけでなく、RAM113に一旦格納された上記配置情報を修正することも可能である。
【0054】
本実施形態の液滴吐出装置100は、互いに平行な2つのヘッド移動機構105A,105Bを備えていることを特徴としている。制御部110は、それぞれのヘッド移動機構105A,105Bに支持された各キャリッジ107A,107Bを副走査方向に移動させることにより、マザー基板Pにおける被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて、2つのキャリッジ107A,107Bを主走査方向に並列させる位置決め動作を行わせる。これにより、主走査方向から見たときのノズル群の実質的なノズル間隔を好ましい状態に調整して液状体を被吐出部に吐出することが可能である。詳しくは、後述する液状体の吐出方法にて述べる。
【0055】
<カラーフィルタの製造方法>
次に、上記液滴吐出装置100並びに本実施形態の液状体の吐出方法を用いたカラーフィルタの製造方法について、図5〜図12を参照して説明する。図5(a)はカラーフィルタの構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のA−A'線で切った断面図である。図6は、カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。図7(a)〜(d)は、カラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。図8〜図12は、液状体の吐出方法の実施例を示す概略平面図である。
【0056】
図5(a)および(b)に示すようにカラーフィルタ2は、透明なガラスなどの基板1上に赤(R)、緑(G)、青(B)3色の着色層3を有している。各着色層3は隔壁部4によりマトリクス状に区画されている。本実施形態のカラーフィルタ2は、同色の着色層3が直線的に配列する所謂ストライプ方式のカラーフィルタである。
【0057】
図5(b)に示すように、隔壁部4は、第1隔壁部4aと第2隔壁部4bとからなる二層構造となっている。第1隔壁部4aは、例えば、CrやAlなどの金属薄膜からなり遮光性を有している。第2隔壁部4bは、例えば、樹脂材料からなる。なお、二層構造に限定されず、遮光性を有する部材を含む樹脂材料により隔壁部4を構成する一層構造でもよい。
【0058】
着色層3は、着色材料を含む透光性樹脂材料からなる。本実施形態では、このようなカラーフィルタ2を液滴吐出法(インクジェット法)を用いて製造する。
【0059】
図6に示すように、カラーフィルタ2の製造方法は、隔壁部4を形成する隔壁部形成工程(ステップS1)と、隔壁部4が形成された基板1の表面を表面処理する表面処理工程(ステップS2)と、着色層形成材料を含む液状体を吐出する吐出工程(ステップS3)と、吐出された液状体を乾燥させて着色層3を形成する乾燥工程(ステップS4)とを備えている。
【0060】
図6のステップS1では、まず、基板1の表面にCrやAlなどの金属薄膜を成膜する。成膜方法としては真空蒸着法、スパッタ法などが挙げられる。膜厚は、例えば遮光性が得られるように0.1μm程度とする。これをフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口させた第1隔壁部4aを形成する。
次に、第1隔壁部4aを覆って感光性樹脂を厚み2μm程度に塗布し、同じくフォトリソグラフィ法によりパターニングして、第1隔壁部4a上に第2隔壁部4bを形成する。これにより図7(a)に示すように基板1上に開口した被吐出部としての矩形状の膜形成領域3r,3g,3bを形成する。そして、ステップS2へ進む。
【0061】
図6のステップS2では、後の液状体の吐出工程において、吐出された液状体が膜形成領域3r,3g,3bに着弾して濡れ拡がるように、基板1の表面を親液処理する。また、吐出された液状体の一部が第2隔壁部4bに着弾したとしても膜形成領域3r,3g,3b内に収まるように、第2隔壁部4bの少なくとも頭頂部を撥液処理する。
【0062】
表面処理方法としては、隔壁部4が形成された基板1に対して、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、膜形成領域3r,3g,3bが親液処理され、その後感光性樹脂からなる第2隔壁部4bの表面(壁面を含む)が撥液処理される。なお、第2隔壁部4bを形成する材料自体が撥液性を有していれば後者の処理を省くこともできる。そして、ステップS3へ進む。
【0063】
図6のステップS3では、液滴吐出装置100のステージ104に表面処理された基板1を載置する。異なる着色層形成材料を含む3色の液状体をそれぞれ異なる液滴吐出ヘッド50に充填し、当該液滴吐出ヘッド50をヘッドユニット10A,10Bに装備する。 そして、図7(b)および(c)に示すように、基板1と液滴吐出ヘッド50との主走査方向への相対移動に同期して、液滴吐出ヘッド50のノズル52から3色の液状体のそれぞれを液滴Dとして所望の膜形成領域3r,3g,3bに吐出する。膜形成領域3r,3g,3bに吐出される液状体の塗布量は、あらかじめ膜形成領域3r,3g,3bごとに選択されるノズル52の選択パターンと液滴Dの吐出数などが主走査ごとに設定された吐出データに基づいて、制御部110のCPU111から適正な制御信号がヘッドドライバ48に送られて制御される。これにより、ほぼ一定量の液状体が膜形成領域3r,3g,3bごとに塗布される。より詳しい液状体の吐出方法は後述する実施例にて説明する。そして、ステップS4へ進む。
【0064】
図6のステップS4では、図7(d)に示すように、基板1に吐出された液状体から溶媒成分を蒸発させて、着色層形成材料からなる着色層3を形成する。本実施形態では、溶媒の蒸気圧を一定にして乾燥することが可能な減圧乾燥装置に基板1をセットして減圧乾燥し、R、G、B、3色の着色層3を形成した。なお、1色の液状体を吐出して乾燥する工程を3回繰り返してもよい。
先の液状体の吐出工程(ステップS3)において、ほぼ一定量の液状体が膜形成領域3r,3g,3bごとに無駄なく塗布されているので、ほぼ一定の膜厚を有する着色層3を形成することができる。なお、着色層3の膜厚は、色ごとに設定すればよく、必ずしも3色が同一でなくてもよい。必要な膜厚の設定に基づいて、必要量の液状体を対応する膜形成領域3r,3g,3bに吐出すればよい。
着色層3が形成された基板1の表面に凹凸が生じる場合には、隔壁部4と各着色層3とを覆って透光性の例えばアクリル系樹脂材料からなる平坦化層を形成してもよい。
【0065】
カラーフィルタ2が形成される基板1の大きさは、これを用いる表示装置の大きさに寄る。また、同一の大きさの表示装置であっても画素が高密度に配置されている場合、対応するカラーフィルタ2の着色層3の配置も高密度な配置が要求される。
【0066】
カラーフィルタ2を有する基板1をより効率的に生産する方法として、一般的には基板1よりも平面的なサイズが大きいマザー基板Pに多面取りする方法が採用されている。だが、マザー基板Pのサイズによっては、面積的に効率よく多面取りが可能な基板1の効率サイズが限定される。この効率サイズ以外の基板1をマザー基板Pに多面取りした場合、無駄な領域が発生してしまう。これを避けるため、平面的なサイズが異なる複数種のカラーフィルタ2を組み合わせてマザー基板Pから多面取りする方法が挙げられる。
【0067】
本実施形態の液滴吐出装置100並びに液状体の吐出方法を用いたカラーフィルタ2の製造方法は、特に上記後者の多面取りを行う場合、高い生産性でカラーフィルタ2を製造することが可能である。以降、実施例1〜3に基づいて詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
図8(a)は実施例1の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。図9は、実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。
【0069】
図8(a)に示すように、実施例1は、マザー基板Pに、カラーフィルタE1と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE2とを多面取りする例である。カラーフィルタE1は、X軸方向とY軸方向とにおいて所定の間隔を置いて格子状に4つ配置されている。残りのマザー基板Pの空きスペースにカラーフィルタE2がY軸方向に間隔を置いて4つ配置されている。
図8(b)に示すように、カラーフィルタE1とカラーフィルタE2とにおける相対的な配置は、矩形状の膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の長辺が同じ方向を向いている。言い換えれば膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が同じである。
カラーフィルタE1とカラーフィルタE2とにおいて着色層3の数を同数とすると、単位面積当たりの被吐出部としての膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の配置密度は、カラーフィルタE1に比べてカラーフィルタE2の方が高くなる。言い換えればカラーフィルタE2の方が高精細となる。
【0070】
図8(a)に示すように、液滴吐出装置100は、2つのヘッド移動機構105A,105Bのうち、一方のヘッド移動機構105Aに複数(7つ)のキャリッジ107A(キャリッジA1〜A7)が支持され、他方のヘッド移動機構105Bに1つのキャリッジ107B(キャリッジB1)が支持されている。また、同図(a)において、各キャリッジA1〜A7,B1を示す四角形のX軸方向の幅は、キャリッジごとの液状体の描画幅を示すものである。
ステージ104には、膜形成領域3r,3g,3bのストライプ方向が主走査方向(Y軸方向)と直交するように、マザー基板Pが載置され位置決めされる。
【0071】
制御部110は、ヘッド移動機構105Aの7つのキャリッジA1〜A7を均等な間隔で副走査方向に位置決めする動作を行わせる。これにより、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能とする。この場合、キャリッジA3〜A7を用いればカラーフィルタE1を吐出描画可能である。キャリッジA2を用いればカラーフィルタE2を吐出描画可能である。
【0072】
また、制御部110は、上記マザー基板Pにおける膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向(X軸方向)における液滴Dの配置密度に対応して、先に位置決めされたキャリッジA2に対して主走査方向に並列するように、ヘッド移動機構105BのキャリッジB1を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。
【0073】
具体的には、図9に示すように、主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように、キャリッジA2に対してキャリッジB1を副走査方向に位置決めする。前述したように、ノズル群52cのノズルピッチP2がおよそ70.5μmである。したがって、このようなキャリッジA2とキャリッジB1の相対的な配置によれば、主走査における描画範囲C2(図8(a)参照)の実質的なノズル52の間隔は、ノズルピッチP2の半分のおよそ35.25μmとなる。
【0074】
例えば、ヘッド移動機構105をN本として同様にN個のキャリッジ107を主走査方向に並列させれば、実質的なノズル52の間隔をノズルピッチP2の1/Nにすることができる。すなわち、個々のキャリッジ107における同種の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50の配置を変えることなく、主走査において、膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向における液滴の配置密度に応じた好ましいノズル52の間隔を実現することができる。
【0075】
図9に示すように、カラーフィルタE2を吐出描画可能なキャリッジA2を用いて主走査を行う場合、平面的なサイズが小さい膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52の数は、膜形成領域3r,3g,3bに比べて少ない。キャリッジA2にキャリッジB1を並列させることにより、平面的なサイズが小さい、言い換えれば副走査方向における液滴Dの配置密度が高い膜形成領域3r',3g',3b'に対して主走査によって掛かるノズル52の数を増やすことができる。
【0076】
例えば、赤(R)の着色層形成材料を含む液状体が充填された液滴吐出ヘッド50のノズル52から液滴Dを吐出すれば、図9に示したように、膜形成領域3rと膜形成領域3r'とに効率よく液滴Dを着弾させることができる。主走査方向における液滴Dの着弾数すなわち吐出数は、液滴吐出ヘッド50のノズル列52a,52bごとに、エンコーダ109が生成する吐出タイミング信号を選択することにより、適宜設定することができる。
緑(G)の液状体、青(B)の液状体を充填したそれぞれの液滴吐出ヘッド50から同様にして液滴Dを吐出すれば、膜形成領域3g,3bと膜形成領域3g',3b'とに効率よく液滴Dを着弾させることができることは言うまでもない。
【0077】
このような液状体の吐出方法によれば、図8(a)に示すように、キャリッジA3〜A7の描画範囲C1における液滴Dの着弾密度に対して、キャリッジA2とキャリッジB1とによる描画範囲C2の液滴Dの着弾密度が副走査方向において向上する。よって、キャリッジA2〜A7を用いて液状体を吐出する場合に比べて、各膜形成領域3r,3g,3b,3r',3g',3b'に必要量の液状体を液滴Dとして吐出する主走査の回数を低減することができる。ゆえに、高い生産性でカラーフィルタE1,E2を製造することができる。
【0078】
なお、1つのキャリッジの描画幅は、図3に示したように、同種の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50(言い換えればノズル群)の配置に寄る。本実施形態では、当該描画幅は、L1である。キャリッジを共用する観点からすれば、マザー基板PにおけるカラーフィルタE1,E2の配置に都度対応して液滴吐出ヘッド50の配置を変えることは考え難い。したがって、実際の液状体の吐出工程においては、カラーフィルタE1,E2の膜形成領域3r,3g,3b,3r',3g',3b'の副走査方向における液滴Dの配置密度に応じて、上記のように一旦位置決めされたキャリッジA1〜A7およびキャリッジB1の相対的な配置を維持してキャリッジ全体を副走査する改行動作と、主走査とを組み合わせて液滴Dの吐出を行うものである。
【0079】
(実施例2)
図10(a)は実施例2の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。図11は、実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。
【0080】
図10(a)に示すように、実施例2は、マザー基板Pに、カラーフィルタE1と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE3とを多面取りする例である。カラーフィルタE1は、実施例1と同様にX軸方向とY軸方向とにおいて所定の間隔を置いて格子状に4つ配置されている。残りのマザー基板Pの空きスペースにカラーフィルタE3がY軸方向に間隔を置いて6つ配置されている。
