説明

液相拡散接合の方法及び装置

【課題】 加熱加圧処理を適正な時期に終了することで欠陥が少なく且つ強度が高い接合部分を効率的に形成し得る接合方法および接合装置を提供する。
【解決手段】 クランプ装置10により、被接合管材23と被接合管材22とをこれらの接合端部23Eと接合端部22E’とが隔てられて対向するように保持し、その間にアモルファスシート25を配置する。クランプ装置10に付設された付勢部10’xを用いて、接合端部23E及び接合端部22E’に付勢力を作用させてアモルファスシート25を挟持させ、更に、アモルファスシート25、接合端部23E及び接合端部22E’を加圧下にて高周波加熱コイル2cにより加熱して溶融させ、しかる後に凝固させて接合部分を形成する。膨出センサ7を用いて接合端部23E,22E’の横方向膨出率が所定値に到達したことを検知して、接合部分の温度及び加圧力を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電プラント等のボイラ内部において熱交換のために使用される通液配管を形成している管状部材等の損傷部分の補修の際に、切除された当該損傷部分に代わって新規管状部材等を接合するのに適用可能な液相拡散接合の方法及び装置に関するものである。特に、本発明は液相拡散接合における効率向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火力発電プラントや化学プラントなどの各種プラントの密集した配管(例えば、ボイラ用の高温環境下で使用される鋼製の配管)を形成する管状部材の損傷部分を補修する方法として、当該損傷部分を切除し、その部分にほぼ同等な寸法で同等な材質の新規管状部材を液相拡散接合することがなされている。この接合に先立ち、新規管状部材の両端部及びこれらに接合される既設管状部材の切断端部に開先加工が施される。また、接合時には、新規管状部材と既設管状部材との互いに接合される端部である接合端部及びこれらの間に配置される接合材料(例えば、鋼に硼素(B)等を添加することにより低融点化したアモルファスシート)からなる接合部分に対して加熱及び加圧がなされる。
【0003】
適切な液相拡散接合を行うためには、接合端部同士を接合材料を介在させて突き当て、接合部分に適正な圧力を発生させることが必要である。このため、既設管材と新規管材とを保持するクランプ装置に油圧機構またはバネ機構による加圧力発生手段を組み込んでおき、これにより接合部分に適正な圧力を印加するようにしている。
【0004】
一方、特許第3276513号公報(特許文献1)には、上記加圧力印加のために、接合材料加熱用の高周波加熱装置とは別の加熱装置により、接合端部以外の管材部分に対する加熱を行って該管材を膨張させて接合端部同士の距離を減少させ、接合端部同士を接合材料を介在させて突き当てて適切な加圧力を発生させることが記載されている。これと同様な技術が特開平9−242725号公報(特許文献2)にも開示されている。
【特許文献1】特許第3276513号公報
【特許文献2】特開平9−242725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液相拡散接合により欠陥が少なく強度が高い接合部分を形成するためには、接合部分の温度及び加圧力を適正に制御することに加えて、この加熱及び加圧の処理の時間を適正に制御すること即ち加熱加圧処理を適正な時期に終了することが必要である。加熱加圧処理が不足すると金属組織の均一化が不十分となることがあり、また加熱加圧処理が過剰になると接合面の剥離が発生することがあり、これらの場合にはいずれも接合部分の強度が低下する。
【0006】
従来の方法では、被接合材の材質や寸法などに応じて、予め設定した加熱源の発熱状態及び加圧源の加圧力発生状態のもとで予め設定した時間の加熱加圧処理を行い当該時間の経過後に加熱加圧処理を終了するようにしている。
【0007】
しかるに、実際には、接合部分の温度及び加圧力は予め設定した上記加熱源及び加圧源の状態に対してある程度の幅をもって変化する。このため、予め設定した時間の経過後に処理を終了すると、得られた接合部分の品質にばらつきが生ずることがある。このばらつきを低減するためには、例えば、接合部分の温度及び加圧力を実際に検知し、この検知結果に基づいて、予め定められた基準に従い所要の加熱加圧処理がなされたと判定された時点で、加熱加圧処理を終了することが考えられる。しかしながら、このように温度及び加圧力の双方の検知結果に基づく判定のためはこれら2つの状態検知のための手段が必要であり且つこれらから入力される信号に基づく複雑な処理が必要になる。これは、接合の効率化の観点からは、好ましいとはいえない。
【0008】
本発明は、上記の様な技術的課題を解決し、特に加熱加圧処理を適正な時期に終了することで加熱加圧処理を適切に行って欠陥が少なく且つ強度が高い接合部分を効率的に形成し得る接合方法および接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明によれば、上記目的を達成するものとして、
第1の被接合材の第1の接合端部と第2の被接合材の第2の接合端部とを接合する方法であって、
前記第1の被接合材と前記第2の被接合材とを前記第1の接合端部と前記第2の接合端部とが隔てられて対向するように保持し、前記第1の接合端部と前記第2の接合端部との間に接合材料を配置し、
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部により前記接合材料を挟持させ、更に、該接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部を加圧下にて加熱することで溶融させ、しかる後に凝固させて接合部分を形成し、
前記接合部分の横方向の膨出率が所定値に到達したことを検知して、前記接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させることを特徴とする接合方法、
