測距方法及び装置
【課題】送信波の占有周波数帯域幅が電波法で規定する76MHz以内となる条件でも、最小探知距離と距離分離分解能を短くできるようにする。
【解決手段】掃引回路18から、24.05GHz〜24.25GHzの振り幅200MHzの掃引信号を出力し、スイッチ回路20ではこの掃引信号を切取り信号を用いて周波数分割して占有周波数帯域幅50MHzの4つの信号を形成し、これを送信信号として出力する。一方、受信側では、幅50MHzの送信信号で得られた4つの受信信号を入力した位相検波器23にて、送信信号と同期した周波数帯域幅200MHzの局部発振信号で検波することで、4つのビート信号を取得する。これらのビート信号は、合成するとそれぞれの波形が連続した状態となり、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を用いて得られるものと同等となり、近距離の測距が可能となる。
【解決手段】掃引回路18から、24.05GHz〜24.25GHzの振り幅200MHzの掃引信号を出力し、スイッチ回路20ではこの掃引信号を切取り信号を用いて周波数分割して占有周波数帯域幅50MHzの4つの信号を形成し、これを送信信号として出力する。一方、受信側では、幅50MHzの送信信号で得られた4つの受信信号を入力した位相検波器23にて、送信信号と同期した周波数帯域幅200MHzの局部発振信号で検波することで、4つのビート信号を取得する。これらのビート信号は、合成するとそれぞれの波形が連続した状態となり、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を用いて得られるものと同等となり、近距離の測距が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測距方法及び装置、特にFM−CW方式のレーダや各種センサに採用される近距離測距が可能な測距装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図13には、24GHz帯を利用したFM−CW(Frequency-Modulated Continuous Wave)方式により距離計測を実行するレーダ(特定小電力)の回路構成が示されており、この回路では、電圧制御発振器(VCO)1、分配器2、VCO1を含んでPLL(Phase Locked Loop)を構成するPLL回路3、増幅器(AMP)5、分配器6、増幅器7、送信アンテナ8が設けられ、この送信アンテナ8から、76MHz以内の占有周波数帯域幅で、24.05〜24.25GHzの周波数帯域の送信信号が出力される。
【0003】
また、目標物9からの反射波を受信する受信アンテナ10、増幅器11,12、この増幅器11から入力される送信信号(RF)と増幅器12から入力される局部発振信号(LO)を混合して位相を検波する位相検波器(MIX)13、この位相検波器13から出力されるビート信号を増幅するビート信号増幅器14及びアナログ/デジタルコンバータ(ADC)15を含むCPU16が設けられる。
【0004】
このようなFM−CWレーダでは、周波数24GHz帯の送信波が送信アンテナ8から出力され、目標物9から反射して得られる受信波が受信アンテナ10、増幅器11を介して位相検波器13に入力される。この位相検波器13では、入力受信波に対し局部発振波を与えることにより、送信波と受信波の位相差がビート信号として出力される。このビート信号は、目標物9の距離に応じて周波数が変化しており、この周波数から距離情報を得ることができる。即ち、上記位相検波器13から出力されるビート信号は、低い周波数の信号であり、演算のためにADC15によりデジタル信号に変換され、従来から知られているように、高速フーリエ変換(FFT)等を行いた周波数成分の解析から、距離が算出される。
【0005】
なお、上記送信波は、周波数変調(FM変調)が行なわれ、単位時間当りの周波数を連続変化させており、この周波数変化量が送信波の占有周波数帯域幅となる。現在の電波法では、特定小電力の24GHz帯のFMーCWレーダにおいて、1つの送信波の占有周波数帯域幅は、最大76MHzと規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−284047号公報
【特許文献2】WO2007/026792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の測距方法及び装置では、最小探知距離及び距離分離分解能に限界があり、近距離の測距を正確に行えないという問題がある。
【0008】
即ち、上記位相検波器13から出力されるビート信号の周波数fbは、以下の式から求められる。
fb={(2×Δf)/(ST×c)}×r
ここで、Δf:占有周波数帯域幅、ST:掃引時間、c:光速、r:距離(m)である。
【0009】
そして、ビート信号において、その周波数fbから距離rを得る場合、掃引時間ST内に1回以上の周期を得ることで、その周波数を求めることができ、占有周波数帯域幅Δfと光速cの関係で掃引時間STに1周期が最小探知距離となる。例えば、電波法規定における占有周波数帯域幅Δf=75MHzの場合、最大でも約2m以下の距離において、掃引時間内で1周期以上得られることはなく、2m以下の距離を正確に得ることは困難となる。しかし、例えば占有周波数帯域幅Δfを2倍にすると、掃引時間STと等しい周波数になる距離は半分となり、最小(最短)探知距離が短くなる。
【0010】
一方、占有周波数帯域幅76MHzにおける測距能力を考えると、
距離分離分解能=光速/占有周波数帯域幅=3×108/76MHz≒3.9m
となり、計測される目標物が複数ある場合は、約3.9m以上離れないと分離計測ができないこととなる。従って、比較的近距離を計測するレーダやセンサにおいては、最大探知距離に対する距離分離分解能の割合が大きいことが分る。
【0011】
また、最小探知距離においても、距離分離分解能以下の計測は困難となる。即ち、0m点を直流DCと標記した場合、高速フーリエ変換で分解できる能力が3.9m(約4m)以上でなければならない。但し、単一目標物の場合は、これら距離分離分解能は問題とならない。また、最小探知距離もDC成分の除去が行われている場合、その距離算出における演算方法等により異なるが、近距離の計測値誤差が増加する傾向にある。
