説明

液滴吐出装置

【課題】吐出精度を損なうことなく、インクミストに起因する不都合を防止した、液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】基板Pを載置するステージ2と、ノズルを有し、ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッド5と、ステージ2を吐出ヘッド5に対して所定方向に相対的に往復移動させる移動機構と、を備えた液滴吐出装置である。ステージ2には、所定方向における一方側と他方側とに、それぞれステージ2の外側に向かうように気体を吹き出す気体吹き出し機構13が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上にカラーフィルター等の機能性薄膜を形成する方法としては、スピンコート法やフレキソ印刷法が一般に用いられている。これに対して近年では、インク使用量削減や工程数削減に効果的であるとして、液滴吐出法が種々の薄膜形成に用いられるようになってきている。液滴吐出法を実施する液滴吐出装置としては、ノズルからインク(機能液)の液滴を吐出する吐出ヘッドを備え、この吐出ヘッドに対して記録媒体(基板)を相対移動させるように構成されたものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、例えば工業的にカラーフィルターを液滴吐出装置で形成する場合、液滴吐出ヘッドからカラーフィルターの形成材料(インク)を基板上に吐出した際、この形成材料のミスト(インクミスト)が基板上に付着し、形成するカラーフィルターを混色させてしまうことがある。すなわち、フルカラー表示用のカラーフィルターは、通常、R(赤色)、G(緑色)、B(青色)の各色のものが所定配置させられて形成されるが、例えば赤色のカラーフィルターのミストが緑色や青色のカラーフィルター上に付着すると、その付着箇所で混色を生じ、この付着箇所を通過した光の色が、求める色と異なる色味になってしまう。
【0004】
このようなインクミストに起因する不都合を防止するため、例えば特許文献1の液体吐出装置では、ヘッド上方より下方にエアーを吹き出し、別に設けたファンを用いて吹き出したエアーを回収するとともに、インクミストを回収するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カラーフィルターや配線等の機能性薄膜は、近年では益々精細化、微細化する傾向にある。したがって、これら機能性薄膜を液滴吐出装置で形成するには、より高い吐出精度が要求されるようになっている。
しかしながら、前記特許文献1の液体吐出装置のように常時エアーの流れを作っていると、インクミストの回収には効果があるものの、インクの吐出性、すなわちその直進性に影響を与えてしまい、吐出精度が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、吐出精度を損なうことなく、インクミストに起因する不都合を防止した、液滴吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明の液滴吐出装置は、基板を載置するステージと、ノズルを有し、該ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記ステージを前記吐出ヘッドに対して所定方向に相対的に往復移動させる移動機構と、を備え、
前記ステージには、前記所定方向における一方側と他方側とに、それぞれステージの外側に向かうように気体を吹き出す気体吹き出し機構が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この液滴吐出装置によれば、ステージの一方側と他方側とに、それぞれステージの外側に向かうように気体を吹き出す気体吹き出し機構を設けているので、液滴吐出に伴って発生した機能液のミスト(インクミスト)が吐出ヘッドの下方に滞留していても、吐出ヘッドに対してステージを相対移動させた際、ステージの一方側あるいは他方側に設けられた気体吹き出し機構によって前記ミストを吐出ヘッドの下方からステージの外方に排除することが可能になる。
また、ステージ上の基板への機能液の吐出後、さらに吐出ヘッドに対してステージを相対移動させ、ステージが吐出ヘッドの下方から相対的に通り過ぎた際、機能液の吐出によって再度発生したミストをステージの一方側あるいは他方側に設けられた気体吹き出し機構によって吐出ヘッドの下方からステージの外方に排除することが可能になる。
さらに、吐出ヘッドから基板に対して機能液を吐出している間は、気体吹き出し機構から吹き出された気体は基板側、すなわち吐出ヘッドの直下に向かないため、吐出ヘッドの吐出精度を損なうことがない。
【0010】
