説明

測定支援システム及びこれを利用した測定システム

【課題】測定値の正確性や信頼性を担保しつつ、コンピュータに入力されて処理の対象となる測定値の確定に必要な作業時間や労力を削減する。
【解決手段】 測定対象物の特性を測定する測定装置10と、測定装置10の表示部12から測定者が目視で読み取った測定値を入力するマイクロホンセット30と、測定装置10によって測定された測定値を測定者の指示したタイミングで読み取る計測部13、計測部13で読み取られた測定値を一時的に記憶する記憶部21、マイクロホンセット30から入力された測定値と記憶部21に記憶された測定値を照合する照合部23、照合の結果、マイクロホンセット30から入力された測定値と記憶部21に記憶された測定値が一致した測定値を記録する記録部24、記録部24に記録されたデーから測定結果を求めるデータ処理部40とを備えた携帯情報装置20とから測定システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定支援システム、具体的には測定装置によって得られたデータの信頼性、正確性を担保した測定支援システム及び当該測定支援システムを利用した測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所など高温・高圧の給水・水蒸気を扱うプラントにおいては、配管損傷事故を防止するために、適切なタイミングで配管の取替えを行う。配管の損傷は配管肉厚の減肉が進んだ場合に発生するため、減肉傾向の把握は非常に重要である。配管の肉厚を測定する方法として、配管の外側に探触子を接触させて行う超音波パルス反射法などが知られている。
【0003】
肉厚測定は基本的に二人一組で行われ、一人の測定員が測定装置を操作し、測定装置に表示された測定値を目視で読み上げる。もう一人の記録員は読み上げられた測定値を記録紙に書き記す。この記録紙に記された値が正式な測定値となり、上位のコンピュータの管理システムに入力され、データ処理に供される。このとき、測定装置には測定値を一時的に記憶できる機能があるので、コンピュータへの入力作業を軽減するため、この機能を利用して測定装置に記憶された測定値を暫定的にコンピュータに入力していた。つまり、測定員が正しい値であると判断した値を読み上げた後、測定員は測定値をフリーズ(freeze)して測定装置にセーブ(save)する。こうしてセーブされた全ての測定値が暫定的にコンピュータに入力される。そして、コンピュータに暫定的に入力された測定値と記録員が記録紙に記された測定値を照合した上で、正式な測定値を確定する。
【0004】
ところで、上記探触子を接触して測定する方法では、測定装置に示される値が安定せず表示される値にゆらぎがある。測定対象物の表面が丸みを有しており探触子との接触が確実に行えないなどの事情によるものである。例えば、ある瞬間には10.5という値が示されるが次の瞬間には10.4や10.6という値が示されるというように、表示される値が安定しない。測定員はこうしたゆらぎのある測定値から正しいと思われる値を認識、判断して10.5という値を読み上げ、記録員に伝える。一方、その測定値を測定装置に記憶させるために、フリーズして値を確認し、その値を測定値としてセーブする操作を行うが、測定員が10.5という値を認識、確認してフリーズ操作を行うものの、実際には測定装置に10.4という値がセーブされる場合があった。また、フリーズした値が、測定員が正しいと判断した値と異なる場合には測定員は再操作をして、正しい値であると認識、判断される値がフリーズされるように繰り返して操作する必要がある。しかしながら、これらの作業は、測定箇所が20日間のべ10万点を測定するという膨大な作業であるために、フリーズした値と測定員が認識判断した値が異なることを見逃すというヒューマンエラーが発生しえる。また、このようなヒューマンエラーは実際にも発生していた。このために、測定員が正しいと判断して読み上げた値と同じ測定値が測定装置に記録される保証がなく、暫定的にコンピュータに入力された測定値と記録紙に記録された測定値とが異なる場合が生じる。また、測定員が表示された値を読み間違える場合や、周囲の騒音などにより正しく読み上げられた測定値を記録員が聞き間違えて記録した場合にも、測定装置にセーブされた測定値と測定員が記録した測定値が異なる結果になる。この他にも数々の要因があって、測定装置にセーブされた測定値と記録員がフリーズした測定値が100%一致しないということが生じていた。そこで、100%の確実性を期すべく、上記の如くコンピュータに暫定的に入力された測定値と記録員が記録した測定値を照合していた。
【0005】
このような状況下、測定員が測定した測定データを音声として入力して利用する方法が各種提案されている。例えば特開2005−285051号公報(特許公報1)には、測定員により音声入力された検査値を無線等の接続手段でサーバに送信し、サーバに保存記録する点検作業支援システムが開示されている。
【0006】
特開2007−24956号公報(特許公報2)には、測定員が音声で入力したメータの指示値を無線で送信する携帯可能な情報処理端末を用いた検針装置が開示されている。この検針装置では、情報処理端末に入力された指示値を音声信号として再変換し、この値を測定員が間違っていないと確認した場合に、当該指示値が情報処理端末に記憶され、あるいは情報処理端末が有するプリンタから当該指示値が印字される。
【0007】
特開2007−193661号公報(特許公報3)には、測定員により音声入力された検査値が検査サーバに記録されるとともに、予め検査サーバに記憶された標準データと音声入力された検査値が照合され、合否判定された結果が検査サーバに記録される検査システムが開示されている。
【0008】