【0012】
以上のように、最小探知距離と距離分離分解能は、占有周波数帯域幅に依存し、その幅が電波法で規定されているため、レーダやセンサ等の性能は原理的に制約を受け、最小探知距離を約2m、距離分離分解能を約3.9mよりも短くすることが困難であった。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信波の占有周波数帯域幅が電波法で規定する76MHz以内となる条件でも、最小探知距離と距離分離分解能を短くすることができる測距方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に係る測距方法は、掃引出力された所定の周波数帯域幅の信号を分割することにより、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成し、この複数の送信信号を送信し、受信した目標物からの受信信号に、上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えて検波することにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を取得し、このビート信号に基づいて測距処理を実行することを特徴とする。
請求項2に係る測距装置は、所定帯域幅の周波数の掃引信号を形成する掃引回路と、この掃引回路から出力された所定の周波数帯域の掃引信号を分割し、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成するスイッチ回路と、このスイッチ回路から出力された信号を送受信する送受信回路と、この送受信回路から入力した受信信号に上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えることにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を形成する位相検波器と、この位相検波器の出力に対し測距処理を実行し、距離情報を演算する測距処理回路と、からなることを特徴とする。
請求項3の測距装置は、異なる周波数帯域幅の複数の信号からなる上記送信信号及び受信信号の周波数を変換するための周波数変換回路を設け、上記送受信回路から出力される送信信号の周波数帯域幅を一定とし、上記局部発振信号の周波数帯域幅を任意に設定可能としたことを特徴とする。
【0015】
本発明の構成によれば、掃引回路によって、例えば24.05GHz〜24.25GHzの200MHzの周波数帯域幅(振り幅)の信号が得られ、この信号はスイッチ回路で時分割(周波数分割)され、例えば50MHzの幅で順にずれた異なる周波数帯域幅の4つの信号が形成され、この信号が送信信号として送信回路から送信される。そして、受信側では目標物からの複数の受信信号を位相検波器に入力すると共に、この位相検波器に200MHzの周波数帯域幅からなる局部発振信号を与えることで、複数の受信信号を連結(波形合成)した形の連続波形のビート信号が形成される。このビート信号は、200MHzの周波数幅の送信信号を送受信したときと同等の信号となり、このビート信号の測距処理により、従来よりも短い距離の探知が可能となり、また距離分離分解能も高くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送信波の占有周波数帯域幅が電波法で規定する76MHz以内となる条件でも、擬似的に占有周波数帯域幅を広くすることと等しくなり、最小探知距離と距離分離分解能を従来よりも短くすることができるという効果ある。例えば、分割前の所定の周波数帯域幅を200MHzとした場合は、0.75m程度(2m以下)までの近距離の探知が可能となり、また1.5m程度(3.9m以下)の距離分離分解能を得ることができる。また、従来困難とされていた狭い空間での静止物体の測距、至近距離の測距、或いは複数のターゲットのそれぞれの分離測定等を容易に行うことが可能になる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電波法で規定する送信全体の200MHzの周波数帯域幅を維持したまま、局部発振周波数に200MHz以上の周波数を設定でき、最小探知距離と距離分離分解能を更に短くすることが可能になるという効果がある。また、局部発振信号の周波数を任意に設定でき、電波干渉を避けるために送信信号の周波数帯域幅を固定する際の設計の幅が広がるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る近距離測距が可能な測距装置(送受分離型)の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】第1実施例において送受一体型の測距装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】第1実施例の掃引周波数及び局部発振周波数を示す波形図である。
【図4】第1実施例において異なる周波数幅の複数の送信信号を形成する動作を示す各部の波形図である。
【図5】第1実施例で得られるビート信号の全体を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図6】第1実施例の第1送信信号で得られる第1ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図7】第1実施例の第2送信信号で得られる第2ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図8】第1実施例の第3送信信号で得られる第3ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図9】第1実施例の第4送信信号で得られる第4ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図10】第1実施例の4つの送信信号で得られる連続ビート信号を示す波形図である。
