説明

溶接機用電源装置

【課題】 効率的にパラメータの設定が行える。
【解決手段】 ケース94に設けられたパネル96に複数の操作子が設けられている。複数の操作子のうち1つの操作子66が、操作棒66aと、この操作棒66aの先端に設けられた円筒状の操作部66bとを、有している。操作棒66aは、押すことが可能であり、かつその長さ方向の回りに回転可能であり、操作部66bを押すたびに、複数のパラメータ設定モードのうち予め定められた互いに異なるものが呼び出され、操作部66bを回転させることによって、呼び出されたパラメータ設定モードにおいてパラメータが設定される。パネル96には、操作すると、パラメータ設定モードを1つ前に呼び出されていたパラメータ設定に戻すモード戻しスイッチ104bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接機用電源装置に関し、例えばそれぞれ異なる溶接が行える溶接用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接には、手溶接、TIG溶接等の様々な種類がある。これら種類に対応した溶接機用電源装置が使用されている。その基本となる構成は、概ね次のようなものである。商用交流電圧が、入力側整流器及び平滑用コンデンサによって直流電圧に変換される。この直流電圧がインバータによって高周波電圧に変換される。この高周波電圧が変圧器によって所定の電圧に変圧される。変圧された高周波電圧は、出力側整流器によって直流電圧に変換され、負荷に供給される。必要に応じて、この直流電圧が低周波の交流電圧に変換されて、負荷に供給される。この電源装置では、インバータによって直流電圧を高周波電圧に変換しているので、小型の変圧器を使用することができ、電源装置全体を小型化することができる。
【0003】
溶接の種類としては、手溶接、直流TIG溶接、交流TIG溶接などがある。
【0004】
手溶接を行う場合、溶接用電源装置は、図4に符号イで示すように、出力電圧が変動しても、出力電流が一定である定電流出力特性を備えている。この出力電流値を設定する出力電流設定器が、手溶接用電源装置のパネルに設けられている。また、手溶接の場合、溶接の開始時や、例えばトーチと母材とからなる負荷が短絡しているときに、図4に符号ロで示すように、出力電流よりも大きな電流を流して、アークを良好に発生させるホットスタートを行うことがある。このホットスタート時に流す電流を設定するためのホットスタート設定器が、パネルに設けられている。また、パネルには、出力電圧や出力電流を表示する表示器も設けられている。
【0005】
直流TIG溶接は、例えばステンレスの溶接に適し、図5(b)に符号イで示すような定電流出力特性を備えている。また、同図に符号ロで示すように、手溶接と同様にホットスタートを必要とすることもある。直流TIG溶接では、平坦な母材を溶接する場合には、図5(b)に符号イで示すように出力電流を一定値とする。しかし、パイプのような母材を溶接する場合には、特にパイプの底を溶接する場合には、一定の出力電流を供給すると、パイプからの溶融物が母材から落下し、再溶接を行うことが必要になったり、トーチのTIG溶接電極に溶融物が付着し、溶接電極が損傷する可能性がある。そこで、図5(a)に示すように、出力電流をパルス電流にし、ベース電流IBが流れているとき、例えばパイプの底部に形成された溶融池を冷却し、この溶融池から溶融物が落下したり、トーチの溶接電極に溶融物が付着するのを防止している。
【0006】
TIG溶接では、アークの発生法として、溶接電極と母材とを短絡させて、これらに低電流を流した後、溶接電極を母材から離して、両者の間にアークを発生させるタッチスタート法と、溶接電極を母材から予め離しておいて、両者の間に例えば1乃至3MHzで、5乃至20kVの高周波、高電圧を印加して、アークを発生させる高周波スタート法とがある。
【0007】
直流TIG溶接用電源装置のパネルには、出力電流を設定するための出力電流設定器、ホットスタート設定器が設けられている。更に、パルス電流を出力電流として供給するときの起動電流Idから、最大パルス電流(設定された出力電流)IPまで立ち上げるアップスロープ時間TUと、最大パルス電流IPから溶接終了時に流すクレーター電流ICまで低下させるダウンスロープ時間TDとを、それぞれ設定するアップスロープ、ダウンスロープ時間設定器も、パネルに設けられている。更に、最大パルス電流IPとベース電流IBとの周期を定める、このパルス電流の周波数Fを設定するパルス周波数設定器と、パルス電流を供給するか直流電流を供給するかを切り換えるパルス切換器とが、パネルに設けられている。また、タッチスタートと高周波スタートとの切換を行うアークスタート切換器も、パネルに設けられている。この他に、出力電圧及び出力電流を表示する表示器もパネルに設けられている。
【0008】
