説明

液滴吐出装置

【課題】機能液(インク)の加熱について省エネルギー化を可能にした、液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズルを有し、ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドと、吐出ヘッドの吐出動作を制御するヘッド制御部60と、吐出ヘッドに供給する機能液を貯留するタンク72と、を含む。タンク72は排気口73を有したタンクチャンバー71内に収容されている。ヘッド制御部60には、ヘッド制御部60で発生した熱を排出してタンクチャンバー71内に排気する排気ファン65が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板上に各種の機能性薄膜を形成する方法としては、スピンコート法やフレキソ印刷法が一般に用いられている。これに対して近年では、インク使用量削減や工程数削減に効果的であるとして、液滴吐出法が種々の薄膜形成に用いられるようになってきている。液滴吐出法を実施する液滴吐出装置としては、ノズルからインク(機能液)の液滴を吐出する吐出ヘッドと、この吐出ヘッドの吐出動作などを制御する集積回路を備えたヘッド制御部と、前記インクを貯留するタンクと、を具備したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような液滴吐出装置において、前記ヘッド制御部は、特許文献1に開示されているように、機能液の吐出データを制御信号として送る処理部を備えている。この処理部は、通常、多数の電界効果型トランジスタ(FET)を有したIC等の集積回路からなっている。電界効果型トランジスタは、比較的大きな電流を流すことができ、集積回路の構成要素として好適に用いられているが、大きな電流を流すことで発熱量が大きくなる。したがって、通常は発熱による過熱を抑えるため、例えば集積回路をヒートシンクに取り付けて放熱させ、集積回路の過熱を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−152339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吐出ヘッドに供給するインク(機能液)については、特にその粘性が高い場合では、吐出ヘッドによる吐出性を高めるためヒーターで加熱することがある。しかし、このようにインクを直接ヒーターで加熱する場合には、加熱に要する電気消費量が多くなり、省エネルギー化が妨げられるといった課題がある。
【0006】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、機能液(インク)の加熱について省エネルギー化を可能にした、液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本発明の液滴吐出装置は、ノズルを有し、該ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの吐出動作を制御するヘッド制御部と、前記吐出ヘッドに供給する前記機能液を貯留するタンクと、を含み、
前記タンクは排気口を有したタンクチャンバー内に収容され、
前記ヘッド制御部には、該ヘッド制御部で発生した熱を排出して前記タンクチャンバー内に排気する排気ファンが設けられていることを特徴としている。
【0008】
この液滴吐出装置によれば、ヘッド制御部で発生した熱を排出してタンクチャンバー内に排気する排気ファンが設けられているので、タンクチャンバー内に収容されたタンクは、排気ファンによって送られてきたヘッド制御部での排熱を有する排気によって加温される。したがって、タンク内の機能液も加温されてその粘度が低下し、吐出ヘッドによる吐出性が高くなる。また、機能液の吐出性を高めるべくヒーターで加熱する場合にも、ヘッド制御部での排熱によって予備加熱されることにより、ヒーターによる加熱に要する電気消費量が少なくなって省エネルギー化が可能になる。
【0009】
また、前記液滴吐出装置において、前記タンクチャンバー内には、該タンクチャンバー内の温度を検出する温度センサが設けられ、前記排気口には、前記温度センサで検出された温度に基づいて該排気口の開度を調整する開閉扉が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、開閉扉による排気口の開度を調整し、タンクチャンバー内の温度を制御することにより、機能液の温度が所望の温度になるように調整することが容易になる。
【0010】
また、前記液滴吐出装置において、前記タンクチャンバーには、温調手段が設けられているのが好ましい。
このようにすれば、ヘッド制御部での排熱だけではタンクチャンバー内を所望の温度に加温するのに不十分である場合にも、ヒーター等の加熱手段を含む温調手段によって直接タンクチャンバーを加熱することで、タンクチャンバー内を所望の温度にすることができる。また、温調手段による加熱は、ヘッド制御部での排熱だけでは不足する分を補うだけでよく、したがって温調手段のみで加熱する場合に比べ、前述したように電気消費量が少なくなって省エネルギー化が可能になる。
【0011】
また、前記液滴吐出装置において、前記ヘッド制御部及び前記タンクは、前記吐出ヘッドを下面側に保持する保持板上に配置されているのが好ましい。
このようにすれば、タンクから吐出ヘッドまでの間の距離が短くなり、タンク内の機能液の、吐出ヘッドまでの経路が短くなることから、タンク内にて加温された機能液が吐出ヘッドに送られる途中でほとんど冷やされることがなく、ほぼ加温された状態で吐出ヘッドに供給されるようになる。したがって、機能液についての、吐出ヘッドからの良好な吐出性が確保される。
【0012】
また、前記液滴吐出装置において、前記機能液は紫外線硬化型のインクであるのが好ましい。
紫外線硬化型のインクは一般に常温での粘性が高く、そのままでは吐出ヘッドからの吐出性が低いため、従来では予めヒーターによって加熱を行っている。そこで、このような紫外線硬化型のインクを前記ヘッド制御部での排熱によって加温することにより、インクの良好な吐出性を確保するとともに、ヒーターによる加熱の負担を無くし、あるいは少なくして省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明における液滴吐出装置の一実施形態の概略構成を示す斜視図である。
【図2】(a)は液滴吐出装置の平面図、(b)は同じく側面図である。
【図3】(a)〜(c)は液滴吐出ヘッドの概略構成を説明するための図である。
