説明

液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦

【課題】目詰まりが生じることなく適度な噴射量及び噴射範囲が得られ、制汗、防臭効果が高く、実用上充分な使用性が安定して得られる液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦を提供する。
【解決手段】噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされる定量噴射バルブ4と、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物8が内部に充填される容器本体3とを具備するエアゾール容器2と、定量噴射バルブ4に取り付けられるエアゾール用押釦1を具備し、エアゾール用押釦1は、ステムの導出口に連通して液状組成物8を流通させる流通路と、流通路に連通して液状組成物8を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、導出路の流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦に関し、特に、制汗、防臭効果が高い制汗成分が可溶化されてなる液状組成物を噴射する液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、制汗成分が水及び/又はエタノールに可溶化されてなる組成物は、皮膚に塗布した際に、組成物中に含有される水あるいはエタノールが揮発して皮膚上に皮膜を形成することにより、高い制汗、防臭効果が得られる。
また、このような制汗成分を可溶化してなる組成物を、エアゾール容器に充填してエアゾール製剤とし、使用者が皮膚、例えば腋の下等に向けて噴射する使用形態とすることにより、高い使用性を得ることができる。
【0003】
しかしながら、上述のような制汗成分は、皮膚の表面に皮膜を形成して制汗効果を発揮するものであるため、このような組成物をエアゾール容器に充填してエアゾール製剤とした場合、バルブに設けられたハウジング孔やステム孔等において組成物が析出することにより、詰まりが発生しやすいという問題がある。
【0004】
上述のような制汗剤としては、例えば、特許文献1に記載のような、制汗成分としてクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)が含有されてなる制汗剤がある。また、組成物がエアゾール容器に充填されたエアゾール製剤として、例えば、特許文献2〜6に記載されたものがある。しかしながら、特許文献2〜6に記載されたようなエアゾール容器に、特許文献1に記載されたようなクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)を可溶化した組成物を充填して用いた場合、組成物が乾燥した際に皮膜を形成するため、ハウジング孔やステム孔等の目詰まりを起こしやすいとう問題がある。
【0005】
また、特許文献7には、制汗成分、水、及び噴射剤を含有するエアゾール型制汗剤組成物に、さらにポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸を含有してなる組成物が記載されている。特許文献8に記載のエアゾール型制汗剤組成物は、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸を含有することで可溶化力が向上され、制汗成分等が澱として析出することが無く、安定して皮膚への噴射を行なうことができるというものである。
【0006】
しかしながら、特許文献7に記載のエアゾール型制汗剤組成物も、前記ACHを可溶化した組成であるため、上述したように、皮膚表面において乾燥した際に皮膜を形成する性質がある。このため、エアゾール容器に備えられたバルブのハウジング孔やステム孔に皮膜が形成され、目詰まりを起こしてしまうという問題がある。
【0007】
上述のようなエアゾール製剤の詰まりの問題を解決する方法として、例えば、エアゾール容器に備えられるバルブのベーパータップ孔やアンダータップ孔、ステム孔等の形状や寸法を最適化することにより、皮膜形成による目詰まりを抑制することが考えられる。
しかしながら、エアゾール容器に備えられる上記バルブの各孔を最適化したとしても、上記組成のエアゾール製剤を、汗滲みや臭いがより気になりやすい腋の下への使用に特化した場合には、衣服を着たまま噴霧する等、制限された動作環境下で使用する際の塗布量の調整が難しいため、所望の量を大きく上回る量の組成物が皮膚に付着したり、液垂れが生じる等の問題がある。
【0008】
そこで、上述のような制汗成分を含有する組成物を、使用者の皮膚に対して適度な範囲で一定量付着させることを目的として、定量噴射バルブを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献8〜10)。特許文献8〜10に記載の定量噴射バルブをエアゾール容器に用いることにより、上述のような、制限された動作環境下で使用した場合でも、皮膚への組成物の塗布量を一定とすることができ、また、液垂れ等が生じるのを抑制することが可能となる。
しかしながら、特許文献8〜10に記載の定量噴射バルブをエアゾール容器に用いた場合でも、定量噴射バルブに設けられた各孔等において組成物が析出することにより、詰まりが発生しやすいという問題があった。
【特許文献1】特開2000−229826号公報
【特許文献2】特開2002−309241号公報
【特許文献3】特開平6−317541号公報
【特許文献4】特開平11−228943号公報
【特許文献5】特開平11−71264号公報
【特許文献6】特開平10−57849号公報
【特許文献7】特開2002−3356号公報
【特許文献8】特開平11−349933号公報
【特許文献9】特表2005−529149号公報