が提供される。
【0010】
本発明の一態様においては、前記横方向の膨出率の所定値は2%〜12%の範囲内にある。本発明の一態様においては、前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材は管状をなしている。本発明の一態様においては、前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材は外径に対する肉厚の比率が3%〜20%の範囲内にある。
【0011】
本発明の一態様においては、前記接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の溶融のための加熱の温度は、前記接合材料の融点以上で且つ前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材の融点より低い。本発明の一態様においては、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の加圧下での加熱は、前記第1の接合端部と前記第2の接合端部と前記接合材料とを加熱装置により加熱することでなされる。本発明の一態様においては、前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持は、これら第1及び第2の被接合材の延在方向に関する前記加熱装置による加熱範囲と同等の距離だけ隔てた位置にてなされる。本発明の一態様においては、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の加圧は、前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持を付勢力をもって行うことでなされる。本発明の一態様においては、前記接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の溶融のための加熱の温度及び加圧の圧力は、それぞれ1200℃〜1300℃の範囲内及び0.3Kgf/mm〜1Kgf/mmの範囲内にある。
【0012】
また、本発明によれば、上記目的を達成するものとして、
第1の被接合材の第1の接合端部と第2の被接合材の第2の接合端部とを接合する装置であって、
前記第1の被接合材と前記第2の被接合材とを保持する保持手段と、
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部並びにこれらの間に配置される接合材料を含んでなる接合部分を加熱する加熱装置と、
前記接合部分に加圧力を印加する加圧手段と、
前記接合部分の接合に伴う横方向の膨出量を検知する膨出検知手段と、
前記膨出検知手段により検知される横方向の膨出量の信号が入力され、前記加熱装置及び/または前記加圧手段に駆動信号を出力する制御装置と、
を含んで構成され、
前記制御装置は、前記膨出検知手段から入力される信号に基づき横方向の膨出率を算出し、該膨出率が所定値に到達した時に、前記接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させるよう前記加熱装置及び/または前記加圧手段へ駆動信号を出力するものであることを特徴とする接合装置、
が提供される。
【0013】
本発明の一態様においては、前記加熱装置は高周波加熱装置である。本発明の一態様においては、前記加圧手段は、前記保持手段に付設され前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持を付勢力をもって行わせるものからなる。本発明の一態様においては、前記加圧手段は、前記加熱装置による加熱に基づき前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部が膨張することで前記加圧力を発生させるものである。本発明の一態様においては、更に前記接合部分の温度を検知する温度検知手段を含み、前記制御装置は、前記温度検知手段により検知される温度の信号が入力され、該温度の信号に基づき前記駆動信号を作成する。
【発明の効果】
【0014】
以上のような本発明の接合方法及び接合装置においては、接合部分の横方向膨出率が所定値に到達したことを検知して接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させるようにしたことで、加圧力の検知を常時行う必要がなくなり、現実の加熱加圧の状態を反映した適正な時点での加熱加圧処理の終了が可能となり、かくして強度が高い接合部分を効率的に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明による液相拡散接合の方法及び装置の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は液相拡散接合装置の一実施形態の構成の概略を示すブロック図であり、図2はこの装置の使用状態における接合ヘッド部分を示す模式図である。
【0017】
本実施形態の液相拡散接合装置は、加熱装置としての高周波加熱装置2、温度検知手段としての温度センサ4、接合部分の接合に伴う横方向の膨出量を検知する膨出検知手段としての膨出センサ7及び制御装置8を備えている。高周波加熱装置2は、高周波電源2aと整合トランス2bと高周波加熱コイル2cとを有する。高周波電源2aは制御装置8から発せられる駆動信号により動作の制御を受ける。高周波電源2aの電力は整合トランス2bを経て高周波加熱コイル2cに供給される。高周波加熱コイル2c、温度センサ4及び膨出センサ7、並びに保持手段としてのクランプ装置10’を含んで接合ヘッド12が構成される。
【0018】
