説明

温度補償型圧電発振器

【課題】圧電振動素子を搭載した温度補償型圧電発振器の小型化が進んでも、温度補償型圧電発振器に設ける外部接続用の電極端子数を増やすことなく、増幅回路部のみを停止させるインヒビット機能を持たせた温度補償型圧電発振器を提供する。
【解決手段】集積回路素子には、発振回路部と、増幅回路部と、増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置される第1のスイッチと、第1のスイッチと機能端子と可変容量ダイオードのカソードとの接続間に配置される第2のスイッチと、温度補償用制御データと切替用制御データとを記憶するためのメモリ部と、メモリ部内の温度補償用制御データに基づき、温度補償を行なう温度補償信号制御回路部と、メモリ部内の切替用制御データに基づき、第2のスイッチを切り替える切替信号を発生するための切替信号制御回路部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる温度補償型圧電発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の温度補償型圧電発振器は、凹部空間を有するパッケージと圧電振動素子と集積回路素子と蓋体とから主に構成されている。
前記パッケージは、セラミック材料等から成る概略直方体からなり、一方の主面に開口する凹部空間が形成され、前記凹部空間内には前記凹部空間内底面より高い位置となる搭載部が形成されている。
前記圧電振動素子は、前記搭載部に設けられた圧電振動素子搭載パッド上に搭載されている。
前記集積回路素子は、前記パッケージの凹部空間内底面に形成された集積回路素子搭載パッド上に搭載されている。
前記蓋体は、前記パッケージの凹部空間上に載置し、前記パッケージの側壁頂部と固着することにより、凹部空間内を気密封止される構造が知られている。
このような圧電発振器において、前記パッケージの他方の主面の4隅には、それぞれ外部接続用電極端子である電源電圧端子、グランド端子、出力端子、周波数制御端子が一端子ずつ形成されている構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
また、図6は、従来の温度補償型圧電発振器を構成する集積回路素子を示すブロック図である。
図6に示すように、集積回路素子203には、温度補償データを保持するメモリ部、周囲の温度検知する感温センサ部、可変容量ダイオードCv、所定の温度補償データに基づいて所定電圧に変換して可変容量ダイオードCvに供給する3次関数発生回路部、これらの動作を制御するプロセッサ部からなる温度補償制御回路部Xと、負荷容量、発振インバータ及び帰還抵抗からなる発振回路部Yと、増幅インバータからなる増幅回路部Zが具備されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、図7は、従来のインヒビット端子を有する圧電発振器を示す回路図である。
図7に示すように、圧電発振器には、圧電振動素子Xtalと、発振回路となるインバータINV1と負荷容量となるC1、C2と抵抗R、増幅回路となるインバータINV2によって構成されており、増幅回路となるインバータINV2の動作を一時的に停止させるためのインヒビット端子が形成されている構造が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−198310号公報
【特許文献2】特開2003−163542号公報
【特許文献3】実案登録第2597382号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の温度補償型圧電発振器を携帯電話等の電子機器で使用されるモジュールに搭載する際に、温度補償型圧電発振器からの出力が不必要な時に、消費電力を抑えるために温度補償型圧電発振器の電源電圧端子Vddに印加される電源電圧をON/OFFすることで間欠動作を行なっていたが、温度補償型圧電発振器に電源電圧をONした時、温度補償型圧電発振器が無発振状態から安定した発振周波数を出力するまでの所定の立ち上がり時間を要するため、その立ち上がり時間の間、モジュールが起動しないといった課題があった。
また、温度補償型圧電発振器の立ち上がり時間を考慮し、モジュールに搭載されている他の電子部品よりも前に温度補償型圧電発振器に電源電圧を印加して立ち上げるため、温度補償型圧電発振器に消費電力を費やしてしまうといった課題がある。
【0007】
