溶接型光ひずみゲージとその製造方法および溶接型光ひずみゲージユニット
【課題】 耐環境性に優れ、ひずみ伝達率が安定的に高く、外部要因である磁界、電界、温度の影響を受けない溶接型光ひずみゲージを提供する。
【解決手段】 この溶接型光ひずみゲージ1は、両端が開口された極小径の金属シースチューブ3と、この金属シースチューブ3にライン状に溶接6された薄板状のフランジ板2と、金属シースチューブ3の内空に挿通され且つ接着剤5によって固着されたファイバブラッググレーティング部(FBG)4aを含む光ファイバ4から構成されている。
この溶接型光ファイバ1は、被測定対象物7上において、フランジ部2a、2bをスポット溶接することにより、確実に固着される。FBG4aは、光ファイバに書き込まれたグレーティングのピッチがひずみや温度によって変化する。その変化に応じてグレーティングからブラッグ反射する光のピーク波長が変化することを利用してひずみ等を計測する。
【解決手段】 この溶接型光ひずみゲージ1は、両端が開口された極小径の金属シースチューブ3と、この金属シースチューブ3にライン状に溶接6された薄板状のフランジ板2と、金属シースチューブ3の内空に挿通され且つ接着剤5によって固着されたファイバブラッググレーティング部(FBG)4aを含む光ファイバ4から構成されている。
この溶接型光ファイバ1は、被測定対象物7上において、フランジ部2a、2bをスポット溶接することにより、確実に固着される。FBG4aは、光ファイバに書き込まれたグレーティングのピッチがひずみや温度によって変化する。その変化に応じてグレーティングからブラッグ反射する光のピーク波長が変化することを利用してひずみ等を計測する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:以下「FBG」と略す場合がある)を被測定対象物に溶接可能となして、当該FBG部により被測定対象物のひずみを計測し得るように構成してなる溶接型光ひずみゲージ、溶接型光ひずみゲージの製造方法および溶接型光ひずみゲージユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみを計測するセンサとしては、従来は、箔ゲージや半導体ゲージ等のひずみゲージが一般に広く使用されている。特に、小さいひずみしか発生しないような個所におけるひずみ計測には、半導体ゲージ等が使用されることが多かった。
しかしながら、このようなひずみゲージを利用した各種センサには、屋外設置等において対雷対策において難点があり、さらには長期安定性を阻害する要素として絶縁の劣化がある。
このような点に優位性があるものとして、FBGをファイバ型検出素子に用いたひずみセンサや温度センサの開発が進められている。
FBGは、光ファイバのコア内に所定周期(「グレーティング周期」という)で所定間隔おきに所定長(グレーティング長」という)の屈折率変化部分を形成するものである。上記屈折率変化部分は、例えば紫外レーザ光を光ファイバに照射することにより作製する。
光ファイバに書き込まれたグレーティングのピッチがひずみや温度によって変化すると、その変化に応じてグレーティングからブラッグ反射する光のピーク波長(「ブラッグ波長」という)が変化すること、あるいはグレーティングを透過する光のスペクトルが変化(ディップ光の中心波長が変化)することを利用したものである。
【0003】
このようなFBGを用いた貼り付け型光ファイバセンサとして、例えば、特開2001−296110(特許文献1)にて提案されたものがある。
即ち、この特許文献1には、被検出個所に光ファイバを貼り付け易くするため、FBGを含む光ファイバを樹脂にてフィルムに固定したもの、光ファイバを2枚のフィルム間に挟んだ上で樹脂にて固定したもの、光ファイバをフィルム上にメッキにて固定したもの、光ファイバをフィルム上に蒸着にて固定したもの、などが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−296110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、発明の効果の記載によれば、光ファイバがフィルムに予め固定されているため、フィルムを検出個所との間の接着剤が薄く伸びるので、施工性が容易となり、また、接着時の押し付け圧を平均化し、被検出個所にひずみが発生したときのひずみを平均化して検出できるため真のひずみによるブラッグ波長シフト量を高精度に検出することができる、としている。
しかしながら、上記特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、FBG光ファイバを樹脂、メッキ、蒸着等でフィルム上に固定したものであるため、固定方法としては強固なものではなく、また外方からの不用意な力や衝撃が加えられた場合、簡単に損傷し、所期の機能を果たし得なくなる、という難点があるほか、防水防湿性においても問題がある。
さらにまた、上記特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、ひずみ伝達系を構成する材料、特に接着剤の劣化や、温度変化に伴う物性変化の影響を受け易く、長期安定性や精度の低下を来たし易い、という難点がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、耐環境性の向上を図り、もって長期安定性の改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第2の目的とするところは、ひずみの伝達系を構成する部材の物性が変化してもFBG部についてはその影響を受け難い溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第3の目的とするところは、ひずみ伝達系が極めて安定性に優れ、零点漂動および温度特性の改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第4の目的として、光ひずみゲージ間の感度のばらつきが極めて少ない溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第5の目的とするところは、従来の箔ゲージや半導体ゲージ等において大きな問題であった電磁ノイズ対策や対雷対策を施す必要がなく、構成が簡素で低価格を実現しつつ、上述した種々の目的を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第6の目的とするところは、被測定対象物のひずみを計測すると共に、その近傍の温度をも計測し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第7の目的とするところは、上記した種々の目的を実現し得る溶接型光ひずみゲージを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上述した第1および第5の目的を達成するために、両端が開口された極小径の金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、を有し、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項2に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1および第5の目的を達成するために、前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であることを特徴としている。
請求項3に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1および第5の目的を達成するために、前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものであることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第3の目的を達成するために、前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなることを特徴としている。
請求項5に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第5の目的を達成するために、前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されていることを特徴としている。
請求項6に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第5の目的を達成するために、前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有することを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第6の目的を達成するために、両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着され前記ひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項8に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法は、上記第1〜第5の目的および第7の目的を達成するために、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項9に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法は、上記第1〜第5の目的および第7の目的を達成するために、極小径の金属シースチューブの外周面に平板上のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有することを特徴としている。