温度センサ4は、例えば熱電対からなり、図2に示されているように、第1及び第2の被接合材としての1対の被接合管材23,22のうちの一方である被接合管材22の接合端部の外面に固定しておくことができる。膨出センサ7は、例えば超音波、電磁波または光などを接合部分に照射し、その反射を検知することで管材の横方向膨出量を検知するものが例示される。膨出センサ7は、高周波加熱コイル2cに付設することができるが、該高周波加熱コイル2cに設けられた超音波、電磁波または光などを通過させる窓の近傍であって該高周波加熱コイル2cの外方の位置に適宜の支持手段により支持してもよい。尚、膨出センサ7の詳細な作用に関しては後述する。
【0019】
クランプ装置10’は、一方の被接合管材22を所定位置にて把持する第1の把持部10’aと、他方の被接合管材23を所定位置にて把持する第2の把持部10’bと、これらの把持部同士を連結する連結部10’cとを備えている。クランプ装置10’は、把持部の把持が例えば油圧駆動によりなされるものである。連結部10’cには、第1及び第2の把持部10’a,10’bの間に互いを上下方向に近づけるよう付勢する付勢部10’xが付設されている。この付勢部10’xは、例えばバネなどの弾性部材を用いた機構により付勢力を発生させるものや、油圧機構により付勢力を発生させるものなどが例示される。付勢部10’xは、制御装置8から発せられる駆動信号により動作の制御を受け、その発生する付勢力を変化させることができる。
【0020】
図2に示されているように、高周波加熱コイル2cは、第1の被接合管材23の下端部(第1の接合端部)23Eと、これに対向する第2の被接合管材22の上端部(第2の接合端部)22E’との径方向外方に位置しており、第1及び第2の接合端部に対して高周波誘導による加熱を行うことができる。即ち、高周波加熱コイル2cは、被接合管材23,22の延在方向である上下方向に関して長さLの加熱範囲を有する。高周波加熱コイル2cは、クランプ装置10’に取り付けられていて、縦方向(上下方向)に延びた分割面により分割された2つの部分からなり、一方の部分に対して他方の部分がヒンジなどにより回動可能に結合されている。従って、接合ヘッド12を接合のための位置に配置し或いはその位置から退去させる際に、高周波加熱コイル2cを第1及び第2の被接合管材23,22に対して所定の位置に配置し或いは該所定の位置から除去することができる。尚、従来の液相拡散接合装置と同様に、高周波加熱コイル2cの周囲にシールドガスを供給する手段を設けておくことができる。
【0021】
以上のような高周波加熱装置2、温度センサ4及び付勢部10’xとしては、従来知られているものを使用することができる。
【0022】
制御装置8は、温度センサ4により検知される温度の信号及び膨出センサ7により検知される接合部分の横方向(水平方向)の膨出量の信号が入力され、これに基づき高周波加熱装置2及び付勢部10’xに駆動信号を出力する。
【0023】
以下、本実施形態の接合装置を用いた本発明による液相拡散接合方法の一実施形態を説明する。
【0024】
図3(a)に示されるように、火力発電プラントのボイラ内部には熱交換用の通水配管を形成する壁状に密集配置された上下方向の複数の管材30が設けられている。管材30は、例えば炭素鋼からなる。これらのうちの経時劣化による損傷部分31のある管材につき、図3(b)に示されるように、損傷部分31を切除する。この切除により分断された管材30の2つの部分により、既設管材21,23が形成される。下側の既設管材21の上向き端面21a及び上側の既設管材23の下向き端面23aに対して、接合のための所要の表面粗さに仕上げる開先加工を施す。
【0025】
次に、図3(c)に示されるように、切除された損傷部分31と同等な寸法(但し、長さは既設管材21,23の端面21a,23a間の距離より常温において僅かに[例えば0.5mm〜3mm程度]短い)で欠陥のない新規管材22を用意し、その両端面に対して接合のための所要の表面粗さに仕上げる開先加工を施す。そして、新規管材22の上向き端面と既設管材23の下向き端面とを液相拡散接合により接合する。この接合の際には、新規管材22と既設管材23との間に印加する加圧力を発生させる手段として例えば上記の油圧機構によるものを利用したクランプ装置10’を用いて、次のようにしておこなわれる。
【0026】
即ち、先ず、第1段階として、管材22,23の接合端部22E’,23Eの間に接合材料としてのアモルファスシート25を配置する。
【0027】
続いて、第2段階として、クランプ装置10’の付勢部10’xの付勢力を適宜の値に設定することで、第1及び第2の接合端部22E’,23Eにより接合材料25を所定加圧力にて挟持させる。所定加圧力は、例えば0.3Kgf/mm〜1Kgf/mmの範囲内にある。アモルファスシートとしては、例えば管材21,22,23と同等な炭素鋼に融点降下元素としてのホウ素(B)等を添加することにより低融点化したものを使用することができる。更に、これら接合端部22E’,23E及びアモルファスシート25に対して加圧下にて高周波加熱装置2による所定温度への加熱を行う。所定温度は、例えば1200℃〜1300℃の範囲内にある。これにより、接合端部22E’,23E及びアモルファスシート25溶融させ、しかる後に凝固させて接合部分を形成する。
【0028】
ここで、上記所定温度への加熱により、アモルファスシート25と、既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’とが溶融せしめられる。即ち、この加熱温度がアモルファスシート25の融点以上であることから、アモルファスシート25が溶融せしめられ、該アモルファスシート25中の融点降下元素であるホウ素が既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’へと拡散する。これにより、既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’の融点が降下して、この加熱温度で溶融せしめられるようになる。しかる後に、ホウ素は既設管材23及び新規管材22にて更に拡散し、溶融部分のホウ素濃度が低下する。また、これらと並行して、溶融したアモルファスシート25中のホウ素濃度も低下する。これにより、溶融状態にある既設管材下端部23E、新規管材上端部22E’及びアモルファスシート25は、それらの融点が上昇することで、この加熱温度で凝固する。