【図11】第1実施例と同様の占有周波数帯域幅とした場合の従来の測距装置で得られるビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図12】第2実施例の測距装置の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の測距装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1,図2には、本発明の第1実施例の近距離測距が可能な測距装置の構成が示されており、この図1は送受分離型の装置、図2は送受一体型の装置である。図1において、掃引回路18として、従来と同様に、電圧制御発振器(VCO)1、分配器2、PLL(位相同期ループ)を構成するPLL回路3、増幅器(AMP)5が設けられ、この掃引回路18の後段に、分配器6を介して、所定の周波数帯域幅の信号を時分割するためのオンオフ可能なスイッチ(信号分割)回路(増幅器で構成されたもの等)20が設けられ、この後段に、低域通過フィルタ(LPF)21を介して送信アンテナ8が配置される。この送信アンテナ8からは、例えば24.05〜24.25GHzの周波数帯域の中で、占有周波数帯域幅50MHz毎に順に分割した4つの送信信号(送信波)が送信される。
【0020】
一方、目標物からの反射波を受信する受信アンテナ10、増幅器11,12、位相検波器(MIX)23が設けられ、この位相検波器23では、この増幅器11から入力される送信信号(RF)と増幅器12から入力される局部発振信号(LO)の混合により位相差情報を含むビート信号が得られる。この位相検波器23の後段に、ビート信号を増幅するビート信号増幅器14及びアナログ/デジタルコンバータ(ADC)24を含むCPU25が設けられる。
【0021】
図2の送受一体型の場合は、図2に示されるように、低域通過フィルタ21の後段に、分配器27を介して送受信アンテナ28が配置され、この送受信アンテナ28で受信された信号が増幅器11へ入力される。
【0022】
第1実施例は以上の構成からなり、図3に示されるように、上記掃引回路18は、電波法に規定される全ての周波数帯域、即ち24.05GHzから24.25GHzの200MHzを例えば1024μsの時間で掃引しており、この掃引信号はスイッチ回路20に供給されると共に、振り幅200MHzの局部発振信号(Flo)として増幅器12を介して位相検波器23へ供給される。上記掃引信号は、PLLにより高安定な周波数となっており、掃引時間と周波数の関係は相関関係があり、時間的に分割することで、正確な周波数分割ができる。
【0023】
図4に示されるように、上記CPU25は、図4(A)の掃引トリガによって、図4(B)のチャンネル1〜4のように時間的に連続した切取り(分割)信号(TX CNT:256μs)を形成し、この切取り信号を上記スイッチ回路20へ供給しており、このスイッチ回路20では、切取り信号によって掃引信号を4つの信号に時分割(周波数分割)する。即ち、図4(C)に示されるように、200MHzの振り幅の掃引信号が時間的に順に切り取られ、例えばチャンネル1の信号は、24.25〜24.20GHzの50MHzの幅(1/4の幅)を持つ信号となり、50MHz毎に周波数分割した4つの信号が形成される。そして、この4つの信号が占有周波数帯域幅50MHzの第1〜第4送信信号(Ftx)として低域通過フィルタ21を介して送信アンテナ8(又は送受信アンテナ28)から出力される。
【0024】
上記送信アンテナ8から放射された4つの送信信号(Ftx)は、目標物に当って反射し、反射信号が受信アンテナ10(又は送受信アンテナ28)にて受信され、この受信信号(Frx)は、増幅器11を介して位相検波器23へ入力される。この位相検波器23では、受信信号(Frx)に対し送信信号と同期した局部発振信号(Flo)を与えることにより、送信波と受信波の位相差情報を持つビート信号が得られる。
【0025】
第1実施例では、占有周波数帯域幅50MHzの4つの受信信号を、送信信号(送信波)と同期した周波数帯域幅200MHzの局部発振信号で検波することで、位相検波器23から出力される4つのビート信号は、それらを繋げるとそれぞれの波形が連続した状態となり、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を用いた場合と同等のビート信号が得られる。
【0026】
図5には、占有周波数帯域幅200MHzをフル掃引した送信信号に基づいて得られるビート信号が示され、図6乃至図9には、1/4毎に時(周波数)分割した送信信号で得られた第1〜第4ビート信号が示されている。
これら図6乃至図9に示される第1〜第4ビート信号は、周波数分割しない場合の信号と同じ位相状態で出力される。即ち、周波数分割前と同一の局部発振信号(Flo)を用いて検波したときの各々のビート信号の位相状態は、連続して掃引した図5の位相状態と同じになる。従って、図10に示されるように、第1ビート信号〜第4ビート信号を繋げて合成すると、200MHzを連続掃引したときに等しい信号となる。
【0027】
その後、CPU25において、第1ビート信号〜第4ビート信号を合成した信号を用いて、高速フーリエ変換を行うことで、距離値を得ることができる。即ち、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を使用したときと同等の測距ができ、この場合は、0.75m程度までの近距離の探知が可能となり、また1.5m程度の距離分離分解能が得られる。従って、従来困難とされていた狭い空間での静止物体の測距、至近距離の測距、或いは複数のターゲットのそれぞれの分離測定等を容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記測距処理においては、近距離の測定をする場合、第1乃至第4ビート信号の全てを用いてもよいが、これらの中の連続する2つ又は3つのビート信号で測距演算を行ってもよく、また近距離でない場合は、従来と同様に一つのビート信号で測距を行うことができる。
【0029】
実施例では、上述した方法により、1区間の占有周波数帯域幅では1周期に満たない信号波形でも、合成することで1周期以上の波形を作成でき、近距離測距が可能となる(即ち、周期又は周波数を特定できる)。
【0030】
図11には、仮に位相検波器23の局部発振信号(LO)と送信信号(RF)を従来と同様に切り取らないで用い、占有周波数帯域幅を50MHzとした場合に得られるビート信号が示されている。この場合は、図11(A)のように、ビート信号は1周期に満たない信号となる。送信周波数帯域を変えても、各々同じ波形を示すことになる。
