説明

減圧弁

【課題】 弁体による通過孔の閉塞状態で通過孔からの流体の漏れを防止できる減圧弁を得る。
【解決手段】 本電磁弁10では、ソレノイド本体88に対する通電が遮断されてソレノイド本体88の周囲及び内側に形成されていた磁界が解消されると、プランジャ92がシャットスプリング100の第3付勢力F3によって上昇する。これにより、プランジャ92の押圧部98が弁体58を下側からシャットスプリング100の第3付勢力F3に基づく押圧力で弁体58を下から押し上げる。このように、弁体58が押し上げられることで、弁体58の上端側は通過孔48の内周部に密着し、これにより、通過孔48が密閉される。このため、一次圧室50から二次圧室52への水素ガスの漏れ(ガス圧の漏れ)を確実に防止でき、二次圧室52側の不用意な圧力上昇を確実に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体の二次圧を一次圧に対して減圧する減圧弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の動力用エネルギー源等として実用的な所謂燃料電池の開発が進められている。この燃料電池は、水素と酸素との電気化学反応を利用して発電するシステムであり、その一例としては、固体高分子型燃料電池がある。この固体高分子型燃料電池は、複数のセルを積層することで構成されたスタックを備えている。スタックを構成するセルは、アノード(燃料極)とカソード(空気極)とを備えており、これらのアノードとカソードとの間には、イオン交換基としてスルフォン酸基を有する固体高分子電解質膜が介在している。
【0003】
アノードには水素を含む燃料ガスが供給され、カソードには酸化剤として酸素を含むガス、一例として空気が供給される。アノードに燃料ガスが供給されることで、燃料ガスに含まれる水素がアノードを構成する触媒層の触媒と反応し、これによって水素イオンが発生する。発生した水素イオンは固体高分子電解質膜を通過して、カソードで酸素と電気化学反応を起す。この電気化学反応により発電される構成となっている。
【0004】
ところで、燃料電池には、上記のように水素を含む燃料ガスが用いられるが、このような燃料を搭載するための燃料の形態には、液体、固体、気体等の各種形態が検討されている。このような形態のうち、最も簡便な方法としては、水素ガスを高圧で貯蔵する方法や圧縮天然ガス(CNG)を高圧で貯蔵して更に改質して水素リッチの二酸化炭素との混合ガスとして燃料電池に供給する方法が考えられている。
【0005】
上記のような水素ガスや圧縮天然ガスは、低圧では体積が大きくなってしまう。このため、限られた車両のスペースに搭載するにあたり、炭素繊維複合材料で製造したタンクに、35MPaや70MPaと言った超高圧の状態で貯蔵される。
【0006】
一方、高圧水素を燃料として用いる燃料電池システムでは、数十ミクロンの電解質膜を隔てて水素と空気とが供給される。このため、水素と空気との間の圧力差を小さくすることが要求される。これに応じて、仮に、空気の圧力を上げると圧縮動力が増加して総合した効率が低下する。このことから、固体高分子型燃料電池では水素の圧力を0.3MPaまで低下させて作動させることが一般的である。
【0007】
したがって、上記のように、35MPaや70MPaと言った超高圧の状態でタンクに貯蔵された水素を、例えば、下記特許文献1に開示されているような減圧弁によって減圧して燃料電池に供給することになる。
【0008】
また、上記の圧縮天然ガス(CNG)を用いる場合でも、改質した混合ガスを低圧にすることで反応が進む傾向があるため、圧縮天然ガス(CNG)も水素と同様に、超高圧の状態でタンクに貯蔵して、減圧弁によって減圧して燃料電池に供給することが考えられている。
【0009】
このようなガスタンクに用いられる減圧弁は、通過孔(通気孔)よりも弁体側である一次圧室に供給されたガスの圧力と、弁保持スプリングの付勢力の合力が、通過孔を介して弁体とは反対側に設けられたピストンを付勢する調圧スプリングの付勢力よりも小さければ弁体がピストンに押圧されて通過孔から離間し、これにより、通過孔が開放される構造である。
【0010】
また、通過孔が開放されて通過孔よりもピストン側の二次圧室にガスが流れ込むと、二次圧室内のガス圧がピストンに対して調圧スプリングの付勢力とは反対側に作用する。このため、ピストンを通過孔側に付勢する力が減少する。これにより、ピストンが弁体に付与する押圧力が減少すると、弁体は上記の合力で通過孔に接近して通過孔を閉塞する。
【0011】
このようにして、一次圧室側でピストンに付与される力と二次圧室側で弁体に付与される力とのバランスでガスの圧力が減圧されて二次圧室から外部、例えば、燃料電池システムに供給される。
【特許文献1】特開平11−166652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、例えば、燃料電池システムを停止させて、減圧弁よりも下流側の電磁弁を閉めて燃料ガスの流れを止めると、減圧弁は、その構造上、弁体の接圧が「0」の状態で弁体が通過孔を閉塞する。
【0013】
現実的には、このような接圧が「0」の状態では、一次圧室側から二次圧室側に燃料ガスが漏れ、二次圧室でのガス圧が上昇してしまう。二次圧室でのガス圧が上昇することで、弁体が通過孔を閉塞する圧力が上昇するため、これにより、通過孔が密閉される。しかしながら、このように二次圧室側のガス圧が上昇した状態で燃料電池システムの運転を再開するために、電磁弁を開放すると、高圧の波動が一瞬配管を通り、その下流の燃料電池システムに高圧の波動が流入する。このような高圧の波動が燃料電池システムに流入すると、燃料電池システムを構成する機器を損傷したり、異常な音が周囲に聞こえると言う問題がある。
【0014】
また、仮に、減圧弁の上流側に電磁弁を設けても、減圧弁と電磁弁との間の高圧ガスが減圧弁から漏れて二次圧が上昇するため、上記の問題と同様の問題が発生する可能性がある。
【0015】
本発明は、上記事実を考慮して、弁体による通過孔の閉塞状態で通過孔からの流体の漏れを防止できる減圧弁を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の本発明に係る減圧弁は、流体が通過する通過孔よりも前記流体の上流側で前記通過孔に対して接離移動可能に設けられると共に、前記通過孔側への第1付勢力により前記通過孔側へ付勢され、前記通過孔よりも前記流体の上流側での前記流体の圧力である一次圧と前記第1付勢力との一次圧側合力で前記通過孔に接近移動することで前記通過孔を閉塞する弁体と、前記通過孔よりも前記流体の下流側で且つ前記通過孔を介して前記弁体とは反対側で、前記通過孔に対して接離移動可能に設けられると共に、前記通過孔から離間する方向への第2付勢力により付勢され、前記第2付勢力と前記通過孔よりも前記流体の下流側での流体の圧力である二次圧と前記第2付勢力との二次圧側合力が前記一次圧側合力を上回ることで前記弁体を前記通過孔から離間させる調圧部材と、前記弁体に対して干渉及び当該干渉の解除が可能で、前記弁体に対する干渉状態で前記通過孔から離間する方向への前記弁体の移動を規制する干渉手段と、を備えている。