【図4】ヘッドユニットの概略構成を示す底面図である。
【図5】(a)は保持板とその近傍の概略構成説明図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の液滴吐出装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
図1、図2(a)、(b)は、本発明における液滴吐出装置の一実施形態の概略構成を示す図であって、図1は液滴吐出装置の斜視図、図2(a)は液滴吐出装置の平面図、図2(b)は液滴吐出装置の側面図である。なお、図1、図2(a)、(b)では、本発明の液滴吐出装置を、連続した長尺な記録媒体に対して印刷を行う、印刷装置に適用した場合について示している。図1、図2(a)、(b)において符号1は液滴吐出装置であり、この液滴吐出装置1は、紫外線硬化型インク(機能液)を液滴吐出する吐出ヘッド20と、この吐出ヘッド20から吐出された紫外線硬化型インクに紫外線を照射する照射装置80と、吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、吐出ヘッド20の吐出動作を制御するヘッド制御部60と、供給排出機構部3と、インク供給部70と、メンテナンス部5と、を備えて構成されている。
【0016】
吐出ヘッド20は、インクジェット方式の吐出ヘッドであって、紫外線硬化性を有する成分を含むインク、すなわち紫外線硬化型インクを液滴として、連続した長尺な帯状の記録媒体10の被記録箇所となる表面に向けて吐出するものである。ここで、記録媒体10としては、本実施形態では紫外線硬化型インクによる記録が可能な媒体が用いられ、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリカーボネイト(PC)などのフレキシブルフィルムが用いられる。
【0017】
供給排出機構部3は、記録媒体10を吐出ヘッド20による記録位置に供給し、また、この記録位置から排出するものである。インク供給部70は、後述するようにタンク(図示せず)に貯留したインクを吐出ヘッド20に供給するためのもので、複数種のインクに対応して複数のタンクを有し、これらタンクをタンクチャンバー71内に収容したものである。メンテナンス部5は、吐出ヘッド20の保守を行うものである。また、液滴吐出装置1には、これら各機構部等を総括的に制御する制御部(図示せず)が設けられている。
【0018】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット33と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、を備えて構成されている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bとを、それぞれ二組ずつ備えて構成されている。吸着ユニット33は、図2(a)、(b)に示すように吸着テーブル33aと、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えて構成されている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回転軸まわりに回転可能になっており、それぞれの回転軸は互いに略平行になっている。
記録媒体10が送られる方向は、互いに略平行な各リール、及び各ローラーの回転軸に略直交する方向となっている。なお、図2(a)では、各リール、及び各ローラーの回転軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、記録媒体10の送り方向をY軸方向と表記している。
【0019】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33aを挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1つずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、テーブル台43の底面に設けられ、その状態でY軸ガイドレール42a上に配設されたもので、Y軸駆動モーター(図示せず)によってY軸ガイドレール42a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。
【0020】
吸着ユニット33の吸着テーブル33aは、テーブル台43上に固定されたテーブル昇降機構44に固定されたものである。この吸着テーブル33aは、その上面上に記録媒体10を保持するようになっており、したがってその上面は、記録媒体10を保持する側の面、すなわち保持面となっている。このような構成のもとに、保持面上に記録媒体10が保持された状態で、前記吐出ヘッド20から紫外線硬化型インクが吐出され、このインクの液滴が記録媒体10上に着弾するようになっている。
【0021】
この吸着テーブル33aには、図示しない負圧源に接続する吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部(図示せず)が設けられ、該吸着用凹部は前記保持面上に開口している。これにより、記録媒体10はその所定部位が保持面上に位置決めされた状態で、前記負圧源に接続する吸着用凹部によって吸引・吸着されることにより、保持面上に保持固定されるようになっている。
【0022】
図2(b)に示す前記テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33aをZ軸方向に昇降させるもので、吸着テーブル33aの保持面(吸着面)をZ軸方向における所定の位置となる吸着位置、及びこの吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置との間で昇降させ、かつ、各位置にて保持固定するようになっている。吸着位置にあるときの吸着テーブル33aの保持面の位置は、後述する供給ローラー34の外周、及び媒体送りローラー36の外周のそれぞれの上端の位置に、略一致している。
【0023】
吸着テーブル33aのY軸方向における両側には、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとが配設されている。これら供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、支持部材(図示せず)を介してテーブル台43に固定され、その状態で吸着テーブル33aを挟んでその両側に配設されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aは、吸着テーブル33aの上流側、すなわち供給リール31側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33aの下流側、すなわち巻取リール32側に配設されている。
