説明

測位装置

【課題】無駄な電力消費を減らすことができ、且つ、装置の使用中に移動速度が変化した場合でも、適宜な間隔でGPS測位処理を実行することのできる測位装置を提供する。
【解決手段】電源用のバッテリと、このバッテリにより駆動されw、GPS衛星からの測位用電波を受信して現在位置を測定する第1の測位手段とを備えた測位装置である。そして、当該測位装置における装置本体の移動速度を検出する移動速度検出手段(S1,S2)と、この移動速度検出手段により検出された移動速度が所定値以下か否かを判別する判別手段(S3)と、この判別手段により前記移動速度が所定値以下と判別された場合に、前記第1の測位手段を間欠的に駆動させる間欠駆動手段(S11〜S15)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GPSを利用して現在位置を測定するバッテリ駆動型の測位装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、GPS(Global Positioning System)を利用して現在位置を測定したり、測定した現在位置の情報を利用して目的地までのナビゲーションを行ったりするGPS測位装置が知られている。また、バッテリが搭載されて持ち運び可能なように小型化された携帯型のGPS測位装置も知られている。
【0003】
また、本願発明に関連する従来技術として、次のような技術の開示があった。例えば、特許文献1には、車載用ナビゲーション装置において、車速センサを有し、車が停止しているときにはGPS測位が行われても現在位置情報の更新を行わないようにした技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、車載用ナビゲーション装置において、車速センサを有し、車が停止しているときにGPS測位が行われた場合に、今回の測位推定誤差が前回の測位推定誤差より大きければ、現在位置情報の更新を行わないようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平5−26680号公報
【特許文献2】特開平8−271607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリで駆動する携帯型のGPS測位装置は、例えば歩行中や車両移動中など多様な状況で利用することができる反面、電源をバッテリに頼っているため長時間連続して使用することができないという課題がある。特に、GPS衛星から測位用電波を受信したり、測位用電波に基づいて測位演算を行って位置情報を求める処理などは、大きな電力を消費する。そのため、GPSの測位処理を連続的に行った場合に、バッテリの電源が比較的早く減少してしまう。
【0006】
そこで、GPSの測位処理を連続的に行うのではなく、例えば、所定の時間間隔を開けて間欠的に実行するようにしたり、このGPS測位処理の間欠時間をユーザにより設定可能としたGPS測位装置も開発されている。しかしながら、携帯型のGPS測位装置は、歩行時の使用から車両移動中の使用など、使用中に移動速度が大きく変ることがあるため、例えば低速移動時に合わせてGPS測位処理の間欠時間を長く設定していると、高速移動時に測位間隔が開きすぎるという課題が生じる。逆に、高速移動時に合わせてGPS測位処理の間欠時間を短く設定していると、低速移動時に測位間隔が必要以上に狭くなって無駄な電力消費が大きくなるという課題が生じる。
【0007】
この発明の目的は、無駄な電力消費を減らすことができ、且つ、装置の使用中に移動速度が変化しても、適宜な間隔でGPS測位処理を実行することのできる測位装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
電源用のバッテリと、
このバッテリにより駆動され、GPS衛星からの測位用電波を受信して現在位置を測定する第1の測位手段と、
を備えた測位装置において、
当該測位装置における装置本体の移動速度を検出する移動速度検出手段と、
この移動速度検出手段により検出された移動速度が所定値以下か否かを判別する判別手段と、
この判別手段により前記移動速度が所定値以下と判別された場合に、前記第1の測位手段を間欠的に駆動させる間欠駆動手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記間欠駆動手段は、
前記移動速度検出手段により検出された前記所定値以下の速度に応じて前記第1の測位手段の駆動間隔を変化させることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
時間間隔の計時を行うカウント手段を備え、
