説明

液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの冷却方法

【課題】吐出ヘッドの温度上昇を防止することができ、機能液の消費量を削減し、生産性を向上させることができる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの冷却方法を提供する。
【解決手段】複数のノズルが設けられたノズル面21aの各ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッド2と、ノズル面21aをワイピングするワイプ部70と、を備え、ワイプ部70は、シートに無機材料の粉末を保持させたワイプ材71を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材等の表面に液状体の液滴を吐出する液滴吐出装置が知られている。このような液滴吐出装置として、液滴吐出ヘッドのノズル近傍の温度を検出して吐出精度を向上させるものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、吐出ヘッドを払拭する払拭部を介してノズル開口面と熱伝導可能な温度センサが設けられ、払拭部によってノズル開口面の任意の位置の温度を検出することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−246735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の液滴吐出装置では、吐出ヘッドの温度上昇を防止できないという課題がある。液滴吐出装置では、液滴を吐出しない待機時に吐出ヘッド内のインク等の機能液の粘度が増加することを防止するため、吐出ヘッドの振動板を液滴吐出時よりも微小な振幅で微振動させている。このような微振動の周波数は例えば数十kHz程度である。振動板の微振動を所定時間継続させていると、吐出ヘッドの温度が上昇する。
【0005】
吐出ヘッドの温度上昇に伴って、吐出ヘッド内の機能液の温度も上昇する。吐出ヘッド内の機能液の温度上昇は、吐出ヘッドの液滴吐出性能に悪影響を及ぼす虞がある。そのため、従来の液滴吐出装置では、定期的に吐出ヘッドのノズルから機能液を吸引して吐出ヘッド内の機能液を排出し、外部から新たな機能液を補充することで吐出ヘッド内の機能液の温度を低下させていた。しかし、吸引によって吐出ヘッド内の機能液の温度を低下させる場合には、機能液の消費量が増加するだけでなく、吸引工程の増加により生産性が低下してしまうという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、液滴吐出ヘッド内の機能液の温度上昇を防止することができ、機能液の消費量を削減し、かつ、生産性を向上させることができる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの冷却方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液滴吐出装置は、複数のノズルが設けられたノズル面の各ノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記ノズル面をワイピングするワイプ部と、を備えた液滴吐出装置であって、前記ワイプ部は、シートに無機材料の粉末を保持させたワイプ材を有することを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、ワイプ材を液滴吐出ヘッドのノズル面に接触させ、ノズル面の熱を吸熱し、ノズル面を冷却することができる。
ここで、ワイプ材としてシートを用いることで、ブレード状のワイプ材と比較してノズル面とワイプ材との接触面積が大きくなる。また、ワイプ材には無機材料の粉末が保持されているので、ノズル面の熱を無機材料の粉末に吸熱させることができる。また、ノズル面の熱を吸熱して温度が上昇したワイプ材をノズル面から離間させることで、ノズル面から吸収した熱を大気中に放熱させることができる。したがって、ワイプ材を用いてノズル面を冷却する際に、より効率よくノズル面を冷却することができる。
また、液滴吐出ヘッドのノズル面を冷却することで、液滴吐出ヘッド内部の機能液の温度を低下させることができる。そのため、従来のような機能液の温度を低下させるための吸引工程が不要になる。したがって、機能液の消費量を削減し、かつ、生産性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の液滴吐出装置は、前記無機材料は、窒化アルミニウムであることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、無機材料の吸熱性を良好にして、より効率よくノズル面を冷却することができる。
【0011】
また、本発明の液滴吐出装置は、前記液滴吐出ヘッドに対して冷却用の空気を供給する空気供給手段を備えることを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、液滴吐出ヘッドの熱を空気によって奪い、液滴吐出ヘッドを冷却することができる。
