液滴吐出装置および画像形成装置
【課題】吸引に用いられる部材の変形を防止してノズルからの液滴吸引を確実に行えるようにすることでノズル内でのメニスカスの回復性を向上させると共に、ノズル面に残留する液滴であるインクの除去を確実に行える構成を備えた液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの液滴吐出ヘッド34と、液滴吐出ヘッド34に対応して配置され、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材120と、ヘッド封止部材120内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構81を備え、ヘッド封止部材120は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1からの液滴吸引とは別に、該ノズル面34a1に残留する液滴Lを該ノズル面34a1に沿って移動させる吸引を行う構成101を備えていることを特徴とする。
【解決手段】少なくとも一つの液滴吐出ヘッド34と、液滴吐出ヘッド34に対応して配置され、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材120と、ヘッド封止部材120内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構81を備え、ヘッド封止部材120は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1からの液滴吸引とは別に、該ノズル面34a1に残留する液滴Lを該ノズル面34a1に沿って移動させる吸引を行う構成101を備えていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、液滴吐出部に付着残留している液滴や異物を除去して吐出機能を良好に維持させる維持回復機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの機能を複合させて備えた画像形成装置には、インクなどの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いる構成が知られている。
【0003】
インクなどの液滴を吐出可能な装置では、記録紙等の記録媒体を搬送しながら記録ヘッドから吐出される液滴を付着あるいは浸透させることで画像を形成するようになっている。
なお、記録媒体の対象となるものとして、上述した記録紙だけでなく、糸などの繊維、皮革や金属さらには樹脂やガラス、木材そしてセラミックスなどの液体の付着あるいは浸透が可能な材質がある。
【0004】
液滴吐出装置を備えた画像形成装置では、液滴吐出ヘッドのノズル面に貯留されているインクをメニスカス状に保持した状態から圧力あるいはインクの膜沸騰時に発生する圧力の利用により所定粒サイズの状態で所定方向に吐出させるようになっている。
液滴吐出に用いられる構成としては、ピエゾ素子を用いたピエゾ変換方式や静電引力を利用した静電吸引方式(例えば、特許文献1)、あるいは、バブルジェット(登録商標)型などの熱変換方式などが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ところで、液滴吐出ヘッドでは、ヘッドのノズル面に付着残留したインクが増粘したり、あるいはノズル内への異物の侵入によって所定方向および所定粒サイズでのインクの噴射ができなくなるのを防止し、さらにはインクのメニスカスを破壊しないように維持させるための維持回復動作が行われるようになっている。
【0006】
維持回復動作を行う構成には、液体吐出ヘッドのノズル面を封止できるキャップを用い、キャップ内を負圧化してノズル内からのインクを吸引する構成が提案されている(例えば、特許文献3)。
キャップ内からインクを吸引して吐出ヘッドの清浄化を行う構成としては、吸引動作を行う際にキャリッジを微小移動させてノズル面に接触しているキャップの一部に隙間を形成し、キャップ内に生じる空気の流れに乗じてインク吸収体に吸収されたノズル面からのインクを吸引部に向けて流した後、エラストマー系材料で構成されたワイパーによりノズル表面を拭き取ることでノズル面の清浄化およびノズル内でのインクのメニスカスを復活させる構成が提案されている(例えば、特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示されているように、ノズル内およびノズル面に堆積するインクを吸引する構成では、負圧が強い状態でキャップをノズル面から離すと、急激な圧力変動によりノズル内のメニスカスが壊れてしまう虞がある。
【0008】
これに対し、特許文献4に開示されている構成では、インク吸収体に保持されているインクを流しやすくできるものの、隙間が生じない場合には大量のインクがノズル面に残ったままとなり、これを拭き取るワイパーには大量のインクが付着することになる。このため、ワイパーに付着したインクが長期間放置されてしまうと、粘度が高くなったり固着する虞があり、結果として、ノズル面に対する拭き取り作用が阻害されることになる。つまり、ワイパー表面とノズル表面との接触率が低下してノズル面でのインクの除去効率が低下する。このような現象は、インクのメニスカスにも悪影響を及ぼし、正常な吐出機能が得られなくなり、印字品質を損ねるばかりでなく、ワイパーの保守コストなど、維持回復機構自体への悪影響も生じる。
【0009】
しかも、キャップの一部に生じる隙間は、キャリッジの微小移動によりキャップを傾けることで形成されるが、キャップがノズル面との封止密着性を確保するためにエラストマーなどの柔軟材料を用いていることにより、微小移動が繰り返されると形状復元が困難となり、これにより、封止密着性を継続して維持することが難しくなる。
【0010】
一方、ノズル面の表面に残留するインクはキャップ内に装備されている吸収体に吸収されて吸引されることから、吸引されるまでには増粘あるいは固着してしまう虞があり、吸収機能が良好に維持できなくなる。
さらに、ノズル面の残留インクを除去するためにインクをキャップ内に充満させる必要があり、充満させるには、常時吸引動作が必要となることから、ノズル内から引き出されることでキャップ内に充満したインクは、不必要に多く破棄されることになり、インク消費量が増加する虞がある。
【0011】
ここで、前述した特許文献4にも開示されている、ワイパーによる拭き取りに際しての不具合について図15乃至図18を用いて説明すると次の通りである。
従来、液滴吐出ヘッドに装備されているノズルの維持回復には、図15に示すように、液滴ヘッドAのノズル面A1に密着可能な封止部材としてのキャップBが用いられ、キャップBが液滴ヘッドAのノズル面A1に密着した状態で図示しない吸引機構を介してキャップB内を負圧化することにより、ノズルA2から液滴、いわゆる、インクLや異物を吸引する。
【0012】
ノズルA2からインクを吸引した後、キャップBは液滴ヘッドAのノズル面A1から離間すると、図16に示すように、液滴ヘッド1のノズル面A1には、キャップA内に作用していた負圧によりノズル内から引き出されたインクL’がドーム状あるいはそれらが繋がった状態で大量に残留する。
そこで、図17に示すように、エラストマー系材料により構成されたワイパーCによりノズル面A2を拭き取ることで残留したインクを除去することになるが、図18に示すように、ワイパーCにより拭き取られたインクは、ワイパーCに付着したままとなると、増粘あるいは固着してしまい、次に拭き取りを行う場合に拭き取りムラなどの弊害を起こす。
【0013】
このように、特許文献4に開示されている構成では、液滴である、ノズル内でのインクのメニスカスを回復させるためにインクを吸引することとノズル面に残留するインクの除去することを同時に達成する際に、拭き取り動作による不具合および吸引の際の不具合があることになる。
【0014】
本発明の目的は、上記従来の液滴吐出装置における問題に鑑み、吸引に用いられる部材の変形を防止してノズルからの液滴吸引を確実に行えるようにすることでノズル内でのメニスカスの回復性を向上させると共に、ノズル面に残留する液滴であるインクの除去を確実に行える構成を備えた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)対象物に対し液滴を吐出して描画を行う液滴吐出装置であって、
少なくとも一つの液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに対応して配置され、該液滴吐出ヘッド面を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材と、
前記ヘッド封止部材内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構を備え、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッドのノズル面からの液滴吸引とは別に、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に残留する液滴を該ノズル面に沿って移動させる吸引を行う構成を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0016】
(2)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材には、前記液滴吐出ヘッドからの液滴吐出方向に液滴を吸引する吸引部と、前記液滴吐出方向と直角な方向に相当する液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って外気を取り込む外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0017】
(3)(1)または(2)に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出面に沿って液滴を移動させるための外気連通部は、少なくとも前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル面中心を境にして対向する位置に設けられたスリットが用いられることを特徴とする液滴吐出装置。