【0031】
これは、占有周波数帯域幅50MHzの送信信号と位相検波器の局部発振信号の位相が掃引毎に元に戻り、掃引毎に元に戻る局部発振信号で受信信号が検波されているからである。そして、このような1周期に満たない信号からビート信号の周波数を特定することは困難とされる。この場合に得られるビート信号周波数は、占有周波数帯域幅に関係する周波数で出力される。
【0032】
図12には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、周波数変換回路を設け、200MHz以上の占有周波数帯域幅の送信信号を用いた場合と同等になるようにしたものである。
【0033】
図12に示されるように、基準信号源30及びCPU31が設けられると共に、掃引回路32は、第1実施例の構成に増幅器32a、BPF(帯域通過フィルタ)32bを加えたものとし、送信側では、スイッチ回路20とLPF(低域通過フィルタ)21との間に、周波数変換回路の一部を構成するミキサ33、BPF34及び増幅器35が設けられ、受信側では、受信アンテナ10と位相検波器23との間に、増幅器38、周波数変換回路の一部を構成するミキサ39、BPF40及び増幅器41が設けられ、また位相検波器23と測距演算部との間に、HPF(高域通過フィルタ)43、増幅器44、アッテネータ(ATT)45及び増幅器46が設けられる。
【0034】
そして、周波数変換のために必要となる周波数を生成するために、電圧制御発振器(VCO)47a、分配器47b、PLL回路47c、増幅器47dからなる周波数発生部47が設けられ、この周波数発生部47には分配器48を介して増幅器49,50が接続されており、周波数発生部47から出力される周波数信号は、増幅器49からミキサ33、増幅器50からミキサ39へ与えられる。これらの回路は、周波数変換回路として配置される。
【0035】
このような第2実施例の構成によれば、掃引回路32にて200MHz以上の例えば400MHzの振り幅(周波数帯域幅)の掃引信号を形成し、この振り幅400MHzの信号を局部発振信号として用いる一方、送受信においては、周波数変換回路によって電波法の200MHz以内の周波数帯域幅を維持した信号とすることができる。
【0036】
例えば、掃引回路32にて、22.00〜22.40GHzの振り幅の掃引信号が形成され、この掃引信号がスイッチ回路20へ供給されると共に、この掃引信号は局部発振信号として位相検波器23へ供給されており、上記スイッチ回路20では、8つの切取り信号に基づいて周波数帯域幅50MHzで順に周波数分割した8つの信号が得られる。
【0037】
また、周波数発生部47では、2.05〜1.85GHzの間の8つの周波数が生成され、これらの周波数信号がミキサ33を介して周波数分割した8つの信号に与えられ(加算され)、第1〜第8の送信信号が得られる。即ち、第1送信信号となる22.40〜22.35GHz(占有周波数帯域幅50MHz)の信号に対して、1.85GHzの信号が加算され、第2送信信号となる22.35〜22.30GHzの信号に対して、1.825GHzの信号が加算され、…、第8送信信号となる22.05〜22.00GHzの信号に対して、2.05GHzの信号が加算されるというようにして、0.025GHzの間隔の信号が加算されることで、24.05〜24.25GHzの周波数帯域幅の送信信号が送信アンテナ8から出力される。
【0038】
一方、受信信号についても、ミキサ39によって、2.05〜1.85GHzの間の8つの周波数信号が与えられ、引き算する形で元の周波数に変換される。即ち、8つの受信信号の周波数が22.00〜22.40GHzの間の周波数に変換され、これらの受信信号は、位相検波器23にて22.00〜22.40GHzの振り幅の局部発振信号(LO)と比較・検波されることになり、この位相検波器23から出力された8つのビート信号に基づいて、距離値を得ることができる。
【0039】
即ち、第1実施例の場合と同様に、周波数分割前と同一の局部発振信号(Flo)を用いて検波したときの各々のビート信号の位相は、400MHzを連続して掃引した位相状態と同じになり、第1〜第8のビート信号を合成すると、400MHzを連続掃引したときに等しい信号となる。これによって、第1実施例に比べて更に近距離の測距が可能となる。
【0040】
この第2実施例によれば、擬似的に占有周波数帯域幅が200MHz以上となる送信信号に基づいた測距が可能となり、最小探知距離と距離分離分解能を更に短くすることができ、また局部発振信号の周波数を任意に設定でき、電波干渉を避けるために送信信号の周波数帯域幅を固定する際の設計の幅が広がるという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
測距センサ、近距離レーダ、侵入警戒用センサ、人体感知センサ、車載近距離バックセンサ、レベル計等に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,47a…電圧制御発振器(VCO)、2,6,27,47b,48…分配器、
3,47c…PLL(位相同期発振ループ)回路、
4…周波数逓倍器、 13,23…位相検波器、
16,25,31…CPU、 18,32…掃引回路、
20…スイッチ回路、 33,39…ミキサ、
47…周波数発生部。
【技術分野】
【0001】
本発明は測距方法及び装置、特にFM−CW方式のレーダや各種センサに採用される近距離測距が可能な測距装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図13には、24GHz帯を利用したFM−CW(Frequency-Modulated Continuous Wave)方式により距離計測を実行するレーダ(特定小電力)の回路構成が示されており、この回路では、電圧制御発振器(VCO)1、分配器2、VCO1を含んでPLL(Phase Locked Loop)を構成するPLL回路3、増幅器(AMP)5、分配器6、増幅器7、送信アンテナ8が設けられ、この送信アンテナ8から、76MHz以内の占有周波数帯域幅で、24.05〜24.25GHzの周波数帯域の送信信号が出力される。
【0003】
