説明

測位装置、測位方法およびプログラム

【課題】 歩行体の移動に対する追従性が良好で、且つ、高精度な測位を行うことのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】 歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出手段と、前記自律航法用センサの出力に基づいて一歩ごとの移動方向を算出する移動方向算出手段(ステップS1)とを備え、移動量算出手段は、自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度(θ)を算出するブレ角度算出手段(S2〜S4)を有し、歩幅データの値をブレ角度(θ)が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出するようにした(S5)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自律航法により歩行体の測位を行う測位装置、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、自律航法により歩行体の測位を行う測位装置がある。このような測位装置では、通常、歩行動作に伴う上下動を検出して歩数をカウントし、この歩数と予め設定されている歩幅とを乗算することで移動量を算出する。そして、地磁気センサや加速度センサの出力から移動方向を算出して、上記移動量と移動方向とからなる移動ベクトルを基準位置の位置データに積算していくことで歩行体の位置を測定する。
【0003】
自律航法の測位に使用される歩幅データは、通常、次のような測定処理により歩行体に合った値が設定される。すなわち、任意の2地点間を歩行体に直進させるとともに、その間の歩数を計数する。そして、当該2地点間の距離を歩数で除算して、この算出された値を歩幅データとして設定する。
【0004】
また、本願発明に関連する従来技術として、特許文献1には、歩行体の測位を行う装置において、一歩の時間や足を踏み出す際の加速度の大きさ等から歩行状態に応じた歩幅の修正を行うことで、自律航法による測位精度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−97722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
歩行体の位置を自律航法の測位によって追従性良く求めるには、歩行体が一歩進むごとに移動地点の測位を行うのが良い。しかしながら、一歩ごとに測位を実行すると、計測されたトータルの移動距離が実際の移動距離よりも小さくなるという測位誤差が生じるという課題があった。すなわち、歩行体がA地点からB地点まで移動する間、自律航法の測位を行っていたとする。この場合、歩行体はA地点からB1地点まで移動したという測位結果が得られ、計測による移動距離(A→B1)が実際の移動距離(A→B)よりも短くなる。
【0007】
この発明の目的は、自律航法により一歩ごとに測位を行う場合において、移動量の誤差を適宜小さくすることで、歩行体の移動に対する追従性が良好で、且つ、高精度な測位を行うことのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、
歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段と、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出手段と、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出手段と、
を備え、
前記移動方向算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
移動量算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出手段を有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴とする測位装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記移動量算出手段は、
前記歩幅データが示す歩幅をW、前記ブレ角度をθ、補正後の歩幅をDとして、
D = W/ cosθ
の関係式に準じて一歩ごとの移動量を算出することを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記自律航法用センサは、
加速度を検出する加速度センサおよび地磁気を検出する地磁気センサを有し、
前記ブレ角度算出手段は、
前記加速度センサにより検出された水平方向の複数歩分の加速度変化に基づき平均的な進行方向を算出し、前記加速度センサにより検出された水平方向の一歩分の加速度変化に基づき一歩の移動方向を算出し、前記平均的な進行方向と前記一歩の移動方向との差異を前記ブレ角度として算出することを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記歩幅データは、歩行体が2地点間を直進した際に、当該2地点間の距離を当該2地点間の移動に要した歩数で除算した値に設定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段を備え、
前記衛星測位手段の測位により得られた基準地点の位置データに、前記移動量算出手段により算出された移動量、および、前記移動方向算出手段により算出された移動方向からなる移動ベクトルを積算していくことで各移動地点の測位を行うことを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、