交流TIG溶接は、例えばアルミニウムを溶接する場合に使用される。アルミニウムは、融点の高い酸化皮膜を有しているので、直流電源装置を用いて母材を正極に、溶接電極を負極として電流を流した場合(正極性の場合)、母材が高温にならず、溶接を行うことができない。そのため、母材を負極に、電極を正極として(負極性)、電流を流すと、母材から熱電子が放出され、酸化被膜が除去され(クリーニング効果)、溶接が可能となる。但し、正極性とした場合、電極を冷却する冷却効果がある。そこで、交流TIG溶接の場合、クリーニング効果と冷却効果の双方が得られる。図6に示すように、正極性の時間と負極性の時間とを調整することによって、両効果を所望の状態にできる。
【0009】
この交流TIG溶接も直流TIG溶接にも使用できるようにした交直TIG溶接機が存在する。交直TIG溶接機用電源装置のパネルには、直流TIG溶接用に、出力電流の設定器、ホットスタート設定器、アップスロープ時間及びダウンスロープ時間設定器、パルス周波数設定器、パルス電流の有無を切り換えるパルス切換器、タッチスタートと高周波スタートとの切換を行うアークスタート切換器、出力電圧、出力電流の表示器が、パネルに設けられた上に、交流TIG溶接用に、交流溶接時の電圧の周波数を設定する周波数設定器と、正極性と負極性との比率を設定する波形バランス設定器も、パネルに設けられている。
【0010】
これら各種の溶接用電源装置を、個別に製造する場合、その製造が面倒である。上記の各種溶接では、種々の設定が必要であるので、各種の溶接に使用できる1台の電源装置を製造しようとした場合、パネルには、多数の設定器が必要で、その構成が複雑になるだけでなく、各設定器の設定が面倒になる。
【0011】
そこで、本願出願人は、特開平10−3079号に示すような電源装置を提案した。この電源装置は、図7に示すように、パネルに、手溶接か、直流TIG溶接か等の溶接プロセスを設定する溶接プロセス設定用押釦2と、溶接プロセスの選択後に各溶接プロセスのパラメータを選択するパラメータ設定押釦4と、1個の設定器6とを設け、この設定器6によって、出力電流、出力電圧等を調整して、各種溶接に対応させている。パネルには、この他に、プロセス表示器8、パラメータ表示器10、アップダウン押釦12、出力電圧計14、出力電流計16が設けられている。
【0012】
ところで、溶接機用電源装置は、屋内で使用されるだけでなく、屋外で使用されることもあり、防滴、防塵対策を採る必要がある。そのため、図8に示すように、溶接プロセス設定用押釦2、パラメータ設定押釦4と、設定器6、プロセス表示器8、パラメータ表示器10、アップダウン押釦12、出力電圧計14、出力電流計16を備えたパネルに、防滴、防塵カバー18が設けられている。このカバー18は、ケース20の上部に設けられた支点22の回りに開閉可能にケースに取り付けられている。そして、カバー18を開いて、設定が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、このような溶接機用電源装置では、溶接プロセス、パラメータ、出力の設定を変更する場合には、一々、カバー18を開かなければならず、効率的に設定作業を行うことができなかった。
【0014】
本発明は、効率的に設定作業を行うことができる溶接機用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の溶接用電源装置は、ケースと、このケースに設けられ、複数の操作子が設けられたパネルとを、具備している。前記複数の操作子のうち1つが、操作棒と、この操作棒の先端に設けられた円筒状の操作部とを、有する操作子である。前記操作棒は、押すことが可能であり、かつその長さ方向の回りに回転可能であり、前記操作部を押すたびに、複数のパラメータ設定モードのうち予め定められた互いに異なるものが順に呼び出され、前記操作部を回転させることによって、前記呼び出されたパラメータ設定モードにおいてパラメータが設定される。前記パネルには、操作すると、パラメータ設定モードを1つ前に呼び出されていたパラメータ設定モードに戻すモード戻しスイッチが設けられている。
【0016】
前記パネルには、操作すると、操作すると、パラメータ設定モードを1つ次のパラメータ設定モードに進行させるモード進行スイッチを設けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の1実施形態の溶接機用電源装置は、手溶接、直流TIG溶接、交直TIG溶接のいずれのモードでも使用できるもので、図2に示すように、交流信号、例えば商用交流電圧が入力される電源入力端子30を有している。この電源入力端子30は、実際には2つの端子からなり、単相商用交流電圧が供給されている。しかし、三相商用交流電圧を使用することもできる。その場合、電源入力端子30は3つの端子からなる。この電源入力端子30は、入力側交流−直流変換部に供給され、ここで直流信号、例えば直流電圧に変換される。入力側交流−直流変換部32としては、整流器と平滑コンデンサとを使用することができる。
【0018】