一方、測定データの利用に際し、入力された測定値と基準となるデータを照合するシステムが、前記特許文献3の他に、例えば特開平7−43173号(特許公報4)や特開2000−131051号公報(特許公報5)、特開2003−114121号公報(特許公報6)に開示されている。
【0009】
特開平7−43173号公報(特許公報4)に開示されたシステムは、複数の設計値及び当該設計値に対応する公差値を記憶した記憶装置を備え、入力された測定データが当該測定データに近い設計値に対応する公差値の範囲内に納まっているかどうかを判定している。
【0010】
特開2000−131051号公報(特許公報5)に開示されたシステムは、被測定物の測定要素に対応した設計データを記憶した記憶装置を備え、入力された測定データが当該測定データと最も適合する設計データを記憶装置から選び出し、照合結果を求める。また、特開2003−114121号公報(特許文献6)に開示されたシステムは、CAD機能にて創生した設計データと、測定対象であるワークを実際に測定して得られた測定データを照合する。
【0011】
特開平8−194854号公報(特許公報7)には、作業者の入力忘れがあった場合に、自動的に生産情報を補足・補正する生産情報収集システムが開示されている。このシステムは、ある生産工程における着手から完了までに行われた生産実績、例えば作業時間などを集計するシステムであって、このシステムにおいては着手や完了、中断、再開という工程管理のための情報が作業者の手入力で入力される。そして、作業者がその情報を入力し忘れた場合には、正常に入力された場合における着手から完了までの処理時間から、正しい生産実績に補正・修正された生産実績が集計される。これにより、不確かな生産実績情報を削除したり、手入力により補正したりすることが不要となり、正しい生産実績のみが記録される。
【0012】
さらに、特開2006−219826号公報(特許公報8)や特開2007−231571号公報(特許公報9)には、手入力された入室しようとする員数と、画像処理装置などにより実際に計測された員数を照合し、両者が一致することを確認する入退室管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2005−285051号公報
【特許文献2】特開2007−24956号公報
【特許文献3】特開2007−193661号公報
【特許文献4】特開平7−43173号公報
【特許文献5】特開2000−131051号公報
【特許文献6】特開2003−114121号公報
【特許文献7】特開平8−194854号公報
【特許文献8】特開2006−219826号公報
【特許文献9】特開2007−231571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
肉厚測定(減肉検査)は、配管の損傷を確実に防止するために定期的に行われる。例えば原子力発電所の場合、一度の定期点検で発電所全体において総数で約2000部位の測定地点が選定され、1部位の測定地点当たり平均して48ポイントの測定が行われる。すなわち、一度の定期点検では20日間に渡りのべ約10万の測定データが取り扱われ、その全ての測定データについて測定員が記録した測定値と記録員が書き記した測定値が照合される。このように照合量は全体として非常に膨大なものになる。また、配管の交換時期の目安となる減肉状態や余寿命の算出結果を求めるためのデータ処理が部位ごとに必要となるが、前記の照合作業が終わらない限りこのデータ処理を行うことができない。従って、照合作業が終わり次第直ちにデータ処理を行ったとしても、結果が分かるのは早くとも翌日以降になる。このため、予想よりも減肉が進んでいた場合に、肉厚測定のやり直しやさらに精密な測定を行う必要があると判明したとしても、迅速な対応ができない。また、測定時における再測定については、最終的には測定員の判断に委ねられている。このため、前述のとおり、データの信頼性が100%確保されているものではなく、データの信頼性をほぼ100%近くに高める必要があった。
【0015】
ここにおいて、特許文献1〜3に記載されたシステムでは、測定員が音声入力により測定値を記録しているので、記録員の負担が軽減され、コンピュータへの入力作業も軽減される。しかしながら、この方法では肉厚測定におけるような測定装置に記録された測定値との照合が行われない。従って、この方法では測定値が実際に測定された測定値であるかどうか、その信頼性は保証されない。もっとも、特許文献2に記載されたシステムでは、入力した測定値を測定員が確認しているので、記録した測定値が測定者によって保証されるということにはなるが、測定装置に記録した測定値との照合がなされないことには変わりがないので測定値の正確性は人間系に依存、つまり、測定者自身の判断にゆだねられ、測定値の信頼性や正確性は担保されていないと言ってよい。従って、このシステムは後日行われる測定作業の検証(信頼性や正確性が担保されているかどうかの確認作業)に耐えられるシステムであると言えない。
【0016】
特許文献3〜6には、測定値と照合してその照合結果を記録または記憶するシステムが開示されているが、これらのシステムでは測定値と照合されるのは予め記憶された基準値である。しかしながら、上記肉厚測定においては、測定員が目視した測定値と、装置に一時的に記録した測定値とを照合するのであって、照合するための基準値なるものが存在しない。従って、このシステムを導入できす、測定値の信頼性が担保されることがないのは言うまでもない。
【0017】
特許文献7に記載のシステムによると手入力による漏れがなくなる点においては優れている。しかしながら、肉厚測定においては測定間隔が決まっているのでもなく、測定員が最適な値であると判断したタイミングで測定値を読み上げ、かつ測定装置に記録する。つまり、肉厚測定は一定の時間間隔で自動的に測定値を記録できず、特許文献7に記載のシステムを利用したとしても正しい測定結果を得ることができない。