測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段と、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出手段と、
前記歩幅算出手段により算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶する歩幅データ記憶手段と、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位手段と、
を備え、
前記歩幅算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出手段を有し、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴とする測位装置である。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の測位装置において、
前記歩幅算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき前記2地点間の歩数を計数する歩数計数手段を有し、
前記2地点間の距離をD、前記歩数をN、前記ブレ角度をθ、歩幅をWとして、
W =( D/ N)/ cosθ
の関係式に準じて前記歩幅を算出することを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、前記歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段とを用いて、前記歩行体の測位を行う測位方法であって、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出ステップと、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出ステップと、
を含み、
前記移動方向算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
前記移動量算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出ステップを有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴としている。
【0016】
請求項9記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段とを用いて、自律航法により前記歩行体の測位を行う測位方法であって、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出ステップと、
前記歩幅算出ステップにより算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶手段に記憶する歩幅データ記憶ステップと、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位ステップと、
を備え、
前記歩幅算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出ステップを含み、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴としている。
【0017】
請求項10記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、前記歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段とが接続されたコンピュータに、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出機能と、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出機能と、
を実現させるとともに、
前記移動方向算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
前記移動量算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出機能を有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴としている。
【0018】
請求項11記載の発明は、
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段とに接続されたコンピュータに、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出機能と、
前記歩幅算出機能により算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶手段に記憶する歩幅データ記憶機能と、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位機能と、
を実現させるとともに、
前記歩幅算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出機能を含み、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明に従うと、一歩ごとの移動量および移動方向を算出して歩行体の位置を一歩ごとに測定していくので、歩行体の移動に対して追従性良く歩行体の位置を求めていくことができる。さらに、移動方向の一歩ごとのブレ角度を考慮して一歩ごとの移動量が求められるので、移動量の計測誤差が小さくなって精度の高い測位を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態の測位装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態における歩幅データの算出方法を説明する図である。