請求項10に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージユニットは、上記第1〜第5の目的を達成するために、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、両端が開口された極小径の金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、を有し、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成したので、極小径の金属シースチューブの内空に固着されたファイバブラッググレーティング部は準気密構造とされ、外部からの水分や湿気の浸入が抑制され、耐環境性が向上し、長期安定性を確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であるため、ファイバブラッググレーティング部が接着剤により極小径の金属シースチューブ内に準気密状態で固着され、外部からの水分や湿気の浸入が抑制され耐環境性が向上し、長期安定性を確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものでため、ひずみ伝達系による材料の長期使用に基づく劣化や物性変化が軽微であり、長期安定性を充分に確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなるので、ひずみ伝達系を構成する部材(例えば、接着剤)の物性が変化しても、ファイバブラッググレーティング部においてはその影響を受けず、例えば、クリープ特性、零点漂動および温度特性の改善を図り得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されているので、金属シースチューブ内の容積を圧縮し接着剤等の固着手段の未充填部を無くし均一な充填層を形成することができ、延いては、光ひずみゲージの感度のばらつきが極めて少なくなり、併せて零点漂動および温度特性の大幅な改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有する構成としたので、光ひずみゲージは外部からの衝撃に充分に耐えると共に、被測定対象物にスポット溶接されたフランジ板の錆の発生を防止し、耐環境性をより一層改善し、耐久性を飛躍的に向上し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0014】
請求項7に記載の発明によれば、両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着され前記ひずみ計測用ファイバブラッグレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したので、他の方法に比べ、より正確な温度補償を行い得ると共に、温度ヒステリシスが生じない、という利点があり、ひずみ計測部に極く近い部分の温度を計測するため過渡現象の温度補償も行うことができ、しかも同一の金属シースチューブ内に同一の接着剤を用いて同一工程の中で製作されるので、構成が簡素なことと相俟って低価格で、安定した特性の溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有する構成としたので、耐環境性に優れ、長期安定性に優れる溶接型光ひずみゲージを安価に製作し得る溶接型光ひずみゲージの製造方法を提供することができる。
【0016】
請求項9に記載の発明によれば、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有する構成としたので、感度のばらつき、零点漂動、ヒステリシスおよび温度特性を大幅に改善し得る溶接型光ひずみゲージの製造方法を提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したので、広範囲に亘る被測定対象物を、多点において常時且つ同時的に十分な計測精度でひずみを計測し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明の溶接型光ひずみゲージを詳細に説明する。
図1(a),(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面横断面図、平面図および正面縦断面図である。
同図において、溶接型光ひずみゲージ1は、フランジ板2、金属シースチューブ3、ファイバ ブラッグ グレーティング(FBG:Fiber Bragg Graiting)部4aを中間に含む光ファイバ4および光ファイバ4を金属シースチューブ3の内空に光ファイバ4を固着する固定手段としての接着剤5よりなる。
金属シースチューブ3は、極小径(例えば、約0.3mm)で断面が円形状をなす適宜長さのステンレス金属材料で形成される。
フランジ板2は、例えばインコネル等の金属材料からなる薄肉の長方形平板状を呈している。
金属シースチューブ3は、フランジ板2の長手方向の中心線に沿って当接した状態でその当接部をフランジ板2側から、例えば電子ビーム溶接(EBW)6等により、1ラインのライン状の溶接部6により金属シースチューブ3にフランジ板2を固着している。
【0018】
フランジ板2の金属シースチューブ3が固着されている部分の両側、即ち図1(b)における上側と下側、図1(c)における右側と左側、のフランジ部2aと2bは、この部分を被測定対象面にスポット溶接2c等により固定する部分であり、被測定対象物7のひずみをFBGに伝える作用を有する。
ここで、上述における金属シースチューブ3の内壁へのFBG4aを有する光ファイバ4の接着工程を含む溶接型光ひずみゲージ1の製造における作業手順の一例を、上述した図1および図2、図3を参照して説明する。
この場合、FBG部4aは、予めホログラフィック法やフェイズマスク法等にてコア内に周期的屈折率変化を生じさせておくものとする。
(1) 所定長に裁断された極小径の金属シースチューブ3の外周面を、平板上のフランジ板2の長手方向(図1(b)における左右方向)に沿う仮想中心線2dに合わせて当接し、フランジ板2の下面側(図1(c)における下面側)から電子ビーム溶接(EWB)6等によって、ライン状に溶接して、フランジ板2に固着しておく(この工程を、以下「溶接ステップ」という)。
【0019】
金属シースチューブ3は、この場合、具体的には、例えば、外径が0.55mm、内径が0.3mmのものを用いている。但し、この寸法に限られるものではなく、上記外径、内径ともこの前後の寸法のものを、光ファイバ4の外径に対応して適宜設定するものとする。
(2) このような状態で、FBG部4aを有する光ファイバ4の外周面に、接着剤5(例えば、エポキシ系接着剤)を塗布する。また、金属シースチューブ3の内空に予め、接着剤5を塗布しておいてもよいが、光ファイバ4の挿入側先端面に接着剤5が付着する虞れがあるので、接着剤5の付着を防止する部材を冠着しておく必要がある。
この後、光ファイバ4を、金属シースチューブ3の例えば、右端側から挿入し、左端側まで、挿通してFBG部4aが所定の位置、例えば、金属シースチューブ3の中央部に至った段階まで、光ファイバ4を引き出した位置で、引き出しを停止する。この引き出した状態が図1(a)、図1(b)に示す状態である。
【0020】
本発明の第1の実施の形態においては、この状態で接着剤5を硬化させることにより、溶接型ひずみゲージ1が完成する。(この工程を、「光ファイバ固着ステップ」という)。
尚、光ひずみゲージ1を、ホットプレート(図示せず)に載置して接着剤5を熱硬化させるようにしてもよい。
(3) 本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法においては、上記、「光ファイバ固着ステップ」の段階において、接着剤5が硬化する前に、金属シースチューブ3を、図2および図3(a)、(b)に示すように、フランジ板2の長さにほぼ相当する長さ範囲に亘って、フランジ板2の板面に向かう方向(図2において、下方向)に押し潰して、長円状(偏平状)あるいは楕円状に成形する(この工程を「押し潰しステップ」という)。
この押し潰しステップにおいては、一気に板面に平行に押し潰すのではなく、金属シースチューブ3の中央から次第に端部に向かって押し潰すことが望ましい。
【0021】
これは、金属シースチューブ3内に充填された接着剤5が、金属シースチューブ3が押し潰されることによって過剰となるため、その過剰分は、金属シースチューブ3の内周面と、光ファイバ4の外周面とによって挟まれる空間内を万遍なく充填された上で、金属シースチューブ3の両端から、溢れ出るからである。図2に示すように、金属シースチューブ3の両端から接着剤5が溢れて固化されるので、密閉性が良好となる。この押し潰し量は、金属シースチューブ3内の光ファイバ4(FBG4a)を押し潰すことなく、換言すれば、光ファイバ4への変形を与えない程度に押し潰す適宜な量である。
具体的にその一例を挙げれば、外径が0.55mm、その内径が0.3mmの金属シースチューブ3内に、外径が0.13mmの光ファイバ4を挿通して接着剤5を充填させた場合において、押し潰し量は、0.1mmとした。
このとき、光ファイバ4の外径と、0.1mm押し潰された金属シースチューブ3の上下方向寸法との差は、0.3mm−0.1mm=0.2mmであるので、光ファイバ4の外周と金属シースチューブ3の変形後の内壁との寸法差は、0.2mm−0.13mm=0.07mmであり、従って、接着剤5は、光ファイバ4の上下に均一に充填されているものとすると、押し潰された方向(上下方向)の接着剤5の層の厚みは僅か0.035mmとなり、FBG部4aは、金属シースチューブ3内に安定的に支持される。
【0022】
(4) 本発明に係る第1の実施の形態および第2の実施の形態の溶接型光ひずみゲージは、上述のステップによって製造されるが、次に使用上の工程を説明する。
先ず、被測定対象物7のひずみを計測すべき部位に溶接型光ひずみゲージのフランジ板2を裁置し、フランジ部2a、2bの上にスポット溶接機の電極棒(図示せず)を位置させ、通電させてスポット溶接6を行う(この工程を「スポット溶接ステップ」という)。スポット溶接は、フランジ部2a、2bのほぼ全域に亘って所定間隔で複数回繰り返す。
通常の環境下における使用であれば、上述した状態で、ひずみ計測を実施する。(ひずみ計測方法については後述する)。
(5) 屋外や金属の腐食を生じさせる環境下で使用するものにあっては、さらに、次のような第3の実施の形態に示す次の工程を加えるものとする。
即ち、第3の実施の形態は、図4において、被測定対象物7に溶接型光ひずみゲージのフランジ部2a、2bをスポット溶接した後に、フランジ板2の全部と少なくとも金属シースチューブ3の一部(場合によっては、光ファイバ4の一部)を覆い得る形状を呈するプロテクタ8をフランジ板2、金属チューブ3を覆うように被せる。(この工程を、「プロテクタ冠着ステップ」という)。
【0023】
次いで、このように冠着されたプロテクタ8の周辺近傍から被測定対象物7にかけて、コーティング剤を塗布しコーティング膜9を形成する。
これによって、フランジ部2a、2bと共にスポット溶接をした部分を、確実に覆って外気と遮断するので、スポット溶接2cされたフランジ部2a、2bや被測定対象物7の溶接部の腐食を防止することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について詳細に説明する。