【0018】
特許文献8や9に記載の入退室管理システムは、画像から得られた観測値と入室者自らが入力した入力値を照合している。しかしながら、このシステムは、実際の入室者数とは異なる数値が入力されるのを防止したり、意図的に異なった数値が入力されることを防止するものである。つまり、これらのシステムが使用される場面では、入力者が正しい数値を把握していることが前提となっており、これらのシステムは入力された値が正しいことを客観的に画像などから得られた観測値で確認又は保証するものである。減肉検査において最も必要とされているのは、記録者が目視で確認した測定値が正しく記憶されていること、言い換えると、測定者が目視により正しいと判断した測定値と測定者の指示したタイミングで記憶させた測定値との整合性を確保することであって、特許文献8や9に記載されたシステムのように、記録者が記録した測定値が正しいことを測定装置で得られた測定値でもって保証するシステムは、上記減肉検査においては役に立たない。
【0019】
以上のように上記各公報に記載された方法は、測定員が正しいと判断した測定値が正しく記録されていることが保証されている訳ではないので、測定された測定値の確定に要する時間や労力が軽減されることはない。また、特許文献2に記載されたように、測定員が読み上げた数値が正しく記録されたことを確認するシステムが提案されているが、測定装置が測定した測定値を記録させるという仕組みにはなっていないので、例えば、測定員が実際に測定又は検針することなく、架空の測定値を読み上げ、当該測定値を記録させていてもその真偽が不明なままである。このように当該システムにおいても、測定員が正しいと判断した測定値が正しく記録されていることが保証されている訳ではないので、実際に測定された測定値の信頼性や正確性が担保されていると言えるものでもない。従って、これらのシステムは上記課題を何ら解決することができない。
【0020】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、測定装置で得られたデータ測定値の正確性や信頼性を担保しつつ、コンピュータに入力されてデータ処理の対象となる測定値の確定に必要な作業時間や労力を削減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
そこで上記目的を達成するために、本発明では、これまでどおり測定員が正しいと判断した測定値を目視で読み取り、この読み取った測定値を手入力や音声入力により携帯情報装置などに入力する一方、測定装置から得られた測定値を携帯情報装置などに一時的に記憶させておき、この記憶された測定値と手入力や音声入力で入力された測定値を照合することにしている。
【0022】
そして、照合した結果、一致した測定値だけを携帯情報装置などの記録装置に記憶させておくことができる。あるいは一致した測定値だけを無線通信によって遠隔地にある記録装置に記録・保存させることができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のように、本発明のシステムによれば、一時的に記憶させた測定値であって測定員が正しいと判断した測定値のみが記録装置に記録されるので、データの正確性や信頼性が保証されたデータのみが利用される。また、これまで行ってきた測定員が測定装置に記憶させた測定値と記録者が記録した測定値を照合するというこれまで行ってきた作業が不要となり、データ処理に用いられる測定値の確定に必要な作業時間、労力が削減される。また、リアルタイムで正確性が担保された測定値を用いることができるので、測定した時点で測定値の異常の有無を判断できるだけでなく、比較的早期に減肉状態や余寿命(配管交換までの残余期間)の算出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の測定システムの概略構成図である。
【図2】図2は図1の測定システムのブロック図である。
【図3】図3は図1の測定システムにおける測定手順を示すフロー図である。
【図4】図4は本発明の別な実施例である測定システムのブロック図である。
【図5】図5は本発明のさらに別な実施例である測定システムの動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の測定支援システムは、測定対象物の特性を測定する測定手段によって測定された測定値を定められた間隔で連続的に読み取る測定値読取手段と、前記測定値読取手段が読み取った測定値を一時的に記憶する記憶手段と、測定者が目視で読み取った測定値を入力する入力手段と、前記入力手段から入力された測定値と前記記憶手段に記憶された測定値を照合する照合手段を備える。
【0026】
本発明の測定支援システムは、測定手段によって測定対象物の特性値を測定する場合に適用される。本発明における測定対象物には、特性値の測定が可能かつ必要となるあらゆる対象物が含まれ、例えば発電所や各種工場等における配管設備やガス管、水道管、下水管、送電線、送電線設備に使用されている碍子などの有体物が例示される。また、有体物に限られず、音、臭いなどの無体物も測定対象物に含まれる。特性値とは測定対象物の特性を表す値であって絶対的な物性値に限られず、音の強さなど相対的な数値として表される値も含む。例えば、前記測定対象物の例で言うと、発電所などの配管やガス管などの肉厚、送電線における損傷抵抗、碍子の絶縁抵抗、音の強さなどが例示される。本発明における測定手段は、上記特性値を測定可能な測定装置であって、対象とする特性値によって測定装置はそれぞれ異なるものの、測定原理や測定方法は特に制約されるものではない。