説明

混練押出装置

【課題】複数種類の材料を混練する混練押出装置において、混練材料の定量押出および混練性の安定化を両立する。
【解決手段】混練押出装置が、第1原料と液状の第2原料との混練材料がその内部より押し出される押出口とを有するバレルと、バレル内部に配置され、第1原料と第2原料とを混練して溶融状態の混練材料を形成するスクリューシャフトと、スクリューシャフトを一定の速度にて連続的に回転駆動させるスクリュー駆動装置と、バレルの押出口と連通され、バレルの押出口より押し出された加圧状態の混練材料が装置外部へ押し出される押出口を有するダイ部と、バレルの押出口とダイ部の押出口との間において、バレルの押出口より押し出される混練材料の一部を排出する排出装置とを備え、排出装置は、バレルの押出口における混練材料の圧力を一定に保つように、混練材料の排出量を調整する排出量調整手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリューシャフトの回転により、複数種類の材料を混練して溶融状態の混練材料を形成し、形成された混練材料を押し出す混練押出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数種類の原料を混練して混練材料を形成するとともに押し出す混練押出装置として、例えば、図5に示すような混練押出装置501が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に示すように、従来の混練押出装置501は、例えば、単軸あるいは2軸構成のスクリューシャフト511と、スクリューシャフトが回転駆動可能にその内部空間に配置されたバレル512と、バレル512とスクリューシャフト511との間の空間に原料を供給する原料フィーダ513と、バレル512における混練材料の出口であるバレル押出口514と連通されて、バレル512より供給される混練材料を装置外部に押し出すダイ部押出口515を有するダイ部516と、バレル512とダイ部516との間に設置され、バレル押出口514より供給される混練材料を昇圧してダイ部516へ供給する昇圧ポンプ517とを備えている。
【0004】
バレル512に設けられた原料供給口522にはホッパ518が接続されており、原料フィーダ513より供給される原料が、ホッパ518を通して、バレル512内に供給される。さらに、原料フィーダ513は、回転数制御可能な駆動モータ513aを備えており、駆動モータ513aの回転数を制御することにより、所望量の原料が原料フィーダ513からホッパ518を通してバレル512内に供給される。
【0005】
バレル512内に配置されたスクリューシャフト511(単軸あるいは2軸)は、スクリュー駆動装置519に接続されている。スクリュー駆動装置519は、回転数制御可能な駆動モータ519aを備えており、駆動モータ519aの回転数を制御することにより、所望の回転数にてスクリューシャフト511が回転駆動される。
【0006】
昇圧ポンプ517としては、例えばギアポンプが用いられ、一定の速度にてギアポンプが駆動されることにより、混練材料を昇圧しながらダイ部516に定量供給することができる。なお、昇圧ポンプ517とダイ部516との間には、メッシュ状のフィルタ520が設けられており、ダイ部516内への異物等の混入が抑制されている。
【0007】
このような構成を有する従来の混練押出装置501では、バレル押出口514における混練材料の圧力を圧力検出部521にて検出し、検出された混練材料の圧力に基づいて、原料フィーダ513の駆動モータ513aの回転数と、スクリュー駆動装置519の駆動モータ519aの回転数とが制御され、バレル押出口514における混練材料の圧力を一定に保つ制御が行われている。このような制御は、一般的にフィードバック制御方式と呼ばれている。
【0008】
具体的には、バレル押出口514にて、圧力検出部521にて、設定圧力よりも高い圧力が検出された場合には、原料フィーダ513の駆動モータ513aの回転数を低減させて、原料フィーダ513からバレル512内に供給される原料の量を減少させる。それとともに、スクリュー駆動装置519の駆動モータ519aの回転数を低減させて、バレル512のバレル押出口514から押し出される混練材料の量を減少させる。これにより、バレル押出口514における混練材料の圧力を低減させることができる。
【0009】
一方、バレル押出口514にて、圧力検出部521にて、設定圧力よりも低い圧力が検出された場合には、原料フィーダ513からバレル512内に供給される原料の量を増加させるとともに、スクリュー駆動装置519の回転駆動量を増加させて、バレル押出口514から押し出される混練材料の量を増加させる。これにより、バレル押出口514における混練材料の圧力を増加させることができる。
【0010】
このように従来の混練押出装置501では、バレル押出口514における混練材料の圧力を一定に保つようなフィードバック制御を行うことで、バレル押出口514から昇圧ポンプ517を通してダイ部516に供給される混練材料の量を一定に保つことができる。
【0011】
