説明

測定対象物の物性値検知方法、及び、測定対象物の物性値検知システム

【課題】 超音波ビームを用いて、物性値を精度良く検知できる測定対象物の物性値検知方法、及び、測定対象物の物性値検知システムを提供する。
【解決手段】 測定対象物の物性値検知方法は、空中に放射された超音波ビームUSを、測定対象物30に透過させた後に受波し、受波した超音波ビームの強度UCから、測定対象物の物性値APを検知し、互いに周波数の異なる超音波ビームについて、強度と測定対象物の物性値との相関関係G1,G2,G3に基づいて、各周波数f1,f2,f3の超音波ビームについての強度UC1,UC2,UC3から、それぞれ測定対象物の周波数別物性値AP1,AP2,AP3を得、各々の周波数別物性値に基づき、測定対象物の物性値を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物を透過させた後に受波した超音波ビームの強度から、その測定対象物の物性値を検知する物性値検知方法、及び、物性値検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薄板形状の測定対象物の厚みを測定する場合には、マイクロメータ、ダイヤルゲージ等で測定対象物を直接挟んで測定する手法や、測定対象物を透過させた放射線、超音波等の透過強度に基づいて、測定対象物の厚みを検知する手法が知られている。
このような手法を用いた測定対象物の厚みの測定方法のうち、特許文献1には、超音波を用いた測定方法、即ち、対象物に対して超音波を送信し、透過した超音波の受信強度に基づいて対象物の厚みを測定する超音波厚み測定方法が記載されている。この特許文献1の超音波厚み測定方法では、対象物に放射する超音波の波長が、温度による音速の変化に伴って変化しても、その波長に関する超音波の測定条件が同一となる周波数を含むように、周波数の設定範囲を定め、この設定範囲にわたって周波数を連続的に変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この特許文献1では、超音波(超音波ビーム)の周波数を設定範囲内で連続的に変えてはいるが、これは音速の変化に伴って変化した測定条件を補正するためのものであり、実質上、超音波(超音波ビーム)の周波数について、単一の周波数(例えば、40kHz付近)を用いて、対象物(測定対象物)の厚み(物性値)を測定しているといえる。しかしながら、このように、単一の周波数の超音波(超音波ビーム)を用いた場合には、十分な測定精度が得られない虞がある。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、超音波ビームを用いて、物性値を精度良く検知できる測定対象物の物性値検知方法、及び、測定対象物の物性値検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、空中に放射された超音波ビームを、測定対象物に透過させた後に受波し、受波した上記超音波ビームの強度から、上記測定対象物の物性値を検知する測定対象物の物性値検知方法であって、互いに周波数の異なる上記超音波ビームについて、それぞれ予め得ておいた、上記強度と上記測定対象物の物性値との相関関係に基づいて、各周波数の上記超音波ビームについての上記強度から、それぞれ上記測定対象物の周波数別物性値を得、各々の上記周波数別物性値に基づき、上記測定対象物の上記物性値を特定する測定対象物の物性値検知方法である。
【0007】
上述の測定対象物の物性値検知方法では、超音波ビームの強度と測定対象物の物性値との相関関係に基づいて、各周波数の超音波ビームの強度から、それぞれ測定対象物の周波数別物性値を得る。そして、それら各々の周波数別物性値に基づいて物性値を特定する。このため、単一の周波数の、1つの超音波ビームに基づく物性値よりも、測定対象物の物性値を精度良く検知することができる。
【0008】
なお、物性値としては、例えば、測定対象物の厚み、密度、基体に塗布された塗膜などの目付量(単位面積あたりの重量)等が挙げられる。
【0009】
さらに、上述の測定対象物の物性値検知方法であって、前記測定対象物は、集電箔上に活物質層を形成してなる、電池用の電極板であり、前記物性値は、上記活物質層の目付量である測定対象物の物性値検知方法とすると良い。
【0010】
ところで、集電箔に活物質層を形成した電極板(正電極板及び負電極板)において、活物質層の目付量(単位面積あたりの重量)を測定するにあたっては、例えば、マイクロメータやダイヤルゲージ等の、測定対象物に接触させて測る計測工具を用いることも考えられる。しかし、集電箔や活物質層の厚みが薄い(例えば、100μm程度)電極板では、測定が困難であり、また、測定に時間がかかる。
これに対し、上述の測定対象物の物性値検知方法によれば、非接触で活物質層の目付量を検知するので、電極板を傷つけることもなく容易に、かつ、短時間で検知することができる。
【0011】