上記の例で言うと、配管の肉厚を測定するために、例えば、超音波を利用した測定装置が例示され、市販品の例ではオリンパス社製の腐食厚さ計がある。本発明の測定支援システムは、安定した測定値を示す測定手段よりも、不安定な測定値が得られる測定手段を用いる場合に好適である。安定した測定値が得られる場合には、測定員が視認した測定値と測定装置の測定値を読み取る読取手段から記憶された測定値が一致することがほとんどであり、測定値がゆらぐ場合に両者の不一致が数多く見られるからである。しかしながら、測定手段は、例えば質量計(例えば体重計)のように、安定した測定値を示す測定手段であっても差し支えない。例えば質量計は種々の物体の質量を測定するものであり、質量は本来固有な値である。従って、普通の場合であれば安定した値を示す。しかしながら、ラットなどの動物の体重を測定する場合には、動物が動き回るために安定した値を示さない。このような場合にも本発明は非常に有用な手段となりうる。つまり、本発明の測定支援システムは測定値にゆらぎがある場合に好適な手段となる。一方、水道やガス、電気の使用量を示す検針値は時々刻々と変化するが、この変化は水道やガス、電気の使用によるものであり、ゆらぐ特性値とは言えない。
【0027】
測定装置は測定結果を電気信号として出力する。測定装置は測定者が目視で確認できるように電気信号を変換して測定装置の表示部に数値として例えばデジタル表示する。一方、測定値読取手段は表示部にデジタル表示するための電気信号からデジタル値である測定値として、定められた間隔(例えば、200〜300msec)で連続して読み取る。この間隔は任意に設定される。
【0028】
記憶手段は測定値読取手段で読み取られた測定値を一時的に記憶する。この記憶手段はRAMなどのメモリ装置から構成され、測定装置或いは以下に述べる携帯情報装置に備えられる。また、予備のためにその両者に備えられることもある。記憶手段において記憶される測定値は一個の測定値である場合や複数の測定値である場合がある。記憶される測定値の個数は例えば5個や10個など、照合する際の精度に応じて適宜決定される。
【0029】
測定値を記憶手段に一時的に記憶させるタイミングとして、測定者が指示するタイミングで記憶させる場合がある。測定者が指示するタイミングとは、測定者が行う何らかの動作がきっかけとなることを意味する。何らかの動作とは、例えば、これまでの測定と同様に、測定者が正しいと判断したタイミングでフリーズさせる動作や入力手段から測定値を入力するという動作である。入力手段から測定値を入力したタイミングでは、例えば、音声入力の場合を例にすると、入力手段から音声を最初に検知した時点、音声によって入力された測定値が認識された時点などが考えられるが、本発明においてはいずれの時点をもってしてもよい。また、キーボード入力の場合にはいわゆる実行操作が行われた(エンターキーが押された)タイミングで記憶させてもよい。これらの場合には、一個の測定値のみが記憶される場合と、複数個の測定値が記憶される場合とがある。一個の測定値のみが記憶される場合には、測定者がフリーズしたタイミングで読み取られた測定値や入力手段から測定値を入力したタイミング(例えば音声入力の場合では、音声を最初に検知した時点など)で読み取られた測定値が記憶される。また、複数個の測定値が記憶される場合には、前記のタイミングで読み取られた測定値から後に連続する複数の測定値が記憶される。入力手段から測定値を入力したタイミングとする場合にはフリーズ操作という操作が不要になる。
【0030】
上記いずれの場合にも、記憶手段は少なくとも照合が終わるまでの間当該測定値を記憶する。記憶手段に記憶された測定値は、照合手段に呼び出された後は不要となり、消去され、あるいは新たな測定値が上書きされる。記憶手段は次に測定員が指示したタイミングで読み取られた新たな測定値を記憶する。
【0031】
測定値を記憶手段に一時的に記憶させる場合として、記憶手段に複数個の連続する測定値を更新しながら記憶させる場合もある。この場合、記憶手段は測定値読取手段で読み取られた測定値を次々と記憶手段に記憶し、前記のごとく測定者が指示するタイミングで記憶する場合とは異なり、測定者が行う動作とは無関係に測定値を記憶する。記憶手段に記憶される測定値は測定値読取手段が読み取るタイミングで常に更新される。つまり、新たな測定値が読み取られると記憶手段に記憶された最も古い測定値が消去され、新しく読み取られた測定値が新たに記憶される。この場合も記憶される測定値の個数は例えば5個や10個など適宜決定される。測定員が正しいと判断した測定値が記憶部に記憶されているように、例えば、測定値の読取間隔、測定員が正しいと判断した測定値を読み取り、それを入力手段から入力するのに必要とする時間、入力手段が入力された測定値を認識して照合するまでに必要とする処理時間などが考慮される。
【0032】
測定員が目視で読み取った測定値を入力する入力手段としては、例えば、キーボードによる入力手段や手書きした文字を認識する文字認識パッドによる入力手段、測定員が発声した音声を認識する音声識別装置による入力手段が例示される。これらのうち、音声識別装置を用いた音声入力手段が最も好ましい。測定員がマイクロホンを装着した状態で測定値を入力できるため、測定装置を持ったままで測定、測定値の記録が行える。このため、測定値を書き取って記録する記録員が不要になるだけでなく記録員の聞き取りエラーをなくせる。この入力手段は例えば携帯情報装置に組み込まれる。携帯情報装置のキーボードや文字認識パッドがそのまま利用できるからである。もちろん、例えば不測の事故に備えるなどの諸般の理由により、これまでと同様に二人一組で行動し、一人が測定、読み上げる操作を行い、他方が読み上げられた測定値を入力装置から入力することにしてもよい。