【図3】歩幅データをそのまま歩幅として用いた場合にトータルの移動距離が短く計測される現象を説明する図である。
【図4】一歩ごとの移動方向を算出する方法を説明する図である。
【図5】第1実施形態における移動ベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態における全体測位処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態における歩幅データの算出方法を説明する図である。
【図8】第2実施形態における移動ベクトル算出処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の測位装置の全体構成を示すブロック図である。
【0023】
この測位装置1は、歩行体に保持されて移動地点を測位するとともに、各移動地点の位置データを履歴として保存して、地図画像上に現在の移動地点をリアルタイムで表わして表示する装置である。
【0024】
この測位装置1は、自律航法用センサである3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16と、GPS(全地球測位システム)衛星から信号を受信するGPS受信アンテナ13と、GPS衛星から受信した信号を復調し且つ現在位置の測位演算を行う衛星測位手段としてのGPS受信部14と、画像表示を行う表示部17と、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データが格納されるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)12と、自律航法用センサの出力に基づき移動方向および移動量を算出して位置データを求める自律航法制御処理部20と、自律航法の測位により過去に求められた一連の位置データをGPSの測位結果に基づいて補正する自律航法誤差補正処理部21と、測位結果の位置データが時系列に記憶されていく位置データ記憶部22と、各地の地図画像のデータが格納された地図データベース18等を備えている。上記構成のうちCPU10と自律航法制御処理部20によりプログラムを実行するコンピュータが構成される。
【0025】
GPS受信部14は、CPU10からの測位指令に応じてGPS衛星の信号を受信するとともに、所定の測位演算を行って現在地点の位置データを算出し、CPU10へ送る。
【0026】
3軸地磁気センサ15は、互いに直交する3軸方向の地軸の大きさをそれぞれ検出するセンサである。3軸加速度センサ16は、互いに直交する3軸方向の加速度をそれぞれ検出するセンサである。これら3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16のセンサ信号はデジタル変換された後にCPU10を介して自律航法制御処理部20に送られる。
【0027】
自律航法制御処理部20は、CPU10を補助するための演算回路であり、3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16の計測データと、予め設定されている歩幅データとに基づいて、歩行体の一歩の歩行動作ごとに移動方向と移動量とを算出して移動位置の位置データを求めるものである。移動方向と移動量の算出方法については後に詳述する。
【0028】
自律航法誤差補正処理部21は、CPU10を補助するための演算回路であり、GPSによる間欠的な測位が行われた際に、GPSの正確な位置データに基づいて、自律航法の測位によって得られている一連の位置データをそれぞれ補正する。具体的には、A地点とB地点でGPSにより正確な位置データから取得され、A地点からB地点への移動時に自律航法の測位によって一連の位置データが取得されている場合に、これら一連の位置データを結んだ移動軌跡の始端と終端が、GPSの測位結果であるA地点とB地点の位置データにそれぞれ合致するように、この移動軌跡の全体をシフトさせるように各地点の位置データを補正する。このような補正により、自律航法の測位により得られた一連の位置データを、全体的に誤差の少ない位置データに補正することができる。
【0029】
EEPROM12には、制御プログラムの一つとして、自律航法による連続的な測位とGPSによる間欠的な測位とを繰り返し実行していく全体測位処理のプログラムが格納されている。また、EEPROM12は、歩幅データ記憶手段として機能し、制御データの一つとして、ユーザの歩幅を表わす歩幅データ12aが格納されている。
【0030】
[歩幅データの算出方法]
図2には、第1実施形態における歩幅データの算出方法を説明する図を示す。この図において楕円のマークによりユーザの一歩ごとの足取りを表わしている。
【0031】
この実施形態において、歩幅データ12aは次のように算出されてEEPROM12に記憶される。すなわち、図2に示すように、先ず、地点Aと地点BとでGPSにより正確な位置データが取得され、ユーザが地点Aと地点Bとの間を直進する移動がなされているとする。この場合、GPSの測位結果に基づき地点A,B間の距離Dを算出し、自律航法制御処理部20の演算結果から地点A,B間のユーザの歩数N(図2では20歩)を算出し、次式(1)により歩幅Wを算出する。
W = D/ N ・・・ (1)
【0032】
