説明

溶接金属管外周面のクリーニング方法とクリーニング装置

【課題】溶接金属管(1)の溶接ビード(2)位置の光学的読み出しを妨げる諸要素(4,5,6)を取り除くため、該金属管(1)の外周面(3)をクリーニングする方法と装置を提供すること。
【解決手段】溶接金属管(1)の外周面(3)のクリーニング方法において、該外周面(3)上に存在する付着物質、及び傷を融解、蒸発、及び/又は昇華させるために、該外周面(3)上に焦点を合わせたレーザービーム(7)を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接金属管の外周面(外表面)をクリーニングする方法に関し、このクリーニングにより、該管の溶接ビードの位置が光学的に検出されるようにするものである。また、本発明は、該クリーニング方法を実行するためのクリーニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、溶接金属管の外周面上の溶接ビードの位置を検出することは、金属管の作製に対して良い影響を及ぼす。なぜなら、この位置の検出によって、金属管の溶接ビードを正しく処理することができ、溶接金属管の美的特性と機能的特性を向上させることができるからである。
【0003】
上記のことは、例えば、溶接作業が、溶接ビードが妨げとなるような、家具の隠れた面の上で行われたり、ロッド、ねじ、ボルトなどの係合孔の中で行われたりする場合に顕著である。その他の実際例としては、折りたたみ式のワークピースの溶接が挙げられる。このような場合、溶接ビードが、正確な作業をするうえで悪影響を及ぼし、曲がったワークピースの強度にも悪影響を及ぼすからである。
【0004】
従来の検出方法においては、暗い金属管上の溶接ビードに対応する光の帯をもつコントラスト領域を生成する金属管表面上の輝度の変動から溶接ビードの位置を検出する光センサを備えた光学的検出システムを用いることにより、溶接金属管の外周面上の溶接ビードの位置を自動的に検出していた。
【0005】
しかしながら、上記のような光学的検出システムは、引っ掻き傷がある外周面、又は、ほこり、脂肪、油、さび、塗料汚れなどで覆われた外周面を有する金属管や、劣悪な光学的特性の材質と溶接部を有する金属管に対しては、非常に低効率であるか、あるいは全く有用でないことが明らかである。
【0006】
実際、上記のような場合、従来の光学システムは、互いに区別して溶接ビードの位置を正確に検出することが困難な、低いS/N比のコントラストを検出するか、あるいは幾つかの信号輝度ピークを検出できるに過ぎない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、溶接ビード位置の光学的読み出しを妨げる諸要素を取り除くため、金属管、特に金属管の外周面(外表面)をクリーニングする方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、そのようなクリーニング方法を実行するためのクリーニング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、溶接金属管の外周面上に付着した物質(materials)、又は、傷(flaws)を融解、蒸発、及び/又は昇華させることにより、該外周面をクリーニングすることを特徴とする溶接金属管の外周面のクリーニング方法によって達成される。また、上記目的は、そのような方法を実行するための、レーザービーム源を含むことを特徴とする装置によって達成される。
【0009】
より具体的には、上記目的は、請求項1に記載されたクリーニング方法と、請求項5に記載されたクリーニング装置によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、その他の請求項に記載されている。
【0010】
本発明のクリーニング方法とクリーニング装置によれば、溶接金属管の外周面が処理・クリーニングされ、金属管素地とその溶接ビードとの間に明瞭な光学的コントラストが与えられるので、位置検出システムが、金属管の溶接ビードの位置を正確に検出することが可能となり、加えて、作業者が、該溶接ビード上における更なる処理操作を行うための適正な位置を、正確に設定することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明を詳細に説明する。参照符号1は、本発明のクリーニング方法でクリーニングされるべき金属管を示す。金属管1は、その外周面3上の溶接ビード2において溶接されており、この溶接ビード2は、その一部において、脂肪、油、さび又は汚れ4や塗料層5を形成している物質で被覆されており、引っ掻き傷又は切欠き6が付いている。
【0012】
金属管1の外周面3上の溶接ビード2の位置を適正に検出する光学的検出を妨げる欠陥(すなわち、上記のような付着物質や傷など)を取り除くため、本発明の方法は、金属管1の外周面3上に適正に焦点を合わせたレーザービーム7を外周面3上に衝突させるものである。
【0013】
