説明

温度検出回路および温度検出方法

【課題】モータの回転に対応したパルス信号を送出するオープンコレクタ方式の出力信号をもつエンコーダの温度信号を、信号線の数を増加させることなく、また、パルス信号に影響を与えることなく制御装置側に送信する。
【解決手段】エンコーダ1内に配置したサーミスタ11をトランジスタ12のコレクタCに接続し、信号線3を介してサーミスタ11と直列回路を形成する分圧抵抗22を、制御装置2側に備える。図示しないシステムからCPU21に対してエンコーダの温度検出が要求されると、CPU21は信号線3を介してポート1に入力された信号の2値電圧を検出し、ハイレベルであればポート2をシグナルグランド(SG)と接続する。CPU21はA/D入力ポートの電圧を測定し、この電圧値からエンコーダの温度を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープンコレクタによるデジタル信号出力をもつ機器の温度検出に関し、特に温度検出信号とデジタル信号を共通の信号線で送信する温度検出回路および温度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(従来例1)
従来、モータの回転位置を検出するロータリエンコーダにおいて、モータ内に設けた温度センサによる温度センサ信号をデジタル信号に変換し、位置データと合成してシリアルデータに変換しモータコントローラ側に送信していた。(例えば特許文献1参照)
図4は従来のエンコーダにおけるモータ内温度センサの信号処理を示すブロック図である。
図4において、41はモータ内温度センサ、42はロータリエンコーダ、43はモータコントローラである。
【0003】
次に動作について説明する。
モータ内温度センサ41からの温度センサ信号tsは、ロータリーエンコーダ42内に設けられた温度センサ入力端子に接続される。温度センサ入力端子より入力された温度センサ信号tsは、デジタル変換回路であるA/D変換器によって、デジタル信号の温度データtdに変換される。一方、ロータリーエンコーダ42の位置センサの信号psは、デジタル変換回路に入力されてデジタル信号pdに変換され、マイクロコンピュータ内の位置データ変換手段により、内挿演算等の位置データ変換の処理がされる。デジタル化されている位置データpmdと、A/D変換器によってデジタル化された温度データtdの両データは、マイクロコンピュータ内の位置データ・温度データ合成手段により合成される。そして、合成された位置データおよび温度データを含んだデジタル信号cdは、通信回路によってシリアル信号sptに変換され、モータコントローラ43に送信される。
このようにロータリエンコーダ内で温度センサ信号をデジタルの温度データに変換し、この温度データと位置データを合成してシリアル信号に変換し、モータコントローラへ送信することで温度センサ線を不要にし、省線化を実現していた。
【0004】
(従来例2)
また、従来オープンコレクタ方式の出力信号をもつエンコーダを適用した衣類乾燥機において、回転センサからのパルス信号とサーミスタによる衣類乾燥機のドラム内の温度の信号を合成にしてマイクロコンピュータに与えるように構成し、リード線の本数を少なくする方法が開示されている。(例えば特許文献2参照)
図5は従来の温度検出回路の回路図である。
図5において、51はサーミスタで、図示しない衣類乾燥機のドラム内の空気の温度を検知するためのものである。サーミスタ51は、抵抗52と直列に接続され、その接続点Mの電圧レベルを検知することに基づいて温度を判定(検知)できる構成となっている。
また、53は回転センサ(パルス発生手段)で図示しないモータの回転に応じてパルス信号を発生する。回転センサ53は例えば図示しない永久磁石と、ホールIC54から構成された磁気式のロータリエンコーダである。
回転センサ53は、モータが1回転する毎にホールIC54から例えば1個のパルス信号を発生するよう構成されている。回転センサ53から発生するパルス信号の周期を検知することにより、モータ(図示せず)の回転速度ひいてはドラム(図示せず)の回転速度を検知することが可能な構成となっている。
また、図6はホールIC54の内部の電気回路図である。
図において61はホール素子、62は安定化電源回路、63はアンプ、64はNPN形のトランジスタである。このトランジスタ64は、コレクタが信号端子36b(マイクロコンピュータ55のアナログ入力ポート37a)に接続され、エミッタがグランド端子36cに接続されており、もってオープンコレクタ接続される構成となっている。
【0005】
次に動作について説明する。
マイクロコンピュータ55のアナログ入力ポート37aにはホールIC54から出力されるパルス信号Saと、サーミスタ51から出力される電圧信号Sbとを重畳させて合成した、図7に示すような合成信号Scが与えられる。
これにより、マイクロコンピュータ55は、上記合成信号Scのレベル変化、例えば立下りのエッジ(図7中において時刻t1、t2、t3………)を検知することに基づいてモータ(図示せず)の回転速度を検知することができる。また、マイクロコンピュータ55は、合成信号Scのハイレベルの電圧レベルを検知することに基づいてサーミスタ51の検知結果、即ち、検知温度を認識(検知)することができる。
【0006】
このように、2つの信号(パルス信号Sa及び電圧信号Sb)を一つの合成信号Scにしてマイクロコンピュータ55の一つの入力ポート37aへ入力させることにより、省線化を実現していた。
【特許文献1】特許第3160491号