【0033】
照合手段は前記記憶手段に記憶された測定値と測定員が目視で読み取って入力した測定値を照合し、一致しているかどうかを判断する。記憶手段に記憶された測定値が一個の測定値である場合には、当該記憶された測定値と測定員が目視で読み取って入力した測定値が照合される。記憶手段に記憶された測定値が複数個の場合には、測定員が目視で読み取って入力した測定値と一致する測定値の有無が判断される。複数個の測定値と照合させることにより、両者の測定値が一致する確率が高まり、再測定の必要性が少なくなるからである。
【0034】
複数個の測定値と照合する場合には、要求される精度(どれだけの信頼性を求めるか)によって種々の判断方法が考えられる。測定員から入力された測定値と一致する測定値が一個でも記憶手段に記憶されている測定値の中に存在すれば「一致する測定値が有り」と判断してもよい。また、記憶手段に記憶されている測定値の個数に関係なく、記憶手段に記憶されている測定値中に、測定員から入力された測定値と一致する測定値が複数個存在する場合に「一致する測定値が有り」と判断することもできる。さらに、記憶手段に記憶されている測定値中に対して、測定員から入力された測定値と一致する測定値の割合が一定以上ある場合に「一致する測定値が有り」と判断しても構わない。この判定基準が高いと記録装置に記録された測定値(言い換えるとデータ処理に用いられる測定値)の信頼性は高いと言える。
【0035】
照合手段は上記照合の結果、入力手段から入力された測定値と記憶手段に記憶されている測定値が一致した場合(あるいは一致する測定値が記憶手段に記憶されている測定値に存在すると判断された場合)には、当該一致した測定値が記録手段に記録される。このときの照合度、すなわち、入力手段から入力された測定値と記憶手段に記憶されている個々の測定値とどの程度の精度で一致したと判定するのかは、測定目的によって任意に決定、設定できる。例えば、肉厚検査であれば少数点以下第2位或いは第3位までの数字が一致した場合には一致したものと扱うことができる。また、精度が高くなくてもよいのであれば、小数点以下第2の数字を四捨五入して、小数点第1の数値までが一致すれば一致するものとして取り扱ってもよい。記録手段は例えばRAMなどのメモリ装置やハードディスクなどの記録装置から構成される。
【0036】
記録手段は下記に述べる携帯情報装置をはじめとして測定員が携行する各種装置の何れかに備えられるか、あるいは、測定地点から離れた遠隔地、例えば、発電所内にある事務所、さらに最終的なデータ処理を行う事業所などに設置される。記録手段が測定値から離れた遠隔地に設置される場合には、例えば無線通信手段によってバッチ処理又は照合の都度に行われるリアルタイム処理によって送信される。記録手段は、原則として決められた測定箇所における測定値の全てを記録する。
【0037】
双方の測定値が一致しない場合には、照合手段は例えば携帯情報装置に備えられた警報手段を通じて、測定員に対して不一致であることを知らせ、再測定を促す。警報手段には携帯情報装置の表示部やスピーカなどが利用され、再測定を促す旨の表示やランプの点灯、音声による警告などとして測定員に伝達される。
【0038】
このような構成を備えた測定支援システムでは、照合手段は例えば携帯情報装置(PDA=Personal Digital Assistant)に組み込まれ、測定員が携帯情報装置を携行する。携帯情報装置は測定員が携行できる電子機器であり、既存の器械の改良で本発明の測定支援システムを簡単に構成できる。この携帯情報装置は、上記照合手段と、照合後の測定値を記録する記録手段と、記録手段に記録された多数の測定値をデータ処理装置に送出するインターフェースを備える。また、場合によっては、当該インターフェースと共にあるいはそれの代替として測定値を無線送信によって送信する送信手段を備える。
【0039】
また、本発明の必須の構成ではないが、携帯情報装置に測定箇所や測定対象を特定する情報を記憶したデータベースである情報記録手段を備え、携帯情報装置の表示部に前記情報を表示させてもよい。測定員はこれらの情報に従って測定すると、前記情報に対応して前記一致した測定値並びに測定日時などが記録手段に記録され、これらの情報と共に前記送信手段を通じて送信されるように構成することができる。
【0040】
本発明の測定支援システムには、照合手段で照合された測定値について、基準値との比較や得られた測定値の傾向から測定値の妥当性をチェックするデータチェック手段を設けることもできる。照合の結果、前記記憶手段に記憶された測定値と測定員が目視で読み取って入力した測定値が一致した場合であっても、その前後の測定値と極端にかけ離れてはいないかどうか、あるいは想定できる範囲外の測定値でないのかどうかなど、得られた測定値のデータチェックは非常に重要である。データチェック手段はこうした測定値のチェックを行う。そして、データチェックの結果、異常がない測定値を有効な測定値として記録させる。もし、測定値が異常値であるならば上記警報手段を通じて再測定を促すことができる。また、異常があった場合であっても、測定値として利用できるとデータチェック手段が判断すれば、そのまま有効な測定値として記録させることもできる。
【0041】
もっとも、照合手段や記録手段は、既存の携帯情報装置の改良によらず、測定装置に組み込んだり、測定装置と接続するためのインターフェースを備えた専用の機器として作製してもよい。
【0042】