【0024】
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。また、このテーブル台43上に配置された吸着テーブル33a、供給ローラー34及び従動ローラー34a、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aも、Y軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、かつ、Y軸方向における任意の位置に保持可能になっている。
【0025】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット33と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、記録媒体10の供給方向であるY軸方向においてこの順に配置されており、供給リール31側が記録媒体10の供給方向における上流側、巻取リール32側が下流側になっている。
【0026】
また、吸着ユニット33において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向においてこの順に配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向においてこの順に配置されている。
【0027】
供給リール31には、帯状の記録媒体10が巻かれており、供給モーター(図示せず)によって供給リール31が回転させられることにより、記録媒体10が繰り出されるようになっている。従動ローラー34aは、その外周が供給ローラー34の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は、供給モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この供給ローラー34に直接又は間接的に接する従動ローラー34aは、供給ローラー34の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟持される記録媒体10は、供給ローラー34の回転によって送られるようになっている。
【0028】
アイドラローラー37は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方(本実施形態では下方)に付勢されている。また、このアイドラローラー37は、記録媒体10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、前記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー37によって付勢されることにより、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0029】
したがって、記録媒体10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟持される際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、供給ローラー34における記録媒体10の供給速度と、供給リール31における記録媒体10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0030】
従動ローラー36aは、その外周が供給ローラー36の外周に接して配置されており、付勢装置(図示せず)によって媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は、媒体送りモーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、この媒体送りローラー36に直接又は間接的に接する従動ローラー36aは、媒体送りローラー36の回転に従動して回転するようになっている。このような構成のもとに、これら媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟持される記録媒体10は、媒体送りローラー36の回転によって送られるようになっている。
【0031】
ここで、媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による送り量より多く設定されている。また、媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構には、トルク制御機構(図示せず)が組み込まれている。このような構成のもとに、媒体送りローラー36において供給ローラー34より速く送られる記録媒体10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、前記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られるようになっている。
【0032】
この張られた部分には、吸着テーブル33aの保持面(吸着面)が対向している。すなわち、記録媒体10における、吸着テーブル33aの保持面上に位置する部分は、前記トルク制御機構で制御されたトルクに応じた張力で張られている。ここで、前述した吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面の位置は、媒体送りローラー36の外周上端と供給ローラー34の外周上端とがなす面の位置に略一致している。したがって、吸着位置に位置する吸着テーブル33aの保持面(吸着面)は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られた記録媒体10に接してこれを保持するようになっている。
【0033】
吸着テーブル33aは、その保持面上に記録媒体10を保持するようになっている。保持面は平坦な面であり、したがって記録媒体10における被保持面、すなわち被記録面と反対の側の面は、保持面によって平坦な状態に保持されるようなっている。また、この保持面には、図示しないものの、吸着用孔又は吸着用溝からなる吸着用凹部が設けられており、該吸着用凹部によって記録媒体10はその被保持面が吸着され、吸着テーブル33aの保持面上に吸着・保持されるようになっている。すなわち、吸着用凹部には、吸引ポンプ等の図示しない負圧源が配管等を介して接続されており、これによって吸着用凹部はその開口部上に位置する記録媒体10を吸着するようになっている。