このような従来の混練押出装置501では、例えば、スクリューシャフト511が単軸構成の場合には、コンパウンド済みのペレットを原料として混練材料を押し出して、チューブやフィルムなどに成形する2次加工の用途として用いられている。近年、スクリューシャフト511を2軸構成として用い、チューブやフィルムなどを直接成形する用途として用いられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特公平6−55415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図5に示す従来の混練押出装置501では、バレル押出口514での混練材料の圧力を一定に保つように、原料フィーダ513からの原料の供給量を可変制御するとともに、スクリューシャフト511の駆動回転数を可変制御してバレル512内での混練材料の押出量(搬送量)を可変制御するような制御方式が採用されている。
【0014】
スクリューシャフト511の駆動回転数が変化すると、混練材料に対する剪断速度が変化し、混練材料の混練性に影響が生じる。また、バレル512内での混練材料の滞留時間が変化することになり、混練材料に対する熱履歴が変化し、混練材料の混練性に影響が生じる。さらに、2種類以上の原料を混合するような場合にあっては、原料の供給量が変化すると混練材料の混合比率に影響が生じ、特にスクリューシャフトが多軸構成になる程、この影響が顕著となる。
【0015】
また、バレル512内に供給された原料が、混練材料としてバレル押出口514から押し出されるまでにはタイムラグ(例えば数十秒程度の時間差)が存在するため、バレル押出口514での混練材料の圧力に基づいて原料フィーダ513による原料の供給量を制御するような方式では、瞬時変化する圧力に追随させることは困難である。また、複数種類の原料を異なる供給位置にてバレル512内に供給するような場合には、圧力変化に追随させることはさらに難しくなる。また、原料供給量の変動に加えて、さらにスクリューシャフト511の駆動回転数を可変させれば、混練条件で重要なスクリュー剪断速度を変えることになり、混練材料の物性の変化を避けることはできない。
【0016】
したがって、このような従来の混練押出装置501では、ダイ部516から押し出される押出材料の物性が安定せず、供給される原料の組み合わせや最終製品の形態などによっては、成形状態が安定せず、製品の品質に影響が生じるおそれがある。特に、押出量が比較的少ない小型の混練押出装置を用いて成形を行うような場合には、このような影響がより顕著に生じるおそれがある。また、混練押出装置から押し出された押出材料を用いて直接成形を行って、フィルムやチューブなどを成形するような場合にあっては、押出材料の混練性が直接的に成形体の条件に影響するため、成形体の状態が不安定となる。さらに、比重の異なる2種類以上の原料を混合する場合には、さらに混練性を安定させることが困難となる。
【0017】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、スクリューシャフトの回転により、複数種類の材料を混練して溶融状態の混練材料を形成するとともに、形成された混練材料を押し出す混練押出装置において、混練材料の定量押出および混練性の安定化を両立して実現できる混練押出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0019】
本発明の第1態様によれば、第1原料と液状の第2原料とが供給される原料供給口と、第1原料と第2原料とが混練されて溶融状態とされた混練材料がその内部より押し出される押出口とを有するバレルと、バレル内部に配置され、第1原料と第2原料とを混練して溶融状態の混練材料を形成するスクリューシャフトと、スクリューシャフトを一定の速度にて連続的に回転駆動させるスクリュー駆動装置と、バレルの押出口と連通され、バレルの押出口より押し出された加圧状態の混練材料が装置外部へ押し出される押出口を有するダイ部と、バレルの押出口とダイ部の押出口との間において、バレルの押出口より押し出される混練材料の一部を排出する排出装置と、バレルの押出口における混練材料の圧力を一定に保つように、排出装置による混練材料の排出量を調整する排出量調整手段とを備える、混練押出装置を提供する。
【0020】
本発明の第2態様によれば、バレルの押出口とダイ部との間に、混練材料を昇圧する昇圧ポンプが備えられ、昇圧ポンプは一定の速度にて連続的に駆動される、第1態様に記載の混練押出装置を提供する。
【0021】
本発明の第3態様によれば、バレルの押出口と連通されたダイ部が複数台、並列して備えられ、それぞれのダイ部に個別に対応するように複数の昇圧ポンプが備えられている、第2態様に記載の混練押出装置を提供する。
【0022】
本発明の第4態様によれば、昇圧ポンプとバレルの押出口との間より、混練材料の一部が排出されるように、排出装置が設置されている、第2態様または第3態様に記載の混練押出装置を提供する。
【0023】