また、例えば図6における増幅回路部Zの増幅インバータと電源電圧端子Vddとの間にスイッチを設け、スイッチをOFFさせることによって、電源電圧端子Vddからの電源電圧を増幅インバータに印加しないことで、増幅回路部Zのみを停止させ、温度補償型圧電発振器の発振させる際には、増幅インバータに電源電圧を印加することですぐに発振周波数を出力することで、立ち上がり時間を短縮させているが、この構成をとるには、温度補償型圧電発振器に図7に示したようなインヒビット端子という新たな電極端子を外部接続用電極端子として圧電発振器の表面に設けなければならないといけない。しかし、温度補償型圧電発振器の小型化が進むと、温度補償型圧電発振器の表面積も縮小してしまい、これ以上新たな電極端子を圧電発振器表面に設けることができないという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、圧電振動素子を搭載した温度補償型圧電発振器の小型化が進んでも、温度補償型圧電発振器に設ける外部接続用の電極端子数を増やすことなく、増幅回路部のみを停止させるインヒビット機能を持たせた温度補償型圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の温度補償型圧電発振器は、圧電振動素子と、集積回路素子と、外部接続用電極端子である電源電圧端子と出力端子とグランド端子と周波数制御機として用いられる端子とインヒビット機能として用いられる端子を兼用する機能端子とを有し、圧電振動素子と集積回路素子を収容するパッケージと、パッケージを気密封止するための蓋体とを備えた温度補償型圧電発振器であって、集積回路素子には、圧電振動素子の共振周波数に基づいて発振信号を出力する第1のインバータと、負荷容量になる可変容量ダイオードを含む発振回路部と、入力される発振信号を増幅し、前記出力端子に出力する第2のインバータを含む増幅回路部と、増幅回路部の第2のインバータと電源電圧端子の接続間に配置される第1のスイッチと、第1のスイッチと機能端子と可変容量ダイオードのカソードとの接続間に配置される第2のスイッチと、温度補償用制御データと、第2のスイッチを切り替えるための切替用制御データとを記憶するためのメモリ部と、メモリ部内の温度補償用制御データに基づき、温度補償を行なう温度補償信号制御回路部と、メモリ部内の切替用制御データに基づき、第2のスイッチを切り替える切替信号を発生するための切替信号制御回路部とを備え、第1のスイッチは、前記機能端子から入力された信号により電源電圧端子と増幅回路部の第2のインバータとの接続を切り替え、第2のスイッチは、切替信号制御回路部からの切替信号により、第1のスイッチ又は可変容量ダイオードのカソードと、機能端子との接続を切り替えるようになることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温度補償型圧電発振器によれば、メモリ部に第2のスイッチを切り替えるための切替用制御データを入れることによって、メモリ部と接続されている切替信号制御回路部から、第2のスイッチを切り替えるための切替信号が発生し、この切替信号により第2のスイッチが切り替わることによって、機能端子がインヒビット機能として用いられる端子となるか周波数制御機能として用いられる端子となるかを自由に切り替えることができる。
例えば、第2のスイッチを切り替えて、機能端子がインヒビット機能として用いられる端子とする場合、機能端子に電圧を印加すると、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧端子からの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部の第2のインバータのみを停止させることができる。それにより、発振回路部は動作したまま、圧電発振器の発振周波数の出力を停止させることができるので、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧を印加すると、発振回路部には、電源電圧が印加されたままである動作した状態なので、すぐに発振周波数を出力することができ、立ち上がり時間を短縮させることが可能となる。
また、圧電発振器の立ち上がり時間を考慮する必要がなく、モジュールに搭載されている他の電子部品よりも前に圧電発振器に電源電圧を印加する必要がないため、圧電発振器にかかる消費電力を低減することができる。
また、機能端子が周波数制御機能として用いられる端子とする場合、機能端子に電圧を印加すると発振回路部の可変容量ダイオードの負荷容量を変動させることによって、圧電振動素子の温度特性を補正させることができる。
このような構成にすることによって、従来の圧電発振器のようなスイッチを動作させるためのインヒビット端子を別途、新たな電極端子として外部接続用電極端子として圧電発振器の表面に設けることなく、インヒビット機能を設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
尚、説明を明りょうにするため説明に不必要な構造体の一部を図示していない。さらに図示した寸法も一部誇張して示している。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器を示す分解斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器をパッケージの他方主面を上に向けた状態を示す斜視図である。
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器100は、圧電振動素子20と、集積回路素子30と、外部接続用電極端子13である電源電圧端子Vddと出力端子OUTとグランド端子GNDと機能端子FUNCとを備え、前記圧電振動素子20と前記集積回路素子30を収容するパッケージ10と、前記パッケージ10を気密封止するための蓋体50とによって構成されている。
