説明

液状炭化水素組成物の製造方法、並びに自動車用燃料及び潤滑油

【課題】貴金属触媒を用いてFT合成法により得られた液状の炭化水素組成物を水素化処理する際に、過反応を十分に抑制でき、かつ、安定的に所望の燃料基材を製造できる液状炭化水素組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程を含む液状炭化水素組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状炭化水素組成物の製造方法、並びに自動車用燃料及び潤滑油に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、硫黄分及び芳香族炭化水素の含有量が低く、環境にやさしいクリーンな液体燃料が求められている。そこで、石油業界においては、クリーン燃料の製造方法として、一酸化炭素及び水素を原料としたフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsh、以下、必要に応じて「FT」と略す。)合成法が検討されている。FT合成法によれば、パラフィン含有量に富み、かつ硫黄を含まない液体燃料基材を製造することができるため、その期待は非常に大きい。
【0003】
しかし、FT合成法により得られる燃料基材は、含酸素化合物を含むため、そのままガソリンや軽油等の燃料として使用するには、それらの燃料の酸化安定性の観点から、必ずしも適していない。そのため、燃料として有効に利用するために、その燃料基材中の含酸素化合物の除去が必要となる。
【0004】
また、FT合成法により得られる燃料基材は、パラフィンの中でもノルマルパラフィン含有量が高いため、当該燃料基材をそのまま燃料として使用することは不適である。より具体的には、当該燃料基材は、自動車用ガソリンとして用いるためにはオクタン価が不十分であり、また、軽油として用いるためには低温流動性が不十分である。そこで、FT合成法により得られる燃料基材のオクタン価の向上、低温流動性の改善などを目的として、当該燃料基材中のノルマルパラフィンをイソパラフィンへ変換する水素化精製技術が重要となる。
【0005】
さらには、FT合成法により得られる重質留分中にはワックスが大量に含まれている。このワックスは水素化分解によって、軽油等の燃料や潤滑油基材に変換することで、付加価値の高い基材となる。
【0006】
FT合成法により得られる燃料基材を用いて、低温流動性に優れた軽油基材を製造する技術は、従来検討されている。例えば、特許文献1によると、重質留分の水素化分解によって得られたイソパラフィンに富む分解中間留分を、FT合成法により得られる燃料機材における中間留分と混合して、イソパラフィン50重量%以上の軽油基材を得る方法が開示されている。
【0007】
一方、FT合成法により得られる燃料基材を直接水素化精製する技術も検討されている。例えば、特許文献2によると、FT合成法により得られる中間留分を水素化精製して、パラフィンをイソパラフィンに変換することにより、中間留分の低温流動性を向上させる旨、提案されている。
【特許文献1】国際公開第00/020535号パンフレット
【特許文献2】フランス国特許公開第2826971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、FT合成法により得られる燃料基材は、その液状の炭化水素組成物である中間留分の水素化異性化、並びに、同様に液状の炭化水素組成物である重質留分に含まれるワックスの水素化分解によって、低温流動性を向上させた中間留分を生成できる。そして、得られた中間留分の一部又は全部を他の基材と混合することでディーゼル燃料基材、灯油及び航空燃料基材を製造することが一般的である。
【0009】
上述の水素化異性化及び水素化分解には、白金等の貴金属を含む、いわゆる貴金属触媒が使用される。しかしながら、白金等を含む貴金属触媒は、貴金属が高活性であるが故に、いわゆる過反応が発生し得る。過反応が起こると、触媒層の温度が急激に上昇するため、反応温度の制御が困難となり、所望の燃料基材を生成し難くなる。
【0010】
そこで、本発明は上記事情にかんがみてなされたものであり、貴金属触媒を用いてFT合成法により得られた液状の炭化水素組成物を水素化処理する際に、過反応を十分に抑制でき、かつ、安定的に所望の燃料基材を製造できる、液状炭化水素組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、FT合成法により得られた燃料基材は、石油精製により得られる燃料基材とは異なり、本来的に硫黄をほとんど含有しておらず、そのことが反応温度の急激な上昇を引き起こしていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程を含む液状炭化水素組成物の製造方法を提供する。
【0013】
