説明

液状の封止用樹脂組成物

【課題】 低誘電率であり、高周波領域でも誘電損失が小さく、かつフリップチップ封止に適した液状の封止用樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】 (A)ビニルベンジルエーテル化合物、
(B)シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物、並びに
(C)カチオン硬化触媒
を含む封止用樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状の封止用樹脂組成物に関する。詳細には、本発明は、誘電率が低く、フリップチップ封止に適する、液状の封止用樹脂組成物に関し、特に1GHz以上の高周波領域でも誘電損失が小さい、液状の封止用樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、該樹脂組成物によって封止された半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のさらなる軽薄短小化及び高周波化を背景に、集積回路(IC)について、小型化、高密度化及び高速化が必要とされている。そのため、ICの封止も、半導体チップを回路基板に直接封止するフリップチップ封止等、小型化、軽量化に対応できるものが要求されている。
【0003】
フリップチップ封止では、接続された半導体チップと基板の隙間にディスペンサー等を用いて、封止用樹脂組成物を横から注入するが、この隙間が一般に30〜100μmと狭いため、隙間に流し込むことのできる流動性のある液状の封止用樹脂組成物が必要である。このような液状の封止用樹脂組成物として、従来はエポキシ樹脂と硬化剤としてカルボン酸無水物等を含む樹脂組成物が使用されてきた。
【0004】
しかし、このようなエポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物は、特に高周波領域において、該樹脂組成物の誘電損失が増加し、波形を鈍らせるといった問題があり、ICの高速化には、さらに低い誘電率を有する封止用樹脂組成物が求められている。
【0005】
上記の問題を解決する技術として、例えば、エポキシ樹脂を含む封止用樹脂組成物に、中空の無機充填剤を配合して、該樹脂組成物の誘電率を低下させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この技術は、該充填剤の比重が小さく、また、中空とするために該充填剤が一定以上の大きさを有するので、液状の封止用樹脂組成物への応用が困難であり、また、液状の封止用樹脂組成物に該充填剤を配合した場合、加熱による硬化の段階で、充填剤が分離してしまうという問題がある。
【0006】
そこで、誘電率を低下させるために、誘電率の低いシアネートエステル樹脂に、フェノール樹脂を組み合わせた樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、シアネートエステル樹脂は流動性に乏しいため、これらの組み合わせによる封止用樹脂組成物は作業性に劣り、また、適切な流動性を得るためには通常、溶剤を必要とする。
【0007】
また、樹脂組成物の流動性を確保するために、オキセタン化合物を含有する封止用樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、これらに記載されているような、オキセタン化合物のみを樹脂形成成分として使用した樹脂組成物は、硬化した場合、機械的強度が弱いといった問題がある。また、オキセタン化合物と、極性の大きい硬化剤の併用は誘電損失が大きいという問題がある。
【0008】
一方、誘電特性に優れるビニルベンジルエーテル化合物が、近年、プリント配線板の分野で使用されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、この技術は、プリント配線板の層間の絶縁膜に使用する樹脂組成物に関し、封止用樹脂組成物については記載されていない。なお、層間絶縁膜用樹脂組成物は、溶剤に溶解させて粘度を調整した樹脂組成物を基板等に塗布し、光を照射して硬化させるものであるのに対し、封止用樹脂組成物では、一般に、溶剤の使用が制限され、また、硬化の手段は主に加熱によるといった違いが存在する。
【特許文献1】特開平5−9270号公報
【特許文献2】特開2001−89654号公報
【特許文献3】特開平11−17074号公報
【特許文献4】特開2002−351069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、誘電率の低い、フリップチップ封止に適する液状の封止用樹脂組成物を提供することであり、特に1GHz以上の高周波領域でも誘電損失が小さい液状封止用の樹脂組成物を提供することである。さらに、本発明の目的は、該樹脂組成物によって封止された、小型・高密度・高速度化に対応できる半導体デバイスに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ビニルベンジルエーテル化合物に、シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を配合することにより、誘電率の低い、液状の封止樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに到った。なお、本明細書で液状とは、25〜40℃で流動性を有することをいう。
【0011】
本発明は、(A)ビニルベンジルエーテル化合物、(B)シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択させる1種以上の化合物、並びに(C)カチオン硬化触媒を含む封止用樹脂組成物に関し、また、この封止用樹脂組成物に、さらに(D)シリカを含む封止用樹脂組成物に関する。また、本発明は、これらの封止用樹脂組成物を用いて封止された半導体デバイスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の封止樹脂組成物は、低誘電率であり、高周波領域でも誘電損失が小さく、かつフリップチップ封止に適しており、そのような利点を生かして、IC、LSI、VLSI等の半導体を含むデバイスの封止等に広く適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明をいかなる意味においても限定するものではない。
【0014】
本発明の封止用樹脂組成物は、(A)ビニルベンジルエーテル化合物を含む。ビニルベンジルエーテル化合物はとしては、式(1):
【0015】
【化8】