図5は、ひずみ計測用FBG部4aの他に、温度計測用FBG部4bを別途設けてなる溶接型光ひずみゲージの第4の実施の形態を示す平面図である。
(1)´ 図5において、所定長に裁断された極小径の金属シースチューブ3の外周面を薄肉の平板上のフランジ板2の長手方向のほぼ仮想中心線2dに合せて当接し、フランジ板2の下面側から電子ビーム溶接6等によってライン状に溶接する溶接ステップは、第1の実施の形態と同じでる。
(2)´ 上記溶接ステップの前後を問わず、図5に示すように、1本の光ファイバ4に直列状に所定の間隔を隔てて2個所にFBG部4aと4bを作製する(以下「FBG作製ステップ」という)。この2個所のFBG部4a、4bの寸法的関係は、次の通りである。
【0024】
先ず、第1のFBG部4aの長さは、ひずみが100%伝わる長さの半分程度になるように設定し、第2のFBG部4bの長さは、第1のFBG部4aと同等の長さかそれ以下でもよく、温度を計測できれば足りるので、あまり厳密な寸法は要求されないが、配置位置としては、金属シースチューブ3の内空に固着された状態で、フランジ板2のなるべく近傍が望ましい。
このような状態で、互いには長の異なる2つのFBG部4a、4bを有する光ファイバ4の外周面に、接着剤5を塗布する。この後、光ファイバ4を金属シースチューブ3の、例えば、右端側から挿入し、第1のFBG部4aがフランジ板2の中央部の所定位置に至るまで光ファイバ4を引き出した位置で引き出しを停止する。このとき、第2のFBG4bがフランジ板2の近傍、即ち、溶接型光ひずみゲージの近傍に配設される。この状態で接着剤5を硬化させることにより、温度計測機能光ファイバ付きの溶接型光ひずみゲージ1が完成する(この工程は、「光ファイバ固着ステップ」という)。
【0025】
また、この場合においても、本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージと同様に、上記「光ファイバ固着ステップ」の段階において、接着剤5が硬化する前に、金属シースチューブ3を、図2および図3(b)に示すように、フランジ板2の長さにほぼ相当する長さ範囲に亘って、フランジ板2の板面に向かう方向に押し潰して断面が長円形状(偏平状)、あるいは略楕円形状に形成する(この工程を、「押し潰しステップ」という)。この押し潰しステップの作業要領は、上述した第2の実施の形態における「押し潰しステップ」と同様であるので、重複した説明は省略する。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
上述した各実施の形態においては、光ファイバ4を金属シースチューブ3の内空に固着する手段として、接着剤5を用いた例を示したが、接着剤を用いる代りに、表面がメタライズされた光ファイバ4を金属シースチューブ3に挿入した状態で、光ファイバ4と金属シースチューブ3との間を超音波ハンダまたはろう付けで固着する(図示せず)。
【0026】
次に、本発明第6の実施の形態について説明する。
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージユニットと、その溶接型光ひずみゲージユニットを用いた多点ひずみ計測システムの回路構成を示す。
多点ひずみ計測システムは、光源11と、光サーキュレータ12と、光スイッチ13と、溶接型光ひずみゲージ111〜116、121〜126、131〜136、141〜146と、光ファイバ4と、光コネクタ10と、波長計17と、制御装置18とから構成されている。溶接型光ひずみゲージ111〜116は第1系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ121〜126は第2系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ131〜136は第3系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ141〜146は第4系統の計測系をそれぞれ構成している。尚、溶接型光ひずみゲージ111〜116、121〜126、131〜136、141〜146を総称するときは、単に、溶接型光ひずみゲージ1と表す。この総称に関しては、他の構成要素でも同様である。
【0027】
光源11は、例えば、希土類元素添加光ファイバを、半導体レーザ等の励起用光源で励起することにより生じた自然放出光(Spontaneous Emission)が、光ファイバ内を導波するにしたがい、増幅(Amplified)される現象を利用したASE(Amplified Spontaneous Emission)光源から広帯域且つ高輝度の光出力を連続で出射する。光サーキュレータ12は、光源11から供給される光信号を光スイッチ13に供給すると共に、光スイッチ13から供給される光信号を波長計17に供給する。光スイッチ13は、制御装置18から供給される切替信号に基づいて、光サーキュレータ12から供給され、共通入出力端Tcから入射された光信号を第1〜第4の入出力端T1〜T4のいずれかから出射すると共に、第1〜第4の入出力端T1〜T4のいずれかから入射された光信号を共通入出力端Tcから出射して光サーキュレータ12に供給する。
溶接型光ひずみゲージ1は、その内部に有するファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)部を有する光ファイバを用いて軸方向のひずみを計測する。
【0028】
ここで、FBG付き光ファイバ4とは、図7に示すように、光ファイバ4のコア4c内に所定周期(以下、「グレーティング周期」という。)Λで所定間隔おきに所定長(以下、「グレーティング長」という。)の屈折率変化部分を形成したものをいう。上記屈折率変化部分は、例えば、紫外レーザ光を光ファイバ4bに照射することにより作製する。
以下、FBG付き光ファイバ4の動作原理について説明する。FBG付き光ファイバ4に、図8に示すように、広帯域の波長領域を有する入射光IINを入射すると、コア4cの屈折率nおよびグレーティング周期Λに応じた波長(以下、「ブラッグ波長」という。)を有する反射光IRが反射され、残りの波長領域の光が透過光ITとして透過する。ブラッグ波長のピーク波長λBは、コア4cの屈折率nおよびグレーティング周期Λを用いて、式(1)で表される。
λB=2nΛ ・・・(1)
図7および図8に示すFBG付き光ファイバ4の構造から、FBG付き光ファイバ4に光軸方向にひずみを負荷した場合、コア4cの屈折率nまたはグレーティング周期Λが変化し、式(1)で表されるピーク波長λBが変化することが予想される。その変化量ΔλBは、式(2)で表される。
ΔλB=λB(1−ρα)ε ・・・(2)
ここで、εはFBG付き光ファイバ4の光軸方向に負荷したときのひずみ、ραは負荷したひずみによる光ファイバ4bの光弾性係数(例えば、約0.22)を意味している。
ピーク波長λBが1550nmである場合、ピーク波長λBの変化量ΔλBは、〜1.2pm/με程度である。即ち、ブラッグ波長のピーク波長λBの変化を分解能1pm(1×10−12m)程度で計測することができれば、1με(1×10−6)の分解能で、FBG付き光ファイバ4の軸方向のひずみを計測可能であることが分かる。図9にブラッグ波長のピーク波長λBのスペクトル変化の一例を示す。
【0029】
図9において、スペクトルaは、引張ひずみに比例してピーク波長λBが増加したことを示し、スペクトルbは、圧縮ひずみに比例してピーク波長λBが減少したことを示している。
この実施の形態1では、1つの系統の計測系に6個の溶接型光ひずみゲージ1を用いているので、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバ4が同一または重なり合うピーク波長λBを有していると、反射光を分離できずに多点計測が不可能となる。そこで、この実施の形態では、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバ4の作製時に式(1)に示すグレーティング周期Λを互いに異ならせることにより、図10に示すように、異なったピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6を有するFBG付き光ファイバ4を作製すると共に、光源11には、図11に示すように、ピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6を含む広帯域の波長帯域幅を有する光信号を出射可能なものを用いる。これにより、波長計17では、図12に示すように、各溶接型光ひずみゲージ1に対応した反射光IRのピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6が分離でき、多点計測が可能となる。尚、1つの系統の計測系に用いられる6個の溶接型光ひずみゲージ1において各FBG付き光ファイバのピーク波長λBが異なっていれば良く、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバのピーク波長λBの値は任意であるが、この実施の形態では、例えば、溶接型光ひずみゲージ111のピーク波長λBがピーク波長λ1、溶接型光ひずみゲージ112のピーク波長λBがピーク波長λ2というように、溶接型光ひずみゲージ1の符号の下1桁目の添え字とピーク波長λBの添え字とが対応しているものとする。
【0030】
図6に示す光ファイバ4は、例えば、石英ガラスからなり、光スイッチ13と対応する溶接型光ひずみゲージ1との間、各溶接型光ひずみゲージ1と対応する光コネクタ16との間に介挿され、これらの間において光信号を伝送する。また、光スイッチ13の第1、第2、第3および第4の入出力端T1、T2、T3およびT4と、対応する溶接型光ひずみゲージ111、121、131および141との間に敷設される光ファイバ4の長さは、数kmであっても良い。これは、光源11から照射される光信号が広帯域で光強度が大きいからである。波長計17は、光サーキュレータ12から供給された光信号における複数のブラッグ波長のピーク波長を検出して制御装置18に供給する。
制御装置18は、制御部と、記憶部と、操作部と、表示部と、通信部等とを有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。制御部は、中央処理装置(CPU)等からなり、記憶部に記憶されている多点変位計測プログラム等に基づいて、多点変位計測処理等を実行し、制御装置18の各部を制御する。即ち、例えば、トンネル内空変位計測プログラムが記憶部から読み出されると、制御部に読み込まれ、制御部の動作を制御する。