【0017】
請求項1に記載の本発明に係る減圧弁によれば、通過孔に対して接離移動可能な弁体が第1付勢力と、通過孔よりも流体の上流側における一次圧との一次圧側合力によって通過孔側へ接近することで通過孔が弁体によって閉塞される(以下、弁体により通過孔が閉塞された状態を便宜上「閉塞状態」と称する)。
【0018】
一方、通過孔を介して弁体とは反対側には、調圧部材が弁体に対して接離移動可能に設けられている。但し、調圧部材には通過孔よりも流体の下流側での二次圧が弁体から調圧部材を離間させる方向に作用しており、この二次圧と、二次圧に対抗して調圧部材を通過孔側へ向けて付勢する第2付勢力との二次圧側合力が上記の一次圧側合力を上回ると、弁体が通過孔から離間して通過孔が開放される。
【0019】
このようにして、通過孔が開放されると、流体が通過孔を通過して下流側へと流れる。さらに、流体が通過孔を通過することで二次圧が上昇する。上記のように、二次圧は弁体を通過孔側へ付勢する第2付勢力とは反対方向に弁体に作用するため、二次圧が上昇することで二次圧側合力が減少する。
【0020】
このように二次圧側合力が減少して、二次圧側合力が一次圧側合力を均衡すると、一次圧側合力によって弁体が通過孔に接近し、これにより、通過孔が閉塞される。
【0021】
すなわち、本発明に係る減圧弁は、二次圧が所定の大きさ未満の場合にのみ弁体による通過孔の閉塞が解除されるため、減圧動作を行って流体が流れている状態では流体の二次圧が所定の大きさ未満になる。
【0022】
一方、本発明に係る減圧弁では、干渉手段によって弁体が干渉されると、通過孔から離間する方向への弁体の移動が干渉手段によって規制される。閉塞状態で通過孔から離間する方向への弁体の移動が規制されると、基本的には二次圧側合力と一次圧側合力との差異に拘わらず閉塞状態が維持されて通過孔が密閉される。
【0023】
このため、仮に、一次圧が比較的に高圧であっても弁体による通過孔のシール性を向上でき、閉塞状態における一次圧の漏れを防止できる。このように一次圧の漏れを防止できることで、閉塞状態で二次圧が上昇してしまうことを防止できる。
【0024】
また、減圧弁と電磁弁とが別々に設けられていた従来の構成とは異なり、本発明に係る減圧弁は弁体を加圧して一次圧の漏れを防止するため、減圧弁と電磁弁との間の高圧ガスが減圧弁から二次側に漏れることはなく、このような高圧ガスの二次側への漏れに起因するトラブル(不具合)を発生させることがない。
【0025】
請求項2に記載の本発明に係る減圧弁は、請求項1に記載の本発明において、前記弁体に対する前記干渉手段の干渉状態で、前記干渉手段が前記弁体を前記通過孔側へ押圧する、ことを特徴としている。
【0026】
請求項2に記載の本発明に係る減圧弁によれば、干渉手段が弁体に干渉した状態では、干渉手段によって弁体が通過孔側へ押圧される。
【0027】
このため、閉塞状態では、二次圧側合力と一次圧側合力とが均衡して弁体が通過孔を閉塞した状態で、更に、干渉手段が干渉して干渉手段からの押圧力が弁体に付与されることで、単に通過孔や通過孔の周囲に弁体が当接して通過孔を閉塞するのではなく、弁体が通過孔や通過孔の周囲に押し付けられて、通過孔や通過孔の周囲に弁体が圧接される。
【0028】
これにより、通過孔が確実に密閉され、一次圧の漏れを効果的に防止できる。
【0029】
請求項3に記載の本発明に係る減圧弁は、請求項1又は請求項2に記載の本発明において、前記通過孔に対する前記弁体の接離移動方向に沿って前記弁体の前記通過孔とは反対側で、前記弁体に対して接離移動可能に設けられ、前記弁体に対する接近移動により前記弁体に接触して干渉する干渉部材と、前記弁体に対して接近する方向及び離間する方向の少なくとも何れか一方へ向けて前記干渉部材を移動させる駆動手段と、を含めて前記干渉手段を構成した、ことを特徴としている。
【0030】
請求項3に記載の本発明に係る減圧弁によれば、通過孔に対する弁体の接離移動方向に沿って弁体の通過孔とは反対側に、干渉手段を構成する干渉部材が弁体に対して接離移動可能に設けられている。干渉部材は駆動手段が作動することで、弁体に対して接近する方向及び離間する方向の少なくとも何れか一方に移動する。
【0031】
駆動手段が作動することで、干渉部材が弁体に接近する方向に移動するのであれば、駆動手段が作動することで干渉部材が弁体に干渉する。したがって、流体の送給を停止する場合には、本発明に係る減圧弁よりも流体の下流側に設けられたバルブ等を締めると共に、駆動手段を作動させれば、弁体の通過孔とは反対側から干渉部材が弁体に干渉し、これにより、閉塞状態における一次圧の漏れを防止できる。
【0032】
これに対して、駆動手段が作動することで、干渉部材が弁体から離間する方向に移動するのであれば、駆動手段が作動することで弁体に対する干渉部材の干渉が解除される。したがって、流体の送給を行なう場合には、本発明に係る減圧弁よりも流体の下流側に設けられたバルブ等を緩めて二次圧を低下させると共に、駆動手段を作動させれば、二次圧側合力が一次圧側合力よりも小さくなり、弁体が開放され、二次圧を所定の圧力未満に低下させた状態で流体を送給できる。
【0033】
請求項4に記載の本発明に係る減圧弁は、請求項3に記載の本発明において、前記干渉部材を前記弁体に接近する方向又は前記弁体から離間する方向に付勢する付勢手段を備えると共に、前記付勢手段による前記干渉部材の付勢方向とは反対方向へのみ前記駆動手段が前記干渉部材を移動させる、ことを特徴としている。
【0034】
請求項4に記載の本発明に係る減圧弁によれば、干渉部材が付勢手段によって弁体に接近する方向又は弁体から離間する方向の何れか一方に付勢される。
【0035】
したがって、付勢手段が干渉部材を弁体に接近させる方向に付勢するのであれば、基本的には付勢手段の付勢力によって干渉部材が弁体に接近しており、弁体が干渉部材によって干渉される。
【0036】
これに対して、付勢手段が干渉部材を弁体から離間させる方向に付勢するのであれば、基本的には付勢手段の付勢力によって干渉部材が弁体から離間しており、干渉部材による弁体への干渉が解除されている。
【0037】
一方、本発明に係る減圧弁では、駆動手段は作動することで上記の付勢手段による干渉部材の付勢方向とは反対方向に干渉部材を移動させる。
【0038】
したがって、付勢手段が干渉部材を弁体に接近させる方向に付勢するのであれば、付勢手段の付勢力によって干渉部材が弁体に接近しており、弁体が干渉部材によって干渉された状態で駆動手段が作動すると、駆動手段の駆動力が付勢手段の付勢力に抗して干渉部材を弁体から離間させる。これにより、弁体に対する干渉部材の干渉が解除される。