【0029】
以上のようにして凝固した既設管材下端部23E、新規管材上端部22E’及びアモルファスシート25からなる接合部分は、微細空孔が残留し、金属組織が十分に緻密化及び均質化していないことがあるので、続いて第3段階で、その組織緻密化及び均質化を促進するために適正圧力印加の処理を行う。
【0030】
即ち、第3段階として、接合部分に印加される加圧力が所定範囲内となるように、クランプ装置10’の付勢部10’xの付勢力を適宜の値に設定する。この加圧力の所定範囲は、微細空孔を排除し且つ接合部分の組成を他の管材部分と均質化するために凝固後の管材におけるホウ素の拡散を促進するのに有利な加圧力範囲であり、例えば、0.3Kgf/mm〜0.8Kgf/mmであり、好ましくは0.4Kgf/mm〜0.6Kgf/mmである。この加圧力の所定範囲は第2段階のものと共通する部分があるので、第2段階及び第3段階にわたって引き続き同一の加圧力にすることも可能である。尚、第3段階での接合部分の温度は、凝固後の管材におけるホウ素の拡散を促進し且つ過度の膨出を防止するためには、1000℃〜1100℃程度が好ましい。
【0031】
第2段階及び第3段階での接合部分の温度制御は、温度センサ4から制御装置8に入力される信号に基づき、制御装置8から高周波電源2aへと出力される制御信号により行うことができる。
【0032】
第2段階から第3段階にかけて、加圧下での溶融及びこれに続く凝固後の均質化のための加熱加圧処理により、管材端部が縦方向即ち上下方向に収縮し、これに伴い横方向に膨出する。本実施形態では、接合部分の横方向膨出率が所定値に到達したことを検知して、接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させ、接合操作を完了する。
【0033】
ここで、横方向膨出率及び横方向膨出量につき説明する。図4は、横方向に膨出した既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’を示す側面図である。また、図5はその時の膨出センサ7による横方向膨出量の測定の様子を示す平面図である。
【0034】
図5に示されているように、4つの膨出センサ7が、直径Dの管材23,22の中心軸Oから互いに同一の距離にて周方向に関して均等に配置され、高周波加熱コイル2cの側壁に取り付けられている。膨出センサ7からは管材中心軸Oに向かって光などが照射され、既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’の外面で反射した光を検知することで、該管材外面の位置を検知することができる。従って、膨出前の既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’の外面位置を検知し、更に膨出後の既設管材下端部23E及び新規管材上端部22E’の外面位置までの距離を検知し、これらの差を算出することで、図4及び図5に示す膨出量h1,h2及び図5に示す膨出量h3,h4を得ることができる。膨出は管材中心軸Oの周りで均等に発生するとは限らないので、図5に示すように、互いに直交する2つの横方向のそれぞれについて両側の横方向膨出量を求める。これら各方向の横方向膨出率β1及びβ2は、
β1=(h1+h2)/D
β2=(h3+h4)/D
で定義され、これら2つの横方向膨出率の平均値β=(β1+β2)/2をもって、接合部分の横方向膨出率とする。この横方向膨出率は、制御装置8において、各膨出センサ7から入力される膨出量h1〜h4を示す信号に基づき算出することができる。
【0035】
既設管材23及び新規管材22の外径Dに対する肉厚tの比率(t/D)が3%〜20%の範囲内にある場合には、横方向膨出率の所定値を2%〜12%の範囲内に設定することができる。図6、図7及び図8は、それぞれ管材として外径Dに対する肉厚tの比率(t/D)が5%,10%及び15%の範囲内にあるものを用いた場合に得られた、横方向膨出率(所定値)βと接合部分の引張強さSとの関係を示すグラフである。これらの図から分かるように、横方向膨出率の所定値を2%〜12%の範囲内に設定することで、良好な引張強さが得られる。
【0036】
図9は、以上のような接合における、接合部分の加圧力、温度及び膨出率の変化の一例を示すグラフである。時刻0から時刻tまでは、加圧力が所定値Pであり、温度が常温から所定値Tへと上昇し、膨出率は0である。時刻tから時刻tまでは、加圧力が所定値Pであり、温度が所定値Tであり、膨出率は0から所定値βへと上昇する。膨出率は、時刻tから接合部分が凝固する時刻tまでは比較的大きな変化を示すが、時刻tから時刻tまでは比較的緩やかに変化する。時刻t以降は、制御装置8から付勢部10’x及び高周波電源2aに入力される制御信号に基づき、加圧力及び温度が次第に低下し、膨出率は所定値βのままである。加圧力及び温度野内の一方のみを低下させてもよく、この場合も膨出率を実質上所定値βのまま維持することができる。
【0037】
本実施形態においては、接合部分に対する現実の加熱加圧の状態を反映した膨出率に基づき適正な時点で加熱加圧処理を終了することが可能となり、かくして加圧力を検知することなしに強度が高い接合部分を効率的に形成することができる。
【0038】
次に、図3(d)に示されるように、新規管材22の下向き端面と既設管材21の上向き端面とを液相拡散接合により接合する。この接合も、上記同様にして行うことができる。但し、この場合には、既に既設管材23と新規管材22との接合が終了しているので、既設管材21の上端部21Eと新規管材22の下端部22Eとの間に常温において間隙が存在する。このため、この間隙を減少させる手段が必要である。上記クランプ装置10’を用い、付勢部10’xによる付勢力を十分に高めることで、その目的を達成することもできる。