また、前記液滴吐出装置において、前記移動機構は、前記吐出ヘッドに対して前記ステージを、前記所定方向に往復移動させるように構成されているのが好ましい。
このようにすれば、機能液の吐出時やその前後にも吐出ヘッドは固定されているため、吐出ヘッドの吐出精度が損なわれることがない。
【0011】
また、前記液滴吐出装置において、前記気体吹き出し機構は、前記ステージの、前記所定方向における一方側の最外部と、他方側の最外部とにそれぞれ設けられているのが好ましい。
このようにすれば、基板を載置するためのステージの有効面積を狭めることがほとんどなくなる。また、気体吹き出し機構から吹き出した気体の、ステージ上の基板への影響をより少なくすることができる。
【0012】
また、前記液滴吐出装置において、前記気体吹き出し機構は、気体を吹き出すための気体吹き出し口を、前記所定方向と直交する方向に複数整列させているのが好ましい。
このようにすれば、前記所定方向と直交する方向におけるステージの幅全域から、気体を吹き出すことが可能になるため、ステージ上の基板の上に機能液のミストが滞留することを確実に防止することができる。
【0013】
また、前記液滴吐出装置において、前記ステージには、前記所定方向における一方側と他方側とに、それぞれフラッシングエリアが設けられているのが好ましい。
このようにすれば、気体吹き出し機構からの気体の流れによって吐出ヘッドのノズル内の機能液が乾いても、その直後にフラッシングエリアで機能液のフラッシングを行うことにより、機能液の吐出性を元の正常な状態に、容易にかつ速やかに戻すことができる。
【0014】
また、前記液滴吐出装置においては、前記気体が空気であるのが好ましい。
空気は取り扱い易く安価であるため、製造コストをほとんど上昇させることがない。
【0015】
また、前記液滴吐出装置においては、前記機能液が、カラーフィルターの形成材料であってもよい。
機能液がカラーフィルターの形成材料である場合に、ミストの影響によって得られるカラーフィルターに混色が生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における液滴吐出装置の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した液滴吐出装置のワークステージの平面図である。
【図3】(a)〜(c)は、図1に示した液滴吐出装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の液滴吐出装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、図1中に示すようにXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ2に対して平行となるよう設定され、Z軸がワークステージ2の表面に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直方向に設定される。
【0018】
図1は、本発明における液滴吐出装置IJの一実施形態の概略構成を示す斜視図、図2は、図1に示した液滴吐出装置IJのワークステージ2の平面図、図3(a)〜(c)は、図1に示した液滴吐出装置IJを模式的に示す側面図である。
本実施形態の液滴吐出装置IJは、インクジェット方式による液滴吐出装置であって、特に基板Pの所定領域上にカラーフィルター材料(機能液)の液滴を吐出し、カラーフィルターを形成する装置である。
【0019】
図1に示すように本実施形態の液滴吐出装置IJは、基台1、ワークステージ(ステージ)2、ステージ移動装置(移動機構)3、キャリッジ4、液滴吐出ヘッド(吐出ヘッド)5、キャリッジ移動装置6、チューブ7、第1タンク8、第2タンク9、第3タンク10、及び制御装置11を備えて構成されている。
【0020】
基台1は、ワークステージ2及びステージ移動装置3の支持台である。ワークステージ2は、基台1上においてステージ移動装置3によりX軸方向(所定方向)に往復移動可能に設置されたもので、上流側の搬送装置(図示せず)から搬送される基板Pを、真空吸着機構(図示せず)等によってXY平面上に保持するよう構成されたものである。ステージ移動装置3は、ボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、ワークステージ2のX座標を示すステージ位置制御信号に基づいて、ワークステージ2をX軸方向に往復移動させるものである。したがって、このステージ移動装置3によってワークステージ2は、液滴吐出ヘッド5に対してX軸方向(所定方向)に往復移動可能になっている。
【0021】
キャリッジ4は、液滴吐出ヘッド5を保持するもので、キャリッジ移動装置6によってY軸方向及びZ軸方向に移動可能に設けられたものである。