【0034】
巻取リール32は、巻取モーター(図示せず)によって回転させられるようになっており、これにより、媒体送りローラー36から送り出された記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られるようになっている。
アイドラローラー38は、その回転軸がZ軸方向に揺動可能になっており、かつ、揺動方向の一方に付勢されている。また、このアイドラローラー38は、記録媒体10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール31との間の部分に、前記付勢力によって当接させられている。このような構成のもとに記録媒体10は、アイドラローラー38によって付勢されることにより、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと巻取リール31との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、弛み無く張られた状態になっている。
【0035】
したがって、記録媒体10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が、略平坦に維持され易くなっている。なお、媒体送りローラー36における記録媒体10の送り速度と、巻取リール32における記録媒体10の巻き取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることにより、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。また、吸着ユニット33の移動による、媒体送りローラー36と巻取リール32との間における記録媒体10の弛み量の変動についても、同様にして、弛み無く張られた状態に維持されるようになっている。
【0036】
このような状態のもとで、記録媒体10は供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル33aの保持面上に保持された部位に、記録(印刷)がなされるようになっている。
【0037】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイド11aとX軸スライダー11bと支持台11dとをそれぞれ二組備え、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えて構成されている。支持柱台11dは、吸着テーブル33aのX軸方向に、該吸着テーブル33aを挟んでその両側にそれぞれ一つずつ配設されており、前述した一対のY軸ガイドレール42a、42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持柱台11dとの間には、メンテナンス部5が配設されている。
【0038】
二つの支持柱台11d、11dのそれぞれの上には、そのY軸方向おける両端部に、ガイドレール支持柱11cがそれぞれ1本ずつ、計2本立設されている。二つのX軸ガイド11aのうちの一方は、支持柱台11dの供給リール31の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。また、一対のX軸ガイド11aのうちの他方は、支持柱台11dの巻取リール32の側の端部にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11c間に架け渡されて、吸着テーブル33aの上方にてX軸方向に延在した状態で配設されている。
【0039】
X軸スライダー11bは、X軸ガイド11a上に配設されたもので、X軸駆動モーター(図示せず)によってX軸ガイド11a上をその延在方向に摺動するように構成されたものである。2本のX軸ガイド11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22の保持板27の両端部がそれぞれ固定されている。両端部がそれぞれX軸スライダー11bに固定された保持板27は、X軸スライダー11bに支持された状態で、2本のX軸ガイド11aの間に懸架されている。このような構成のもとに、保持板27は、X軸駆動モーターによってX軸ガイド11a上をその延在方向に摺動するようになっており、また、X軸方向における任意の位置に保持されるようになっている。
【0040】
ヘッドキャリッジ22は、保持板27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21と、ヘッド制御部60と、インク供給部70とを備えて構成されている。サブキャリッジ28は、保持板27の下面略中央部に設けられたもので、このサブキャリッジ28の下面側には、ヘッドユニット21が固定されている。ヘッドユニット21の下面側には吐出ヘッド20が備えられており、この吐出ヘッド20の底部側には、図3(a)に示すように吐出ノズル24を形成したノズル基板25が配設されている。このような構成のもとに吐出ヘッド20は、前記の吸着テーブル33aの保持面上に位置させられるようになっており、その際、ノズル基板25を保持面に対向させるようになっている。
【0041】
ここで、吸着ユニット33はY軸走査機構42によってY軸方向に移動可能になっており、したがって吸着テーブル33aの保持面はY軸方向に移動可能になっている。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位を、Y軸方向に走査させることが可能になっている。
一方、サブキャリッジ28に固定されたヘッドユニット21の吐出ヘッド20は、X軸走査機構11によってサブキャリッジ28が設けられた保持板27がX軸方向に移動させられることにより、X軸方向に走査させられるようになっている。
【0042】
このような構成のもとに、X軸走査機構11によってヘッドユニット21の吐出ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によって記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位をY軸方向に走査させることができる。すなわち、記録媒体10における吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された部位のほぼ全面に対して、吐出ヘッド20の吐出ノズル24を対向させることができるようになっている。