ここで、本明細書において「フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた」とは、フィッシャー・トロプシュ合成により直接得られた、の意味と、フィッシャー・トロプシュ合成により直接得られた炭化水素組成物に対して更に、水素化処理等の硫黄を添加しない処理を施して得られた、の意味とを含むものである。また、「液状の炭化水素組成物」及び「液状炭化水素組成物」とは、炭化水素油と同義である。また、「硫黄」には、硫黄化合物中の硫黄原子も含まれる。
【0014】
かかる液状炭化水素組成物の製造方法によれば、原料組成物における液状炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部、と極微量の硫黄を意図的に原料組成物に添加させる。これにより、その硫黄が、触媒の反応活性点を適度に不活性化させる。その結果、水素化異性化及び水素化分解などの発熱反応が過剰に進行することを防ぎ、反応温度の上昇を十分に抑制することができる。
【0015】
こうして得られた生成組成物は、FT合成法を経て得られた燃料基材を原料とすることに起因して、芳香族分が十分に低減されている。
【0016】
本発明は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄とを含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程とを含む液状炭化水素組成物の製造方法を提供する。
【0017】
かかる液状炭化水素組成物の製造方法によれば、FT合成を経て得られた液状炭化水素組成物を触媒層に供給する前に、硫黄を触媒に接触させる。これにより、その硫黄が、触媒の反応活性点を予め適度に不活性化させる。その結果、水素化異性化及び水素化分解などの発熱反応が過剰に進行することを防ぎ、反応温度の上昇を十分に抑制することができる。また、こうして得られた生成組成物は、FT合成法を経て得られた燃料基材を原料とすることに起因して、芳香族分が十分に低減されている。
【0018】
また、本発明の製造方法は、生成組成物から上記硫黄の少なくとも一部を除去する工程を更に含むことが好ましい。この工程を経て得られる生成油は、FT合成法を経て得られた燃料基材と同等レベルの硫黄分とすることができる。その結果、各種燃料基材や潤滑油基材として一層有効に利用することができる。
【0019】
上述の除去する工程において、生成組成物から硫黄の少なくとも一部を蒸留により除去した場合、その除去する工程を経た生成組成物中の硫黄は、生成組成物中の液状炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−6質量部未満であることが確認された。かかる生成組成物から製造されるガソリンや軽油等の自動車用燃料や潤滑油は、極めて低硫黄分となる良質な製品である。
【0020】
本発明の製造方法において、触媒は、その総量に対して0.1〜1.0質量%の白金を担持してなるものであることが好ましい。白金は炭化水素の水素化分解や水素化異性化に極めて高い活性を示すため、このような触媒を用いて、FT合成を経て得られる燃料基材をそのまま水素化処理しようとすると、触媒層が特に過剰に発熱し、過反応が生じ得る。本発明では、原料組成物に極微量の硫黄を添加して、白金上の活性点を適度に不活性化して発熱反応を抑制可能となるため、触媒層の反応温度を十分に制御することができる。同様の観点から、触媒は、100質量部の白金と、0.5〜4.0質量部のパラジウムと、を担持してなるものであっても、上記と同等の発熱反応抑制効果が得られる。
【0021】
本発明の製造方法において、水素化及び水素化分解は、反応温度200〜350℃、水素分圧2.0〜5.0MPa、及び液空間速度0.5〜5.0h−1の条件で行うことができる。
【0022】
本発明の製造方法において、触媒は1つ又は2つ以上の触媒層に充填されており、生成組成物を得る工程において、触媒層1つ当たりの発熱温度が30℃以下になるように、原料組成物における硫黄の含有割合を変化させることが好適である。ここで、「発熱温度」とは、触媒層における最高温度から原料組成物の触媒層入口温度を差し引いた温度を意味する。このような指標を設けることにより、過反応の抑制が一層容易となり、更に安定的に所望の燃料基材を製造することが可能となる。
【0023】
本発明の製造方法において、上記硫黄は、少なくとも水素ガスと混合された状態、あるいは、少なくともフィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた炭化水素組成物と混合された状態で触媒層に供給されれば、本発明の上記目的をより確実に達成することができる。
【0024】