【0031】
制御部は、多点変位計測プログラムが起動されると、多点変位計測プログラムの制御により、多点変位計測処理を実行するのである。多点変位計測処理は、波長計17から供給される複数のブラッグ波長のピーク波長を物理量(例えば、ひずみ、変位等)に変換し、得られた物理量または上記物理量に統計的処理を施した結果を記憶部に順次記憶したり、自発的にまたは外部からの要求に基づいて、通信部を介して外部に通知する処理である。
記憶部は、RAMやROM、あるいはフラッシュメモリ等の半導体メモリ、FD(フロッピー(登録商標)・ディスク)が装着されるFDドライブ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライブ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライブ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)やDVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライブ等からなる。記憶部には、制御部が実行する各種プログラムの他、各種のデータが記憶される。操作部は、テンキー、エンターキー、あるいはファンクションキー等からなるキーボードや、マウス、タッチパッド、あるいはペンデバイス等のポインティングデバイスなどを有する。表示部は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等からなる。通信部は、図示せぬ回線やネットワーク等を介して外部とデータ通信を行う。
【0032】
次に、図13を用いて、本発明のフランジ板2の溶接の溶接長さ(溶接範囲の長さ)とひずみ伝達率との関係を説明する。
図13は、フランジ板2の溶接長さを、FBGの長さよりも長く、例えばL1としたときのひずみ伝達率と、さらに長くL2とした場合のひずみ伝達率を示すグラフであるが、フランジ板2の溶接長さをL2とした場合、ひずみが100%伝わる長さLがFBGの長さの2倍以上になることが分かる。
これに対し、フランジ板2の溶接長さをL2より短いL1とすると、ひずみが100%伝わる長さが、僅かしかないことが分かる。
従って、ひずみが100%伝わる長さがFBGの長さの2倍以上になるようにフランジ板2の溶接長さを設定することが望ましい。
このように設定したとき、例えば、固着手段としての接着剤が、経年変化により、その弾性率が低下した場合のひずみ分布を、図13において破線にて示す。
【0033】
この図13から分かるように、フランジ板2の接着長さがL2の場合には、ひずみ伝達率が100%の長さがL3で示すように長く存在する。これはFBG部に被測定対象物のひずみが100%伝達する範囲をFBG部の長さの2倍以上となるフランジの溶接長さを持たせることにより、ひずみ伝達系を構成する部材の物性が変化してもFBG部についてはその影響を受けないことを意味する。
具体的には、クリープ特性、零点漂動および経年変化の改善を実現することができる。
次に、本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態における作用効果上の違いを、図14を用いて説明する。
図14は、金属シースチューブ3を「潰さない」場合(第1の実施の形態)と、金属シースチューブ3を「潰す」場合(第2の実施の形態)における「感度のばらつき」の比較図である。
【0034】
この図14から分かるように、金属シースチューブ3を潰さず、断面円筒形状の状態のまま、FBG部4aを有する光ファイバ4が接着剤5を介して金属シースチューブ3に固着した場合には、1.17〜1.3(pm/μs)の範囲に亘り、感度のばらつきが生じるが、図2および図3(b)に示すように、金属シースチューブ3を楕円形状または、断面長円形状に潰した場合(第2の実施の形態)には、1.16〜1.2(pm/μs)と極めて感度のばらつきが少ない。
また、図15と図16を参照して、第1の実施の形態と、第2の実施の形態における零点漂動を対比してみると、金属シースチューブ3を「潰さない」場合には、図15に示すように、換算ひずみの差(με)は大きく現れるが、金属シースチューブ3を「潰す」場合には、図16に示すように、換算ひずみの差は、極めて小さいことが明瞭に現れている。
このような結果によれば、FBG部4aを含む光ファイバ4を金属シースチューブ3に挿通し、接着剤5を充填した後、硬化前に金属シースチューブ3を、潰すことによって、金属シースチューブ3内の容積を減らし未装填部をなくすことができる。このことが均一な接着剤5の充填層を形成することになり、零点漂動およびヒステリシス、温度特性等の飛躍的な改善を図ることができる。
【0035】
そして、FBG部4aの金属シースチューブ3内の位置が限定されるため、光ひずみゲージ同士間の感度のばらつきを極めて少なくできる。
なお、本発明は、上述し且つ図面に示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a),(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面横断面図、平面図および正面縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面図である。
【図3】(a)は、金属シースチューブに変形を加えない状態の溶接型光ひずみゲージの正面縦断面図、(b)は、金属シースチューブを断面が長円形状となるまで矢印方向に押し潰した状態の溶接型光ひずみゲージの正面縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージにプロテクタを被せ、その周辺近傍をコーティングした状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る温度計測機能付の溶接型光ひずみゲージの構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージユニットの構成を示す回路ブロック図である。
【図7】FBG付き光ファイバの構成を模式的に示す概念図である。
【図8】FBG付き光ファイバの動作原理を模式的に示す概念図である。
【図9】FBG付き光ファイバの動作原理を模式的に示す概念図である。
【図10】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図11】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図12】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図13】FBG部の長さと、フランジ板の溶接長さとひずみ伝達率との関係を示すひずみ分布の模式図である。
【図14】金属シースチューブを「潰さない」場合と「潰す」場合の、それぞれの感度のばらつきの程度を表わす比較図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態のように、金属シースチューブを潰さない場合のひずみゲージ出力に対する換算ひずみの差を表わす特性図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態のように、金属シースチューブを潰した場合のひずみゲージ出力に対する換算ひずみの差を表わす特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1 溶接型光ひずみゲージ
2 フランジ板
2a、2b フランジ部
2c スポット溶接
2d 仮想中心線
3 金属シースチューブ
4 光ファイバ
4a FBG部
4b 温度計測用FBG部
4c コア
5 接着剤
6 電子ビーム溶接
7 被測定対象物
8 プロテクタ
9 コーティング膜
10 光コネクタ
11 光源
12 光サーキュレータ
13 光スイッチ
17 波長計
18 制御装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:以下「FBG」と略す場合がある)を被測定対象物に溶接可能となして、当該FBG部により被測定対象物のひずみを計測し得るように構成してなる溶接型光ひずみゲージ、溶接型光ひずみゲージの製造方法および溶接型光ひずみゲージユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ひずみを計測するセンサとしては、従来は、箔ゲージや半導体ゲージ等のひずみゲージが一般に広く使用されている。特に、小さいひずみしか発生しないような個所におけるひずみ計測には、半導体ゲージ等が使用されることが多かった。
しかしながら、このようなひずみゲージを利用した各種センサには、屋外設置等において対雷対策において難点があり、さらには長期安定性を阻害する要素として絶縁の劣化がある。
このような点に優位性があるものとして、FBGをファイバ型検出素子に用いたひずみセンサや温度センサの開発が進められている。
FBGは、光ファイバのコア内に所定周期(「グレーティング周期」という)で所定間隔おきに所定長(グレーティング長」という)の屈折率変化部分を形成するものである。上記屈折率変化部分は、例えば紫外レーザ光を光ファイバに照射することにより作製する。
光ファイバに書き込まれたグレーティングのピッチがひずみや温度によって変化すると、その変化に応じてグレーティングからブラッグ反射する光のピーク波長(「ブラッグ波長」という)が変化すること、あるいはグレーティングを透過する光のスペクトルが変化(ディップ光の中心波長が変化)することを利用したものである。
【0003】
このようなFBGを用いた貼り付け型光ファイバセンサとして、例えば、特開2001−296110(特許文献1)にて提案されたものがある。
即ち、この特許文献1には、被検出個所に光ファイバを貼り付け易くするため、FBGを含む光ファイバを樹脂にてフィルムに固定したもの、光ファイバを2枚のフィルム間に挟んだ上で樹脂にて固定したもの、光ファイバをフィルム上にメッキにて固定したもの、光ファイバをフィルム上に蒸着にて固定したもの、などが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−296110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、発明の効果の記載によれば、光ファイバがフィルムに予め固定されているため、フィルムを検出個所との間の接着剤が薄く伸びるので、施工性が容易となり、また、接着時の押し付け圧を平均化し、被検出個所にひずみが発生したときのひずみを平均化して検出できるため真のひずみによるブラッグ波長シフト量を高精度に検出することができる、としている。