【0043】
よって、吸着テーブル33aの保持面上に吸着保持された記録媒体10の被記録部分を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、吐出ヘッド20から紫外線硬化型インクを液滴として吐出させることで、記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクの液滴(ドット)を配することができる。したがって、ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33aの保持面に吸着保持された記録媒体10をY軸方向に移動させる副走査(改行)とを制御することにより、吸着テーブル33aの保持面に保持された記録媒体10上の任意の位置にヘッドユニット21の吐出ヘッド20を対向させ、その状態で紫外線硬化型インクを液滴として吐出させることができる。これにより、記録媒体10に所望の画像を形成(記録)することが可能になる。
【0044】
次に、吐出ヘッドについて、図3(a)〜(c)を参照して説明する。図3(a)〜(c)は吐出ヘッドの概略構成を示す図であり、(a)は吐出ヘッド20の概略構成を示す外観斜視図、(b)は吐出ヘッド20の内部構造を説明するための要部斜視図、(c)は吐出ヘッド20の吐出ノズル部分を示す要部側断面図である。なお、図3に示したX軸、Y軸、Z軸は、吐出ヘッド20が液滴吐出装置1に組み込まれた状態を示す図2(a)、(b)における、X軸、Y軸、Z軸に一致している。
【0045】
図3(a)に示すように吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えて形成されており、ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が直線状に配列されてなるノズル列24Aが2列形成されている。そして、吐出ノズル24から紫外線硬化型インクを液滴として吐出し、対向する記録媒体10の面上に着弾させることで、記録媒体10上の所望位置に紫外線硬化型インクを配することができるようになっている。
ノズル列24Aは、Y軸方向に沿って形成されたもので、吐出ノズル24を等間隔に配置したものである。なお、2列のノズル24A間では、吐出ノズル24の位置が半ピッチずれた千鳥状になっている。
【0046】
図3(b)、(c)に示すように吐出ヘッド20は、ノズル基板25上に圧力室プレート51を積層し、さらに圧力室プレート51上に振動板52を積層したものである。圧力室プレート51には、吐出ヘッド20に供給される紫外線硬化型インクが常に充填される液たまり55が形成されており、液たまり55は、振動板52とノズル基板25と、壁部(図示せず)とに囲まれた空間からなっている。紫外線硬化型インクは、振動板52の液供給孔53を経由して液たまり55に供給されるようになっている。また、圧力室プレート51には、複数のヘッド隔壁57によって区画された圧力室58が形成されている。
【0047】
圧力室58は吐出ノズル24のそれぞれに対応して設けられており、圧力室58の数と吐出ノズル24の数とは同じになっている。圧力室58には、2つのヘッド隔壁57の間に位置する供給口56を介して、液たまり55から機能液が供給されるようになっている。ヘッド隔壁57の圧力室58と吐出ノズル24と供給口56との組は、液たまり55に沿って1列に並んでおり、1列に並んだ吐出ノズル24がノズル列24Aを形成している。図3(b)では図示を省略しているが、吐出ノズル24Aを含むノズル列24Aに対して、その側方にもう1列のノズル列24Aが形成されている。
【0048】
図3(c)に示すように振動板52上には、それぞれの圧力室58に対応して、圧電素子59が配置されている。圧電素子59は、下部電極と上部電極との間に圧電層を挟持してなるもので、電極間に駆動電圧が印加されることで、対応する吐出ノズル24から紫外線硬化型インクを吐出させるようになっている。
【0049】
次に、ヘッド機構部2が備えるヘッドユニット21の概略構成について、図4を参照して説明する。図4は、ヘッドユニットの概略構成を示す底面図である。なお、図4に示したX軸及びY軸は、図2(a)、(b)に示したX軸及びY軸に一致している。
図4に示すようにヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下面に取り付けられたユニットプレート23と、ユニットプレート23の下面側に搭載された9個の吐出ヘッド20とを有し、さらにこれら9個の吐出ヘッド20のX軸方向における両側に、紫外線を照射する照射装置80をそれぞれ配設したものである。
【0050】
吐出ヘッド20は、ノズル基板25を下方に向けた状態で、保持部材(図示せず)によってユニットプレート23に固定されている。また、9個の吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの吐出ヘッド20からなるヘッド組20Aを、3つ形成している。なお、各吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が液滴吐出装置1に取り付けられた状態で、Y軸方向に沿って配列させられている。
【0051】
一つのヘッド組20Aを構成する3個の吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う吐出ヘッド20の、一方の吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、半ノズルピッチずれて配置されている。このような構成のもとにヘッド組20Aが有する3個の吐出ヘッド20は、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全ての吐出ノズル24がY軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶようになる。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになる。したがって、一つのヘッド組20Aが備える3個の吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うことができる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍である1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は約75.5mmである。なお、吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組20Aを構成している。