また、本発明の他の態様は、空中に超音波ビームを放射する放射部を有する超音波放射手段と、上記超音波ビームを受波し、電気信号に変換する受波部を有する超音波受波手段と、を備え、上記超音波受波手段で受波した、上記放射部と上記受波部との間に配置した測定対象物を透過させた上記超音波ビームの強度から、上記測定対象物の物性値を検知する測定対象物の物性値検知システムであって、上記超音波放射手段は、上記放射部から、互いに周波数の異なる上記超音波ビームを放射可能とされてなり、上記測定対象物を透過させて受波した各周波数の上記超音波ビームについて、それぞれ予め得ておいた、上記強度と上記測定対象物の上記物性値との相関関係に基づいて、各周波数の上記超音波ビームの上記強度から、上記測定対象物の周波数別物性値をそれぞれ得る周波数別物性値取得手段と、各々の上記周波数別物性値に基づき、上記測定対象物の上記物性値を特定する物性値特定手段と、を備える測定対象物の物性値検知システムである。
【0012】
上述の測定対象物の物性値検知システムでは、上述の周波数別物性値取得手段と物性値特定手段とを備えるので、互いに周波数の異なる超音波ビームに基づく、複数の周波数別物性値を用いて、測定対象物の物性値を特定することができる。従って、単一の周波数の超音波ビームに基づいて物性値を求めるものよりも、測定対象物の物性値を精度良く検知することができる。
【0013】
さらに、上述の測定対象物の物性値検知システムであって、前記測定対象物は、集電箔上に活物質層を形成してなる、電池用の電極板であり、前記物性値は、上記活物質層の目付量である測定対象物の物性値検知システムとすると良い。
【0014】
上述の測定対象物の物性値検知システムでは、非接触で活物質層の目付量を検知するので、マイクロメータ等の計測工具を用いて計測するのに比べ、電極板を傷つけることもなく容易に、かつ、短時間に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の電池の斜視図である。
【図2】実施形態の電極板(正電極板,負電極板)の斜視図である。
【図3】実施形態にかかる物性値検知装置の説明図である。
【図4】周波数の異なる超音波ビームの強度と、測定対象物(正電極板,負電極板)の目付量との相関関係を示す検量線である。
【図5】実施形態の測定対象物の物性値検知方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態)
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、本実施形態にかかる測定対象物の物性値検知装置100、及び、これを用いた物性検知方法では、測定対象物として電池1用の電極板(後述する正電極板30及び負電極板40)を用いる。そこで、まず、電池1について、図1,2を参照しつつ説明する。
この電池1は、いずれも長手方向DAに延びる帯状の正電極板30、負電極板40及びセパレータ20を備え、これらを捲回した捲回型の発電要素10をなすリチウムイオン二次電池である(図1参照)。なお、電池1は、図1に示すように、発電要素10を電池ケース80に収容してなる。
【0017】
この電池ケース80は、共にアルミニウム製の電池ケース本体81及び封口蓋82を有する。このうち電池ケース本体81は有底矩形箱形であり、この電池ケース80と発電要素10との間には、樹脂からなり、箱状に折り曲げた絶縁フィルム(図示しない)が介在させてある。また、封口蓋82は矩形板状であり、電池ケース本体81の開口を閉塞して、この電池ケース本体81に溶接されている。この封口蓋82には、発電要素10と接続している正極集電部材91及び負極集電部材92のうち、それぞれ先端に位置する正極端子部91A及び負極端子部92Aが貫通しており、図1中、上方に向く蓋表面82aから突出している。これら正極端子部91A及び負極端子部92Aと封口蓋82との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材95が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋82には矩形板状の安全弁97も封着されている。
【0018】
また、発電要素10は、帯状の正電極板30及び負電極板40が、帯状のセパレータ20を介して扁平形状に捲回されてなる捲回型である(図1参照)。この発電要素10の最外側及び最内側には、セパレータ20のみが捲回されている。なお、この発電要素10の正電極板30及び負電極板40はそれぞれ、クランク状に屈曲した板状の正極集電部材91又は負極集電部材92と接合している(図1参照)。このうち、ポリエチレンからなるセパレータ20には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合有機溶媒に溶質(LiPF6)を添加してなる電解液(図示しない)が含浸されている。
【0019】
また、薄板形状の正電極板30は、図2の斜視図に示すように、長手方向DAに延びる帯状で、アルミニウム製のアルミ箔38と、このアルミ箔38の両主面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に形成・配置された2つの正極活物質層31,31とを有している。