【0039】
しかしながら、付勢部10’xによる付勢力を用いることなく、熱膨張により既設管材21の上端部21Eと新規管材22の下端部22Eとの間の間隙を減少させることもできる。以下、この手法を用いた接合の実施形態につき説明する。
【0040】
図10は液相拡散接合装置の一実施形態の構成の概略を示すブロック図であり、図11はこの装置の使用状態における接合ヘッド部分を示す模式図である。これらの図において、上記図1〜図9におけると同様の機能をもつ部分または部材には同一の符号が付されている。
【0041】
本実施形態では、接合ヘッド12に加圧力検知手段としての加圧力センサ6が設けられている。加圧力センサ6は、例えばロードセルからなり、図11に示されているように、第1及び第2の被接合部材21,22を保持する保持手段であるクランプ装置10に付設しておくことができる。加圧力センサ6としては、被接合管材21,22のうちの一方の接合端部近傍の外面に付された歪ゲージを用いてもよい。
【0042】
クランプ装置10は、一方の被接合管材21を所定位置にて把持する第1の把持部10aと、他方の被接合管材22を所定位置にて把持する第2の把持部10bと、これらの把持部同士を連結する連結部10cとを備えている。クランプ装置は、把持部の把持が例えば油圧駆動によりなされるものである。加圧力センサ6は、連結部10cと第2の把持部10bとの結合部分に介在しており、1対の被接合管材21,22の間に発生する管材長手方向(上下方向)の加圧力を検知することができる。
【0043】
制御装置8は、温度センサ4により検知される温度の信号及び加圧力センサ6により検知される加圧力の信号が入力され、これに基づき高周波加熱装置2に駆動信号を出力する。また、制御装置8は、膨出センサ7により検知される膨出量の信号が入力され、これに基づき高周波加熱装置2に駆動信号を出力する。
【0044】
以下、本実施形態の接合装置を用いた本発明による液相拡散接合方法の一実施形態を説明する。
【0045】
第1段階として、図11に示されるように、第1の被接合材としての既設管材21と第2の被接合材としての新規管材22とを、第1の接合端部である既設管材21の上端部21Eと第2の接合端部である新規管材22の下端部22Eとが常温において第1の距離gを維持するように、該第1の距離gより大きい第2の距離Lだけ隔てられた位置にてクランプ装置10で保持し、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとの間に接合材料としてのアモルファスシート25を配置する。アモルファスシート25の厚さは例えば25μm程度であり、第1の距離gは例えば0.5mm〜3mm程度である。また、第2の距離Lは、第1の距離gと関連づけて後述のようにして設定される。装置の小型化の点から及び後述の第1の距離gと第2の距離Lとの互いに関連付けられた設定の容易さの点から、第2の距離Lは、上記高周波加熱コイル2cの加熱範囲Lと同等にすることが好ましい。即ち、既設管材21と新規管材22との保持を高周波加熱コイル2cの加熱範囲Lと同等の距離だけ隔てた位置にて行うことが好ましい。尚、新規管材22の下端部22Eには予め温度センサ4を取り付けておく。
【0046】
次に、第2段階として、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとアモルファスシート25とを高周波加熱装置2により所定範囲(後述のTa)内の温度(所定温度)に加熱する。この温度の所定範囲は、アモルファスシート25の融点以上で且つ管材21,22の融点より低い範囲であり、例えば1200℃〜1300℃である。この加熱により、既設管材21と新規管材22とが膨張せしめられ、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとによりアモルファスシート25が挟持され、即ち既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとがアモルファスシート25を介して突き当てられる。また、この温度への加熱により、アモルファスシート25と、既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eとが溶融せしめられる。即ち、この加熱温度がアモルファスシート25の融点以上であることから、アモルファスシート25が溶融せしめられ、該アモルファスシート25中の融点降下元素であるホウ素が既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eへと拡散する。これにより、既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eの融点が降下して、この加熱温度で溶融せしめられるようになる。しかる後に、ホウ素は既設管材21及び新規管材22にて更に拡散し、溶融部分のホウ素濃度が低下する。また、これらと並行して、溶融したアモルファスシート25中のホウ素濃度も低下する。これにより、溶融状態にある既設管材上端部21E、新規管材下端部22E及びアモルファスシート25は、それらの融点が上昇することで、この加熱温度で凝固する。
【0047】
以上のようにして凝固した既設管材上端部21E、新規管材下端部22E及びアモルファスシート25からなる接合部分は、微細空孔が残留し、金属組織が十分に緻密化及び均質化していないことがあるので、第3段階で、その組織緻密化及び均質化を促進するために適正圧力印加の処理を行う。
【0048】
即ち、第3段階として、接合部分に印加される加圧力が所定範囲(後述のPb)内の圧力(所定加圧力)となるように、高周波加熱装置2による接合部分の加熱を制御する。この加圧力の所定範囲は、微細空孔を排除し且つ接合部分の組成を他の管材部分と均質化するために凝固後の管材におけるホウ素の拡散を促進するのに有利な加圧力範囲であり、例えば、0.3Kgf/mm〜0.8Kgf/mmであり、好ましくは0.4Kgf/mm〜0.6Kgf/mmである。