前記間欠駆動手段は、前記カウント手段が設定された時間間隔を計時したことに基づいて前記第1の測位手段を駆動する構成であることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記判別手段により前記移動速度が所定値以下と判別されない場合に前記第1の測位手段を駆動する通常駆動手段を備え、
前記間欠駆動手段は、
前記通常駆動手段が前記第1の測位手段を駆動する間隔よりも長い間隔を開けて前記第1の測位手段を駆動する構成であることを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記間欠駆動手段により前記第1の測位手段の駆動が停止される間欠期間においては、前記第1の測位手段へ供給される少なくとも一部の電源が停止される構成であることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記装置本体の移動距離および移動方向を測定するためのセンサ手段を有し、このセンサ手段の出力に基づき求められた移動距離および移動方向に従って、前回測定された位置を変位させることで現在の位置を求める第2の測位手段を備え、
前記間欠駆動手段により前記第1の測位手段の駆動が停止される間欠期間においては、前記第2の測位手段による現在位置の測定が行われることを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の測位装置において、
前記センサ手段は、
前記装置本体の加速度を検出する加速度センサと、
前記装置本体の向きを検出する方向センサと、
を有し、
前記第2の測位手段は、
前記加速度センサと前記方向センサの出力から各方向成分の加速度を積分演算して各方向成分の移動速度を算出する第1の演算手段と、
この演算された各方向成分の移動速度を積分演算して各方向成分の移動距離を算出する第2の演算手段と、
を有することを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項7記載の測位装置において、
前記移動速度検出手段は、
前記センサ手段および前記第1の演算手段から構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、低速移動中にGPS測位処理が間欠的に行われることで、バッテリ電源の無駄な消費を減らすことができるとともに、装置の使用中に移動速度が大きく変化した場合でも、それぞれの状況に応じて適宜な間隔でGPS測位処理を実行させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態の測位装置としてのナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【0019】
この実施形態のナビゲーション装置1は、例えば持ち運び可能に小型化されて現在位置の測定や簡易的なナビゲーション動作を行うPND(Personal Navigation Device)である。このナビゲーション装置1は、図1に示すように、複数のGPS衛星からの測位用電波を受信するGPS衛星受信アンテナ20と、測位用電波から各GPS衛星との擬似距離や衛星軌道を求めこれらから装置1の現在位置を算出するGPS衛星受信装置21と、3軸方向の地磁気を検出する方向センサとしての地磁気センサ11と、3軸方向の加速度を検出する加速度センサ12と、高低差を正確に求めるために気圧の検出を行う気圧センサ13と、機器の全体的な制御を行うCPU15(中央演算処理装置)と、現在位置や地図の表示ならびに道案内の表示等を出力する表示部14と、加速度データや方位データから移動速度や移動量の演算処理を専用に行う移動量演算装置16と、気圧の変化から高度の演算を行う気圧変化演算装置17と、不揮発性メモリにブロック化された多数の地図データが格納してなる地図データベース18と、地図表示を行う際の補正処理を行う地図情報補正処理装置19と、各部へ動作電源を供給する電源22等を備えている。
【0020】
CPU15は、図示略のRAM(Random Access Memory)を作業用のメモリ空間に使用しながら、図示略の不揮発性メモリに格納された制御プログラムを実行して、機器の全体的な制御処理を行うものである。
【0021】
移動量演算装置16は、地磁気センサ11と加速度センサ12の出力から、3軸方向の加速度を求め、重力加速度を除いて少なくとも水平方向の2方向成分の加速度データを時間で積分していくことで移動速度を算出する構成である(第1演算手段)。また、各方向成分の移動速度データを時間で積分していくことで、各方向成分の移動量を算出するようにも構成されている(第2演算手段)。積分処理は、一定のサンプリング周波数でサンプリングされた加速度データや速度データを、積み重ねるように加算していく処理方法が採用されており、このような処理は、GPS衛星から測位用電波を受信したり測位用の演算処理を行うのと比較して、負荷が軽く、それゆえ消費電力も低いものになっている。