【0016】
(式中、
は、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、
は、水素原子又はビニルベンジル基であるが、水素原子とビニルベンジル基とのモル比は60:40〜0:100であり、
nは、2〜4の数である)で示される化合物が挙げられる。これらの化合物は、単独でも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0017】
式(1)で示されるビニルベンジルエーテル化合物は、例えば、特開平9−31006号公報に記載されている方法で製造することができる。
【0018】
本発明は、(B)シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を含有する。
【0019】
シアネートエステル樹脂は、特に限定されないが、例えば、式(2):
N≡C−O−R5−R4−R6−O−C≡N (2)
(式中、
4は、非置換又はフッ素置換の二価の炭化水素基であり、
5及びR6は、それぞれ独立して、非置換又は1〜4個のメチル基、好ましくは非置換又は2〜4個のメチル基で置換されているフェニレン基である)で示される化合物が挙げられる。また、式(2)の化合物のシアナト基の一部がトリアジン環を形成したプレポリマーもシアネートエステル樹脂として使用することができる。プレポリマーには例えば、式(2)の化合物の全部又は一部が3量体化したものが挙げられる。
【0020】
より好ましいのは、
式(4):
【0021】
【化9】

【0022】
(式中、
7は、基:
【0023】
【化10】

【0024】
(ここで、
12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、非置換又はフッ素置換のメチル基である)又は基:
【0025】
【化11】

【0026】
であり、
8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素又はメチル基である)で示される化合物及びそれらのプレポリマーであり、特に、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン及び2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンが好ましい。
【0027】
さらに、シアネートエステル樹脂としては、式(3):
【0028】
【化12】

【0029】
で示される化合物及び式(3)の化合物のシアナト基の一部がトリアジン環を形成したプレポリマーも使用することができる。
【0030】
これらのシアネートエステル樹脂は、単独でも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。流動性を確保する点からは、シアネートエステル樹脂は、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物の1種以上と併用することが好ましい。これらは、流動性に優れるため、ビニルベンジルエーテル化合物と配合した場合に液状部分と固体部分とが分離することなく、容易に液状の樹脂組成物にできるためである。ただし、式(5)においてR7が、−CH(CH)−であるシアネートエステル樹脂(例えば、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン)は流動性に優れるており、単独でも好適に使用することができる。
【0031】
オキセタン環含有化合物は、特に限定されないが、モノオキセタン化合物、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ヘキシルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アリルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−ベンジルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−メタクリルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−カルボキシオキセタン、3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン;ジオキセタン化合物、例えば、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス〔エチル(3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、炭酸ビス{〔エチル(3−オキセタニル)〕メチル}、アジピン酸ビス{〔エチル(3−オキセタニル)〕エチル}、テレフタル酸ビス{〔エチル(3−オキセタニル)〕メチル}、1,4−シクロヘキサンカルボン酸ビス{〔エチル(3−オキセタニル)〕メチル}、ビス{4−〔エチル(3−オキセタニル)メトキシカルボニルアミノ〕フェニル}メタン、α,ω−ビス−{3−〔1−エチル(3−オキセタニル)メトキシ〕プロピル(ポリジメチルシロキサン);及び多オキセタン化合物、例えばオリゴ(グリシジルオキセタン−co−フェニルグリシジルエーテル)が挙げられる。これらはいずれも、衛生面及び安全性に優れた液状の化合物であるが、特に、粘度が低くて取扱いやすく、かつ高い反応性を示すことから、1,4−ビス〔エチル(3−オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、キシリレンビスオキセタン及びビス{〔エチル(3−オキセタニル)〕メチル}エーテルが好ましい。これらは、単独でも、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0032】
ジビニルベンゼン化合物は、非置換又は置換基を有するジビニルベンゼンである。ジビニルベンゼンは、1,2−、1,3−又は1,4−ジビニルベンゼンのいずれでもよいが、1,4−ジビニルベンゼンが好ましい。また、置換基を有するジビニルベンゼンとしては、ジビニルベンゼンのベンゼン環が1〜4個のフッ素原子及び/又はアルキル基で置換されているものが挙げられる。アルキル基は、例えば、炭素数1〜10、好ましくは1〜3の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基が挙げられる。重合の容易さの点から、メチル基が好ましい。具体例としては、1,4−ジビニル−2−メチルベンゼンが挙げられる。これらは、単独でも、2種以上組み合わせて使用することもできる。
【0033】
ビニルエーテル化合物は、ビニルエーテル基を含有する化合物をいい、好ましくはビニルエーテル基を2個以上含有する化合物であり、より好ましくはビニルエーテル基を2個含有するジビニルエーテル化合物である。具体的には、式(5):
【0034】
【化13】