【特許文献10】特開2001−114360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、目詰まりが生じることなく、適度な噴射量及び噴射範囲が得られ、制汗、防臭効果が高く、実用上充分な使用性が安定して得られる液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を改善するために鋭意検討したところ、定量噴射バルブが備えられ、制汗成分を可溶化した組成物が充填されるエアゾール容器に取り付けられるエアゾール用押釦に関し、該エアゾール用押釦に備えられる噴射部材の導出路の長さや径を適正な範囲に規定することにより、制汗成分の皮膜による目詰まりが防止できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品を提供する。
【0012】
本発明は、噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とからなり、前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5〜15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品を提供する。
【0013】
また、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品は、前記制汗成分が、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールである構成とすることができる。
【0014】
本発明は、噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦を提供する。
【0015】
本発明は、噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とが備えられ、前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5〜15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の液状エアゾール型制汗剤製品によれば、定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対してステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなり、該エアゾール用押釦は、噴射部材の導出路が、押釦本体内の流通路に接続される導入口から、液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされ、且つ、導出路の流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされているので、目詰まりが生じることなく、適度な噴射量及び噴射範囲が得られ、制汗、防臭効果が高く、実用上充分な使用性が安定して得られる。
また、本発明のエアゾール用押釦によれば、押釦本体に設けられる導出路が、押釦本体内の流通路に接続される導入口から、液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされ、且つ、導出路の流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされているので、目詰まりが生じることなく、適度な噴射量及び噴射範囲が得られるエアゾール用押釦が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦の一実施形態について、図1〜4を適宜参照しながら説明する。
本実施形態の液状エアゾール型制汗剤製品10は、噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口41aとされたステム41が備えられる定量噴射バルブ4と、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物8が内部に充填される容器本体3とを具備するエアゾール容器2と、該エアゾール容器2に対してステム41の一端側(導出口41a側)に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦1を具備してなり、概略構成されている。
【0018】
また、本実施形態のエアゾール用押釦1は、ステム41の導出口41aに連通して液状組成物8を流通させる流通路12と、該流通路12に連通して液状組成物8を外部に噴出させる導出路16とが押釦本体11の内部に設けられてなり、導出路16は、流通路12に接続される導入口16aから、液状組成物8を外部へ噴出させる噴口16bまでの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされている。
【0019】
(エアゾール容器)
図3(図2も参照)は、本実施形態の液状エアゾール型制汗剤製品10に備えられ、エアゾール用押釦1が取り付けられるエアゾール容器2の構造を説明する図である。本実施形態のエアゾール容器2は、図3に示すように、有底筒状の容器本体3の上部に定量噴射バルブ4が備えられてなる。また、詳細な図示を省略するが、本実施形態のエアゾール容器2(容器本体3)は、略円筒状に形成されている。
【0020】
容器本体3は、制汗成分が可溶化されてなるとともに、リン酸系界面活性剤を含む液状組成物8を内部に収容する容器であり、図示例では細長筒状に形成されている。
容器本体3は、使用者が液状エアゾール型制汗剤製品10を使用する際の把持部としても機能することから、図示例のような細長筒状とし、持ち易く、且つ、操作しやすい略円筒形状とすることが好ましいが、この形状には限定されず、使用性を考慮しながら適宜決定することができる。
【0021】
定量噴射バルブ4は、上述したように、エアゾール容器2の上部に備えられており、ステム41、樹脂リング42、ステムラバー43、ハウジング44、パイプ45の各々を有している。また、図2に示すように、定量噴射バルブ4には、容器本体3の上部(図2の上方向)に定量噴射バルブ4を取り付けるための、カップ状のマウンテンカップ46が備えられている。
本実施形態の定量噴射バルブ4は、エアゾール容器2に充填された液状組成物8を外部へ噴射するための噴射バルブである。