この正極活物質層31は、LiCoO2からなる正極活物質粒子(図示しない)と、アセチレンブラックからなる導電材(図示しない)と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)からなる結着材(図示しない)とを含む。
【0020】
一方、薄板形状の負電極板40も、図2に示すように、長手方向DAに延びる帯状で銅製の銅箔48と、この銅箔48の両主面上に、それぞれ長手方向DAに延びる帯状に形成・配置された2つの負極活物質層41,41とを有している。
このうち負極活物質層41は、グラファイトからなる負極活物質粒子(図示しない)、及び、PVDFからなる結着材(図示しない)を含む。
【0021】
次に、本実施形態にかかる物性値検知装置100について、図3を参照しつつ説明する。
この物性値検知装置100は、超音波ビームUSを放射する超音波放射部110と、その超音波ビームUSを受波し、これを電気信号(具体的には超音波ビームUSの大きさに応じた振幅、かつ、超音波ビームUSの周波数と同じ周波数の交流信号)に変換する超音波受波部120と、これら超音波放射部110及び超音波受波部120を保持する、コの字形状のアーム130と、超音波放射部110及び超音波受波部120を制御すると共に電気信号を処理する制御部150とを有する。
【0022】
このうち、制御部150は、CPU、ROM、RAMを含む公知のマイクロコンピュータ(図示しない)を有し、記憶されているプログラムに従って、超音波放射部110及び超音波受波部120を制御する等の処理を行う。
また、超音波放射部110は、超音波振動子を有し、超音波ビームUSを放射する放射部111と、超音波振動子を所定の周波数で駆動する駆動回路116とからなる。なお、超音波ビームUSは、進行に伴いビーム径が小さくなる収束超音波ビームとされている。このため、超音波受波部120で受波される超音波ビームUSの強度をより高くすることができ、測定対象物(正電極板30,負電極板40)の物性値(このうちの、正極活物質層31,負極活物質層41の目付量)をより確実に検知できる。また、超音波放射部110の駆動回路116は、制御部150の指示に従って、放射部111を駆動する駆動電圧の周波数f1,f2,f3を所定時間毎(例えば1秒毎)に順に切り換えるので、放射部111からは、周波数f1,f2,f3の超音波ビームUSが順に放射される。
【0023】
一方、超音波受波部120は、放射部111に対向して配置され、超音波ビームUSを受波するとその強度に応じた振幅の電気信号を発生する超音波振動子を有する受波部121、及び、この超音波振動子の出力(電気信号)を、その大きさに応じた電圧値を有する直流電圧信号に変換する受波回路126からなる。
【0024】
さらに、制御部150では、前述したように超音波放射部110(駆動回路116)に対し、周波数の切換を指示するほか、超音波受波部120から出力される、受波した超音波ビームUSの強度に応じた直流電圧信号の電圧値をA/D変換して取り込む。そして、この信号の電圧値の大きさから、測定対象物(正電極板30,負電極板40)の物性値(正極活物質層31,負極活物質層41の目付量)の検知を行う。
【0025】
なお、この制御部150には、各周波数f1,f2,f3毎に、受波部121で受波した超音波ビームUSの強度UC(直流電圧信号の大きさ)と、測定対象物(正電極板30,負電極板40)の周波数別物性値(正極活物質層31,負極活物質層41の目付量AP)との相関関係を示す検量線(図4参照)のデータがそれぞれ記憶されている。このため、この検量線を用いて、各周波数f1,f2,f3毎に得られた強度(後述する強度UC1,UC2,UC3)から、周波数別物性値(後述する周波数目付量AP1,AP2,AP3)を得ることができる。
この検量線は、予め、物性値が既知の試料を用い、この物性値と透過させた超音波ビームの強度UCとの関係を、様々な物性値の試料について得ておき、これらから求めたものである。
【0026】
但し、本実施形態では、検量線を以下のようにして得た。
ところで、集電箔上の活物質層の目付量(厚みや密度)を変えたものを多数用意するのは難しく、これについての目付量と透過する超音波ビームの強度との関係を得るのが難しい。また、透過した超音波ビームの強度は、電極板程度の厚さや密度の物質においては、物質によらず、単位面積あたりの重量に応じて変化する。そこで、試料として、電極板、即ち、集電箔上に活物質層を形成したものを用いるのに代えて、厚みの異なる金属箔を用いた。これについて単位面積あたりの重量と透過した超音波ビームの強度との関係を得る方が容易だからである。
【0027】
試料として、正電極板30の集電箔として用いるアルミ箔38と同材質で、10〜100μmの厚みの金属箔を5μm間隔で用意した。そして、各厚みの金属箔について、第1周波数f1(100kHz)の超音波ビームを放射し、透過させた超音波ビームの強度UCと単位面積あたりの重量との関係を得る。なお、正電極板30に用いるアルミ箔38の厚み(従って、単位面積あたりの重量)は一定であるので、この分を差し引けば、強度UCと正極活物質層31の目付量APとの関係を得たことになる。