【0022】
気圧変化演算装置17は、例えば、GPS測位情報に対して気圧の検出によって追加的な高度の情報を算出したり、検出された気圧の変化から垂直方向の移動速度や移動量を算出したりするものである。
【0023】
地図情報補正処理装置19は、例えば、表示座標系の変化に伴って地図データベースのブロック単位の地図情報をつなぎ合わせたり回転させたりして表示用の地図データを作成するものである。また、例えば、高速移動中には道路と重なる位置に現在位置があると想定されることから、地図情報に基づいて現在位置を測位誤差範囲で補正したりする処理を行うものである。
【0024】
GPS衛星受信アンテナ20は、面型の受信アンテナと、ローノイズアンプやバンドパスフィルタを備え、電源22からのGPS電源がGPS衛星受信装置21を介して入力されて受信動作を行うようになっている。
【0025】
GPS衛星受信装置21は、GPS衛星の受信電波から測位符号(例えば、C/A(Coarse and Acquisitions)コードやP(Precise)コード)、並びに、航法メッセージの復調処理を行ったり、これら測位符号や航法メッセージから所定の測位用演算を行って現在位置を特定するものである。
【0026】
電源22は、例えば、一次電池や二次電池などのバッテリから構成される。電源22は、例えば、CPU15からの電源制御信号によってGPS衛星受信アンテナ20やGPS衛星受信装置21へGPS電源を投入したり停止したりすることが可能になっている。なお、車両で使用する際には、車両のバッテリ電源を導いてこれを使用する構成を組み合わせた形態としても良い。
【0027】
次に、上記構成のナビゲーション装置1の動作について説明する。
【0028】
図2には、CPU15や移動量演算装置16により実行される測位処理のフローチャートを示す。
【0029】
この測位処理は、ナビゲーション装置1の動作モードが測位モードに移行されたときに開始され、測位モード中を通して実行される処理である。先ず、概要を説明する。この測位処理は、ナビゲーション装置1の移動速度が高速である場合には、GPS測位処理をほぼ連続的に実行しながらナビゲーション処理を行う一方、移動速度が低速である場合には、その速度に応じた時間間隔を開けてGPS測位処理を間欠的に実行させ、且つ、GPS測位処理が停止される間欠期間中には他のセンサ出力に基づいて自律測位処理を行って、その測位情報に基づいてナビゲーション処理を行うようにしたものである。
【0030】
図2のフローチャートにおいて、ステップS1〜S3の処理はナビゲーション装置1の速度を確認するための処理、ステップS4〜S8の処理はGPS測位処理、ステップS9,S10の処理は現在位置の表示等を行うナビゲーション処理、ステップS11〜S15,S19の処理はGPS測位処理を停止させる間欠期間を計時するための処理、ステップS16〜S18は自律測位の処理である。
【0031】
そして、高速移動中には、ステップS1〜S10のループ処理が繰り返し実行されることで、GPS測位処理がほぼ連続的に行わせるナビゲーション処理が実行されるし、ステップS1〜S3の速度判断で低速移動中と判断されたら、所定の間欠期間だけステップS1〜S3,S11〜S18,S9〜S10のループ処理が繰り返し実行されて自律測位によるナビゲーション処理が行われる。一方、1回の間欠期間が計時されるごとに、ステップS15からステップS19,S4〜S8へと分岐されて間欠的なGPS測位処理が実行されるようになっている。
【0032】
次に、この測位処理について詳細に説明する。
【0033】
[移動速度の確認処理]
先ず、ステップS1〜S3では、ナビゲーション装置1の移動速度を確認するための処理が行われる。すなわち、ステップS1において、地磁気センサ11と加速度センサ12とから検出データを取り込み、続くステップS2においてこれらの検出データを移動量演算装置16に送ることでナビゲーション装置1の移動速度を演算させる。
【0034】
移動速度の演算処理においては、例えば、ナビゲーション装置1を手に持って移動する際など、手の振りに伴う速度のブレなどをノイズとして消去できるような演算処理が実施される。例えば、一定期間(例えば2秒〜10秒など)に得られた連続的な速度データの移動平均などを演算して、これをナビゲーション装置1の移動速度の算出値として求めたりする。
【0035】
ナビゲーション装置1の移動速度が算出されたら、続くステップS3で、この移動速度の絶対値が所定の速度Vthより大きいか否かを判別する。このしきい値となる所定の速度Vthとは、例えば、自動車での移動と歩行による移動とを区別する値に設定されたりする。