【0022】
ステム41は、パイプ状に形成され、エアゾール用押釦1を押下げて操作した際に共に押下げられ、後述する噴射動作によってエアゾール用押釦1(墳口16b)に向けて液状組成物8を噴射製剤として送り込むものである。
ステム41は、内部に噴射剤が通過する流路41bを有し、ステム41の外周面から流路41bに連通するように、ステム孔41cが形成されており、図2に示す例ではステム孔41cが2箇所に形成されているが、ステム孔41cは、少なくとも1又は2個形成されていれば良い。ステム孔41cの形成数は1個でも良いが、2個であるほうが、例えば、一方のステム孔41cにおいて制汗成分が可溶化された液状組成物8が乾燥した状態となっても、液状組成物8は他方のステム孔41cを通過することができ、詰まりが発生するのを最大限、抑制することができる点からより好ましい。
【0023】
また、ステム孔41cの内径は、0.3〜0.6mmの範囲であることが好ましい。ステム孔41cの内径がこの範囲であれば、ステム孔41cにおいて液状組成物8が乾燥した状態となっても、詰まりが発生するのを抑制することができる。
ステム孔41cの内径が0.3mm未満だと、液状組成物8が乾燥した際に詰まりが発生しやすくなる虞がある。また、ステム孔41cの内径が0.6mmを超えると、液状組成物8の噴射量が多くなり過ぎる虞がある。
【0024】
樹脂リング42及びステムラバー43は、図2に示すように、ステム41の周囲を囲むようにして設けられている。
ステムラバー43は、図2に示すような待機位置においては、ステム41外周面のステム孔41cを塞ぐように配置されており、詳細な図示を省略するが、エアゾール用押釦1を押下げるのに伴ってステム41が降下した際に、ステム孔41cと上下方向(図2の上下方向)にずれて離れることにより、ステム41内部の流路41bと後述のハウジング44内部とが連通するように構成されている。
【0025】
ハウジング44は、図2に示すように、マウンテンカップ46に嵌め込まれるように取り付けられ、ステム41の下部に接続されており、また、ハウジング44内部には、エアゾール用押釦1及びステム41が押下げられた際に、該エアゾール用押釦1及びステム41を上方(図2の上方向)に上げ戻すためのスプリング44bが備えられている。
【0026】
パイプ45は、上端部45a側が、ハウジング44下部(図2の下方向)のブッシュ44aの下部と連通するように取り付けられるパイプであり、ハウジング44の内部とエアゾール容器2内の液相部とを連通させるように配され、図3に示す例のように、パイプ45の下端部45bが容器本体3の底部付近に配された構成とすることにより、正立状態で使用した際に、エアゾール容器2内に収容された液状組成物8を、効率良くブッシュ44aに導くことが可能となる。
【0027】
また、本実施形態で用いられる定量噴射バルブ4の、定量室44cの容量、つまり、1プッシュあたりの噴射量は0.05〜0.3ccの範囲とし、好ましくは0.1〜0.25cc、より好ましくは0.1〜0.2ccの範囲とする。
1プッシュあたりの噴射量が0.05cc未満だと、皮膚への液状組成物の付着量が少ないために噴霧(プッシュ)回数が増大し、使用性が低下してしまう。
1プッシュあたりの噴射量が0.3ccを超えると、皮膚への液状組成物の付着量が多過ぎ、液垂れが生じる虞があり、使用性が低下してしまう。
【0028】
(エアゾール用押釦)
本実施形態のエアゾール用押釦1は、上述したように、定量噴射バルブ4に備えられるステム41の上部(導出口41a側)に接続するように取り付けられ、ステム41の導出口41aに連通して液状組成物8を流通させる流通路12と、該流通路12に連通して液状組成物8を外部に噴出させる導出路16とが押釦本体11の内部に設けられてなる。
また、本実施形態のエアゾール用押釦1は、導出路16が、流通路12に接続される導入口16aから、液状組成物8を外部へ噴出させる噴口16bまでの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされている。
【0029】
図1(図2及び3も参照)に示す例のエアゾール用押釦1は、液状組成物8が噴射製剤として外部に向けて噴射される墳口16aが側面に設けられている。エアゾール用押釦1は、使用者が、図2に示す状態からエアゾール用押釦1を押下げる操作を行うことにより、定量噴射バルブ4の操作部として機能する。また、本実施形態のエアゾール用押釦1は、図3に示すように、エアゾール容器2(容器本体3)の上部から突出するように取り付けられる。
【0030】
押釦本体11は、上述した定量噴射バルブ4に備えられるステム41に取り付けられることにより、該ステム41の流路41bと連通する流通路12が設けられている。また、押釦本体11には、ステム41の一端側(導出口41a側)に嵌め込むことにより、エアゾール用押釦1を定量噴射バルブ4に取り付けるための嵌合部18が設けられている。また、押釦本体11の上部はヘッド部11aとされ、本実施形態のエアゾール用押釦1が備えられる液状エアゾール制汗剤10を使用する際、使用者が指で押圧する操作部として機能する。また、図1に示すように、押釦本体11は、導出路16の導入口16aが流通路12と連通して設けられ、また、導出路16の出口側となる噴口16bが、エアゾール用押釦1の外部へ向けて開口するように構成される。
【0031】
本実施形態のエアゾール用押釦1を構成する押釦本体11の材質としては、例えば、高密度ポリエチレンやポリアセタール樹脂等の樹脂材料を用いることができるが、これには限定されず、強度や耐薬品性等を勘案しながら、適宜採用することができる。
また、本実施形態のエアゾール用押釦1は、内部に流通路12及び導出路16が設けられた押釦本体11によって一体に構成されているが、これには限定されず、例えば、図4に示す例のエアゾール用押釦5のように、噴口56bに噴口部材53が別部材として取り付けられてなる構成とすることもできる。図示例の噴口部材53は、噴射流路53bを有し、一端側がフランジ形状とされた筒状部材として構成されており、押釦本体51の取付部57に嵌め込まれるように取り付けられている。
【0032】