本発明の第5態様によれば、排出装置はギアポンプであり、排出量調整手段はギアポンプの回転駆動量の可変手段である、第1態様〜第4態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0024】
本発明の第6態様によれば、排出装置は制御弁であり、排出量調整手段は制御弁の開度調節手段である、第1態様〜第4態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0025】
本発明の第7態様によれば、排出装置は回転駆動されることで混練材料の一部を排出するスクリューを有し、排出量調整手段はスクリューの回転駆動量の可変手段である、第1態様〜第4態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0026】
本発明の第8態様によれば、ダイ部の押出口の圧力を一定に保つように、ダイ部内に供給される混練材料の一部を排出する排出装置が備えられている、第1態様〜第7態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0027】
本発明の第9態様によれば、バレル内部に複数のスクリューシャフトが配置され、スクリュー駆動装置によりそれぞれのスクリューシャフトが一定の速度にて連続的に回転駆動される、第1態様〜第8態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0028】
本発明の第10態様によれば、バレルにおいて、第1原料が供給される第1原料供給口と、液状の第2原料が供給される第2原料供給口とが、互いに異なる位置に設置されている、第1態様〜第9態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0029】
本発明の第11態様によれば、ダイ部は、押出口より混練材料を押し出して直接押出成形を行う、第1態様〜第10態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【0030】
本発明の第12態様によれば、原料供給口を通してバレル内部に第1原料および第2原料を一定の量かつ比率にて連続的に供給する原料供給装置が備えられている、第1態様〜第11態様のいずれか1つに記載の混練押出装置を提供する。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数種類の原料を混練する混練押出装置において、バレルの押出口とダイ部の押出口との間において、バレルの押出口より押し出される混練材料の一部を排出する排出装置が備えられ、排出装置が、バレルの押出口における混練材料の圧力を一定に保つように、混練材料の排出量を調整する排出量調整手段を備えた構成が採用されている。そのため、原料の供給量およびスクリューシャフトの回転駆動量を一定に保ちながら、混練材料の定量供給を行うことができる。よって、混練材料の定量押出および混練性の安定化を両立して実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる混練押出装置の模式図
【図2】本発明の第2実施形態にかかる混練押出装置の模式図
【図3】本発明の第3実施形態にかかる混練押出装置の模式図
【図4】本発明の第4実施形態にかかる混練押出装置の模式図
【図5】従来の混練押出装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0034】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる混練押出装置1の主要な構成を示す模式図を図1に示す。図1に示すように、混練押出装置1は、例えば単軸構成のスクリューシャフト11と、スクリューシャフト11が回転駆動可能にその内部空間に配置されたバレル12と、バレル12とスクリューシャフト11との間の空間に原料を供給する原料供給装置と、バレル12における混練材料の出口であるバレル押出口14と連通されて、バレル12より供給される混練材料を装置外部に押し出すダイ部16と、バレル12とダイ部16との間に設置され、バレル押出口14より押し出される混練材料を昇圧してダイ部16へ供給する昇圧ポンプ17とを備えている。
【0035】
バレル12には、第1原料が供給される第1原料供給口22と、第2原料が供給される第2原料供給口23とが設けられている。第1原料と第2原料とは互いに異なる種類の原料であり、例えば、第1原料は固体状(あるいは粉体状)の原料であり、第2原料は液体状の原料である。
【0036】
原料供給装置としては、固体状の第1原料を供給する第1原料フィーダ24と、液体状の第2原料を供給する第2原料フィーダ25とが備えられている。バレル12の第1原料供給口22にはホッパ18が接続されており、第1原料フィーダ24からホッパ18を通してバレル12内に第1原料が供給される。第2原料フィーダ25はバレル12の第2原料供給口23に接続されており、第2原料フィーダ25から第2原料供給口23を通してバレル12内に第2原料が供給される。なお、第1原料フィーダ24および第2原料フィーダ25には、それぞれ駆動モータ24a、25aが備えられており、それぞれの駆動モータ24a、25aが一定の回転数にて駆動されることにより、第1原料フィーダ24および第2原料フィーダ25からバレル12内に一定の供給量および混合比率にて第1原料および第2原料が供給される。