CPU10は、測位処理の中で上記のような直進運動が得られた場合、或いは、設定処理の中で要請によりユーザに上記のような直進運動を行わせた場合に、上記のような歩幅Wの算出処理を行って、この歩幅Wを表わす歩幅データ12aをEEPROM12に記憶させる。
【0033】
[移動距離が短く計測される現象の説明]
ここで、上記のように得られた歩幅データ12aをそのまま歩幅として用いて、自律航法により一歩ごとの測位を行った場合に、トータルの移動距離が短く計測される現象の説明を行う。
【0034】
図3には、歩幅データをそのまま歩幅として用いて自律航法の測位を行った場合にトータルの移動距離が短く計測される現象を説明する図を示す。同図(a)は実際の移動を示したもの、(b)は自律航法の測位結果により表わされる移動を示したものである。この図において楕円マークによりユーザの一歩ごとの足取りを表わしている。
【0035】
図3(a),(b)に示すように、ユーザは左右の足の踏込み方向の違いにより直進している場合でも移動方向に左右のブレが生じる。そのため、図3(a),(b)に点線で示すように、自律航法の測位を一歩ごとに実行すると移動方向の左右のブレにより、ユーザが直進している場合でも一歩ごとにジグザグに移動しているような測位結果が得られる。そして、一歩ごとの移動量を歩幅Wとして自律航法の測位を行っていれば、図3(b)のような測位結果が得られる。
【0036】
しかしながら、EEPROM12に設定される歩幅データ12aの値(歩幅W)は、図3(a)に示すように、直進方向に沿った一歩ごとの移動量“W”に相当する。そのため、図3(a)の実際の移動パターンと図3(b)の測位結果が表わす移動パターンとの比較から分かるように、上記のように自律航法の測位を行うと、移動経路がジグザグに求められる分、トータルの移動距離D1が実際の移動距離Dよりも短く計測されてしまう。
【0037】
[移動ベクトルの算出方法]
図4には、第1実施形態の測位装置1において一歩ごとの移動方向を算出する方法を説明する図を、図5には、第1実施形態の測位装置1における一歩ごとの移動ベクトル算出処理のフローチャートを示す。
【0038】
図4のグラフは、3軸加速度センサ16の出力のうち水平方向の加速度を時系列にプロットしたもので、同図(a)は左足を踏み出す一歩の動作期間に得られる加速度のグラフ、(b)は右足を踏み出す一歩の動作期間に得られる加速度のグラフである。
【0039】
第1実施形態において自律航法制御処理部20は、次のような演算処理を行って一歩ごとの移動ベクトルを求める。先ず、自律航法制御処理部20は、3軸加速度センサ16のセンサ出力を継続的に入力し、このセンサ出力の時間平均から重力方向を検出する。そして、センサ出力の鉛直方向成分と水平方向成分とを分離する。また、センサ出力の鉛直方向成分から歩行時の上下動を検出して一歩ごとの動作期間を特定する。
【0040】
そして、上記の処理に基づきセンサ出力から水平方向成分で一歩の動作期間の測定データを抽出することで、左足を踏み出した際には、図4(a)に示すような計測データが得られ、右足を踏み出した際には、図4(b)に示すような計測データが得られる。このような計測データが得られたら、自律航法制御処理部20は、例えば、水平方向成分の原点と原点から一番離れたプロットとを結ぶ方向R1,R2を一歩ごとの移動方向として算出する(図5のステップS1:移動方向算出手段)。この移動方向の算出時には、3軸地磁気センサ15のセンサ出力に基づき、3軸加速度センサ16の3軸の各向きと方位とが対応づけられて、移動方向を方位表現に変換することが可能となる。
【0041】
なお、一歩ごとの移動方向の算出方法は、上記のように原点と原点から一番離れたプロットとを結ぶ方向を移動方向とするものに限られない。例えば、上記の一歩分の計測データから回帰直線を求めて、この回帰直線の方向を移動方向として求めたり、鉛直方向の加速度が減少する期間において水平方向成分の加速度が最大になったときの加速度方向を移動方向として求めたり、或いは、垂直方向の加速度が減少する一定期間の水平方向成分の加速度を平均した加速度方向を移動方向として求めるなど、種々の変形例を適用することができる。
【0042】
次に、自律航法制御処理部20は、直前の4歩の歩行動作で上記のように算出された4つの移動方向がそれぞれ直進と判断されているか(後述の平均進行方向とのなす角度がしきい値以下か)を判別し(ステップS2)、直進と判断された直前4歩分の移動方向が有ればこれら4歩分の移動方向の平均を計算して平均進行方向とする(ステップS3)。図4(a),(b)において、符号R0により平均進行方向を示している。同図では3軸加速度センサ16のy軸方向と平均進行方向R0とが重なっているが、方向はユーザの進行方向に応じて色々に変化する。
【0043】
続いて、自律航法制御処理部20は、今回一歩の移動方向(図4では方向R1,R2)と平均進行方向R0とのなす角度θ(図4では角度θ1,θ2)を計算し(ブレ角度算出手段)、この角度θがしきい値以下(例えば20°以下)であるか判別する(ステップS4)。この判別は、この角度θが左右の足の踏込み方向の違いによる移動方向のブレ角度なのか、それとも進行方向を変更したことによる角度変化なのかを区別するものである。
【0044】
判別の結果、角度θがしきい値以下であり足の踏込み方向の違いによるブレ角度であると判別されたら、図3(a),(b)で説明した歩幅の誤差を解消するため、一歩の移動量H1(ジグザグ歩行に沿った一歩ごとの歩幅)を歩幅データ12aの値(ジグザグ歩行を平均した直進移動と見なして算出された一歩の歩幅W;図2を参照)と上記ブレ角度θとから次式(2)のように求める(ステップS5;移動量算出手段)。
H1 = W/ cosθ ・・・ (2)
【0045】