【0039】
これに対して、付勢手段が干渉部材を弁体から離間させる方向に付勢するのであれば、付勢手段の付勢力によって干渉部材が弁体から離間している状態で駆動手段が作動すると、駆動手段の駆動力が付勢手段の付勢力に抗して干渉部材を弁体に接近させる。これにより、弁体が干渉部材に干渉され、通過孔から離間する方向への弁体の移動が規制される。
【0040】
なお、本発明において駆動手段に関する具体的な構成に関しては特に限定するものではなく、作動状態で付勢手段の付勢力に抗して干渉部材を移動させることができる構成であればよい。したがって、駆動手段は電動機(モータ)であってもよいし、通電されることで生じた磁力により干渉部材を引き付ける又は遠ざけるソレノイドを駆動手段としもよい。
【0041】
請求項5に記載の本発明に係る減圧弁は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記通過孔を通過する前記流体の流量が予め設定された所定値以下の状態で、前記干渉手段が前記弁体に干渉する、ことを特徴としている。
【0042】
請求項5に記載の本発明に係る減圧弁では、通過孔を通過する流体の流量が予め設定された所定値以下の状態になると、通過孔が弁体に閉塞されると共に、干渉手段によって弁体が干渉され、通過孔から離間する方向への弁体の移動が干渉手段の干渉により規制される。
【0043】
すなわち、例えば、本発明に係る減圧弁よりも流体の下流側に設けられたバルブ等で流体の流路を閉止して、流体の送給を停止すると、全体的な流体の流量が減少する。したがって、この状態では、通過孔を通過する流体の流量も減少する。
【0044】
ここで、予め設定された所定値以下の状態で干渉手段が弁体に干渉するのであれば、例えば、流量が所定値以下になると干渉手段によって弁体が干渉され、これにより、二次圧側合力と一次圧側合力との差異に拘わらず閉塞状態が維持されて通過孔が密閉される。
【0045】
このように、干渉手段が弁体に干渉して通過孔から離間する方向への弁体の移動が干渉手段により規制されることで、弁体による通過孔のシール性を向上でき、流体の送給停止状態における一次圧の漏れを防止できる。このように一次圧の漏れを防止できることで、閉塞状態で二次圧が上昇することを防止できる。
【発明の効果】
【0046】
以上説明したように、本発明に係る減圧弁では、一次圧が比較的に高圧であっても弁体による通過孔のシール性を向上でき、閉塞状態における一次圧の漏れを防止できる。このように一次圧の漏れを防止できることで、閉塞状態で二次圧が上昇することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
<第1の実施の形態の構成>
(減圧弁10の構成)
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る減圧弁10の構成が断面図によって示されている。
【0048】
図1に示されるように、本減圧弁10はボディ12を備えている。図1における上方側の端部が閉止された有底円筒形状に形成されている。ボディ12の上下方向中間部における外周部からはフランジ部14が延出されている。フランジ部14よりも下側におけるボディ12の外周部には雄ねじ16が形成されいる。
【0049】
雄ねじ16は、例えば、高圧のガス(一例としては水素ガス)を貯蔵するタンク18の口金部20に形成された雌ねじ22に螺合可能とされており、雄ねじ16を口金部20の雌ねじ22に螺合させることで、口金部20の開口端を閉塞できる。また、フランジ部14の下面には雄ねじ16と同心の環状溝24が形成されている。
【0050】
環状溝24にはOリング(オーリング)やガスケット等の封止手段としての環状の封止部材26が嵌め込まれている。上記の雄ねじ16を口金部20の雌ねじ22に螺合させてボディ12をその下端側から口金部20の内側に所定量嵌め込むと、封止部材26が口金部20の上端面と環状溝24の底部に密着する。これにより、口金部20とボディ12との間が封止される。
【0051】
さらに、フランジ部14の一部には供給部28が形成されている。供給部28はフランジ部14の径方向にボディ12を貫通してボディ12の内外を連通する孔とされており、ボディ12内を通過したガス(水素ガス)は供給部28を通過して本減圧弁10の外部に送給される。
【0052】
一方、ボディ12には弁機構30が設けられている。弁機構30はフレーム32を備えている。フレーム32は外径寸法がボディ12の内径寸法に概ね等しい(厳密には嵌合可能な程度に極僅かに小さい)円柱形状に形成されている。フレーム32の下端部近傍における外周部には環状溝34が形成されている。
【0053】
環状溝34にはOリング(オーリング)やガスケット等の封止手段としての封止部材36が嵌め込まれている。フレーム32をボディ12の下側開口端から嵌挿した状態では、封止部材36がボディ12の内周部及び環状溝34の底部の双方に密着してボディ12の内周部とフレーム32の外周部との間を封止している。
【0054】
さらに、フレーム32の下端からはフレーム32の径方向外方側へ向けてフランジ部38が延出されている。フランジ部38は、ボディ12にフレーム32が嵌挿された状態でボディ12の下端と対向する。また、フランジ部38には透孔40が形成されており、この透孔40に対向してボディ12にはねじ孔42が形成されている。
【0055】
フランジ部38を介してボディ12とは反対側からは締結手段としてのボルト44が透孔40を貫通した状態でねじ孔42に螺合しており、これにより、フランジ部38がボディ12の下面に密着した状態で締結固定されている。さらに、フレーム32には通気部46が形成されている。
【0056】
通気部46はフレーム32の内外を連通しており、ボディ12が口金部20に装着された状態では、通気部46を介してフレーム32の内部とタンク18の内部とが連通する。また、フレーム32の上端部には通過孔48が形成されており、フレーム32の内部空間である一次圧室50とフレーム32よりも上側におけるボディ12の内部空間である二次圧室52とが通過孔48を介して連通している。
【0057】
さらに、フレーム32の一次圧室50の下端には、後述する駆動手段として干渉手段を構成するソレノイド54が図示しないねじによって固定されている。また、一次圧室50には弁体58が収容されている。
【0058】
弁体58は本体60を備えている。本体60は上下方向に沿って軸方向とされた略円柱形状に形成されている。本体60の軸方向中間部における外周部には、係止フランジ61が形成されている。
【0059】