【0037】
スクリューシャフト11は回転駆動されることで、バレル12内に供給された第1原料および第2原料を混練して溶融状態の混練材料を形成する機能を有しており、様々な条数のスクリューを適用することができる。また、スクリューシャフト11は、スクリュー駆動装置19に接続されている。スクリュー駆動装置19は駆動モータ19aを備えており、駆動モータ19aが一定の回転数にて駆動されることにより、スクリューシャフト11が一定の速度にて回転駆動される。
【0038】
昇圧ポンプ17としては、例えば定量供給性および昇圧機能に優れたギアポンプが用いられ、一定の速度にてギアポンプが駆動されることにより、混練材料を昇圧しながらダイ部16に定量供給することができる。なお、昇圧ポンプ17とダイ部16との間には、例えばメッシュ状のフィルタ20が設けられており、ダイ部16内への異物等の混入が抑制される。
【0039】
ダイ部16内には昇圧ポンプ17より昇圧された混練材料が供給され、供給された混練材料はダイ部16の先端にて所定の形状に形成されたダイ部押出口15より、混練押出装置1の外部に押し出される。ダイ部16より押し出された混練材料を用いて、金型内に注入して射出成形を行う、あるいは直接的に押出成形を行う直接押出成形を行うことができる。
【0040】
バレル押出口14と昇圧ポンプ17との間における管路には、管路を通して混練材料の一部を排出する排出ポンプ26が備えられており、この排出ポンプ26は、回転数を可変制御可能な駆動モータ26aを備えている。また、バレル押出口14には、押し出される混練材料の圧力を検出する圧力検出部27が設けられている。圧力検出部27にて検出された混練材料の圧力が一定に保たれるように、排出ポンプ26の駆動モータ26aの回転数の制御が行われ、バレル押出口14から昇圧ポンプ17に供給される混練材料の一部が排出ポンプ26により排出されるとともに、その排出量の制御を行うことが可能となっている。
【0041】
また、混練押出装置1には、このように圧力検出部27にて検出された混練材料の圧力を、予め設定された設定圧力範囲と比較して、排出ポンプ26の駆動モータ26aの回転数の制御を行う制御装置9が備えられている。具体的には、制御装置9は、圧力検出部27にて検出された混練材料の圧力が、設定圧力範囲よりも高い場合には、駆動モータ26aの回転数を増大させて、排出ポンプ26による混練材料の一部排出量を増加させる制御を行う。また、圧力検出部27にて検出された混練材料の圧力が、設定圧力範囲よりも低い場合には、駆動モータ26aの回転数を減少させて、排出ポンプ26による混練材料の一部排出量を減少させる制御を行う。なお、駆動モータ26aの回転数を低減させることにより、排出ポンプ26の運転を停止させるような場合であっても良い。本第1実施形態では、このような排出ポンプ26が排出装置の一例となっており、圧力検出部27、駆動モータ26aおよび制御装置9が混練材料の排出量を調節する排出量調節手段の一例となっている。なお、排出ポンプ26としては、回転数と排出量との相関性が比較的高い種類のポンプを適用することが望ましく、例えば、本第1実施形態ではギアポンプが採用されている。
【0042】
次に、このような構成を有する本第1実施形態の混練押出装置1において、固体状の第1原料および液体状の第2原料を混練して溶融状態の混練材料を押し出す動作について、図1を用いて説明する。
【0043】
まず、第1原料フィーダ24からホッパ18および第1原料供給口22を通して、固体状の第1原料がバレル12内に供給される。同様に、第2原料フィーダ25から第2原料供給口23を通して、液体状の第2原料がバレル12内に供給される。この原料供給は、それぞれの駆動モータ24a、25aが、一定の回転数にて連続的に駆動された状態で行われるため、第1原料および第2原料は、一定の供給量および一定の混合比率にてバレル12内に連続的に供給される。なお、図1では、第1原料供給口22と第2原料供給口23とを異なる位置に設置した場合を例として示しているが、同じ位置に設置しても良い。
【0044】
スクリュー駆動装置19では、駆動モータ19aが一定の回転数にて回転駆動され、バレル12の内部にて、スクリューシャフト11が一定の回転数にて連続的駆動される。スクリューシャフト11には、図示しないスクリューが設けられており、バレル12の内面とスクリューとの間で、供給された第1原料および第2原料に対して、剪断作用が行われて、両原料の混練が行われる。それとともに、バレル12では、図示しない加熱装置により原料の加熱が行われる。その結果、第1原料と第2原料とが、一定の混合比率にて混合されるとともに、溶融状態とされた混練材料が形成される。形成された混練材料は、スクリューシャフト11の回転によりバレル内周面に沿ってバレル12の先端側へと搬送され、バレル押出口14を通して、一定量の混練材料が連続的に押し出される。
【0045】