具体的には、横軸を超音波ビームの強度UC1とし、縦軸を目付量AP1としたグラフに、各試料(金属箔)について、強度と目付量とで与えられる点をプロットする。そして、プロットした複数の点に基づいて、第1周波数f1について、超音波ビームの強度をxとしたとき目付量をyとして得る2次式(y=ax2+bx+c(a,b,cは定数))の形式の近似式(検量線G1)を得ておく。
さらに、同様にして、第2周波数f2(200kHz)及び第3周波数f3(400kHz)の超音波ビームについて、2次式で示す検量線G2,G3をそれぞれ得ておく(図4参照)。
また、負電極板40に用いる銅箔48と同材質の金属箔についても、同様にして、第1周波数f1,第2周波数f2,第3周波数f3の超音波ビームについて、2次式の形式の検量線をそれぞれ得ておく。
【0028】
上述した物性値検知装置100を用いて、電池1における、正電極板30の正極活物質層31の目付量APを検知する物性値検知方法について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
なお、測定対象物となる正電極板30の正極活物質層31は、電池1の製造工程において、塗工及び圧縮されて完成した状態のものである。
【0029】
まず、図3に示すように、正電極板30を、超音波放射部110と超音波受波部120との間に配置する。そして、図5に示すフローチャートのステップS1では、放射部111から、第1周波数f1(100kHz)の超音波ビームUSを、正電極板30に放射させる。
続いて、受波部121で受波した超音波ビームUSの強度(第1周波数強度UC1)から、制御部150において、図4に示す検量線G1に基づき、正極活物質層31の目付量(第1周波数目付量AP1)を算出する(ステップS2)。
【0030】
次に、ステップS3では、放射部111から、第1周波数f1に代えて、第2周波数f2(200kHz)の超音波ビームUSを、正電極板30に放射させる。
そして、ステップS4では、受波部121で受波した超音波ビームUSの強度(第2周波数強度UC2)から、図4に示す検量線G2に基づき、正極活物質層31の目付量(第2周波数目付量AP2)を算出する。
【0031】
続いて、ステップS5では、放射部111から、第2周波数f2に代えて、第3周波数f3(400kHz)の超音波ビームUSを、正電極板30に放射させる。
そして、ステップS6では、受波部121で受波した超音波ビームUSの強度(第3周波数強度UC3)から、図4に示す検量線G3に基づき、正極活物質層31の目付量(第3周波数目付量AP3)を算出する。
【0032】
続いて、ステップS7では、上述した第1周波数目付量AP1、第2周波数目付量AP2及び第3周波数目付量AP3に基づいて、正極活物質層31の目付量APを算出する。具体的には、第1周波数目付量AP1、第2周波数目付量AP2及び第3周波数目付量AP3の平均値を算出して目付量APとする。
【0033】
なお、本実施形態では、ステップS2,S4,S6が周波数別物性値取得手段に、ステップS7が物性値特定手段に、それぞれ対応する。
また、電池1における、負電極板40の負極活物質層41の目付量APを検知する物性値検知方法についても、上述した物性値検知装置100を用いて、正極活物質層31と同様にして行うので、説明を省略する。
【0034】
以上より、本実施形態にかかる正電極板30(負電極板40)の物性値検知方法では、検量線G1,G2,G3に基づいて、各周波数f1,f2,f3の超音波ビームUSの強度UC1,UC2,UC3から、正極活物質層31(負極活物質層41)の周波数目付量AP1,AP2,AP3をそれぞれ得る。そして、これら周波数目付量AP1,AP2,AP3に基づいて、正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを特定する。このため、単一の周波数の、1つの超音波ビームに基づく目付量よりも、正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを精度良く検知することができる。
【0035】
また、アルミ箔38(銅箔48)に正極活物質層31(負極活物質層41)を形成した正電極板30(負電極板40)において、正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを測定するにあたっては、例えば、マイクロメータやダイヤルゲージ等の、測定対象物に接触させて測る計測工具を用いることも考えられる。しかし、アルミ箔38(銅箔48)や正極活物質層31(負極活物質層41)の厚みが薄い(例えば、100μm程度)正電極板30(負電極板40)では測定が困難であり、また、測定に時間がかかる。
これに対し、本実施形態にかかる正電極板30(負電極板40)の物性値検知方法によれば、非接触で正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを検知するので、正電極板30(負電極板40)を傷つけることもなく容易に、かつ、短時間に検知することができる。
【0036】