また、硫黄を分子内に有する硫黄化合物は非芳香族化合物であると好ましい。硫黄化合物が芳香族化合物であると、生成組成物中に、その芳香族化合物由来の芳香族留分が含まれる。FT合成法を経て得られた燃料基材は、芳香族化合物をほとんど含まないことが特徴の1つであるため、その特徴を有効に活用するためには、硫黄化合物にも非芳香族化合物を用いて、生成組成物中の芳香族分を極力低減することが好ましい。
【0025】
上述の硫黄は、それを分子内に有する硫黄化合物が少なくとも溶剤に希釈された状態で触媒層に供給されてもよい。その場合、溶剤は、上記と同様の理由から、芳香族化合物を含有しないことが好ましい。
【0026】
上記本発明の製造方法により得られた液状炭化水素組成物は、良質な自動車用燃料の基材及び潤滑油の基材として、有効に利用することができる。すなわち、本発明の自動車用燃料は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程を含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有するものである。
【0027】
また、本発明の自動車用燃料は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄とを含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程とを含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有するものである。
【0028】
本発明の潤滑油は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程を含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有するものである。
【0029】
また、本発明の潤滑油は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄とを含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスとを含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程とを含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有するものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、貴金属触媒を用いてFT合成法により得られた液状の炭化水素組成物を水素化処理する際に、過反応を十分に抑制して、安定的に所望の燃料基材を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好適な実施形態による液状炭化水素組成物の製造方法は、貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程(水素化工程)と、生成組成物から硫黄の少なくとも一部を除去する工程(硫黄除去工程)とを含むものである。
【0032】
まず、水素化工程において、原料組成物を触媒層に供給して、水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る。
【0033】
原料組成物中のFT合成を経て得られた液状炭化水素組成物は、FT合成により直接得られた液状の炭化水素組成物と、FT合成により直接得られた炭化水素組成物に対して更に、水素化処理等の硫黄を添加しない処理を施して得られた液状炭化水素組成物とからなる。FT合成により得られる生成油は、通常の石油精製により得られる生成油とは異なり、硫黄を全く含まない炭化水素組成物である。本発明は、硫黄を含まない炭化水素組成物を触媒層に供給して水素化処理しようとする場合に生じる課題を解決するものである。したがって、FT合成により直接得られた炭化水素組成物のみならず、その炭化水素組成物に対して更に、硫黄を添加しない処理を施して得られた炭化水素組成物を用いた場合も、上記課題は生じ、本発明はその課題を解決できる。
【0034】
FT合成により直接得られる液状炭化水素組成物としては、FT合成により生成したものであれば特に限定されず、例えば、炭素数9以上のノルマルパラフィン、アルコール及びオレフィン並びにそれらの混合物が挙げられる。また、ノルマルパラフィンを主成分とする合成系ワックスであるFTワックスが挙げられる。
【0035】
FT合成により直接得られた炭化水素組成物に対して更に、水素化処理等の硫黄を添加しない処理を施して得られた液状炭化水素組成物を用いる場合、硫黄を添加しない処理としては、例えば、水素化処理、水素化分解処理及び水素化異性化処理が挙げられる。
【0036】
原料組成物中の硫黄は、硫黄化合物が分子中に有する硫黄原子を含む。硫黄化合物としては、例えば、硫化水素、メチルメルカプタン等のチオール(メルカプタン)、スルファイド、チオフェン及びその誘導体、並びにベンゾチオフェン及びその誘導体が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0037】