【0052】
また、ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、全ての吐出ノズル24がY軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶようになっている。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出される液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線に着弾するようになっている。したがって、ヘッドユニット21が備える三つのヘッド組20Aにおける9個の吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うことができる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記すると、このユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍である3240個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は約226.7mmである。すなわち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個のドットが70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成されるようになる。
【0053】
照射装置80は、紫外線光源(図示せず)を備えて構成されたもので、紫外線光源を下方に向けた状態でサブキャリッジ28又はユニットプレート23に固定されている。照射装置80は、前記したように吐出ヘッド20のX軸方向における両側にそれぞれ配設されたものであり、これによって吐出ヘッド20から記録媒体10に向けて紫外線硬化型インクが吐出された直後に、記録媒体10に着弾した紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射できるようになっている。すなわち、吐出ヘッド20はX軸方向に走査されつつ、紫外線硬化型インクを吐出する。したがって、ユニットプレート23がX軸方向に走査された際、走査方向に対して後側に位置する照射装置80から記録媒体10に向けて紫外線を照射することにより、記録媒体10上に着弾している紫外線硬化型インクに対して紫外線を照射することができるようになっている。
【0054】
ここで、紫外線光源としては、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を用いることができる。また、紫外帯域で発光するLEDを用いることもできる。
【0055】
このような紫外線光源から照射される紫外線によって硬化する紫外線硬化型インクとしては、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合されたものが挙げられる。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。したがって、インクを硬化させ目的で溶媒を揮発させることはない。
【0056】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0057】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N− trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2− (1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0058】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、インクジェット式記録装置における吐出適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0059】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0060】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。前記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0061】
さらに、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0062】
なお、このような紫外線硬化型インクとしては、顔料や染料等の色成分を含む、色材としてのカラーインクが挙げられるが、アンダーコート、オーバーコートを行うためのクリアインクを挙げることもできる。
【0063】
このような紫外線硬化型インクは、図1、図2(a)、(b)に示したインク供給部70内のタンク内に貯留されている。また、このインク供給部70を保持する保持板27上には、図5(a)に示すように吐出ヘッド20の吐出動作を制御するヘッド制御部60が設けられている。図5(a)は、保持板27とその近傍の概略構成を説明するための一部断面視した側面図である。
【0064】
図5(a)に示すようにヘッド制御部60は、電源61と、図示しないICチップ(集積回路)を実装した複数の基板62とを有し、これら電源61及び基板62を筐体63内に収容したものである。基板62に実装されたICチップは、多数の電界効果型トランジスタ(FET)を有して構成されたもので、基板62にはんだ付けなどによって取り付けられている。なお、筐体63には、外部の空気を取り入れる吸入口(図示せず)と、排気口(図示せず)とが形成されている。
【0065】
ICチップは、液滴吐出のための駆動信号(制御信号)を吐出ヘッド20に供給するように構成されており、さらに、X軸走査機構11におけるX軸駆動モーターやY軸走査機構42におけるY軸駆動モーターに、駆動信号を供給するように構成されている。このように各駆動信号を供給する際、これらICチップは、これを構成する多数の電界効果型トランジスタ(FET)が発熱し、したがってICチップ全体が発熱する。また、電源61も当然ながら発熱する。ICチップや電源61が発熱すると、これらを覆う筐体63内の温度が上昇し、ICチップ(集積回路)の作動に悪影響を及ぼすおそれがあるため、筐体63には排気ファン65が設けられている。