しかしながら、上記特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、FBG光ファイバを樹脂、メッキ、蒸着等でフィルム上に固定したものであるため、固定方法としては強固なものではなく、また外方からの不用意な力や衝撃が加えられた場合、簡単に損傷し、所期の機能を果たし得なくなる、という難点があるほか、防水防湿性においても問題がある。
さらにまた、上記特許文献1の貼り付け型光ファイバセンサは、ひずみ伝達系を構成する材料、特に接着剤の劣化や、温度変化に伴う物性変化の影響を受け易く、長期安定性や精度の低下を来たし易い、という難点がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その第1の目的とするところは、耐環境性の向上を図り、もって長期安定性の改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第2の目的とするところは、ひずみの伝達系を構成する部材の物性が変化してもFBG部についてはその影響を受け難い溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第3の目的とするところは、ひずみ伝達系が極めて安定性に優れ、零点漂動および温度特性の改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第4の目的として、光ひずみゲージ間の感度のばらつきが極めて少ない溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第5の目的とするところは、従来の箔ゲージや半導体ゲージ等において大きな問題であった電磁ノイズ対策や対雷対策を施す必要がなく、構成が簡素で低価格を実現しつつ、上述した種々の目的を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第6の目的とするところは、被測定対象物のひずみを計測すると共に、その近傍の温度をも計測し得る溶接型光ひずみゲージを提供することにあり、
第7の目的とするところは、上記した種々の目的を実現し得る溶接型光ひずみゲージを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上述した第1および第5の目的を達成するために、両端が開口された極小径の金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、を有し、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項2に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1および第5の目的を達成するために、前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であることを特徴としている。
請求項3に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1および第5の目的を達成するために、前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものであることを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第3の目的を達成するために、前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなることを特徴としている。
請求項5に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第5の目的を達成するために、前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されていることを特徴としている。
請求項6に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第5の目的を達成するために、前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有することを特徴としている。
【0009】
請求項7に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージは、上記第1〜第6の目的を達成するために、両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着され前記ひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したことを特徴としている。
請求項8に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法は、上記第1〜第5の目的および第7の目的を達成するために、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項9に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法は、上記第1〜第5の目的および第7の目的を達成するために、極小径の金属シースチューブの外周面に平板上のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有することを特徴としている。
請求項10に記載した発明に係る溶接型光ひずみゲージユニットは、上記第1〜第5の目的を達成するために、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、両端が開口された極小径の金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、を有し、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成したので、極小径の金属シースチューブの内空に固着されたファイバブラッググレーティング部は準気密構造とされ、外部からの水分や湿気の浸入が抑制され、耐環境性が向上し、長期安定性を確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であるため、ファイバブラッググレーティング部が接着剤により極小径の金属シースチューブ内に準気密状態で固着され、外部からの水分や湿気の浸入が抑制され耐環境性が向上し、長期安定性を確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものでため、ひずみ伝達系による材料の長期使用に基づく劣化や物性変化が軽微であり、長期安定性を充分に確保し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなるので、ひずみ伝達系を構成する部材(例えば、接着剤)の物性が変化しても、ファイバブラッググレーティング部においてはその影響を受けず、例えば、クリープ特性、零点漂動および温度特性の改善を図り得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されているので、金属シースチューブ内の容積を圧縮し接着剤等の固着手段の未充填部を無くし均一な充填層を形成することができ、延いては、光ひずみゲージの感度のばらつきが極めて少なくなり、併せて零点漂動および温度特性の大幅な改善を実現し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有する構成としたので、光ひずみゲージは外部からの衝撃に充分に耐えると共に、被測定対象物にスポット溶接されたフランジ板の錆の発生を防止し、耐環境性をより一層改善し、耐久性を飛躍的に向上し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0014】
請求項7に記載の発明によれば、両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着され前記ひずみ計測用ファイバブラッグレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したので、他の方法に比べ、より正確な温度補償を行い得ると共に、温度ヒステリシスが生じない、という利点があり、ひずみ計測部に極く近い部分の温度を計測するため過渡現象の温度補償も行うことができ、しかも同一の金属シースチューブ内に同一の接着剤を用いて同一工程の中で製作されるので、構成が簡素なことと相俟って低価格で、安定した特性の溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【0015】
請求項8に記載の発明によれば、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有する構成としたので、耐環境性に優れ、長期安定性に優れる溶接型光ひずみゲージを安価に製作し得る溶接型光ひずみゲージの製造方法を提供することができる。
【0016】
請求項9に記載の発明によれば、極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有する構成としたので、感度のばらつき、零点漂動、ヒステリシスおよび温度特性を大幅に改善し得る溶接型光ひずみゲージの製造方法を提供することができる。
請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したので、広範囲に亘る被測定対象物を、多点において常時且つ同時的に十分な計測精度でひずみを計測し得る溶接型光ひずみゲージを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施の形態に基づき、図面を参照して本発明の溶接型光ひずみゲージを詳細に説明する。
図1(a),(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面横断面図、平面図および正面縦断面図である。
同図において、溶接型光ひずみゲージ1は、フランジ板2、金属シースチューブ3、ファイバ ブラッグ グレーティング(FBG:Fiber Bragg Graiting)部4aを中間に含む光ファイバ4および光ファイバ4を金属シースチューブ3の内空に光ファイバ4を固着する固定手段としての接着剤5よりなる。
金属シースチューブ3は、極小径(例えば、約0.3mm)で断面が円形状をなす適宜長さのステンレス金属材料で形成される。
フランジ板2は、例えばインコネル等の金属材料からなる薄肉の長方形平板状を呈している。
