説明

溶液製膜方法及び溶液製膜設備

【課題】ドープが流出されるスリットの近傍に異物が付着するのを抑制する。
【解決手段】ポリマーと溶剤と添加剤とを混合したドープの中に、更に添加剤を含有させた外層用ドープと、添加剤を含有させない基層用ドープとを用意する。各ドープをフィードブロック50に送りこの内部で合流させた後に、流延ダイ51の先端に形成されたスリット出口85から走行する支持体54上に共に流出させて流延ビード93を形成し、支持体54上に複層構造の流延膜61を形成する。送風ユニット53からスリット出口85であり、かつ流延ビード93の幅方向全領域に向けてドープに含ませた溶剤の上記を含む溶剤ガスを送り、スリット出口85付近で溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持する。このような雰囲気下ではドープの乾燥が防止されるため、スリット出口85の幅方向全領域に渡って異物の付着が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、液晶表示装置の偏光板の保護フィルムや視野角拡大フィルム等として好適に用いられるフィルムを製造する溶液製膜方法及び溶液製膜設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートを原料とするフィルムは、透明度が高く、かつ強靭性や難燃性に優れる等の特徴から写真感光材料の支持体として広く利用されてきた。最近では、このセルロースアシレートの中で、57.5〜62.5%の平均酢化度を有するセルローストリアセテート(TAC)を原料としたTACフィルムの需要が著しく増大している。TACフィルムは、上記の特性に加えて光学的等方性に優れていることから、液晶表示装置の主要構成部材である偏光板の保護フィルムや、光学補償フィルム、視野角拡大フィルム等の光学材料の支持体として利用可能なことが理由である。
【0003】
TACフィルムは、一般に溶液製膜方法で作られる。溶液製膜方法は、走行する支持体上に、ポリマーと溶剤とを含むフィルムの原料液であるドープを、流延ダイのスリット出口から流出して支持体との間に流延ビードを形成し、流延ビードにより支持体上に形成した流延膜を支持体から剥ぎ取って溶剤を含んだ湿潤フィルムとした後、これを乾燥させてフィルムとする。
【0004】
ところで、溶液製膜方法により連続的に製膜していると、スリット出口に異物が付着し、これが原因となって流延膜にスジが発生する。異物は、スリット出口に蓄積されたドープやドープ中に含まれていた不溶解物の周りにドープが絡んだものが空気に触れて乾燥した固化物と考えられる。流延膜に付いたスジは、製造するフィルムの表面にスジ故障として残り、面状を悪化させるため問題である。スリット出口に異物が付着した場合には、通常、製造設備を一旦停止させてから、異物が付着した部分を洗浄する等の処置が取られているが、このような洗浄処置では、ライン速度を低下させて、又はラインを停止させて行なう必要があるので、製造時間のロスを招く。したがって、連続して製膜していても、スリット出口に異物を付着させることがないようにした製造方法の提案が望まれている。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、流延ダイの側面側下端部近傍に囲いを設け、ここに濃度と風速との比を規定しながら気体状態の溶剤を含むガスを供給し、ドープの乾燥を抑制することにより異物の付着を抑制する方法が提案されている。また、例えば、特許文献2には、流延ダイの先端部の全長域をカバーするように溶剤を供給し、先端部に付着している異物を膨潤又は溶解させることにより、異物を取り除く方法が提案されている。
【特許文献1】特開2002−036266号公報
【特許文献2】特許第3814368号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、流延ダイの側面側近傍でしか異物の付着を抑制することができない。また、特許文献2では、スリット近傍に溶剤を供給するためにドープや流延膜の面状が悪化するおそれがある。特許文献2の中では、溶剤の放出量を調整することにより面状の悪化を抑制することができると記載されているが、飛散した溶剤が流延ビードや流延膜に付着して、その面状が悪化するおそれがあるため改善が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、ライン速度を低下させたり、ラインを停止させたりすることなく、スリット出口の幅方向全領域に渡って異物が付着するのを抑制し、スジ故障がなく面状が良好なフィルムを連続して製造することができる溶液製膜方法及び溶液製膜設備を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る溶液製膜方法は、走行する支持体上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを流延ダイのスリット出口から流出させて支持体との間に流延ビードを形成し、流延ビードにより支持体上に形成した流延膜を支持体から剥ぎ取って溶剤を含んだ湿潤フィルムとした後、乾燥させてフィルムとする溶液製膜方法において、スリット出口であり、かつ流延ビードの幅方向全領域に向けて溶剤の蒸気を含む溶剤ガスを送り、スリット出口付近で溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持することを特徴とする。
【0009】
溶剤ガスは、支持体の走行方向下流側からスリットに向かって吹き付けられることが好ましい。
【0010】