硫黄化合物は、非芳香族化合物であることが好ましい。FT合成により直接得られる炭化水素組成物は、芳香族化合物をほとんど含有しない。そのため、硫黄化合物として非芳香族化合物を用いると、得られる生成組成物中には芳香族化合物がほとんど含まれず、良質な自動車燃料基材や潤滑油基材が得られる。
【0038】
原料組成物中の硫黄の含有割合は、硫黄原子として、上記FT合成を経て得られた液状炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部であればよい。上記炭化水素組成物100質量部に対して硫黄の含有割合が1.0×10−5質量部を下回ると、硫黄を添加したことによる過反応の抑制効果が十分でなくなる傾向にある。また、上記炭化水素組成物100質量部に対して硫黄の含有割合が2.0×10−4質量部を超えると、貴金属触媒による水素化活性が低下する傾向にある。これらの結果、硫黄の含有割合が上記数値範囲を外れる場合、所望の生成組成物が得られ難くなる傾向にある。
【0039】
硫黄の原料組成物への添加方法は、硫黄化合物を添加するラインの温度圧力条件において、その硫黄化合物が気体である場合、水素ガスに硫黄化合物ガスを混合する方法を採用できる。また、硫黄化合物を添加するラインの温度圧力条件において、その硫黄化合物が液体である場合、上記液状の炭化水素組成物に液状の硫黄化合物を混合する方法を採用できる。あるいは、硫黄化合物を溶剤に溶解又は分散させた後に、それを上記液状の炭化水素組成物に混合する方法であってもよい。この場合の溶剤としては、それを添加するラインの温度圧力条件において液体であるものが採用できる。
【0040】
本実施形態の液状炭化水素組成物の製造方法に使用される装置は、水素存在下で原料組成物と水素化精製触媒とを接触させて、水素化精製可能なものであれば特に限定されない。よって、例えば、従来の水素化精製装置に採用されている固定床反応装置を使用することができ、あるいは流動床反応装置を用いることもできる。
【0041】
貴金属を含有する触媒は、炭化水素組成物の水素化触媒であれば特に限定されず、担体上に貴金属を担持したものが好適に用いられる。
【0042】
担体としては、金属酸化物が好適に用いられ、固体酸であると好ましい。この担体は、所望の活性や選択性を得るべく調製されればよく、例えば、USYゼオライト、シリカアルミナ、アルミナボリア、シリカジルコニア及びSAPO11、並びにこれらの混合物が挙げられる。あるいは、シリカ、アルミナ及びシリカアルミナを担体として用いてもよい。
【0043】
また、本実施形態で用いられる触媒は、担体成型のためのバインダーを更に含有してもよい。バインダーは特に制限されないが、好ましいバインダーとしてはアルミナ又はシリカが挙げられる。担体の形状は特に制限されず、粒状であってもよく、工業的に使用される場合は、円柱状(ペレット)などの形状とすることができる。
【0044】
担体に担持される貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、イリジウム、及びロジウムが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。これらの中で、高い水素化活性が得られる観点から白金が好ましく、それに加えて反応制御が容易になる観点から、白金及びパラジウムの混合物が好ましい。
【0045】
貴金属の担持量は特に制限されず、例えば、担体100質量部に対して0.05〜3.0質量部であると好ましく、0.10〜1.0質量部であるとより好ましい。貴金属の担持量が担体100質量部に対して0.05質量部未満であると、活性が低下し、反応が進行し難くなる傾向にあり、3.0質量部を超えると、活性が高くなり、硫黄による不活性化が行われ難くなる傾向にある。
【0046】
また、貴金属として白金及びパラジウムの混合物を用いる場合、パラジウムの担持量は、白金100質量部に対して、0.5〜4.0質量部であると好適である。パラジウムの担持量が、白金100質量部に対して、0.5質量部を下回ると、パラジウムの添加効果が低下する傾向にあり、4.0質量部を上回ると、貴金属の添加量に見合う活性の向上が見られ難くなる傾向にある。
【0047】
貴金属を担体に担持させる方法は特に制限されず、例えば、上記貴金属を含む水溶液を担体に含浸させ、乾燥、焼成を行う方法であってもよい。
【0048】
貴金属を含有する触媒を充填する触媒層は、1又は2以上であってもよく、複数の触媒層は、それぞれ異なる反応塔に配置されてもよく、同一の反応塔内で分離されて配置されてもよい。
【0049】
貴金属を含有する触媒は、反応開始前に水素等と接触させて還元処理して使用することが好ましい。この場合、触媒を触媒層に充填した後で還元してもよく、予め触媒に還元処理を施して安定化した触媒を触媒層に充填してもよい。
【0050】