一方、ステップS2の判別処理で、直前の4歩の移動方向のデータが未取得であったり、直前4歩の移動方向の何れかが直進と判断されていなかった場合には、平均進行方向R0とブレ角度θとを求めることが出来ないので、今回一歩の移動量を歩幅データ12aの値とする(ステップS6)。
【0046】
また、ステップS4の判別処理で、今回一歩の移動方向と平均進行方向R0とのなす角度θがしきい値を超えていれば、角度θはブレ角度でなく進行方向の変更によるものであると判断して、ブレ角度が不明なので、今回一歩の移動量を歩幅データ12aの値とする(ステップS6)。
【0047】
そして、上記のように求められた移動方向と移動量とから移動ベクトルを生成して(ステップS7)、この移動ベクトル算出処理を完了とする。
【0048】
上記のように歩幅データ12aの値をブレ角度θに応じて長く補正して一歩の移動量を算出しているので、図3に示したように一歩ごとの自律航法の測位によりトータルの移動距離が短く計測されるといった測位誤差を低減することができる。
【0049】
[全体測位処理]
次に、測位装置1により実行される全体測位処理の制御手順について説明する。
【0050】
図6には、この全体測位処理のフローチャートを示す。
【0051】
全体測位処理では、自律航法の測位が連続的に行われる一方、GPSによる測位が間欠的に行われて、GPSの測位により自律航法の測位の基準地点(始点)を定めたり、自律航法の測位により得られた一連の位置データが補正されるようになっている。
【0052】
全体測位処理が開始されると、先ず、CPU10は、次にGPSの測位(GPS衛星の信号受信)を実行するまでの計時時間をリセットし(ステップS11)、3軸加速度センサ16と3軸地磁気センサ15のセンサ出力をサンプリングして自律航法制御処理部20へ送る(ステップS12)。そして、GPSの測位(GPS衛星の信号受信)を行う計時時間を経過したか判別する(ステップS13)。
【0053】
その結果、GPSの測位を行う計時時間に達していなければ、自律航法制御処理部20により上述の移動ベクトル算出処理によりユーザの一歩分の移動ベクトルを算出させ(ステップS14)、この移動ベクトルを前回の測位により得られた位置データに加算して現在の位置データを算出させる(ステップS15)。これらステップS14,S15の処理により自律航法測位手段が構成される。そして、CPU10は自律航法制御処理部20から現在の位置データを受けて位置データ記憶部22に時系列に記憶させる(ステップS16)。さらに、CPU10は地図上に現在位置を表わす内容の描画処理を行って表示部17にその画像表示を行わせる(ステップS17)。そして、再び、ステップS12に戻る。
【0054】
つまり、GPSの測位を行う間欠的な時間に達するまでは、ステップS12〜S17の処理が繰り返されて、自律航法による測位が連続的に実行されていく。そして、ユーザの一歩ごとの移動地点の測位が行われて、この移動地点の変化が地図画像上にリアルタイムで表示されていく。一歩ごとの測位を行っているため、ユーザが交差点を曲った場合にも、追従性良くこの進行方向の変化が表れる位置データが求められて、地図画像中にその移動地点の表示が行われるようになっている。
【0055】
一方、ステップS13の判別処理で、GPSの測位を行う間欠的な計時時間の経過と判別されたら、CPU10の処理はステップS12〜S17のループ処理を抜ける。そして、CPU10はGPS受信部14に信号受信の指令を発行してGPS衛星の信号を受信させるとともに(ステップS18)、測位指令を発行して現在位置を算出させる(ステップS19)。そして、GPS受信部14から位置データを受け取る。
【0056】
GPS受信部14から位置データを受け取ったら、次に、CPU10はGPS受信部14からこの位置データの測位精度を表わす精度情報を読み出して、所定以上の精度が得られているか判別する(ステップS20)。ここで、精度情報としては、例えば、DOP(Dilution of Precision)値、或いは、GST(GNSS Pseudorange Error Statistics)を適用することができる。そして、所定以上の精度があれば次に移行する一方、所定以上の精度がなければ、このGPSの位置データは使用せずにステップS12に戻る。
【0057】
所定以上の精度があって次に移行したら、GPSの測位が初回目で始点の登録が未だされていないか判別し(ステップS21)、未だ始点が登録されていなければ、今回のGPSの測位により得られた位置データを始点として登録して(ステップS22)、ステップS12に戻る。一方、始点が登録済みであれば、今回のGPSの測位により得られた位置データを終点として登録する(ステップS23)。
【0058】
ここで、始点および終点とは、GPSの測位により位置データが取得された地点で、且つ、連続的な自律航法の測位により移動ベクトルが逐次積算されて位置データが求められている区間の始まりと終わりの地点に相当する。始点が登録された後には、この始点を基準地点として、自律航法の測位処理で算出された移動ベクトルが始点の位置データに逐次積算されていくことで、自律航法の測位の一連の位置データが求められていく。
【0059】
終点の登録を行ったら、次に、CPU10は、位置データ記憶部22に記憶されている始点から終点にかけた一連の位置データを自律航法誤差補正処理部21に送って、これら一連の位置データ(移動軌跡)の補正処理、ならびに、可能であれば歩幅データの補正処理を行わせる(ステップS24)。
【0060】
ステップS24の処理のうち位置データの補正処理では、先ず、一連の位置データを時系列に結んだ移動軌跡の始端と終端が、GPS測位により得られた始点と終点の位置と重なるように、上記移動軌跡を全体的に伸縮又は縮小ならびに回転させるようにシフトさせる処理を行う。そして、このシフト後の移動軌跡の各地点の位置データを補正後の位置データとして一連の位置データを修正する。さらに、一歩ごとのジグザグの移動軌跡は、その中央を通る滑らかな線により移動軌跡が表わされるように一連の位置データを修正する。