バレル押出口14より押し出された混練材料は昇圧ポンプ17に供給され、昇圧ポンプ17にて所定の圧力に昇圧された混練材料が、フィルタ20を通してダイ部16に定量かつ連続的に供給される。
【0046】
一方、バレル押出口14より押し出される混練材料の圧力が圧力検出部27にて検出されており、検出された圧力値が制御装置9に入力される。制御装置9では、混練材料の設定圧力範囲が予め設定されており、検出された圧力が設定圧力範囲を超過しているかどうかの判断が行われる。
【0047】
検出された圧力が設定圧力範囲よりも低い場合には、制御装置9は、駆動モータ26aの回転数を減少させて、排出ポンプ26による混練材料の排出量を低減させる。逆に、検出された圧力が設定圧力範囲よりも高い場合には、制御装置9は、駆動モータ26aの回転数を増加させて、排出ポンプ26による混練材料の排出量を増加させる。このように制御することにより、バレル押出口14における混練材料の圧力が設定圧力範囲内に保たれ、一定量の混練材料が連続的に昇圧ポンプ17に供給される。なお、本第1実施形態の構成では、排出ポンプ26にて排出された混練材料は、混練押出装置1に戻されることなく、例えば廃棄される。
【0048】
昇圧ポンプ17では、一定の圧力および量にて連続的に供給される混練材料をさらに昇圧して、フィルタ20を通して、連続的にダイ部16へと定量供給する。ダイ部16では、供給された混練材料はダイ部押出口15を通して、混練押出装置1の外部へと押し出される。押し出された混練材料(押出材料)を用いて、成形が行われることにより、成形品が製造される。
【0049】
本第1実施形態の混練押出装置1によれば、スクリューシャフト11が連続的に一定の速度にて回転駆動され、第1および第2原料フィーダ24、25により第1および第2原料が、一定の供給量および混合比率にて連続的に供給される。さらに、バレル押出口14における混練材料の圧力を一定に保つために、混練材料の一部を排出ポンプ26にて抜き出して装置外部に排出するような制御方式が採用されている。
【0050】
そのため、混合する原料が一定の比率および量でかつ一定の剪断速度にて混練して、溶融状態の混練材料を形成することができる。また、バレル12内における混練材料の滞留時間についても一定にすることができる。したがって、混練材料の定量供給を実現しながら、混練材料の混練性の安定化を実現することができる。
【0051】
また、バレル押出口14にて検出された圧力変化に応じて、バレル押出口14の近傍から混練材料を排出する量を制御しているため、圧力変化の制御においてタイムラグを少なくすることができ、制御の応答性を良好にできる。
【0052】
ここで、「混練性」とは、例えば多孔質(ポーラス)な成形体では、成形体の力学的性質(引張強さ、衝撃強さ、硬さなど)のほか、孔の均一性、孔数などの条件を含む混練材料の特性のことである。また、使用される原料と成形体の目的によって、混練性には、このような力学的性質などのほかに、導電性、難燃性、透過性、透明性、吸水性、耐候性などの機能的性質の条件を含む場合もある。
【0053】
特に、比重差がある原料や流動性の異なる原料を混合する場合には、原料の供給量やスクリューシャフトの回転数を変化させると、バレルにおける原料の供給口が同一の場合であっても、バレル内への原料の充満量や内部滞留時間が変化して、混練材料の混練性を安定させることが困難となる。
【0054】
本第1実施形態では、原料の供給量やスクリューシャフトの回転数を一定に保つ構成が採用されているため、原料の固液混合などのように比重差がある原料の混合などを行うような場合にあっても、原料の混合量および混合比率を一定に保ちながら、バレル12内での混練状態を一定の状態に保つことができ、混練性を安定化することができる。
【0055】
例えば、固体状の第1原料としてポリマー系原料を用い、液体状の第2原料としてオイル系原料を用いて、混練材料を形成し、成形品として、多孔質(ポーラス)な成形体などを直接成形するような用途に、本第1実施形態の混練押出装置を適用することができる。特に、多孔質な成形体の直接成形(直接押出成形)では、混練性として、成形体の力学的性質のほかに、形成される孔をより小さく均一に形成されることが求められ、さらに時間の経過とともにこれらの性質が変化することも許容されない、というように厳しい混練性の条件が求められる。したがって、成形体の混練性を連続的かつ均一に保つことが強く求められ、特に、昇圧ポンプに流入する時点で、混練材料は均一な混練性を有している必要がある。さらに、このような多孔質な成形体の成形では、液体状の第2原料の混合比率が50%を超える場合が多いため、混練材料の混練状態の安定性および定量性が強く求められる。よって、このような多孔質な成形体の成形に対して、本第1実施形態の混練押出装置1を採用することが効果的である。
【0056】