本実施形態によると、上記触媒を用いることにより、水素化反応及び水素化分解反応の他、水素化異性化反応、あるいは単なる異性化反応も進行する。
【0051】
この触媒に、FT合成を経て得られた液状の炭化水素組成物を接触させて、水素化処理を行う際、上述の硫黄を原料組成物に継続的に添加する場合は、その添加量を触媒層における発熱温度見合いで変更すると好ましい。具体的には、触媒層1つ当たりの発熱温度が30℃以下になるように、原料組成物における硫黄の含有割合を変化させることが好ましい。このように硫黄の添加量を調整することで、いわゆる暴走反応をより十分に抑制することができ、しかも、水素化等の反応の進行が困難となることもより十分に防止することができる。その結果、所望の生成組成物を、一層効率的かつ確実に得ることができると共に、触媒の寿命をより適切に管理することが可能となる。
【0052】
なお、触媒の種類、原料組成物の組成、及び所望とする生成組成物の組成の組合せによっては、水素化処理の開始時から所定期間経過後に、硫黄の添加を停止しても発熱温度が30℃を超えない場合もある。その場合は、硫黄の添加を停止してもよい。また、その後で発熱温度が30℃を超えそうな状況になれば、硫黄の添加を再開して、発熱温度見合いで添加量を調整してもよい。
【0053】
触媒層における反応温度は、平均温度として、180〜400℃であると好ましく、200〜350℃であるとより好ましい。反応温度が180℃未満であると、水素化活性、水素化分解活性及び水素化異性化活性のいずれもが低下する傾向にある。また、反応温度が200℃を下回ると、原料組成物中のアルコール等の含酸素化合物を除去し難くなる傾向にある。反応温度が400℃を上回ると、生成組成物の軽質化を抑制するのが困難となり、所望とする留分の収率が低下する傾向にある。また、反応温度が350℃を超えると、生成組成物に着色が認められる傾向にあり、製品としての使用を制限される場合がある。
【0054】
また、反応圧力は特に制限されないが、水素分圧として0.1〜10.0MPaであると好ましく、1.0〜50MPaであるとより好ましい。水素分圧が0.1MPaを下回ると触媒の劣化が進行しやすくなる傾向にあり、10.0MPaを超えると、所望の留分の生成組成物を得るための反応温度が高くなる傾向にある。液空間速度(LHSV)は、特に制限されないが、通常0.1〜10.0h−1であると好ましく、0.5〜5.0h−1であるとより好ましい。また、原料組成物中の液状の炭化水素組成物の量に対する触媒層に供給する全水素量の比、すなわち水素/油比は特に制限されないが、通常50〜1000NL/Lの範囲であると好適であり、100〜800NL/Lであるとより好適である。
【0055】
次いで、硫黄除去工程において、生成組成物から硫黄化合物の少なくとも一部を除去する。硫黄化合物の除去方法としては、蒸留及び/又は吸着脱硫が挙げられる。これらの中では、既存の設備を容易に転用でき、制御が容易であるという観点から蒸留による脱硫により硫黄化合物を除去することが好ましい。
【0056】
更に好ましくは、硫黄化合物が硫化水素、メチルメルカプタン等の比較的低分子の化合物である場合は、ストリッピングにより硫黄化合物を除去する。また、更に好ましくは、硫黄化合物が、ナフサや軽油と同程度の沸点を有する比較的高分子の化合物である場合は、極性溶剤を用いた抽出蒸留により、硫黄化合物を除去する。
【0057】
硫黄除去工程を経て得られる液状の炭化水素組成物は、原料組成物中の硫黄分が極めて低いことを主因として、生成組成物中の液状炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−6質量部未満とすることが可能となる。その結果、この液状炭化水素組成物は、安定性及び環境保護を考慮すると、自動車用燃料の基材又は潤滑油の基材として、極めて有用な炭化水素油となる。また、FT合成により得られる炭化水素組成物は芳香族化合物をほとんど含有しないため、硫黄除去工程を経て得られる液状の炭化水素組成物中に芳香族化合物はほとんど含有しない。したがって、このような観点からも、安定性及び環境保護を考慮して、極めて有用な炭化水素油となる。
【0058】
また、本実施形態によると、FT合成により得られる液状炭化水素組成物を上記触媒に接触させて、水素化、水素化分解、水素化異性化等することにより、アルコール等の含酸素化合物及びオレフィンはパラフィンへと変換され、ノルマルパラフィンは高い転化率でイソパラフィンへ異性化する。したがって、硫黄除去工程を経て得られる液状の炭化水素組成物は、高オクタン価のガソリン基材としても有用であり、低温流動性に優れた灯軽油基材としても有用である。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、本発明の別の実施形態において、上記原料組成物を上記触媒に接触させる前に、予め、その触媒の高活性点を硫黄で修飾してもよい。こうすることにより、反応温度の制御、特に原料組成物を上記触媒に接触させ始める際の反応温度の制御を、より容易に行うことが可能となると共に、触媒寿命の管理を一層適切に行うことができる。硫黄による触媒の高活性点の修飾方法としては、上述の硫黄化合物と炭化水素組成物との混合物を触媒層に供給する方法が挙げられる。