【0013】
圧電振動素子20は、例えば水晶素板が用いられ、前記水晶素板の表裏両主面に励振用電極21が被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極21を介して水晶素板に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が例えば四角形となっている。
このような圧電振動素子20は、その両主面に被着されている励振用電極21と凹部空間11内の搭載部16の開口側表面に形成されている圧電振動素子搭載パッド15とを、導電性接着剤40を介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間11の搭載部16に搭載される。また、前記搭載部16は、前記凹部空間11の底面よりも高くなるように形成されている。また、前記圧電振動素子搭載パッド15は、前記パッケージ10の内部の配線導体やビアホール導体等及び凹部空間内底面に形成された集積回路素子接続用電極パッド14を介して、集積回路素子30に電気的に接続される。
【0014】
導電性接着剤40は、シリコーン樹脂の中に導電性フィラーが含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、またはこれらのうちのいずれかの組み合わせを含むものが用いられている。
【0015】
集積回路素子30は、その回路形成面に圧電振動素子20からの発振出力を生成する発振回路等から成る電子回路が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子13のうちの出力端子OUTを介して圧電発振器外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。また集積回路素子30は、パッケージ10の凹部空間11内に形成された集積回路素子搭載パッド14に搭載されている。
【0016】
パッケージ10は、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料から成る絶縁層を複数積層することよって形成されており、前記パッケージ10の一方の主面には、中央域に開口する矩形状の凹部空間11が形成されている。また、凹部空間11を囲繞するパッケージ10の側壁部の開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン12が形成されている。凹部空間11内には、前記凹部空間11の底面から段差より高い位置に設けられる搭載部16と、前記搭載部16に形成される圧電振動素子搭載パッド15と、前記凹部空間11の底面に設けられる集積回路素子搭載パッド12を備えている。更に、前記パッケージ10の他方の主面には外部接続用電極端子13である電源電圧端子Vdd、グランド端子GND、出力端子OUT、機能端子FUNCが設けられている。また、パッケージ10の他方の主面には、書込読込端子INPUT/OUTPUTが設けられている。
【0017】
図1に示すように、集積回路素子搭載パッド14は、前記パッケージ10の前記凹部空間11内底面に形成されている。
また、集積回路素子搭載パッド14は、集積回路素子30に形成されている接続パッドが電気的且つ機械的に接続され、前記パッケージ10内部に形成されている配線導体やビアホール導体等を介して外部接続用電極端子13の電源電圧端子Vdd、グランド端子GND、出力端子OUT、機能端子FUNCに電気的に接続される。
【0018】
図2に示すように、外部接続用電極端子13は、電源電圧端子Vdd、グランド端子GND、出力端子OUT、機能端子FUNCにより構成されており、これらの外部接続用電極端子13は、圧電発振器100をマザーボード等の外部電気回路に搭載する際、半田付け等によって外部電気回路の回路配線と電気的に接続されることとなる。
【0019】
また、パッケージ10の側壁部の頂面に形成された封止用導体パターン12は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等から成る基層の表面にニッケル(Ni)層及び金(Au)層を順次、前記パッケージ10の環状に囲繞する形態で被着させることによって10μm〜25μmの厚みに形成されており、その封止用導体パターン12は、後述する蓋体50を、蓋体50に形成された封止部材51を介して、前記パッケージ10の側壁部の頂面に接合させるためのものであり、かかる封止用導体パターン12に、W若しくはMoから成る基層の表面にNi層及びAu層を順次被着させた構成となしておくことにより、封止用導体パターン12に対する封止部材51の濡れ性を良好とし、圧電発振器100の気密信頼性及び生産性を向上させる。
【0020】