【0018】
(4)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、該パッドには、少なくとも前記液滴吐出ヘッドのノズル面の中心を挟んで対向する位置に前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って移動する外気を取り込み可能な外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0019】
(5)(4)に記載の液滴吐出装置において、
前記キャップとパッドとは同一中心を基準とする二重構造に構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0020】
(6)(5)に記載の液滴吐出装置において、
前記パッドが前記キャップの外側の外周部に位置させていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0021】
(7)(4)乃至(6)のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記パッドは、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能な多孔質部材で構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0022】
(8)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズル面から液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、
前記キャップとパッドとは、前記液滴の吸引開始時期を変更可能であることを特徴とする液滴吐出装置。
【0023】
(9)(1)乃至(8)のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる際の吸引力は、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引力よりも弱くされていることを特徴とする液滴吐出装置。
(10)(1)乃至(9)のうちの一つに記載の液滴吐出装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ヘッド封止部材が、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引と前記液滴吐出ヘッド面に残留する液滴を該液滴吐出ヘッド面に沿って移動させる吸引とを独立して行うようになっており、特に、ヘッド封止部材には液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吐出方向に沿って吸引する方向とは別に液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる吸引が行える構成を備えていることにより、ノズルからの液滴吸引とは別に、液滴ヘッド面に残留する液滴を対象とした液滴の除去が可能となる。これにより、ノズル面に残留した液滴による周辺部への汚染や拭き取り負荷の軽減が実現できる。しかも、液滴ヘッドのノズル面からの液滴の移動は、吸引動作、換言すれば、空気を利用した移動であるので、残留する液滴の量に関係なく、吸引することができる。
【0025】
さらに、本発明においては、ノズルからの液滴吸引とは別にノズル面に沿って液滴を移動させることで吸引する動作を独立させているので、ノズルからの吸引と同時にノズル面からの液滴を除去する場合と違って、ノズル面を含めた封止部材内への液滴充満を必要としないで済む。これにより、ノズル面からの液滴除去に際してヘッド封止部材内に導入される液滴が不必要に多く破棄されてしまうことによる液滴消費を抑えることが可能となる。
ヘッド封止部材は、封止のための移動が、液滴ヘッド面への密着動作のみで済むので、液滴ヘッドを微小移動させるような動作を必要としない。これにより、微小移動による封止部材の引き摺り等を防止できるので、引き摺りによる一部変形による封止機能の低下を防げると共に、一部変形による液垂れや液滴飛散による周辺部への汚染やノズルからの吸引不良が確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による液滴吐出装置を用いる画像形成装置の外観図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の内部構成を説明するための側面視的模式図である。
【図3】図2に示した内部構成の説明するための平面視的模式図である。
【図4】図1に示した液滴吐出機構に用いられる維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4に示した維持回復機構の作用を説明するための模式図である。
【図6】図5に示した維持回復機構の要部平面図である。
【図7】図6に示した要部構成の一部変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の別実施例による維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図9】図8に示した維持回復機構における作用の一態様を説明するためのお式図である。
【図10】図8に示した維持回復機構における作用の他の態様を説明するための模式図である。
【図11】図8に示した維持回復機構に用いられる吸引構造を説明するための模式図である。
【図12】図8に示した維持回復機構に関する要部変形例を説明するための模式図である。
【図13】図12に示した要部変形例での作用の一態様を説明するための模式図である。
【図14】本発明による液滴吐出装置における維持回復手順を説明するためのフローチャートである。
【図15】従来の維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図16】図15に示した構成での作用の一態様を説明するための模式図である。
【図17】図16に示した態様後に実行される拭き取りのための構成を説明するための模式図である。
【図18】図17に示した構成を用いて行われる拭き取り後の不具合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面により本発明を実施するための形態を実施例により説明する。
図1は本発明による液滴吐出装置を用いる画像形成装置の外観図である。
図1に示されている画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0028】
カートリッジ装填部4には、色の異なる色材であるインク、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数のインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
【0029】
次に、この液滴吐出装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面視的模式図、図3は同じく要部構成を示す平面視的模式図である。
図3において、左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32(図2参照)とによりキャリッジ33が主走査方向に摺動自在に保持されており、キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査するようになっている。
【0030】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液滴吐出ヘッド34a、34b(区別しないときは「液滴吐出ヘッド34」という。)が設けられている。
液滴吐出ヘッド34a,34bは、複数のノズルからなるノズル列が主走査方向と直交する副走査方向に配列されており、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0031】
図3において、液滴吐出ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、液滴吐出ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、液滴吐出ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出することが可能であるし、2つのノズルから同色のインク滴を吐出することもできる。
【0032】
液滴吐出ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0033】
図2、図3においてキャリッジ33には、液滴吐出ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための液体収容容器として用いられるヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)が搭載されている。
ヘッドタンク35には、図3に示すように、各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられている。また、図3において符号22は、後述する維持回復機構81において液滴吐出ヘッド34側から回収されたインクを破棄する際に用いられる流路である。
【0034】
一方、図2に示すように、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0035】
給紙部から給紙された用紙42を液滴吐出ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、分離爪を兼用する搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して液滴吐出ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0036】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2におけるベルト搬送方向に周回移動する。