入力側交流−直流変換部32からの直流電圧は、定電圧装置34に供給される。定電圧装置34は、スイッチング手段、例えばチョッパ回路36を含んでいる。チョッパ回路36は、制御信号が或る状態の間、導通する半導体スイッチング素子、例えばIGBT、電力FETまたは電力バイポーラトランジスタを有している。このチョッパ回路36は、チョッパ制御手段、例えばチョッパ駆動回路38が供給する制御信号、例えばPWM駆動信号によってオン、オフ制御される。駆動回路38は、CPU40からの指令に従って、駆動信号を発生する。電源入力端子30における入力電圧が入力電圧検出器41によって検出される。この入力電圧を表す入力電圧検出信号をA/D変換器42がデジタル入力電圧検出信号に変換し、CPU40に供給する。同様にチョッパ回路36の出力電圧が出力電圧検出器43によって検出される。この出力電圧を表す出力電圧検出信号をA/D変換器44がデジタル出力電圧検出信号に変換し、CPU40に供給する。CPU40は、デジタル入力及び出力電圧検出信号と、記憶手段、例えばメモリ45に記憶されているデータとに基づいて、演算処理を行い、チョッパ出力電圧が予め定めた電圧となるように、駆動回路38が生成するPWM駆動信号を制御している。従って、電源入力端子30に供給される電圧が、例えば200Vまたは400Vのように異なる電圧のいずれであっても、定電圧装置34は、予め定めた一定電圧を出力する。
【0019】
この定電圧装置34の出力電圧は、直流−高周波変換部、例えば高周波インバータ46に供給される。このインバータ46は、上述したような半導体スイッチング素子を例えばフルブリッジ接続しており、これら半導体スイッチング素子が、インバータ制御手段、例えばインバータ駆動回路47からの制御信号、例えばPWM駆動信号に基づいてオン、オフ制御され、例えば十数kHz乃至数100kHzの高周波電圧に変換される。インバータ駆動回路47には、後述するようにCPU40から指令が与えられている。なお、高周波インバータ46に代えてチョッパ回路を使用することもできる。
【0020】
この高周波電圧は、変圧器48に供給され、ここで所定の値の高周波電圧に変圧され、出力側高周波−直流変換部50に供給され、直流電圧に変換される。高周波−直流変換部50としては、整流器と平滑リアクトルとを有するものを使用することができる。
【0021】
この出力側高周波−直流変換部50からの直流電圧は、交流−直流切換部52に供給される。この切換部52は、上述したような半導体スイッチング素子を例えばフルブリッジ接続したインバータを含んでいる。これら半導体スイッチング素子が、切換部制御手段、例えば切換部用駆動回路54からの制御信号、例えばPWM駆動信号によってオン、オフ制御される。駆動回路54は、CPU40から交流切換指令が与えられると、高周波インバータ48の出力電圧よりも低い周波数、例えば十数Hz乃至200Hzの交流電圧を発生するように、各半導体スイッチング素子を、制御信号、例えばPWM駆動信号によってPWM制御する。また、CPU40から直流切換指令が供給されているとき、駆動回路54は、半導体スイッチング素子のうち、後述する負荷を挟んで直列に接続されている2つの半導体スイッチング素子を継続的にオンとして、直流電圧を継続的に負荷に供給する。なお、負荷に供給する直流電圧の極性を正極性とするか、負極性とするかによって、オンさせる2つの半導体スイッチング素子が変更される。
【0022】
交流−直流切換部50としては、上記のものの他に、出力側高周波−直流変換部50を正極側出力端子と負極側出力端子と帰還端子とを備えるものに構成し、正極側出力端子を1つのチョッパ回路を介して負荷の一端に接続し、負極側出力端子を別の1つのチョッパ回路を介して負荷の一端に接続し、帰還端子を負荷の他方の端子に接続し、交流電圧を供給する場合には、2つのチョッパ回路を交互にオン、オフさせ、直流電圧を供給する場合には、チョッパ回路のいずれかを継続的にオンさせるものを使用してもよい。
【0023】
交流−直流切換部52の出力電圧は、出力端子55に供給される。この出力端子55は、実際には正負2つの端子からなり、その一方が負荷である母材に接続され、他方が母材との間にアークを発生する溶接電極に接続されている。
【0024】
交流−直流切換部52の出力電圧(負荷電圧)は、出力電圧検出器56によって検出される。その出力電圧検出信号は、A/D変換器58によってデジタル出力電圧検出信号に変換され、CPU40に供給される。同様に、交流−直流切換部52の出力電流(負荷電流)は、出力電流検出器60によって検出される。その出力電流検出信号は、A/D変換器62によってデジタル出力電流検出信号に変換され、CPU40に供給される。CPU40は、これらデジタル出力電圧検出信号またはデジタル出力電流検出信号に基づいて、出力電圧または出力電流を予め定めた値になるように、インバータ駆動回路47にPWM駆動信号を発生させるように指令をインバータ駆動回路47に与えている。
【0025】