【0036】
その結果、算出されたナビゲーション装置1の移動速度が所定速度Vthよりも大きければ、高速移動中と判断してGPS測位処理をほぼ連続的に行うためにステップS4に移行するが、所定速度Vthよりも大きくなければ、低速移動中でありGPS測位処理を間欠的に行うためにステップS11に移行する。
【0037】
[GPS測位処理]
ステップS4〜S8のGPS測位処理は次のように実行される。先ず、電源制御を行ってGPS衛星受信装置21にGPS電源を投入し(ステップS4)、次に、GPS衛星受信装置21に測位用電波の受信処理を行わせ(ステップS5)、続いて、GPS衛星受信装置21に測位演算を行わせて測位情報を取得する(ステップS6)。次いで、この測位情報でRAM中の現在位置の情報を更新し(ステップS7)、その後、電源制御を行ってGPS衛星受信装置21への電源供給を停止する(ステップS8)。
【0038】
[ナビゲーション処理]
測位処理が行われてステップS9,S10のナビゲーション処理に移行すると、順次、地図データベース18と地図情報補正処理装置19とから得た表示用の地図情報に現在位置を表わす画像データを重ね合わせる処理を行い(ステップS9)、この表示データを表示部14に送って表示出力を行わせる(ステップS10)。
【0039】
自動車での移動中など高速移動時には、ステップS3の処理で高速移動と判別されることで、上述したステップS1〜S10のループ処理が繰り返し実行され、それにより、GPS測位処理がほぼ連続的に実行されて、高速移動に対応した測位間隔が維持されるようになっている。
【0040】
[間欠時間の計時処理]
一方、例えば、歩行中など移動速度が低速になってステップS3の判別処理でNo側へ移行した場合には、CPU15はステップS11〜S15の間欠時間を計時する処理を実行する。間欠時間を計時する処理では、先ず、ステップS11において、直前に算出されたナビゲーション装置1の移動速度と、それより前に算出された移動速度とが、同一速度であるか否かを判別する。なお、この判別処理においては、一定の許容幅を含めた範囲で同一か否かを判別するようにしても良い。
【0041】
ここで、速度が一定の許容幅を超えて変化していた場合には、ステップS12に移行して、速度に応じた間欠時間を決定する。ここで、間欠時間は、速度が低ければ比較的長い時間に、速度が高ければ比較的短い時間となるように決定される。例えば、GPS測位処理がほぼ一定の距離間隔ごとに行われるように速度に応じた時間間隔を演算して、この時間間隔を間欠時間として設定するようにしても良いし、或いは、複数段階の間欠時間を設けておき、速度が低くなるに従って間欠時間が段階的に長くなるように設定しても良い。
【0042】
算出速度に応じて間欠時間が決定されたら、順次、内部カウンタに間欠時間に対応したカウント上限値を設定し(ステップS13)、この内部カウンタのカウントアップを開始させ(ステップS14)、カウンタ値が上限に達したか否かを判別する(ステップS15)。なお、カウントアップの開始命令は、既に、カウントアップが実行されている際には無視される。
【0043】
ステップS15の判別処理で、カウンタ値が上限値に達していなければ、まだ、間欠時間が経過していないとして、自律測位の処理を行うためにステップS16に移行する。一方、上限値に達していれば、間欠時間が経過したものとして、ステップS19でカウンタをクリアした後、GPS測位処理を実行するためにステップS4にジャンプする。
【0044】
[自律測位処理]
間欠時間に達してなくステップS16に移行したら、先ず、当該ステップにおいて未だ取り込んでいない気圧センサの検出データを取り込む。自律測位では、相対的な移動ベクトルを求めるために、地磁気センサ11や加速度センサ12の検出データが必要となるが、これらの検出データは直前のステップS1で取り込み済みであるため、ここでは、これらの取り込みは省略される。
【0045】
次いで、ステップS17において、直前のステップS16,S1で取り込んだ検出データを用いて相対的な移動ベクトルを求める演算処理を行う。ここで、移動量演算装置16は、ステップS2の演算処理によって、既に各方向成分の速度データを算出済みなので、ステップS17においては、これら各方向成分の速度データを積分処理することで、各方向成分の移動距離データ(相対的な移動ベクトル)を算出する。ここで、垂直方向の移動距離を算出する際には、気圧データを用いてより正確な垂直方向の移動距離を算出するようにしても良い。
【0046】