【0037】
液滴吐出ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪47と、排紙ローラ及び排紙コロ(いずれも図示されず)とを備え、排紙ローラの下方に排紙トレイ3を備えている。
【0038】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0039】
図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、後述する本実施例の特徴部である維持回復機構81が設けられている。
【0040】
維持回復機構81は、液滴吐出ヘッド34(以下、液滴ヘッドともいう)からのインク吐出動作を安定化させる状態にノズル面を維持するために用いられる機構である。
通常、維持回復機構81には、図3に示すように、液滴吐出ヘッド34のヘッド面に相当するノズル面に密着して封止可能な部材であるキャップ部材82a,82bと、ノズル面をワイピング(拭き取る)ためのブレード部材83と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などが備えられている。
【0041】
キャップ部材82a、82bは、弾性体材料により構成されて液滴吐出ヘッド34に配置されているノズルの外周を囲繞してノズル面を封止できる位置に変位することができ、この場合の変位方向は、ノズルからのインク吐出方向に沿った方向である。
【0042】
以上のような構成を対象として、本実施例の特徴について説明する。
本実施例では、ノズル内からのインクの吸引とは別に、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に沿ったインクの移動を促してノズル面34a1に残留するインクを除去する動作を独立して行うようにした点にある。
図4において、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1には、キャップ部材に代えてキャップ部材と同様な弾性材料を用いて同機能、つまり、ノズル面34a1に密着して内部を封止可能なパッド100が、ノズルNからのインク吐出方向に沿ってノズル面34a1に対して接離可能に設けられている。
【0043】
パッド100は、ノズル面34a1でのノズルNが配置されている箇所の周囲を囲繞する状態でノズル面34a1に密着することができる弾性体材料で構成されており、中心部には、図示しない真空ポンプに連通する吸引口100Aが設けられている。
【0044】
パッド100には、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着する縁部に外気連通部101が設けられており、この外気連通部としてはスリット101Aが用いられている。
【0045】
以上のような構成において、パッド100を液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着させて内部を封止した状態でパッド100内が減圧されると、図5に示すように、外気連通部101のスリット101Aを介して外部から空気が進入する。このときの進入方向は、ノズル面34a1に沿った方向である。
パッド100内に進入した空気は、パッド100内で吸引口100Aでの吸引方向に順じで、進行方向を吸引口100A側に変化させる。図5において矢印P1およびP2は、パッド100内での空気の流れを示しており、矢印P3で示す方向は図示しない真空ポンプにより生起される吸引方向である。
【0046】
このようなパッド100内での空気の流れを利用することにより、ノズル面34a1に残留するインク(便宜上、図4において符号Lで示す)は、ノズル面4a1の表面に沿って押し動かされやすくなり、さらには、吸引口100Aからの吸引負圧の影響を受けることで吸引口100Aに向け移動することになる。ノズル面34a1でのインクの移動を促進させるために、ノズル面34a1を撥水処理してインクとのぬれ角を小さくしておくことが吸引時間短縮にとって好ましい。
【0047】
この構成においては、パッド100をインクの吐出方向に変位させてノズル面34a1に密着させた状態を維持するだけで、ノズル面34a1でのインクの移動、つまり、吸引口100Aに向けた移動を行わせることができる。これにより、吐出ヘッド34側での微小移動およびこの移動の繰り返し作業による間隙形成を要しないでノズル面34a1からの残留インクが除去されることになる。従って、微小移動の繰り返しなどにより封止部材の一部変形などが一切起こることがないので、ノズル面からの残留インクの移動による除去を長期間に亘って保全することができる。
【0048】
パッド100に設けられているスリット101Aは、図6に示すように、パッドの周囲に沿って放射状に複数形成したもの、あるいは、図7に示すように、少なくともノズル面でのノズル(便宜上、図6,7において符号Nで示す部分)の並列方向(副走査方向)での中心を基準として対向する位置に設けられており、いずれの場合にも、パッド100内での負圧化傾向によって外部から進入する空気の流れがノズルNの並列方向で一様に作用することが望ましい。
【0049】
次に本発明の別実施例について説明する。
図8乃至図11に示す実施例は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1からインクを吸引する構成と液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に沿ってインクを移動させて吸引する構成とを備えている点を特徴としている。
【0050】
図8において、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1には、ヘッド封止部材として、ノズル内からインクを吸引するキャップ部材110と、これの外周を囲繞する状態で配置されたパッド120とが二重構造となるように設けられている。
キャップ部材110は、通常、この種の維持回復機構に用いられる部材であり、図9に示すように、ノズル面34a1に密着した状態で内部を減圧されることによりノズル内からインクや異物を吸引(図9中、符号L’で示す状態)できる部材である。
これに対してパッド120は、キャップ部材110とは独立して液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1への接離動作が行える部材であり、図10に示すように、キャップ部材110とは別に液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1を封止して減圧空間を構成することができる部材である。
キャップ部材110およびパッド120はいずれも共通する吸引口(便宜上、符号110Aで示す)を備えている。
【0051】
パッド120は、キャップ部材110によるノズルNからのインクや異物の吸引動作とは別に、ノズル面34a1に残留するインク(図10において符号L’で示す)をノズル面34a1から吸引して除去する機能を有している。
このための構成として、パッド120には、図4に示した場合と同様に、外気連通部としてのスリット120Aが設けられている。
【0052】
本実施例は以上のような構成であるから、ノズルNのリフレッシュ作業を行う場合には、図9に示すように、キャップ部材110が液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着してノズルNからインクの吸引を行う。
ノズル面34a1に残留するインクを除去する場合には、図10に示すように、パッド120をノズル面34a1に密着させた状態で吸引を行う。これにより、ノズル面34a1に残留しているインクL’は、外部から取り込まれた空気の動きに順じてノズル面34a1に沿って移動した後、吸引口110Aからの負圧作用方向に応じて吸引口110Aに向け吸引される。
【0053】
本実施例では、パッド120による吸引力が、キャップ部材110を用いた吸引力よりも弱く設定されている。これにより、ノズル内のインクが吸引されるのを防止してノズル内でのインクのメニスカスが破壊されるのを防止するようになっている。
このような吸引力設定は、図11に示す構成が用いられる。
図11において吸引口110Aでそれぞれ示す部分)には、3方弁200を介して、図示しない回転駆動源に連動するチュービングポンプ201および真空ポンプ202が接続されている。
【0054】
三方弁200の態位設定、つまり、方向切替と各ポンプの駆動力は、図示しない制御部において制御されるようになっている。制御の内訳は、各ヘッドのノズル面34a1に対応するキャップ110、パッド120がノズル面34a1に密着される時期の設定、キャップ部材110内での設定圧力とパッド120内での設定圧力との関係が挙げられる。
【0055】
つまり、キャップ部材110は、液滴吐出ヘッド34のノズルに異常が生じた場合を基準として稼働するようになっており、また、パッド120は、キャップ部材を用いたノズルからのインクの吸引が行われた後にノズル面34a1へのインクの垂れなどが原因するノズル面の汚染を判断することで稼働状態で設定され、キャップ部材110によるインクの吸引が行われた後にパッド120がノズル面に密着した際には、その吸引力をキャップ110による吸引時よりも弱くする設定が行われる。
【0056】
次に本発明の他の実施例について説明する。
本実施例は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着してノズル面34a1に残留しているインクを回収する構成部材として、ノズル面34a1に密着可能な多孔質部材130を用い、キャップ部材110との吸引開始時期を変更できる点を特徴としている。以下、この構成について図12,図13において説明するが、同図において図8乃至10に示したものと同じ部材に関しては同符号により示すことを前置きしておく。
【0057】
図12において、キャップ部材110は、ノズル面34a1のノズルNの専有面積に対応するサイズを有する多孔質部材130の外周を囲繞する状態で配置されている。
多孔質部材130は、ノズル面34a1に密着することでノズル面34a1に残留しているインクを吸い取ることができる機能とノズルから吸引されたインクを透過させる機能とを有している。