【特許文献2】特許第3251789号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例1に示した温度検出回路では、温度センサ信号をシリアルデータとして伝送するという手順をとっているので、オープンコレクタ方式の出力信号をもつ機器には適用できないという問題があった。
また、従来例2に示した温度検出回路は、オープンコレクタ方式の出力信号を持つ機器に適用できるが、合成信号Scは、パルス電圧の大きさが温度により変化する信号であるため、レベルが低くなった場合、この信号のエッジ位置の検出が難しくなり、ノイズによる誤検出が発生するという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、温度情報の伝送に伴う配線数の増加を伴わず、オープンコレクタ方式の出力信号をもつ機器に適用でき、ノイズに強い温度検出回路及び温度検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、次のようにしたのである。
請求項1に記載の温度検出回路は、機器側にオープンコレクタ接続されたトランジスタと、一端が前記トランジスタのコレクタに接続された温度検出素子とを備え、前記トランジスタのベースに入力されたデジタル信号と前記温度検出素子で検出した温度信号を合成し、前記トランジスタのコレクタに接続された信号線を通して制御装置側に送信する温度検出回路において、前記制御装置側に前記信号線を介して前記温度検出素子と直列に接続され分圧回路を形成する分圧抵抗と、前記信号線から検出される2値電圧から前記トランジスタのオン・オフを検出するH/L検出手段と、前記H/L検出手段の信号によって前記分圧抵抗を接続あるいは切断するための開閉手段と、を備えたことを特徴としている。
請求項2に記載の温度検出回路は、請求項1に記載の温度検出回路において、前記機器は移動体の変位量に対応したパルス信号を出力するエンコーダであることを特徴としている。
請求項3に記載の温度検出回路は、請求項1に記載の温度検出回路において、前記開閉手段はCPUのポート処理であることを特徴としている。
請求項4に記載の温度検出方法は、機器側にオープンコレクタ接続されたトランジスタと、一端が前記トランジスタのコレクタに接続された温度検出素子とを備え、前記トランジスタのベースに入力されたデジタル信号と前記温度検出素子で検出した温度信号を合成し、前記トランジスタのコレクタに接続された信号線を通して制御装置側に送信する温度検出回路において、前記制御装置側に、前記信号線を介して前記温度検出素子と直列に接続され分圧回路を形成する分圧抵抗と、前記信号線から検出される2値電圧から前記トランジスタのオン・オフを検出するH/L検出手段と、前記H/L検出手段の信号によって前記分圧抵抗を接続あるいは切断するための開閉手段を配置し、前記信号線の2値電圧を前記H/L検出手段で検出し、Hレベルであれば、前記開閉手段によって前記分圧抵抗を接続し、前記信号線の電圧レベルから前記機器の温度を検出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によると、機器側にオープンコレクタ接続されたトランジスタと、温度検出素子とを備え、制御装置側に分圧抵抗と、H/L検出手段と、分圧抵抗を接続あるいは切断するための開閉手段とを備えているので、動作モードに対して分圧抵抗接続あるいは切断が制御装置側で行え、分圧抵抗接続よる信号線の電圧レベルの変化が、デジタル信号検出に影響するのを防ぐことができる。従ってノイズに強いデジタル信号検出ができる温度検出回路が実現出来る。また、温度情報の伝送に伴う配線数の増加を伴わない。
請求項2に記載の発明によると、前記機器をエンコーダとすれば、エンコーダのノイズに強い温度検出ができる。
請求項3に記載の発明によると、開閉手段をCPUのポート処理とすれば、部品の増加を伴わず、また、回路が簡単になる。
請求項4に記載の発明によると、信号線の2値電圧をH/L検出手段で検出し、Hレベルを検出した後、開閉手段によって分圧抵抗を接続しているので、すなわち、H/L検出手段は分圧抵抗を接続する前に信号線のH/Lを検出するので、H/L検出(デジタル信号検出)は分圧抵抗接続による検出レベルの変化の影響を受けない。従って、ノイズに強い検出ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の方法の具体的実施例について、図に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例を示すエンコーダの温度検出回路の回路図である。
図1において、1はエンコーダ、2はエンコーダ1からの信号を受信し、モータの回転速度や回転角度を制御する制御装置である。エンコーダ1の出力部は、オープンコレクタ接続されたトランジスタ12を備えており、トランジスタ12のコレクタCにはエンコーダ1の温度を検出する温度検出素子であるサーミスタ11とエンコーダ1側の信号を制御装置2側に伝送するための信号線3が接続されている。
また、制御装置2はCPU21を備え、CPU21のポート1およびA/D入力ポートには信号線3が接続されている。また、22は分圧抵抗で信号線3を介して一方がサーミスタ11と直列に接続され、もう一方はCPU21のポート2に接続されている。また、211はポート1に入力された信号のH/Lを検出するH/L検出手段、212はポート2をシグナルグランド(SG)と接続あるいは開放するための開閉手段、213はアナログ電圧検出手段であるA/D変換回路、214はポート1に入力されたパルスをカウントするカウンタである。CPU21はH/L検出手段211、開閉手段212、A/D変換回路213およびカウンタ214の機能を備えている。