また、目標物9からの反射波を受信する受信アンテナ10、増幅器11,12、この増幅器11から入力される送信信号(RF)と増幅器12から入力される局部発振信号(LO)を混合して位相を検波する位相検波器(MIX)13、この位相検波器13から出力されるビート信号を増幅するビート信号増幅器14及びアナログ/デジタルコンバータ(ADC)15を含むCPU16が設けられる。
【0004】
このようなFM−CWレーダでは、周波数24GHz帯の送信波が送信アンテナ8から出力され、目標物9から反射して得られる受信波が受信アンテナ10、増幅器11を介して位相検波器13に入力される。この位相検波器13では、入力受信波に対し局部発振波を与えることにより、送信波と受信波の位相差がビート信号として出力される。このビート信号は、目標物9の距離に応じて周波数が変化しており、この周波数から距離情報を得ることができる。即ち、上記位相検波器13から出力されるビート信号は、低い周波数の信号であり、演算のためにADC15によりデジタル信号に変換され、従来から知られているように、高速フーリエ変換(FFT)等を行いた周波数成分の解析から、距離が算出される。
【0005】
なお、上記送信波は、周波数変調(FM変調)が行なわれ、単位時間当りの周波数を連続変化させており、この周波数変化量が送信波の占有周波数帯域幅となる。現在の電波法では、特定小電力の24GHz帯のFMーCWレーダにおいて、1つの送信波の占有周波数帯域幅は、最大76MHzと規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−284047号公報
【特許文献2】WO2007/026792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の測距方法及び装置では、最小探知距離及び距離分離分解能に限界があり、近距離の測距を正確に行えないという問題がある。
【0008】
即ち、上記位相検波器13から出力されるビート信号の周波数fbは、以下の式から求められる。
fb={(2×Δf)/(ST×c)}×r
ここで、Δf:占有周波数帯域幅、ST:掃引時間、c:光速、r:距離(m)である。
【0009】
そして、ビート信号において、その周波数fbから距離rを得る場合、掃引時間ST内に1回以上の周期を得ることで、その周波数を求めることができ、占有周波数帯域幅Δfと光速cの関係で掃引時間STに1周期が最小探知距離となる。例えば、電波法規定における占有周波数帯域幅Δf=75MHzの場合、最大でも約2m以下の距離において、掃引時間内で1周期以上得られることはなく、2m以下の距離を正確に得ることは困難となる。しかし、例えば占有周波数帯域幅Δfを2倍にすると、掃引時間STと等しい周波数になる距離は半分となり、最小(最短)探知距離が短くなる。
【0010】
一方、占有周波数帯域幅76MHzにおける測距能力を考えると、
距離分離分解能=光速/占有周波数帯域幅=3×108/76MHz≒3.9m
となり、計測される目標物が複数ある場合は、約3.9m以上離れないと分離計測ができないこととなる。従って、比較的近距離を計測するレーダやセンサにおいては、最大探知距離に対する距離分離分解能の割合が大きいことが分る。
【0011】
また、最小探知距離においても、距離分離分解能以下の計測は困難となる。即ち、0m点を直流DCと標記した場合、高速フーリエ変換で分解できる能力が3.9m(約4m)以上でなければならない。但し、単一目標物の場合は、これら距離分離分解能は問題とならない。また、最小探知距離もDC成分の除去が行われている場合、その距離算出における演算方法等により異なるが、近距離の計測値誤差が増加する傾向にある。
【0012】
以上のように、最小探知距離と距離分離分解能は、占有周波数帯域幅に依存し、その幅が電波法で規定されているため、レーダやセンサ等の性能は原理的に制約を受け、最小探知距離を約2m、距離分離分解能を約3.9mよりも短くすることが困難であった。
【0013】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、送信波の占有周波数帯域幅が電波法で規定する76MHz以内となる条件でも、最小探知距離と距離分離分解能を短くすることができる測距方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1に係る測距方法は、掃引出力された所定の周波数帯域幅の信号を分割することにより、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成し、この複数の送信信号を送信し、受信した目標物からの受信信号に、上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えて検波することにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を取得し、このビート信号に基づいて測距処理を実行することを特徴とする。
請求項2に係る測距装置は、所定帯域幅の周波数の掃引信号を形成する掃引回路と、この掃引回路から出力された所定の周波数帯域の掃引信号を分割し、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成するスイッチ回路と、このスイッチ回路から出力された信号を送受信する送受信回路と、この送受信回路から入力した受信信号に上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えることにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を形成する位相検波器と、この位相検波器の出力に対し測距処理を実行し、距離情報を演算する測距処理回路と、からなることを特徴とする。
請求項3の測距装置は、異なる周波数帯域幅の複数の信号からなる上記送信信号及び受信信号の周波数を変換するための周波数変換回路を設け、上記送受信回路から出力される送信信号の周波数帯域幅を一定とし、上記局部発振信号の周波数帯域幅を任意に設定可能としたことを特徴とする。
【0015】