導出路16の流路長L、つまり、押釦本体11内部の流通路12に接続される導入孔16aから噴口までの長さは、0.5〜15.0mmの範囲とされていることが好ましく、1.0〜12.0mmの範囲がより好ましく、4.0〜10.0mmの範囲とされていることが最も好ましい。
導出路16の流路長Lが0.5mm未満だと、噴口16bからの液状組成物8の噴射範囲が広くなり過ぎて皮膚への付着性が低下し、制汗及び防臭効果が低下する。
導出路16の流路長Lが15.0mmを超えると、噴口16bからの液状組成物8の噴射範囲が狭くなり、液状組成物8が集中して皮膚に付着するので、使用者が刺激等を感じる虞がある。
【0033】
導出路16の流路径Dは、0.5〜1.5mmの範囲とされていることが好ましく、0.8〜1.3mmの範囲がより好ましく、0.9〜1.2mmの範囲とされていることが最も好ましい。
導出路16の流路径Dが0.5mm未満だと、液状組成物8が内部通路16内において乾燥した際、皮膜形成によって目詰まりを起こし易くなる。
導出路16の流路径Dが1.5mmを超えると、液状組成物8が霧化されにくいために噴射異常が生じ易く、皮膚に均一に付着させるのが困難となり、制汗及び防臭効果が低下する。
【0034】
本実施形態では、上述した導出路16の流路長L及び流路径Dの規定に加え、なお且つ、流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされていることが好ましく、1.0〜14.0の範囲がより好ましく、4.0〜13.0の範囲とされていることが最も好ましい。
流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4未満だと、流路長Lよりも流路径Dが大きくなり過ぎ、液状組成物8が広範囲に飛散する等の噴霧異常が生じ、使用性が低下する。
流路長Lと流路径Dの比L/Dが15.0を超えると、流路長Lよりも流路径Dが小さくなり過ぎ、液状組成物8が内部通路16内において乾燥した際、皮膜形成によって目詰まりを起こし易くなる。
【0035】
また、図4に示す例のようなエアゾール用押釦5の場合には、噴口部材53の噴射流路53bの流路径D2と導出路56の流路径D1との関係をD1≦D2で表される関係とし、また、導出路56の流路長L1と噴射流路53bの流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5〜15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と導出路56の流路径D1の比L3/D1が0.4〜15.0の範囲とされていることが好ましい。このような構成とすることにより、図1(及び図2)に示すようなエアゾール用押釦1と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態のエアゾール用押釦5では、上記噴口部材53の噴射流路53bの流路径D2と導出路56の流路径D1との関係をD1≦D2で表される関係とし、外部への噴出部である噴射流路53bを導出路56よりも大径に構成することで、より優れた噴射特性が得られる。
【0036】
以上説明したような、本実施形態のエアゾール用押釦1によれば、導出路16が、押釦本体11内の流通路12に接続される導入口16aから、液状組成物8を外部へ噴出させる噴口16bまでの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされ、且つ、導出路16の流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされているので、目詰まりが生じることなく、適度な噴射量及び噴射範囲が得られるエアゾール用押釦が実現できる。
【0037】
なお、図1に示すエアゾール用押釦1の導出路16や、図4に示すエアゾール用押釦5の導出路56、及び、噴口部材53に設けられる噴射流路53bの各々の形状としては、特に制限されず種々の形状を採用することができるが、図示例のような、流路長方向で均一な流路径として形成されたストレート形状の導出路とすることが、各種噴霧異常を抑制することが可能な点から好ましい。
また、押釦本体11(又は押釦本体51)に設けられる流通路12(又は流通路52)の孔径としては、導出路16(又は導出路56及び噴射流路53b)の流路径D(又は流路径D1)よりも大きなサイズとすることが好ましい。
【0038】
(液状エアゾール型制汗剤製品の噴射形態)
以下、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品10を使用する際の噴射動作について、液状エアゾール型制汗剤製品10を、図3に示すような正立噴射で使用する形態を例に、図2も参照しながら説明する。
【0039】
まず、使用者が指等でヘッド部11aを押圧してエアゾール用押釦1を押し下げると、ステム41が押し下げられ、ステム孔41cが樹脂リング42及びステムラバー43から離れることにより、ステム41の流路41bとハウジング44内部の定量室44cとが連通する。この際、定量室44c内には、詳細を後述するが、前の噴射動作の際に容器本体3内から取り込まれた液状組成物8が一定量収容されている。また、この際、ステム41の下端部41dが、ハウジング44内に備えられるカップゴム44dに接触し、該カップゴム44dに形成された流通孔44eを塞ぐように配される。
そして、定量室44cに収容された一定量の液状組成物8が、ステム孔41cを通じてステム41の流路41bに導入され、さらに、流路41bからエアゾール用押釦1の流通路12を介して導出路16内に導かれる。導出路16に導入された液状組成物8は、定量噴射バルブ4のステム41からの噴出圧力により、導出路16内を流通しつつ霧化され、噴口16bから外部へ向けて噴射され、使用者の皮膚に塗布される。
【0040】
そして、上述のような操作による一定量の液状組成物8の噴射動作が行われた後、使用者がエアゾール用押釦1から指を離すと、ハウジング44内に設けられたスプリング44bによってステム41及びエアゾール用押釦1が押し上げられ、定量噴射バルブ4は、図2に示すような待機状態に戻る。