多孔質部材130は、内部に多数の空間部を有しているので、この空間をインクの捕集空間として用いることができる。これにより比較的粘度の低いインクであっても、確実に吸い取ることができるので、ノズル面34a1に残留するインクの回収が確実に行えることになり、ノズル面43a1に残留するインクによる飛沫汚染を防ぐことができる。
【0058】
キャップ部材110および多孔質部材130は、インクの吐出方向に進退可能なシリンダなどのアクチュエータ140,150にそれぞれ一体化されており、これらアクチュエータ140,150は、インクの吸引開始時期を変更できる動作態位が設定できるようになっている。
つまり、ノズル面34a1に残留するインクを吸引する際には、図12に示すように、多孔質部材130のみをノズル面34a1に密着させる態位が設定され、ノズルNからのインクを吸引する際には、図13に示すように、キャップ部材110のみをノズル面34a1に向け移動させて密着させる態位が設定されている。
【0059】
多孔質部材130のみがノズル面34a1に密着した場合には、図12に示すように、ノズル面34a1に残留しているインクが多孔質部材13に吸い取られ、吸引されるようになる。また、キャップ部材110のみがノズル面34a1に密着した場合には、図13に示すように、ノズルNからインクLが多孔質部材130に向けて吸引され、吸引されたインクは多孔質部材130内を透過されて外部に排出される。
【0060】
以上のような構成を対象として維持回復手順を説明すると、図14に示すフローチャートの通りである。なお、図14では、多孔質部材130をパッドと表現していることを前置きしておく。
図14において、図示しない制御部に接続されている検知部から吐出しないノズルの存否が判断され(S1)、吐出しないノズルがある場合には、キャップ部材用のアクチュエータ140(図12参照)が上昇駆動されてキャップ部材110がノズル面34a1に密着されて吸引が開始される(S2)。吸引されたインクは多孔質部材130内を透過して外部に移動する。この状態は図13に示す状態に相当している。
一方、キャップ部材110を用いたノズルNからのインクの吸引が行われると、キャップ部材110がノズル面34a1から離されるが、このとき、ノズル面34a1にはドーム状にインクが残留する。このため、キャップ部材110がノズル面34a1から離された後には、ノズル面の汚れがあるかどうかに関係なくワイパー83(図3参照)を用いてノズル面34a1が拭き取られる(S3,S6)。
【0061】
ステップS3’に示す判別は、強制的な拭き取りを行わない場合を対象とするものであり、この場合のノズル面が汚れていると判断する内容は、上述した強制的な拭き取りを実施することを狙いとし、またノズル面が汚れていないと判断する内容は、拭き取りではなく、ノズル面34a1に残留するインクを吸引により除去する作業を実行するための項目に相当している。
ステップS3’において、ノズル面34a1の汚れがあると判断されると、多孔質部材13が相当しているパッド用のアクチュエータ150が上昇駆動されて多孔質部材130がノズル面34a1に密着されてインクを吸引する(S4)。
ステップS4において多孔質部材130がノズル面34a1に密着した状態で吸引動作が行われると、ノズル面34a1に残留しているインクは多孔質部材130に吸い取られ、さらに吸引されて外部に移動する。この状態は図12に示す状態に相当している。
【0062】
一方、ノズル面34a1に残留しているインクが吸引された場合およびステップS1において吐出しないノズルが存在しないと判断された場合(S3)には、ワイパー83による拭き取りが必要かどうかが判断され、その結果に基づき、必要に応じてワイパー83が用いられる(S5,S7)。ステップS5の判断は、例えば、所定の印字回数に対応する吐出回数などを参考に、ノズル面34a1の清浄化を図る上で実行される項目である。
また、吐出しないノズルが存在せず、また、ノズル面の汚れがないと判断した場合には、吐出動作が継続される(S7)。
【0063】
以上、説明した実施例においては、ノズル面34a1に残留するインクは、ノズルからのインクの吸引とは独立して外気による強制的な流れを生成されることにより吸引が可能となり、さらに外気取り入れの構成において歪み変形などを起こすことのない構成を用いているので、ノズル内でのインクのメニスカスの確保およびノズル面に残留するインクにより飛沫汚染を確実に防止して印字品質を向上させることが可能となる。
【0064】
さらに、本実施例においては、ノズル面34a1に残留するインクを吸引する際にパッドあるいは多孔質部材がノズル面に密着する方向、換言すれば、インクの吐出方向に移動するだけであるので、ノズル面からの引き摺り等が生じないので、一部変形による密着性の低下を確実に防止することができ、さらには引き摺り動作のための機構などを要しない分、簡単な構成による印字品質の向上が望める。
【0065】
また、ノズルからのインクの吸引構造とノズル面に残留するインクの吸引構造とが二重構造によって得られるので、異なる構成であっても構造同士を纏めることができるので、装置の大型化を防止することができる。
しかも、ノズル面に残留するインクの吸引力をノズルからインクを吸引する際の吸引力よりも弱くしているので、ノズル内でのメニスカスを破壊しない状態に維持できるので、メニスカスが破壊された際に発生するインクの漏れ出しなどによるノズル面へのインク付着を防止してノズル面での残留インクの存在をなくすことができる。ノズル内でのインクのメニスカスを破壊しない状態を得る構成として、ノズル内からのインクの吸引動作とノズル面に残留するインクの吸引動作とを開始する時期や速度を変更するようになっていることによっても実現できる。
【0066】
さらには、ノズル内からのインクの吸引およびノズル面に残留するインクの吸引動作をインクの特性や回復時間の設定などに応じて迅速化することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置の装置本体
33 キャリッジ
34 液滴吐出ヘッド
34a1 ノズル面
100、120 パッド
101 外気連通部
101A、120A スリット
110 キャップ
110A 吸引口
120 パッド
130 多孔質部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2009−45870号公報
【特許文献2】特開2007−290243号公報
【特許文献3】特許第4149821号
【特許文献4】特開平06−126947号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、液滴吐出部に付着残留している液滴や異物を除去して吐出機能を良好に維持させる維持回復機構に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、プリンタ、ファクシミリ、複写装置、これらの機能を複合させて備えた画像形成装置には、インクなどの液滴を吐出する液滴吐出ヘッドで構成した記録ヘッドを備えた液滴吐出装置を用いる構成が知られている。
【0003】
インクなどの液滴を吐出可能な装置では、記録紙等の記録媒体を搬送しながら記録ヘッドから吐出される液滴を付着あるいは浸透させることで画像を形成するようになっている。
なお、記録媒体の対象となるものとして、上述した記録紙だけでなく、糸などの繊維、皮革や金属さらには樹脂やガラス、木材そしてセラミックスなどの液体の付着あるいは浸透が可能な材質がある。
【0004】
液滴吐出装置を備えた画像形成装置では、液滴吐出ヘッドのノズル面に貯留されているインクをメニスカス状に保持した状態から圧力あるいはインクの膜沸騰時に発生する圧力の利用により所定粒サイズの状態で所定方向に吐出させるようになっている。
液滴吐出に用いられる構成としては、ピエゾ素子を用いたピエゾ変換方式や静電引力を利用した静電吸引方式(例えば、特許文献1)、あるいは、バブルジェット(登録商標)型などの熱変換方式などが提案されている(例えば、特許文献2)。
【0005】
ところで、液滴吐出ヘッドでは、ヘッドのノズル面に付着残留したインクが増粘したり、あるいはノズル内への異物の侵入によって所定方向および所定粒サイズでのインクの噴射ができなくなるのを防止し、さらにはインクのメニスカスを破壊しないように維持させるための維持回復動作が行われるようになっている。
【0006】
維持回復動作を行う構成には、液体吐出ヘッドのノズル面を封止できるキャップを用い、キャップ内を負圧化してノズル内からのインクを吸引する構成が提案されている(例えば、特許文献3)。
キャップ内からインクを吸引して吐出ヘッドの清浄化を行う構成としては、吸引動作を行う際にキャリッジを微小移動させてノズル面に接触しているキャップの一部に隙間を形成し、キャップ内に生じる空気の流れに乗じてインク吸収体に吸収されたノズル面からのインクを吸引部に向けて流した後、エラストマー系材料で構成されたワイパーによりノズル表面を拭き取ることでノズル面の清浄化およびノズル内でのインクのメニスカスを復活させる構成が提案されている(例えば、特許文献4)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3に開示されているように、ノズル内およびノズル面に堆積するインクを吸引する構成では、負圧が強い状態でキャップをノズル面から離すと、急激な圧力変動によりノズル内のメニスカスが壊れてしまう虞がある。
【0008】
これに対し、特許文献4に開示されている構成では、インク吸収体に保持されているインクを流しやすくできるものの、隙間が生じない場合には大量のインクがノズル面に残ったままとなり、これを拭き取るワイパーには大量のインクが付着することになる。このため、ワイパーに付着したインクが長期間放置されてしまうと、粘度が高くなったり固着する虞があり、結果として、ノズル面に対する拭き取り作用が阻害されることになる。つまり、ワイパー表面とノズル表面との接触率が低下してノズル面でのインクの除去効率が低下する。このような現象は、インクのメニスカスにも悪影響を及ぼし、正常な吐出機能が得られなくなり、印字品質を損ねるばかりでなく、ワイパーの保守コストなど、維持回復機構自体への悪影響も生じる。