【0035】
(式中、
14は、2価の芳香族基又は脂環式基であり、
15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基である)
で示されるジビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0036】
式(5)において、R14は、好ましくは、非置換又は炭素数1〜4のアルキル基1〜4個で置換されている、フェニレン基又はシクロヘキシレン基である。フェニレン基は、1,4−、1,3−、1,2−のいずれでもよく、シクロヘキシレン基もまた、1,4−、1,3−、1,2−のいずれでもよいが、1,4−フェニレン基又は1,4−シクロヘキシレン基が好ましい。
【0037】
式(5)において、R15及びR16は、好ましくはメチレン基である。
【0038】
ジビニルエーテル化合物としては、具体的には、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル:
【0039】
【化14】

【0040】
が挙げられる。ビニルエーテル化合物は、単独でも、2種以上組み合わせて使用することもできる。なお、ビニルエーテル基を1個のみ含有するモノビニルエーテル化合物を使用する場合は、モノビニルエーテル化合物が、ビニルエーテル化合物の10重量%以内であるように用いることが好ましい。
【0041】
本発明の封止用樹脂組成物は、(A)ビニルベンジルエーテル化合物100重量部に対して、(B)シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物の少なくとも1種から選択される化合物を20〜200重量部の割合で含むことが好ましい。配合割合がこの範囲にあると、好ましい流動性の樹脂組成物が得られ、加熱等により、好ましい機械的強度の硬化物が得られる。(B)成分のより好ましい配合量は、30〜180重量部であり、より好ましくは40〜150重量部である。ただし、シリカを使用する場合には、80重量部以上することが好ましい。
【0042】
本発明の封止用樹脂組成物は、(C)カチオン硬化触媒を含むが、カチオン重合の触媒として機能し、樹脂組成物を網状構造化するものであれば、特に限定はされない。例えば、ルイス酸塩、オニウム塩、脂肪酸金属等が挙げられるが、特に、潜在性触媒として組成物中に配合して用いることができ、加熱により短時間で樹脂組成物を硬化させることができるため、オニウム塩が好ましい。
【0043】
オニウム塩は、例えば式(6):
【0044】
【化15】