【0049】
上記第2の距離Lは、次のようにして設定される。即ち、常温をTとし、上記所定範囲Ta内の温度をTとし、既設管材21及び新規管材22の線膨張率をβとすると、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとの距離が、常温Tではgであり且つ所定範囲内温度Tでは零となることから、以下の関係式
β(T−T)(L−g)≧g
が成り立つ。従って、第2の距離Lは第1の距離gに応じて、
L≧[1+β(T−T)]g/[β(T−T)]
を満たすように設定される。
【0050】
尚、ここでは、第2の距離Lは常温Tと所定範囲内温度Tとで同一であると近似している。また、所定範囲内温度Tでは既設管材上端部21E及び新規管材下端部22E並びにアモルファスシート25が溶融することで、これらの部分の上下方向寸法がアモルファスシート25の厚さ程度減少するものと近似している。更に、線膨張係数βは温度範囲T〜Tにおいて一定であると近似している。また、クランプ装置10による保持位置間の管材の温度は一様であると近似している。
【0051】
上記のように、第2の距離Lが加熱範囲Lと同等である場合については、例えば、β=12×10−6/℃,g=1[mm],T=20[℃],T=1250[℃]とすれば、L=L≧68.8mmとなる。溶融による管材端部の収縮を見込んで、可能な最小値より若干大きめのL即ちLを設定する。尚、この収縮量は、管材の外径及び厚み等に応じて異なるが、たとえば0.2〜0.5mmである。
【0052】
一方、上記関係式に基づき、第1の距離gは第2の距離Lに応じて、
g≦β(T−T)L/[1+β(T−T)]
を満たすように設定される。
【0053】
上記のように、第2の距離Lが加熱範囲Lと同等である場合については、例えば、β=12×10−6/℃,L=L=50[mm],T=20[℃],T=1250[℃]とすれば、g≦0.73mmとなる。上記のような溶融による管材端部の収縮を見込んで、可能な最大値より若干小さめのgを設定する。
【0054】
以上のように、β(T−T)(L−g)≧gの関係式を満たし、且つ溶融による管材端部の収縮を見込んで、Lとgとの関係を適宜設定することで、本発明の液相拡散接合が可能になる。第2の距離Lが加熱範囲Lより大きい場合には、厳密には、上記関係式において、加熱範囲外であってクランプ装置10による管材保持位置の間にある管材部分の温度分布を考慮するのが好ましい。これらの温度分布の推定のために、上記温度センサ4,5とは別に、管材の適宜の位置に熱電対などの温度センサを配置することができる。温度分布は、管材の材質、外径及び厚み等に応じて異なるので、種々の条件で予めシミュレーションまたは実験などを行っておき、実測される各部分の温度に基づきクランプ装置10による保持位置間の管材の温度分布を推定する。そして、この推定された温度分布を考慮し、上記関係式を適宜補正して第2の距離Lと第1の距離gとの関係を適宜設定する。
【0055】
第1の距離gは使用される新規管材22の長さを変更することで変化させることができる。即ち、第2の距離Lが固定されている場合には、それに対応する適切な長さの管材を使用する。予め長さの少しずつ異なる管材を用意しておき、そのうちから適宜のものを選択使用することも可能である。一方、第2の距離Lは、クランプ装置10による管材保持位置を変更することで変化させることができる。即ち、第1の距離gが固定されている場合には、管材保持位置を変更する。第2の距離Lを加熱範囲Lと同等に設定する場合において、第2の距離Lを変化させる時には、伸縮などにより加熱範囲Lが可変の高周波加熱コイル2cを用いるのが好ましい。
【0056】
但し、第2段階における接合部分の溶融時に印加される加圧力が該接合部分の過大な変形を招くことがないようにすることから、第2の距離Lには上限がある。即ち、該第2の距離Lの上限は、第2段階において接合部分の溶融時に印加される加圧力が上限値例えば1Kgf/mmを超えることのないような範囲(後述のPa)に、設定される。
【0057】
図12は、以上のような接合における、特に第2段階及び第3段階における、接合部分の膨出率、温度及び加圧力の変化の一例を示すグラフである。
【0058】
時刻0において、既設管材上端部21E、新規管材下端部22E及びアモルファスシート25からなる接合部分(未だ接合が完了していない状態であっても、便宜上、接合部分という)の温度[単位は℃]は常温Tであり且つ加圧力[単位はKgf/mm]は0である。
【0059】
時刻0において、制御装置8から出力された駆動信号の高周波電源2への入力が開始される。これにより、高周波加熱コイル2cによる接合部分の加熱が開始され、接合部分の温度が上昇し、既設管材21及び新規管材22が熱膨張し、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとの間の距離は次第に小さくなる。時刻0から時刻tまでの時間は、例えば30秒程度である。
【0060】
やがて、時刻tにおいて、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとによるアモルファスシート25の挟持が開始される。この時点で、接合部分の温度は上記所定範囲Ta内にあり、以後、時刻tまでは、接合部の温度が上記所定範囲Ta内の温度T(例えば1250℃)を維持するように、高周波加熱装置2の駆動制御がなされる。尚、所定範囲Ta内の温度Tは、一定値ではなくある程度の幅をもった温度範囲(例えば1240〜1260℃)であってもよい。時刻t以降において、アモルファスシート25の溶融及びそれに続く既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eの溶融が生ずる。また時刻tの前後において、アモルファスシート25、既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eの凝固が生ずる。時刻tにおいて、接合部分に印加される加圧力の上昇が開始される。そして、時刻tより後の時刻t’において、接合部分に印加される加圧力が上記範囲Paの下限に到達する。この加圧力範囲Paは、溶融したアモルファスシート内のホウ素の既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eへの拡散に有利で且つ接合部分の過大な変形を抑制し得る範囲であり、その下限値は例えば0.3Kgf/mmであり、また上限値は上記の如く例えば1Kgf/mmである。時刻t’以降において、加圧力は更に上昇し、時刻tにおいて加圧力範囲Paの上限に到達する。時刻tから時刻tまでの時間は、例えば30秒〜60秒である。