本発明の構成によれば、掃引回路によって、例えば24.05GHz〜24.25GHzの200MHzの周波数帯域幅(振り幅)の信号が得られ、この信号はスイッチ回路で時分割(周波数分割)され、例えば50MHzの幅で順にずれた異なる周波数帯域幅の4つの信号が形成され、この信号が送信信号として送信回路から送信される。そして、受信側では目標物からの複数の受信信号を位相検波器に入力すると共に、この位相検波器に200MHzの周波数帯域幅からなる局部発振信号を与えることで、複数の受信信号を連結(波形合成)した形の連続波形のビート信号が形成される。このビート信号は、200MHzの周波数幅の送信信号を送受信したときと同等の信号となり、このビート信号の測距処理により、従来よりも短い距離の探知が可能となり、また距離分離分解能も高くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送信波の占有周波数帯域幅が電波法で規定する76MHz以内となる条件でも、擬似的に占有周波数帯域幅を広くすることと等しくなり、最小探知距離と距離分離分解能を従来よりも短くすることができるという効果ある。例えば、分割前の所定の周波数帯域幅を200MHzとした場合は、0.75m程度(2m以下)までの近距離の探知が可能となり、また1.5m程度(3.9m以下)の距離分離分解能を得ることができる。また、従来困難とされていた狭い空間での静止物体の測距、至近距離の測距、或いは複数のターゲットのそれぞれの分離測定等を容易に行うことが可能になる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電波法で規定する送信全体の200MHzの周波数帯域幅を維持したまま、局部発振周波数に200MHz以上の周波数を設定でき、最小探知距離と距離分離分解能を更に短くすることが可能になるという効果がある。また、局部発振信号の周波数を任意に設定でき、電波干渉を避けるために送信信号の周波数帯域幅を固定する際の設計の幅が広がるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る近距離測距が可能な測距装置(送受分離型)の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】第1実施例において送受一体型の測距装置の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】第1実施例の掃引周波数及び局部発振周波数を示す波形図である。
【図4】第1実施例において異なる周波数幅の複数の送信信号を形成する動作を示す各部の波形図である。
【図5】第1実施例で得られるビート信号の全体を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図6】第1実施例の第1送信信号で得られる第1ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図7】第1実施例の第2送信信号で得られる第2ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図8】第1実施例の第3送信信号で得られる第3ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図9】第1実施例の第4送信信号で得られる第4ビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図10】第1実施例の4つの送信信号で得られる連続ビート信号を示す波形図である。
【図11】第1実施例と同様の占有周波数帯域幅とした場合の従来の測距装置で得られるビート信号を示し、図(A)はビート信号の波形図、図(B)は掃引周波数の遷移図である。
【図12】第2実施例の測距装置の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の測距装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1,図2には、本発明の第1実施例の近距離測距が可能な測距装置の構成が示されており、この図1は送受分離型の装置、図2は送受一体型の装置である。図1において、掃引回路18として、従来と同様に、電圧制御発振器(VCO)1、分配器2、PLL(位相同期ループ)を構成するPLL回路3、増幅器(AMP)5が設けられ、この掃引回路18の後段に、分配器6を介して、所定の周波数帯域幅の信号を時分割するためのオンオフ可能なスイッチ(信号分割)回路(増幅器で構成されたもの等)20が設けられ、この後段に、低域通過フィルタ(LPF)21を介して送信アンテナ8が配置される。この送信アンテナ8からは、例えば24.05〜24.25GHzの周波数帯域の中で、占有周波数帯域幅50MHz毎に順に分割した4つの送信信号(送信波)が送信される。
【0020】
一方、目標物からの反射波を受信する受信アンテナ10、増幅器11,12、位相検波器(MIX)23が設けられ、この位相検波器23では、この増幅器11から入力される送信信号(RF)と増幅器12から入力される局部発振信号(LO)の混合により位相差情報を含むビート信号が得られる。この位相検波器23の後段に、ビート信号を増幅するビート信号増幅器14及びアナログ/デジタルコンバータ(ADC)24を含むCPU25が設けられる。
【0021】
図2の送受一体型の場合は、図2に示されるように、低域通過フィルタ21の後段に、分配器27を介して送受信アンテナ28が配置され、この送受信アンテナ28で受信された信号が増幅器11へ入力される。
【0022】
第1実施例は以上の構成からなり、図3に示されるように、上記掃引回路18は、電波法に規定される全ての周波数帯域、即ち24.05GHzから24.25GHzの200MHzを例えば1024μsの時間で掃引しており、この掃引信号はスイッチ回路20に供給されると共に、振り幅200MHzの局部発振信号(Flo)として増幅器12を介して位相検波器23へ供給される。上記掃引信号は、PLLにより高安定な周波数となっており、掃引時間と周波数の関係は相関関係があり、時間的に分割することで、正確な周波数分割ができる。
【0023】