【0009】
しかも、キャップの一部に生じる隙間は、キャリッジの微小移動によりキャップを傾けることで形成されるが、キャップがノズル面との封止密着性を確保するためにエラストマーなどの柔軟材料を用いていることにより、微小移動が繰り返されると形状復元が困難となり、これにより、封止密着性を継続して維持することが難しくなる。
【0010】
一方、ノズル面の表面に残留するインクはキャップ内に装備されている吸収体に吸収されて吸引されることから、吸引されるまでには増粘あるいは固着してしまう虞があり、吸収機能が良好に維持できなくなる。
さらに、ノズル面の残留インクを除去するためにインクをキャップ内に充満させる必要があり、充満させるには、常時吸引動作が必要となることから、ノズル内から引き出されることでキャップ内に充満したインクは、不必要に多く破棄されることになり、インク消費量が増加する虞がある。
【0011】
ここで、前述した特許文献4にも開示されている、ワイパーによる拭き取りに際しての不具合について図15乃至図18を用いて説明すると次の通りである。
従来、液滴吐出ヘッドに装備されているノズルの維持回復には、図15に示すように、液滴ヘッドAのノズル面A1に密着可能な封止部材としてのキャップBが用いられ、キャップBが液滴ヘッドAのノズル面A1に密着した状態で図示しない吸引機構を介してキャップB内を負圧化することにより、ノズルA2から液滴、いわゆる、インクLや異物を吸引する。
【0012】
ノズルA2からインクを吸引した後、キャップBは液滴ヘッドAのノズル面A1から離間すると、図16に示すように、液滴ヘッド1のノズル面A1には、キャップA内に作用していた負圧によりノズル内から引き出されたインクL’がドーム状あるいはそれらが繋がった状態で大量に残留する。
そこで、図17に示すように、エラストマー系材料により構成されたワイパーCによりノズル面A2を拭き取ることで残留したインクを除去することになるが、図18に示すように、ワイパーCにより拭き取られたインクは、ワイパーCに付着したままとなると、増粘あるいは固着してしまい、次に拭き取りを行う場合に拭き取りムラなどの弊害を起こす。
【0013】
このように、特許文献4に開示されている構成では、液滴である、ノズル内でのインクのメニスカスを回復させるためにインクを吸引することとノズル面に残留するインクの除去することを同時に達成する際に、拭き取り動作による不具合および吸引の際の不具合があることになる。
【0014】
本発明の目的は、上記従来の液滴吐出装置における問題に鑑み、吸引に用いられる部材の変形を防止してノズルからの液滴吸引を確実に行えるようにすることでノズル内でのメニスカスの回復性を向上させると共に、ノズル面に残留する液滴であるインクの除去を確実に行える構成を備えた液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
(1)対象物に対し液滴を吐出して描画を行う液滴吐出装置であって、
少なくとも一つの液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに対応して配置され、該液滴吐出ヘッド面を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材と、
前記ヘッド封止部材内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構を備え、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッドのノズル面からの液滴吸引とは別に、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に残留する液滴を該ノズル面に沿って移動させる吸引を行う構成を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0016】
(2)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材には、前記液滴吐出ヘッドからの液滴吐出方向に液滴を吸引する吸引部と、前記液滴吐出方向と直角な方向に相当する液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って外気を取り込む外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0017】
(3)(1)または(2)に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出面に沿って液滴を移動させるための外気連通部は、少なくとも前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル面中心を境にして対向する位置に設けられたスリットが用いられることを特徴とする液滴吐出装置。
【0018】
(4)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、該パッドには、少なくとも前記液滴吐出ヘッドのノズル面の中心を挟んで対向する位置に前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って移動する外気を取り込み可能な外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0019】
(5)(4)に記載の液滴吐出装置において、
前記キャップとパッドとは同一中心を基準とする二重構造に構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0020】
(6)(5)に記載の液滴吐出装置において、
前記パッドが前記キャップの外側の外周部に位置させていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0021】
(7)(4)乃至(6)のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記パッドは、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能な多孔質部材で構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【0022】
(8)(1)に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズル面から液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、
前記キャップとパッドとは、前記液滴の吸引開始時期を変更可能であることを特徴とする液滴吐出装置。
【0023】
(9)(1)乃至(8)のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる際の吸引力は、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引力よりも弱くされていることを特徴とする液滴吐出装置。
(10)(1)乃至(9)のうちの一つに記載の液滴吐出装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ヘッド封止部材が、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引と前記液滴吐出ヘッド面に残留する液滴を該液滴吐出ヘッド面に沿って移動させる吸引とを独立して行うようになっており、特に、ヘッド封止部材には液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吐出方向に沿って吸引する方向とは別に液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる吸引が行える構成を備えていることにより、ノズルからの液滴吸引とは別に、液滴ヘッド面に残留する液滴を対象とした液滴の除去が可能となる。これにより、ノズル面に残留した液滴による周辺部への汚染や拭き取り負荷の軽減が実現できる。しかも、液滴ヘッドのノズル面からの液滴の移動は、吸引動作、換言すれば、空気を利用した移動であるので、残留する液滴の量に関係なく、吸引することができる。
【0025】
さらに、本発明においては、ノズルからの液滴吸引とは別にノズル面に沿って液滴を移動させることで吸引する動作を独立させているので、ノズルからの吸引と同時にノズル面からの液滴を除去する場合と違って、ノズル面を含めた封止部材内への液滴充満を必要としないで済む。これにより、ノズル面からの液滴除去に際してヘッド封止部材内に導入される液滴が不必要に多く破棄されてしまうことによる液滴消費を抑えることが可能となる。
ヘッド封止部材は、封止のための移動が、液滴ヘッド面への密着動作のみで済むので、液滴ヘッドを微小移動させるような動作を必要としない。これにより、微小移動による封止部材の引き摺り等を防止できるので、引き摺りによる一部変形による封止機能の低下を防げると共に、一部変形による液垂れや液滴飛散による周辺部への汚染やノズルからの吸引不良が確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による液滴吐出装置を用いる画像形成装置の外観図である。
【図2】図1に示した画像形成装置の内部構成を説明するための側面視的模式図である。
【図3】図2に示した内部構成の説明するための平面視的模式図である。
【図4】図1に示した液滴吐出機構に用いられる維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図5】図4に示した維持回復機構の作用を説明するための模式図である。
【図6】図5に示した維持回復機構の要部平面図である。
【図7】図6に示した要部構成の一部変形例を示す平面図である。
【図8】本発明の別実施例による維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図9】図8に示した維持回復機構における作用の一態様を説明するためのお式図である。
【図10】図8に示した維持回復機構における作用の他の態様を説明するための模式図である。
【図11】図8に示した維持回復機構に用いられる吸引構造を説明するための模式図である。