【0081】
実施例2が実施例1に対して異なる点は、図10(b)に示すように、膜形成領域3r,3g,3bと膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が直交するように、カラーフィルタE1とカラーフィルタE3とがマザー基板Pに配置されていることである。このような多面取りは、主走査におけるノズル52の使用率を低下させてしまう。
【0082】
そこで、実施例2における液滴吐出装置100の構成としては、図10(a)に示すように、ヘッド移動機構105Bに2つのキャリッジB1,B2を支持させる。制御部110は、位置決めされたキャリッジA1に対して主走査方向に並列するように、キャリッジB1を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。同様に、キャリッジA2に対して主走査方向に並列するように、キャリッジB2を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように位置決めする点は、実施例1と同じである。
【0083】
図11に示すように、キャリッジA2を用いて主走査を行う場合、膜形成領域3r,3g,3bに対して配列方向が直交する膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52の数は、膜形成領域3r,3g,3bに比べて極めて少ない。キャリッジA2にキャリッジB2を並列させることにより、膜形成領域3r',3g',3b'に対して主走査によって掛かるノズル52の数を増やすことができる。なお、膜形成領域3r',3g',3b'の大きさは、ノズル52の配置ピッチを基準にして図示した。
【0084】
例えば、赤(R)の液状体が充填された液滴吐出ヘッド50のノズル群52cから液滴Dを吐出する場合、膜形成領域3r'には、キャリッジA2のノズル群52cのうち1つのノズル52だけが掛かるが、キャリッジB2のノズル群52cのうちからも1つのノズル52が掛かるので合計2つのノズル52によって1つの膜形成領域3r'を吐出描画可能となる。よって、効率よく赤(R)の液滴Dを吐出することができる。膜形成領域3g',3b'においても同様である。
【0085】
このような液状体の吐出方法によれば、図10(a)に示すように、キャリッジA3〜A7の描画範囲C1における液滴Dの着弾密度に対して、キャリッジA1とキャリッジB1並びにキャリッジA2とキャリッジB2による描画範囲C3の液滴Dの着弾密度を副走査方向において向上させ、高い生産性でカラーフィルタE1,E3を製造することができる。
【0086】
すなわち、ヘッド移動機構105Bが支持するキャリッジ数を変えることにより、マザー基板Pにおけるカラーフィルタ2の多面取りの配置に応じて、好適なノズル52の間隔を実現することができる。
【0087】
(実施例3)
図12(a)および(c)は、実施例3の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。
【0088】
図12(a)に示すように、実施例3は、マザー基板Pに、カラーフィルタE4と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE5とを多面取りする例である。実施例1や実施例2と異なる点は、カラーフィルタE4が副走査方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて2つ配置され、副走査方向における無駄なスペースはない。カラーフィルタE5は、主走査方向(Y軸方向)において空いたスペースに、副走査方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて4つ配置されている。
【0089】
図12(b)に示すように、膜形成領域3r,3g,3bと膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が同方向となるように、カラーフィルタE4とカラーフィルタE5とが多面取りされている。
【0090】
また、実施例3の液滴吐出装置100の構成としては、ヘッド移動機構105Aに3つのキャリッジA1〜A3が支持され、同じくヘッド移動機構105Bに3つのキャリッジB1〜B3が支持されていることを特徴とする。
【0091】
図12(a)に示すように、制御部110は、キャリッジA1〜A3とキャリッジB1〜B3とが主走査方向(Y軸方向)から見て重ならないように、且つ副走査方向において均等な間隔となるように位置決めを行わせる。これにより、最も少ないキャリッジ数で、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジ配置とする。
【0092】
また、図12(c)に示すように、制御部110は、キャリッジA1〜A3とキャリッジB1〜B3とが主走査方向(Y軸方向)において並列するように、且つ主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように位置決め動作を行わせる。これにより、膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向における液滴Dの配置密度に対応して、主走査において好ましいノズル52の間隔を実現する。
【0093】
実施例3によれば、様々な液状体の吐出方法を実現することができる。例えば、図12(a)に示したキャリッジ配置で描画範囲C4を確保して、まず2つのカラーフィルタE4を吐出描画する主走査を行う。続いて、図12(c)に示したキャリッジ配置で描画範囲C5を確保して、2つのカラーフィルタE5を吐出描画し、その後、キャリッジの相対的な配置を維持した状態でキャリッジ全体を副走査して、残り2つのカラーフィルタE5を吐出描画する主走査を行う。
この場合、カラーフィルタE4を吐出描画する主走査において、カラーフィルタE5の膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52から必要量の液状体の一部を液滴Dとして先行吐出させてもよい。
【0094】
あるいは、図12(c)に示したキャリッジ配置で1つのカラーフィルタE4と2つのカラーフィルタE5とを吐出描画する主走査を行い、その後、キャリッジA1,A2,A3,B1,B2,B3の相対的な配置を維持した状態でキャリッジ全体を副走査して、残り1つのカラーフィルタE4と2つのカラーフィルタE5とを吐出描画する主走査を行ってもよい。
【0095】
実施例3の液滴吐出装置100の構成並びに液状体の吐出方法によれば、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジ数を2つのヘッド移動機構105A,105Bに配分して支持させ、最も少ないキャリッジ数でマザー基板Pに多面取りされたカラーフィルタE4,E5を吐出描画することができる。見方を変えれば、1種のカラーフィルタ2が多面取りされたマザー基板Pの場合には、図12(a)のようなキャリッジ配置で対応することができる。複数種のカラーフィルタ2が多面取りされたマザー基板Pの場合には、ヘッド移動機構105Aに支持されたキャリッジA1〜A3と、ヘッド移動機構105Bに支持されたキャリッジB1〜B3との副走査方向における相対的な配置を変えることによって、吐出描画に適したノズル52の間隔を実現することができる。
【0096】
実施例1および実施例2の液滴吐出装置100において、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジA1〜A7を支持するヘッド移動機構105Aは、マザー基板Pを載置するステージ104の主走査の開始側に最も近い位置に設けることが好ましい。
これによれば、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出描画する主走査の相対移動におけるストロークを小さくすることができ、カラーフィルタ製造における生産性が向上する。
【0097】
実施例1〜実施例3の液滴吐出装置100において、2つのヘッド移動機構105A,105Bは、ステージ104におけるマザー基板Pを搬入出する側に対して反対側に位置するように配置することが好ましい。
これによれば、マザー基板Pの搬入出にじゃまにならず、スムーズにマザー基板Pを搬入出することができる。
【0098】
実施例1および実施例2の液滴吐出装置100において、ヘッド移動機構105Bに支持されるキャリッジ107Bを少なくとも1つ増やせば、キャリッジA1〜A7およびキャリッジB1またはキャリッジB2に吐出不具合が生じたときに、増やしたキャリッジ107Bを予備キャリッジとして用いることができる。すなわち、キャリッジの吐出不具合による液滴吐出装置100の停止で稼働率が低下することを防止できる。吐出不具合が生じたキャリッジは、予備キャリッジを用いている間に、前述したメンテナンス機構によりノズル52の吸引やワイピングなどの回復動作を行わせる。あるいはキャリッジ交換作業を行う。実施例3の場合も同様に、ヘッド移動機構105A,105Bのそれぞれにおいて、支持されるキャリッジ107A,107Bを少なくとも1つ増やして予備キャリッジとしてもよい。
【0099】
このようにして製造されたカラーフィルタ2(E1,E2,E3,E4,E5)が用いられる表示装置としては、一対の基板のうちの一方の基板にカラーフィルタ2を備えた液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置が挙げられる。
【0100】
(実施形態2)
次に、上記実施形態1の液滴吐出装置100を用いると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を適用した有機EL素子の製造方法について、図13および図14を参照して説明する。図13は有機EL装置の要部構造を示す概略断面図、図14(a)〜(f)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
【0101】
<有機EL装置>
図13に示すように、本実施形態の有機EL装置600は、有機EL素子としての発光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着された封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、有機発光材料からなる3色の発光層617R,617G,617Bがそれぞれの膜形成領域としての発光層形成領域Aに形成され、ストライプ状となっている。素子基板601は、3色の発光層617R,617G,617Bに対応する3つの発光層形成領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上にマトリクス状に配置されたものである。有機EL装置600は、発光素子部603からの発光が素子基板601側に射出するものである。
【0102】
封止基板620は、ガラスまたは金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した水または酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水または酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤621は省略してもよい。
【0103】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の発光層形成領域Aを有するものであって、複数の発光層形成領域Aを区画するバンク618と、複数の発光層形成領域Aに形成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えている。また複数の発光層形成領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を備えている。バンク618は、絶縁材料を用いて形成され、正孔注入/輸送層617a上に積層された発光層617R,617G,617Bと電極613とが電気的に短絡しないように、電極613の周囲を覆っている。
【0104】
素子基板601は、例えばガラスなどの透明な基板からなり、素子基板601上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。なお、半導体膜607には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜608上にはAl、Mo、Ta、Ti、Wなどからなるゲート電極609が形成され、ゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a,612bが形成されている。そして、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)などからなる透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され、一方のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部602には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている。なお、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図13ではこれらの図示を省略している。
【0105】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔注入/輸送層617a、各発光層617R,617G,617B(総称して発光層Lu)と、バンク618と発光層Luとを覆うように積層された陰極604とを備えている。正孔注入/輸送層617aと発光層Luとにより発光が励起される機能層617を構成している。なお、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構成すれば、封止基板620側から発光する光を射出させることができる。
【0106】
有機EL装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソース領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ615のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、さらに正孔注入/輸送層617aと発光層Luとを介して陰極604に電流が流れる。発光層Luは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL装置600は、このような発光素子部603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また、有機EL装置600は、発光層Luが上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて形成されているため、ほぼ一定量の液状体が各発光層形成領域Aに付与され、発光ムラ、輝度ムラなどの表示不具合の少ない高い表示品質を有すると共に、高精細な表示を可能としている。
【0107】