この際、ステム41の下端部41dが、ステム41全体の上昇に伴ってカップゴム44dから離れ、流通孔44eが開の状態となり、また、液状組成物8が、パイプ45を介してエアゾール容器2(容器本体3)内の液相部からハウジング44の定量室44cに導入される。このようにして定量室44cに取り込まれた液状組成物8は、液状エアゾール型制汗剤製品10の次回使用時に、上述と同様の操作によって外部に噴出される。
【0041】
本発明に係る液状エアゾール型制汗剤製品は、エアゾール容器2に定量噴射バルブ4が備えられ、該定量噴射バルブ4に上述のエアゾール用押釦1が取り付けられてなる構成とすることにより、特に、制汗成分として、乾燥時に皮膜を形成しやすいクロルヒドロキシアルミニウム(ACH)が可溶化されたものを液状組成物8として用い、該液状組成物8をエアゾール容器2に充填して使用した場合であっても、詰まり等が発生するのを効果的に抑制することができる。
【0042】
(液状組成物)
本発明に係る液状エアゾール型制汗剤製品の組成物に用いられる制汗成分は、特に限定はされないが、例えば、アルミニウム化合物、ジルコニウム化合物、亜鉛化合物などの制汗剤物質が挙げられる。具体的には、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、水酸化アルミニウム、乳酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、酸化アルミニウム、無水ケイ酸アルミニウム、ブロムヒドロキシアルミニウム、フェノールスルホン酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムジルコニウム等が挙げられる。また、前記アルミニウム化合物と、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはグリシンとの塩が挙げられる。このなかで好ましいのは、クロルヒドロキシアルミニウム、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールである。
その他、制汗成分として、クロルヒドロキシジルコニウム、硫酸亜鉛、フェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。
制汗成分は、上記の内、1種を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、同じ種類の制汗成分であっても、市販品においては、各種のグレードがあり、一つのグレードを単独使用しても良く、複数のグレードを併用しても良い。
【0043】
制汗成分の配合量は、原液中(液状エアゾール型制汗剤製品の液状組成物において、噴射剤を除いたものであり、以下同様)において、0.05〜50質量%の範囲が好ましく、より好ましくは1.0〜25質量%の範囲である。0.05質量%未満では充分な制汗効果を発揮しにくい。また、50質量%以上では安定配合することが難しく、塗布時に皮膚上での白化も引き起こしやすくなり、使用感も低下する。
【0044】
上記制汗成分は、極性の溶媒に溶けやすい塩であるため、製剤化の際には適当な極性溶媒を添加して可溶化することにより、制汗効果が向上する。その際の極性溶媒としては、水、低級アルコール、ポリオール類などが挙げられるが、これらの内、水、エタノール、イソプロピルアルコールを用いることが、使用感が良く安全性も高いことから好ましい。
これらの極性溶媒の配合量としては、0.1質量%以上であることが好ましい。0.1質量%未満では、制汗有効成分を充分に溶解し、安定配合することが困難となる。
【0045】
本実施形態で用いる噴射剤としては、特に制限はなく、例えば プロパン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン、ジメチルエーテル、LPG等が挙げられ、このなかでもLPG、ジメチルエーテル、イソペンタンを用いることが好ましい。また、これらの噴射剤の内の1種を単独か、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、環境面および安全面から、炭酸ガスや窒素ガス等を使用することもできる。
【0046】
本実施形態の液状エアゾール型制汗剤製品は、基本的には制汗成分、リン酸系界面活性剤、極性溶媒、噴射剤を含む液状組成物をエアゾール容器に収容することにより構成されるが、上記配合成分と共に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲において、化粧料に用いられる他の成分の1種を単独か、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
例えば、他の成分として、消臭成分、殺菌成分、抗菌剤、清涼化剤、包接化合物、粉末成分、水溶性成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素油、高級脂肪酸、低級アルコール、高級アルコール、多価アルコール、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、赤外線遮断剤、金属イオン封鎖剤、糖、糖アルコール、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、生薬、酸化防止剤、酸化防止助剤、抗炎症剤、香料等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
また、本実施形態の液状エアゾール型制汗剤製品は、リン酸系界面活性剤を含有する液状組成物がエアゾール容器に収容された構成とされる。
本発明で用いられるリン酸系界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、トリラウリルエーテルリン酸、ジラウリルエーテルリン酸ナトリウム、トリセチルエーテルリン酸、トリステアリルエーテルリン酸、トリオレイルエーテルリン酸、ジ−2−エチルヘキシルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸などが挙げられる。これらの内、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸を用いることが、エアゾール中での安定性、皮膚に対するマイルド性の点から好ましい。