出力端子55には、高周波発生装置64が設けられている。この高周波発生装置64は、例えば周波数が1乃至3MHzで、電圧が5乃至20kVの高周波電圧を予め定めた比較的短い時間、出力端子55間に与えて、母材と溶接電極との間にアークを発生させる。この高周波発生装置64の起動、停止の制御は、CPU40によって行われている。
【0026】
CPU40は、手溶接、TIG溶接(高周波スタート)、TIG溶接(タッチスタート)、交直TIG溶接のいずれにも対応できるようにプログラムされている。また、高周波発生装置64は、容易に着脱できるように、この電源装置のケース94に取り付けられている。
【0027】
この電源装置を動作させる場合、種々のパラメータの設定が必要であり、例えば第1のパラメータとして、基準電流信号がある。これは、手溶接やTIG溶接の場合に行う定電流制御において、負荷電流として供給しようとする電流を表すもので、操作子、例えば第1のパラメータ指令器、具体的には1つの出力設定器66によって、設定され、A/D変換器68によってデジタル基準電源信号に変換されて、CPU40に供給される。設定器66は、エンコーダ型のもので、設定のモード等を切り換えるための押釦スイッチ70を備えている。
【0028】
CPU40には、操作子、例えばモード設定手段、具体的にはプロセス設定用押釦スイッチ72と、プロセス表示器74とが設けられている。プロセス表示器74は、手溶接、TIG溶接(高周波スタート)、TIG溶接(タッチスタート)に対応した3つの表示灯74a乃至74cを有している。プロセス設定用押釦スイッチ72を初期状態から一度押すと、手溶接モードにCPU40がなり、その旨を表すように表示灯74aが点灯する。手溶接モードから更にプロセス設定用押釦スイッチ72を押すと、CPU40は、TIG溶接(高周波スタート)モードに切り換えられ、その旨を表すように表示灯74bが点灯する。TIG溶接(高周波スタート)モードにおいて、プロセス設定用押釦スイッチ72を一度押すと、TIG溶接(タッチスタート)モードになり、その旨を表すように表示灯74cが点灯する。
【0029】
CPU40には、操作子、例えば第2のパラメータ指令器、具体的には電流モード設定用押釦スイッチ76と、電流モード表示器78が設けられている。電流モード表示器78は、4つの電流モードに対応して4つの表示器78a乃至78dからなる。初期状態から、電流モード設定用押釦スイッチ76を押すと、予め定められた電流を負荷に出力する標準モードにCPU40がなり、その旨を表す表示灯78aが点灯する。標準モードにおいて、更に電流モード設定用押釦スイッチ76を押すと、スロープモードにCPU40がなる。スロープモードは、溶接初期電流が流れた後、予め設定された電流に向かって負荷電流が徐々に増加するアップスロープと、溶接終了時に、予め設定された電流からクレータ電流に負荷電流を徐々に減少させるダウンスロープとの傾きを変化させるものである。なお、スロープモードにあることを表す表示灯78bが点灯する。スロープモードにおいて、電流モード設定用押釦スイッチ76を押すと、スロープモードを繰り返すリピートモードにCPU40が切り換えられ、その旨を表すように表示灯78cが点灯する。リピートモードにおいて、電流モード設定用押釦スイッチ76を押すと、短時間負荷電流を流し、母材の仮付けを行うスポットモードにCPU40が切り換えられ、その旨を表示灯78dを点灯させることによって表示する。
【0030】
CPU40には、操作子、例えば第3のパラメータ指令器、具体的にはパルスモード用押釦スイッチ80と、パルスモード表示器82とが設けられている。パルスモード用押釦スイッチ80を押すと、負荷電流がパルス電流となるパルスモードなり、その旨が表示器82を点灯させることによって表示される。更に、パルスモード用押釦スイッチ80を押すと、パルスモードが解除され、負荷電流が直流電流となる。パルスモードが解除された旨を表すために、パルスモード表示器82が消灯する。
【0031】
CPU40には、操作子、例えば第4のパラメータ指令器、具体的には交直切換用押釦スイッチ84と、交直表示器86が設けられている。交直表示器86は、直流TIGモードと交流TIGモードとに対応した表示灯86a、86bからなる。交直切換用押釦スイッチ84が押されると、直流TIGモードとなり、その旨を表すために表示灯86aが点灯する。更に、交直切換用押釦スイッチ84が押されると、交流TIGモードとなり、その旨を表すために表示灯86bが点灯する。
【0032】
CPU40には、出力モード表示器88が設けられている。出力モード表示器は、14個の表示灯88a乃至88nからなり、表示灯88aは、イナートガスが溶接前から供給されるプリフロー状態に設定されるとき点灯される。表示灯88bは、ホットスタート電流が設定されるとき点灯される。表示灯88cは、起動電流が設定されるとき点灯される。表示灯88dは、アップスロープ時間が設定されるとき点灯される。表示灯88eは、パルス電流の値が設定されるとき、点灯される。表示灯88fは、ベース電流が設定されるとき、点灯される。表示灯88gは、スポット電流の停止時間が設定されるとき点灯される。表示灯88hは、パルス幅が設定されるとき点灯される。表示灯88iは、パルス周波数が設定されるとき点灯される。表示灯88jは、交流溶接時の周波数が設定されるときに点灯される。表示灯88kは、交流溶接時の正負の波形バランスが設定されるとき点灯される。表示灯88lはダウンスロープ時間が設定されるとき点灯される。表示灯88mは、クレータ電流が設定されるとき点灯される。表示灯88nは、イナートガスが溶接後に流されるポストフローに設定されたときに点灯する。