【図12】図8に示した維持回復機構に関する要部変形例を説明するための模式図である。
【図13】図12に示した要部変形例での作用の一態様を説明するための模式図である。
【図14】本発明による液滴吐出装置における維持回復手順を説明するためのフローチャートである。
【図15】従来の維持回復機構の構成を説明するための模式図である。
【図16】図15に示した構成での作用の一態様を説明するための模式図である。
【図17】図16に示した態様後に実行される拭き取りのための構成を説明するための模式図である。
【図18】図17に示した構成を用いて行われる拭き取り後の不具合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面により本発明を実施するための形態を実施例により説明する。
図1は本発明による液滴吐出装置を用いる画像形成装置の外観図である。
図1に示されている画像形成装置は、装置本体1と、装置本体1に装着された用紙を装填するための給紙トレイ2と、装置本体1に着脱自在に装着されて画像が記録(形成)された用紙をストックするための排紙トレイ3とを備えている。
さらに、装置本体1の前面の一端部側(給排紙トレイ部の側方)には、前面から装置本体1の前方側に突き出し、上面よりも低くなったインクカートリッジを装填するためのカートリッジ装填部4を有し、このカートリッジ装填部4の上面は操作ボタンや表示器などを設ける操作/表示部5としている。
【0028】
カートリッジ装填部4には、色の異なる色材であるインク、例えば黒(K)インク、シアン(C)インク、マゼンタ(M)インク、イエロー(Y)インクをそれぞれ収容した複数のインクカートリッジ10k、10c、10m、10y(色を区別しないときは「インクカートリッジ10」という。)を、装置本体1の前面側から後方側に向って挿入して装填可能とし、このカートリッジ装填部4の前面側には、インクカートリッジ10を着脱するときに開く前カバー(カートリッジカバー)6を開閉可能に設けている。
【0029】
次に、この液滴吐出装置の機構部について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は同機構部の概要を示す側面視的模式図、図3は同じく要部構成を示す平面視的模式図である。
図3において、左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材であるガイドロッド31とステー32(図2参照)とによりキャリッジ33が主走査方向に摺動自在に保持されており、キャリッジ33は、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図3で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査するようになっている。
【0030】
キャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液滴吐出ヘッド34a、34b(区別しないときは「液滴吐出ヘッド34」という。)が設けられている。
液滴吐出ヘッド34a,34bは、複数のノズルからなるノズル列が主走査方向と直交する副走査方向に配列されており、インク滴吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0031】
図3において、液滴吐出ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、液滴吐出ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、液滴吐出ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出することが可能であるし、2つのノズルから同色のインク滴を吐出することもできる。
【0032】
液滴吐出ヘッド34を構成するインクジェットヘッドとしては、圧電素子などの圧電アクチュエータ、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどを、液滴を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段として備えたものなどを使用できる。
【0033】
図2、図3においてキャリッジ33には、液滴吐出ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための液体収容容器として用いられるヘッドタンク35a、35b(区別しないときは「ヘッドタンク35」という。)が搭載されている。
ヘッドタンク35には、図3に示すように、各色のインク供給チューブ36を介して、前述したように、カートリッジ装填部4に装着された各色のインクカートリッジ10から各色のインクが補充供給される。なお、このカートリッジ装填部4にはインクカートリッジ10内のインクを送液するための供給ポンプユニット24が設けられている。また、図3において符号22は、後述する維持回復機構81において液滴吐出ヘッド34側から回収されたインクを破棄する際に用いられる流路である。
【0034】
一方、図2に示すように、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
【0035】
給紙部から給紙された用紙42を液滴吐出ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、分離爪を兼用する搬送ガイド部材47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して液滴吐出ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
【0036】
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図2におけるベルト搬送方向に周回移動する。
【0037】
液滴吐出ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪47と、排紙ローラ及び排紙コロ(いずれも図示されず)とを備え、排紙ローラの下方に排紙トレイ3を備えている。
【0038】
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱自在に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
【0039】
図3に示すように、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、後述する本実施例の特徴部である維持回復機構81が設けられている。
【0040】
維持回復機構81は、液滴吐出ヘッド34(以下、液滴ヘッドともいう)からのインク吐出動作を安定化させる状態にノズル面を維持するために用いられる機構である。
通常、維持回復機構81には、図3に示すように、液滴吐出ヘッド34のヘッド面に相当するノズル面に密着して封止可能な部材であるキャップ部材82a,82bと、ノズル面をワイピング(拭き取る)ためのブレード部材83と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84などが備えられている。
【0041】
キャップ部材82a、82bは、弾性体材料により構成されて液滴吐出ヘッド34に配置されているノズルの外周を囲繞してノズル面を封止できる位置に変位することができ、この場合の変位方向は、ノズルからのインク吐出方向に沿った方向である。
【0042】
以上のような構成を対象として、本実施例の特徴について説明する。
本実施例では、ノズル内からのインクの吸引とは別に、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に沿ったインクの移動を促してノズル面34a1に残留するインクを除去する動作を独立して行うようにした点にある。
図4において、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1には、キャップ部材に代えてキャップ部材と同様な弾性材料を用いて同機能、つまり、ノズル面34a1に密着して内部を封止可能なパッド100が、ノズルNからのインク吐出方向に沿ってノズル面34a1に対して接離可能に設けられている。
【0043】
パッド100は、ノズル面34a1でのノズルNが配置されている箇所の周囲を囲繞する状態でノズル面34a1に密着することができる弾性体材料で構成されており、中心部には、図示しない真空ポンプに連通する吸引口100Aが設けられている。
【0044】
パッド100には、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着する縁部に外気連通部101が設けられており、この外気連通部としてはスリット101Aが用いられている。
【0045】
以上のような構成において、パッド100を液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着させて内部を封止した状態でパッド100内が減圧されると、図5に示すように、外気連通部101のスリット101Aを介して外部から空気が進入する。このときの進入方向は、ノズル面34a1に沿った方向である。
パッド100内に進入した空気は、パッド100内で吸引口100Aでの吸引方向に順じで、進行方向を吸引口100A側に変化させる。図5において矢印P1およびP2は、パッド100内での空気の流れを示しており、矢印P3で示す方向は図示しない真空ポンプにより生起される吸引方向である。
【0046】
このようなパッド100内での空気の流れを利用することにより、ノズル面34a1に残留するインク(便宜上、図4において符号Lで示す)は、ノズル面4a1の表面に沿って押し動かされやすくなり、さらには、吸引口100Aからの吸引負圧の影響を受けることで吸引口100Aに向け移動することになる。ノズル面34a1でのインクの移動を促進させるために、ノズル面34a1を撥水処理してインクとのぬれ角を小さくしておくことが吸引時間短縮にとって好ましい。
【0047】