このようにして、本発明の測定支援システムでは測定員が目視で得た測定値と一時的に記憶された測定値が照合される。そしてこの測定支援システムで照合された結果、一致した測定値のみが記録保存され、当該測定値がデータ処理に利用される。このデータ処理はデータ処理手段が行う。データ処理手段は例えばコンピュータ装置からなり、従来と同じデータ処理装置がそのまま用いられる。また、リアルタイム処理を可能とすべく、測定員が携帯する前記携帯情報装置にデータ処理手段が組み込まれる場合もある。データ処理手段は、例えば、異常なしあるいは異常であっても利用可であるとして判断された測定値から、目的とする測定結果、例えば、減肉検査で言えば、配管の減肉状態や余寿命の算出を行う。
【0043】
この測定支援システムを用いる結果、データ処理に当たり、測定員がセーブした測定値と記録員が記録した測定値を照合するというこれまで行われてきた膨大な照合作業が不要になり、データ処理を開始するまでに要した時間や多大な作業を削減できる。このため、測定から早い時期に測定値をデータ処理に用いることができ、迅速に検査結果を得ることができる。そして、発見された異常に対して速やかに対処できる。また、一人の測定員での測定、測定値の記録作業が行え、減肉検査などに必要な人員が削減される。何よりも重要なことに、測定員の測定及び測定装置への記録との照合がほぼ100%確保されているので、これまで以上に減肉検査の信頼性が担保される。
【実施例1】
【0044】
図1は本発明の一実施例である測定システムの概略構成図、図2は当該測定システムのブロック図である。この測定システムは、原子力発電所などにおける配管の減肉検査に用いられる測定システムである。この測定システムは、配管1の肉厚を測定する測定装置10と、携帯情報装置(PDA)20と、音声入力手段であるマイクロホンセット30を有している。また、携帯情報装置20には測定された測定値から測定結果(減肉状態)を求めるデータ処理部40が設けられている。
【0045】
測定装置10は測定員が携行し、定められたポイントにおける肉厚を測定する。測定装置10は、超音波を発射し反射波を受信する探触子11と、探触子11からの信号を処理して計測値として読み取る計測部13と、計測部13で読み取られた測定値を表示する表示部12と、測定の開始や測定値の記憶などを指示する操作入力部14を備える。測定員が操作入力部14から指示をして測定を開始すると、測定値が時々刻々と表示部12に表示される。また、測定員の操作があると、そのタイミングで読み取られた測定値が携帯情報装置20にある記憶部21に送られる。マイクロホンセット30はヘッドホン32とマイクロホン31を備え、測定員に装着される。
【0046】
図に示す携帯情報装置20は測定装置10と有線で接続されている。携帯情報装置20は、測定値を一時的に記憶する記憶部21と、マイクロホンセット30から送信された音声をデータとして識別する音声入力部22と、音声入力部22から入力された測定値と記憶部21に記憶された測定値を照合する照合部23と、照合した結果音声入力部22から入力された測定値と記憶部21に記憶された測定値が一致した測定値を記録する記録部24を有する。携帯情報装置20は、さらに、両測定値が一致しない場合や測定値異常の場合などに測定者に再測定を促す警報部25や照合された結果、一致した測定値が基準値からの逸脱をしていないかどうか、一連の測定値の傾向から極端に逸脱していないかどうかなどを判断し測定値の妥当性を評価するデータチェック部26、記録部24に記録された測定値から減肉評価を行うデータ処理部40を備える。
【0047】
携帯情報装置20も測定装置10と共に測定員によって携行される。携帯情報装置20は測定値の照合及び照合された結果である測定値の記録・保存、さらには再測定が必要である旨の注意喚起を行う。記録部24に記録・保存された測定値はデータ処理部40に送信される。データ処理部40は、照合された結果記録部24に記録された測定値を処理して最終目的である減肉状態を演算し、余寿命など減肉検査の結果を例えば携帯情報装置20が有するディスプレイ(図示せず)上に表示する。
【0048】
次に図3に示すフロー図に基づいて、本発明の測定システムにおける測定方法について説明する。図3のフロー図は減肉検査全体の手順を示すものではなく、各部位における減肉検査について示す。測定員がある測定対象部位に到着し、部位内にある定められた測定ポイントにおいて測定を開始すると(S1)、測定装置10の表示部12には測定値が時々刻々と変化しながら表示される。測定員は表示部12に表示された測定値を目視し(S2)、正しい測定値であると判断した時点で測定値を声に出して読み上げる(S4)。音声入力部22は入力された音声から測定値を認識して照合部23に測定値を送出する。それと同時に、測定員は操作入力部14からフリーズ操作を行い、計測部13で読み取られた測定値を記憶部21に記憶する(S3)。次に照合部23は送出された測定値と記憶部21に記憶されている測定値を照合する(S5)。一致しているならば当該測定値についてデータチェック部26がデータチェックを行う(S6〜S7)。S6におけるデータチェックの結果、異常がなければそのまま測定値を記録部24に記録する(S8)。また、S6におけるデータチェックの結果異常があったとしても、S7のチェックの結果そのまま測定値として利用可能であると判断されるならば、再測定することなく当該測定値を記録部24に記録する(S8)。S6におけるデータチェックの結果異常があり、S7のチェックの結果測定値としては利用できないと判断されたならば、警報部25は測定員に再測定を促し、それに従って測定員は再度測定を行う(S2)。照合部23において照合の結果(S5の照合)、両者の測定値が一致しない場合には警報部25は携帯情報装置20から測定員に対し再測定することを促し、それに従って測定員は再度測定を行う(S2)。
【0049】