【0033】
これらの値の設定には、上述した設定器66が使用され、設定された値を表示するために出力表示器90が設けられている。また、設定された値が、どのような種類のものであるかを表示するために出力設定表示器92が設けられている。出力設定表示器92は、電流、比率(パーセント)、時間、周波数に対応する表示灯92a乃至92dからなる。
【0034】
このような設定器や表示器は、図1(a)に示すようにケース94に設けられたパネル96上に配置されている。パネル96を図3に示す。このパネル96は、ケース94の上部正面に斜め下方を下端が向くように形成された凹所内に配置された概略矩形の形状のものである。
【0035】
このパネル96と間隔をおいて平行に、カバー、例えば防滴、防塵用の透明または半透明カバー98が取り付けられている。このカバー98が透明であるので、カバーを開かなくても、表示器の表示を外部から確認することができる。このカバー96も、パネル96にほぼ対応する矩形に形成されている。このパネル96の上端には、図1(b)に示すように外方に突出する回転軸100が設けられ、これら回転軸がケース94の凹所の側壁に形成された挿通孔(図示せず)に挿通されて、図1(a)に矢印で示す方向及びその反対方向にカバー98が回転自在である。従って、カバー98は、パネルを閉じた状態と開いた状態とにすることができる。また、カバー98は、上部に全開する以外に、上部近傍の途中で停止させる構造であってもよい。
【0036】
この下方にはパネル側に窪んだ凹所があり、これに対応するパネル上に設定器66が配置されている。この設定器66から操作棒66aが凹所に向かって伸延し、その先端部に短円柱状の操作部66bが形成され、この操作部66bは、カバー98が閉じた状態においても、操作部66bを操作可能に、カバー98から一部が突出している。なお、操作部66bをパネル側に押すことによって設定器用切換スイッチ70が動作し、操作部66bを操作棒66aの回りに回転させることによって設定器66が動作する。この操作部66bは、カバー98の外部に突出するために、カバー98に形成された開口102に挿通されている。この開口102は、カバー98を開くときに操作部66bが邪魔にならないように、また防塵、防滴効果を損なわないような大きさに形成されている。設定器66が外部操作可能操作子である。
【0037】
このように構成された溶接機用電源装置において、手溶接を行う場合の各種設定は、例えば次のようにして行われる。カバー98を開き、プロセス設定用押釦スイッチ72を押して、手溶接モードを選択する。このとき表示灯74aが点灯する。このとき設定器66の操作部66bを押すことによって、設定用押釦スイッチ70が動作し、表示灯88bが点灯し、ホットスタート電流の設定状態をあることを表す。また、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表す。そして設定器66の操作部66bを操作することによってホット電流の値が設定され、その値が出力表示器90に表示される。さらに、設定器66の操作部66bを押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88fが点灯し、溶接電流の設定状態であることを表示する。さらに、設定される値が電流であることを表示するために、表示灯92aが点灯する。そして、設定器66の操作部66bを操作することによって、溶接電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。これによって、手溶接の場合の設定は終了する。
【0038】
直流TIG溶接で高周波スタートの設定は、例えば次のようにして行われる。カバー98を開き、プロセス設定用押釦スイッチ72を押して、高周波スタートを選択する。これによって表示灯74bが点灯する。さらに電流モード設定用押釦スイッチ76を押して、所望の溶接モードを選択する。ここでは、スロープモードが選択された仮定する。このとき、表示灯78bが点灯する。さらに、パルスモード押釦スイッチ80を押して、パルスモードを選択する。このとき表示灯82が点灯する。更に、交直切換用押釦スイッチ84を押して、直流溶接を選択する。このとき、表示灯86aが点灯する。
【0039】