溶剤ガス中に含まれる蒸気の割合は、5体積%以上65体積%以下であることが好ましい。
【0011】
溶剤は、ジクロロメタンであることが好ましい。また、溶剤は、ジクロロメタンを最も多く含み、ポリマーを溶解又は分散させる化合物と混合した混合物であり、蒸気中に含まれるジクロロメタンガスの割合が80体積%以上であることが好ましい。
【0012】
流延ダイの上部に溶剤ガスを吹き付けて、流延ダイの表面を沿わせながら溶剤ガスをスリット出口に送ることが好ましい。
【0013】
複数のドープを支持体に向かって共に、或いは逐次に流出させることにより、基層と、基層の表面に接するように配された外層とを有する複層構造の流延膜を形成することが好ましい。
【0014】
本発明に係る溶液製膜設備は、走行する支持体上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを流延ダイのスリット出口から流出させて支持体との間に流延ビードを形成し、流延ビードにより支持体上に形成した流延膜を支持体から剥ぎ取り溶剤を含んだ湿潤フィルムとした後、この湿潤フィルムを乾燥させてフィルムとする溶液製膜設備において、スリット出口であり、かつ流延ビードの幅方向全領域に向けて溶剤の蒸気を含む溶剤ガスを送り、スリット出口付近で溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持するために、流延ダイに対して支持体の走行方向の下流側であり、かつ支持体の上部に備えられた送風ユニットを有することを特徴とする。
【0015】
送風ユニットの下部には、流延ビードの幅方向に長く形成されたスリット状の送風口を有するノズルが備えられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、ライン速度を低下させたり、ラインを停止させたりすることなく、スリット出口の幅方向全領域に渡って異物が付着するのを抑制し、スジ故障がなく面状が良好なフィルムを連続して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る実施形態を示して、本発明の詳細を説明する。ただし、ここに示す形態はあくまで本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。
【0018】
図1に示すように、本発明に係る溶液製膜設備10は、ポリマー11や溶剤12、及び添加剤13を混合してドープ15を調製するドープ製造ライン16と、このドープ15を用いてフィルム18を作るフィルム製造ライン19とからなる。
【0019】
本発明に用いられるポリマー11は特に限定されず、溶液製膜方法によりフィルムとすることができる公知のもので良い。本実施形態では、偏光板用保護フィルムや光学補償フィルム等の光学用途に広く用いられるセルロースアシレートを用いる場合を例にして説明する。セルロースアシレートの中では、セルロースアセテート、特にアセチル化度の平均値が57.5%〜62.5%のセルローストリアセテートが光学特性に優れたフィルムをつくる上で好ましい。上記のアセチル化度とは、セルロース単位重量当りの結合酢酸量を意味し、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算に従って求めることができる。本実施形態では、粒子状のセルローストリアセテートを使用し、その90重量%以上が0.1〜4mmの粒子径、好ましくは1〜4mmの粒子径を有する。なお、本発明で用いることができるセルロースアシレートの詳細については、特開2005−104148号公報の[0141]段落から[0192]段落に記載されており、本記載は本発明に適用することができる。
【0020】
溶剤12は、ジクロロメタンが好適に用いられる。また、ジクロロメタンと上記のポリマーを溶解又は分散させる化合物とを含ませたものであり、かつジクロロメタンの含まれる割合を最も多くした混合物も好適に用いることができる。上記の化合物としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類などがあるが、特に限定されない。化合物は、1種類でも良いし、複数を使用しても良い。具体的には、ハロゲン化炭化水素、エステル類(例えば、酢酸メチル、メチルホルメート、エチルアセテート、アミルアセテート、ブチルアセテートなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、ジオキソラン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル,メチル−t−ブチルエーテルなど)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノールなど)などが挙げられる。また、本実施形態の溶剤12はジクロロメタンを使用する。
【0021】
添加剤13としては可塑剤がある。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以降、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェートなど)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレートなど)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートなど)及びその他の可塑剤を用いることができる。この中で、セルロースアシレートをフィルムとするために特に好ましいものとしてはTPPが挙げられる。
【0022】