図4に示されるように、上記CPU25は、図4(A)の掃引トリガによって、図4(B)のチャンネル1〜4のように時間的に連続した切取り(分割)信号(TX CNT:256μs)を形成し、この切取り信号を上記スイッチ回路20へ供給しており、このスイッチ回路20では、切取り信号によって掃引信号を4つの信号に時分割(周波数分割)する。即ち、図4(C)に示されるように、200MHzの振り幅の掃引信号が時間的に順に切り取られ、例えばチャンネル1の信号は、24.25〜24.20GHzの50MHzの幅(1/4の幅)を持つ信号となり、50MHz毎に周波数分割した4つの信号が形成される。そして、この4つの信号が占有周波数帯域幅50MHzの第1〜第4送信信号(Ftx)として低域通過フィルタ21を介して送信アンテナ8(又は送受信アンテナ28)から出力される。
【0024】
上記送信アンテナ8から放射された4つの送信信号(Ftx)は、目標物に当って反射し、反射信号が受信アンテナ10(又は送受信アンテナ28)にて受信され、この受信信号(Frx)は、増幅器11を介して位相検波器23へ入力される。この位相検波器23では、受信信号(Frx)に対し送信信号と同期した局部発振信号(Flo)を与えることにより、送信波と受信波の位相差情報を持つビート信号が得られる。
【0025】
第1実施例では、占有周波数帯域幅50MHzの4つの受信信号を、送信信号(送信波)と同期した周波数帯域幅200MHzの局部発振信号で検波することで、位相検波器23から出力される4つのビート信号は、それらを繋げるとそれぞれの波形が連続した状態となり、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を用いた場合と同等のビート信号が得られる。
【0026】
図5には、占有周波数帯域幅200MHzをフル掃引した送信信号に基づいて得られるビート信号が示され、図6乃至図9には、1/4毎に時(周波数)分割した送信信号で得られた第1〜第4ビート信号が示されている。
これら図6乃至図9に示される第1〜第4ビート信号は、周波数分割しない場合の信号と同じ位相状態で出力される。即ち、周波数分割前と同一の局部発振信号(Flo)を用いて検波したときの各々のビート信号の位相状態は、連続して掃引した図5の位相状態と同じになる。従って、図10に示されるように、第1ビート信号〜第4ビート信号を繋げて合成すると、200MHzを連続掃引したときに等しい信号となる。
【0027】
その後、CPU25において、第1ビート信号〜第4ビート信号を合成した信号を用いて、高速フーリエ変換を行うことで、距離値を得ることができる。即ち、占有周波数帯域幅200MHzの送信信号を使用したときと同等の測距ができ、この場合は、0.75m程度までの近距離の探知が可能となり、また1.5m程度の距離分離分解能が得られる。従って、従来困難とされていた狭い空間での静止物体の測距、至近距離の測距、或いは複数のターゲットのそれぞれの分離測定等を容易に行うことができる。
【0028】
なお、上記測距処理においては、近距離の測定をする場合、第1乃至第4ビート信号の全てを用いてもよいが、これらの中の連続する2つ又は3つのビート信号で測距演算を行ってもよく、また近距離でない場合は、従来と同様に一つのビート信号で測距を行うことができる。
【0029】
実施例では、上述した方法により、1区間の占有周波数帯域幅では1周期に満たない信号波形でも、合成することで1周期以上の波形を作成でき、近距離測距が可能となる(即ち、周期又は周波数を特定できる)。
【0030】
図11には、仮に位相検波器23の局部発振信号(LO)と送信信号(RF)を従来と同様に切り取らないで用い、占有周波数帯域幅を50MHzとした場合に得られるビート信号が示されている。この場合は、図11(A)のように、ビート信号は1周期に満たない信号となる。送信周波数帯域を変えても、各々同じ波形を示すことになる。
【0031】
これは、占有周波数帯域幅50MHzの送信信号と位相検波器の局部発振信号の位相が掃引毎に元に戻り、掃引毎に元に戻る局部発振信号で受信信号が検波されているからである。そして、このような1周期に満たない信号からビート信号の周波数を特定することは困難とされる。この場合に得られるビート信号周波数は、占有周波数帯域幅に関係する周波数で出力される。
【0032】
図12には、第2実施例の構成が示されており、この第2実施例は、周波数変換回路を設け、200MHz以上の占有周波数帯域幅の送信信号を用いた場合と同等になるようにしたものである。
【0033】
図12に示されるように、基準信号源30及びCPU31が設けられると共に、掃引回路32は、第1実施例の構成に増幅器32a、BPF(帯域通過フィルタ)32bを加えたものとし、送信側では、スイッチ回路20とLPF(低域通過フィルタ)21との間に、周波数変換回路の一部を構成するミキサ33、BPF34及び増幅器35が設けられ、受信側では、受信アンテナ10と位相検波器23との間に、増幅器38、周波数変換回路の一部を構成するミキサ39、BPF40及び増幅器41が設けられ、また位相検波器23と測距演算部との間に、HPF(高域通過フィルタ)43、増幅器44、アッテネータ(ATT)45及び増幅器46が設けられる。
【0034】
そして、周波数変換のために必要となる周波数を生成するために、電圧制御発振器(VCO)47a、分配器47b、PLL回路47c、増幅器47dからなる周波数発生部47が設けられ、この周波数発生部47には分配器48を介して増幅器49,50が接続されており、周波数発生部47から出力される周波数信号は、増幅器49からミキサ33、増幅器50からミキサ39へ与えられる。これらの回路は、周波数変換回路として配置される。
【0035】
このような第2実施例の構成によれば、掃引回路32にて200MHz以上の例えば400MHzの振り幅(周波数帯域幅)の掃引信号を形成し、この振り幅400MHzの信号を局部発振信号として用いる一方、送受信においては、周波数変換回路によって電波法の200MHz以内の周波数帯域幅を維持した信号とすることができる。
【0036】
例えば、掃引回路32にて、22.00〜22.40GHzの振り幅の掃引信号が形成され、この掃引信号がスイッチ回路20へ供給されると共に、この掃引信号は局部発振信号として位相検波器23へ供給されており、上記スイッチ回路20では、8つの切取り信号に基づいて周波数帯域幅50MHzで順に周波数分割した8つの信号が得られる。
【0037】