【0061】
この混合物中の炭化水素組成物はFT合成により得られた炭化水素油であってもよく、石油精製によって得られた炭化水素油であってもよく、あるいは市販の炭化水素組成物又は炭化水素系の溶剤であってもよい。炭化水素系の溶剤としては、例えば、ヘプタンが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
上記混合物中の硫黄の含有割合は、硫黄原子として、炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部であると好適である。上記炭化水素組成物100質量部に対して硫黄の含有割合が1.0×10−5質量部を下回ると、硫黄を添加したことによる過反応の抑制効果が十分でなくなる傾向にある。また、上記炭化水素組成物100質量部に対して硫黄の含有割合が2.0×10−4質量部を超えると、貴金属触媒による水素化活性が低下する傾向にある。これらの結果、硫黄の含有割合が上記数値範囲を外れる場合、所望の生成組成物が得られ難くなる傾向にある。
【0063】
また、予め、硫黄を用いて触媒の高活性点を修飾する際、反応塔の温度、水素分圧、水素/油比及びLHSVは、上記実施形態における水素化工程と同様であればよい。
【0064】
さらに、予め、硫黄を用いて触媒の高活性点を修飾する場合、水素化工程において原料組成物中に硫黄を必ずしも含有する必要はない。すなわち、触媒層における発熱温度見合いで、適宜硫黄を添加すればよい。
【0065】
また、本発明の更に別の実施形態において、生成組成物の用途、原料組成物中の硫黄の含有割合等に応じて、硫黄除去工程を設けなくてもよい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[触媒の調製]
(触媒A)
平均粒子径0.9μmのUSYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比:37)とシリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:14)とアルミナバインダーとを用いて、φ1.6mm、長さ約2mmの円柱状の担体を成型した(USYゼオライト/シリカアルミナ/アルミナバインダー=3/57/40(質量比))。この担体に塩化白金酸の水溶液を含浸し、担体に対して0.8質量%の白金を担持した。これを乾燥、焼成することで水素化分解触媒Aを得た。
【0068】
(触媒B)
SAPO11とアルミナバインダーとを用いて、φ1.6mm、長さ約2mmの円柱状の担体を成型した(SAPO11/アルミナバインダー=20/80(質量比))。この担体に塩化白金酸の水溶液を含浸し、担体に対して1.0質量%の白金を担持した。これを乾燥、焼成することで水素化分解触媒Bを得た。
【0069】
(触媒C)
平均粒子径0.9μmのUSYゼオライト(シリカ/アルミナのモル比:37)とシリカアルミナ(シリカ/アルミナのモル比:14)とアルミナバインダーとを用いて、φ1.6mm、長さ約2mmの円柱状の担体を成型した(USYゼオライト/シリカアルミナ/アルミナバインダー=3/57/40(質量比))。この担体に塩化白金酸と塩化パラジウムとの水溶液を含浸し、担体に対して0.8質量%の白金及び0.8質量%のパラジウムを担持した。これを乾燥、焼成することで水素化分解触媒Cを得た。
【0070】
(実施例1)
まず、流通系固定床反応装置における反応塔に触媒Aを150mL充填し、その後、充填した触媒Aを300℃で水素還元した。
【0071】
次いで、原料油である液状炭化水素組成物に、硫黄化合物を、硫黄原子として、液状炭化水素組成物100質量部に対して5.0×10−5質量部添加して得られた組成物を、反応塔の塔頂から、300mL/hの流量で供給した。また、その組成物に対して水素/油比で350NL/Lとなる量の水素ガスを塔頂から供給した。上記液状炭化水素組成物として、炭素数9〜21のFT合成により得られた炭化水素油(ノルマルパラフィン含有量:90質量%、アルコール含有量:5質量%、オレフィン含有量:5質量%)を用い、硫黄化合物として、チオフェンを用いた。反応塔圧力は入口圧3.0MPaで一定になるように背圧弁にて調整した。また、反応温度は270℃で一定になるように調整した。
【0072】
こうして、上記液状炭化水素組成物、硫黄化合物及び水素ガスを含む原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は3℃であった。
【0073】
(実施例2)