また、本実施形態にかかる正電極板30(負電極板40)の物性値検知装置100では、上述の周波数別物性値取得手段(ステップS2,S4,S6)と物性値特定手段(ステップS7)とを備えるので、互いに周波数の異なる超音波ビームUSに基づく、複数の周波数別物性値AP1,AP2,AP3を用いて、正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを特定することができる。従って、単一の周波数の超音波ビームに基づいて目付量を求めるものよりも、正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを精度良く検知することができる。
【0037】
また、物性値検知装置100を用いれば、非接触で正極活物質層31(負極活物質層41)の目付量APを検知するので、マイクロメータ等の計測工具を用いて計測するのに比べ、正電極板30(負電極板40)を傷つけることもなく容易に、かつ、短時間に検知することができる。
【0038】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、各周波数の超音波ビームの強度(UC1等)に基づいた周波数別物性値(AP1等)を、予め得ておいた検量線の式から算出、取得した。しかし、例えば、各周波数の強度(UC1等)の値と、周波数別物性値(AP1等)の値とを対応づけて記憶させておいたルックアップテーブルを用いて、得られた強度から周波数別物性値を取得しても良い。また、実施形態では、測定対象物の物性値として、電極板における活物質層の目付量を得るものを示した。しかし、物性値としては、例えば、測定対象物の厚み、密度などを測定することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 電池
30 正電極板(電極板,測定対象物)
31 正極活物質層(活物質層)
38 アルミ箔(集電箔)
40 負電極板(電極板,測定対象物)
41 負極活物質層(活物質層)
48 銅箔(集電箔)
100 物性値検知装置(測定対象物の物性値検知システム)
110 超音波放射部(超音波放射手段)
111 放射部
120 超音波受波部(超音波受波手段)
121 受波部
AP (活物質層の)目付量(物性値)
AP1 第1周波数目付量(周波数別物性値)
AP2 第2周波数目付量(周波数別物性値)
AP3 第3周波数目付量(周波数別物性値)
f1 第1周波数(周波数)
f2 第2周波数(周波数)
f3 第3周波数(周波数)
G1,G2,G3 検量線(相関関係)
UC 強度
UC1 第1周波数強度(強度)
UC2 第2周波数強度(強度)
UC3 第3周波数強度(強度)
US 超音波ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中に放射された超音波ビームを、測定対象物に透過させた後に受波し、受波した上記超音波ビームの強度から、上記測定対象物の物性値を検知する
測定対象物の物性値検知方法であって、
互いに周波数の異なる上記超音波ビームについて、それぞれ予め得ておいた、上記強度と上記測定対象物の物性値との相関関係に基づいて、各周波数の上記超音波ビームについての上記強度から、それぞれ上記測定対象物の周波数別物性値を得、各々の上記周波数別物性値に基づき、上記測定対象物の上記物性値を特定する
測定対象物の物性値検知方法。
【請求項2】
請求項1に記載の測定対象物の物性値検知方法であって、
前記測定対象物は、
集電箔上に活物質層を形成してなる、電池用の電極板であり、
前記物性値は、
上記活物質層の目付量である
測定対象物の物性値検知方法。
【請求項3】
空中に超音波ビームを放射する放射部を有する超音波放射手段と、
上記超音波ビームを受波し、電気信号に変換する受波部を有する超音波受波手段と、を備え、
上記超音波受波手段で受波した、上記放射部と上記受波部との間に配置した測定対象物を透過させた上記超音波ビームの強度から、上記測定対象物の物性値を検知する
測定対象物の物性値検知システムであって、
上記超音波放射手段は、
上記放射部から、互いに周波数の異なる上記超音波ビームを放射可能とされてなり、
上記測定対象物を透過させて受波した各周波数の上記超音波ビームについて、それぞれ予め得ておいた、上記強度と上記測定対象物の上記物性値との相関関係に基づいて、各周波数の上記超音波ビームの上記強度から、上記測定対象物の周波数別物性値をそれぞれ得る周波数別物性値取得手段と、
各々の上記周波数別物性値に基づき、上記測定対象物の上記物性値を特定する物性値特定手段と、を備える
測定対象物の物性値検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の測定対象物の物性値検知システムであって、
前記測定対象物は、
集電箔上に活物質層を形成してなる、電池用の電極板であり、
前記物性値は、
上記活物質層の目付量である
測定対象物の物性値検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−95210(P2011−95210A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251901(P2009−251901)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】