<有機EL素子の製造方法>
次に本実施形態の有機EL素子としての発光素子部603の製造方法について図14を参照して説明する。なお、図14(a)〜(f)においては、素子基板601上に形成された回路素子部602は、図示を省略している。
【0108】
本実施形態の発光素子部603の製造方法は、素子基板601の複数の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する工程と、電極613に一部が掛かるようにバンク618を形成するバンク形成工程とを備えている。またバンク618で区画された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体を付与して正孔注入/輸送層617aを吐出描画する工程と、吐出された液状体を乾燥して正孔注入/輸送層617aを成膜する工程とを備えている。また、発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体を吐出する吐出工程と、吐出された3種の液状体を乾燥して発光層Luを成膜する成膜工程とを備えている。さらに、バンク618と発光層Luを覆うように陰極604を形成する工程を備えている。各液状体の発光層形成領域Aへの付与は、上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて行う。よって、図3に示したヘッドユニット10A(10B)における液滴吐出ヘッド50の配置を適用する。
【0109】
電極(陽極)形成工程では、図14(a)に示すように、素子基板601の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITOなどの透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成する方法が挙げられる。そしてバンク形成工程へ進む。
【0110】
バンク形成工程では、図14(b)に示すように、素子基板601の複数の電極613の周囲を覆うようにバンク618を形成する。バンク618の材料としては、後述する発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理により撥液化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった絶縁性を有する有機材料が好ましい。バンク618の形成方法としては、例えば、電極613が形成された素子基板601の表面に感光性の上記有機材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2〜3μmの感光性樹脂層を形成する。そして、発光層形成領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板601と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、バンク618を形成する方法が挙げられる。そして、表面処理工程へ進む。
【0111】
発光層形成領域Aを表面処理する工程では、バンク618が形成された素子基板601の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極613の表面、バンク618の表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。次にCF4などのフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなるバンク618の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、正孔注入/輸送層形成工程へ進む。
【0112】
正孔注入/輸送層形成工程では、図14(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を発光層形成領域Aに付与する。液状体90を付与する方法としては、図3のヘッドユニット10A(10B)を備えた液滴吐出装置100と上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いる。液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体90は、液滴Dとして素子基板601の電極613に着弾して濡れ拡がる。液状体90は発光層形成領域Aの面積に応じて、ほぼ一定量が液滴Dとして吐出される。そして乾燥・成膜工程へ進む。
【0113】
乾燥・成膜工程では、素子基板601を例えばランプアニールなどの方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極613のバンク618により区画された領域に正孔注入/輸送層617aが形成される。本実施形態では、正孔注入/輸送層形成材料として3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を用いた。なお、本実施形態では、各発光層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層617aを形成したが、後に形成される発光層Luに対応して正孔注入/輸送層617aの材料を発光層形成領域Aごとに変えてもよい。そして次の液状体の吐出工程へ進む。
【0114】
液状体の吐出工程では、図14(d)に示すように、液滴吐出装置100を用いて複数の液滴吐出ヘッド50から複数の発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bを付与する。液状体100Rは発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは発光層617B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体100R,100G,100Bは、発光層形成領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。これらの液状体100R,100G,100Bを付与する方法としては、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いた。駆動波形(電圧パルス)の設定は、液状体100R,100G,100Bごとに行うことが望ましい。すなわち、各液状体100R,100G,100Bが充填される液滴吐出ヘッド50ごとに駆動波形の設定を行う。そして、乾燥・成膜工程へ進む。
【0115】
乾燥・成膜工程では、図14(e)に示すように、吐出された各液状体100R,100G,100Bの溶媒成分を乾燥させて除去し、各発光層形成領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R,617G,617Bが積層されるように成膜する。各液状体100R,100G,100Bが吐出された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすることが可能な、減圧乾燥が好ましい。そして陰極形成工程へ進む。
【0116】
陰極形成工程では、図14(f)に示すように、素子基板601の各発光層617R,617G,617Bとバンク618の表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、Ba、Alなどの金属やLiFなどのフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層617R,617G,617Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAlなどの膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiNなどの保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法などが挙げられる。特に発光層617R,617G,617Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0117】
このようにして出来上がった素子基板601は、ほぼ一定量の各液状体100R,100G,100Bが液滴Dとして発光層形成領域Aに付与され、乾燥・成膜化後の膜厚が、それぞれの発光層形成領域Aにおいて、ほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する。
【0118】
上記実施形態2の発光素子部603の製造方法によれば、液状体100R,100G,100Bの吐出工程では、上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて液滴を吐出する。したがって、それぞれの発光層形成領域Aの副走査方向における液滴の配置密度に応じてノズル群が配置され、ほぼ一定量の各液状体100R,100G,100Bが安定的に塗布されている。素子基板601が、副走査方向における液滴の配置密度が異なる発光層形成領域Aを有していても、乾燥・成膜後の膜厚が、それぞれの発光層形成領域Aにおいて、ほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bが得られる。
【0119】
また、上記実施形態2の発光素子部603の製造方法を用いて、有機EL装置600を製造すれば、各発光層617R,617G,617Bの膜厚がほぼ一定であるため、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗がほぼ一定となる。よって、回路素子部602により発光素子部603に駆動電圧を印加して発光させると、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラなどが低減される。すなわち、発光ムラや輝度ムラなどが少なく、平面的なサイズが異なる有機EL装置600を効率よく製造することができる。
【0120】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0121】
(変形例1)上記実施形態1の液滴吐出装置100において、ヘッドユニット10A,10Bに搭載される液滴吐出ヘッド50の数や配置は、これに限定されない。例えば、図3に示した液滴吐出ヘッド50の配置をX軸方向(副走査方向)に重複してもよい。これにより、1つのキャリッジ107A(107B)の描画幅をさらに拡大できる。
【0122】
(変形例2)上記実施例2において、主走査方向に並列するキャリッジA1,A2とキャリッジB1,B2は、回転機構(図示省略)によりそれぞれのヘッドユニット10A,10Bを回転させ、膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向の配置ピッチに対して、実質的なノズル52の間隔を合致させてもよい。これにより、描画範囲C3の副走査方向の幅が狭くなるものの、より効率的に液滴Dを吐出することができる。
【0123】
(変形例3)上記実施形態1のカラーフィルタ2において、膜形成領域3r,3g,3bの形状とその配置は、これに限定されない。図15(a)〜(c)は、カラーフィルタにおける着色層の配置を示す概略平面図である。上記実施形態では、図15(a)に示すようなストライプ方式の着色層(R,G,B)の配置とした。例えば、図15(b)に示したモザイク方式や、図15(c)に示したデルタ方式の配置においても、上記カラーフィルタ2の製造方法を適用することができる。
また、着色層は3色に限定されず、R,G,B以外の色を加えた多色でもよい。
【0124】
(変形例4)上記実施形態2の有機EL装置600において、有機EL素子としての発光素子部603の構成は、これに限定されない。例えば、発光層形成領域Aには、赤色や白色など単色の発光が得られる発光層Luを形成してもよい。これによれば、有機EL装置600を照明装置として用いることもできる。
また、白色発光させた場合には、封止基板620側にカラーフィルタ2を配置することによって、フルカラー表示が可能なトップエミッション型の有機EL装置600を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は液滴吐出ヘッドを示す斜視図、(b)はノズルの配置状態を示す平面図。
【図3】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図4】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図5】(a)はカラーフィルタの構成を示す概略平面図、(b)は(a)のA−A'線で切った断面図。
【図6】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(d)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図8】(a)は実施例1の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図9】実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図10】(a)は実施例2の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図11】実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図12】(a)および(c)は実施例3の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図13】有機EL装置の要部構造を示す概略断面図。
【図14】(a)〜(f)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。
【図15】(a)〜(c)はカラーフィルタにおける着色層の配置を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0126】
1…基板、2…カラーフィルタ、3…着色層、3r,3g,3b…被吐出部としての膜形成領域、52…ノズル、52c…ノズル群としてのノズル列、100…液滴吐出装置、101…第1移動機構としてのワーク移動機構、104…ステージ、105A,105B…第2移動機構としてのヘッド移動機構、107A,107B…キャリッジ、110…制御部、601…基板としての素子基板、603…有機EL素子としての発光素子部、617…機能層、617R,617G,617B…発光層、A…膜形成領域としての発光層形成領域、A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7…キャリッジ、B1,B2,B3…キャリッジ、E1,E2,E3,E4,E5…カラーフィルタ、P…基板としてのマザー基板。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出装置、液状体の吐出方法、カラーフィルタの製造方法、有機EL素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液状体を液滴として吐出可能な液滴吐出装置としては、基体を保持するステージと、ノズル列を有する1または複数のノズルを含むヘッド群をそれぞれ保持し、且つ、1つの軸上または平行に配置された複数の軸上を副走査方向に移動する複数の移動手段と、複数の移動手段を独立に駆動すると共に、副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置関係を調整してノズルピッチを調整する位置制御手段とを備え、ステージに対してキャリッジを主走査方向に相対移動させてヘッド群で基体の被吐出部に液滴を吐出する液滴吐出装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