また図1に示すように、蓋体50は従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に成形することによって製作され、前記蓋体50の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面の封止用導体パターン12に対応する箇所に封止部材51である金錫(Au−Sn)層が形成される。金錫(Au−Sn)層の厚みは、10μm〜40μmである。例えば、成分比率が、金が80%、錫が20%のものが使用されている。また、このような封止部材51は、封止用導体パターン12の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。また、封止部材51が薄すぎると当該機能を充分に発揮しない。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の集積回路素子内の回路の一例を示すブロック図である。図4は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の集積回路素子内の回路の他の一例を示すブロック図である。
図5は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器のメモリ部のレジスタマップを示す図である。
図3及び図4に示すように、前記集積回路素子30には、発振回路部Xと、増幅回路部Yと、第1のスイッチSW1と、第2のスイッチSW2と、前記第2のスイッチSW2を切り替えるための切替用制御データと温度補償データとを記憶するためのメモリ部Mと、温度補償用制御データに基づき、温度補償を行なう温度補償信号制御回路部Tと、切替用制御データに基づき、第2のスイッチSW2を切り替える切替信号S2を発生するための切替信号制御回路部Cとが備えられている。
尚、集積回路素子30は、発振回路部Xと、増幅回路部Yと、第1のスイッチSW1と、第2のスイッチSW2と、メモリ部Mと、温度補償信号制御回路部Tと、切替信号制御回路部C等を集積した電子回路を内部に有する。
【0022】
インヒビット機能は、切替信号制御回路部Cからの切替信号S2が第2のスイッチSW2に入力され、第1のスイッチSW1と機能端子FUNCと接続するように切り替えられた状態で、インヒビット機能として用いられる端子INHとなった機能端子FUNCに定電圧を印加すると、増幅回路部の第2のインバータINV2と電源電圧端子Vdd間に配置されているスイッチSW1に信号S1が入力され、増幅回路部の第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddが切り離され、増幅回路部Yの第2のインバータINV2に電源電圧端子Vddからの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部Yの第2のインバータINV2のみが停止する。そのことにより、圧電発振器の発振周波数の出力を停止させる機能のことである。
【0023】
周波数制御機能は、切替信号制御回路部Cからの切替信号S2が第2のスイッチSW2に入力され、発振回路部Xの可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードと機能端子FUNCと接続するように切り替えられた状態で、周波数制御機能として用いられる端子Vcontとなった機能端子FUNCに定電圧を印加すると、発振回路部Xの可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードに接続されており、前記発振回路部Xの可変容量ダイオードCv1、Cv2の負荷容量を変動させることによって、圧電振動素子の温度特性を補正させる機能のことである。
【0024】
切替信号S1は、第2のスイッチSW2が第1のスイッチSW1と機能端子FUNCと接続するように切り替えられた状態で、機能端子FUNCに電圧が印加されることで出力される信号である。
切替信号S2は、書込読込端子INPUT/OUTPUTからメモリ部Mに切替用制御データを入力し記憶され、そのメモリ部から切替信号制御回路部Cが切替用制御データを読み込むことにより、その切替用制御データに基づいて、切替信号制御回路部Cから出力される信号である。
【0025】
切替信号制御回路部Cは、第2のスイッチSW2と接続されている。メモリ部Mに入力された切替用制御データを読み込み、前記切替用制御データに基づき、第2のスイッチSW2に切替信号S2を出力する。
これにより、第2のスイッチSW2は切り替えられ、機能端子FUNCは、インヒビット機能として用いられる端子INHと周波数制御機能として用いられる端子Vcontを兼用することになる。
【0026】
図3及び図4に示すように、第1のスイッチSW1は、電源電圧端子Vddと前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2との接続間に配置されている。
第2のスイッチSW2は、前記第1のスイッチSW1と前記機能端子FUNCと前記切替信号発生回路部Cの接続間に配置されている。
図4に示すように、インヒビット機能として用いる場合、INPUT/OUTPUT端子からメモリ部Mに切替用制御データが入力されると、切替信号発生回路部Cは、前記メモリ部Mから入力された切替用制御データを読み出し、接続されている第2のスイッチSW2に切替信号S2を出力する。