【0061】
また、ステップS24の処理のうち歩幅データの補正処理では、始点から終点にかけてユーザが直進したと判断できるか判別し、直進と判断できる場合に、始点から終点までの距離をその間の歩数で除算して、新たな歩幅データ12aを算出する。そして、これをEEPROM12に記憶させる。
【0062】
次に、CPU10は、GPSの測位を行った時間を記憶して次にGPSの測位を実行する計時時間をリセットする(ステップS25)。さらに、続く自律航法の測位で、直線にGPSの測位により得られた位置データを始点とすべく、ステップS23で終点として登録した位置データを始点として登録しなおす(ステップS26)。
【0063】
始点が登録しなおされたら、ステップS12に戻って、再び、次のGPSの測位時間になるまで、ステップS12〜S17のループ処理により自律航法の測位が繰り返し実行されていく。
【0064】
以上のように、この第1実施形態の測位装置1によれば、自律航法の測位において一歩の歩行動作ごとに測位が行われて位置データが算出されるようになっている。従って、ユーザが交差点を曲ったりした場合にも、追従性良くこの進行方向の変化が表わされる位置データが求められて、地図画像中にその移動地点が表示されるようになっている。
【0065】
また、一歩ごとに自律航法の測位を行うと、従来ではトータルの移動距離が実際の移動距離より短くなるような測位誤差が含まれてしまうところ、この第1実施形態の測位装置1によれば、移動方向のブレ角度θに応じて歩幅データ12aの値が補正されて、一歩の移動量が求められるようになっている。従って、上記のような測位誤差が低減されて高精度な自律航法の測位が実現される。
【0066】
具体的には、移動方向のブレ角度θに応じて歩幅データ12aの歩幅Wを上記の式(2)のように補正して一歩の移動量H1を求めているので、左右の足の踏込み方向の違いに基づく移動方向のブレ角度θに起因した測位誤差を適宜除去することができる。
【0067】
また、この第1実施形態の測位装置1によれば、移動方向は3軸加速度センサ16の水平方向成分の計測データから求めるとともに、移動方向のブレ角度θは、複数歩分の移動方向を平均して得た平均移動方向と、今回の一歩の移動方向との差異から求めるようにしているので、比較的容易に移動方向のブレ角度θを算出することができる。
【0068】
また、この第1実施形態の測位装置1では、歩幅データ12aは、2地点間をユーザが移動した際の当該2地点間の距離を移動歩数で除算した値に設定されているので、従来と同様の方法により容易に歩幅の設定が可能である。また、この第1実施形態の測位装置1では、GPSの測位により基準地点の位置データを取得し、この位置データに自律航法用センサの出力に基づき算出される一歩ごとの移動ベクトルを積算していくことで自律航法の測位結果となる位置データを求めていくようになっている。従って、自律航法の測位によって絶対座標における位置データが求められるようになっている。
【0069】
[第2実施形態]
第2実施形態の測位装置1は、自律航法の測位中に一歩ごとの移動量を移動方向のブレ角度θを考慮して補正するのではなく、ユーザの歩幅を求める際に上記ブレ角度θを考慮して歩幅を算出し、その値を歩幅データ12aとして設定するようにしたものである。第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0070】
[歩幅データの算出方法]
図7には、第2実施形態における歩幅データの算出方法を説明する図を示す。同図において楕円のマークによりユーザの一歩ごとの足取りを表わしている。
【0071】
第2実施形態では、歩幅データ12aは、次のように算出されてEEPROM12に記憶される。すなわち、図7に示すように、先ず、地点Aと地点BとでGPSにより正確な位置データが取得され、ユーザが地点Aと地点Bとの間を直進する移動がなされているとする。
【0072】
第2実施形態では、上記のようなユーザの移動の間に、第1実施形態の自律航法の測位処理で行ったように、一歩ごとのブレ角度θ1,θ2・・・を算出する。さらに、これらのブレ角度θ1,θ2・・・の平均値である平均ブレ角度θを求める。なお、これらのブレ角度θ1,θ2・・・は、ほぼ同一の角度になるはずなので、何れかを代表させて平均ブレ角度θとしても良い。
【0073】
そして、CPU10は、GPSの測位結果に基づき地点A,B間の距離Dを算出し、自律航法制御処理部20の演算結果から地点A,B間のユーザの歩数N(図2では19歩)を算出し(歩数計数手段)、次式(3)により歩幅Wを算出する。
W = W1 / cosθ =(D/N)/cosθ ・・・ (3)
【0074】
図7(b)に示すように、W1は平均進行方向に沿った一歩分の移動量であり、Wはジグザグな移動方向に沿った一歩分の移動量を表わすことになる。そして、この歩幅Wを歩幅データ12aとしてEEPROM12に記憶する。上記の歩幅Wを算出するプログラムおよびCPU10により歩幅算出手段が構成される。
【0075】
[移動ベクトルの算出方法]
図8には、第2実施形態の移動ベクトル算出処理のフローチャートを示す。
【0076】
第2実施形態では、歩幅データ12aに一歩ごとのジグザグな移動方向に沿った移動量を表わす歩幅が設定されるので、自律航法の測位中に移動方向のブレ角度θを算出して歩幅を補正する必要がない。
【0077】
従って、第2実施形態の移動ベクトル算出処理では、第1実施形態と同様に、先ず、一歩分の移動方向を算出したら(ステップS31)、そのまま一歩分の移動量として歩幅データ12aの値を適用し(ステップS32)、そして、この移動方向と移動量とから移動ベクトルを生成して(ステップS33)、この移動ベクトル算出処理を終了する。