上記液滴吐出装置の位置制御手段は、副走査方向のノズルピッチが等間隔となるように、または副走査方向のノズルの線密度が高くなるように副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置を調整している。
【0004】
【特許文献1】特開2005−324130号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記液滴吐出装置を用いた液状体の吐出方法では、位置制御手段による副走査方向または主走査方向に隣接する移動手段のヘッド群間の相対位置の調整後、ノズルピッチが調整されたとしても、1回の主走査における描画範囲内では、液滴がほぼ等間隔で被吐出部に着弾することになる。
したがって、基体上において、被吐出部の主走査方向または副走査方向における配置密度が異なる領域を有する場合は、それぞれの領域において好ましい状態に液滴が着弾しないおそれがあるという課題があった。
上記課題を解決するために、被吐出部の配置密度が異なる領域ごとにノズルピッチを変えた主走査を行う方法が考えられるが、その方法では主走査の回数が増えて生産性が低下するという問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例の液滴吐出装置は、複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する液滴吐出装置であって、前記基板を載置するステージと、前記ステージを前記主走査方向に移動させる第1移動機構と、Nは2以上の自然数であって、前記主走査方向に対して直交する副走査方向に前記第1移動機構を跨いで延在する互いに平行なN本の第2移動機構と、前記ノズル群が前記副走査方向に配列するように搭載された複数のキャリッジと、前記複数のキャリッジは、N本の前記第2移動機構において前記副走査方向にそれぞれ独立して移動可能な状態に支持され、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、前記複数のキャリッジを前記副走査方向にそれぞれ移動させて前記複数のキャリッジの位置決めを行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、制御部は、副走査方向に対して互いに平行なN本の第2移動機構に支持された複数のキャリッジを、基板上における被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて位置決めして、好ましいノズル群の配置を実現することができる。言い換えれば、基板上に副走査方向における液滴の配置密度が異なる被吐出部が配置されていたとしても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出することが可能な液滴吐出装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例の液滴吐出装置において、前記キャリッジごとに搭載された前記ノズル群の前記副走査方向の配置が同一であって、前記制御部は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が1/Nとなるように、異なる前記第2移動機構に支持された少なくとも2つのキャリッジを前記副走査方向に移動させて、前記主走査方向に並列するように位置決め動作を行わせることが好ましい。
この構成によれば、主走査において、副走査方向における液滴の配置密度が高い被吐出部に対して、最も好ましいノズル群の配置を実現することができる。したがって、液滴の配置密度が高い被吐出部に対して最も効率よく液滴を吐出することができる。ゆえに、1回の主走査において、より効率的に液滴を被吐出部に吐出可能な高い生産性を有する液滴吐出装置を提供することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例の液滴吐出装置において、Mは2以上の自然数であって、N本の前記第2移動機構のうちの1つに、M個の前記キャリッジが支持され、前記制御部は、M個の前記キャリッジに搭載された前記ノズル群によって、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように当該第2移動機構におけるM個の前記キャリッジの位置決めを行わせるとしてもよい。
この構成によれば、N本のうちの1つの第2移動機構に支持されたM個のキャリッジのノズル群で、基板の副走査方向の長さ、すなわち幅に亘って液滴を吐出することができる。したがって、M個以外の他のキャリッジが他の第2移動機構に支持される。よって、基板の幅に亘って液滴を吐出する主走査と、液滴の配置密度が異なる被吐出部への主走査とを第2移動機構ごとに支持されたキャリッジに配分してほぼ同時に液滴の吐出を行うことができる。ゆえに、主走査の回数をより低減することができる。
【0011】
[適用例4]上記適用例の液滴吐出装置において、M個の前記キャリッジが支持される前記第2移動機構は、前記主走査方向において前記主走査を開始する側の最も前記ステージ寄りに配置されているこが好ましい。
この構成によれば、基板の幅に亘って液滴を吐出する主走査における基板とキャリッジとの相対移動の距離、すなわち、主走査のストロークを短くすることができる。
【0012】
[適用例5]上記適用例の液滴吐出装置において、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように、N本の前記第2移動機構に前記複数のキャリッジが配分され支持されているとしてもよい。
この構成によれば、最も少ない数のキャリッジで、基板の幅に亘って液状体を吐出することができる。したがって、装置構成をより簡略化することができる。
【0013】
[適用例6]上記適用例の液滴吐出装置において、N本の前記第2移動機構は、前記ステージにおける前記基板の搬入出側に対して反対側に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、基板搬送用のロボットなどを用いてステージに基板を載置する際に第2移動機構がじゃまにならず、効率的な基板の搬入出が可能となる。すなわちより高い生産性を有する液滴吐出装置を提供することができる。
【0014】
[適用例7]本適用例の液状体の吐出方法は、複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する吐出工程を有する液状体の吐出方法であって、前記ノズル群は、前記主走査方向と直交する副走査方向に平行して複数配置されると共に、それぞれ独立して前記副走査方向に移動可能であり、前記吐出工程は、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、複数の前記ノズル群を前記副走査方向にそれぞれ移動させて位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする。
【0015】
この方法によれば、位置決め工程では、基板上の被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて、複数のノズル群をそれぞれ好ましい状態に配置することができる。言い換えれば、基板上に副走査方向における液滴の配置密度が異なる被吐出部が配置されていたとしても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出することが可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0016】
[適用例8]上記適用例の液状体の吐出方法において、前記位置決め工程は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が均等且つ最小となるように、少なくとも2つの前記ノズル群を前記主走査方向に並列させて位置決めすることが好ましい。
この方法によれば、液滴を吐出する主走査において、副走査方向における液滴の配置密度が高い被吐出部に対して、最も好ましい状態でノズル群を配置することができる。したがって、液滴の配置密度が高い被吐出部に対して効率よく液滴を吐出することができる。ゆえに、1回の主走査において、より効率的に液滴を被吐出部に吐出可能な液状体の吐出方法を提供することができる。
【0017】
[適用例9]本適用例のカラーフィルタの製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記適用例の液滴吐出装置を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
この方法によれば、上記適用例の液滴吐出装置を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して、高い生産性でカラーフィルタを製造することができる。
【0019】
[適用例10]本適用例の他のカラーフィルタの製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、上記適用例の液状体の吐出方法を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この方法によれば、上記適用例の液状体の吐出方法を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して着弾不良を低減し、歩留りよくカラーフィルタを製造することができる。
【0021】
[適用例11]本適用例の有機EL素子の製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記適用例の液滴吐出装置を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この方法によれば、上記適用例の液滴吐出装置を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して、高い生産性で有機EL素子を製造することができる。
【0023】
[適用例12]本適用例の他の有機EL素子の製造方法は、基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、上記適用例の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、上記適用例の液状体の吐出方法を用いているので、複数の膜形成領域の副走査方向における液滴の配置密度が異なっていても、それぞれ好ましい着弾密度で液滴を吐出して着弾不良を低減し、歩留りよく有機EL素子を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。
【0026】
(実施形態1)
<液滴吐出装置>
まず、本実施形態の液滴吐出装置について図1〜図4を参照して説明する。図1は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の液滴吐出装置100は、マザー基板Pを載置するステージ104と、ステージ104を主走査方向(Y軸方向)に移動させる第1移動機構としてのワーク移動機構101と、ワーク移動機構101の上方において、主走査方向と直交する副走査方向(X軸方向)にワーク移動機構101を跨いで延在する互いに平行な2本の第2移動機構としてのヘッド移動機構105A,105Bとを備えている。
【0028】
ワーク移動機構101は、一対のガイドレール102と、一対のガイドレール102上を移動する移動台103とを有し、ステージ104が移動台103上に設けられている。
移動台103は、内部に設けられたエアスライダとリニアモータ(図示省略)により主走査方向に移動する。移動台103には、エンコーダ109(図4参照)が設けられている。
エンコーダ109は、移動台103の主走査方向への相対移動に伴って、ガイドレール102に並設されたリニアスケール(図示省略)の目盛を読み取って、タイミング信号としてのエンコーダパルスを生成する。
ステージ104はマザー基板Pを吸着固定可能であると共に、回転機構(図示省略)によってマザー基板P内の基準軸を正確に主走査方向、副走査方向に合わせることが可能となっている。なお、エンコーダ109の配設は、これに限らず、例えば、移動台103を回転軸に沿ってY軸方向に相対移動するよう構成し、回転軸を回転させる駆動部を設けた場合には、エンコーダ109を駆動部に設けてもよい。駆動部としては、サーボモータなどが挙げられる。
【0029】
ヘッド移動機構105Aは、一対のガイドレール106と、リニアモータなどの駆動源により一対のガイドレール106上を移動するキャリッジ移動台108Aとを有し、キャリッジ移動台108Aには、キャリッジ107Aが取り付けられている。
【0030】
キャリッジ107Aは、後述する液滴吐出ヘッド50(図2参照)が下方に向けて搭載されたヘッドユニット10Aが取り付けられている。
【0031】
同様にもう一方のヘッド移動機構105Bは、一対のガイドレール106と、リニアモータなどの駆動源により一対のガイドレール106上を移動するキャリッジ移動台108Bとを有し、キャリッジ移動台108Bには、キャリッジ107Bが取り付けられている。
【0032】
キャリッジ107Bは、ヘッドユニット10Aと同様に液滴吐出ヘッド50(図2参照)が搭載されたヘッドユニット10Bが取り付けられている。
【0033】
なお、各ヘッドユニット10A,10Bは、搭載された液滴吐出ヘッド50の相対的な位置を各キャリッジ107A,107B間で調整可能な状態で取り付けられており、キャリッジ107A,107Bは、ステージ104と対向する平面内においてヘッドユニット10A,10Bをそれぞれ回転させる回転機構(図示省略)を有している。
【0034】
各キャリッジ107A,107Bには、搭載された液滴吐出ヘッド50に液状体を供給するための液状体供給機構(図示省略)と、複数の液滴吐出ヘッド50の電気的な駆動制御を行うためのヘッドドライバ48(図4参照)とが設けられている。
キャリッジ移動台108A,108Bがそれぞれのキャリッジ107A,107Bを副走査方向に移動させて、ヘッドユニット10A,10Bに搭載された液滴吐出ヘッド50をマザー基板Pに対して対向配置する。
【0035】
液滴吐出装置100は、上記構成の他にも、キャリッジ107A,107Bに搭載された液滴吐出ヘッド50のノズル目詰まり解消、ノズル面の異物や汚れの除去などのメンテナンスを行うメンテナンス機構(図示省略)が、各ヘッド移動機構105A,105Bに沿った位置に配設されている。
また、液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体を受けて、その重量を計測する電子天秤などの計測器を有する重量計測機構(図示省略)を備えている。さらに、これらの構成を統括的に制御する制御部110を備えている。
【0036】
図2は、液滴吐出ヘッドを示す概略図である。同図(a)は斜視図、同図(b)はノズルの配置状態を示す平面図である。