この係止フランジ61の下面と、ソレノイド54のハウジング56との間には第1付勢手段としての弁保持スプリング62が設けられており、その付勢力F1(以下、弁保持スプリング62の付勢力F1を「第1付勢力F1」と称する)によって本体60を上方、すなわち、通過孔48が形成されたフレーム32の上底部へ接近する方向へ付勢している。
【0060】
さらに、本体60の上端側は上方へ向けて漸次外径寸法が小さくなる円錐形状とされ、下方から通過孔48に対向し、本体60の上端部が通過孔48に嵌まり込むことで通過孔48を閉塞できる構造になっている。また、本体60の上端部には被押圧片64が一体的に形成されている。
【0061】
被押圧片64は外径寸法が通過孔48の内径寸法よりも十分に小さく、その先端側(本体60とは反対側)は通過孔48を通過して二次圧室52に突出している。この被押圧片64に対応して二次圧室52には調圧部材としてのピストン66が設けられている。
【0062】
ピストン66は上方へ向けて開口した有底円筒形状に形成されており、二次圧室52をシリンダとして上下方向に摺動可能とされている。ピストン66の外周部にはピストン66と同心の環状溝68が形成されている。
【0063】
環状溝68にはOリング(オーリング)やガスケット等の封止手段としての環状の封止部材70が嵌め込まれている。封止部材70はボディ12の内周部と環状溝68の底部の双方に密着しており、ピストン66の外周部とボディ12の内周部との間を封止する構造となっている。
【0064】
一方、ボディ12の上底部72にはシャフト74が設けられている。シャフト74は、ボディ12に対して略同軸的に上底部72を貫通している。シャフト74は上底部72に回転自在に軸支されているものの、上下方向に沿ったスライドは規制されている。
【0065】
また、シャフト74の上端部には把持部76が設けられており、この把持部76を把持した状態で上下方向を軸方向とする軸周りの回転力を把持部76に付与することで、シャフト74をその軸周りに回転させることができる構造となっている。
【0066】
さらに、ボディ12内には非円形(本実施の形態では、四角形)のスプリング受板78が設けられている。スプリング受板78は、ボディ12内における上底部72の近傍のガイド部80に上下方向が厚さ方向とされた状態で嵌め込まれている。ガイド部80はスプリング受板78に対応した形状の(すなわち、本実施の形態では、四角形の)孔部とされ、ガイド部80内にスプリング受板78が嵌め込まれることで、スプリング受板78は上下方向にスライド可能な状態で回り止めされている。また、スプリング受板78には雌ねじ82が形成されている。
【0067】
雌ねじ82にはシャフト74の下端部近傍に形成された雄ねじ84が螺合しており、これにより、スプリング受板78がシャフト74に支持されていると共に、シャフト74の自らの軸周りの回転によりスプリング受板78が上下にスライドする構造となっている。
【0068】
さらに、上記のピストン66の内底部とスプリング受板78との間には第2付勢手段としての調圧スプリング86が設けられている。調圧スプリング86は、その下端がピストン66の内底部に当接していると共に、上端がスプリング受板78に当接し、その付勢力F2(以下、調圧スプリング86の付勢力F2を「第2付勢力F2」と称する)によってピストン66を下方、すなわち、通過孔48が形成されたフレーム32の上底部へ接近する方向へ付勢している。
【0069】
一方、上記のハウジング56の内側にはソレノイド本体88が設けられている。ソレノイド本体88は通電されることで周囲に磁界を形成するコイルで、その形状を円筒形状とみなした場合には、その軸方向が上下方向を向く。ソレノイド本体88の内側には鉄心90が配置されている。
【0070】
鉄心90は鉄等の強磁性体により形成されており、ソレノイド本体88が形成した磁界により磁化されると、ソレノイド本体88の軸方向に磁極が向く磁石になる。また、ソレノイド本体88の内側で且つ鉄心90の上側には押圧部材として干渉手段を構成するプランジャ92が設けられている。
【0071】
プランジャ92は基部94を備えている。基部94はソレノイド本体88の内側でソレノイド本体88の軸方向に沿って鉄心90に対して接離移動可能とされている。基部94の鉄心90とは反対側の端面からは棒状の軸部96が突出形成されている。軸部96はハウジング56を貫通してフレーム32の内側に入り込んでいる。さらに、軸部96の先端(基部94とは反対側の端部)には押圧部98が形成されている。
【0072】
押圧部98は軸部96よりも大径の円板状に形成されており、軸部96に対して同軸的に一体形成されていると共に、上下方向に沿って弁体58の本体60の下面と対向している。また、押圧部98の裏面(軸部96側の面)とフレーム32を閉止するハウジング56との間には第3付勢手段(特許請求の範囲で言うところの「付勢手段」)としてのシャットスプリング100が設けられている。
【0073】
シャットスプリング100はその下端がハウジング56に接した状態でハウジング56上に載置されていると共に、上端は押圧部98の裏面に当接し、押圧部98、ひいてはプランジャ92を、その付勢力F3(以下、シャットスプリング100の付勢力F3を「第3付勢力F3」と称する)によって上方、すなわち、本体60(弁体58)の下面に接近する方向へ付勢している。
【0074】
この第3付勢力F3以外の外力がプランジャ92に作用していない状態では、図1に示されるように、押圧部98が本体60(弁体58)の下面に当接して、第3付勢力F3に基づく押圧力で弁体58を下方から押し上げている。
【0075】
(減圧弁10の適用例)
次に、本減圧弁10の適用例について説明する。
【0076】
図4には、本減圧弁10を適用した燃料電池システム110の構成の概略がブロック図により示されている。
【0077】
この図に示されるように、燃料電池システム110はスタック112を備えている。スタック112は、イオン交換基としてスルフォン酸基を有する固体高分子により薄膜状に形成された電解質膜、電解質膜の厚さ方向一方の側に設けられた板状のアノード側セパレータ、及び電解質膜の厚さ方向他方の側に設けられた板状のカソード側セパレータ、カーボンペーパやカーボンクロスにより形成されて良好な導電性及び通気性を有し、両セパレータと電解質膜の間に設けられたガス拡散層、及び、触媒としての白金や白金系合金を担持した炭素と、電解質とが適度に混ざり合ったマトリックス状に形成されて電解室膜と各ガス拡散層とに設けられた触媒層を含めて構成された複数のセルを備えている。
【0078】
スタック112にはカソード側ガス供給口114が形成されている。カソード側ガス供給口114は、ポンプ116、流量計118、及びフィルタ120を介して空気吸入口122に接続されており、ポンプ116を作動させることで、外気(空気)を吸入し、この外気をカソードガスとしてカソード側ガス供給口114からスタック112の内部に設けられたセルのカソード側セパレータに供給できる構造となっている。
