説明

混練度調整装置

【課題】スロットバーの軸部と軸受との間に設けたパッキン部材をパッキン押えで押圧して隙間をなくし、大気の吸い込みによる製品の酸化を防止した混練度調整装置を提供する。
【解決手段】混練度調整装置であって、シリンダ1内の各スクリュの軸方向と直交する方向に設けた一対のスロットバー4の軸部5をシリンダ1に設けた軸受2cで軸支し、各軸受2a〜2dと軸部5間に設けたパッキン部材30をパッキン押え41で押圧し、ねじ体42によってパッキン押え41の押圧状態を調節する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混練度調整装置に関し、特に、スロットバーの軸部と軸受との間に設けたパッキン部材をパッキン押えで押圧することにより、スロットバーと軸受との間のレール隙間をなくし、大気の吸い込みによる製品の酸化を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成装置により生産された合成樹脂原料は、合成樹脂としての特性の均質化及び改質、あるいは添加材料を加えての機能特性付与のために、多くの場合、スクリュ式二軸混練機により加工処理されている。このスクリュ式混練機は、長尺筒形状のシリンダと、このシリンダ内に回転自在に挿入された2本のスクリュとにより構成されている。前記スクリュ式二軸混練機は、上流から下流へ向けて順次、少なくとも輸送部、混練部、ゲート部及び吐出部を有している。
【0003】
このように構成されるスクリュ式二軸混練機においては、温度調節装置によりシリンダが所定の温度状態に加熱維持されると共に、駆動装置により各スクリュが回転駆動された状態で、上流側から原料が供給され、回転するスクリュにより溶融混練され、下流側の排出口から外部へ排出される。
【0004】
前述のように加工処理される合成樹脂原料の加工の良否は、周知のように混練の度合いにより大きく影響され、混練部における充満度を調整するために、混練部の下流側にゲート部が設けられている。すなわち、シリンダ内面とスクリュ表面との間隙で構成される原料が通過する際の流路断面積を変化させ、流動抵抗を変化させることにより、ゲート部上流側の混練部に生じる充満度の長さを調整可能に構成されている。
【0005】
このゲート部における流路断面積を変化させるための装置すなわち混練度調整装置として、本出願人は、従来のゲートバルブ式に代わるゲート棒式の混練度調整装置を発明し、特許文献1及び2で示されるように、提案している。すなわち、ゲート棒式の混練度調整装置は、スクリュが円柱形状に構成されているスクリュ式二軸混練機のゲート部において、スクリュ軸の上側及び下側を水平直角方向に横断する2本の案内孔をシリンダに形成し、各案内孔に円弧状の一対の凹部を有する円柱形状のゲート棒を回転自在に挿入し、所定回転範囲において環状の間隙を生じ、この間隙の面積が可変となるように構成されている。
【0006】
この間隙を可変とすることによって通過する原料の流動抵抗が変化し、その結果、混練部における充満度が変化し、原料の混練度を変化させることができる。
【0007】
前述の特許文献2の構成は、図3の要部の部分構成に示されるように、シリンダ1の第1案内孔2内には、第3軸受2cを介して第1スロットバー4の軸部5が回転自在に軸支されている。
前記軸部5の外周と第3軸部2cの内周との間の軸受部分Aは、互いにかじりが発生しない状態のクリアランス6が形成され、この軸受部分Aの外側に形成されたシール部Bにはシール隙間7が設けられている。
【0008】
前記第3軸受2c内には水冷ジャケット8が設けられ、この水冷ジャケット8に外部からの冷却水が供給されることにより、前記シール部B内に漏れ出て来る溶融樹脂を固化させ、外部からの空気がシール部B及び軸受部分Aを介してシリンダ1内の溶融樹脂に入り込み、溶融樹脂を酸化させることのないように構成されている。
【0009】
【特許文献1】特開2000−309018号公報
【特許文献2】特開2003−33961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の混練度調整装置における軸受構造は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、シール部はスロットバーとのシール隙間を設けることにより連続生産運転において溶融した樹脂がこのシール隙間へ入り込み充満した後、水冷ジャケットの水により溶融樹脂が固化することで隙間を無くして大気の吸い込みを防止して製品が酸化するのを防止する構成であるが、実際は運転立上げ時に軸受部分からシール部に溶融樹脂が充満しないことが有り、この為にシール部のスロットバーとのシール隙間を無くすことができない場合が有り、大気の吸い込みが発生することがあった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による混練度調整装置は、横方向に平行配置される一対のスクリュを回転自在に貫通させるためのスクリュ孔及び前記スクリュ孔の軸方向に直交して前記各スクリュの上側及び下側に設けられた第1、第2案内孔を有するシリンダと、前記各案内孔に互いに逆回転自在に挿入された第1、第2スロットバーと、前記各スロットバーに形成され前記各スクリュに対応する円弧状の第1、第2凹部と、を備え、前記各スロットバーが互いに逆方向へ回転することにより、前記各凹部によって前記各スクリュとの間に形成される間隙を可変とするようにした混練度調整装置において、前記シリンダに設けられ前記各スロットバーの各軸部を回転自在に軸支するための輪状の第1、第2、第3、第4軸受と、前記各軸部と前記各軸受との間に設けられたパッキン部材及びパッキン押えと、前記パッキン押えに設けられ前記各軸受に螺入するねじ体とを備え、前記ねじ体のねじ締めにより前記パッキン押えを介して前記パッキン部材を押える構成であり、また、前記パッキン部材及びパッキン押えは、輪状をなすと共に前記各軸受に形成された輪状凹部内に配設されている構成であり、また、前記パッキン部材は、白色で形成されている構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による混練度調整装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、各スロットバーの軸部を軸支する各軸受の内側に設けたパッキン部材をパッキン押えで押えているため、パッキン部材をねじ体を介して必要に応じて増し締め可能な構造になっており、増し締めするとパッキン押えがパッキン部材を押しスロットバーと軸受との隙間が無くなり連続生産運転において大気の吸い込みを防止し、製品が酸化して製品ペレットに悪影響をもたらすことを防止することが可能となる。このパッキン部材は白色を採用しているため製品の物性に影響が出ない。また、シリンダ温度より高い耐熱性を持ったパッキン部材を使用しているため、生産運転中に微量な溶融樹脂の漏れや大気の吸い込みが発生しても増し締めすることにより防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、スロットバーの軸部と軸受との間に設けたパッキン部材をパッキン押えで押圧することにより、スロットバーと軸受との間のシール隙間をなくし、大気の吸い込みによる製品の酸化を防止するようにした混練度調整装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による混練度調整装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものはシリンダであり、このシリンダ1のスクリュ孔1a内には一対の第1、第2スクリュ10,11が回転自在に貫通して設けられている。
【0015】
前記シリンダ1内のスクリュ孔1aに連通すると共に、前記各スクリュ10,11の軸方向に直交して形成された第1、第2案内孔2,2A内には前記各スクリュ10,11の上側及び下側で、第1、第2スクリュ10,11に対応して形成された第1凹部12及び第2凹部13を有する第1スロットバー4及び第2スロットバー4Aが互いに逆方向に回転自在で、かつ、各スクリュ10,11と直交して設けられている。
【0016】
前記各スロットバー4,4Aが互いに逆方向へ回転することにより、前記各スクリュ10,11に対応して形成された各凹部12,13によりその上側及び下側へ形成された間隙14,15は、その大きさが可変となるように構成されている。
【0017】
前記各スロットバー4,4Aの両端に形成された細径状の各軸部5は、前記シリンダ1にボルト1Bにより固定して設けられた第1、第2、第3、第4軸受2a,2b,2c,2dを介して回転自在に設けられている。
前記各スロットバー4,4Aは、前記シリンダ1の外部の両側に取付けられた周知のスロットバー駆動手段20により、互いに逆方向へ回転するように構成されている。
尚、前記各スロットバー駆動手段20は、例えば、前述の従来例の特許文献2で示した特開2003−33961号公報で開示されているように、送りねじ体と歯車の組合せ、又は、サーボモータによる直接駆動等も可能である。
【0018】
前記各軸部5と各軸受2a〜2dとの間には、図2で示されているように、クリアランス6を有する軸受部分Aの隣のシール部Bに輪状の耐熱性弾性部材からなるパッキン部材30が設けられている。