【0013】
また、本発明の液滴吐出装置は、前記液滴吐出ヘッドの表面に放熱シートが貼付されていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、液滴吐出ヘッドの熱を吸熱シートによって吸熱し、大気中に放熱することができる。
【0015】
また、本発明の液滴吐出ヘッドの冷却方法は、複数のノズルが設けられたノズル面の各ノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの冷却方法であって、前記ノズル面に、シートに無機材料の粉末を保持させたワイプ材を接触させて冷却する冷却工程を有することを特徴とする。
【0016】
このように冷却することで、ワイプ材を液滴吐出ヘッドのノズル面に接触させ、ノズル面の熱を吸熱し、ノズル面を冷却することができる。
ここで、ワイプ材としてシートを用いることで、ブレード状のワイプ材と比較してノズル面とワイプ材との接触面積の大きくなる。また、ワイプ材には無機材料の粉末が保持されているので、ノズル面の熱を無機材料の粉末に吸熱させることができる。また、ノズル面の熱を吸熱して温度が上昇したワイプ材をノズル面から離間させることで、ノズル面から吸収した熱を大気中に放熱させることができる。したがって、ワイプ材を用いてノズル面を冷却する際に、より効率よくノズル面を冷却することができる。
また、液滴吐出ヘッドのノズル面を冷却することで、液滴吐出ヘッド内部の機能液の温度を低下させることができる。そのため、従来のような機能液の温度を低下させるための吸引工程が不要になる。したがって、機能液の消費量を削減し、かつ、生産性を向上させることができる。
【0017】
また、本発明の液滴吐出ヘッドの冷却方法は、前記冷却工程は、前記ワイプ材によって前記ノズル面をワイピングするワイピング工程と同時に行うことを特徴とする。
【0018】
このように冷却することで、液滴吐出ヘッドを冷却する際に、工程数が増加することを防止して、生産性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の液滴吐出ヘッドの冷却方法は、前記液滴吐出ヘッドに空気を供給して冷却することを特徴とする。
【0020】
このように冷却することで、液滴吐出ヘッドの熱を供給した空気によって奪い、液滴吐出ヘッドを冷却することができる。また、液滴を吐出する工程や上記のワイプ材による冷却工程と並行して液滴吐出ヘッドを冷却することが可能になる。したがって、より効率よく液滴吐出ヘッドを冷却してより効果的に機能液の温度上昇を防止することができる。
【0021】
また、本発明の液滴吐出ヘッドの冷却方法は、前記液滴吐出ヘッドの温度を測定し、前記温度を所定の温度に制御することを特徴とする。
【0022】
このように冷却することで、液滴吐出ヘッドの温度が許容温度以上の温度に上昇することを防止して液滴の吐出性能が低下することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態における液滴吐出装置の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は部分断面側面図、(b)は底面図である。
【図3】本発明の実施の形態における液滴吐出ヘッドの拡大断面図である。
【図4】図1に示す液滴吐出装置のステージの側面図である。
【図5】本発明の実施の形態における液滴吐出ヘッド及びワイプ部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、部材毎に縮尺を適宜変更している。以下では、基板の搬送方向をX軸方向、基板の上面に垂直な方向をZ軸方向、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向とする直交座標系を用いて説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置1の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、液滴吐出装置1は、インク等の機能液の液滴を吐出する吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)2と、基板Pを載置するステージ3と、吐出ヘッド2を移動させる第1駆動ユニット4と、ステージ3を移動させる第2駆動ユニット5と、吐出ヘッドに冷却用の空気を供給する空気供給装置(空気供給手段)6と、液滴吐出装置1全体の動作を制御する制御装置7とを備えている。
【0026】
図2(a)は、吐出ヘッド2の部分断面図である。図2(b)は、吐出ヘッドの底面図である。図3は、図2(a)の拡大図である。
図2(a)に示すように、吐出ヘッド2は、ヘッド本体10と、流路ユニット20と、アクチュエーターユニット30と、導入針ユニット40と、空冷部50と、を有している。
【0027】