こうして検査対象に指定された測定対象部所の全ての測定箇所において測定が終了すれば(S9)、測定員は携帯情報装置20からデータ処理部40に向けて記録部24に記録されている全ての測定値を送信し、データ処理を行う(S10)。そして、データ処理部40は全ての測定値から減肉状態を把握し、余寿命を算出して、減肉検査を終了する。その結果、必要に応じて、当該部位における配管の取り替え作業、当該部位における再測定、測定ポイントの増加や変更などさらに詳細な再測定などが行われる。
【0050】
本発明の測定支援システムを利用した測定システムでは、読み上げた測定値を音声入力することにより、上記のように一人の測定員だけで減肉検査を行うことができる。また、データ処理部40における測定値は、測定員が目視で判断した測定値と記憶部21に記憶された測定値が一致した測定値であるので、直ちにデータ処理に取りかかることができる。このように従来行われていた照合作業が不要になり、検査に要する時間及び労力が大幅に軽減される。その結果、測定終了から比較的早い時期に余寿命等が算出され、余寿命が想定された期間よりも短いと判断された場合などには、直ちに再検査や配管交換作業の指示が出され、翌日以降行われる検査作業などに与える影響が極力抑えられる。また、照合された測定値のみが記録され、データ処理に利用されるので、測定値の信頼性も従前に比べて担保される。
【0051】
本発明の測定支援システムは、使用目的や測定原理が限られた特定の測定装置に限定されることなく使用される。また、照合手段(照合部23)及び記録手段(記録部24)が携帯情報装置20に組み込まれることにより、任意の測定装置10に接続することが可能であり、汎用性も高められる。
【実施例2】
【0052】
図4は本発明の別な実施例である測定システムを示すブロック図である。この測定システムは、図2に示す測定システムとほぼ同様な構成を有するが、データ処理部40は測定地から遠隔地にあるホストコンピュータ(図示せず)に備えられ、携帯情報装置20に備えられた送信部27を通じて、記録部24に記録された測定値が送信される。この送信は、ある測定対象部位の全てのポイントにおける測定が終了した時点で一括して行われたり、あるいは各ポイントにおける測定が終了した時点で行われることもなる。本発明の測定システム(測定支援システム)は、このようなシステムとして構築されることもある。もっとも、データ処理部40への測定値の転送は有線によって行うこともできる。また、フレキシブルディスクやSDカードなどの各種記録媒体を用いて、データを一括して転送することもできる。
【0053】
このように上記各実施例の測定支援システムでは、測定員が正しいと判断したタイミングで測定値を読み上げ、フリーズ操作により一時的に記憶手段にセーブした測定値と、先に読み上げられ、音声入力等の入力手段により入力された測定値が照合される。この結果、記録された測定値の正確性や信頼性が担保される。また、他の手段によりデータ処理に用いる測定値の正確性を確認する必要がなくなるので、データ処理のために照合する手間が省けるだけでなく、データ処理を速やかに開始できる。
【0054】
もっとも上記実施例は例示にすぎず、当該実施例に限定されないのは言うまでもない。例えば、測定員が携帯情報装置20のテンキーから数字を入力するようにしてもよい。また、上記実施例ではフリーズして一時的に測定値を記憶手段に記憶した場合についてのみ説明を加えたが、測定員がマイクロホン31から入力した測定値が認識された時点で測定値を記憶手段(記憶部21)に記憶するようにすることもできる。
【実施例3】
【0055】
図5は本発明のさらに別な測定システムにおいて、記憶手段に一時的に記憶した複数個の測定値と入力手段から入力された測定値との照合を示す説明図である。図5の測定システムでは、記憶手段が複数個の測定値を更新しながら記憶している。この測定システムは、図2に示す測定システムとほぼ同様な構成を有するが、記憶部21は測定値を一時的に記憶する複数のセル21a,21b,・・・から構成される。図5の例では5個のセル21a,21b,21c,21d,21eが備えられている。各セルは一個の測定値を記憶し、測定開始時には各セルは空の状態である(図5(a))。測定を開始すると記憶部21は計測部13で読み取られた測定値を各セルの測定値を更新しながらそれぞれ記憶する。測定開始から、例えば、10.5、10.3、10.4、10.5、10.4、・・・という測定値が順次読み取られたとすると、測定開始当初空であったセル21aには最初に読み取られた10.5が入力される。次に測定値10.3、10.4が順次読み取られると、各セルの測定値が更新され、図5(b)に示すように最初のセル21aには直近に読み取られた測定値10.4が、次のセル21bにはその前に読み取られた測定値10.3が、セル21cには最初に読み取られた測定値10.5が記憶される。こうして5個の測定値が読み取られることにより、図5(c)に示すようにセル21aには直近に読み取られた測定値10.4が、セル21bには測定値10.5が、セル21cには測定値10.4が、セル21dには測定値10.3が、最後のセル21eには最初に読み取られた測定値10.5が記憶される。引き続き、計測部13において読み取られた直近の測定値はセル21aに記憶され、セル21eに記憶されていた最初に読み取られた測定値10.5は消去され、次に読み取られた測定値10.3が上書きされる。このように記憶される測定値は順次更新され、ある時点では図5(d)に示すようにセル21a,21b,21c,21d,21eにはそれぞれ測定値10.5、10.2、10.3、10.4、10.5が記憶される。このように記憶部21に複数個の測定値が記憶された状態で、音声入力部22から測定員によって読み取られた測定値10.5が入力されると、照合部23は記憶部21に記憶された5個の測定値(図5(d))の中に10.5が存在するか否か照合し、その結果、存在が確認できたならば当該測定値10.5を記録部24に記録する。このように複数の測定値を記憶部21に一時的に記憶させ、それらと照合させることもできる。このようにすれば、測定者が目視で正しいと判断した測定値が記憶部に記憶されている確率が高くなり、多くの場合、各測定ポイントでは一度の測定操作、入力操作で照合、記録ができることになる。また、記憶部21のセルの数を多くして、音声入力部22から測定値10.5が入力されると、照合部23は記憶部21に記憶された複数個の測定値から、音声入力部22から入力された測定値10.5と一致する測定値の個数を計数して、例えば測定値10.5が3個以上あった場合に、記録部24に当該測定値10.5を記録させてもよい。