【0061】
以上のように、時刻0から時刻tまでの第2段階では、温度センサ4により検知される接合部分の温度が所定範囲Ta内の温度Tとなるように、制御装置8による高周波加熱装置2の制御がなされる。
【0062】
次に、時刻tから時刻tまでは、加圧力センサ6により検知される接合部分の加圧力が上記所定範囲Pb内の圧力P(例えば0.5Kgf/mm)となるように、制御装置8による高周波加熱装置2の制御がなされる。即ち、時刻t以降時刻tまでは、接合部分の温度が低下するように高周波加熱装置2による加熱が制御され、これに伴い接合部分に印加される加圧力が低下する。尚、所定範囲Pb内の圧力Pは、一定値ではなくある程度の幅をもった圧力範囲(例えば0.45〜0.55Kgf/mm)であってもよい。そして、時刻tにおいて、接合部分に印加される加圧力が所定範囲Pbの上限に到達する。この加圧力所定範囲Pbにほぼ対応する温度範囲がTbである。時刻tまでには、アモルファスシート25、既設管材上端部21E及び新規管材下端部22Eの凝固が完了しており、それ以降は接合部分の組成の均質化がなされる。時刻tから時刻tまでの時間は、例えば80秒〜200秒である。
【0063】
この間、時刻0から時刻t1までは膨出率が0であり、時刻tから時刻tまでは膨出率が0から比較的大きく上昇し、時刻tから時刻tまでは膨出率が比較的緩やかに所定値βまで上昇する。
【0064】
時刻tにおいて膨出率が所定値βになったことを検知して制御装置8から高周波電源2aに制御信号が入力され、以後接合部分の温度が次第に低下せしめられ、これに基づき接合部分の加圧力が次第に低下し、膨出率は所定値βのまま維持される。
【0065】
以上の実施形態では、熱膨張により既設管材21の上端部21Eと新規管材22の下端部22Eとの間の間隙を減少させるのに、高周波加熱コイル2cのみによる接合部分の加熱が行われており、装置構成の小型化に有利である。しかし、本発明においては、高周波加熱コイル2cによる加熱に加えて、図11に示すような接合部分以外の管材に対する加熱手段1bによる加熱(例えば発熱抵抗体による加熱または高周波誘導加熱を用いたもの)を行うことも可能である。これによれば、第1の距離gが比較的大きい場合にも十分に対処することができる。
【0066】
本実施形態においても、接合部分に対する現実の加熱加圧の状態を反映した膨出率に基づき適正な時点で加熱加圧処理を終了することが可能となり、かくして加圧力を検知することなしに強度が高い接合部分を効率的に形成することができる。
【0067】
以上の実施形態では、第1及び第2の被接合材として鋼からなり且つ管状をなしているものが使用されているが、本発明においては、第1及び第2の被接合材は、鋼以外の金属からなるものであってもよいし、管状以外の例えば棒状をなしているものであってもよい。
【0068】
更に、以上の実施形態においては、アモルファスシート25を既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとの間に配置する際に、既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとは別体の独立したアモルファスシート25を既設管材上端部21Eと新規管材下端部22Eとの間に介在させているが、本発明においては、アモルファスシート25を既設管材上端部21Eの上端面または新規管材下端部22Eの下端面に予め接着剤などで接着しておいてもよい。また、接合材料として、既設管材上端部21Eの上端面及び/または新規管材下端部22Eの下端面に予め堆積形成したものを用いてもよい。これらの場合も、本発明でいうところの、第1及び第2の接合端部の間に接合材料を配置することに該当するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明による液相拡散接合装置の一実施形態の構成の概略を示すブロック図である。
【図2】本発明による液相拡散接合装置の一実施形態の使用状態における接合ヘッド部分を示す模式図である。
【図3】本発明による液相拡散接合装置を用いた本発明による液相拡散接合方法の一実施形態の説明図である。
【図4】横方向に膨出した接合端部を示す側面図である。
【図5】横方向に膨出した接合端部と膨出センサによる横方向膨出量の測定の様子とを示す平面図である。
【図6】横方向膨出率の所定値と接合部分の引張強さとの関係を示すグラフである。
【図7】横方向膨出率の所定値と接合部分の引張強さとの関係を示すグラフである。
【図8】横方向膨出率の所定値と接合部分の引張強さとの関係を示すグラフである。
【図9】本発明による液相拡散接合方法の一実施形態における接合部分の温度及び加圧力並びに膨出率の変化の一例を示すグラフである。
【図10】本発明による液相拡散接合装置の一実施形態の構成の概略を示すブロック図である。
【図11】本発明による液相拡散接合装置の一実施形態の使用状態における接合ヘッド部分を示す模式図である。
【図12】本発明による液相拡散接合方法の一実施形態における接合部分の温度及び加圧力並びに膨出率の変化の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1b 加熱手段
2 高周波加熱装置
2a 高周波電源
2b 整合トランス