【0045】
及び/又は式(7):
【0046】
【化16】

【0047】
(式中、
17は、非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
1は、ヨウ素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ジアゾ基又は非置換若しくは環置換のピリジニオ基であり、
2は、硫黄原子又は窒素原子であり、
Zは、BF4、PF4、AsF6、SbF6又は(C654Bである対イオンであり、
aは、E1がヨウ素原子のとき2、硫黄原子のとき3、窒素原子又はリン原子のとき4、ジアゾ基又は非置換若しくは環置換のピリジニオ基のとき1であり、
bは、E2が硫黄原子のとき1、窒素原子のとき2であり、
cは、4又は5の整数である)で示されるヨードニウム塩、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩又はピリジニウム塩が挙げられる。これらは単独でも、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0048】
式(6)及び(7)において、R17は、具体的には、メチル、エチル等の炭素数1〜15であるアルキル基;シクロヘキシル等の炭素数3〜10であるシクロアルキル基;フェニル、4−トリル、2,4−キシリル、1−ナフチル等のアリール基;ベンジル、2−若しくは4−メチルベンジル、2−フェニルエチル等のアラルキル基;ビニル、アリル等の炭素数2〜10のアルケニル基;並びに4−ヒドロキシフェニル、4−メトキシフェニル、4−シアノフェニル、4−クロロフェニル、4−アセトキシフェニル、4−プロパノイルフェニル、4−メトキシカルボニルフェニル、4−エトキシカルボニルフェニル、4−メトキシベンジル、4−エトキシベンジル、4−t−ブトキシベンジル、4−ニトロベンジル、4−シアノベンジル等の上記の炭化水素基から誘導される一価の置換炭化水素基が挙げられる。なかでも、優れた硬化性を示すことから、分子中少なくとも1個のR17がアリール基又はアラルキル基であることが好ましく、すべてのR17がそのような基であることがさらに好ましい。
【0049】
1又はE2としては、優れた硬化速度が得られることから、ヨウ素原子又は硫黄原子が好ましい。
【0050】
1の非置換又は環置換のピリジニオ基としては、具体的には、ピリジニオ、2−若しくは4−メチルピリジニオ、2,4−ジメチルピリジニオ、2−若しくは4−シアノピリジニオ、2−若しくは4−メトキシカルボニルピリジニオ、2−若しくは4−エトキシカルボニルピリジニオのような環置換ピリジニウム基が例示される。
【0051】
Zは、短時間の加熱によって優れた硬化性を示すことから、SbF6又はB(C65)4が好ましく、毒性を示さず、衛生上及び環境への影響を考慮する必要がないことから、B(C654が特に好ましい。
【0052】
このような好ましいオニウム塩としては、ジフェニルヨードニウム等のジアリールヨードニウム;フェニル(4−メトキシフェニル)ヨードニウム等の置換アリール基含有ヨードニウム;フェニルベンジルヨードニウム等のアラルキル基含有ヨードニウム;トリフェニルスルホニウム、ジフェニル(4−t−ブチルフェニル)スルホニウム等のトリアリールスルホニウム;トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、トリス(アセトキシフェニル)スルホニウム等の置換アリール基含有スルホニウム;メチル(4−ヒドロキシフェニル)ベンジルスルホニウム、メチル(4−メトキシフェニル)−1−ナフチルメチルスルホニウム等のベンジル構造含有スルホニウムといった、ヘキサフルオロアンチモン酸塩及びテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボロン塩が挙げられる。衛生及び環境保全的な見地からテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボロン塩が好ましく、適度の硬化速度が得られ、特に4−メチルフェニル〔4−(1−メチルエチル)フェニル〕ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートのようなジアリールヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボロン塩が特に好ましい。
【0053】
脂肪酸金属も(C)カチオン硬化触媒として好ましく用いることができる。具体的には、オクタン酸金属塩及びナフテン酸金属塩が挙げられ、具体的には、オクタン酸第二鉄、オクタン酸コバルト、オクタン酸スズ、オクタン酸カルシウム、オクタン酸亜鉛、オクタン酸銅、オクタン酸ジルコニウム、オクタン酸マグネシウム、及びそれらに対応するナフテン酸塩等が挙げられる。また、キレート錯体としては、例えばアセチルアセトン錯体も使用することができ、例えばアセチルアセトン鉄(III)が挙げられる。
【0054】
(C)カチオン硬化触媒は、(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.1〜8重量部で含むことが好ましく、より好ましくは0.5〜6重量部である。配合割合がこの範囲にあると、反応性及び硬化性が適正である。
【0055】
本発明の封止用樹脂組成物は、樹脂組成物の線膨張係数を調整し、基板の線膨張係数に近くするために、充填剤として(D)シリカを含むことが好ましい。シリカは、溶融シリカ、結晶性シリカ、粉砕シリカ等、当技術分野で使用されるいずれのシリカも使用することができるが、誘電率低下の観点から溶融シリカが好ましい。シリカは、本発明の封止用樹脂組成物の総重量に基づき、30〜70重量%で含有することが好ましく、より好ましくは、40〜60重量%である。本発明の封止用樹脂組成物には、アルミナ、チッ化シリコン等のシリカ以外の充填剤を含有させてもよい。