【0079】
また、スタック112にはカソード側ガス排気口124が形成されており、スタック112内で使用された外気をカソード排気ガスとして外部に排気できる構造となっている。
【0080】
一方、スタック112にはアノード側ガス供給口126が形成されている。アノード側ガス供給口126は、バルブ128、流量計130、及び圧力計132を介して本減圧弁10に接続されており、更に、本減圧弁10を介して高圧の水素ガスを貯蔵したタンク18に接続されている(実際には、上述したように、タンク18の口金部20に本減圧弁10が取り付けられている)。
【0081】
また、スタック112にはアノード側ガス排気口134が形成されており、アノード側ガス供給口126でバルブ128を開放すると、タンク18の水素ガスがアノードガスとして減圧弁10にて減圧され、圧力計132、流量計130、バルブ128を通過してアノード側ガス供給口126からスタック112の内部に設けられたセルのアノード側セパレータに供給される。さらに、スタック112に供給されて使用されたアノードガス(水素ガス)はアノード側ガス排気口134からアノード排気ガスとして排気される構造になっている。
【0082】
一方、図5には、制御手段、或いは、弁体制御手段やアノードガス制御手段として把握できるソレノイド制御装置140の構成の概略がブロック図により示されている。ソレノイド制御装置140は、複数の比較器142、144、146を備えている。
【0083】
上記の流量計130は比較器142に接続されており、流量計130から出力されたアノードガス(水素ガス)の流量に応じた流量信号Hsが、比較器142の一方の入力端子から比較器142に入力される。また、比較器142の他方の入力端子には予め設定された下限流量値Huが入力される。
【0084】
比較器142では流量信号Hsと下限流量値Huとが比較され、流量信号Hsに基づくアノードガスの流量が、下限流量値Huに基づくアノードガスの流量よりも高い(多い)場合にはLowレベルの信号を出力端子から比較器142が出力し、流量信号Hsに基づくアノードガスの流量が、下限流量値Huに基づくアノードガスの流量よりも低い(少ない)場合にはHighレベルの信号を出力端子から比較器142が出力する構成となっている。
【0085】
また、圧力計132は、比較器144の一方の入力端子に接続されていると共に、比較器146の一方の入力端子に接続され、両比較器144、146に圧力計132を通過するアノードガスの圧力に応じた圧力信号Psが入力される構成になっている。
【0086】
比較器144の他方の入力端子には、予め設定された上限圧力値Poが入力される。比較器144では、圧力信号Psと上限圧力値Poとが比較され、圧力信号Psに基づくアノードガスの圧力が、上限圧力値Poに基づくアノードガスの圧力よりも低い(小さい)場合にはLowレベルの信号を出力端子から比較器144が出力し、圧力信号Psに基づくアノードガスの圧力が、上限圧力値Poに基づくアノードガスの圧力よりも高い(大きい)場合にはHighレベルの信号を出力端子から比較器144が出力する構成となっている。
【0087】
これに対し、比較器146の他方の入力端子には、予め設定された下限圧力値Puが入力される。比較器146では、圧力信号Psと下限圧力値Puとが比較され、圧力信号Psに基づくアノードガスの圧力が、下限圧力値Puに基づくアノードガスの圧力よりも高い(大きい)場合にはLowレベルの信号を出力端子から比較器146が出力し、圧力信号Psに基づくアノードガスの圧力が、下限圧力値Puに基づくアノードガスの圧力よりも低い(小さい)場合にはHighレベルの信号を出力端子から比較器146が出力する構成となっている。
【0088】
各比較器142、144、146の各出力端子は、3入力のORゲート148に接続されており、各比較器142〜146の少なくとも何れか1つからHighレベルの信号が出力されてORゲート148に入力されると、ORゲート148からHighレベルの信号が出力される構成になっている。
【0089】
さらに、ORゲート148はドライバ150に接続されている。ドライバ150は上述したソレノイド54のソレノイド本体88に接続されていると共に、バッテリー152に接続されており、ORゲート148から出力されたHighレベルの信号がドライバ150に入力されると、ドライバ150はソレノイド本体88に対する通電を遮断する。
【0090】
また、図5における図示は省略するが、ドライバ150は、バルブ128が開放されることでソレノイド本体88に対する通電を開始する構成になっているが、ORゲート148からのHighレベルの信号が入力された場合には、ドライバ150はバルブ128の状態とは無関係にソレノイド本体88に対する通電を解除する。
【0091】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、上記の燃料電池システム110の動作の説明を通して、本減圧弁10の作用並びに効果について説明する。
【0092】
燃料電池システム110は、ポンプ116を作動させると、外気(空気)がフィルタ120、流量計118を介してポンプ116に吸入され、更に、ポンプ116に吸入された外気(空気)がカソードガスとしてカソード側ガス供給口114からスタック112内に供給される。
【0093】
一方、ポンプ116の作動に前後してバルブ128を開放状態にすると、ドライバ150がソレノイド本体88に対して通電を開始する。ソレノイド本体88が通電されるとソレノイド本体88の周囲並びに内側で磁界が生じ、この磁界によって鉄心90が磁化される。このように鉄心90が磁化されることで、強磁性体により形成されたプランジャ92の基部94が鉄心90に吸引される。
【0094】
これにより、図2に示されるように、プランジャ92は、シャットスプリング100の第3付勢力に抗して下降する。したがって、この状態では、シャットスプリング100の第3付勢力がプランジャ92を介して弁体58に作用することがない。
【0095】
さらに、バルブ128が開放されると、タンク18内の水素ガスが本減圧弁10の通過孔48を通過する。通過孔48を通過し高圧の水素ガスは一次圧室50内では一次圧P1として弁体58に作用する。
【0096】
図3に示されるように、弁体58には一次圧P1と通過孔48の開口面積に応じた弁面積S1の積に対応した圧力Pa(すなわち、Pa=P1×S1)が作用し、更に、この圧力P1と弁保持スプリング62の第1付勢力F1との和である一次圧側合力Fxにより弁体58が通過孔48側へ押圧される。
【0097】
この一次圧側合力Fxに押圧された弁体58は、被押圧片64を介してピストン66の下面を上方へ押圧する。これに対して、ピストン66には調圧スプリング86の第2付勢力F2が一次圧側合力Fxとは反対向きに作用している。
【0098】