出力された前記切替信号S2により第2のスイッチSW2が切り替わり、機能端子FUNCが第1のスイッチSW1と接続されることによって、機能端子FUNCがインヒビット機能として用いられる端子INHとなる。
機能端子FUNCがインヒビット機能として用いられる端子INHとなることによって、機能端子FUNCからの信号S1により、スイッチSW1がOFFされることになる。従って、増幅回路部Yの第2のインバータINV2に電源電圧端子Vddからの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部Yの第2のインバータINV2のみが停止する。そのことによって、温度補償型圧電発振器の発振を停止することができる。
【0027】
図4に示すように、インヒビット機能として用いられる端子INHとなった機能端子FUNCと第1のスイッチSW1が接続されており、インヒビット機能INHとなった機能端子FUNCに定電圧が印加されることにより、第1のスイッチSW1が切り離された状態になり、電源電圧端子Vddからの定電圧が、前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2に印加されなくなるので、出力端子OUTからの発振信号の出力が停止することになる。
つまり、インヒビット機能として用いられる端子INHとなった機能端子FUNCへの電圧の印加により、圧電振動素子20を振動させつつ、圧電発振器としての出力を停止できるので、圧電発振器の立ち上がり時間を短縮させることができる。
【0028】
また、図3に示すように、周波数制御機能として用いられる端子となった機能端子を用いる場合、書込読込端子INPUT/OUTPUTからメモリ部Mに切替用制御データが入力されると、切替信号制御回路部Cは、前記メモリ部Mに入力された切替用制御データを読み出し、接続されている第2のスイッチSW2に切替信号S2を出力する。
出力された前記切替信号S2により第2のスイッチが切り替わり、機能端子FUNCが発振回路部Xの可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードと接続されることによって、機能端子FUNCが周波数制御機能として用いられる端子Vcontとなる。
図3に示すように、周波数制御機能として用いられる端子Vcontとなった機能端子FUNCに定電圧が印加されることにより、負荷容量が調整される。このように、負荷容量を調整することによって、圧電振動素子20(Xtal)の発振特性を基準周波数に補償する。
即ち、広い温度範囲領域においては、可変容量ダイオードCv1、Cv2に供給される電圧が制御され、圧電振動素子20が有する固有の温度周波数特性を広い温度範囲で平坦化することができる。
【0029】
図3及び図4に示すように、電源電圧端子Vddに印加された電源電圧によって発振回路部Xと増幅回路部Yに定電圧が印加される。尚、図3及び図4に示した発振回路部X及び増幅回路部Yでは、電源電圧端子Vddと第1のインバータINV1、第2のインバータINV2が接続される構成として表している。
【0030】
図3及び図4に示すように、発振回路部Xは、第1のインバータINV1、抵抗R3、可変容量ダイオードCv1、Cv2によって構成されている。
前記発振回路部Xの第1のインバータINV1と電源電圧端子Vddは接続されている。
抵抗R3は、前記第1のインバータINV1の入出力間に並列に接続されている。
圧電振動素子20の一端であるXT1は、第1のインバータINV1の入力側及び抵抗R3の一端と、負荷容量となる可変容量ダイオードCv1のカソードが接続されている。可変容量ダイオードCv1のアノードはグランド端子GNDと接続されている。
圧電振動素子20の他端であるXT2は、第1のインバータINV1の出力側及び抵抗R3の他端と、負荷容量となる可変容量ダイオードCv2のカソードが接続されている。可変容量ダイオードCv2のアノードはグランド端子GNDと接続されている。
機能端子FUNCは、第2のスイッチSW2を介して、可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードが接続されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、増幅回路部Yは、第2のインバータINV2によって構成されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2の入力側は、前記発振回路部Xの第1のインバータ11の出力側と接続されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2の出力側は、出力端子OUTと接続されている。
前記増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddは、スイッチSW1を介して接続されている。
【0032】