【0037】
図2に示すように、液滴吐出ヘッド50は、所謂2連のものであり、2連の接続針54を有する液状体の導入部53と、導入部53に積層されたヘッド基板55と、ヘッド基板55上に配置され内部に液状体のヘッド内流路が形成されたヘッド本体56とを備えている。接続針54は、前述した液状体供給機構(図示省略)に配管を経由して接続され、液状体をヘッド内流路に供給する。ヘッド基板55には、フレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介してヘッドドライバ48(図4参照)に接続される2連のコネクタ58が設けられている。
【0038】
ヘッド本体56は、圧電素子で構成されたキャビティを有する加圧部57と、ノズル面51aに2つのノズル列52a,52bが相互に平行に形成されたノズルプレート51とを有している。
【0039】
図2(b)に示すように、2つのノズル列52a,52bは、それぞれ複数(180個)のノズル52がピッチP1でほぼ等間隔に並べられており、互いにピッチP1の半分のピッチP2ずれた状態でノズルプレート51に配設されている。この場合、ピッチP1は、およそ141μmである。よって、ノズル列52cに直交する方向から見ると360個のノズル52がおよそ70.5μmのノズルピッチで配列した状態となっている。以降説明上、ノズル52の間隔は、ノズルピッチP2とする。また、ノズル52の径は、およそ27μmである。
【0040】
液滴吐出ヘッド50は、ヘッドドライバ48から電気信号としての駆動信号が圧電素子に印加されると加圧部57のキャビティの体積変動が起こり、これによるポンプ作用でキャビティに充填された液状体が加圧され、ノズル52から液状体を液滴として吐出することができる。
【0041】
液滴吐出ヘッド50における駆動手段は、圧電素子に限らない。アクチュエータとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、液状体を加熱してノズル52から液滴として吐出させる電気熱変換素子(サーマル方式)でもよい。
【0042】
図3は、ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図である。詳しくは、マザー基板Pに対向する側から見た図である。
【0043】
図3に示すように、ヘッドユニット10A(10B)には、3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Aと、同じく3つの液滴吐出ヘッド50からなるヘッド群50Bの合計6個の液滴吐出ヘッド50が搭載されている。この場合、ヘッド群50AのヘッドR1(液滴吐出ヘッド50)とヘッド群50BのヘッドR2(液滴吐出ヘッド50)とは同種の液状体を吐出する。他のヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様である。すなわち、3種の異なる液状体を吐出可能な構成となっている。
【0044】
1つの液滴吐出ヘッド50によって描画可能な描画幅をL0とし、これをノズル列52cの有効長とする。以降、ノズル列52cとは、360個のノズル52から構成されるものを指す。また、説明上、360個のノズル52からなるノズル群52cとして扱うこともある。
【0045】
この場合、ヘッドR1とヘッドR2は、主走査方向(X軸方向)から見て隣り合うノズル列52cが主走査方向と直交する副走査方向(Y軸方向)に1ノズルピッチを置いて連続するように主走査方向に並列して配設されている。したがって、同種の液状体を吐出するヘッドR1とヘッドR2の有効な描画幅L1は、描画幅L0の2倍となっている。ヘッドG1とヘッドG2、ヘッドB1とヘッドB2においても同様に主走査方向に並列して配置されている。
【0046】
なお、液滴吐出ヘッド50に設けられるノズル列52cは、2連に限らず、1連でもよい。
【0047】
次に液滴吐出装置100の制御系について説明する。図4は、液滴吐出装置の制御系を示すブロック図である。図4に示すように、液滴吐出装置100の制御系は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構101、ヘッド移動機構105A,105Bなどを駆動する各種ドライバを有する駆動部40と、駆動部40を含め液滴吐出装置100を制御する制御部110とを備えている。
【0048】
駆動部40は、ワーク移動機構101およびヘッド移動機構105A,105Bの各リニアモータをそれぞれ駆動制御する移動用ドライバ47と、液滴吐出ヘッド50を吐出制御するヘッド駆動部としてのヘッドドライバ48とを備えている。この他にも重量計測用ドライバと、メンテナンス用ドライバとを備えているが図示省略した。
【0049】
制御部110は、CPU111と、ROM112と、RAM113と、P−CON114とを備え、これらは互いにバス115を介して接続されている。P−CON114には、上位コンピュータ116が接続されている。ROM112は、CPU111で処理する制御プログラムなどを記憶する制御プログラム領域と、描画動作や機能回復処理などを行うための制御データなどを記憶する制御データ領域とを有している。
【0050】
RAM113は、マザー基板Pに描画を行うための描画データを記憶する描画データ記憶部、マザー基板Pおよび液滴吐出ヘッド50(実際には、ノズル列52a,52b)の位置データを記憶する位置データ記憶部などの各種記憶部を有し、制御処理のための各種作業領域として使用される。P−CON114には、駆動部40の各種ドライバなどが接続されており、CPU111の機能を補うと共に、周辺回路とのインタフェース信号を取り扱うための論理回路が構成されて組み込まれている。このため、P−CON114は、上位コンピュータ116からの各種指令などをそのままあるいは加工してバス115に取り込むと共に、CPU111と連動して、CPU111などからバス115に出力されたデータや制御信号を、そのままあるいは加工して駆動部40に出力する。
【0051】
そして、CPU111は、ROM112内の制御プログラムに従って、P−CON114を介して各種検出信号、各種指令、各種データなどを入力し、RAM113内の各種データなどを処理した後、P−CON114を介して駆動部40などに各種の制御信号を出力することにより、液滴吐出装置100全体を制御している。例えば、CPU111は、液滴吐出ヘッド50、ワーク移動機構101およびヘッド移動機構105A,105Bを制御して、ヘッドユニット10A,10Bとマザー基板Pとを対向配置させる。そして、ヘッドユニット10A,10Bとマザー基板Pとの相対移動に同期して、ヘッドユニット10A,10Bに搭載された各液滴吐出ヘッド50の複数のノズル52からマザー基板Pに液状体を液滴として吐出するようにヘッドドライバ48に制御信号を送出する。この場合、Y軸方向へのマザー基板Pの移動に同期して液状体を吐出することを主走査と呼び、X軸方向にヘッドユニット10A,10Bを移動させることを副走査と呼ぶ。本実施形態の液滴吐出装置100は、主走査と副走査とを組み合わせて複数回繰り返すことにより液状体を吐出描画することができる。主走査は、液滴吐出ヘッド50に対して一方向へのマザー基板Pの移動に限らず、マザー基板Pを往復させて行うこともできる。
【0052】
エンコーダ109は、ヘッドドライバ48に電気的に接続され、主走査に伴ってエンコーダパルスを生成する。主走査では、所定の移動速度で移動台103を移動させるので、エンコーダパルスが周期的に発生する。
【0053】
上位コンピュータ116は、制御プログラムや制御データなどの制御情報を液滴吐出装置100に送出する。また、基板上の被吐出部ごとに必要量の液状体を液滴として配置する吐出制御データとしての配置情報を生成する配置情報生成部の機能を有している。配置情報は、被吐出部における液滴の吐出位置(言い換えれば、マザー基板Pとノズル52との相対位置)、液滴の配置数(言い換えれば、ノズル52ごとの吐出数)、主走査における複数のノズル52のON/OFF(言い換えれば、複数のノズル52の選択パターン)、吐出タイミングなどの情報を、例えば、ビットマップとして表したものである。上位コンピュータ116は、上記配置情報を生成するだけでなく、RAM113に一旦格納された上記配置情報を修正することも可能である。
【0054】
本実施形態の液滴吐出装置100は、互いに平行な2つのヘッド移動機構105A,105Bを備えていることを特徴としている。制御部110は、それぞれのヘッド移動機構105A,105Bに支持された各キャリッジ107A,107Bを副走査方向に移動させることにより、マザー基板Pにおける被吐出部の副走査方向における液滴の配置密度に応じて、2つのキャリッジ107A,107Bを主走査方向に並列させる位置決め動作を行わせる。これにより、主走査方向から見たときのノズル群の実質的なノズル間隔を好ましい状態に調整して液状体を被吐出部に吐出することが可能である。詳しくは、後述する液状体の吐出方法にて述べる。
【0055】
<カラーフィルタの製造方法>
次に、上記液滴吐出装置100並びに本実施形態の液状体の吐出方法を用いたカラーフィルタの製造方法について、図5〜図12を参照して説明する。図5(a)はカラーフィルタの構成を示す概略平面図、同図(b)は同図(a)のA−A'線で切った断面図である。図6は、カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。図7(a)〜(d)は、カラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。図8〜図12は、液状体の吐出方法の実施例を示す概略平面図である。
【0056】
図5(a)および(b)に示すようにカラーフィルタ2は、透明なガラスなどの基板1上に赤(R)、緑(G)、青(B)3色の着色層3を有している。各着色層3は隔壁部4によりマトリクス状に区画されている。本実施形態のカラーフィルタ2は、同色の着色層3が直線的に配列する所謂ストライプ方式のカラーフィルタである。
【0057】
図5(b)に示すように、隔壁部4は、第1隔壁部4aと第2隔壁部4bとからなる二層構造となっている。第1隔壁部4aは、例えば、CrやAlなどの金属薄膜からなり遮光性を有している。第2隔壁部4bは、例えば、樹脂材料からなる。なお、二層構造に限定されず、遮光性を有する部材を含む樹脂材料により隔壁部4を構成する一層構造でもよい。
【0058】
着色層3は、着色材料を含む透光性樹脂材料からなる。本実施形態では、このようなカラーフィルタ2を液滴吐出法(インクジェット法)を用いて製造する。
【0059】
図6に示すように、カラーフィルタ2の製造方法は、隔壁部4を形成する隔壁部形成工程(ステップS1)と、隔壁部4が形成された基板1の表面を表面処理する表面処理工程(ステップS2)と、着色層形成材料を含む液状体を吐出する吐出工程(ステップS3)と、吐出された液状体を乾燥させて着色層3を形成する乾燥工程(ステップS4)とを備えている。
【0060】
図6のステップS1では、まず、基板1の表面にCrやAlなどの金属薄膜を成膜する。成膜方法としては真空蒸着法、スパッタ法などが挙げられる。膜厚は、例えば遮光性が得られるように0.1μm程度とする。これをフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口させた第1隔壁部4aを形成する。
次に、第1隔壁部4aを覆って感光性樹脂を厚み2μm程度に塗布し、同じくフォトリソグラフィ法によりパターニングして、第1隔壁部4a上に第2隔壁部4bを形成する。これにより図7(a)に示すように基板1上に開口した被吐出部としての矩形状の膜形成領域3r,3g,3bを形成する。そして、ステップS2へ進む。
【0061】
図6のステップS2では、後の液状体の吐出工程において、吐出された液状体が膜形成領域3r,3g,3bに着弾して濡れ拡がるように、基板1の表面を親液処理する。また、吐出された液状体の一部が第2隔壁部4bに着弾したとしても膜形成領域3r,3g,3b内に収まるように、第2隔壁部4bの少なくとも頭頂部を撥液処理する。
【0062】
表面処理方法としては、隔壁部4が形成された基板1に対して、O2を処理ガスとするプラズマ処理とフッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理とを行う。すなわち、膜形成領域3r,3g,3bが親液処理され、その後感光性樹脂からなる第2隔壁部4bの表面(壁面を含む)が撥液処理される。なお、第2隔壁部4bを形成する材料自体が撥液性を有していれば後者の処理を省くこともできる。そして、ステップS3へ進む。
【0063】
図6のステップS3では、液滴吐出装置100のステージ104に表面処理された基板1を載置する。異なる着色層形成材料を含む3色の液状体をそれぞれ異なる液滴吐出ヘッド50に充填し、当該液滴吐出ヘッド50をヘッドユニット10A,10Bに装備する。 そして、図7(b)および(c)に示すように、基板1と液滴吐出ヘッド50との主走査方向への相対移動に同期して、液滴吐出ヘッド50のノズル52から3色の液状体のそれぞれを液滴Dとして所望の膜形成領域3r,3g,3bに吐出する。膜形成領域3r,3g,3bに吐出される液状体の塗布量は、あらかじめ膜形成領域3r,3g,3bごとに選択されるノズル52の選択パターンと液滴Dの吐出数などが主走査ごとに設定された吐出データに基づいて、制御部110のCPU111から適正な制御信号がヘッドドライバ48に送られて制御される。これにより、ほぼ一定量の液状体が膜形成領域3r,3g,3bごとに塗布される。より詳しい液状体の吐出方法は後述する実施例にて説明する。そして、ステップS4へ進む。
【0064】
図6のステップS4では、図7(d)に示すように、基板1に吐出された液状体から溶媒成分を蒸発させて、着色層形成材料からなる着色層3を形成する。本実施形態では、溶媒の蒸気圧を一定にして乾燥することが可能な減圧乾燥装置に基板1をセットして減圧乾燥し、R、G、B、3色の着色層3を形成した。なお、1色の液状体を吐出して乾燥する工程を3回繰り返してもよい。
先の液状体の吐出工程(ステップS3)において、ほぼ一定量の液状体が膜形成領域3r,3g,3bごとに無駄なく塗布されているので、ほぼ一定の膜厚を有する着色層3を形成することができる。なお、着色層3の膜厚は、色ごとに設定すればよく、必ずしも3色が同一でなくてもよい。必要な膜厚の設定に基づいて、必要量の液状体を対応する膜形成領域3r,3g,3bに吐出すればよい。
着色層3が形成された基板1の表面に凹凸が生じる場合には、隔壁部4と各着色層3とを覆って透光性の例えばアクリル系樹脂材料からなる平坦化層を形成してもよい。
【0065】
カラーフィルタ2が形成される基板1の大きさは、これを用いる表示装置の大きさに寄る。また、同一の大きさの表示装置であっても画素が高密度に配置されている場合、対応するカラーフィルタ2の着色層3の配置も高密度な配置が要求される。
【0066】
カラーフィルタ2を有する基板1をより効率的に生産する方法として、一般的には基板1よりも平面的なサイズが大きいマザー基板Pに多面取りする方法が採用されている。だが、マザー基板Pのサイズによっては、面積的に効率よく多面取りが可能な基板1の効率サイズが限定される。この効率サイズ以外の基板1をマザー基板Pに多面取りした場合、無駄な領域が発生してしまう。これを避けるため、平面的なサイズが異なる複数種のカラーフィルタ2を組み合わせてマザー基板Pから多面取りする方法が挙げられる。