【0066】
排気ファン65は、筐体63に形成された排気口(図示せず)と、排気ダクト66との間に取り付けられたもので、筐体63内の空気を吸引し、排気ダクト66側に排気するものである。排気ダクト66には、本実施形態ではインク供給部70のタンクチャンバー71が接続されている。タンクチャンバー71は、ステンレス等の金属などからなる直方体形状(平面視矩形状)のもので、その内部には、前述したように前記紫外線硬化型インクを貯留するタンク72が複数収容されている。例えば、B(ブラック)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、C(シアン)の4種の紫外線硬化型カラーインクが、それぞれ異なるタンク72に貯留されている。
【0067】
これらタンク72には、貯留したインクを排出するための排出管(図示せず)が設けられており、これら排出管は、保持板27の下面側に設けられたヘッドユニット21の吐出ヘッド(図示せず)に接続されている。したがって、タンク72と吐出ヘッド(20)とは、実質的に保持板27に隔てられてその上下に配置されているので、例えば保持板27を貫通させて前記排出管を配設することにより、これらタンク72と吐出ヘッド(20)との間の経路を十分に短くすることができる。特に、吐出ヘッド(20)の略直上にタンク72を配置すれば、これらの間の経路をより十分に短くすることができる。
【0068】
また、タンクチャンバー71には、排気口73が形成されている。排気口73は、前記排気ダクト66が接続された側と反対の側の上板部(図示せず)に形成されたもので、図1、図2(a)に示すようにX軸ガイド11aの長さ方向に沿って延びるスリット状の長細い開口である。このような構成のもとに、図5(a)に示すように排気ダクト66を通って送られてきた前記排気ファン65からの空気、すなわちヘッド制御部60内で発生した熱(排熱)を有する排気は、平面視矩形状のタンクチャンバー71の、長辺の一方側となる排気ダクト66側から他方の側となる排気口73側まで流れるようになる。これにより、ヘッド制御部60からの排気はタンクチャンバー71内に十分に滞留し、タンク72と、つまりタンク72内の紫外線硬化型インクと良好に熱交換するようになっている。
【0069】
また、タンクチャンバー71には、排気口73の近傍に温度センサ74が設けられている。温度センサ74は、例えば熱電対からなるもので、タンクチャンバー71内の温度を検出するものであり、特に排気ダクト66から離れた排気口73の近傍に設けられているため、熱交換を行った後の前記排気の温度を検出するようになっている。したがって、この温度センサ74は、タンク72内の紫外線硬化型インクの温度により近い温度を、検出するようになっている。
【0070】
また、排気口73には、タンクチャンバー71の内面側に開閉扉75が設けられている。開閉扉75は、図5(a)のA−A線矢視断面図である図5(b)に示すように、図5(b)中の矢印方向(排気口73の長さ方向)にスライド可能に設けられた、一対のスライド扉76、76からなっている。これらスライド扉76、76からなる開閉扉75は、前記温度センサ74で検出された温度に基づき、例えばヘッド制御部60によってその開閉制御がなされるように構成されている。
【0071】
すなわち、温度センサ74によって検出されたタンクチャンバー71内の温度が設定された温度より低いときには、図5(b)中二点鎖線で示すようにスライド扉76、76(開閉扉75)が排気口73を閉じる方向にスライドしてその開度を狭めるようにし、タンクチャンバー71内の温度が設定された温度より高いときには、図5(b)中実線で示すように排気口73を開く方向にスライドしてその開度を拡げるように動作する。このような構成により、タンクチャンバー71内の温度が設定された温度より低いときには、排気口73の開度が狭められることで、ヘッド制御部60からの排気がタンクチャンバー71内により長く滞留し、この排気によってタンクチャンバー71内がより加温されるようになる。また、タンクチャンバー71内の温度が設定された温度より高いときには、排気口73の開度が拡げられることで、ヘッド制御部60からの排気がタンクチャンバー71内を比較的速く通過し、したがってこの排気による熱交換が十分になされず、タンクチャンバー71内の加温が制限されるようになる。
【0072】
また、タンクチャンバー71には、本実施形態ではその上板部の外面側に、タンクチャンバー71内に連通して温調手段77が設けられている。温調手段77は、例えばヒーター(図示せず)とファン(図示せず)とを備えたもので、ヒーターで加熱された空気をファンでタンクチャンバー71に送り、流動させることにより、タンクチャンバー71を加熱するものである。これにより、タンクチャンバー71内のタンク72を加熱し、タンク72内の紫外線硬化型インクを加温することができるようになっている。このような温調手段77を設けることで、タンク72内の紫外線硬化型インクを目的とする温度に確実に加温できるようになっている。すなわち、ヘッド制御部60での排熱だけではタンクチャンバー71内を所望の温度に加温するのに不十分である場合にも、温調手段77によって直接タンクチャンバー71を加熱することで、タンクチャンバー71内を所望の温度にすることができる。
【0073】
このような構成の液滴吐出装置1によって記録媒体10に対しインクを吐出し、所望の記録(描画)を行うには、まず、ヘッド制御部60のICチップ等を作動させ、吐出ヘッド20の圧電素子59を駆動させるとともに、X軸走査機構11におけるX軸駆動モーターやY軸走査機構42におけるY軸駆動モーターを駆動させ、吐出ヘッド20と吸着テーブル33a上の記録媒体10との相対的位置を逐次変化させる。また、排気ファン65を作動させ、ヘッド制御部60の排気をタンクチャンバー71内に送り込むとともに、必要に応じて前記温調手段77に通電し、タンクチャンバー71内を加熱する。さらに、タンク72から吐出ヘッド20に対して紫外線硬化型インクを逐次供給する。
【0074】