一次圧側合力Fxよりも調圧スプリング86の第2付勢力F2が大きければ、一次圧側合力Fxに抗して調圧スプリング86の第2付勢力F2が被押圧片64を介して弁体58を押し下げる(図3の二点鎖線で示す状態)。これにより、通過孔48が開放されて一次圧室50側から通過孔48を介して二次圧室52側へ水素ガスが流れる。
【0099】
二次圧室52側に流れた水素ガスは、供給部28を通過して本減圧弁10の外部(すなわち、タンク18の外部)に送給される。本減圧弁10の外部に送給された水素ガスは、圧力計132、流量計130を通過し、アノードガスとしてアノード側ガス供給口126からスタック112内に供給される。
【0100】
このように、水素ガスがアノードガスとしてスタック112内に供給され、外気(空気)がカソードガスとしてスタック112内に供給されると、電解質膜のアノード側に位置する触媒層では、水素分子(H2)から水素イオン(H+)と電子(e-)が生じる。水素イオンは電解質膜を透過して電解質膜のカソード側に位置する触媒層に到達する。
【0101】
一方、電子は外部回路を介して図4に示される負荷136へ流れる電流となり、負荷136の動力として供される。カソード側の触媒層では、電解質膜を透過した水素イオンと空気中の酸素分子(O2)、及び負荷136からの外部回路を介してカソード側の触媒層に到達した電子によって電気化学反応が生じ、その結果、水が生成される。
【0102】
このようにして生成された水は、電気化学反応終了後の空気であるカソード排気ガスと共にカソード側ガス排気口124から排出される。
【0103】
一方、本減圧弁10では、上記のように一次圧室50から二次圧室52に水素ガスが流れると、図3に示されるように、二次圧室52内に流れた水素ガスの圧力が二次圧P2としてピストン66に作用する。ピストン66には、ピストン66の下面の面積S2と上記の通過孔48の開口面積S1との差と、二次圧P2の積である圧力Pb(すなわち、Pb=(S2−S1)×P2)がピストン66を押し上げる力として作用する。
【0104】
これに対して、ピストン66には、上記の調圧スプリング86の第2付勢力F2及びピストン66とボディ12の上底部72との間での大気圧Pcが圧力Pbに抗するように作用する。したがって、この状態では、二次圧P2、第2付勢力F2、及び大気圧Pcの和である二次圧側合力Fyがピストン66に作用する。
【0105】
一次圧室50から二次圧室52への水素ガスの流入により二次圧P2が上昇すると、二次圧側合力Fyが減少する。二次圧側合力Fyが減少すると、二次圧側合力Fyが一次圧側合力Fxに抗しきれずに弁体58の被押圧片64に押圧されてピストン66が押し上げられる。これにより、ピストン66及び弁体58が上昇すると、弁体58が通過孔48の一部又は全部を閉塞する。
【0106】
このように弁体58によって通過孔48の一部又は全部が閉塞されると、一次圧室50から二次圧室52への水素ガスの流入が停止又は減少するため、二次圧P2が減少する。このように二次圧P2が減少することで二次圧側合力Fyが上昇すると、二次圧側合力Fyが一次圧側合力Fxに抗して被押圧片64を介して弁体58を押し下げる。
【0107】
これにより、通過孔48の全部又は一部が開放される。このようにして、一次圧P1よりも十分に減圧された二次圧P2で水素ガスが減圧弁10の外部(すなわち、タンク18の外部)に送給され、スタック112内に供される。
【0108】
一方、燃料電池システム110を停止させるにあたり、バルブ128を閉じると、タンク18とバルブ128との間で水素ガスの流路が閉塞される。このため、二次圧P2が上昇する。
【0109】
二次圧P2が上昇することで二次圧側合力Fyが減少すると、上記のように弁体58の被押圧片64に押圧されてピストン66が押し上げられる。これにより、ピストン66及び弁体58が上昇すると、弁体58が通過孔48を閉塞する。
【0110】
この状態で、弁体58と通過孔48との間に隙間が生じていると、この隙間を介して一次圧室50側から二次圧室52側へ水素ガスが漏れ、これにより、二次圧P2が上昇し、更に、弁体58が上昇する。基本的には通過孔48が弁体58によって閉塞される通過孔48が弁体58により閉塞されると、流量計118にて検出される水素ガスの流量値Hsが下限設定値Huを下回る。
【0111】
このため、比較器142からはHighレベルの信号が出力される。比較器142から出力されたHighレベルの信号がORゲート148に入力されると、ORゲート148からHighレベルの信号が出力される。ORゲート148から出力されたHighレベルの信号がドライバ150に入力されることにより、ドライバ150はソレノイド本体88に対する通電を遮断する。
【0112】
ソレノイド本体88は通電が遮断されることで、それまでソレノイド本体88の周囲及び内側に形成されていた磁界が解消され、これに伴い、鉄心90の磁化が解消される。鉄心90の磁化が解消されることで、鉄心90によるプランジャ92の基部94の吸引が解除されるため、図1に示されるように、プランジャ92はシャットスプリング100の第3付勢力F3によって上昇する。
【0113】
上昇したプランジャ92は押圧部98が弁体58(本体60)の下面に当接し、シャットスプリング100の第3付勢力F3に基づく押圧力で弁体58を下から押し上げる。このように、弁体58が押し上げられることで、弁体58の上端側は通過孔48の内周部に密着し、これにより、通過孔48が密閉される。
【0114】
このように、通過孔48が密閉されることで、一次圧室50から二次圧室52への水素ガスの漏れ(ガス圧の漏れ)を確実に防止でき、二次圧室52側の不用意な圧力上昇を確実に防止できる。このように、バルブ128の閉止状態における二次圧室52内の不用意な圧力上昇を防止できることで、再度、バルブ128を開放した際に不用意に高い圧力の水素ガスがアノードガスとしてスタック112に供給されることがなく、これにより、不用意に高圧の水素ガスがスタック112内に供給されることに起因するスタック112等の破壊を確実に防止できる。
【0115】
一方、上記のように、流量計118にて検出される水素ガスの流量値Hsが下限設定値Huを下回らないまでも、通過孔48と弁体58との隙間から一次圧室50側の水素ガスが二次圧室52側に漏れ、これにより二次圧P2が上昇する。二次圧P2は圧力計132により検出され、この検出結果に基づく(二次圧P2の大きさに基づく)圧力信号Psが圧力計132から出力される。
【0116】
圧力計132から出力された圧力信号Psは比較器144に入力される。上記のように、一次圧室50側からに二次圧室52側に水素ガスが漏れることで、上昇した二次圧P2が予め設定された上限圧力値Poに基づく圧力を上回ると、比較器144からはHighレベルの信号が出力される。
【0117】