【0056】
本発明の封止用樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラックエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を含有させてもよい。
【0057】
本発明の封止用樹脂組成物には、必要に応じて、カーボンブラック等の着色剤、無機繊維、難燃剤、イオントラップ剤、内部離型剤、増感剤を含有させてもよい。また、基板への接着性を向上させるために、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤を含有させてもよい。
【0058】
本発明の封止用樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば原料を、所定の配合で、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等の混合機に投入し、混合して、製造することができる。
【0059】
本発明の封止用樹脂組成物は、半導体の封止材料として用いることができる。例えば、フリップチップ方式で、接続された半導体チップと基板の隙間にディスペンサー等を用いて、本発明の封止用樹脂組成物を横から注入し、硬化させることができる。また、基板にディスペンサー等を用いて、半導体チップの大きさに合わせて、本発明の封止用樹脂組成物を塗布し、フィリップチップボンダー等を用いて、加熱、はんだ接続をした後、硬化させることもできる。
【0060】
本発明は、IC、LSI、VLSI等の半導体や、それらを含むデバイスの封止等に広く適用できる。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を、実施例によってさらに詳細に説明する。本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、配合量の単位は、特に断らない限り、重量部である。
【0062】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1に示す配合で、ロールミルで、成分を混練して、封止用樹脂組成物を調製した。
【0063】
実施例1〜4、比較例1〜2の封止用樹脂組成物について、粘度、誘電率、誘電損失を測定した。結果を表1に示す。なお、測定方法は、以下のとおりである。
〔粘度〕
ブルックフィールド回転粘度計(ブルックフィールド社HBT型粘度計)を用いて、10rpmで、25℃における粘度を測定した。
〔誘電率、誘電損失〕
基板上に、実施例1〜4、比較例1〜2の封止用樹脂組成物を、それぞれで塗布し、120℃1時間、次いで150℃2時間で硬化させた。その後、基板を剥離させ、硬化膜を得て、誘電特性測定用試料とした。この試料を、5GHz、室温の条件下で、摂動法により測定した。
【0064】
〔ハンダリフロー、ヒートサイクル、耐湿性〕
基板(BT基板、0.8mm厚)に、フリップチップボンダーを用いて、半導体(10mm各共晶ハンダバンプ、エリアアレイ625バンプ)を10個搭載し、純水で洗浄した後、150℃で1時間乾燥した。次に、実施例1〜4、比較例1〜2の封止用樹脂組成物について、80℃でディスペンサーを用いて、それぞれ基板と半導体の隙間に注入した。その後、150℃で1時間加熱硬化した。次いで、半導体を搭載した基板を、湿度60%、30℃の条件下で192時間、放置した。その後、230℃のハンダリフロー炉に3回通し、封止を行い半導体デバイスを得た。
ハンダリフローの評価:得られた封止体について、デラミネーションを超音波探傷機(SAT)で観察し、デラミネーションの発生の有無を観察した。表1に、デラミネーションの発生した個数を示す。
ヒートサイクルの評価:得られた封止体について、−45℃30分、125℃30分を1サイクルとして実施し、500サイクル実施した。表1に、クラックが発生した個数を示す。
耐湿試験:得られた封止体について、85℃、相対湿度(RH)85%の条件下で、500時間、3V印加し、断線時間を測定した。表1に、異常が発生した個数を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示されるように、本発明による封止用樹脂組成物は、いずれも誘電率が3以下と低く、誘電損失も5GHzの高周波領域で0.01と小さかった。また、いずれも液状であることが粘度からも確認された。また、本発明の封止用樹脂組成物で封止した半導体デバイスは、ハンダリフロー、ヒートサイクル、耐湿性の面から問題がないことが確認された。
【0067】
一方、従来のエポキシ樹脂と酸無水物等の硬化剤を組み合わせた封止樹脂組成物に相当する比較例1は、誘電率が4.2と高く、誘電損失も0.05と大きかった。また、封止した半導体デバイスについて、ハンダリフローの面で問題があった。また、ビニルベンジル化合物が配合されていない比較例2は、誘電率、誘電損失も高めで、耐湿性の点に劣る結果となった。
【0068】
実施例5〜8
表2に示す配合で、成分を混練して、封止用樹脂組成物を調製した。
【0069】
実施例5〜8の封止用樹脂組成物についての評価の測定結果を表2に示す。なお、測定方法は、以下のとおりである。
〔粘度〕
ブルックフィールド回転粘度計(ブルックフィールド社製、HBT型粘度計)を用いて、50rpmで、25℃における粘度を測定した。
〔誘電率、誘電損失〕
基板上に、実施例5〜8の封止用樹脂組成物を、それぞれ塗布し、120℃1時間、次いで150℃2時間で硬化させた。その後、基板を剥離させ、硬化膜を得て、、誘電特性測定用試料とした。この試料を、5GHz、室温の条件下で、摂動法により測定した。
【0070】
【表2】