ヘッド本体10は、図2(a)示すように中空箱状部材であり、ヘッド本体10の内部には、流路11及び収容室12が形成されている。流路11はヘッド本体10を高さ方向に貫通するように形成されている。流路11の上端はパッキン(図示略)を介して導入針ユニット40内部の機能液供給路に連通されている。流路11の下端は、流路ユニット20内の共通インク室25(図3参照)に連通されており、導入針ユニット40から導入されたインク等の機能液が流路11を通じて流路ユニット20に供給されるようになっている。
流路ユニット20の下端面(ノズル面21a)には、図2(b)に示すように、流路ユニット20に供給された機能液を吐出する複数のノズル22が形成されている。
【0028】
流路ユニット20は、図3に示すように、ノズルプレート21、流路基板23及び振動板24を有している。これらノズルプレート21、流路基板23及び振動板24はこの順に積層された状態になっており、不図示の接着剤で接合され一体化されている。
【0029】
ノズルプレート21は、吐出ヘッド2の下端に流路基板23の下部を閉塞するように設けられている。ノズルプレート21には複数のノズル22がノズルプレート21を貫通するように設けられ、下面のノズル面21aにそれぞれ開口されている(図2(b)参照)。
【0030】
流路基板23は、内部に共通インク室25、機能液供給口26及び圧力室27が形成されている。共通インク室25は複数のノズル22に共通して設けられ、流路11から供給された機能液を貯留するようになっている。また、共通インク室25は、機能液供給口26を介して連通する圧力室27の各々に機能液を供給するようになっている。圧力室27はノズル22毎に区画され、振動板24の振動によって内部の容積が変化するようになっている。
【0031】
振動板24は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板24の圧力室27に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電駆動素子31の先端面が接合される島部28が形成されている。この島部28は、ダイヤフラム部として機能する。
【0032】
振動板24は、圧電駆動素子31の作動に応じて島部28の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されている。流路基板23の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部29として機能するようにもなっている。このコンプライアンス部29に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板が除去され弾性フィルムだけが残った状態になっている。
【0033】
アクチュエーターユニット30は、ヘッド本体10の収容室12に収容され、櫛歯状に配列された複数の圧電駆動素子31と、この圧電駆動素子31が接合される固定板32と、制御装置7からの駆動信号を圧電駆動素子31に供給するフレキシブルケーブル33とから構成される。圧電駆動素子31は各々のノズル22に対応して設けられ、一端が固定板32上に接合されている。圧電駆動素子31の他端は固定板32の先端面よりも突出し、振動板24の島部28に固定されている。アクチュエーターユニット30は、収容室12の内壁面に固定板32を接着することで収容室12内に固定されている。
【0034】
図2(a)に示すように、導入針ユニット40は、インク等の機能液を供給するチューブ41が接続される機能液導入針42を備えている。機能液導入針42はチューブ41に接続される先端部ほど径が細くなる先細の中空管状に設けられている。チューブを介して機能液導入針42に供給されたインク等の機能液は、導入針ユニット40内部の供給路(図示略)を介してヘッド本体10の機能液供給流路11に供給されるようになっている。
【0035】
空冷部50は、導入針ユニット40とヘッド本体10との間に設けられた中空部である。空冷部50には、空冷部50に冷却用の圧縮空気を供給すると共に、空冷部50から排出された圧縮空気を回収する空気管51が接続されている。空気管51は、図1に示すように、空気供給部6に接続されている。空気供給部6は、制御装置7によって空気の供給量を制御できるようになっている。
【0036】
図1及び図2(a)に示すように、吐出ヘッド2の側面には、放熱シート60が貼付されている。放熱シート60は、例えば放熱シリコーンゴムにより形成され、熱伝導性が良好な接着剤を介して直方体箱状の吐出ヘッド2の四方の側面の全てに貼付されている。放熱シート60の熱伝導率は、例えば1.3W/m・℃である。放熱シート60の四隅には、例えば熱電対等の温度センサー61が設けられている。温度センサー61は、制御装置7に接続され、温度に応じた信号を制御装置7に伝送するようになっている。
【0037】
例えば吐出ヘッド2の長手方向の幅W1が32mm、短手方向の幅W2が13mm、高さHが12mmである場合には、長手方向の側面の放熱シート60の寸法は例えば10mm×30mm程度に形成する。また、短手方向の側面の放熱シートの寸法は、例えば10mm×13mm程度に形成する。