比較器144から出力されたHighレベルの信号がORゲート148に入力されると、ORゲート148からHighレベルの信号が出力される。ORゲート148から出力されたHighレベルの信号がドライバ150に入力されることにより、ドライバ150はソレノイド本体88に対する通電を遮断する。
【0118】
したがって、流量計118にて検出される水素ガスの流量値Hsが下限設定値Huを下回った場合と同様に、ソレノイド本体88に対する通電が遮断されて、シャットスプリング100の第3付勢力F3によって上昇したプランジャ92の押圧部98が弁体58を下から押し上げる。これにより、上述したように、弁体58によって通過孔48が密閉され、一次圧室50から二次圧室52への水素ガスの漏れ(ガス圧の漏れ)を確実に防止でき、二次圧室52側の不用意な圧力上昇を確実に防止できる。
【0119】
さらに、圧力計132から出力された圧力信号Psは、比較器144のみならず、比較器146にも入力される。比較器146では入力された圧力信号Psと、予め設定された下限圧力値Puとが比較され、二次圧P2が予め設定された下限圧力値Puに基づく圧力を下回ると、比較器146からはHighレベルの信号が出力される。
【0120】
比較器146から出力されたHighレベルの信号がORゲート148に入力されると、ORゲート148からHighレベルの信号が出力される。ORゲート148から出力されたHighレベルの信号がドライバ150に入力されることにより、ドライバ150はソレノイド本体88に対する通電を遮断する。これにより、シャットスプリング100の第3付勢力F3によって上昇したプランジャ92の押圧部98が弁体58を下から押し上げる。
【0121】
ここで、例えば、何らかの異常で本来流れるべきでない流量の水素ガスが流れた場合には、二次圧P2が異常に低下する。ここで、本減圧弁10では、二次圧P2が上記の下限圧力値Puに基づく圧力を下回ると、プランジャ92の押圧部98がシャットスプリング100の第3付勢力F3で弁体58を強制的に押し上げる。
【0122】
このように、弁体58が強制的に押し上げられることで、一次圧側合力Fxや二次圧側合力Fyの大きさや差異の如何を問わず、通過孔48が弁体58によって強制的に密閉される。これにより、本減圧弁10やその他の部位の故障や破損等による所定の流量以上の水素ガスが流れることを防止できる。
【0123】
また、本減圧弁10は、弁保持スプリング62の第1付勢力F1が付与されている1つの弁体58に対してシャットスプリング100の第3付勢力F3に基づくプランジャ92の押圧力を付与する構造である。このため、単純に従来の減圧弁とレギュレータとを並べて一体化した構造に比べると遥かに小型化でき、タンク18の口金部20に装着する所謂「インタンクタイプ」の減圧弁として適用できる。
【0124】
なお、本実施の形態では、本減圧弁10の適用例として燃料電池システム110を例示した。しかしながら、本減圧弁10の適用が燃料電池システム110に限定されるものではなく、高圧流体を減圧して送給する際の減圧用として、その用途は幅広く適用されるものである。
【0125】
但し、燃料電池システム110を車両に搭載した車両の駆動エネルギー源として適用する場合には、タンク18に貯蔵する水素ガスの容量が多いほど好ましく、しかしながら、タンク18は小型であることが好ましい。このような点を考慮した場合、タンク18内の水素ガスは極めて高圧になり、タンク18の内圧とスタック112に送給される水素ガスのガス圧の差異が大きくなる。
【0126】
このような構成では、上記のように弁体58による通過孔48の閉塞状態で押圧部98が下方から弁体58を押し上げて通過孔48を密閉し、一次圧室50側から二次圧室52側への水素ガスの漏れを確実に防止できる本減圧弁10を適用することは非常に効果的で、結果的にタンク18の小型化、ひいては、燃料電池システム110の小型化に寄与する。
【0127】
しかも、上記のように、単純に従来の減圧弁とレギュレータとを並べて一体化した構造に比べると本減圧弁10は遥かに小型化でき、タンク18の口金部20に装着する所謂「インタンクタイプ」の減圧弁として適用できることから、この意味でも燃料電池システム110の小型化に寄与する。
【0128】
また、本実施の形態では、ソレノイド制御装置140がソレノイド本体88に対する通電を遮断する際の条件を、スタック112に流れる水素ガスの流量が予め設定された下限流量値Hu以下になった場合、スタック112に流れる水素ガスの圧力が上限圧力値Po以上になった場合、及び、スタック112に流れる水素ガスの圧力が下限圧力値Pu以下になった場合の少なくとも何れか1つの場合であった。しかしながら、ソレノイド本体88に対する通電を遮断する際の条件は、上記の3つの条件の何れか1つ又は2つだけでもよいし、上記の3つの条件以外であってもよい。
【0129】
さらに、本実施の形態では、上記のように、ソレノイド制御装置140を比較器142、144、146、及びORゲート142を含めて構成したが、例えば、このような比較器142、144、146、及びORゲート142を用いずに、上記のような条件を満たしたか否かを判定するプログラムを用いて、ソフト的に制御する構成としても構わない。
【0130】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態を説明するにあたり前記第1の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその説明を省略する。
【0131】
図6には、本実施の形態に係る減圧弁170の構成が断面図によって示されている。
【0132】
図6に示されるように、本減圧弁170はフレーム32に代わりフレーム172を備えている。フレーム172の内側にはフレーム32と同様に弁体58及び弁保持スプリング62が収容されている。但し、フレーム32とは異なり、フレーム172の上下方向中間部に中底部174が形成されており、弁保持スプリング62の下端部は中底部174上に載置されている。
【0133】
また、本減圧弁170は駆動手段として干渉手段を構成するモータアクチュエータ176を備えている。モータアクチュエータ176はモータ178を備えている。モータ178を構成するモータハウジング又はヨークの外周部にはフランジ部180が形成されており、このフランジ部180によってフレーム172の下側開口端を閉止している。
【0134】
モータ178の出力軸182は中底部174よりも下側でフレーム172内に収容されている。さらに、フレーム172の内側にはリニアガイド184が設けられている。リニアガイド184は円筒形状の筒体186を備えている。筒体186は内径寸法が出力軸182の外径寸法よりも大きく、出力軸182を内側に収容した状態で出力軸182に対して同軸的に配置されている。
【0135】