【0067】
本実施形態の液滴吐出装置100並びに液状体の吐出方法を用いたカラーフィルタ2の製造方法は、特に上記後者の多面取りを行う場合、高い生産性でカラーフィルタ2を製造することが可能である。以降、実施例1〜3に基づいて詳細に説明する。
【0068】
(実施例1)
図8(a)は実施例1の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。図9は、実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。
【0069】
図8(a)に示すように、実施例1は、マザー基板Pに、カラーフィルタE1と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE2とを多面取りする例である。カラーフィルタE1は、X軸方向とY軸方向とにおいて所定の間隔を置いて格子状に4つ配置されている。残りのマザー基板Pの空きスペースにカラーフィルタE2がY軸方向に間隔を置いて4つ配置されている。
図8(b)に示すように、カラーフィルタE1とカラーフィルタE2とにおける相対的な配置は、矩形状の膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の長辺が同じ方向を向いている。言い換えれば膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が同じである。
カラーフィルタE1とカラーフィルタE2とにおいて着色層3の数を同数とすると、単位面積当たりの被吐出部としての膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の配置密度は、カラーフィルタE1に比べてカラーフィルタE2の方が高くなる。言い換えればカラーフィルタE2の方が高精細となる。
【0070】
図8(a)に示すように、液滴吐出装置100は、2つのヘッド移動機構105A,105Bのうち、一方のヘッド移動機構105Aに複数(7つ)のキャリッジ107A(キャリッジA1〜A7)が支持され、他方のヘッド移動機構105Bに1つのキャリッジ107B(キャリッジB1)が支持されている。また、同図(a)において、各キャリッジA1〜A7,B1を示す四角形のX軸方向の幅は、キャリッジごとの液状体の描画幅を示すものである。
ステージ104には、膜形成領域3r,3g,3bのストライプ方向が主走査方向(Y軸方向)と直交するように、マザー基板Pが載置され位置決めされる。
【0071】
制御部110は、ヘッド移動機構105Aの7つのキャリッジA1〜A7を均等な間隔で副走査方向に位置決めする動作を行わせる。これにより、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能とする。この場合、キャリッジA3〜A7を用いればカラーフィルタE1を吐出描画可能である。キャリッジA2を用いればカラーフィルタE2を吐出描画可能である。
【0072】
また、制御部110は、上記マザー基板Pにおける膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向(X軸方向)における液滴Dの配置密度に対応して、先に位置決めされたキャリッジA2に対して主走査方向に並列するように、ヘッド移動機構105BのキャリッジB1を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。
【0073】
具体的には、図9に示すように、主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように、キャリッジA2に対してキャリッジB1を副走査方向に位置決めする。前述したように、ノズル群52cのノズルピッチP2がおよそ70.5μmである。したがって、このようなキャリッジA2とキャリッジB1の相対的な配置によれば、主走査における描画範囲C2(図8(a)参照)の実質的なノズル52の間隔は、ノズルピッチP2の半分のおよそ35.25μmとなる。
【0074】
例えば、ヘッド移動機構105をN本として同様にN個のキャリッジ107を主走査方向に並列させれば、実質的なノズル52の間隔をノズルピッチP2の1/Nにすることができる。すなわち、個々のキャリッジ107における同種の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50の配置を変えることなく、主走査において、膜形成領域3r,3g,3bおよび膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向における液滴の配置密度に応じた好ましいノズル52の間隔を実現することができる。
【0075】
図9に示すように、カラーフィルタE2を吐出描画可能なキャリッジA2を用いて主走査を行う場合、平面的なサイズが小さい膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52の数は、膜形成領域3r,3g,3bに比べて少ない。キャリッジA2にキャリッジB1を並列させることにより、平面的なサイズが小さい、言い換えれば副走査方向における液滴Dの配置密度が高い膜形成領域3r',3g',3b'に対して主走査によって掛かるノズル52の数を増やすことができる。
【0076】
例えば、赤(R)の着色層形成材料を含む液状体が充填された液滴吐出ヘッド50のノズル52から液滴Dを吐出すれば、図9に示したように、膜形成領域3rと膜形成領域3r'とに効率よく液滴Dを着弾させることができる。主走査方向における液滴Dの着弾数すなわち吐出数は、液滴吐出ヘッド50のノズル列52a,52bごとに、エンコーダ109が生成する吐出タイミング信号を選択することにより、適宜設定することができる。
緑(G)の液状体、青(B)の液状体を充填したそれぞれの液滴吐出ヘッド50から同様にして液滴Dを吐出すれば、膜形成領域3g,3bと膜形成領域3g',3b'とに効率よく液滴Dを着弾させることができることは言うまでもない。
【0077】
このような液状体の吐出方法によれば、図8(a)に示すように、キャリッジA3〜A7の描画範囲C1における液滴Dの着弾密度に対して、キャリッジA2とキャリッジB1とによる描画範囲C2の液滴Dの着弾密度が副走査方向において向上する。よって、キャリッジA2〜A7を用いて液状体を吐出する場合に比べて、各膜形成領域3r,3g,3b,3r',3g',3b'に必要量の液状体を液滴Dとして吐出する主走査の回数を低減することができる。ゆえに、高い生産性でカラーフィルタE1,E2を製造することができる。
【0078】
なお、1つのキャリッジの描画幅は、図3に示したように、同種の液状体を吐出する液滴吐出ヘッド50(言い換えればノズル群)の配置に寄る。本実施形態では、当該描画幅は、L1である。キャリッジを共用する観点からすれば、マザー基板PにおけるカラーフィルタE1,E2の配置に都度対応して液滴吐出ヘッド50の配置を変えることは考え難い。したがって、実際の液状体の吐出工程においては、カラーフィルタE1,E2の膜形成領域3r,3g,3b,3r',3g',3b'の副走査方向における液滴Dの配置密度に応じて、上記のように一旦位置決めされたキャリッジA1〜A7およびキャリッジB1の相対的な配置を維持してキャリッジ全体を副走査する改行動作と、主走査とを組み合わせて液滴Dの吐出を行うものである。
【0079】
(実施例2)
図10(a)は実施例2の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。図11は、実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図である。
【0080】
図10(a)に示すように、実施例2は、マザー基板Pに、カラーフィルタE1と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE3とを多面取りする例である。カラーフィルタE1は、実施例1と同様にX軸方向とY軸方向とにおいて所定の間隔を置いて格子状に4つ配置されている。残りのマザー基板Pの空きスペースにカラーフィルタE3がY軸方向に間隔を置いて6つ配置されている。
【0081】
実施例2が実施例1に対して異なる点は、図10(b)に示すように、膜形成領域3r,3g,3bと膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が直交するように、カラーフィルタE1とカラーフィルタE3とがマザー基板Pに配置されていることである。このような多面取りは、主走査におけるノズル52の使用率を低下させてしまう。
【0082】
そこで、実施例2における液滴吐出装置100の構成としては、図10(a)に示すように、ヘッド移動機構105Bに2つのキャリッジB1,B2を支持させる。制御部110は、位置決めされたキャリッジA1に対して主走査方向に並列するように、キャリッジB1を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。同様に、キャリッジA2に対して主走査方向に並列するように、キャリッジB2を副走査方向に位置決めする動作を行わせる。主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように位置決めする点は、実施例1と同じである。
【0083】
図11に示すように、キャリッジA2を用いて主走査を行う場合、膜形成領域3r,3g,3bに対して配列方向が直交する膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52の数は、膜形成領域3r,3g,3bに比べて極めて少ない。キャリッジA2にキャリッジB2を並列させることにより、膜形成領域3r',3g',3b'に対して主走査によって掛かるノズル52の数を増やすことができる。なお、膜形成領域3r',3g',3b'の大きさは、ノズル52の配置ピッチを基準にして図示した。
【0084】
例えば、赤(R)の液状体が充填された液滴吐出ヘッド50のノズル群52cから液滴Dを吐出する場合、膜形成領域3r'には、キャリッジA2のノズル群52cのうち1つのノズル52だけが掛かるが、キャリッジB2のノズル群52cのうちからも1つのノズル52が掛かるので合計2つのノズル52によって1つの膜形成領域3r'を吐出描画可能となる。よって、効率よく赤(R)の液滴Dを吐出することができる。膜形成領域3g',3b'においても同様である。
【0085】
このような液状体の吐出方法によれば、図10(a)に示すように、キャリッジA3〜A7の描画範囲C1における液滴Dの着弾密度に対して、キャリッジA1とキャリッジB1並びにキャリッジA2とキャリッジB2による描画範囲C3の液滴Dの着弾密度を副走査方向において向上させ、高い生産性でカラーフィルタE1,E3を製造することができる。
【0086】
すなわち、ヘッド移動機構105Bが支持するキャリッジ数を変えることにより、マザー基板Pにおけるカラーフィルタ2の多面取りの配置に応じて、好適なノズル52の間隔を実現することができる。
【0087】
(実施例3)
図12(a)および(c)は、実施例3の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、同図(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図である。
【0088】
図12(a)に示すように、実施例3は、マザー基板Pに、カラーフィルタE4と、それよりも平面的なサイズが小さいカラーフィルタE5とを多面取りする例である。実施例1や実施例2と異なる点は、カラーフィルタE4が副走査方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて2つ配置され、副走査方向における無駄なスペースはない。カラーフィルタE5は、主走査方向(Y軸方向)において空いたスペースに、副走査方向(X軸方向)に所定の間隔をおいて4つ配置されている。
【0089】
図12(b)に示すように、膜形成領域3r,3g,3bと膜形成領域3r',3g',3b'のストライプ方向が同方向となるように、カラーフィルタE4とカラーフィルタE5とが多面取りされている。
【0090】
また、実施例3の液滴吐出装置100の構成としては、ヘッド移動機構105Aに3つのキャリッジA1〜A3が支持され、同じくヘッド移動機構105Bに3つのキャリッジB1〜B3が支持されていることを特徴とする。
【0091】
図12(a)に示すように、制御部110は、キャリッジA1〜A3とキャリッジB1〜B3とが主走査方向(Y軸方向)から見て重ならないように、且つ副走査方向において均等な間隔となるように位置決めを行わせる。これにより、最も少ないキャリッジ数で、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジ配置とする。
【0092】
また、図12(c)に示すように、制御部110は、キャリッジA1〜A3とキャリッジB1〜B3とが主走査方向(Y軸方向)において並列するように、且つ主走査方向(Y軸方向)から見たときのノズル52の間隔が均等且つ最小となるように位置決め動作を行わせる。これにより、膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向における液滴Dの配置密度に対応して、主走査において好ましいノズル52の間隔を実現する。
【0093】
実施例3によれば、様々な液状体の吐出方法を実現することができる。例えば、図12(a)に示したキャリッジ配置で描画範囲C4を確保して、まず2つのカラーフィルタE4を吐出描画する主走査を行う。続いて、図12(c)に示したキャリッジ配置で描画範囲C5を確保して、2つのカラーフィルタE5を吐出描画し、その後、キャリッジの相対的な配置を維持した状態でキャリッジ全体を副走査して、残り2つのカラーフィルタE5を吐出描画する主走査を行う。
この場合、カラーフィルタE4を吐出描画する主走査において、カラーフィルタE5の膜形成領域3r',3g',3b'に掛かるノズル52から必要量の液状体の一部を液滴Dとして先行吐出させてもよい。
【0094】
あるいは、図12(c)に示したキャリッジ配置で1つのカラーフィルタE4と2つのカラーフィルタE5とを吐出描画する主走査を行い、その後、キャリッジA1,A2,A3,B1,B2,B3の相対的な配置を維持した状態でキャリッジ全体を副走査して、残り1つのカラーフィルタE4と2つのカラーフィルタE5とを吐出描画する主走査を行ってもよい。
【0095】
実施例3の液滴吐出装置100の構成並びに液状体の吐出方法によれば、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジ数を2つのヘッド移動機構105A,105Bに配分して支持させ、最も少ないキャリッジ数でマザー基板Pに多面取りされたカラーフィルタE4,E5を吐出描画することができる。見方を変えれば、1種のカラーフィルタ2が多面取りされたマザー基板Pの場合には、図12(a)のようなキャリッジ配置で対応することができる。複数種のカラーフィルタ2が多面取りされたマザー基板Pの場合には、ヘッド移動機構105Aに支持されたキャリッジA1〜A3と、ヘッド移動機構105Bに支持されたキャリッジB1〜B3との副走査方向における相対的な配置を変えることによって、吐出描画に適したノズル52の間隔を実現することができる。
【0096】