図3及び図4に示すように、温度補償用制御データを記憶するためのメモリ部は、PROM又はEEPROMにより構成されている。
温度補償関数である下記の式1に示す3次関数のもととなるパラメータ、例えば3次成分調整値α、1次成分調整値β、0次成分調整値γの各値の温度補償用制御データが書込読込端子INPUT/OUTPUTから入力され、メモリ部Mに保存される。
f=α(T−T+β(T−T)+γ・・・(式1)
尚、fは周波数を示し、αは3次成分の定数を示し、βは1次成分の定数を示し、γは0次成分の定数を示し、T、Tは、温度を示す。
メモリ部Mには、レジスタマップが記憶されている。
レジスタマップとは、各アドレスデータに制御データを入力した場合、温度補償信号制御部及び切替信号制御回路部Cがその制御データを読み取り、信号を出力し、どのような動作を行なうかを示したものである。
例えば、図5に示すように、温度補償電圧0次成分調整値であるアドレスデータ「000」は、温度補償用制御データ「□□□」と関連付けられている。尚、0次成分の定数γに対応する値を2進法、10進法、16進法等に変換された温度補償用制御データが制御データとして入力される。
また、温度補償電圧1次成分調整値であるアドレスデータ「001」は、温度補償用制御データ「○○○」と関連付けられている。尚、1次成分の定数βに対応する値を2進法、10進法、16進法等に変換された温度補償用制御データが制御データとして入力される。 また、温度補償電圧3次成分調整値であるアドレスデータ「010」は、温度補償用制御データ「△△△」と関連付けられている。尚、3次成分の定数αに対応する値を2進法、10進法、16進法等に変換された温度補償用制御データが制御データとして入力される。
また、周波数制御機能として用いられる端子Vcont/インヒビット機能として用いられる端子INHの切替としてのアドレスデータ「011」は、切替用制御データ「◇◇◇」と関連付けられている。尚、2進法、10進法、16進法等に変換された切替用制御データが制御データとして入力される。尚、切替用制御データは、メモリ部Mに保存される。
このレジスタマップは、以下のようにして用いられる。
例えば、周波数制御機能として用いられる端子Vcont/インヒヒビット機能として用いられる端子INHの切替を制御するために、アドレスデータ「011」にインヒビット機能への切替に用いられる切替用制御データが「001」であって、これを入力した場合、第2のスイッチSW2が切り替わり、機能端子FUNCと第1のスイッチSW1が接続されることになる。
また、アドレスデータ「011」に周波数制御機能への切替に用いられる切替用制御データが「010」であり、これを入力した場合、第2のスイッチSW2が切り替わり、機能端子FUNCと可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードと接続されることになる。
【0033】
温度補償信号制御回路部Tは、3次関数発生回路や5次関数発生回路等によって構成されている。例えば、3次関数発生回路の場合は、そのメモリ部Mに入力された温度補償用制御データを読出して、温度補償用制御データから各温度に対して3次関数で導き出された電圧を発生させる。尚、この時の外部の周囲温度は、集積回路素子内の温度センサより得られる。
温度補償信号制御回路部Tは、可変容量ダイオードCv1、Cv2のカソードと接続されており、温度補償信号制御回路部Tからの電圧が印加される。
このように、可変容量ダイオードCv1、Cv2に温度補償信号制御回路部Tからの電圧を印加することよって、圧電振動素子20の周波数温度特性を補正することにより、周波数温度特性が平坦化される。
【0034】
このように本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器により、従来の圧電発振器のようにインヒビット端子INHのような新たな電極端子を設けることなく、機能端子FUNCに周波数制御機能として用いられる端子Vcontとインヒビット機能として用いられる端子INHとを兼用させることにより、増幅回路部Yの第2のインバータINV2と電源電圧端子Vddの間に配置されたスイッチSW1を切り替えることができる。
例えば、第2のスイッチを切り替えて、機能端子がインヒビット機能として用いられる端子とする場合、機能端子に電圧を印加すると、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧端子からの電源電圧が印加されなくなり、増幅回路部の第2のインバータのみを停止させることができる。それにより、発振回路部は動作したまま、圧電発振器の発振周波数の出力を停止させることができるので、増幅回路部の第2のインバータに電源電圧を印加すると、発振回路部には、電源電圧が印加されたままである動作した状態なので、すぐに発振周波数を出力することができ、立ち上がり時間を短縮させることが可能となる。
また、圧電発振器の立ち上がり時間を考慮する必要がなく、モジュールに搭載されている他の電子部品よりも前に圧電発振器に電源電圧を印加する必要がないため、圧電発振器にかかる消費電力を低減することができる。