【0048】
上記リン酸系界面活性剤の配合量としては、原液中において0.1〜20質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜15質量%の範囲である。0.1%未満だと、制汗成分の析出を抑制する等の安定性の面での更なる効果が得られにくく、また、20%を超えると使用時の感触が低下する虞がある。
【0049】
以上、説明したように、本発明に係る液状エアゾール型制汗剤製品10によれば、定量噴射バルブ4と、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物8が内部に充填される容器本体3とを具備するエアゾール容器2と、該エアゾール容器2に対してステム41の一端側(導出口41a側)に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦1を具備してなり、該エアゾール用押釦1は、導出路16が、押釦本体11内の流通路12に接続される導入口16aから、液状組成物8を外部へ噴出させる噴口16bまでの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされ、且つ、導出路16の流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされているので、目詰まりが生じることなく、適度な噴射量及び噴射範囲が得られ、制汗、防臭効果が高く、実用上充分な使用性が安定して得られる。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品及びエアゾール用押釦を実証するための実施例について説明するが、本発明は本実施例によって限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜5、比較例1〜10]
<液状エアゾール型制汗剤製品の作製>
まず、制汗成分が可溶化された液状組成物として、下記表1に示すような成分組成を有する液状組成物を調製した。なお、下記表1中、香料組成物としては、特開2003−73249号公報(表23〜35を参照)に開示された香料A〜Eの組成の内、任意に選択したものをそれぞれ使用した。
また、エアゾール用押釦として、導出路の流路長L、流路径D、ならびに流路長Lと流路径Dの比L/Dが、それぞれ下記表2に示すような寸法条件とされたものを作製した。
また、エアゾール容器として、図2に示すような定量噴射バルブが備えられ、1プッシュあたりの噴出量(定量室の容量)が0.1ccとされた、図3に示すような円筒状の容器本体を備えたものを作製した。
そして、前記液状組成物を前記エアゾール容器に充填して、実施例1〜5及び比較例1〜10の液状エアゾール型制汗剤製品を作製し、以下に説明する方法で評価した。
【0052】
<評価方法>
(噴射状態の評価:正立噴射での使用性)
上記実施例1〜5及び比較例1〜10の液状エアゾール型制汗剤製品を用い、正立噴射(図2参照)の状態で、腋の下に対して肌から10cm離れた距離から、2〜3プッシュして適量噴霧した際の噴霧状態を評価した。なお、使用者(パネル)数は、n=20(人)とした。
【0053】
そして、噴射状態の評価について、以下に示す4段階の基準で判定した。
(1)◎:20人中、15〜20人が適度な霧状で噴霧されたと答えた。
(2)○:20人中、10〜14人が適度な霧状で噴霧されたと答えた。
(3)△:20人中、5〜9人が適度な霧状で噴霧されたと答えた。
(4)×:20人中、4人以下が適度な霧状で噴霧されたと答えた。
【0054】
(目詰まり防止の評価)
上記実施例1〜5及び比較例1〜10の液状エアゾール型制汗剤製品を、45℃の雰囲気温度中において、正立状態に対して180°の角度で倒立させた状態で1ヶ月保存した。そして、保存後に最初に正立状態で噴射動作を行った際の目詰まりの有無を確認した。
なお、サンプル数は、上記実施例1〜5及び比較例1〜10の各々において、n=20(本)とした。
【0055】
そして、目詰まり防止の評価について、以下に示す3段階の基準で判定した。
(1)○:20本中、1本も目詰まりが発生しなかった。
(2)△:20本中、1〜5本において目詰まりが発生した。
(3)×:20本中、6本以上において目詰まりが発生した。
【0056】
(制汗作用:汗を抑える効果感の評価)
上記実施例1〜5及び比較例1〜10の液状エアゾール型制汗剤製品を用い、使用者(パネル)数を、n=20(人)として、制汗作用(汗を抑える効果感)を評価した。
まず、各使用者が、30℃、80%RH環境下において20分間安静状態を保ち、体を環境に馴化させた。その後、同環境下において、各実施例及び比較例の液状エアゾール型制汗剤製品を、腋の下に対して肌から10cm離れた距離から2〜3プッシュして適量噴霧した。
【0057】
そして、噴射1時間後の汗を抑える効果感の評価について、以下に示す4段階の基準で判定した。
(1)◎:20人中、15〜20人が制汗効果を感じると答えた。
(2)○:20人中、10〜14人が制汗効果を感じると答えた。
(3)△:20人中、5〜9人が制汗効果を感じると答えた。
(4)×:20人中、4人以下が制汗効果を感じると答えた。
【0058】
表1に、各実施例及び比較例で用いた組成物の成分組成を示すとともに、表2に、各実施例及び比較例の液状エアゾール型制汗剤製品(エアゾール用押釦)の寸法条件及び評価結果の一覧を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
<評価結果>
表2に示すように、導出路の流路長L、流路径D、ならびに流路長Lと流路径Dの比L/Dが、本発明で規定した寸法条件とされたエアゾール用押釦を取り付け、定量噴射バルブが備えられてなるエアゾール容器に、制汗成分が可溶化された液状組成物を充填した実施例1〜5の液状エアゾール型制汗剤製品は、噴射状態の評価が何れも◎か○であり、高い評価結果が得られた。また、これらのサンプルは、目詰まり防止の評価が何れも○の評価であるとともに、制汗作用の評価が何れも◎或いは○の評価であり、非常に高い評価結果が得られた。