実施例1および実施例2の液滴吐出装置100において、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出可能なキャリッジA1〜A7を支持するヘッド移動機構105Aは、マザー基板Pを載置するステージ104の主走査の開始側に最も近い位置に設けることが好ましい。
これによれば、マザー基板Pの副走査方向の幅に亘って液状体を吐出描画する主走査の相対移動におけるストロークを小さくすることができ、カラーフィルタ製造における生産性が向上する。
【0097】
実施例1〜実施例3の液滴吐出装置100において、2つのヘッド移動機構105A,105Bは、ステージ104におけるマザー基板Pを搬入出する側に対して反対側に位置するように配置することが好ましい。
これによれば、マザー基板Pの搬入出にじゃまにならず、スムーズにマザー基板Pを搬入出することができる。
【0098】
実施例1および実施例2の液滴吐出装置100において、ヘッド移動機構105Bに支持されるキャリッジ107Bを少なくとも1つ増やせば、キャリッジA1〜A7およびキャリッジB1またはキャリッジB2に吐出不具合が生じたときに、増やしたキャリッジ107Bを予備キャリッジとして用いることができる。すなわち、キャリッジの吐出不具合による液滴吐出装置100の停止で稼働率が低下することを防止できる。吐出不具合が生じたキャリッジは、予備キャリッジを用いている間に、前述したメンテナンス機構によりノズル52の吸引やワイピングなどの回復動作を行わせる。あるいはキャリッジ交換作業を行う。実施例3の場合も同様に、ヘッド移動機構105A,105Bのそれぞれにおいて、支持されるキャリッジ107A,107Bを少なくとも1つ増やして予備キャリッジとしてもよい。
【0099】
このようにして製造されたカラーフィルタ2(E1,E2,E3,E4,E5)が用いられる表示装置としては、一対の基板のうちの一方の基板にカラーフィルタ2を備えた液晶表示装置、有機EL(Electro Luminescence)表示装置が挙げられる。
【0100】
(実施形態2)
次に、上記実施形態1の液滴吐出装置100を用いると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を適用した有機EL素子の製造方法について、図13および図14を参照して説明する。図13は有機EL装置の要部構造を示す概略断面図、図14(a)〜(f)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図である。
【0101】
<有機EL装置>
図13に示すように、本実施形態の有機EL装置600は、有機EL素子としての発光素子部603を有する素子基板601と、素子基板601と空間622を隔てて封着された封止基板620とを備えている。また素子基板601は、素子基板601上に回路素子部602を備えており、発光素子部603は、回路素子部602上に重畳して形成され、回路素子部602により駆動されるものである。発光素子部603には、有機発光材料からなる3色の発光層617R,617G,617Bがそれぞれの膜形成領域としての発光層形成領域Aに形成され、ストライプ状となっている。素子基板601は、3色の発光層617R,617G,617Bに対応する3つの発光層形成領域Aを1組の絵素とし、この絵素が素子基板601の回路素子部602上にマトリクス状に配置されたものである。有機EL装置600は、発光素子部603からの発光が素子基板601側に射出するものである。
【0102】
封止基板620は、ガラスまたは金属からなるもので、封止樹脂を介して素子基板601に接合されており、封止された内側の表面には、ゲッター剤621が貼り付けられている。ゲッター剤621は、素子基板601と封止基板620との間の空間622に侵入した水または酸素を吸収して、発光素子部603が侵入した水または酸素によって劣化することを防ぐものである。なお、このゲッター剤621は省略してもよい。
【0103】
素子基板601は、回路素子部602上に複数の発光層形成領域Aを有するものであって、複数の発光層形成領域Aを区画するバンク618と、複数の発光層形成領域Aに形成された電極613と、電極613に積層された正孔注入/輸送層617aとを備えている。また複数の発光層形成領域A内に発光層形成材料を含む3種の液状体を付与して形成された発光層617R,617G,617Bを有する発光素子部603を備えている。バンク618は、絶縁材料を用いて形成され、正孔注入/輸送層617a上に積層された発光層617R,617G,617Bと電極613とが電気的に短絡しないように、電極613の周囲を覆っている。
【0104】
素子基板601は、例えばガラスなどの透明な基板からなり、素子基板601上にシリコン酸化膜からなる下地保護膜606が形成され、この下地保護膜606上に多結晶シリコンからなる島状の半導体膜607が形成されている。なお、半導体膜607には、ソース領域607aおよびドレイン領域607bが高濃度Pイオン打ち込みにより形成されている。なお、Pイオンが導入されなかった部分がチャネル領域607cとなっている。さらに下地保護膜606および半導体膜607を覆う透明なゲート絶縁膜608が形成され、ゲート絶縁膜608上にはAl、Mo、Ta、Ti、Wなどからなるゲート電極609が形成され、ゲート電極609およびゲート絶縁膜608上には透明な第1層間絶縁膜611aと第2層間絶縁膜611bが形成されている。ゲート電極609は半導体膜607のチャネル領域607cに対応する位置に設けられている。また、第1層間絶縁膜611aおよび第2層間絶縁膜611bを貫通して、半導体膜607のソース領域607a、ドレイン領域607bにそれぞれ接続されるコンタクトホール612a,612bが形成されている。そして、第2層間絶縁膜611b上に、ITO(Indium Tin Oxide)などからなる透明な電極613が所定の形状にパターニングされて配置され、一方のコンタクトホール612aがこの電極613に接続されている。また、もう一方のコンタクトホール612bが電源線614に接続されている。このようにして、回路素子部602には、各電極613に接続された駆動用の薄膜トランジスタ615が形成されている。なお、回路素子部602には、保持容量とスイッチング用の薄膜トランジスタも形成されているが、図13ではこれらの図示を省略している。
【0105】
発光素子部603は、陽極としての電極613と、電極613上に順次積層された正孔注入/輸送層617a、各発光層617R,617G,617B(総称して発光層Lu)と、バンク618と発光層Luとを覆うように積層された陰極604とを備えている。正孔注入/輸送層617aと発光層Luとにより発光が励起される機能層617を構成している。なお、陰極604と封止基板620およびゲッター剤621を透明な材料で構成すれば、封止基板620側から発光する光を射出させることができる。
【0106】
有機EL装置600は、ゲート電極609に接続された走査線(図示省略)とソース領域607aに接続された信号線(図示省略)とを有し、走査線に伝わった走査信号によりスイッチング用の薄膜トランジスタ(図示省略)がオンになると、そのときの信号線の電位が保持容量に保持され、該保持容量の状態に応じて、駆動用の薄膜トランジスタ615のオン・オフ状態が決まる。そして、駆動用の薄膜トランジスタ615のチャネル領域607cを介して、電源線614から電極613に電流が流れ、さらに正孔注入/輸送層617aと発光層Luとを介して陰極604に電流が流れる。発光層Luは、これを流れる電流量に応じて発光する。有機EL装置600は、このような発光素子部603の発光メカニズムにより、所望の文字や画像などを表示することができる。また、有機EL装置600は、発光層Luが上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて形成されているため、ほぼ一定量の液状体が各発光層形成領域Aに付与され、発光ムラ、輝度ムラなどの表示不具合の少ない高い表示品質を有すると共に、高精細な表示を可能としている。
【0107】
<有機EL素子の製造方法>
次に本実施形態の有機EL素子としての発光素子部603の製造方法について図14を参照して説明する。なお、図14(a)〜(f)においては、素子基板601上に形成された回路素子部602は、図示を省略している。
【0108】
本実施形態の発光素子部603の製造方法は、素子基板601の複数の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する工程と、電極613に一部が掛かるようにバンク618を形成するバンク形成工程とを備えている。またバンク618で区画された発光層形成領域Aの表面処理を行う工程と、表面処理された発光層形成領域Aに正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体を付与して正孔注入/輸送層617aを吐出描画する工程と、吐出された液状体を乾燥して正孔注入/輸送層617aを成膜する工程とを備えている。また、発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体を吐出する吐出工程と、吐出された3種の液状体を乾燥して発光層Luを成膜する成膜工程とを備えている。さらに、バンク618と発光層Luを覆うように陰極604を形成する工程を備えている。各液状体の発光層形成領域Aへの付与は、上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて行う。よって、図3に示したヘッドユニット10A(10B)における液滴吐出ヘッド50の配置を適用する。
【0109】
電極(陽極)形成工程では、図14(a)に示すように、素子基板601の発光層形成領域Aに対応する位置に電極613を形成する。形成方法としては、例えば、素子基板601の表面にITOなどの透明電極材料を用いて真空中でスパッタ法あるいは蒸着法で透明電極膜を形成する。その後、フォトリソグラフィ法にて必要な部分だけを残してエッチングして電極613を形成する方法が挙げられる。そしてバンク形成工程へ進む。
【0110】
バンク形成工程では、図14(b)に示すように、素子基板601の複数の電極613の周囲を覆うようにバンク618を形成する。バンク618の材料としては、後述する発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bの溶媒に対して耐久性を有するものであることが望ましく、さらに、フッ素系ガスを処理ガスとするプラズマ処理により撥液化できること、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、感光性ポリイミドなどといった絶縁性を有する有機材料が好ましい。バンク618の形成方法としては、例えば、電極613が形成された素子基板601の表面に感光性の上記有機材料をロールコート法やスピンコート法で塗布し、乾燥させて厚みがおよそ2〜3μmの感光性樹脂層を形成する。そして、発光層形成領域Aに対応した大きさで開口部が設けられたマスクを素子基板601と所定の位置で対向させて露光・現像することにより、バンク618を形成する方法が挙げられる。そして、表面処理工程へ進む。
【0111】
発光層形成領域Aを表面処理する工程では、バンク618が形成された素子基板601の表面を、まずO2ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより電極613の表面、バンク618の表面(壁面を含む)を活性化させて親液処理する。次にCF4などのフッ素系ガスを処理ガスとしてプラズマ処理する。これにより有機材料である感光性樹脂からなるバンク618の表面のみにフッ素系ガスが反応して撥液処理される。そして、正孔注入/輸送層形成工程へ進む。
【0112】
正孔注入/輸送層形成工程では、図14(c)に示すように、正孔注入/輸送層形成材料を含む液状体90を発光層形成領域Aに付与する。液状体90を付与する方法としては、図3のヘッドユニット10A(10B)を備えた液滴吐出装置100と上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いる。液滴吐出ヘッド50から吐出された液状体90は、液滴Dとして素子基板601の電極613に着弾して濡れ拡がる。液状体90は発光層形成領域Aの面積に応じて、ほぼ一定量が液滴Dとして吐出される。そして乾燥・成膜工程へ進む。
【0113】
乾燥・成膜工程では、素子基板601を例えばランプアニールなどの方法で加熱することにより、液状体90の溶媒成分を乾燥させて除去し、電極613のバンク618により区画された領域に正孔注入/輸送層617aが形成される。本実施形態では、正孔注入/輸送層形成材料として3,4−ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)を用いた。なお、本実施形態では、各発光層形成領域Aに同一材料からなる正孔注入/輸送層617aを形成したが、後に形成される発光層Luに対応して正孔注入/輸送層617aの材料を発光層形成領域Aごとに変えてもよい。そして次の液状体の吐出工程へ進む。
【0114】
液状体の吐出工程では、図14(d)に示すように、液滴吐出装置100を用いて複数の液滴吐出ヘッド50から複数の発光層形成領域Aに発光層形成材料を含む3種の液状体100R,100G,100Bを付与する。液状体100Rは発光層617R(赤色)を形成する材料を含み、液状体100Gは発光層617G(緑色)を形成する材料を含み、液状体100Bは発光層617B(青色)を形成する材料を含んでいる。着弾した各液状体100R,100G,100Bは、発光層形成領域Aに濡れ拡がって断面形状が円弧状に盛り上がる。これらの液状体100R,100G,100Bを付与する方法としては、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いた。駆動波形(電圧パルス)の設定は、液状体100R,100G,100Bごとに行うことが望ましい。すなわち、各液状体100R,100G,100Bが充填される液滴吐出ヘッド50ごとに駆動波形の設定を行う。そして、乾燥・成膜工程へ進む。
【0115】
乾燥・成膜工程では、図14(e)に示すように、吐出された各液状体100R,100G,100Bの溶媒成分を乾燥させて除去し、各発光層形成領域Aの正孔注入/輸送層617aに各発光層617R,617G,617Bが積層されるように成膜する。各液状体100R,100G,100Bが吐出された素子基板601の乾燥方法としては、溶媒の蒸発速度をほぼ一定とすることが可能な、減圧乾燥が好ましい。そして陰極形成工程へ進む。
【0116】
陰極形成工程では、図14(f)に示すように、素子基板601の各発光層617R,617G,617Bとバンク618の表面とを覆うように陰極604を形成する。陰極604の材料としては、Ca、Ba、Alなどの金属やLiFなどのフッ化物を組み合わせて用いるのが好ましい。特に発光層617R,617G,617Bに近い側に仕事関数が小さいCa、Ba、LiFの膜を形成し、遠い側に仕事関数が大きいAlなどの膜を形成するのが好ましい。また、陰極604の上にSiO2、SiNなどの保護層を積層してもよい。このようにすれば、陰極604の酸化を防止することができる。陰極604の形成方法としては、蒸着法、スパッタ法、CVD法などが挙げられる。特に発光層617R,617G,617Bの熱による損傷を防止できるという点では、蒸着法が好ましい。
【0117】