この構成においては、パッド100をインクの吐出方向に変位させてノズル面34a1に密着させた状態を維持するだけで、ノズル面34a1でのインクの移動、つまり、吸引口100Aに向けた移動を行わせることができる。これにより、吐出ヘッド34側での微小移動およびこの移動の繰り返し作業による間隙形成を要しないでノズル面34a1からの残留インクが除去されることになる。従って、微小移動の繰り返しなどにより封止部材の一部変形などが一切起こることがないので、ノズル面からの残留インクの移動による除去を長期間に亘って保全することができる。
【0048】
パッド100に設けられているスリット101Aは、図6に示すように、パッドの周囲に沿って放射状に複数形成したもの、あるいは、図7に示すように、少なくともノズル面でのノズル(便宜上、図6,7において符号Nで示す部分)の並列方向(副走査方向)での中心を基準として対向する位置に設けられており、いずれの場合にも、パッド100内での負圧化傾向によって外部から進入する空気の流れがノズルNの並列方向で一様に作用することが望ましい。
【0049】
次に本発明の別実施例について説明する。
図8乃至図11に示す実施例は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1からインクを吸引する構成と液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に沿ってインクを移動させて吸引する構成とを備えている点を特徴としている。
【0050】
図8において、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1には、ヘッド封止部材として、ノズル内からインクを吸引するキャップ部材110と、これの外周を囲繞する状態で配置されたパッド120とが二重構造となるように設けられている。
キャップ部材110は、通常、この種の維持回復機構に用いられる部材であり、図9に示すように、ノズル面34a1に密着した状態で内部を減圧されることによりノズル内からインクや異物を吸引(図9中、符号L’で示す状態)できる部材である。
これに対してパッド120は、キャップ部材110とは独立して液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1への接離動作が行える部材であり、図10に示すように、キャップ部材110とは別に液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1を封止して減圧空間を構成することができる部材である。
キャップ部材110およびパッド120はいずれも共通する吸引口(便宜上、符号110Aで示す)を備えている。
【0051】
パッド120は、キャップ部材110によるノズルNからのインクや異物の吸引動作とは別に、ノズル面34a1に残留するインク(図10において符号L’で示す)をノズル面34a1から吸引して除去する機能を有している。
このための構成として、パッド120には、図4に示した場合と同様に、外気連通部としてのスリット120Aが設けられている。
【0052】
本実施例は以上のような構成であるから、ノズルNのリフレッシュ作業を行う場合には、図9に示すように、キャップ部材110が液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着してノズルNからインクの吸引を行う。
ノズル面34a1に残留するインクを除去する場合には、図10に示すように、パッド120をノズル面34a1に密着させた状態で吸引を行う。これにより、ノズル面34a1に残留しているインクL’は、外部から取り込まれた空気の動きに順じてノズル面34a1に沿って移動した後、吸引口110Aからの負圧作用方向に応じて吸引口110Aに向け吸引される。
【0053】
本実施例では、パッド120による吸引力が、キャップ部材110を用いた吸引力よりも弱く設定されている。これにより、ノズル内のインクが吸引されるのを防止してノズル内でのインクのメニスカスが破壊されるのを防止するようになっている。
このような吸引力設定は、図11に示す構成が用いられる。
図11において吸引口110Aでそれぞれ示す部分)には、3方弁200を介して、図示しない回転駆動源に連動するチュービングポンプ201および真空ポンプ202が接続されている。
【0054】
三方弁200の態位設定、つまり、方向切替と各ポンプの駆動力は、図示しない制御部において制御されるようになっている。制御の内訳は、各ヘッドのノズル面34a1に対応するキャップ110、パッド120がノズル面34a1に密着される時期の設定、キャップ部材110内での設定圧力とパッド120内での設定圧力との関係が挙げられる。
【0055】
つまり、キャップ部材110は、液滴吐出ヘッド34のノズルに異常が生じた場合を基準として稼働するようになっており、また、パッド120は、キャップ部材を用いたノズルからのインクの吸引が行われた後にノズル面34a1へのインクの垂れなどが原因するノズル面の汚染を判断することで稼働状態で設定され、キャップ部材110によるインクの吸引が行われた後にパッド120がノズル面に密着した際には、その吸引力をキャップ110による吸引時よりも弱くする設定が行われる。
【0056】
次に本発明の他の実施例について説明する。
本実施例は、液滴吐出ヘッド34のノズル面34a1に密着してノズル面34a1に残留しているインクを回収する構成部材として、ノズル面34a1に密着可能な多孔質部材130を用い、キャップ部材110との吸引開始時期を変更できる点を特徴としている。以下、この構成について図12,図13において説明するが、同図において図8乃至10に示したものと同じ部材に関しては同符号により示すことを前置きしておく。
【0057】
図12において、キャップ部材110は、ノズル面34a1のノズルNの専有面積に対応するサイズを有する多孔質部材130の外周を囲繞する状態で配置されている。
多孔質部材130は、ノズル面34a1に密着することでノズル面34a1に残留しているインクを吸い取ることができる機能とノズルから吸引されたインクを透過させる機能とを有している。
多孔質部材130は、内部に多数の空間部を有しているので、この空間をインクの捕集空間として用いることができる。これにより比較的粘度の低いインクであっても、確実に吸い取ることができるので、ノズル面34a1に残留するインクの回収が確実に行えることになり、ノズル面43a1に残留するインクによる飛沫汚染を防ぐことができる。
【0058】
キャップ部材110および多孔質部材130は、インクの吐出方向に進退可能なシリンダなどのアクチュエータ140,150にそれぞれ一体化されており、これらアクチュエータ140,150は、インクの吸引開始時期を変更できる動作態位が設定できるようになっている。
つまり、ノズル面34a1に残留するインクを吸引する際には、図12に示すように、多孔質部材130のみをノズル面34a1に密着させる態位が設定され、ノズルNからのインクを吸引する際には、図13に示すように、キャップ部材110のみをノズル面34a1に向け移動させて密着させる態位が設定されている。
【0059】
多孔質部材130のみがノズル面34a1に密着した場合には、図12に示すように、ノズル面34a1に残留しているインクが多孔質部材13に吸い取られ、吸引されるようになる。また、キャップ部材110のみがノズル面34a1に密着した場合には、図13に示すように、ノズルNからインクLが多孔質部材130に向けて吸引され、吸引されたインクは多孔質部材130内を透過されて外部に排出される。
【0060】
以上のような構成を対象として維持回復手順を説明すると、図14に示すフローチャートの通りである。なお、図14では、多孔質部材130をパッドと表現していることを前置きしておく。
図14において、図示しない制御部に接続されている検知部から吐出しないノズルの存否が判断され(S1)、吐出しないノズルがある場合には、キャップ部材用のアクチュエータ140(図12参照)が上昇駆動されてキャップ部材110がノズル面34a1に密着されて吸引が開始される(S2)。吸引されたインクは多孔質部材130内を透過して外部に移動する。この状態は図13に示す状態に相当している。
一方、キャップ部材110を用いたノズルNからのインクの吸引が行われると、キャップ部材110がノズル面34a1から離されるが、このとき、ノズル面34a1にはドーム状にインクが残留する。このため、キャップ部材110がノズル面34a1から離された後には、ノズル面の汚れがあるかどうかに関係なくワイパー83(図3参照)を用いてノズル面34a1が拭き取られる(S3,S6)。
【0061】
ステップS3’に示す判別は、強制的な拭き取りを行わない場合を対象とするものであり、この場合のノズル面が汚れていると判断する内容は、上述した強制的な拭き取りを実施することを狙いとし、またノズル面が汚れていないと判断する内容は、拭き取りではなく、ノズル面34a1に残留するインクを吸引により除去する作業を実行するための項目に相当している。
ステップS3’において、ノズル面34a1の汚れがあると判断されると、多孔質部材13が相当しているパッド用のアクチュエータ150が上昇駆動されて多孔質部材130がノズル面34a1に密着されてインクを吸引する(S4)。
ステップS4において多孔質部材130がノズル面34a1に密着した状態で吸引動作が行われると、ノズル面34a1に残留しているインクは多孔質部材130に吸い取られ、さらに吸引されて外部に移動する。この状態は図12に示す状態に相当している。
【0062】
一方、ノズル面34a1に残留しているインクが吸引された場合およびステップS1において吐出しないノズルが存在しないと判断された場合(S3)には、ワイパー83による拭き取りが必要かどうかが判断され、その結果に基づき、必要に応じてワイパー83が用いられる(S5,S7)。ステップS5の判断は、例えば、所定の印字回数に対応する吐出回数などを参考に、ノズル面34a1の清浄化を図る上で実行される項目である。
また、吐出しないノズルが存在せず、また、ノズル面の汚れがないと判断した場合には、吐出動作が継続される(S7)。
【0063】