液滴吐出ヘッド5は、複数のノズル(図示せず)を有したもので、制御装置11から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、機能液としてのカラーフィルター材料の液滴を吐出するものである。また、液滴吐出ヘッド5は、カラーフィルター材料のR(赤色)、G(緑色)、B(青色)に対応して複数設けられており、それぞれの液滴吐出ヘッド5にはキャリッジ4を介してチューブ7が連結されている。
【0022】
そして、R(赤色)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第1タンク8からR(赤色)用のカラーフィルター材料の供給を受け、G(緑色)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第2タンク9からG(緑色)用のカラーフィルター材料の供給を受け、B(青色)に対応する液滴吐出ヘッド5はチューブ7を介して第3タンク10からB(青色)用のカラーフィルター材料の供給を受けるようになっている。
【0023】
このような複数の液滴吐出ヘッド5は、ワークステージ2が移動する方向と直交する方向の幅、つまりY軸方向における幅が、ワークステージ2に載置される基板Pの幅と同じか大きくなるように構成されている。したがって、基板Pに対するカラーフィルター材料の吐出時には、基本的にはキャリッジ4をY軸方向にほとんど移動させることなく、ステージ移動手段3によってワークステージ2をX軸方向に往復移動させるだけで、基板Pの全面に対してカラーフィルター材料の吐出が可能になっている。
【0024】
キャリッジ移動装置6は、基台1を跨ぐ橋梁構造をしたもので、Y軸方向及びZ軸方向に対してボールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構を備え、制御装置11から入力される、キャリッジ4のY座標及びZ座標を示すキャリッジ位置制御信号に基づいて、キャリッジ4をY軸方向及びZ軸方向に移動させるものである。
【0025】
チューブ7は、第1タンク8、第2タンク9、及び第3タンク10とキャリッジ4(液滴吐出ヘッド5)とを連結するカラーフィルター材料の供給用チューブである。第1タンク8は、R(赤)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してR(赤)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給するものである。第2タンク9は、G(緑)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してG(緑)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給するものである。第3タンク10は、B(青)用のカラーフィルター材料を貯蔵すると共に、チューブ7を介してB(青)に対応する液滴吐出ヘッド5にカラーフィルター材料を供給するものである。
【0026】
制御装置11は、ステージ移動装置3にステージ位置制御信号を出力すると共に、液滴吐出ヘッド5の駆動回路に描画データ及び駆動制御信号を出力することにより、液滴吐出ヘッド5による液滴吐出動作と、ワークステージ2の移動によるカラーフィルター基板Pの位置決め動作との同期制御を行い、カラーフィルター基板P上の所定の位置にカラーフィルター材料の液滴を吐出させるようになっている。また、制御装置11は、液滴吐出ヘッド5に出力する駆動信号を生成するものとなっている。
【0027】
さらに、制御装置11は、キャリッジ移動装置6にキャリッジ位置制御信号を出力し、キャリッジ4を移動させて液滴吐出ヘッド5をメンテナンス領域(図示せず)に移動させるようになっている。メンテナンス領域は、ワークステージ2の移動経路の側方に配置されたもので、各種のメンテナンス処理、具体的には、インクの増粘が進まないように各ノズルからインクを吐出させるフラッシング動作、ノズル面にキャップを被着(キャッピング)し、このキャップを介して吸引することにより、ノズル内の増粘したインクを除去したり、キャビティ内の気泡を除去する吸引動作、ノズル面をワイプ部材で払拭することによってノズル面に付着した付着物を除去するワイピング動作、などを行うための領域である。このようなメンテナンス処理は、基板Pにカラーフィルター材料(機能液)を吐出してカラーフィルターを形成するのとは、別のタイミングイで行うようになっている。
【0028】