【0062】
これに対し、導出路の流路長L、流路径D、ならびに流路長Lと流路径Dの比L/Dの内の少なくとも何れかが、本発明で規定した寸法条件の範囲外となっている比較例1〜10の液状エアゾール型制汗剤製品は、噴射状態、目詰まり防止、制汗作用の内の何れかの評価が×或いは△の評価となり、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品に比べて各特性が劣る結果となった。
【0063】
[実施例6〜8、比較例11]
<液状エアゾール型制汗剤製品の作製>
エアゾール用押釦として、図4に示すような、押釦本体の噴口に噴口部材が取り付けられたものを使用し、各寸法を下記表3に示す条件とした点を除き、上記実施例1〜5と同様にして液状エアゾール型制汗剤製品のサンプルを作製し、また、同様の方法で評価した。
【0064】
表3に、実施例6〜8及び比較例11の液状エアゾール型制汗剤製品(エアゾール用押釦)の寸法条件及び評価結果の一覧を示す。
【0065】
【表3】

【0066】
<評価結果>
表3に示すように、導出路の流路長L1、噴口部材の噴射流路L2、総流路長L3、導出路の流路径D1、噴射流路の流路径D2、並びに総流路長L3と導出路流路径D1の比L3/D1が、本発明で規定した寸法条件とされたエアゾール用押釦を取り付け、定量噴射バルブが備えられてなるエアゾール容器に、制汗成分が可溶化された液状組成物を充填した実施例6〜8の液状エアゾール型制汗剤製品は、噴射状態の評価が何れも◎であり、高い評価結果が得られた。また、これらのサンプルは、目詰まり防止の評価が何れも○の評価であるとともに、制汗作用の評価が何れも◎の評価であり、非常に高い評価結果が得られた。
【0067】
これに対し、導出路の流路径D1より噴射流路の流路径D2が小さい(D1>D2)比較例11の液状エアゾール型制汗剤製品は、噴射状態、目詰まり防止及び制汗作用の評価が、何れも×或いは△の評価となり、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品に比べて各特性が劣る結果となった。
【0068】
[実施例9〜11、比較例12〜13]
<液状エアゾール型制汗剤製品の作製>
制汗成分が可溶化された液状組成物として、下記表4に示すような成分組成を有する液状組成物を合成し、リン酸系界面活性剤が添加されてなる組成物を得た。なお、下記表4中、香料組成物としては、特開2003−73249号公報(表23〜35を参照)に開示された香料A〜Eの組成の内、任意に選択したものをそれぞれ使用した。
そして、エアゾール用押釦として、導出路の流路長L=10.0mm、流路径D=1.0mm、流路長Lと流路径Dの比L/D=10.0の各寸法条件とされたものを作製し、上記実施例1〜5及び比較例1〜10と同様のエアゾール容器に取り付けた。
そして、下記表3に示す液状組成物をエアゾール容器に充填して、実施例9〜11及び比較例12〜13の液状エアゾール型制汗剤製品を作製し、以下に説明する方法で評価した。
【0069】
<評価方法>
上記実施例9〜11及び比較例12〜13の液状エアゾール型制汗剤製品を用い、上記実施例1〜5及び比較例1〜10と同様の方法で、噴射状態、目詰まり防止、及び制汗作用の評価を行なうとともに、使用感及び安定性について、以下に示す方法で評価した。
【0070】
(使用感の評価)
上記実施例9〜11及び比較例12〜13の液状エアゾール型制汗剤製品を用い、専門パネラー(n=20名)が、各々、正立噴射の状態で、腋の下に対して適量噴霧し、べたつき感の無さについて、以下の基準で官能評価した。
(1)5点:全くべたつき感が無い。
(2)4点:べたつき感がほとんど無い。
(3)3点:多少のべたつき感がある。
(4)2点:べたつき感がある。
(5)1点:大きなべたつき感がある。
【0071】
そして、上記べたつき感の無さの官能評価点の平均点を算出し、以下に示す4段階の基準で判定した。
(1)◎:10人の専門パネラー(被験者)の平均点が4.5点以上だった。
(2)○:10人の専門パネラーの平均点が3.5〜4.4点だった。
(3)△:10人の専門パネラーの平均点が2.5〜3.4点だった。
(4)×:10人の専門パネラーの平均点が2.5点未満だった。
【0072】
(安定性の評価)
下記表3に示す各実施例及び比較例の原液を、噴射剤とともに耐圧エアゾール用透明ガラス瓶に充填して試料を調製した。そして、各試料を45℃の温度で1ヶ月間保存した後、目視観察を行い、以下に示す3段階の基準で判定した。
(1)○:分離又は析出等が認められなかった。
(2)△:わずかに外観が濁る等の変化が認められた。
(3)×:明らかな分離もしくは析出が認められた。
【0073】
表4に、実施例9〜11及び比較例12〜13の液状エアゾール型制汗剤製品で用いた組成物の成分組成を示すとともに、各実施例及び比較例の評価結果の一覧を示す。
【0074】
【表4】

【0075】
<評価結果>
表4に示すように、導出路の流路長L、流路径Dならびに流路長Lと流路径Dの比L/Dが上記寸法条件とされたエアゾール用押釦を取り付け、定量噴射バルブが備えられてなるエアゾール容器に、制汗成分が可溶化され且つリン酸系界面活性剤が適量添加された液状組成物を充填した実施例9〜11の液状エアゾール型制汗剤製品は、噴射状態、目詰まり防止及び制汗作用の評価が、何れも◎或いは○の評価であり、非常に高い評価結果が得られた。
【0076】
これに対し、制汗成分が含まれていない比較例12では、制汗作用の評価が×となり、また、リン酸系界面活性剤が含まれていない比較例13では、目詰まり防止、制汗作用、使用感、安定性の評価が全て×或いは△となり、実施例9〜11の液状エアゾール型制汗剤製品に比べて各特性が劣る結果となった。
【0077】
[実施例12〜15]
制汗成分が可溶化された液状組成物として、下記表5に示すような成分組成を有する液状組成物を調製した。なお、下記表5中、香料組成物としては、特開2003−73249号公報(表23〜35を参照)に開示された香料A〜Eの組成の内、任意に選択したものをそれぞれ使用した。