次に設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88bが点灯し、ホットスタート電流設定状態であることが表され、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、ホットスタート電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0040】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88cが点灯し、初期電流設定状態であることが表され、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、初期電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0041】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88dが点灯し、アップスロープ時間設定状態であることが表され、表示灯92cが点灯し、設定される値が時間であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、アップスロープ時間が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0042】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88eが点灯し、ピーク電流設定状態であることが表され、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、ピーク電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0043】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88fが点灯し、ベース電流設定状態であることが表され、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、ベース電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0044】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88hが点灯し、パルス幅設定状態であることが表され、表示灯92cが点灯し、設定される値が時間であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、パルス幅が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0045】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88iが点灯し、パルス周波数設定状態であることが表され、表示灯92dが点灯し、設定される値が周波数であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、周波数が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0046】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88lが点灯し、ダウンスロープ設定状態であることが表され、表示灯92cが点灯し、設定される値が時間であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、ダウンスロープ時間が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0047】
更に、設定器66を押すことによって設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88mが点灯し、クレータ電流設定状態であることが表され、表示灯92aが点灯し、設定される値が電流であることを表示する。そして、設定器66の操作部66bが操作されて、クレータ電流が設定され、その値が出力表示器90に表示される。以上のようにして、直流TIG高周波スタートの設定が終了する。なお、104aは、アップ用押釦スイッチで、これを1回押すことによって設定用押釦スイッチ70を1回動作させる機能を持たせている。また、104bはダウン用押釦スイッチで、これを1回押すことにより、設定用押釦スイッチ70が1回前に押された状態(表示灯88の点灯と、設定可能な状態)に戻すことができる。
【0048】
交流TIG高周波スタートの設定は、上記直流TIG高周波スタートの設定において、交直切換押釦スイッチ84の操作までは同一であり、交直切換押釦スイッチ84の操作時に交流溶接を選択する。このとき、交流TIG高周波スタートモードとなり、表示器86bが点灯する。その後、パルス周波数モードまでは、直流TIG高周波スタートと同様に設定が行われ、その後、設定器66を押して設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88jが点灯し、交流周波数設定状態であることが表示される。また、表示灯92dが点灯し、設定される値が周波数であることを表示する。設定器66の操作部66bを操作することによって交流周波数が設定され、その値が出力表示器90に表示される。