また、圧電発振器の電極端子数が増えないことから、携帯電話等のモジュールを構成しているマザーボード上に搭載する場合、マザーボード上の配線や圧電発振器を搭載する為の搭載パッドの位置を変更する必要がなく、前記搭載パッドに電圧を印加するタイミング等を調整するように、モジュールを起動させているソフトウエアを変更することで対応することが可能となる。
【0035】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
例えば、前記した本実施形態では、圧電振動素子20を構成する圧電素材として水晶を用いた場合を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0036】
本発明の温度補償型圧電発振器100は、パッケージ10の凹部空間内に圧電振動素子20と、集積回路素子30が収容されて蓋体で気密封止されているが、前記パッケージの一方の主面に形成されている第1の凹部空間内に、圧電振動素子が搭載され、前記パッケージの他方の主面に形成される第2の凹部空間内に集積回路素子が搭載された構造としても構わない。
【0037】
また、本発明の温度補償型圧電発振器100は、パッケージ10の他方の主面に書込読込端子INPUT/OUTPUTが設けられているが、パッケージの側面に書込読込端子INPUT/OUTPUTを設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の集積回路素子内の回路の一例を示すブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器の集積回路素子内の回路の他の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態に係る温度補償型圧電発振器のメモリ部のレジスタマップを示す図である。
【図6】従来の温度補償型圧電発振器を示すブロック図である。
【図7】従来の圧電発振器を示す回路図である。
【符号の説明】
【0039】
10・・・パッケージ
11・・・凹部空間
12・・・封止用導体パターン
13・・・外部接続用電極端子
14・・・圧電振動素子搭載パッド
15・・・集積回路素子搭載パッド
16・・・搭載部
20・・・圧電振動素子
21・・・励振用電極
30・・・集積回路素子
40・・・導電性接着剤
50・・・蓋体
51・・・封止部材
100・・・圧電発振器
X・・・発振回路部
Y・・・増幅回路部
Cv1、Cv2・・・可変容量ダイオード
R1、R2、R3・・・抵抗
INV1・・・第1のインバータ
INV2・・・第2のインバータ
SW1・・・第1のスイッチ
SW2・・・第2のスイッチ
COMP1・・・比較器
Vdd・・・電源電圧端子
FUNC・・・機能端子
Vcont・・・周波数制御機能
INH・・・インヒビット機能
OUT・・・出力端子
GND・・・グランド端子
INPUT/OUTPUT・・・書込読込端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、集積回路素子と、外部接続用電極端子である電源電圧端子と出力端子とグランド端子と周波数制御機能として用いられる端子とインヒビット機能として用いられる端子を兼用する機能端子とを有し、前記圧電振動素子と前記集積回路素子を収容するパッケージと、前記パッケージを気密封止するための蓋体とを備えた温度補償型圧電発振器であって、
前記集積回路素子には、前記圧電振動素子の共振周波数に基づいて発振信号を出力する第1のインバータと、負荷容量になる可変容量ダイオードを含む発振回路部と、
入力される前記発振信号を増幅し、前記出力端子に出力する第2のインバータを含む増幅回路部と、
前記増幅回路部の前記第2のインバータと前記電源電圧端子の接続間に配置される第1のスイッチと、
前記第1のスイッチと前記機能端子と可変容量ダイオードのカソードとの接続間に配置される第2のスイッチと、
温度補償用制御データと、前記第2のスイッチを切り替えるための切替用制御データとを記憶するためのメモリ部と、
前記メモリ部内の前記温度補償用制御データに基づき、温度補償を行なう温度補償信号制御回路部と、
前記メモリ部内の前記切替用制御データに基づき、第2のスイッチを切り替える切替信号を発生するための切替信号制御回路部とを備え、
前記第1のスイッチは、前記機能端子から入力された信号により前記電源電圧端子と前記増幅回路部の前記第2のインバータとの接続を切り替え、
前記第2のスイッチは、前記切替信号制御回路部からの切替信号により、前記第1のスイッチ又は前記可変容量ダイオードのカソードと、前記機能端子との接続を切り替えるようになることを特徴とする温度補償型圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−44608(P2009−44608A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209216(P2007−209216)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】