そして、相対的な移動ベクトルが求められたら、続くステップS18において、図示略のRAM中に記憶されている現在位置のデータに、相対的な移動ベクトルを加算することで、現在位置のデータを更新する。この更新された現在位置データが自律測位処理で測定された測位情報となる。これらステップS16〜S18の自律測位処理が済んだら、ステップS9にジャンプして自律測位に基づくナビゲーション処理が行われる。
【0047】
上記のような処理により、歩行時など低速移動中には、上述したステップS1〜S3,S11〜S18のループ処理が繰り返し実行されて、それにより、間欠時間の計時中にGPS測位が停止されるとともに、自律測位処理とその測位情報に基づくナビゲーション処理とが繰り返し実行されるようになっている。また、間欠時間が計時されるごとに、1回のGPS測位処理(ステップS4〜S8)が間欠的に実行されるようになっている。
【0048】
以上のように、この実施形態のナビゲーション装置1によれば、低速移動時にGPS測位処理が時間を開けて間欠的に実行されるようになるので、GPSによる測位間隔が無駄に狭くなって、バッテリ電源が無駄に消費されてしまうといった事態が回避される。それにより、ナビゲーション装置1の連続使用時間を延ばすことができる。
【0049】
また、高速移動時にはほぼ連続的にGPS測位処理が実行されるのに対して、低速移動時には移動速度に応じた間欠時間を設けてGPS測位処理が間欠的に実行されるので、高速移動中に測位間隔が開きすぎたり、低速移動中に測位間隔が必要以上に狭くなったりせず、どのような移動速度であっても適宜な測位間隔でGPSの測位処理を実行することができる。
【0050】
また、GPS測位処理が実行されない間欠期間中は、加速度センサや地磁気センサの検出データに基づく自律的な測位処理が実行されるので、例えば、歩行中に地図表示を拡大して細かな移動も確認したいような場合でも、詳細なナビゲーション処理を実現することができる。
【0051】
また、ナビゲーション装置1の相対的な移動ベクトルを求めるのに、先ず、加速度センサ12と地磁気センサ11の検出データから各方向成分の加速度データを求め、次に、これらを積分処理して各方向成分の移動速度データを求め、さらに、これらを積分処理して各方向成分の移動距離データを求めるようにしているので、比較的少ない負荷で移動ベクトルを求めることができ、それにより、少ない消費電力で自律的な測位処理が実現されている。
【0052】
また、GPS衛星受信装置を通常駆動とするか間欠駆動とするか判別するのにナビゲーション装置1の移動速度を求める必要があるが、この移動速度を求める構成を、自律測位に必要な地磁気センサ11や加速度センサ12並びに移動量演算装置16からなる構成と兼用させているので、移動速度を検出する専用の構成を追加する場合と比較して、部品点数の削減や製造コストの低減並びに装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0053】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、気圧センサ13と気圧変化演算装置17とにより、垂直方向の移動量の検出を行うようにしているが、この構成を省略するようにしても良い。また、地磁気センサ11や加速度センサ12の出力に基づき移動速度や移動量を算出するのに、CPU15とは別の専用の移動量演算装置16を設けているが、この移動量演算装置16を省略してCPU15により同様の演算を行わせるように構成しても良い。また、方向センサとして地磁気センサを例示したが、例えば、ジャイロスコープなどその他の方向センサを用いることもできる。
【0054】
また、上記実施形態では、GPS測位処理が実行されない間欠期間に、CPU15による電源制御(図2のステップS4,S8)によってGPS衛星受信装置21へのGPS電源が停止されて消費電力が削減される構成を示したが、例えば、GPS衛星受信装置21やGPS衛星受信アンテナ20に消費電力が低減される非動作モードの設定端子を設けておき、この設定端子に制御信号が入力されることで間欠期間中にこれらの消費電力が低減される構成を採用することもできる。
【0055】
また、GPS衛星受信装置21やGPS衛星受信アンテナ20の構成として、測位動作が終了したら、自動的に電波受信や測位演算を行う回路の動作が停止して、当該回路での消費電力が低減される構成を採用することもできる。このような構成とすることで、例えば、図2のステップS4,S8の電源制御をCPU15が実行することなく、GPS測位処理が実行されない間欠期間に、GPS衛星受信装置21やGPS衛星受信アンテナ20の消費電力を自動的に低減することができる。
【0056】