金属シースチューブ3は、フランジ板2の長手方向の中心線に沿って当接した状態でその当接部をフランジ板2側から、例えば電子ビーム溶接(EBW)6等により、1ラインのライン状の溶接部6により金属シースチューブ3にフランジ板2を固着している。
【0018】
フランジ板2の金属シースチューブ3が固着されている部分の両側、即ち図1(b)における上側と下側、図1(c)における右側と左側、のフランジ部2aと2bは、この部分を被測定対象面にスポット溶接2c等により固定する部分であり、被測定対象物7のひずみをFBGに伝える作用を有する。
ここで、上述における金属シースチューブ3の内壁へのFBG4aを有する光ファイバ4の接着工程を含む溶接型光ひずみゲージ1の製造における作業手順の一例を、上述した図1および図2、図3を参照して説明する。
この場合、FBG部4aは、予めホログラフィック法やフェイズマスク法等にてコア内に周期的屈折率変化を生じさせておくものとする。
(1) 所定長に裁断された極小径の金属シースチューブ3の外周面を、平板上のフランジ板2の長手方向(図1(b)における左右方向)に沿う仮想中心線2dに合わせて当接し、フランジ板2の下面側(図1(c)における下面側)から電子ビーム溶接(EWB)6等によって、ライン状に溶接して、フランジ板2に固着しておく(この工程を、以下「溶接ステップ」という)。
【0019】
金属シースチューブ3は、この場合、具体的には、例えば、外径が0.55mm、内径が0.3mmのものを用いている。但し、この寸法に限られるものではなく、上記外径、内径ともこの前後の寸法のものを、光ファイバ4の外径に対応して適宜設定するものとする。
(2) このような状態で、FBG部4aを有する光ファイバ4の外周面に、接着剤5(例えば、エポキシ系接着剤)を塗布する。また、金属シースチューブ3の内空に予め、接着剤5を塗布しておいてもよいが、光ファイバ4の挿入側先端面に接着剤5が付着する虞れがあるので、接着剤5の付着を防止する部材を冠着しておく必要がある。
この後、光ファイバ4を、金属シースチューブ3の例えば、右端側から挿入し、左端側まで、挿通してFBG部4aが所定の位置、例えば、金属シースチューブ3の中央部に至った段階まで、光ファイバ4を引き出した位置で、引き出しを停止する。この引き出した状態が図1(a)、図1(b)に示す状態である。
【0020】
本発明の第1の実施の形態においては、この状態で接着剤5を硬化させることにより、溶接型ひずみゲージ1が完成する。(この工程を、「光ファイバ固着ステップ」という)。
尚、光ひずみゲージ1を、ホットプレート(図示せず)に載置して接着剤5を熱硬化させるようにしてもよい。
(3) 本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの製造方法においては、上記、「光ファイバ固着ステップ」の段階において、接着剤5が硬化する前に、金属シースチューブ3を、図2および図3(a)、(b)に示すように、フランジ板2の長さにほぼ相当する長さ範囲に亘って、フランジ板2の板面に向かう方向(図2において、下方向)に押し潰して、長円状(偏平状)あるいは楕円状に成形する(この工程を「押し潰しステップ」という)。
この押し潰しステップにおいては、一気に板面に平行に押し潰すのではなく、金属シースチューブ3の中央から次第に端部に向かって押し潰すことが望ましい。
【0021】
これは、金属シースチューブ3内に充填された接着剤5が、金属シースチューブ3が押し潰されることによって過剰となるため、その過剰分は、金属シースチューブ3の内周面と、光ファイバ4の外周面とによって挟まれる空間内を万遍なく充填された上で、金属シースチューブ3の両端から、溢れ出るからである。図2に示すように、金属シースチューブ3の両端から接着剤5が溢れて固化されるので、密閉性が良好となる。この押し潰し量は、金属シースチューブ3内の光ファイバ4(FBG4a)を押し潰すことなく、換言すれば、光ファイバ4への変形を与えない程度に押し潰す適宜な量である。
具体的にその一例を挙げれば、外径が0.55mm、その内径が0.3mmの金属シースチューブ3内に、外径が0.13mmの光ファイバ4を挿通して接着剤5を充填させた場合において、押し潰し量は、0.1mmとした。
このとき、光ファイバ4の外径と、0.1mm押し潰された金属シースチューブ3の上下方向寸法との差は、0.3mm−0.1mm=0.2mmであるので、光ファイバ4の外周と金属シースチューブ3の変形後の内壁との寸法差は、0.2mm−0.13mm=0.07mmであり、従って、接着剤5は、光ファイバ4の上下に均一に充填されているものとすると、押し潰された方向(上下方向)の接着剤5の層の厚みは僅か0.035mmとなり、FBG部4aは、金属シースチューブ3内に安定的に支持される。
【0022】
(4) 本発明に係る第1の実施の形態および第2の実施の形態の溶接型光ひずみゲージは、上述のステップによって製造されるが、次に使用上の工程を説明する。
先ず、被測定対象物7のひずみを計測すべき部位に溶接型光ひずみゲージのフランジ板2を裁置し、フランジ部2a、2bの上にスポット溶接機の電極棒(図示せず)を位置させ、通電させてスポット溶接6を行う(この工程を「スポット溶接ステップ」という)。スポット溶接は、フランジ部2a、2bのほぼ全域に亘って所定間隔で複数回繰り返す。
通常の環境下における使用であれば、上述した状態で、ひずみ計測を実施する。(ひずみ計測方法については後述する)。
(5) 屋外や金属の腐食を生じさせる環境下で使用するものにあっては、さらに、次のような第3の実施の形態に示す次の工程を加えるものとする。
即ち、第3の実施の形態は、図4において、被測定対象物7に溶接型光ひずみゲージのフランジ部2a、2bをスポット溶接した後に、フランジ板2の全部と少なくとも金属シースチューブ3の一部(場合によっては、光ファイバ4の一部)を覆い得る形状を呈するプロテクタ8をフランジ板2、金属チューブ3を覆うように被せる。(この工程を、「プロテクタ冠着ステップ」という)。
【0023】
次いで、このように冠着されたプロテクタ8の周辺近傍から被測定対象物7にかけて、コーティング剤を塗布しコーティング膜9を形成する。
これによって、フランジ部2a、2bと共にスポット溶接をした部分を、確実に覆って外気と遮断するので、スポット溶接2cされたフランジ部2a、2bや被測定対象物7の溶接部の腐食を防止することができる。
次に、本発明の第4の実施の形態について詳細に説明する。
図5は、ひずみ計測用FBG部4aの他に、温度計測用FBG部4bを別途設けてなる溶接型光ひずみゲージの第4の実施の形態を示す平面図である。
(1)´ 図5において、所定長に裁断された極小径の金属シースチューブ3の外周面を薄肉の平板上のフランジ板2の長手方向のほぼ仮想中心線2dに合せて当接し、フランジ板2の下面側から電子ビーム溶接6等によってライン状に溶接する溶接ステップは、第1の実施の形態と同じでる。
(2)´ 上記溶接ステップの前後を問わず、図5に示すように、1本の光ファイバ4に直列状に所定の間隔を隔てて2個所にFBG部4aと4bを作製する(以下「FBG作製ステップ」という)。この2個所のFBG部4a、4bの寸法的関係は、次の通りである。
【0024】
先ず、第1のFBG部4aの長さは、ひずみが100%伝わる長さの半分程度になるように設定し、第2のFBG部4bの長さは、第1のFBG部4aと同等の長さかそれ以下でもよく、温度を計測できれば足りるので、あまり厳密な寸法は要求されないが、配置位置としては、金属シースチューブ3の内空に固着された状態で、フランジ板2のなるべく近傍が望ましい。
このような状態で、互いには長の異なる2つのFBG部4a、4bを有する光ファイバ4の外周面に、接着剤5を塗布する。この後、光ファイバ4を金属シースチューブ3の、例えば、右端側から挿入し、第1のFBG部4aがフランジ板2の中央部の所定位置に至るまで光ファイバ4を引き出した位置で引き出しを停止する。このとき、第2のFBG4bがフランジ板2の近傍、即ち、溶接型光ひずみゲージの近傍に配設される。この状態で接着剤5を硬化させることにより、温度計測機能光ファイバ付きの溶接型光ひずみゲージ1が完成する(この工程は、「光ファイバ固着ステップ」という)。
【0025】
また、この場合においても、本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージと同様に、上記「光ファイバ固着ステップ」の段階において、接着剤5が硬化する前に、金属シースチューブ3を、図2および図3(b)に示すように、フランジ板2の長さにほぼ相当する長さ範囲に亘って、フランジ板2の板面に向かう方向に押し潰して断面が長円形状(偏平状)、あるいは略楕円形状に形成する(この工程を、「押し潰しステップ」という)。この押し潰しステップの作業要領は、上述した第2の実施の形態における「押し潰しステップ」と同様であるので、重複した説明は省略する。
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。
上述した各実施の形態においては、光ファイバ4を金属シースチューブ3の内空に固着する手段として、接着剤5を用いた例を示したが、接着剤を用いる代りに、表面がメタライズされた光ファイバ4を金属シースチューブ3に挿入した状態で、光ファイバ4と金属シースチューブ3との間を超音波ハンダまたはろう付けで固着する(図示せず)。
【0026】
次に、本発明第6の実施の形態について説明する。
図6は、本発明の第6の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージユニットと、その溶接型光ひずみゲージユニットを用いた多点ひずみ計測システムの回路構成を示す。
多点ひずみ計測システムは、光源11と、光サーキュレータ12と、光スイッチ13と、溶接型光ひずみゲージ111〜116、121〜126、131〜136、141〜146と、光ファイバ4と、光コネクタ10と、波長計17と、制御装置18とから構成されている。溶接型光ひずみゲージ111〜116は第1系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ121〜126は第2系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ131〜136は第3系統の計測系、溶接型光ひずみゲージ141〜146は第4系統の計測系をそれぞれ構成している。尚、溶接型光ひずみゲージ111〜116、121〜126、131〜136、141〜146を総称するときは、単に、溶接型光ひずみゲージ1と表す。この総称に関しては、他の構成要素でも同様である。