【0056】
この実施例3においては、測定員の動作とは無関係に複数個の測定値を記憶部21に記憶させ、音声入力部22から入力された時点において記憶部21に記憶されている測定値と照合する場合について説明したが、複数個の測定値を記憶部21に記憶させる場合においては、測定員によってフリーズ操作が行われた時や測定員がマイクロホン31から入力した測定値が認識された時点から後に記憶部21のセル21a,21b,21c,21d,21eに記憶された測定値と照合させてもよい。この場合にも図3に示されたフロー図と同様にして処理される。つまり、本発明の測定支援システムでは、複数の測定値を記憶手段に記憶させることにより、測定者が指示するタイミング、つまりフリーズ操作や音声入力が認識された時点の前に記憶された複数個の測定値又はその時点の後に記憶された複数個の測定値を対象に照合することができる。このようにして、照合の精度を優先させたり、操作性を優先させたりする(測定のやり直しが少なくなるように設定する)ことができ、より検査実情に応じた測定システムを構築できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の測定支援システムによると、記録された測定値の信頼性や正確性を担保しつつ、検査労力や検査時間を大幅に軽減できる。
【符号の説明】
【0058】
1 検査対象物である配管
10 測定装置
14 操作入力部
20 携帯情報装置
23 照合部
30 マイクロホンセット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の特性を測定する測定手段に測定された測定値を定められた間隔で連続的に読み取る測定値読取手段と、
前記測定値読取手段が読み取った測定値を一時的に記憶する記憶手段と、
測定者が目視で読み取った測定値を入力する入力手段と、
前記入力手段から入力された測定値と前記記憶手段に記憶された測定値を照合する照合手段が備えられたことを特徴とする測定支援システム。
【請求項2】
前記記憶手段は測定者が指示するタイミングで一個又は複数個の測定値を記憶することを特徴とする請求項1に記載の測定支援システム。
【請求項3】
前記記憶手段は複数個の測定値を更新しながら記憶することを特徴とする請求項1に記載の測定支援システム。
【請求項4】
前記照合の結果、前記入力手段から入力された測定値と前記記憶手段に記憶された測定値が一致した測定値を記録する記録手段が備えられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定支援システム。
【請求項5】
携行可能な携帯情報装置が備えられ、前記照合手段が当該携帯情報装置に備えられたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の測定支援システム。
【請求項6】
前記記録手段が前記携帯情報装置に備えられたことを特徴とする請求項5に記載の測定支援システム。
【請求項7】
前記記録手段が測定地から遠隔地に備えられ、
照合の結果、前記入力手段から入力された測定値と前記記憶手段に記憶された測定値が一致した測定値を、前記記録手段に無線送信する送信手段が有備えられたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の測定支援システム。
【請求項8】
携帯情報装置が備えられ、前記送信手段が当該携帯情報装置に備えられたことを特徴とする請求項7に記載の測定支援システム。
【請求項9】
前記入力手段は音声入力手段であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の測定支援システム。
【請求項10】
前記照合手段により照合された結果、前記入力手段から入力された測定値と前記記憶手段に記憶された測定値が一致した測定値を利用して、データ処理を行うデータ処理手段が備えられたことを特徴とする請求項9に記載の測定支援システム。
【請求項11】
前記測定手段は配管の肉厚を測定する測定手段であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の測定支援システム。
【請求項12】
測定対象物の特性を測定する測定手段と、
請求項1〜11の何れか1項に記載の計測支援システムを有することを特徴とする測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−17644(P2011−17644A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163096(P2009−163096)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【特許番号】特許第4435853号(P4435853)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(591212349)株式会社原子力エンジニアリング (16)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】