また、本実施形態では、このようなメンテナンス領域とは別に、図2及び図3(a)〜(c)に示すようにワークステージ2上にも、フラッシング動作(フラッシング処理)を行うためのフラッシングエリア12が設けられている。フラッシングエリア12は、図2に示すようにワークステージ2の移動方向となるX軸方向(所定方向)における一方側と他方側とにそれぞれ配設されたもので、ワークステージ2のY軸方向における幅全体に形成された、長細い容器状のものである。このような構成のもとに液滴吐出ヘッド5は、本実施形態では基板Pにカラーフィルター材料(機能液)を吐出する直前に、全てのノズルからインクを吐出させ、フラッシング動作をなさせることが可能になっている。
【0029】
また、ワークステージ2には、フラッシングエリア12の外側、すなわち前記X軸方向における一方側の最外部と、他方側の最外部とに、それぞれ気体吹き出し機構13が設けられている。気体吹き出し機構13は、本実施形態では図2に示すように筒状(例えば円筒状)の吹き出し配管14と、これに接続するフレキシブル配管15と、該フレキシブル配管15に接続する気体源16と、を備えて構成されたものである。
【0030】
気体源16は、本実施形態ではコンプレッサーによって構成されたもので、フレキシブル配管15を介して圧縮した空気を前記吹き出し配管14に送気するものである。ここで、空気は取り扱い易く安価であるため、製造コストをほとんど上昇させることがなく、したがって窒素等の不活性ガスを用いるのに比べ有利である。ただし、吐出する材料が例えば有機EL素子の発光層等の機能材料である場合など、酸素による劣化が起こる場合には、窒素等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
【0031】
気体源16と吹き出し配管14との間には、乾燥剤(図示せず)やフィルター(図示せず)などが設けられており、気体源16から送気される空気中の水分(湿気)や微粒子等が除去されるようになっている。
吹き出し配管14には、その長さ方向、すなわちY軸方向に沿ってその側面に多数の吹き出し口(気体吹き出し口)17が整列・形成されている。これら吹き出し口17は、本実施形態では図3(a)〜(c)に示すように、ワークステージ2の外方で、かつ僅かに斜め上方に向いて設けられている。したがって、前記気体源16から送気された空気は、吹き出し口17を通り、ワークステージ2の外方でかつ斜め上方に向かって、キャリッジ4のY軸方向における幅以上の広さに広がって、吹き出るようになっている。
【0032】
なお、吹き出し配管14は、その両端部が閉塞しており、したがって吹き出し口17からのみ空気を吹き出すようになっている。また、気体源に接続するフレキシブル配管15は、吹き出し配管14の長さ方向における中央部に接続しており、これによって吹き出し配管14は、その長さ方向においてほぼ均一に空気を吹き出すようになっている。
また、気体源16に接続するフレキシブル配管15は、図2に示すように途中で三方弁18を介して二方向に分岐しており、分岐したそれぞれがワークステージ2の一方側に配設された吹き出し配管14と、他方側に配設された吹き出し配管14とに接続している。ここで、前記三方弁18は、その動作が制御装置11によっても制御可能になっている。
【0033】
次に、このような構成からなる液滴吐出装置IJによる、基板Pへのカラーフィルターの製造工程を説明する。
まず、図3(a)に示すように液滴吐出ヘッド5に対してX軸方向における一方の側にあるワークステージ2を、その上に載置固定した基板Pにカラーフィルターを形成するべく、液滴吐出ヘッド5側に移動させる。すなわち、ステージ移動装置3によってワークステージ2をX軸方向に移動させ、基板Pが液滴吐出ヘッド5の直下に位置するようにする。
【0034】
その際、液滴吐出ヘッド5のノズル形成面5a側には、その前の吐出の際に発生したカラーフィルター材料のミスト(インクミスト)Mが残っていることがある。そこで、本実施形態では、ステージ移動装置3によってワークステージ2をX軸方向に移動させ、液滴吐出ヘッド5に近づける際、特にワークステージ2が液滴吐出ヘッド5の直下に至ることなく、その側方から液滴吐出ヘッド5に近づく過程において、気体吹き出し機構13を作動させ、吹き出し配管14から空気を吹き出す。具体的には、気体源16を作動させ、フレキシブル配管15を介して吹き出し配管14の吹き出し口17から空気を吹き出す。
【0035】
その際、二つの吹き出し配管14から同時に空気を吹き出してもよいが、液滴吐出ヘッド5側と反対の側に向いている吹き出し配管14は、実質的に前記ミストを排除するようには機能しないため、前記三方弁18を調整することによってこの吹き出し配管14への空気の送気を停止しておく。そして、液滴吐出ヘッド5側に位置し、その吹き出し口17を液滴吐出ヘッド5に向けている吹き出し配管14にのみ、空気を送気する。ただし、装置構成を簡略化するために三方弁18を設けない場合などでは、前記したように二つの吹き出し配管14から同時に空気を吹き出してもよい。