また、周波数発生部47では、2.05〜1.85GHzの間の8つの周波数が生成され、これらの周波数信号がミキサ33を介して周波数分割した8つの信号に与えられ(加算され)、第1〜第8の送信信号が得られる。即ち、第1送信信号となる22.40〜22.35GHz(占有周波数帯域幅50MHz)の信号に対して、1.85GHzの信号が加算され、第2送信信号となる22.35〜22.30GHzの信号に対して、1.825GHzの信号が加算され、…、第8送信信号となる22.05〜22.00GHzの信号に対して、2.05GHzの信号が加算されるというようにして、0.025GHzの間隔の信号が加算されることで、24.05〜24.25GHzの周波数帯域幅の送信信号が送信アンテナ8から出力される。
【0038】
一方、受信信号についても、ミキサ39によって、2.05〜1.85GHzの間の8つの周波数信号が与えられ、引き算する形で元の周波数に変換される。即ち、8つの受信信号の周波数が22.00〜22.40GHzの間の周波数に変換され、これらの受信信号は、位相検波器23にて22.00〜22.40GHzの振り幅の局部発振信号(LO)と比較・検波されることになり、この位相検波器23から出力された8つのビート信号に基づいて、距離値を得ることができる。
【0039】
即ち、第1実施例の場合と同様に、周波数分割前と同一の局部発振信号(Flo)を用いて検波したときの各々のビート信号の位相は、400MHzを連続して掃引した位相状態と同じになり、第1〜第8のビート信号を合成すると、400MHzを連続掃引したときに等しい信号となる。これによって、第1実施例に比べて更に近距離の測距が可能となる。
【0040】
この第2実施例によれば、擬似的に占有周波数帯域幅が200MHz以上となる送信信号に基づいた測距が可能となり、最小探知距離と距離分離分解能を更に短くすることができ、また局部発振信号の周波数を任意に設定でき、電波干渉を避けるために送信信号の周波数帯域幅を固定する際の設計の幅が広がるという利点もある。
【産業上の利用可能性】
【0041】
測距センサ、近距離レーダ、侵入警戒用センサ、人体感知センサ、車載近距離バックセンサ、レベル計等に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,47a…電圧制御発振器(VCO)、2,6,27,47b,48…分配器、
3,47c…PLL(位相同期発振ループ)回路、
4…周波数逓倍器、 13,23…位相検波器、
16,25,31…CPU、 18,32…掃引回路、
20…スイッチ回路、 33,39…ミキサ、
47…周波数発生部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掃引出力された所定の周波数帯域幅の信号を分割することにより、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成し、
この複数の送信信号を送信し、
受信した目標物からの受信信号に、上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えて検波することにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を取得し、このビート信号に基づいて測距処理を実行する測距方法。
【請求項2】
所定帯域幅の周波数の掃引信号を形成する掃引回路と、
この掃引回路から出力された所定の周波数帯域の掃引信号を分割し、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成するスイッチ回路と、
このスイッチ回路から出力された信号を送受信する送受信回路と、
この送受信回路から入力した受信信号に上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えることにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を形成する位相検波器と、
この位相検波器の出力に対し測距処理を実行し、距離情報を演算する測距処理回路と、からなる測距装置。
【請求項3】
異なる周波数帯域幅の複数の信号からなる上記送信信号及び受信信号の周波数を変換するための周波数変換回路を設け、
上記送受信回路から出力される送信信号の周波数帯域幅を一定とし、上記局部発振信号の周波数帯域幅を任意に設定可能としたことを特徴とする請求項2記載の測距装置。
【請求項1】
掃引出力された所定の周波数帯域幅の信号を分割することにより、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成し、
この複数の送信信号を送信し、
受信した目標物からの受信信号に、上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えて検波することにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を取得し、このビート信号に基づいて測距処理を実行する測距方法。
【請求項2】
所定帯域幅の周波数の掃引信号を形成する掃引回路と、
この掃引回路から出力された所定の周波数帯域の掃引信号を分割し、異なる周波数帯域幅の複数の送信信号を形成するスイッチ回路と、
このスイッチ回路から出力された信号を送受信する送受信回路と、
この送受信回路から入力した受信信号に上記所定の周波数帯域幅の局部発振信号を与えることにより、異なる周波数帯域幅の複数の受信信号が連結した連続波形のビート信号を形成する位相検波器と、
この位相検波器の出力に対し測距処理を実行し、距離情報を演算する測距処理回路と、からなる測距装置。
【請求項3】
異なる周波数帯域幅の複数の信号からなる上記送信信号及び受信信号の周波数を変換するための周波数変換回路を設け、
上記送受信回路から出力される送信信号の周波数帯域幅を一定とし、上記局部発振信号の周波数帯域幅を任意に設定可能としたことを特徴とする請求項2記載の測距装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−12960(P2011−12960A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154481(P2009−154481)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】
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