このため、レーザービーム7の放射ヘッド8が、衝突するレーザービーム7が金属管1の表面層によってのみ吸収されるように配置されることにより、金属管1の外周面3のレーザービーム7が衝突するレーザービーム衝突部分9が、脂肪、油、さび又は汚れ4、塗料層5、引っ掻き傷又は切欠き6などを融解、蒸発、及び/又は昇華させることによって、適切にクリーニングされる。このクリーニングは、金属管1の表面層10を融解、蒸発、及び/又は昇華させることにより実行される(図3参照)。
【0014】
上記レーザービーム7に加えて、レーザービーム衝突部分9から融解物質11や蒸気12を容易に取り除くため、更に、ガスジェット13(図2参照)をレーザービーム衝突部分9へ衝突させることにより、容易に検出・同定可能な金属管素地と溶接ビード2との間の光学的コントラストを、金属管1の外周面3上で形成させるようにしてもよい。
【0015】
本発明のクリーニング方法とクリーニング装置において用いられるレーザービーム7の放射ヘッド8は、例えば、本出願人製作のタイプのものなど、市場で購入可能なレーザービーム放射装置を含んでよい。
【0016】
以上、好ましい実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明の範囲を逸脱せずに様々な変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明における、レーザービームを、クリーニングされるべき金属管外周面上に適正に衝突させるための操作ステップを示す模式図である。
【図2】図1に示された金属管の上で実行されるクリーニング操作を示す模式図である。
【図3】本発明により達成されたクリーニングの結果を示す模式図である。
【符号の説明】
【0018】
1 金属管
2 溶接ビード
3 金属管の外周面
4 脂肪、油、さび又は汚れ
5 塗料層
6 引っ掻き傷、又は切欠き
7 レーザービーム
8 放射ヘッド
9 レーザービーム衝突部分
10 金属管の表面層
11 融解物質
12 蒸気
13 ガスジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接金属管(1)の外周面(3)をクリーニングするクリーニング方法において、前記外周面(3)に付着した付着物質及び前記外周面(3)に形成された傷を、前記外周面(3)から融解、蒸発、及び/又は昇華させることにより前記外周面(3)をクリーニングすることを特徴とする溶接金属管外周面のクリーニング方法。
【請求項2】
前記外周面(3)上に焦点を合わせたレーザービーム(7)により、前記外周面(3)をクリーニングすることを特徴とする請求項1記載のクリーニング方法。
【請求項3】
前記レーザービーム(7)を、前記外周面(3)の部分(9)へ衝突させて、前記溶接金属管(1)の表面層(10)を融解、蒸発、及び/又は昇華させることにより、前記外周面(3)から、脂肪、油、さび又は汚れ(4)及び塗料層(5)を形成している物質を融解、蒸発、及び/又は昇華させ、そして、引っ掻き傷(6)を除去させて、前記部分(9)をクリーニングすることを特徴とする請求項2記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記クリーニングの操作により発生した融解物質(11)と蒸気(12)とを前記部分(9)から除去するためのガスジェット(13)が、更に、前記部分(9)へ衝突されることを特徴とする請求項1又は2記載のクリーニング方法。
【請求項5】
レーザービーム源を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクリーニング方法を実施するための溶接金属管外周面のクリーニング装置。
【請求項6】
溶接金属管(1)の外周面(3)上の溶接ビード(2)の位置を光学的に検出する光学的検出方法において、前記金属管(1)の前記外周面(3)が、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクリーニング方法により処理されたことを特徴とする光学的検出方法。
【請求項7】
溶接金属管(1)の外周面(3)上の溶接ビード(2)の位置を光学的に検出する光学的検出方法において、前記金属管(1)の前記外周面(3)が、請求項5記載のクリーニング装置により処理されたことを特徴とする光学的検出方法。
【請求項8】
溶接ビード(2)により溶接された溶接金属管(1)において、前記溶接金属管(1)が、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のクリーニング方法によりクリーニングされた外周面(3)を有することを特徴とする溶接金属管。
【請求項9】
溶接ビード(2)により溶接された溶接金属管(1)において、前記溶接金属管(1)が、請求項5記載のクリーニング装置によりクリーニングされた外周面(3)を有することを特徴とする溶接金属管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−284548(P2008−284548A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124663(P2008−124663)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(508138955)アディジェ ソシエタ ペル アチオニ (2)
【Fターム(参考)】