このようにして出来上がった素子基板601は、ほぼ一定量の各液状体100R,100G,100Bが液滴Dとして発光層形成領域Aに付与され、乾燥・成膜化後の膜厚が、それぞれの発光層形成領域Aにおいて、ほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bを有する。
【0118】
上記実施形態2の発光素子部603の製造方法によれば、液状体100R,100G,100Bの吐出工程では、上記実施形態1の液滴吐出装置100を使用すると共に、上記実施形態1の液状体の吐出方法を用いて液滴を吐出する。したがって、それぞれの発光層形成領域Aの副走査方向における液滴の配置密度に応じてノズル群が配置され、ほぼ一定量の各液状体100R,100G,100Bが安定的に塗布されている。素子基板601が、副走査方向における液滴の配置密度が異なる発光層形成領域Aを有していても、乾燥・成膜後の膜厚が、それぞれの発光層形成領域Aにおいて、ほぼ一定となった各発光層617R,617G,617Bが得られる。
【0119】
また、上記実施形態2の発光素子部603の製造方法を用いて、有機EL装置600を製造すれば、各発光層617R,617G,617Bの膜厚がほぼ一定であるため、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗がほぼ一定となる。よって、回路素子部602により発光素子部603に駆動電圧を印加して発光させると、各発光層617R,617G,617Bごとの抵抗ムラによる発光ムラや輝度ムラなどが低減される。すなわち、発光ムラや輝度ムラなどが少なく、平面的なサイズが異なる有機EL装置600を効率よく製造することができる。
【0120】
上記実施形態以外にも様々な変形例が考えられる。以下、変形例を挙げて説明する。
【0121】
(変形例1)上記実施形態1の液滴吐出装置100において、ヘッドユニット10A,10Bに搭載される液滴吐出ヘッド50の数や配置は、これに限定されない。例えば、図3に示した液滴吐出ヘッド50の配置をX軸方向(副走査方向)に重複してもよい。これにより、1つのキャリッジ107A(107B)の描画幅をさらに拡大できる。
【0122】
(変形例2)上記実施例2において、主走査方向に並列するキャリッジA1,A2とキャリッジB1,B2は、回転機構(図示省略)によりそれぞれのヘッドユニット10A,10Bを回転させ、膜形成領域3r',3g',3b'の副走査方向の配置ピッチに対して、実質的なノズル52の間隔を合致させてもよい。これにより、描画範囲C3の副走査方向の幅が狭くなるものの、より効率的に液滴Dを吐出することができる。
【0123】
(変形例3)上記実施形態1のカラーフィルタ2において、膜形成領域3r,3g,3bの形状とその配置は、これに限定されない。図15(a)〜(c)は、カラーフィルタにおける着色層の配置を示す概略平面図である。上記実施形態では、図15(a)に示すようなストライプ方式の着色層(R,G,B)の配置とした。例えば、図15(b)に示したモザイク方式や、図15(c)に示したデルタ方式の配置においても、上記カラーフィルタ2の製造方法を適用することができる。
また、着色層は3色に限定されず、R,G,B以外の色を加えた多色でもよい。
【0124】
(変形例4)上記実施形態2の有機EL装置600において、有機EL素子としての発光素子部603の構成は、これに限定されない。例えば、発光層形成領域Aには、赤色や白色など単色の発光が得られる発光層Luを形成してもよい。これによれば、有機EL装置600を照明装置として用いることもできる。
また、白色発光させた場合には、封止基板620側にカラーフィルタ2を配置することによって、フルカラー表示が可能なトップエミッション型の有機EL装置600を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図。
【図2】(a)は液滴吐出ヘッドを示す斜視図、(b)はノズルの配置状態を示す平面図。
【図3】ヘッドユニットにおける液滴吐出ヘッドの配置を示す概略平面図。
【図4】液滴吐出装置の制御系を示すブロック図。
【図5】(a)はカラーフィルタの構成を示す概略平面図、(b)は(a)のA−A'線で切った断面図。
【図6】カラーフィルタの製造方法を示すフローチャート。
【図7】(a)〜(d)はカラーフィルタの製造方法を示す概略断面図。
【図8】(a)は実施例1の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図9】実施例1の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図10】(a)は実施例2の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図11】実施例2の液状体の吐出方法を示す概略平面図。
【図12】(a)および(c)は実施例3の液滴吐出装置の構成を示す概略平面図、(b)は膜形成領域の配置を示す概略平面図。
【図13】有機EL装置の要部構造を示す概略断面図。
【図14】(a)〜(f)は有機EL素子の製造方法を示す概略断面図。
【図15】(a)〜(c)はカラーフィルタにおける着色層の配置を示す概略平面図。
【符号の説明】
【0126】
1…基板、2…カラーフィルタ、3…着色層、3r,3g,3b…被吐出部としての膜形成領域、52…ノズル、52c…ノズル群としてのノズル列、100…液滴吐出装置、101…第1移動機構としてのワーク移動機構、104…ステージ、105A,105B…第2移動機構としてのヘッド移動機構、107A,107B…キャリッジ、110…制御部、601…基板としての素子基板、603…有機EL素子としての発光素子部、617…機能層、617R,617G,617B…発光層、A…膜形成領域としての発光層形成領域、A1,A2,A3,A4,A5,A6,A7…キャリッジ、B1,B2,B3…キャリッジ、E1,E2,E3,E4,E5…カラーフィルタ、P…基板としてのマザー基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する液滴吐出装置であって、
前記基板を載置するステージと、
前記ステージを前記主走査方向に移動させる第1移動機構と、
Nは2以上の自然数であって、前記主走査方向に対して直交する副走査方向に前記第1移動機構を跨いで延在する互いに平行なN本の第2移動機構と、
前記ノズル群が前記副走査方向に配列するように搭載された複数のキャリッジと、
前記複数のキャリッジは、N本の前記第2移動機構において前記副走査方向にそれぞれ独立して移動可能な状態に支持され、
前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、前記複数のキャリッジを前記副走査方向にそれぞれ移動させて前記複数のキャリッジの位置決めを行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記キャリッジごとに搭載された前記ノズル群の前記副走査方向の配置が同一であって、
前記制御部は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が1/Nとなるように、異なる前記第2移動機構に支持された少なくとも2つのキャリッジを前記副走査方向に移動させて、前記主走査方向に並列するように位置決め動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
Mは2以上の自然数であって、N本の前記第2移動機構のうちの1つに、M個の前記キャリッジが支持され、
前記制御部は、M個の前記キャリッジに搭載された前記ノズル群によって、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように当該第2移動機構におけるM個の前記キャリッジの位置決めを行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
M個の前記キャリッジが支持される前記第2移動機構は、前記主走査方向において前記主走査を開始する側の最も前記ステージ寄りに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように、N本の前記第2移動機構に前記複数のキャリッジが配分され支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
N本の前記第2移動機構は、前記ステージにおける前記基板の搬入出側に対して反対側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する吐出工程を有する液状体の吐出方法であって、
前記ノズル群は、前記主走査方向に直交する副走査方向に平行して複数配置されると共に、それぞれ独立して前記副走査方向に移動可能であり、
前記吐出工程は、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、複数の前記ノズル群を前記副走査方向にそれぞれ移動させて位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項8】
前記位置決め工程は、前記基板の前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が均等且つ最小となるように、少なくとも2つの前記ノズル群を前記主走査方向に並列させて位置決めすることを特徴とする請求項7に記載の液状体の吐出方法。
【請求項9】
基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項7または8に記載の液状体の吐出方法を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項12】
基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項7または8に記載の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項1】
複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する液滴吐出装置であって、
前記基板を載置するステージと、
前記ステージを前記主走査方向に移動させる第1移動機構と、
Nは2以上の自然数であって、前記主走査方向に対して直交する副走査方向に前記第1移動機構を跨いで延在する互いに平行なN本の第2移動機構と、
前記ノズル群が前記副走査方向に配列するように搭載された複数のキャリッジと、
前記複数のキャリッジは、N本の前記第2移動機構において前記副走査方向にそれぞれ独立して移動可能な状態に支持され、
前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、前記複数のキャリッジを前記副走査方向にそれぞれ移動させて前記複数のキャリッジの位置決めを行わせる制御部と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記キャリッジごとに搭載された前記ノズル群の前記副走査方向の配置が同一であって、
前記制御部は、前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が1/Nとなるように、異なる前記第2移動機構に支持された少なくとも2つのキャリッジを前記副走査方向に移動させて、前記主走査方向に並列するように位置決め動作を行わせることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
Mは2以上の自然数であって、N本の前記第2移動機構のうちの1つに、M個の前記キャリッジが支持され、
前記制御部は、M個の前記キャリッジに搭載された前記ノズル群によって、前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように当該第2移動機構におけるM個の前記キャリッジの位置決めを行わせることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
M個の前記キャリッジが支持される前記第2移動機構は、前記主走査方向において前記主走査を開始する側の最も前記ステージ寄りに配置されていることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記基板の前記副走査方向の長さに亘って前記液状体を吐出可能となるように、N本の前記第2移動機構に前記複数のキャリッジが配分され支持されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
N本の前記第2移動機構は、前記ステージにおける前記基板の搬入出側に対して反対側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
複数のノズルからなるノズル群と基板とを相対移動させる主走査の間に前記ノズル群から液状体を液滴として前記基板の被吐出部に吐出する吐出工程を有する液状体の吐出方法であって、
前記ノズル群は、前記主走査方向に直交する副走査方向に平行して複数配置されると共に、それぞれ独立して前記副走査方向に移動可能であり、
前記吐出工程は、前記被吐出部の前記副走査方向における前記液滴の配置密度に応じて、複数の前記ノズル群を前記副走査方向にそれぞれ移動させて位置決めする位置決め工程を含むことを特徴とする液状体の吐出方法。
【請求項8】
前記位置決め工程は、前記基板の前記被吐出部のうち前記液滴の配置密度が他の被吐出部に比べて高い被吐出部に対して、前記主走査方向から見たときの前記ノズル群のノズル間隔が均等且つ最小となるように、少なくとも2つの前記ノズル群を前記主走査方向に並列させて位置決めすることを特徴とする請求項7に記載の液状体の吐出方法。
【請求項9】
基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項10】
基板上の複数の膜形成領域に複数色の着色層を有するカラーフィルタの製造方法であって、
請求項7または8に記載の液状体の吐出方法を用い、着色層形成材料を含む複数色の液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記複数色の着色層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項11】
基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【請求項12】
基板上の複数の膜形成領域に発光層を含む機能層を有する有機EL素子の製造方法であって、
請求項7または8に記載の液状体の吐出方法を用い、発光層形成材料を含む液状体を前記複数の膜形成領域に吐出する吐出工程と、
吐出された前記液状体を固化して前記発光層を形成する成膜工程と、を備えたことを特徴とする有機EL素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−198857(P2009−198857A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41072(P2008−41072)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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