【0038】
図1に示すように、第1駆動ユニット4は、吐出ヘッド2を支持する支持機構4Aと、支持機構4Aを介して吐出ヘッドを回転及び移動させるアクチュエーター4Bとを含む。第1駆動ユニット4は、吐出ヘッド2を、X軸、Y軸、Z軸の各軸方向に移動させることができるようになっている。また、吐出ヘッド2をZ軸回りに回転させることができるようになっている。
【0039】
図4は、ステージ3の側面図である。
ステージ3は、図1及び図4に示すようにスライド部材3Aとホルダ部材3Bとにより構成されている。スライド部材3Aは、ベース部材9上のY軸方向に延在するレール状のガイド部材8に沿ってスライド可能に設けられている。スライド部材3A上には、基板Pを位置決めした状態で保持するホルダ部材3Bが設けらている。ホルダ部材3Bは、基板Pをその表面がXY平面と略平行となるように保持する。
【0040】
第2駆動ユニット5は、スライド部材3Aをガイド部材8に沿ってスライドさせる第1駆動部5Aと、ホルダ部材3Bをスライド部材3A上で微動させる第2駆動部5Bとにより構成されている。第1駆動部5Aは例えばリニアモータ等により構成されている。第2駆動部5Bは、例えばピエゾ素子等の複数のアクチュエータにより構成され、ホルダ部材3Bをスライド部材3Aに対してX軸、Y軸、Z軸の各軸方向、及び各軸回りに微動させることができるようになっている。
制御装置7は、第1駆動ユニット4及び第2駆動ユニット5を制御することで、ステージ3上の所望の位置に吐出ヘッド2を配置させるようになっている。
【0041】
図5(a)及び図5(b)は、液滴吐出装置1のワイプ部70を示す側面図である。
液滴吐出装置1は、図5(a)に示すワイプ部70を備えている。なお、図1においてはワイプ部70の図示を省略している。ワイプ部70は、図1に示すベース部材9上に配置され、主に、吐出ヘッド2のノズル面21aをワイピングするワイプ材71と、ワイプ材71に張力を付与する一対のローラー72,73とにより構成されている。
【0042】
ワイプ材71は、例えばPET等の樹脂材料の繊維により形成されたシートに、有機バインダー、無機粉末及び溶媒からなるスラリーを圧入して含浸させ、乾燥させることにより形成されている。これにより、ワイプ材71は、シートの繊維間の隙間や表面に無機材料の粉末が保持された状態となっている。本実施形態では、無機材料として熱伝導率が高く熱伝導性が良好な窒化アルミニウムを用いている。
【0043】
ワイプ材71の有機バインダーとしては、アクリルエマルジョン。ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、水溶性フェノール等を用いることができる。
無機材料としては、窒化アルミニウム以外にも、カオリン、石英、長石、タルタ、セリサイト、フライアッシュ、炭酸カルシウム等を用いることができる。無機材料の粉末は、可能な限り比重の小さいものを用いることが望ましい。
【0044】
無機材料として窒化アルミニウムを用いる場合には、窒化アルミニウムの粉末をスラリーの調整前に800℃〜1050℃で仮焼きし、窒化アルミニウムの粉末の表面を酸化アルミニウムで被覆する。これにより、スラリー調整中の窒化アルミニウムの加水分解を抑制し、熱伝導性の高い粉末を得ることができる。
【0045】
ワイプ材71は、例えば、ローラー72,73によって張力を加えられ、図5(a)に示すように、側面視でステージ3をX軸方向に跨ぐように掛け渡されている。ワイプ材71は、例えば、長さ6m、幅35mm、厚さ0.5mmの帯状のものが筒状に巻かれたロールが用いられる。ワイプ材71のロールは一方のローラー72側に配置され、ロールから引き出されたワイプ材は71、他方のローラー63側に配置された巻取り部(図示略)によって巻き取られるようになっている。
【0046】
ワイプ部70と吐出ヘッド2とは、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向に相対的に移動可能に設けられている。本実施形態では、ワイプ部70はベース部材9上に固定され、吐出ヘッド2を移動させることで、ワイプ部70と吐出ヘッド2とを相対的に移動させる。これにより、図5(b)に示すように、吐出ヘッド2のノズル面21aとワイプ材71とを接触させることができるようになっている。
【0047】
図1に示す液滴吐出装置1に液滴を吐出させて基板P上に配置させる液滴吐出工程では、制御装置7は、まず、不図示の機能液供給部からインク等の機能液を供給させ、図2(a)に示すチューブ41を介してインク等の機能液を吐出ヘッド2の導入針ユニット40の機能液導入針42に供給する。機能液導入針42に供給された機能液は、導入針ユニット40内部の供給路(図示略)を介してヘッド本体10の流路11に供給される。流路11に供給された機能液は、図3に示す流路ユニット20の共通インク室25を満たす。共通インク室25に満たされた機能液は、各々の機能液供給口26を介して各々の圧力室27に導入される。次いで制御装置7によって予め吐出ヘッド2を基板P上の所定の位置に移動させる。