【0036】
このようにして吹き出し配管14に空気を送気すると、液滴吐出ヘッド5側の吹き出し配管14は、ワークステージ2の移動に伴って液滴吐出ヘッド5に近づきつつ、そのノズル形成面5a側に空気を吹き出す。これにより、液滴吐出ヘッド5のノズル形成面5a側に残っていたカラーフィルター材料のミストMが、ノズル形成面5aの下方から外側に、すなわちワークステージ2の外方となる移動方向側に、排除される。
【0037】
このようにして、カラーフィルター材料のミストMをノズル形成面5aの下方から排除しつつワークステージ2を移動させ、図3(b)に示すようにワークステージ2を液滴吐出ヘッド5の直下に位置させる。その際、特に液滴吐出ヘッド5が吹き出し配管14の内側に位置するフラッシングエリア12の直上に相対的に到達したら、必要に応じて液滴吐出ヘッド5の全ノズルからフラッシング動作を行わせる。このようにすることで、たとえ吹き出し配管14からの空気流によって液滴吐出ヘッド5のノズル内のカラーフィルター材料が乾き、その粘度が上昇しても、粘度が上昇した材料をフラッシングエリア12内に排出することにより、各ノズルからの材料の吐出性を元の正常な状態に、容易にかつ速やかに戻すことができる。
【0038】
次いで、ワークステージ2上の基板Pを液滴吐出ヘッド5の直下にまで移動させたら、その移動をさらに続けつつ、液滴吐出ヘッド5の各ノズルから基板Pの所定領域に、設定された色のカラーフィルター材料を液滴Lとして吐出する。その際、吹き出し配管14から吹き出された空気は、基板P側、すなわち液滴吐出ヘッド5の直下には向かないため、液滴吐出ヘッド5の吐出精度を損なうことがない。
【0039】
そして、ワークステージ2の移動によって基板Pが液滴吐出ヘッド5の直下から外れたら、カラーフィルター材料の吐出を停止する。
さらにワークステージ2を移動させ、図3(c)に示すようにワークステージ2が液滴吐出ヘッド5の直下から外れたら、進行方向とは逆側に位置する吹き出し配管14が、液滴吐出ヘッド5に向くようになる。そこで、気体吹き出し機構13を作動させ、この吹き出し配管14から空気を吹き出す。これにより、カラーフィルター材料の吐出によって再度発生したミストMは、液滴吐出ヘッド5のノズル形成面5a側からワークステージ2の外方に再度排除される。
【0040】
なお、このような操作は、制御装置11によって三方弁18を制御すること等により行うことができる。ただし、このような複雑な制御を行うことなく、単に、ワークステージ2や液滴吐出ヘッド5の稼働中、二つの吹き出し配管14から連続して空気を吹き出させ続けるようにしてもよい。その場合にも、前述したように液滴吐出ヘッド5の吐出性等に何等影響を与えることはない。
【0041】
このようにしてワークステージ2を移動させ、液滴吐出ヘッド5の直下を通過させたら、必要に応じてキャリッジ移動装置6によりキャリッジ4を移動させ、例えば液滴吐出ヘッド5間の間隔を埋めるように液滴吐出ヘッド5を僅かに移動させる。そして、ワークステージ2を、再度液滴吐出ヘッド5に向けて移動させる。その際、図3(a)、(b)、(c)の順に行った往路での操作を、図3(c)、(b)、(a)の順に行う復路でも、同様に行う。
【0042】
すなわち、図3(c)に示す状態から図3(b)に示す状態に至るように、ワークステージ2を液滴吐出ヘッド5に近づける際には、特に液滴吐出ヘッド5に向く側の吹き出し配管14から空気を吹き出し、液滴吐出ヘッド5のノズル形成面5a側に滞留するミストをワークステージ2の進行方向側に排除する。
また、ワークステージ2を液滴吐出ヘッド5の直下に移動し、フラッシングエリア12を液滴吐出ヘッド5の直下に到達させたら、液滴吐出ヘッド5の全ノズルからフラッシング動作を行わせる。
さらにワークステージ2を移動させ、図3(a)に示すようにワークステージ2が液滴吐出ヘッド5の直下から外れたら、進行方向とは逆側に位置する吹き出し配管14から空気を吹き出す。
このような一連の動作を、基板P上に所望量のカラーフィルター材料を吐出するまで繰り返し、その後、基板Pを搬送装置(図示せず)によって次工程に送る。
【0043】
このような液滴吐出装置IJにあっては、ワークステージ2の一方側と他方側とに、それぞれ外側に向かうように空気を吹き出す吹き出し配管14(気体吹き出し機構13)を設けているので、液滴吐出に伴って発生したカラーフィルター材料のミストMが吐出ヘッド5の下方に滞留していても、液滴吐出ヘッド5に対してワークステージ2を移動させた際、前記の吹き出し配管14によってミストMを液滴吐出ヘッド5の下方からワークステージ2の外方に排除することができる。したがって、ミストMによって形成するカラーフィルターに混色が生じるといった不都合を防止することができる。
【0044】