また、混練押出装置1において、例えば、ダイ部16から押し出される材料の量を100%とした場合に、第1および第2原料フィーダ24、25から相対的に110%の量の原料を供給して混練材料を形成し、排出ポンプ26にて10%の量の混練材料を排出するように運転することもできる。このように排出ポンプ26にて、予めある程度の量を混練材料の排出を想定してポンプ仕様を選定することで、圧力検出に基づく排出ポンプ26による排出量の制御性を良好にすることができ、バレル押出口14における圧力の安定化制御を良好に行うことができる。なお、これらの材料の相対的な量は一例であり、第1および第2原料フィーダ24、25から110%以上の量の原料を供給しても良く、あるいは110%以下の量の原料を供給しても良い。
【0057】
また、混練押出装置1において、例えば、ダイ部16における押出量を少なくしたい場合には、排出ポンプ26による排出量を増大させることにより、対応することができる。そのため、ダイ部からの押出量の等量を成形量として装置仕様を決定することなく、排出ポンプ26による排出量を可変設定することで、ダイ部16における押出量を所望の量に設定することが可能となる。したがって、成形量に応じて、大型装置から小型装置まで複数種類の装置を用意することなく、比較的大きな処理量の混練押出装置を用いて、少量の成形にも対応することができる。特に、従来の混練押出装置では対応することが困難であった、数グラム/hの超少量の直接成形についても、本第1実施形態の混練押出装置を小型化することで実現することができる。
【0058】
また、仮に、本第1実施形態の混練押出装置1の比較例を考えた場合、バレル押出口における圧力を一定に保つために、アキュームレータに代表されるような圧力調節タンクを用いてタンク内の容積を可変させることで、バレル押出口における混練材料の圧力を一定に保つ方法が考えられる。しかしながら、混練材料は粉体状や液体状など様々な場合があり、さらに単一の流体でない場合も多く、圧力調節タンクを用いた方法では、タンク内部での滞留時間が異なり、粘度変化が生じることが考えられる。そのため、タンク内部から戻された混練材料の物性が、他の混練材料と相違して、定量供給状態に影響が生じる場合が想定され、混練材料の混練性の安定化および定量供給を両立することは困難である。
【0059】
また、バレル押出口より押し出された混練材料の一部をバレル内部に戻すような構成を仮に採用した場合には、戻された混練材料の物性が変化するため、混練性の安定化を図ることが困難となる。
【0060】
したがって、本第1実施形態の混練押出装置1のように連続成形を目的とした混練押出装置では、混練材料をバレル内に戻したり、圧力調節タンク内に一時的に貯蔵したりすることは、混練材料の混練性の安定化の観点から採用することができない。よって、本第1実施形態のように、混練材料の一部を排出装置にて排出する構成を採用して、混練材料の混練性の安定化および定量供給を両立することが効果的である。
【0061】
(第2実施形態)
なお、本発明は上記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、本発明の第2実施形態にかかる混練押出装置101の主要な構成を示す模式図を図2に示す。なお、図2の混練押出装置101において、上記第1実施形態の混練押出装置1と同じ構成部分には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、本第2実施形態の混練押出装置101は、さらにダイ部16においても混練材料の一部の排出する構成が追加的に採用された構成を有している点において、上記第1実施形態の構成とは異なる。以下、この異なる構成部分についてのみ説明する。
【0063】
図2に示すように、ダイ部16には、管路を介して排出ポンプ126が接続されている。排出ポンプ126は、回転数を可変制御可能な駆動モータ126aを備えている。さらに、ダイ部16内におけるダイ部押出口15近傍の混練材料の圧力を検出する圧力検出部127が設けられている。
【0064】
圧力検出部127により検出されたダイ部16内における混練材料の圧力は、制御装置9に入力され、制御装置9にて、予め設定された設定圧力範囲に収まるように、駆動モータ126aの回転数が制御されて、排出ポンプ126により混練材料の排出量が制御される。
【0065】
このような制御を行うことにより、ダイ部16における混練材料の圧力を一定に保つことができ、より安定した混練材料の押出を行うことができる。ダイ部16にて混練材料の一部排出を行うような構成は、特に少量の成形に有効である。なお、図2に示すように、バレル押出口14における混練材料の一部排出と、ダイ部16における混練材料の一部排出とを共に行うような場合に代えて、ダイ部16における混練材料の一部排出のみを行うような場合であっても良い。
【0066】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態にかかる混練押出装置201の主要な構成を示す模式図を図3に示す。なお、図3の混練押出装置201において、上記第1実施形態の混練押出装置1と同じ構成部分には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0067】