【0048】
次に、制御装置7は各々の圧電駆動素子31にフレキシブルケーブル33を介して所定の電圧波形を印加して、各々の圧電駆動素子31を電圧波形に応じて伸縮させる。これにより、振動板24が振動し、圧力室27の容積が変化する。圧力室27の容積変化は圧力室27内の圧力変化を生じさせる。この圧力変化に伴う各々の圧力室27内の機能液の圧力上昇によって、各々のノズル22から機能液の液滴Dが吐出される。制御装置7は、吐出ヘッド2を基板Pに対して移動させながら、基板P上の所定の位置に機能液の液滴Dを配置していく。
【0049】
吐出ヘッド2に液滴Dを吐出させず待機させる際には、制御装置7によって圧電駆動素子31に電圧波形として微振動波形を印加する。微振動波形は、例えば数十kHzの周波数で印加される。微振動波形が印加された圧電駆動素子31は、振動板24を微振動させるが、液滴Dが吐出されるほど圧力室27の圧力は上昇しない。そのため、ノズル22からは液滴Dが吐出されず、圧力室27等に貯留された機能液が微振動する。振動板24を微振動させ、圧力室27等に貯留された機能液を微振動させることで、機能液の粘度が増加することを防止している。
【0050】
圧電駆動素子31へ微振動波形を印加すると、圧電駆動素子31において熱が発生し、吐出ヘッド2の温度が上昇する。
制御装置7は、吐出ヘッド2の温度を温度センサー61によって測定し、所定の温度以上の温度を検出した場合に、以下の冷却工程を実施する。
【0051】
(冷却工程)
制御装置7は、図5(b)に示すように吐出ヘッド2を移動させて、ワイプ部70のワイプ材71と吐出ヘッド2のノズル面21aを接触させる。さらに不図示の巻取り部によってワイプ材71を巻き取ることでワイプ材71を吐出ヘッド2のノズル面21aに対して相対的に移動させる。このとき、吐出ヘッド2をワイプ材71の巻き取り方向と逆の方向に移動させてワイプ材71と吐出ヘッド2の相対速度を増加させるようにしてもよい。
【0052】
ここで、本実施形態のワイプ材71は、無機材料の粉末が保持されたシートであるため、ワイプ材71をノズル面21aに接触させることで、ノズル面21aの熱をワイプ材71によって吸熱し、ノズル面21aを冷却することができる。
【0053】
また、ワイプ材71を摩擦熱が問題にならない程度の速度でノズル面21aに対して相対的に移動させることで、ノズル面21aの熱を吸熱して温度が上昇したワイプ材71をノズル面21aから離間させ、熱を吸収していない低温のワイプ材71をノズル面21aに常に接触させることができる。
【0054】
また、ノズル面21aの熱を吸熱して温度が上昇したワイプ材71をノズル面21aから離間させることで、ノズル面21aから吸収した熱を大気中に放熱させることができる。したがって、ワイプ材71を用いてノズル面21aを冷却する際に、より効率よくノズル面21aを冷却することができる。
【0055】
また、ワイプ材71としてシートを用いることで、ブレード状のワイプ材と比較してノズル面21aとワイプ材71との接触面積が大きくなる。これにより、ワイプ材71によってノズル面21aからより多くの熱を奪うことが可能になる。
【0056】
また、ワイプ材71には無機材料の粉末が保持されているので、ノズル面21aの熱を無機材料の粉末に吸熱させることができる。
また、ワイプ材71に保持させる無機材料の粉末として、吸熱性が良好な窒化アルミニウムの粉末を用いることで、ワイプ材71の吸熱性を良好にしてより効率よくノズル面21aを冷却することが可能になる。
【0057】
ノズル面21aが冷却されると、図3に示すように、吐出ヘッド2内部の圧力室27や共通インク室25等に貯留された機能液の温度が低下する。そのため、従来、機能液の温度を低下させるために行っていた吸引工程が不要になるか、又は回数を減少させることが可能になる。したがって、機能液の消費量を削減し、かつ、生産性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態では、冷却工程は、ワイプ材71によってノズル面21aを擦るようにワイピングし、ノズル面21aに付着して粘度が増加したインク等の機能液を除去するワイピング工程を兼ねている。このように冷却工程とワイピング工程を同時に実施することができるので、吐出ヘッド2を冷却する際の工程数の増加を防止でき、生産性を向上させることができる。
【0059】
制御装置7は、ワイプ部70によるノズル面21aの冷却と並行して、図1に示す空気供給部6によって吐出ヘッド2に対して冷却用の圧縮空気を供給する。空気供給部6によって供給された圧縮空気は図2(a)に示す空気管51を介して吐出ヘッド2の空冷部50に供給される。空冷部50に供給された圧縮空気はヘッド本体10の熱を奪いヘッド本体10を冷却する。ヘッド本体10を冷却して温度が上昇した圧縮空気は、空気管51を介して空気供給部6に回収される。
【0060】