【0012】
次に本発明の動作について説明する。
通常動作時はエンコーダ1の出力部からはモータの回転角度に応じたパルスが出力され、信号線3によって制御装置側のCPU21のポート1に送信される。CPU21はカウンタ214によってパルス数をカウントすることによってモータの回転角度を検出する。
図2は本発明の温度検出時の信号処理手順を示すフローチャートである。
図示しないシステムからCPU21に対してエンコーダの温度検出が要求されると(温度検出時)、CPU21は信号線3を介してポート1に入力された信号の2値電圧を検出し(ステップ1)、ハイレベルであればポート2をSGと接続する(ステップ2)。CPU21はA/D入力ポートの電圧を測定し(ステップ3)、この電圧値からエンコーダの温度を演算する(ステップ4)。このときCPU21のA/D入力ポートにはVa=Vcc×R22/(Rth+R22)の電圧が入力される。CPU21はVaの値からサーミスタ11の抵抗値を計算し、図示しないサーミスタ11の特性曲線からエンコーダ1の温度を演算する。ただし、Rthはサーミスタ11の抵抗値、R22は分圧抵抗22の抵抗値である。演算後はCPU21のポート2をSGから開放し(ステップ5)し、温度検出を完了する。もし、ステップ1において入力ポート1がロウレベルの場合、通常動作を実行し、モータを回転させてポート1がハイレベルになるのを待つ(ステップ6)。
【0013】
このように、本実施例では、モータの回転を検出するパルス信号とエンコーダの温度を検出するアナログ電圧の2つの信号を1本の信号線で制御装置側に伝送しているので、省配線が実現できる。また、通常動作時はCPUのポート2を使ってサーミスタと直列に接続した分圧抵抗を切り離すようにしているのでパルス信号検出時のパルス電圧のレベルがサーミスタの抵抗値に影響されないので、ノイズに強いパルス検出ができる。
【0014】
なお、本実施例ではエンコーダの出力部にNPNトランジスタを使った例を示したが、PNPトランジスタを使っても同様に構成できる。
図3は本発明のエンコーダの出力部にPNPトランジスタを使った例を示す。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明は、産業用ロボットや工作機械などに使用されるモータの位置や速度を検出するエンコーダの温度検出回路に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例を示すエンコーダの温度検出回路の回路図
【図2】本発明の温度検出時の信号処理手順を示すフローチャート
【図3】本発明の実施例を示すエンコーダの温度検出回路の回路図
【図4】従来のエンコーダにおけるモータ内温度センサの信号処理を示すブロック図
【図5】従来の温度検出回路の回路図
【図6】ホールICの内部の電気回路図
【図7】合成信号の波形を示すタイムチャート
【符号の説明】
【0017】
1 エンコーダ
2 制御装置
3 信号線
11 サーミスタ
12 トランジスタ
21 CPU
22 分圧抵抗
211 H/L検出手段
212 開閉手段
213 アナログ電圧検出手段
214 カウンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器側にオープンコレクタ接続されたトランジスタと、一端が前記トランジスタのコレクタに接続された温度検出素子とを備え、前記トランジスタのベースに入力されたデジタル信号と前記温度検出素子で検出した温度信号を合成し、前記トランジスタのコレクタに接続された信号線を通して制御装置側に送信する温度検出回路において、
前記制御装置側は、
前記信号線を介して前記温度検出素子と直列に接続され分圧回路を形成する分圧抵抗と、
前記信号線から検出される2値電圧から前記トランジスタのオン・オフを検出するH/L検出手段と、
前記H/L検出手段の信号によって前記分圧抵抗を接続あるいは切断するための開閉手段と、
を備えたことを特徴とする温度検出回路。
【請求項2】
前記機器は移動体の変位量に対応したパルス信号を出力するエンコーダであることを特徴とする請求項1記載の温度検出回路。
【請求項3】
前記開閉手段はCPUのポート処理であることを特徴とする請求項1記載の温度検出回路。
【請求項4】
機器側にオープンコレクタ接続されたトランジスタと、一端が前記トランジスタのコレクタに接続された温度検出素子とを備え、前記トランジスタのベースに入力されたデジタル信号と前記温度検出素子で検出した温度信号を合成し、前記トランジスタのコレクタに接続された信号線を通して制御装置側に送信する温度検出回路において、
前記制御装置側に、
前記信号線を介して前記温度検出素子と直列に接続され分圧回路を形成する分圧抵抗と、
前記信号線から検出される2値電圧から前記トランジスタのオン・オフを検出するH/L検出手段と、
前記H/L検出手段の信号によって前記分圧抵抗を接続あるいは切断するための開閉手段を配置し、
前記信号線の2値電圧を前記H/L検出手段で検出し、Hレベルであれば、前記開閉手段によって前記分圧抵抗を接続し、前記信号線の電圧レベルから前記機器の温度を検出することを特徴とする温度検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−121074(P2007−121074A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312650(P2005−312650)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】