このようにしてヘッド制御部60を作動させると、基板62に設けられたICチップを構成する多数の電界効果型トランジスタ(FET)が発熱し、したがってICチップ全体が発熱する。また、電源61からの発熱も起こる。しかし、このようにして発生した熱は、排気ファン65によって排気ダクト66を介してダンクチャンバー71側に排出される。排気ファン65によってタンクチャンバー71内に送り込まれた排気は、タンク72内の紫外線硬化型インクを加温する。したがって、紫外線硬化型インクはその粘度が低下し、吐出ヘッド20による吐出性が高くなる。
【0075】
また、ヘッド制御部60での排熱だけではタンクチャンバー71内を所望の温度に加温するのに不十分である場合には、温調手段77によってタンクチャンバー71を加熱することにより、タンクチャンバー71内を所望の温度にすることができる。よって、所望の温度に調整され、したがって所望の粘度に調整された紫外線硬化型インクは、良好な吐出性を有するものとなり、吐出ヘッド20から良好に吐出されるようになる。
【0076】
以上説明したように本実施形態の液滴吐出装置1にあっては、ヘッド制御部60で発生した排熱によって吐出ヘッド20から吐出するための紫外線硬化型インクを加温するようにしたので、従来ではそのまま廃棄していた前記排熱を有効利用することができる。また、インクの吐出性を高めるべくヒーター(温調手段77)で加熱する場合にも、ヘッド制御部60での排熱によって予備加熱することができるので、ヒーターによる加熱に要する電気消費量を少なくして省エネルギー化を図ることができる。
【0077】
また、タンクチャンバー71内に温度センサ74を設け、排気口73に開閉扉75を設けているので、開閉扉75による排気口73の開度を調整し、タンクチャンバー71内の温度を制御することにより、インクの温度を所望の温度に調整することが容易になる。
また、タンクチャンバー71に温調手段77を設けているので、前述したようにタンクチャンバー71内の温度を、より容易に所望の温度にすることができる。その際、温調手段77による加熱は、ヘッド制御部60での排熱だけでは不足する分を補うだけでよいため、ヒーター(温調手段77)のみで加熱する場合に比べて、前述したように電気消費量を少なくして省エネルギー化を図ることができる。
【0078】
また、タンク72を保持板27上に配置しているので、タンク72から吐出ヘッド20までの間の距離を短くすることができ、これによってタンク72内の紫外線硬化型インクの、吐出ヘッド20までのチューブ等による経路を短くすることができる。したがって、タンク72内にて加温されたインクが吐出ヘッド20に送られる途中で冷えて粘度が上昇し、吐出ヘッド20からの吐出性が低下してしまうことを防止することができる。すなわち、吐出ヘッド20までの経路が短くなることで、インクはほとんど冷やされることがなくなり、ほぼ加温された状態で吐出ヘッドに供給されるようになる。したがって、インクについての、吐出ヘッドからの良好な吐出性を確保することができる。また、インクが冷えないように経路の断熱を行う場合にも、経路が短くなるため、断熱材の量を少なくすることができる。
【0079】
紫外線硬化型のインクは一般に常温での粘性が高く、そのままでは吐出ヘッド20からの吐出性が低いため、従来では予めヒーターによって加熱を行っていた。これに対して本実施形態では、紫外線硬化型インクをヘッド制御部60での排熱によって加温するようにしたので、インクの良好な吐出性を確保するとともに、ヒーターによる加熱の負担を無くし、あるいは少なくして省エネルギー化を図ることができる。
【0080】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、本発明の液滴吐出装置を、連続した長尺な記録媒体に対して印刷を行う印刷装置に適用したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば対象とする記録媒体としては長尺なものでなく矩形状の基板とすることもできる。また、このような基板としては、前述した樹脂以外に、ガラス基板を対象とすることもできる。
【0081】
また、前記実施形態では、本発明を主に工業的な用途の液滴吐出装置に適用した場合について説明したが、民生用途のプリンターに本発明を適用することもできる。
さらに、使用する機能液についても、紫外線照射硬化型インクに限定されることなく、種々のインク(機能液)を用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…液滴吐出装置、10…記録媒体、20…吐出ヘッド、27…保持板、60…ヘッド制御部、65…排気ファン、70…インク供給部、71…タンクチャンバー、72…タンク、73…排気口、74…温度センサ、75…開閉扉、77…温調手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを有し、該ノズルから機能液の液滴を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドの吐出動作を制御するヘッド制御部と、前記吐出ヘッドに供給する前記機能液を貯留するタンクと、を含み、
前記タンクは排気口を有したタンクチャンバー内に収容され、
前記ヘッド制御部には、該ヘッド制御部で発生した熱を排出して前記タンクチャンバー内に排気する排気ファンが設けられていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記タンクチャンバー内には、該タンクチャンバー内の温度を検出する温度センサが設けられ、
前記排気口には、前記温度センサで検出された温度に基づいて該排気口の開度を調整する開閉扉が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記タンクチャンバーには、温調手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記ヘッド制御部及び前記タンクは、前記吐出ヘッドを下面側に保持する保持板上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記機能液は紫外線硬化型のインクであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴吐出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−50953(P2012−50953A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197434(P2010−197434)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】