原料油である液状炭化水素組成物を、炭素数20以上の炭化水素で構成されるFTワックス(融点:70℃)に代え、硫黄化合物をメチルメルカプタンに代え、硫黄化合物の添加量を、硫黄原子として、液状炭化水素組成物100質量部に対して2.0×10−6質量部に代え、原料の組成物の流量を150mL/hに代え、反応温度を300℃に代えた以外は、実施例1と同様にして、原料組成物の水素化及び水素化分解等を行った。
【0074】
その結果、触媒層における発熱温度は4℃であった。
【0075】
(実施例3)
まず、流通系固定床反応装置における反応塔に触媒Aを150mL充填し、その後、充填した触媒Aを300℃で水素還元した。
【0076】
次に、溶剤であるヘプタンに、そのヘプタン100質量部に対して、硫黄原子として、1.0×10−4質量部のメチルメルカプタンを添加して得られた混合物を、反応塔の塔頂から、100mL/hの流量で6時間供給した。また、その混合物に対して水素/油比で350NL/Lとなる量の水素ガスを塔頂から供給した。この際、反応塔における温度及び圧力は、実施例2における反応温度及び圧力と同条件とした。
【0077】
次いで、原料油である液状炭化水素組成物を、反応塔の塔頂から、150mL/hの流量で供給した。また、その組成物に対して水素/油比で350NL/Lとなる量の水素ガスを塔頂から供給した。上記液状炭化水素組成物として、炭素数20以上の炭化水素で構成されるFTワックス(融点:70℃)を用いた。反応塔圧力は入口圧3.0MPaで一定になるように背圧弁にて調整した。また、反応温度は270℃で一定になるように調整した。
【0078】
こうして、上記液状炭化水素組成物及び水素ガスを含む原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は4℃であった。
【0079】
(実施例4)
触媒Aを触媒Bに代えた以外は実施例1と同様にして、原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は3℃であった。
【0080】
(実施例5)
触媒Aを触媒Cに代えた以外は実施例1と同様にして、原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は2℃であった。
【0081】
(比較例1)
硫黄化合物であるチオフェンを原料組成物に含有しない以外は実施例1と同様にして、原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は8℃であった。
【0082】
(比較例2)
硫黄化合物の添加量を、硫黄原子として、液状炭化水素組成物100質量部に対して3.0×10−4質量部に代えた以外は実施例1と同様にして、原料組成物の水素化及び水素化分解等を行ったところ、触媒層における発熱温度は1℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程を含む、液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項2】
前記生成組成物から前記硫黄の少なくとも一部を除去する工程を更に含む、請求項1記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項3】
前記除去する工程において、前記生成組成物から前記硫黄の少なくとも一部を蒸留により除去し、かつ、
前記除去する工程を経た前記生成組成物中の前記硫黄は、前記生成組成物中の液状炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−6質量部未満である、請求項2記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項4】
前記触媒は、その総量に対して0.1〜1.0質量%の白金を担持してなるものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項5】
前記触媒は、100質量部の白金と、0.5〜4.0質量部のパラジウムと、を担持してなるものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項6】
前記水素化及び前記水素化分解は、反応温度200〜350℃、水素分圧2.0〜5.0MPa、及び液空間速度0.5〜5.0h−1の条件で行われる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項7】
前記触媒は1つ又は2つ以上の前記触媒層に充填されており、前記生成組成物を得る工程において、前記触媒層1つ当たりの発熱温度が30℃以下になるように、前記原料組成物における前記硫黄の含有割合を変化させる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項8】