また、上記実施形態では、高速移動中にGPS測位処理がほぼ連続的に実行される構成を示したが、高速移動中でも少しの間欠期間を挿んでGPS測位処理が実行される構成としても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、車両移動中においてもバッテリの電源22によりナビゲーション装置1が動作すると説明したが、車両移動時には車両のバッテリから電源を導いてGPS衛星受信装置21やGPS衛星受信アンテナ20が駆動されるようにしても良く、それにより、GPS測位処理を連続的に実行してもバッテリ電源の大幅な消耗を回避することが可能となる。
【0058】
その他、ナビゲーション装置の構成や測位処理の処理方法など、実施の形態で示した細部は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態の測位装置としてのナビゲーション装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のナビゲーション装置により実行される測位処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 ナビゲーション装置
11 地磁気センサ
12 加速度センサ
15 CPU
16 移動量演算装置
18 地図データベース
20 GPS衛星受信アンテナ
21 GPS衛星受信装置
22 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源用のバッテリと、
このバッテリにより駆動され、GPS衛星からの測位用電波を受信して現在位置を測定する第1の測位手段と、
を備えた測位装置において、
当該測位装置における装置本体の移動速度を検出する移動速度検出手段と、
この移動速度検出手段により検出された移動速度が所定値以下か否かを判別する判別手段と、
この判別手段により前記移動速度が所定値以下と判別された場合に、前記第1の測位手段を間欠的に駆動させる間欠駆動手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記間欠駆動手段は、
前記移動速度検出手段により検出された前記所定値以下の速度に応じて前記第1の測位手段の駆動間隔を変化させることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
時間間隔の計時を行うカウント手段を備え、
前記間欠駆動手段は、前記カウント手段が設定された時間間隔を計時したことに基づいて前記第1の測位手段を駆動する構成であることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記判別手段により前記移動速度が所定値以下と判別されない場合に前記第1の測位手段を駆動する通常駆動手段を備え、
前記間欠駆動手段は、
前記通常駆動手段が前記第1の測位手段を駆動する間隔よりも長い間隔を開けて前記第1の測位手段を駆動する構成であることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
前記間欠駆動手段により前記第1の測位手段の駆動が停止される間欠期間においては、前記第1の測位手段へ供給される少なくとも一部の電源が停止される構成であることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項6】
前記装置本体の移動距離および移動方向を測定するためのセンサ手段を有し、このセンサ手段の出力に基づき求められた移動距離および移動方向に従って、前回測定された位置を変位させることで現在の位置を求める第2の測位手段を備え、
前記間欠駆動手段により前記第1の測位手段の駆動が停止される間欠期間においては、前記第2の測位手段による現在位置の測定が行われることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項7】
前記センサ手段は、
前記装置本体の加速度を検出する加速度センサと、
前記装置本体の向きを検出する方向センサと、
を有し、
前記第2の測位手段は、
前記加速度センサと前記方向センサの出力から各方向成分の加速度を積分演算して各方向成分の移動速度を算出する第1の演算手段と、
この演算された各方向成分の移動速度を積分演算して各方向成分の移動距離を算出する第2の演算手段と、
を有することを特徴とする請求項6記載の測位装置。
【請求項8】
前記移動速度検出手段は、
前記センサ手段および前記第1の演算手段から構成されることを特徴とする請求項7記載の測位装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−38799(P2010−38799A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203685(P2008−203685)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】