【0027】
光源11は、例えば、希土類元素添加光ファイバを、半導体レーザ等の励起用光源で励起することにより生じた自然放出光(Spontaneous Emission)が、光ファイバ内を導波するにしたがい、増幅(Amplified)される現象を利用したASE(Amplified Spontaneous Emission)光源から広帯域且つ高輝度の光出力を連続で出射する。光サーキュレータ12は、光源11から供給される光信号を光スイッチ13に供給すると共に、光スイッチ13から供給される光信号を波長計17に供給する。光スイッチ13は、制御装置18から供給される切替信号に基づいて、光サーキュレータ12から供給され、共通入出力端Tcから入射された光信号を第1〜第4の入出力端T1〜T4のいずれかから出射すると共に、第1〜第4の入出力端T1〜T4のいずれかから入射された光信号を共通入出力端Tcから出射して光サーキュレータ12に供給する。
溶接型光ひずみゲージ1は、その内部に有するファイバブラッググレーティング(FBG:Fiber Bragg Grating)部を有する光ファイバを用いて軸方向のひずみを計測する。
【0028】
ここで、FBG付き光ファイバ4とは、図7に示すように、光ファイバ4のコア4c内に所定周期(以下、「グレーティング周期」という。)Λで所定間隔おきに所定長(以下、「グレーティング長」という。)の屈折率変化部分を形成したものをいう。上記屈折率変化部分は、例えば、紫外レーザ光を光ファイバ4bに照射することにより作製する。
以下、FBG付き光ファイバ4の動作原理について説明する。FBG付き光ファイバ4に、図8に示すように、広帯域の波長領域を有する入射光IINを入射すると、コア4cの屈折率nおよびグレーティング周期Λに応じた波長(以下、「ブラッグ波長」という。)を有する反射光IRが反射され、残りの波長領域の光が透過光ITとして透過する。ブラッグ波長のピーク波長λBは、コア4cの屈折率nおよびグレーティング周期Λを用いて、式(1)で表される。
λB=2nΛ ・・・(1)
図7および図8に示すFBG付き光ファイバ4の構造から、FBG付き光ファイバ4に光軸方向にひずみを負荷した場合、コア4cの屈折率nまたはグレーティング周期Λが変化し、式(1)で表されるピーク波長λBが変化することが予想される。その変化量ΔλBは、式(2)で表される。
ΔλB=λB(1−ρα)ε ・・・(2)
ここで、εはFBG付き光ファイバ4の光軸方向に負荷したときのひずみ、ραは負荷したひずみによる光ファイバ4bの光弾性係数(例えば、約0.22)を意味している。
ピーク波長λBが1550nmである場合、ピーク波長λBの変化量ΔλBは、〜1.2pm/με程度である。即ち、ブラッグ波長のピーク波長λBの変化を分解能1pm(1×10−12m)程度で計測することができれば、1με(1×10−6)の分解能で、FBG付き光ファイバ4の軸方向のひずみを計測可能であることが分かる。図9にブラッグ波長のピーク波長λBのスペクトル変化の一例を示す。
【0029】
図9において、スペクトルaは、引張ひずみに比例してピーク波長λBが増加したことを示し、スペクトルbは、圧縮ひずみに比例してピーク波長λBが減少したことを示している。
この実施の形態1では、1つの系統の計測系に6個の溶接型光ひずみゲージ1を用いているので、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバ4が同一または重なり合うピーク波長λBを有していると、反射光を分離できずに多点計測が不可能となる。そこで、この実施の形態では、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバ4の作製時に式(1)に示すグレーティング周期Λを互いに異ならせることにより、図10に示すように、異なったピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6を有するFBG付き光ファイバ4を作製すると共に、光源11には、図11に示すように、ピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6を含む広帯域の波長帯域幅を有する光信号を出射可能なものを用いる。これにより、波長計17では、図12に示すように、各溶接型光ひずみゲージ1に対応した反射光IRのピーク波長λ1、λ2、・・・、λ5、λ6が分離でき、多点計測が可能となる。尚、1つの系統の計測系に用いられる6個の溶接型光ひずみゲージ1において各FBG付き光ファイバのピーク波長λBが異なっていれば良く、溶接型光ひずみゲージ1を構成するFBG付き光ファイバのピーク波長λBの値は任意であるが、この実施の形態では、例えば、溶接型光ひずみゲージ111のピーク波長λBがピーク波長λ1、溶接型光ひずみゲージ112のピーク波長λBがピーク波長λ2というように、溶接型光ひずみゲージ1の符号の下1桁目の添え字とピーク波長λBの添え字とが対応しているものとする。
【0030】
図6に示す光ファイバ4は、例えば、石英ガラスからなり、光スイッチ13と対応する溶接型光ひずみゲージ1との間、各溶接型光ひずみゲージ1と対応する光コネクタ16との間に介挿され、これらの間において光信号を伝送する。また、光スイッチ13の第1、第2、第3および第4の入出力端T1、T2、T3およびT4と、対応する溶接型光ひずみゲージ111、121、131および141との間に敷設される光ファイバ4の長さは、数kmであっても良い。これは、光源11から照射される光信号が広帯域で光強度が大きいからである。波長計17は、光サーキュレータ12から供給された光信号における複数のブラッグ波長のピーク波長を検出して制御装置18に供給する。
制御装置18は、制御部と、記憶部と、操作部と、表示部と、通信部等とを有するパーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成されている。制御部は、中央処理装置(CPU)等からなり、記憶部に記憶されている多点変位計測プログラム等に基づいて、多点変位計測処理等を実行し、制御装置18の各部を制御する。即ち、例えば、トンネル内空変位計測プログラムが記憶部から読み出されると、制御部に読み込まれ、制御部の動作を制御する。
【0031】
制御部は、多点変位計測プログラムが起動されると、多点変位計測プログラムの制御により、多点変位計測処理を実行するのである。多点変位計測処理は、波長計17から供給される複数のブラッグ波長のピーク波長を物理量(例えば、ひずみ、変位等)に変換し、得られた物理量または上記物理量に統計的処理を施した結果を記憶部に順次記憶したり、自発的にまたは外部からの要求に基づいて、通信部を介して外部に通知する処理である。
記憶部は、RAMやROM、あるいはフラッシュメモリ等の半導体メモリ、FD(フロッピー(登録商標)・ディスク)が装着されるFDドライブ、HD(ハード・ディスク)が装着されるHDドライブ、MO(光磁気)ディスクが装着されるMOディスクドライブ、あるいはCD(コンパクト・ディスク)−ROM、CD−R(Recordable)、CD−RW(Rewritable)やDVD−ROM、DVD−R、DVD−RW等が装着されるCD/DVDドライブ等からなる。記憶部には、制御部が実行する各種プログラムの他、各種のデータが記憶される。操作部は、テンキー、エンターキー、あるいはファンクションキー等からなるキーボードや、マウス、タッチパッド、あるいはペンデバイス等のポインティングデバイスなどを有する。表示部は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等からなる。通信部は、図示せぬ回線やネットワーク等を介して外部とデータ通信を行う。
【0032】
次に、図13を用いて、本発明のフランジ板2の溶接の溶接長さ(溶接範囲の長さ)とひずみ伝達率との関係を説明する。
図13は、フランジ板2の溶接長さを、FBGの長さよりも長く、例えばL1としたときのひずみ伝達率と、さらに長くL2とした場合のひずみ伝達率を示すグラフであるが、フランジ板2の溶接長さをL2とした場合、ひずみが100%伝わる長さLがFBGの長さの2倍以上になることが分かる。
これに対し、フランジ板2の溶接長さをL2より短いL1とすると、ひずみが100%伝わる長さが、僅かしかないことが分かる。
従って、ひずみが100%伝わる長さがFBGの長さの2倍以上になるようにフランジ板2の溶接長さを設定することが望ましい。
このように設定したとき、例えば、固着手段としての接着剤が、経年変化により、その弾性率が低下した場合のひずみ分布を、図13において破線にて示す。
【0033】
この図13から分かるように、フランジ板2の接着長さがL2の場合には、ひずみ伝達率が100%の長さがL3で示すように長く存在する。これはFBG部に被測定対象物のひずみが100%伝達する範囲をFBG部の長さの2倍以上となるフランジの溶接長さを持たせることにより、ひずみ伝達系を構成する部材の物性が変化してもFBG部についてはその影響を受けないことを意味する。
具体的には、クリープ特性、零点漂動および経年変化の改善を実現することができる。
次に、本発明の第1の実施の形態と第2の実施の形態における作用効果上の違いを、図14を用いて説明する。
図14は、金属シースチューブ3を「潰さない」場合(第1の実施の形態)と、金属シースチューブ3を「潰す」場合(第2の実施の形態)における「感度のばらつき」の比較図である。
【0034】
この図14から分かるように、金属シースチューブ3を潰さず、断面円筒形状の状態のまま、FBG部4aを有する光ファイバ4が接着剤5を介して金属シースチューブ3に固着した場合には、1.17〜1.3(pm/μs)の範囲に亘り、感度のばらつきが生じるが、図2および図3(b)に示すように、金属シースチューブ3を楕円形状または、断面長円形状に潰した場合(第2の実施の形態)には、1.16〜1.2(pm/μs)と極めて感度のばらつきが少ない。
また、図15と図16を参照して、第1の実施の形態と、第2の実施の形態における零点漂動を対比してみると、金属シースチューブ3を「潰さない」場合には、図15に示すように、換算ひずみの差(με)は大きく現れるが、金属シースチューブ3を「潰す」場合には、図16に示すように、換算ひずみの差は、極めて小さいことが明瞭に現れている。
このような結果によれば、FBG部4aを含む光ファイバ4を金属シースチューブ3に挿通し、接着剤5を充填した後、硬化前に金属シースチューブ3を、潰すことによって、金属シースチューブ3内の容積を減らし未装填部をなくすことができる。このことが均一な接着剤5の充填層を形成することになり、零点漂動およびヒステリシス、温度特性等の飛躍的な改善を図ることができる。
【0035】