筒体186の内周部及び出力軸182の外周部の各々にはねじ溝が形成されており、両ねじ溝の間には複数の球体188が配置されている。すなわち、出力軸182、筒体186、及び複数の球体188によりボールねじが構成されており、出力軸182が自らの軸周り方向一方に回転すると、筒体186が下方へスライドする構成となっている。
【0136】
また、筒体186の下端部とモータ178のモータハウジング又はヨークの上端部との間にはシャットスプリング100が配置されている。すなわち、本実施の形態では、シャットスプリング100がプランジャ92ではなく、筒体186をその第3付勢力F3によって上方へ付勢している。さらに、筒体186の上端側は中底部174を貫通しており、その上端部には円柱形状の押圧部190が弁体58の本体60の下側で本体60の下面に対向した状態で一体的に固定されている。
【0137】
すなわち、本減圧弁170では、モータ178が作動して出力軸182が自らの軸周り方向一方に回転すると、リニアガイド184の筒体186がしてシャットスプリング100の第3付勢力F3に抗して下降する。これにより、押圧部190が弁体58の本体60から離間する。
【0138】
これに対して、モータ178が停止すると、シャットスプリング100がその第3付勢力F3によって筒体186を押し上げつつ出力軸182をその軸周り他方へ回転させる。これにより、押圧部190が上昇して弁体58の下面(本体60の下面)に当接し、シャットスプリング100の第3付勢力F3に基づく押圧力で弁体58を押し上げる。
【0139】
このように、本減圧弁170は、駆動手段の構成が前記第1の実施の形態に係る減圧弁10とは異なるが、弁保持スプリング62とは別に押圧部98に代わる押圧部190が下側から弁体58を押し上げると言う点に関しては前記第1の実施の形態に係る減圧弁10と同等の作用を奏する。したがって、本減圧弁170も基本的に前記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0140】
なお、これまでに説明した各実施の形態では、シャットスプリング100の第3付勢力F3で押圧部98、190が弁体58を押し上げる構成であったが、シャットスプリング100のような付勢手段の付勢力で弁体58を押し上げる構成でなくてもよく、例えば、ソレノイド本体88が形成する磁界や、モータ178の回転力で押圧部98、190を上昇させて弁体58を押し上げる構成としてもよい。このような構成とした場合には、押圧部98、190を弁体58から離間させるために別途スプリングを設ける構成としてもよい。
【0141】
また、上記の各実施の形態では、駆動手段にソレノイド54やモータ178を適用したが、駆動手段の構成はソレノイド54やモータ178に限定されるものではなく、押圧部98、190を上昇及び下降の少なくとも何れか一方に移動させることができる構成であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る減圧弁の構成を示す断面図である。
【図2】干渉手段が弁体に干渉した状態を示す図1に対応した断面図である。
【図3】弁体及びピストンに作用する力の状態を示す図である。
【図4】燃料電池システムの構成の概略を示すブロック図である。
【図5】燃料電池システムにおける本発明の第1の実施の形態に係る減圧弁の制御システムの構成の概略を示すブロック図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る減圧弁の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0143】
10 減圧弁
48 通過孔
50 一次圧室
52 二次圧室
54 ソレノイド(干渉手段、駆動手段)
58 弁体
66 ピストン(調圧部材)
100 シャットスプリング(付勢手段)
170 減圧弁
176 モータアクチュエータ(干渉手段、駆動手段)
F1 第1付勢力
F2 第2付勢力
Fx 一次圧側合力
Fy 二次圧側合力
P1 一次圧
P2 二次圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過する通過孔よりも前記流体の上流側で前記通過孔に対して接離移動可能に設けられると共に、前記通過孔側への第1付勢力により前記通過孔側へ付勢され、前記通過孔よりも前記流体の上流側での前記流体の圧力である一次圧と前記第1付勢力との一次圧側合力で前記通過孔に接近移動することで前記通過孔を閉塞する弁体と、
前記通過孔よりも前記流体の下流側で且つ前記通過孔を介して前記弁体とは反対側で、前記通過孔に対して接離移動可能に設けられると共に、前記通過孔から離間する方向への第2付勢力により付勢され、前記第2付勢力と前記通過孔よりも前記流体の下流側での流体の圧力である二次圧と前記第2付勢力との二次圧側合力が前記一次圧側合力を上回ることで前記弁体を前記通過孔から離間させる調圧部材と、
前記弁体に対して干渉及び当該干渉の解除が可能で、前記弁体に対する干渉状態で前記通過孔から離間する方向への前記弁体の移動を規制する干渉手段と、
を備える減圧弁。
【請求項2】
前記弁体に対する前記干渉手段の干渉状態で、前記干渉手段が前記弁体を前記通過孔側へ押圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載の減圧弁。
【請求項3】
前記通過孔に対する前記弁体の接離移動方向に沿って前記弁体の前記通過孔とは反対側で、前記弁体に対して接離移動可能に設けられ、前記弁体に対する接近移動により前記弁体に接触して干渉する干渉部材と、
前記弁体に対して接近する方向及び離間する方向の少なくとも何れか一方へ向けて前記干渉部材を移動させる駆動手段と、
を含めて前記干渉手段を構成した、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の減圧弁。
【請求項4】
前記干渉部材を前記弁体に接近する方向又は前記弁体から離間する方向に付勢する付勢手段を備えると共に、
前記付勢手段による前記干渉部材の付勢方向とは反対方向へのみ前記駆動手段が前記干渉部材を移動させる、
ことを特徴とする請求項3に記載の減圧弁。
【請求項5】
前記通過孔を通過する前記流体の流量が予め設定された所定値以下の状態で、前記干渉手段が前記弁体に干渉する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の減圧弁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−65587(P2006−65587A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247361(P2004−247361)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】