前記硫黄は、少なくとも前記水素ガスと混合された状態、あるいは、少なくとも前記フィッシャー・トロプシュ合成を経て前記炭化水素組成物と混合された状態、で前記触媒層に供給される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項9】
前記硫黄を分子内に有する硫黄化合物は非芳香族化合物である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項10】
前記硫黄は、それを分子内に有する硫黄化合物が少なくとも溶剤に希釈された状態で前記触媒層に供給され、かつ、前記溶剤は芳香族化合物を含有しない、請求項9記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項11】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程、を含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有する、自動車用燃料。
【請求項12】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた炭化水素組成物と、その炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程、を含む液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有する、潤滑油。
【請求項13】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、を含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、前記貴金属を含有する触媒が充填された前記触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程と、を含む、液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項14】
前記触媒は、その総量に対して0.1〜1.0質量%の白金を担持してなるものである、請求項13記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項15】
前記触媒は、100質量部の白金と、0.5〜4.0質量部のパラジウムと、を担持してなるものである、請求項13又は14に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項16】
前記水素化及び前記水素化分解は、反応温度200〜350℃、水素分圧2.0〜5.0MPa、及び液空間速度0.5〜5.0h−1の条件で行われる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項17】
前記触媒は1つ又は2つ以上の前記触媒層に充填されており、前記生成組成物を得る工程において、前記触媒層1つ当たりの発熱温度が30℃以下になるように、前記原料組成物における前記硫黄の含有割合を変化させる、請求項13〜16のいずれか一項に記載の液状炭化水素組成物の製造方法。
【請求項18】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、を含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、前記貴金属を含有する触媒が充填された前記触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程と、を含む、液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有する、自動車用燃料。
【請求項19】
貴金属を含有する触媒が充填された触媒層に、炭化水素組成物と、当該炭化水素組成物100質量部に対して1.0×10−5質量部〜2.0×10−4質量部の硫黄と、を含有する混合物を供給する工程と、当該供給する工程の後に、前記貴金属を含有する触媒が充填された前記触媒層に、フィッシャー・トロプシュ合成を経て得られた液状の炭化水素組成物と、水素ガスと、を含有する原料組成物を供給して、その原料組成物の水素化及び/又は水素化分解によって生成組成物を得る工程と、を含む、液状炭化水素組成物の製造方法によって得られた液状炭化水素組成物を含有する、潤滑油。

【公開番号】特開2007−270052(P2007−270052A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99969(P2006−99969)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構重質残油クリーン燃料転換プロセス技術開発委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】