以上、説明した実施例においては、ノズル面34a1に残留するインクは、ノズルからのインクの吸引とは独立して外気による強制的な流れを生成されることにより吸引が可能となり、さらに外気取り入れの構成において歪み変形などを起こすことのない構成を用いているので、ノズル内でのインクのメニスカスの確保およびノズル面に残留するインクにより飛沫汚染を確実に防止して印字品質を向上させることが可能となる。
【0064】
さらに、本実施例においては、ノズル面34a1に残留するインクを吸引する際にパッドあるいは多孔質部材がノズル面に密着する方向、換言すれば、インクの吐出方向に移動するだけであるので、ノズル面からの引き摺り等が生じないので、一部変形による密着性の低下を確実に防止することができ、さらには引き摺り動作のための機構などを要しない分、簡単な構成による印字品質の向上が望める。
【0065】
また、ノズルからのインクの吸引構造とノズル面に残留するインクの吸引構造とが二重構造によって得られるので、異なる構成であっても構造同士を纏めることができるので、装置の大型化を防止することができる。
しかも、ノズル面に残留するインクの吸引力をノズルからインクを吸引する際の吸引力よりも弱くしているので、ノズル内でのメニスカスを破壊しない状態に維持できるので、メニスカスが破壊された際に発生するインクの漏れ出しなどによるノズル面へのインク付着を防止してノズル面での残留インクの存在をなくすことができる。ノズル内でのインクのメニスカスを破壊しない状態を得る構成として、ノズル内からのインクの吸引動作とノズル面に残留するインクの吸引動作とを開始する時期や速度を変更するようになっていることによっても実現できる。
【0066】
さらには、ノズル内からのインクの吸引およびノズル面に残留するインクの吸引動作をインクの特性や回復時間の設定などに応じて迅速化することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 画像形成装置の装置本体
33 キャリッジ
34 液滴吐出ヘッド
34a1 ノズル面
100、120 パッド
101 外気連通部
101A、120A スリット
110 キャップ
110A 吸引口
120 パッド
130 多孔質部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開2009−45870号公報
【特許文献2】特開2007−290243号公報
【特許文献3】特許第4149821号
【特許文献4】特開平06−126947号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に対し液滴を吐出して描画を行う液滴吐出装置であって、
少なくとも一つの液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに対応して配置され、該液滴吐出ヘッド面を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材と、
前記ヘッド封止部材内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構を備え、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッドのノズル面からの液滴吸引とは別に、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に残留する液滴を該ノズル面に沿って移動させる吸引を行う構成を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材には、前記液滴吐出ヘッドからの液滴吐出方向に液滴を吸引する吸引部と、前記液滴吐出方向と直角な方向に相当する液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って外気を取り込む外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出面に沿って液滴を移動させるための外気連通部は、少なくとも前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル面中心を境にして対向する位置に設けられたスリットが用いられることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、該パッドには、少なくとも前記液滴吐出ヘッドのノズル面の中心を挟んで対向する位置に前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って移動する外気を取り込み可能な外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、
前記キャップとパッドとは同一中心を基準とする二重構造に構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置において、
前記パッドが前記キャップの外側の外周部に位置させていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記パッドは、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能な多孔質部材で構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズル面から液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、
前記キャップとパッドとは、前記液滴の吸引開始時期を変更可能であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる際の吸引力は、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引力よりも弱くされていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちの一つに記載の液滴吐出装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
対象物に対し液滴を吐出して描画を行う液滴吐出装置であって、
少なくとも一つの液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドに対応して配置され、該液滴吐出ヘッド面を外部と遮断した状態に封止できる位置に変位可能なヘッド封止部材と、
前記ヘッド封止部材内で吸引力を発生する吸引力発生手段とからなる維持回復機構を備え、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッドのノズル面からの液滴吸引とは別に、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に残留する液滴を該ノズル面に沿って移動させる吸引を行う構成を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材には、前記液滴吐出ヘッドからの液滴吐出方向に液滴を吸引する吸引部と、前記液滴吐出方向と直角な方向に相当する液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って外気を取り込む外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出面に沿って液滴を移動させるための外気連通部は、少なくとも前記液滴吐出ヘッドにおけるノズル面中心を境にして対向する位置に設けられたスリットが用いられることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズルから液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、該パッドには、少なくとも前記液滴吐出ヘッドのノズル面の中心を挟んで対向する位置に前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って移動する外気を取り込み可能な外気連通部が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出装置において、
前記キャップとパッドとは同一中心を基準とする二重構造に構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液滴吐出装置において、
前記パッドが前記キャップの外側の外周部に位置させていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項4乃至6のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記パッドは、前記液滴吐出ヘッドのノズル面に密着可能な多孔質部材で構成されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
前記ヘッド封止部材は、前記液滴吐出ヘッド面に密着可能であって、液滴吐出ヘッドのノズル面から液滴を吸引するキャップと、該キャップとは別に設けられて前記液滴ヘッドのノズル面に密着可能なパッドとを備え、
前記キャップとパッドとは、前記液滴の吸引開始時期を変更可能であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちの一つに記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドのノズル面に沿って液滴を移動させる際の吸引力は、前記液滴吐出ヘッドのノズルからの液滴吸引力よりも弱くされていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちの一つに記載の液滴吐出装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−152680(P2011−152680A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14796(P2010−14796)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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