そして、FBG部4aの金属シースチューブ3内の位置が限定されるため、光ひずみゲージ同士間の感度のばらつきを極めて少なくできる。
なお、本発明は、上述し且つ図面に示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a),(b)および(c)は、本発明の第1の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面横断面図、平面図および正面縦断面図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージの正面図である。
【図3】(a)は、金属シースチューブに変形を加えない状態の溶接型光ひずみゲージの正面縦断面図、(b)は、金属シースチューブを断面が長円形状となるまで矢印方向に押し潰した状態の溶接型光ひずみゲージの正面縦断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージにプロテクタを被せ、その周辺近傍をコーティングした状態を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る温度計測機能付の溶接型光ひずみゲージの構成を示す平面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態に係る溶接型光ひずみゲージユニットの構成を示す回路ブロック図である。
【図7】FBG付き光ファイバの構成を模式的に示す概念図である。
【図8】FBG付き光ファイバの動作原理を模式的に示す概念図である。
【図9】FBG付き光ファイバの動作原理を模式的に示す概念図である。
【図10】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図11】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図12】FBG付き光ファイバの多点計測原理を模式的に示す概念図である。
【図13】FBG部の長さと、フランジ板の溶接長さとひずみ伝達率との関係を示すひずみ分布の模式図である。
【図14】金属シースチューブを「潰さない」場合と「潰す」場合の、それぞれの感度のばらつきの程度を表わす比較図である。
【図15】本発明の第1の実施の形態のように、金属シースチューブを潰さない場合のひずみゲージ出力に対する換算ひずみの差を表わす特性図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態のように、金属シースチューブを潰した場合のひずみゲージ出力に対する換算ひずみの差を表わす特性図である。
【符号の説明】
【0037】
1 溶接型光ひずみゲージ
2 フランジ板
2a、2b フランジ部
2c スポット溶接
2d 仮想中心線
3 金属シースチューブ
4 光ファイバ
4a FBG部
4b 温度計測用FBG部
4c コア
5 接着剤
6 電子ビーム溶接
7 被測定対象物
8 プロテクタ
9 コーティング膜
10 光コネクタ
11 光源
12 光サーキュレータ
13 光スイッチ
17 波長計
18 制御装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された極小径の金属シースチューブと、
前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、
前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、
を有し、
金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成された溶接型光ひずみゲージ。
【請求項2】
前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項3】
前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項4】
前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項5】
前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項6】
前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項7】
両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着された前記ひずみ計測用ファイバブラッグレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したことを特徴とする溶接型光ひずみゲージ。
【請求項8】
極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有することを特徴とする溶接型光ひずみゲージの製造方法。
【請求項9】
極小径の金属シースチューブの外周面に平板上のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有することを特徴とする溶接型光ひずみゲージの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したことを特徴とする溶接型光ひずみゲージユニット。
【請求項1】
両端が開口された極小径の金属シースチューブと、
前記金属シースチューブの中心軸に沿ってその外周面に溶接された薄板状のフランジ板と、
前記金属シースチューブの内空に挿通され且つ固着手段によって固着されたファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、
を有し、
金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することにより、ひずみを計測し得るように構成された溶接型光ひずみゲージ。
【請求項2】
前記固着手段は、前記金属シースチューブの内周面と前記光ファイバの外周面に充填され且つ固化されてなる接着剤であることを特徴とする請求項1に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項3】
前記固着手段は、表面がメタライズされた前記光ファイバを前記金属シースチューブに挿入した状態で前記光ファイバと前記金属シースチューブとの間を超音波ハンダまたはろう付けで固着するものであることを特徴とする請求項1に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項4】
前記フランジ板の溶接長さを、ひずみが100%伝わる長さが前記ファイバブラッググレーティング部の長さの約2倍以上になるように設定してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項5】
前記シースチューブは、前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って、前記フランジ板の板面に向かう方向に、前記光ファイバへの変形を与えることなく、押し潰されて断面長円形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項6】
前記シースチューブと前記フランジ板および前記光ファイバの一部を覆い得る形状を呈し、自身の周辺近傍表面上に塗布されるコーティング材により前記被測定対象物に固着されるプロテクタを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかの項に記載の溶接型光ひずみゲージ。
【請求項7】
両端が開口された金属シースチューブと、前記金属シースチューブの中心軸に沿って前記金属シースチューブの一定長に亘り溶接された薄板状のフランジ板と、前記金属シースチューブの内空に挿通され、前記フランジ板のほぼ中央部に配設され固着手段によって固着されたひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部およびこのひずみ計測用ファイバブラッググレーティング部の近傍における前記金属シースチューブの内空であって、前記フランジ板には溶接されていない部位に、固着手段によって固着された前記ひずみ計測用ファイバブラッグレーティング部とは波長の異なる温度計測用ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバと、金属面よりなる被測定対象物に前記フランジ板をスポット溶接により固着することによりひずみおよび温度を同時的に計測し得るように構成したことを特徴とする溶接型光ひずみゲージ。
【請求項8】
極小径の金属シースチューブの外周面に平板状のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに固着させる光ファイバ固着ステップと、
を有することを特徴とする溶接型光ひずみゲージの製造方法。
【請求項9】
極小径の金属シースチューブの外周面に平板上のフランジ板を当接し、前記フランジ板側から前記フランジ板の長手方向にほぼ中心軸に沿ってライン状に溶接する溶接ステップと、
ファイバブラッググレーティング部を含む光ファイバをその外周面に接着剤を塗布し前記金属シースチューブの内空に挿入した状態で前記光ファイバを前記金属シースチューブに接着させる光ファイバ接着ステップと、
前記接着ステップに引続き、前記接着剤が硬化する前に、前記金属シースチューブを前記フランジ板の長さにほぼ相当する範囲に亘って前記フランジ板の板面に向かう方向に押し潰して断面長円形状に成形する押し潰しステップと、
を有することを特徴とする溶接型光ひずみゲージの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶接型光ひずみゲージを光コネクタまたは融着接続部を介して直列状に順次複数連接することにより、複数の被測定対象個所におけるひずみを計測し得るように構成したことを特徴とする溶接型光ひずみゲージユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−194704(P2006−194704A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5793(P2005−5793)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000142067)株式会社共和電業 (52)
【Fターム(参考)】
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