図3に示すように、本第3実施形態の混練押出装置201では、スクリューシャフト11が2軸構成とされている点、原料供給装置としてさらに第3原料の供給装置が追加されている点、および昇圧ポンプ17からダイ部16への系統が複数系統化されている点において、上記第1実施形態の構成とは異なる。以下、この異なる構成部分についてのみ説明する。
【0068】
図3に示すように、バレル212には、さらに第3原料供給口221が設けられており、第1および第2原料とは異なる種類の第3原料が、第3原料フィーダ226よりバレル212内に供給可能とされている。なお、第3原料フィーダ226は駆動モータ226aを備えており、駆動モータ226aは一定の回転数にて駆動されることにより、一定量の第3原料が、バレル212内に連続的に供給される。
【0069】
また、バレル212内には、互いに噛み合い状態とされた2本のスクリューシャフト11が配置されている。2本のスクリューシャフト11は、スクリュー駆動装置19により一定の回転速度にて回転駆動される。
【0070】
さらに、バレル押出口14に接続された管路が3つに分岐されており、分岐されたそれぞれの管路において、昇圧ポンプ17、フィルタ20、およびダイ部16が設置されている。
【0071】
このように本第3実施形態の混練押出装置201によれば、混合される原料の種類は、3種類以上であっても良く、また、スクリューシャフトについても、2軸あるいは3軸以上の多軸構成を適用することができる。
【0072】
また、昇圧ポンプ17およびダイ部16についても、最終的な成形形態に応じて、複数の系統に分岐することも可能である。
【0073】
したがって、混練押出装置201において、原料の種類、スクリューの軸構成、および最終的な成形形態など、様々な仕様に柔軟に対応しながら、混練材料の定量押出および混練性の安定化を両立することができる。
【0074】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態にかかる混練押出装置301の主要な構成を示す模式図を図4に示す。なお、図4の混練押出装置301において、上記第1実施形態および第3実施形態の混練押出装置1、201と同じ構成部分には、同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0075】
図4に示すように、本第4実施形態にかかる混練押出装置301では、バレル押出口14から押し出される混練材料の一部を排出する排出装置として、排出ポンプではなく、制御弁を用いている点において、上記第1実施形態および第3実施形態とは異なる構成を有している。以下、この異なる構成部分についてのみ説明する。
【0076】
図4に示すように、混練押出装置301のバレル押出口14とそれぞれの昇圧ポンプ17とを接続する管路の途中には、混練材料の一部を排出するための管路を介して制御弁326が設けられている。制御弁326は外部信号が入力されることによりその開度が可変する機能を有しており、制御弁326の開度を変化させることにより、混練材料の排出量を制御することができる。
【0077】
具体的には、バレル押出口14における混練材料の圧力が、圧力検出部27にて検出されて制御装置9に入力されると、制御装置9では、検出された圧力が設定圧力範囲内にあるかどうかを判断する。検出された圧力が設定圧力範囲よりも高い場合には、制御弁326の開度を増加させて、混練材料の排出量を増加させる。一方、検出された圧力が設定圧力範囲よりも低い場合には、制御弁326の開度を減少させて、混練材料の排出量を減少させる。
【0078】
このように、混練材料の排出装置として、制御弁326を用いるような場合であっても、バレル押出口14における混練材料の圧力を一定に保つことができ、混練材料の定量供給および混練性の安定化を両立することができる。
【0079】
(変形例)
上述それぞれの実施形態における変形形態について、以下に説明する。
【0080】
昇圧ポンプ17が設置されている場合を例として説明したが、昇圧ポンプ17が設置されていない構成を採用することもできる。
【0081】
また、昇圧ポンプ17の下流側にフィルタ20が設置されている場合を例として説明したが、フィルタ20を昇圧ポンプ17の上流側に設置しても良く、また、フィルタ20自体を設置しないような場合であっても良い。
【0082】
ダイ部16が1台のみ備えられている場合、3台備えられている場合のそれぞれについて説明したが、ダイ部16の設置台数は、押出材料の成形形態や仕様などに応じて決定することができる。また、ダイ部16を複数台設置する場合には、全て同じ大きさおよび仕様のダイ部16を設置するような場合のみに限られず、異なる大きさあるいは仕様のダイ部16を設置するような場合であっても良い。
【0083】
また、ダイ部16に個別に対応するように昇圧ポンプ17を設置する場合を例として説明したが、ダイ部16と昇圧ポンプ17とは必ずしも個別に対応していないような構成を採用することもできる。
【0084】
また、混練材料の一部を排出させる排出装置として、排出ポンプ26や制御弁326を用いるような場合を例として説明したが、所望量の混練材料を可変的に排出させる機能を有する様々な装置を排出装置として適用できる。例えば、スクリューを用いて、スクリューの回転駆動量を可変制御できるスクリュー型の排出装置を採用することもできる。