【0049】
更に、設定器66を押して設定用押釦スイッチ70を動作させると、表示灯88kが点灯し、交流波形バランス設定状態であることが表示される。また、表示灯92bが点灯し、設定される値が比率(パーセント)であることを表示する。設定器66の操作部66bを操作することによって交流周波数バランスが設定され、その値が出力表示器90に表示される。これによって交流TIG高周波スタートの設定が終了する。
【0050】
TIG溶接であってタッチスタートの設定は、カバー98を開き、プロセス設定用押釦スイッチ72を押して、タッチスタートを選択する。このとき表示灯74cが点灯する。以下、上記の高周波スタートの場合と同様に設定を行う。
【0051】
ところで、上記のようにした使用するモードに応じた設定を行った後、各設定を変更する必要が生じることがある。この場合、設定器66の操作部66bがカバー98から突出しているので、カバー98を開かなくても、設定器66の操作部66bを押すことを繰り返すことによって、変更したいパラメータに容易に到達することができ、到達した時点で操作部66bを操作することで、所望の値にパラメータを変更することができる。また、図1(a)において、カバー98の凹部がパネル96から浮いた状態にあるが、パネル96に接触させてもよい。また、パネル96に取付けた設定器や表示器はビニール等のカバーで被うこともできる。さらに設定器66は、防滴、防塵対応とすることが望ましい。
【0052】
上記の実施の形態では、手溶接と、TIG溶接との場合について説明したが、これに限ったものではなく、MIG溶接やMAG溶接にも、本発明を適用することができる。また、上記の実施の形態では、設定器66のみを外部から操作可能としたが、他の操作子も外部から操作可能とすることもできる。設定器66は、操作部66bを回転させるものとしたが、操作部を摺動させるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の1実施形態の電源装置の部分省略縦断面図及びこの電源装置に使用されるカバーの正面図である。
【図2】図1の電源装置のブロック図である。
【図3】図1の電源装置のパネルの正面図である。
【図4】手溶接用電源装置の出力電圧と出力電流との関係を示す図である。
【図5】直流TIG溶接機の出力電流の波形図と、同出力電圧と主力電流との関係を示す図である。
【図6】交流TIG溶接機の電流波形図である。
【図7】従来の溶接機用電源装置のパネルの正面図である。
【図8】従来の溶接機用電源装置の部分省略縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
66 設定器(外部操作可能操作子)
94 ケース
96 パネル
104a アップ用押釦スイッチ(モード進行スイッチ)
104b ダウン用押釦スイッチ(モード戻しスイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
このケースに設けられ、複数の操作子が設けられたパネルとを、
具備し、
前記複数の操作子のうち1つが、操作棒と、この操作棒の先端に設けられた円筒状の操作部とを、有する操作子であって、
前記操作棒は、押すことが可能であり、かつその長さ方向の回りに回転可能であり、前記操作部を押すたびに、複数のパラメータ設定モードのうち予め定められた互いに異なるものが順に呼び出され、前記操作部を回転させることによって、前記呼び出されたパラメータ設定モードにおいてパラメータが設定され
前記パネルには、操作すると、パラメータ設定モードを1つ前に呼び出されていたパラメータ設定モードに戻すモード戻しスイッチが設けられている溶接機用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の溶接機用電源装置において、前記パネルには、操作すると、操作すると、パラメータ設定モードを1つ次のパラメータ設定モードに進行させるモード進行スイッチが設けられている溶接機用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−260067(P2008−260067A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144031(P2008−144031)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【分割の表示】特願2001−342343(P2001−342343)の分割
【原出願日】平成13年11月7日(2001.11.7)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】