前記パッキン部材30は、前記各軸受2a〜2dに形成された輪状凹部31内に配設され、前記パッキン部材30は製品の物性に影響が出ないように白色で形成されている。
【0019】
前記輪状凹部31内に設けられた三重状の前記パッキン部材30は、前記輪状凹部31内に設けられ全体形状が筒状でかつ円板状の鍔部40を一体に有するパッキン押え41により内方へ押圧付勢されている。
【0020】
前記パッキン押え41の内周41aと前記軸部5の外周5aとの間には、シール隙間7が形成され、前記パッキン部材30とパッキン押え41とシール隙間7によって前記第3軸受2cと軸部5に対するシール部Bが形成されている。さらに、前記鍔部40に設けられたねじ体42は第3軸受2cの端部2cAに螺入され、このねじ体42の螺入状態によりパッキン部材30に対する押圧付勢が調整できる。
尚、図2では、前記第3軸受2cの場合について述べたが、他の各軸受2a、第2軸受2b、第4軸受2dにおいても図1の図示のように図2と同様の構成であり、説明は省略する。
【0021】
従って、前述の構成において、前記シリンダ1が加熱され、図示しない上流部から樹脂原料がシリンダ1内に供給され、各スクリュ10,11によって溶融混練された後に下流側へ搬送されると、予め、各スロットバー4,4Aの回動位置が設定され、予め設定された間隙14,15で混練調整されて下流部の図示しないダイ側へ搬送される。
【0022】
前述の状態において、前記各軸受2a〜2cの状況により、各ねじ体42を締めることにより、パッキン部材30はパッキン押え41により押圧され、各軸受2a〜2dと各軸部5間は完全にシールされ、溶融樹脂の漏れを完全に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による混練度調整装置を示す断面構成図である。
【図2】図1の第3軸受を示す拡大断面図である。
【図3】従来の軸受構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 シリンダ
1a スクリュ孔
2 第1案内孔
2A 第2案内孔
2a〜2d 第1〜第4軸受
4,4A 第1、第2スロットバー
5 軸部
6 クリアランス
A 軸受部分
B シール部
10,11 第1、第2スクリュ
12,13 第1、第2凹部
14,15 間隙
20 スロットバー駆動手段
30 パッキン部材
31 輪状凹部
40 鍔部
41 パッキン押え
42 ねじ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に平行配置される一対のスクリュ(10,11)を回転自在に貫通させるためのスクリュ孔(1a)及び前記スクリュ孔(1a)の軸方向に直交して前記各スクリュ(10,11)の上側及び下側に設けられた第1、第2案内孔(2,2A)を有するシリンダ(1)と、前記各案内孔(2,2A)に互いに逆回転自在に挿入された第1、第2スロットバー(4,4A)と、前記各スロットバー(4,4A)に形成され前記各スクリュ(10,11)に対応する円弧状の第1、第2凹部(12,13)と、を備え、
前記各スロットバー(4,4A)が互いに逆方向へ回転することにより、前記各凹部(12,13)によって前記各スクリュ(10,11)との間に形成される間隙(14,15)を可変とするようにした混練度調整装置において、
前記シリンダ(1)に設けられ前記各スロットバー(4,4A)の各軸部(5)を回転自在に軸支するための輪状の第1、第2、第3、第4軸受(2a〜2d)と、前記各軸部(5)と前記各軸受(2a〜2d)との間に設けられたパッキン部材(30)及びパッキン押え(41)と、前記パッキン押え(41)に設けられ前記各軸受(2a〜2d)に螺入するねじ体(42)とを備え、
前記ねじ体(42)のねじ締めにより前記パッキン押え(41)を介して前記パッキン部材(30)を押える構成としたことを特徴とする混練度調整装置。
【請求項2】
前記パッキン部材(30)及びパッキン押え(41)は、輪状をなすと共に前記各軸受(2a〜2d)に形成された輪状凹部(31)内に配設されていることを特徴とする請求項1記載の混練度調整装置。
【請求項3】
前記パッキン部材(30)は、白色よりなることを特徴とする請求項1又は2記載の混練度調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−184230(P2009−184230A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26682(P2008−26682)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】