2c 高周波加熱コイル
4 温度センサ
6 加圧力センサ
7 膨出センサ
8 制御装置
10,10’ クランプ装置
10a,10’a 第1の把持部
10b,10’b 第2の把持部
10c、10’c 連結部
10’x 付勢部
12 接合ヘッド
21,23 既設管材
21a,23a 既設管材端面
22 新規管材
21E 既設管材上端部
22E 新規管材下端部
22E’ 新規管材上端部
23E 既設管材下端部
25 アモルファスシート
30 管材
31 管材損傷部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の被接合材の第1の接合端部と第2の被接合材の第2の接合端部とを接合する方法であって、
前記第1の被接合材と前記第2の被接合材とを前記第1の接合端部と前記第2の接合端部とが隔てられて対向するように保持し、前記第1の接合端部と前記第2の接合端部との間に接合材料を配置し、
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部により前記接合材料を挟持させ、更に、該接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部を加圧下にて加熱することで溶融させ、しかる後に凝固させて接合部分を形成し、
前記接合部分の横方向の膨出率が所定値に到達したことを検知して、前記接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させることを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記横方向の膨出率の所定値は2%〜12%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材は管状をなしていることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材は外径に対する肉厚の比率が3%〜20%の範囲内にあることを特徴とする、請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の溶融のための加熱の温度は、前記接合材料の融点以上で且つ前記第1の被接合材及び前記第2の被接合材の融点より低いことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の加圧下での加熱は、前記第1の接合端部と前記第2の接合端部と前記接合材料とを加熱装置により加熱することでなされることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持は、これら第1及び第2の被接合材の延在方向に関する前記加熱装置による加熱範囲と同等の距離だけ隔てた位置にてなされることを特徴とする、請求項6に記載の接合方法。
【請求項8】
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の加圧は、前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持を付勢力をもって行うことでなされることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記接合材料、前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部の溶融のための加熱の温度及び加圧の圧力は、それぞれ1200℃〜1300℃の範囲内及び0.3Kgf/mm〜1Kgf/mmの範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
第1の被接合材の第1の接合端部と第2の被接合材の第2の接合端部とを接合する装置であって、
前記第1の被接合材と前記第2の被接合材とを保持する保持手段と、
前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部並びにこれらの間に配置される接合材料を含んでなる接合部分を加熱する加熱装置と、
前記接合部分に加圧力を印加する加圧手段と、
前記接合部分の接合に伴う横方向の膨出量を検知する膨出検知手段と、
前記膨出検知手段により検知される横方向の膨出量の信号が入力され、前記加熱装置及び/または前記加圧手段に駆動信号を出力する制御装置と、
を含んで構成され、
前記制御装置は、前記膨出検知手段から入力される信号に基づき横方向の膨出率を算出し、該膨出率が所定値に到達した時に、前記接合部分の温度及び加圧力のうちの少なくとも一方を低下させるよう前記加熱装置及び/または前記加圧手段へ駆動信号を出力するものであることを特徴とする接合装置。
【請求項11】
前記加熱装置は高周波加熱装置であることを特徴とする、請求項10に記載の接合装置。
【請求項12】
前記加圧手段は、前記保持手段に付設され前記第1の被接合材と前記第2の被接合材との保持を付勢力をもって行わせるものからなることを特徴とする、請求項10〜11のいずれかに記載の接合装置。
【請求項13】
前記加圧手段は、前記加熱装置による加熱に基づき前記第1の接合端部及び前記第2の接合端部が膨張することで前記加圧力を発生させるものであることを特徴とする、請求項10〜11のいずれかに記載の接合装置。
【請求項14】
更に前記接合部分の温度を検知する温度検知手段を含み、前記制御装置は、前記温度検知手段により検知される温度の信号が入力され、該温度の信号に基づき前記駆動信号を作成することを特徴とする、請求項13に記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−98402(P2007−98402A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−287461(P2005−287461)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】