【0078】
[全体測位処理]
全体測位処理では、歩幅データ12aを補正する処理(図6のステップS24;歩幅算出手段)において上記の歩幅データの算出方法が適用され、移動ベクトル算出処理(図6のステップS14)で上記方法が適用されて、その他は第1実施形態と同様の測位処理が実現される。
【0079】
以上のように、この第2実施形態の測位装置1によれば、左右の足の踏込み方向の違いに起因する一歩ごとの移動方向のブレ角度θが考慮されて歩幅データ12aが設定されるようになっている。従って、この歩幅データ12aを用いて一歩ごとの移動量を求めることで、自律航法の測位を一歩ごとに行った場合でも、トータルの移動距離が短く計測されるという測位誤差が低減されて、高精度な自律航法の測位が実現される。
【0080】
具体的には、一歩ごとの移動方向のブレ角度θに応じて歩幅Wを上記の式(3)のように求めているので、この歩幅Wによって一歩ごとの移動量が適宜算出されて、一歩ごとの自律航法の測位を高い精度で実現することができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、第1実施形態で一歩の移動量を算出するのに歩幅データの値をブレ角度θの余弦値で除算して求めているが、この数式で算出するのでなく、ブレ角度θに応じて類似の移動量が得られる関数式に従って求めるようにしても良い。また、第1実施形態では歩幅データを一定としているが、重力方向の加速度変化の大小等に応じて歩幅データの値を変動させた上で、ブレ角度θに応じた算術を行って一歩の移動量を算出するようにしても良い。
【0082】
また、第2実施形態では、平均進行方向に沿った一歩の幅W1をブレ角度θの余弦値で除算して歩幅Wを求めているが、この数式で算出するのでなく、ブレ角度θに応じて類似の歩幅が得られる関数式に従って求めるようにしても良い。
【0083】
また、上記実施形態では、一歩ごとのブレ角度θを求めるのに、加速度センサの出力に基づき平均進行方向と一歩ごとの移動方向との差異から求めているが、ジャイロスコープを用いて一歩ごとの左右のローリング動作を計測することでブレ角度を求めるようにしても良い。
【0084】
その他、実施の形態で示した細部は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 測位装置
10 CPU
11 RAM
12 EEPROM
12a 歩幅データ
13 GPS受信アンテナ
14 GPS受信部
15 3軸地磁気センサ
16 3軸加速度センサ
17 表示部
18 地図データベース
20 自律航法制御処理部
21 自律航法誤差補正処理部
22 位置データ記憶部
R0 平均進行方向
R1,R2 移動方向
θ1,θ2 ブレ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、
歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段と、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出手段と、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出手段と、
を備え、
前記移動方向算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
移動量算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出手段を有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記移動量算出手段は、
前記歩幅データが示す歩幅をW、前記ブレ角度をθ、補正後の歩幅をDとして、
D = W/ cosθ
の関係式に準じて一歩ごとの移動量を算出することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記自律航法用センサは、
加速度を検出する加速度センサおよび地磁気を検出する地磁気センサを有し、
前記ブレ角度算出手段は、
前記加速度センサにより検出された水平方向の複数歩分の加速度変化に基づき平均的な進行方向を算出し、前記加速度センサにより検出された水平方向の一歩分の加速度変化に基づき一歩の移動方向を算出し、前記平均的な進行方向と前記一歩の移動方向との差異を前記ブレ角度として算出することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記歩幅データは、歩行体が2地点間を直進した際に、当該2地点間の距離を当該2地点間の移動に要した歩数で除算した値に設定されていることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段を備え、
前記衛星測位手段の測位により得られた基準地点の位置データに、前記移動量算出手段により算出された移動量、および、前記移動方向算出手段により算出された移動方向からなる移動ベクトルを積算していくことで各移動地点の測位を行うことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項6】
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、
測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段と、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出手段と、