【0085】
また、排出装置において、さらにストランドダイス、冷却水槽、およびストランドカッタを設けて、排出される混練材料をペレット化して再利用するようにしても良い。
【0086】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、固体状原料と液体状原料との混練を行って混練材料を押し出す混練押出成形に有用であり、特に、液体状原料の混合比率が高い場合においても、混練材料の定量供給および混練性の安定化を両立することができ、直接押出成形に適用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 混練押出装置
9 制御装置
11 スクリューシャフト
12 バレル
14 バレル押出口
15 ダイ部押出口
16 ダイ部
17 昇圧ポンプ
18 ホッパ
19 スクリュー駆動装置
19a 駆動モータ
20 フィルタ
22 第1原料供給口
23 第2原料供給口
24 第1原料フィーダ
24a 駆動モータ
25 第2原料フィーダ
25a 駆動モータ
26 排出ポンプ
26a 駆動モータ
27 圧力検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1原料と液状の第2原料とが供給される原料供給口と、第1原料と第2原料とが混練されて溶融状態とされた混練材料がその内部より押し出される押出口とを有するバレルと、
バレル内部に配置され、第1原料と第2原料とを混練して溶融状態の混練材料を形成するスクリューシャフトと、
スクリューシャフトを一定の速度にて連続的に回転駆動させるスクリュー駆動装置と、
バレルの押出口と連通され、バレルの押出口より押し出された加圧状態の混練材料が装置外部へ押し出される押出口を有するダイ部と、
バレルの押出口とダイ部の押出口との間において、バレルの押出口より押し出される混練材料の一部を排出する排出装置と、
バレルの押出口における混練材料の圧力を一定に保つように、排出装置による混練材料の排出量を調整する排出量調整手段とを備える、混練押出装置。
【請求項2】
バレルの押出口とダイ部との間に、混練材料を昇圧する昇圧ポンプが備えられ、昇圧ポンプは一定の速度にて連続的に駆動される、請求項1に記載の混練押出装置。
【請求項3】
バレルの押出口と連通されたダイ部が複数台、並列して備えられ、それぞれのダイ部に個別に対応するように複数の昇圧ポンプが備えられている、請求項2に記載の混練押出装置。
【請求項4】
昇圧ポンプとバレルの押出口との間より、混練材料の一部が排出されるように、排出装置が設置されている、請求項2または3に記載の混練押出装置。
【請求項5】
排出装置はギアポンプであり、排出量調整手段はギアポンプの回転駆動量の可変手段である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項6】
排出装置は制御弁であり、排出量調整手段は制御弁の開度調節手段である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項7】
排出装置は回転駆動されることで混練材料の一部を排出するスクリューを有し、排出量調整手段はスクリューの回転駆動量の可変手段である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項8】
ダイ部の押出口の圧力を一定に保つように、ダイ部内に供給される混練材料の一部を排出する排出装置が備えられている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項9】
バレル内部に複数のスクリューシャフトが配置され、スクリュー駆動装置によりそれぞれのスクリューシャフトが一定の速度にて連続的に回転駆動される、請求項1〜8のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項10】
バレルにおいて、第1原料が供給される第1原料供給口と、液状の第2原料が供給される第2原料供給口とが、互いに異なる位置に設置されている、請求項1〜9のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項11】
ダイ部は、押出口より混練材料を押し出して直接押出成形を行う、請求項1〜10のいずれか1つに記載の混練押出装置。
【請求項12】
原料供給口を通してバレル内部に第1原料および第2原料を一定の量かつ比率にて連続的に供給する原料供給装置が備えられている、請求項1〜11のいずれか1つに記載の混練押出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245790(P2011−245790A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122848(P2010−122848)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(598000828)
【Fターム(参考)】