また、ワークステージ2上の基板Pへのカラーフィルター材料の吐出後、さらに液滴吐出ヘッド5に対してワークステージ2を移動させ、ワークステージ2が液滴吐出ヘッド5の下方から相対的に通り過ぎた際、進行方向とは逆側に位置する吹き出し配管14から空気を吹き出すことにより、吐出によって再度発生したミストMを、液滴吐出ヘッド5の下方からワークステージ2の外方に再度排除することができる。したがって、これによっても、ミストMによって形成するカラーフィルターに混色が生じるといった不都合を防止することができる。
【0045】
さらに、液滴吐出ヘッド5から基板Pに対してカラーフィルター材料を吐出している間は、吹き出し配管14から吹き出された空気は基板P側、すなわち液滴吐出ヘッド5の直下に向かないため、液滴吐出ヘッド5からの液滴の直線性に影響を与えることがなく、したがってその吐出精度を損なうことがない。
【0046】
また、吹き出し配管14に対して、空気を吹き出すための吹き出し口17を、X軸方向と直交するY軸方向に多数整列・形成しているので、ワークステージ2のY軸方向における幅全域から空気を吹き出すことができ、したがって基板Pの上にミストMが滞留するのを確実に防止することができる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されないことは言うまでもなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、前記実施形態では、吹き出し配管14として一つの配管を用い、これの側面に多数の吹き出し口17を形成したものを用いたが、一つあるいは複数の配管を用い、その端部開口をワークステージ2の外方に向けて配置し、該端部開口から空気(気体)を吹き出すようにしてもよい。その場合に、端部開口側を、Y軸方向に首振りさせるようにし、吹き出した気体をY軸方向に拡げるようにしてもよい。
【0049】
また、前記実施形態では、機能液としてカラーフィルター材料を用い、基板P上にカラーフィルターを形成する場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば有機EL素子の発光層などの機能材料や、配線材料を基板上に吐出し、発光層や配線層を形成する場合にも、適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
IJ…液滴吐出装置、2…ワークステージ(ステージ)、3…ステージ移動装置(移動機構)、5…液滴吐出ヘッド、12…フラッシングエリア、13…気体吹き出し機構、14…吹き出し配管、17…吹き出し口(気体吹き出し口)、M…ミスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置するステージと、ノズルを有し、該ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記ステージを前記吐出ヘッドに対して所定方向に相対的に往復移動させる移動機構と、を備え、
前記ステージには、前記所定方向における一方側と他方側とに、それぞれステージの外側に向かうように気体を吹き出す気体吹き出し機構が設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記移動機構は、前記吐出ヘッドに対して前記ステージを、前記所定方向に往復移動させるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記気体吹き出し機構は、前記ステージの、前記所定方向における一方側の最外部と、他方側の最外部とにそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記気体吹き出し機構は、気体を吹き出すための気体吹き出し口を、前記所定方向と直交する方向に複数整列させていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記ステージには、前記所定方向における一方側と他方側とに、それぞれフラッシングエリアが設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記気体が空気であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記機能液が、カラーフィルターの形成材料であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−189281(P2011−189281A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57881(P2010−57881)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】