そして、エアゾール用押釦として、導出路の流路長L、流路径Dならびに流路長Lと流路径Dの比L/Dが、上記実施例9〜11と同様の寸法条件とされたものをそれぞれ作製し、同様のエアゾール容器に取り付けた。
【0078】
そして、下記表5に示す組成の液状組成物を、上記実施例9〜11と同様のエアゾール用押釦が取り付けられたエアゾール容器にそれぞれ充填して実施例12〜15の液状エアゾール型制汗剤製品を作製し、実施例1〜11及び比較例1〜13と同様の方法で、噴射状態、目詰まり防止及び制汗作用の評価を行なうとともに 実施例9〜11及び比較例12〜13と同様の方法で、使用感及び安定性について評価したところ、何れも◎或いは○の評価であり、非常に高い評価結果が得られた。
【0079】
【表5】

【0080】
以上の結果により、本発明のエアゾール用押釦が、目詰まりが生じることなく適度な噴射量及び噴射範囲が得られ、また、本発明の液状エアゾール型制汗剤製品が、制汗、防臭効果が高く、実用上充分な使用性が安定して得られることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に係るエアゾール用押釦の一例を説明する断面図である。
【図2】本発明に係るエアゾール用押釦の一例を説明する概略図であり、定量噴射バルブのステムにエアゾール用押釦を取り付けた状態を示す断面図である。
【図3】本発明に係る液状エアゾール型制汗剤製品の一例を説明する概略図であり、正立状態における噴射形態を示す部分破断図である。
【図4】本発明に係るエアゾール用押釦の他例を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1、5…エアゾール用押釦、11、51…押釦本体、12、52…流通路、16、56…導出路、16a、56a…導入口、16b、56b…噴口、2…エアゾール容器、3…容器本体、4…定量噴射バルブ、41…ステム、41a…導出口、53…噴口部材、53b…噴射流路、10…液状エアゾール型制汗剤製品、8…液状組成物、L、L1、L2…流路長、L3…総流路長、D、D1、D2…流路径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、
前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、
前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項2】
噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器と、該エアゾール容器に対して前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦を具備してなる液状エアゾール型制汗剤製品であって、
前記エアゾール用押釦は、前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とからなり、
前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、
前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5〜15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とする液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項3】
前記制汗成分が、クロルヒドロキシアルミニウム(ACH)、及び/又は、クロルヒドロキシアルミニウム・プロピレングリコールであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状エアゾール型制汗剤製品。
【請求項4】
噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、
前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路と、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路とが押釦本体の内部に設けられてなり、
前記導出路は、前記流通路に接続される導入口から、前記液状組成物を外部へ噴出させる噴口までの流路長Lが0.5〜15.0mmの範囲とされるとともに、流路径Dが0.5〜1.5mmの範囲とされ、なお且つ、前記流路長Lと流路径Dの比L/Dが0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦。
【請求項5】
噴射容量が0.05〜0.3cc/回の範囲とされ、一端側が導出口とされたステムが備えられる定量噴射バルブと、少なくとも、制汗成分と、リン酸系界面活性剤と、エタノール及び/又は水とを含む液状組成物が内部に充填される容器本体とを具備するエアゾール容器に対し、前記ステムの一端側に接続するように取り付けられるエアゾール用押釦であって、
前記ステムの導出口に連通して前記液状組成物を流通させる流通路が設けられるとともに、該流通路に連通して前記液状組成物を外部に噴出させる導出路が内部に設けられた押釦本体と、前記導出路の噴口に取り付けられ、該噴口に連通される噴射流路を有する噴口部材とが備えられ、
前記噴口部材の噴射流路の流路径D2と前記導出路の流路径D1との関係が、D1≦D2とされており、
前記導出路の流路長L1と前記噴射流路の流路長L2とを併せた総流路長L3が0.5〜15.0mmの範囲とされ、なお且つ、前記総流路長L3と前記導出路の流路径D1の比L3/D1が0.4〜15.0の範囲とされていることを特徴とするエアゾール用押釦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−353(P2009−353A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165040(P2007−165040)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】