前記歩幅算出手段により算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶する歩幅データ記憶手段と、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位手段と、
を備え、
前記歩幅算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出手段を有し、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴とする測位装置。
【請求項7】
前記歩幅算出手段は、
前記自律航法用センサの出力に基づき前記2地点間の歩数を計数する歩数計数手段を有し、
前記2地点間の距離をD、前記歩数をN、前記ブレ角度をθ、歩幅をWとして、
W =( D/ N)/ cosθ
の関係式に準じて前記歩幅を算出することを特徴とする請求項6記載の測位装置。
【請求項8】
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、前記歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段とを用いて、前記歩行体の測位を行う測位方法であって、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出ステップと、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出ステップと、
を含み、
前記移動方向算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
前記移動量算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出ステップを有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴とする測位方法。
【請求項9】
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段とを用いて、自律航法により前記歩行体の測位を行う測位方法であって、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出ステップと、
前記歩幅算出ステップにより算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶手段に記憶する歩幅データ記憶ステップと、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位ステップと、
を備え、
前記歩幅算出ステップは、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出ステップを含み、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴とする測位方法。
【請求項10】
歩行体に保持されて歩行運動と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、前記歩行体の歩幅を表わす歩幅データを記憶した歩幅データ記憶手段とが接続されたコンピュータに、
前記自律航法用センサの出力と歩幅データとに基づいて歩行体の移動量を算出する移動量算出機能と、
前記自律航法用センサの出力に基づいて移動方向を算出する移動方向算出機能と、
を実現させるとともに、
前記移動方向算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出し、
前記移動量算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩毎のブレ角度を算出するブレ角度算出機能を有し、
前記歩幅データの値を前記ブレ角度が大きくなるに従って歩幅が大きくなるように補正して一歩ごとの移動量として算出する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
歩行体に保持されて歩行動作と方位に関する検出を行う自律航法用センサと、測位用衛星から信号を受けて測位を行う衛星測位手段とに接続されたコンピュータに、
前記衛星測位手段によりそれぞれ測位される2地点の間を前記歩行体が移動する間に、前記自律航法用センサの出力に基づき歩行動作に関する計測を行うとともに、前記2地点の位置データと歩行動作に関する計測結果とに基づいて前記歩行体の歩幅を算出する歩幅算出機能と、
前記歩幅算出機能により算出された歩幅を表わす歩幅データを記憶手段に記憶する歩幅データ記憶機能と、
前記自律航法用センサの出力に基づき一歩ごとの移動方向を算出するとともに、前記自律航法用センサの出力と前記歩幅データとに基づき一歩ごとの移動量を算出して、算出された前記移動方向および前記移動量に基づき測位を行う自律航法測位機能と、
を実現させるとともに、
前記歩幅算出機能は、
前記自律航法用センサの出力に基づき左右の足の踏込み方向の違いに起因する移動方向の一歩ごとのブレ角度を算出するブレ角度算出機能を含み、
前記2地点の間を前記ブレ角度に従ってジグザグに曲った経路を移動したものとして当該経路に沿った一歩ごとの歩幅を算出することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−88253(P2012−88253A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236959(P2010−236959)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】