このように、吐出ヘッド2の空冷部50に圧縮空気を供給することで、ヘッド本体10の温度が低下し、流路ユニット20の温度も低下する。流路ユニット20の温度が低下すると、共通インク室25や圧力室27に貯留された機能液の温度が低下する。このように、ワイプ部70によるノズル面21aの冷却と並行して、圧縮空気によってヘッド本体10を冷却することで、より効率よく吐出ヘッド2を冷却することが可能になる。圧縮空気によるヘッド本体10の冷却は、ワイプ部70によるノズル面21aの冷却と並行して行うだけでなく、吐出ヘッド2によって液滴を吐出する工程と並行して行ってもよい。
【0061】
また、図1及び図2(a)に示すように、吐出ヘッド2の四方の側面の全てに放熱シート60が貼付されている。これにより、吐出ヘッド2の熱を放熱シート60によって吸熱し、大気中に放熱することができる。したがって、吐出ヘッド2をより効率よく冷却することが可能になる。また、放熱シート60は長寿命であり、吐出ヘッド2の寿命が尽きるまで交換する必要が無い。
【0062】
制御装置7は、温度センサー61によって吐出ヘッド2の温度をモニタリングし、検出温度が所定の温度以下になれば、冷却工程を終了する。
このように、吐出ヘッド2の温度を温度センサー61によって測定し、制御装置7によって吐出ヘッド2の温度を所定の温度に制御することで、吐出ヘッド2及び内部の機能液の温度が許容温度以上の温度に上昇することを防止することができる。これにより、液滴の吐出性能が低下することを防止できる。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の液滴吐出装置1及び吐出ヘッド2の冷却方法によれば、吐出ヘッド2内の機能液の温度上昇を防止することができ、機能液の消費量を削減し、かつ、液滴と出装置の生産性を向上させることができる。
【0064】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、冷却工程はワイピング工程とは別に単独で行ってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 液滴吐出装置、2 吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)、6 空気供給部(空気供給手段)、21a ノズル面、22 ノズル、60 放熱シート、70 ワイプ部、71 ワイプ材、D 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルが設けられたノズル面の各ノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記ノズル面をワイピングするワイプ部と、を備えた液滴吐出装置であって、
前記ワイプ部は、シートに無機材料の粉末を保持させたワイプ材を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記無機材料は、窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドに対して冷却用の空気を供給する空気供給手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記液滴吐出ヘッドの表面に放熱シートが貼付されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
複数のノズルが設けられたノズル面の各ノズルから機能液の液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの冷却方法であって、
前記ノズル面に、シートに無機材料の粉末を保持させたワイプ材を接触させて冷却する冷却工程を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの冷却方法。
【請求項6】
前記冷却工程は、前記ワイプ材によって前記ノズル面をワイピングするワイピング工程と同時に行うことを特徴とする請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの冷却方法。
【請求項7】
前記液滴吐出ヘッドに空気を供給して冷却することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液滴吐出ヘッドの冷却方法。
【請求項8】
前記液滴吐出ヘッドの温度を測定し、前記温度を所定の温度に制御することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の液滴吐出ヘッドの冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−201383(P2010−201383A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51611(P2009−51611)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】