【0071】
表2に示されるように、本発明による封止用樹脂組成物は、いずれも誘電率が2.6未満と低く、誘電損失も5GHzの高周波領域で0.01未満と小さかった
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によって、低誘電率であり、高周波領域でも誘電損失が小さく、かつフリップチップ封止に適した液状の封止用樹脂組成物が得られる。本発明の封止用樹脂組成物は、そのような利点を生かして、IC、LSI、VLSI等の半導体を含むデバイスの封止等に広く適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニルベンジルエーテル化合物、
(B)シアネートエステル樹脂、オキセタン環含有化合物、ジビニルベンゼン化合物及びビニルエーテル化合物からなる群より選択される1種以上の化合物、並びに
(C)カチオン硬化触媒
を含む封止用樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分100重量部に対して、(B)成分が、20〜200重量部であり、かつ(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、(C)成分が、0.1〜8重量部である、
請求項1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
(D)シリカをさらに含む、請求項1又は2記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
封止用樹脂組成物の総重量に基づき、(D)成分が30〜70重量%である、請求項3記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分が、式(1):
【化1】


(式中、
は、水素原子、メチル基又はエチル基であり、
は、炭素数1〜10の炭化水素基であり、
は、水素原子又はビニルベンジル基であるが、水素原子とビニルベンジル基とのモル比は60:40〜0:100であり、
nは、2〜4の数である)である、請求項1〜4記載の封止用組成物。
【請求項6】
(B)成分が、式(2):
N≡C−O−R5−R4−R6−O−C≡N (2)
(式中、
4は、非置換又はフッ素置換の二価の炭化水素基であり、
5及びR6は、それぞれ独立して、非置換又は1〜4個のメチル基で置換されているフェニレン基である)で示される化合物及び式(3):
【化2】


で示される化合物、並びにそれらのプレポリマーからなる群より選ばれるシアネートエステル樹脂の1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分が、式(4):
【化3】


(式中、
7は、基:
【化4】


(ここで、
12、R13は、それぞれ独立して、水素原子、非置換又はフッ素置換のメチル基である)又は基:
【化5】


であり、
8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素又はメチル基である)で示される化合物及びそれらのプレポリマーからなる群より選ばれるシアネートエステル樹脂の1種以上を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
(B)成分が、ジオキセタン化合物を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項9】
(B)成分が、1,2−、1,3−又は1,4−ジビニルベンゼンを含む、請求項1〜8のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項10】
(B)成分が、式(5):
CH2=CH−O−R15−R14−R16−O−CH=CH2 (5)
(式中、
14は、2価の芳香族基又は脂環式基であり、
15及びR16は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキレン基である)
で示されるジビニルエーテル化合物を含む、請求項1〜9のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項11】
(C)成分が、式(6):
【化6】


及び/又は式(7):
【化7】


(式中、
17は、非置換又は置換の一価の炭化水素基であり、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、
1は、ヨウ素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、ジアゾ基又は非置換若しくは環置換のピリジニオ基であり、
2は、硫黄原子又は窒素原子であり、
Zは、BF4、PF4、AsF6、SbF6又は(C654Bである対イオンであり、
aは、E1がヨウ素原子のとき2、硫黄原子のとき3、窒素原子又はリン原子のとき4、ジアゾ基又は非置換若しくは環置換のピリジニオ基のとき1であり、
bは、E2が硫黄原子のとき1、窒素原子のとき2であり
cは、4又は5の整数である)で示されるオニウム塩である、請求項1〜10のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項12】
(C)成分が、脂肪酸金属であり、脂肪酸がオクタン酸又はナフテン酸であり、金属種が鉄、コバルト、スズ、カルシウム、亜鉛、銅、ジルコニウム及びマグネシウムからなる群より選択される1種以上である、請求項1〜10のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1〜12記載のいずれか1項記載の封止用樹脂組成物を用いて封止された半導体デバイス。

【公開番号】特開2006−45421(P2006−45421A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230831(P2004−230831)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】