ドープ15には、可塑剤以外の添加剤を各種含ませても良い。他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。具体的には、例えば、紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物が特に好ましい。なお、本発明で用いることができる溶剤12や添加剤13に関しては、特開2005−104148号公報の[0193]段落から[0513]段落に記載されており、本記載は本発明に適用することができる。
【0023】
ドープ製造ライン16には、混合タンク20と、第1、第2スタティックミキサ24、25と、第1〜第3濾過装置27〜29とが備えられている。また、混合タンク20の下流には、四方弁30で切り替えられる配管L1,L2,L3が接続されている。
【0024】
混合タンク20には、モータ32により連続して回転可能な攪拌機33と、混合タンク20の内部温度を調整するためのジャケット34とが備えられており、混合タンク20内に投入されたポリマー11と溶剤12と添加剤13とは、この攪拌機33で攪拌されることによりドープ15とされる。
【0025】
このドープ15は、四方弁30の切り替えにより混合タンク20から各配管L1〜L3に向かってポンプP1,P3で流量が調節されながら、適宜送られる。配管L1、L3の中に送られたドープ15には、添加剤タンク21から添加剤溶液21aが投入される。添加剤溶液21aは、添加剤タンク21の中で、予め、攪拌機23により所望の溶剤と添加剤とを攪拌混合させたものである。この溶剤は、相溶性の観点からドープ15の調製に用いたものが好適に用いられる。添加剤の種類は特に限定されるものではなく、既にドープ15に含ませたものでも、マット剤として作用する微粒子でも良いが、少なくとも支持体と接触する外層用のドープには剥離促進剤を添加することが好ましい。
【0026】
添加剤溶液21aが投入されたドープ15は、第1、第2スタティックミキサ24,25でそれぞれ攪拌された後に、フィルタ(図示しない)を備える第1,第3濾過装置27,29により濾過されて不溶解物が除去される。これによりドープ15を主成分とし、新たに添加剤が添加されたドープ、すなわち外層用ドープが作られる。外層用ドープに添加させる添加剤の種類を選択することにより所望とする機能を外層に持たせることができる。一方、四方弁30の切り替えによりポンプP2で流量が調節されながら配管L2に送られたドープ15は、そのままの状態で第2濾過装置28に送り濾過することにより、基層用ドープとされる。なお、以下の説明では、外層用ドープ及び基層用ドープを併せて流延用ドープと称する。
【0027】
フィルム製造ライン19は、流延室40と、渡り部41と、テンタ42と、乾燥室45と冷却室46と、巻取室48とを有する。
【0028】
流延室40は、その内部にフィードブロック50が取り付けられた流延ダイ51と、減圧チャンバ52と、送風ユニット53と、支持体54と、一対のローラ55a、55bと、送風装置56a、56bと、加熱装置57と、凝縮器(コンデンサ)58と、剥取ローラ59とを有する。また、流延室40には温度調節装置60が取り付けられており、流延室40の内部温度は一定に保持される。
【0029】
フィードブロック50は、その内部に流延用ドープの流路が形成されており、ドープ製造ライン16から送られた流延用ドープはここで所望とする流延膜61の層構造になるよう配置が調整される。
【0030】
減圧チャンバ52は、支持体54の走行方向における下流側に設置されており、流延ダイ51のスリット出口から流出された流延用ドープの支持体側を大気圧よりも低い状態に減圧させる。これにより、スリット出口から流出された流延用ドープを減圧状態の支持体54側に引き寄せながら支持体54上に到達させて、支持体54と流延用ドープとの間にエアを巻き込ませずに高速で流延膜61を形成する。
【0031】
ローラ55a、55bに巻き掛けられた支持体54は、いずれか一方に駆動手段(図示しない)が接続されたローラ55a、55bにより、図1の矢印方向に無端で走行している。支持体54の形態は特に限定されず、例えば、流延バンドでも良いし、連続的に回転可能な流延ドラムでも良い。また、その材質も特に限定されるものではないが、耐久性や耐熱性に優れる等の観点からステンレス製のものが好適に用いられる。本実施形態の支持体54はステンレス製の流延バンドを使用する。
【0032】
送風装置56a、56bには、流延膜61に対して略平行になるように支持体54の走行する向きに開口した送風口が備えられており、この送風口から供給される乾燥風により流延膜61の乾燥が進行する。流延ダイ51側に設置された送風装置56aには、送風装置55aから送り出される乾燥風がドープに直接当たるのを防止し、平面性に優れる流延膜61を形成させるための遮風板62が取り付けられている。遮風板62は、プラスチック板やステンレス等で作られた金属板が好適な例として挙げられるが、その材質や形状等は特に制限されない。
【0033】
支持体54の走行に伴って移動する流延膜61の搬送路近傍には加熱装置57が設置されており、流延膜61の空気側を加熱することでより乾燥を進める。乾燥が進行して流延膜61から発生した溶剤の蒸気は、凝縮器(コンデンサ)58により凝縮液化して回収された後に、回収装置58aに送られ回収される。
【0034】
剥取ローラ59は、乾燥が進み自己支持性を持った流延膜61を支持するためのものである。剥取ローラ59で支持されながら流延膜61は支持体54から剥ぎ取られ、溶剤を含んだ湿潤フィルム65とされる。
【0035】
渡り部41には、複数のローラ66と送風装置67とが備えられている。送風装置67は、湿潤フィルム65の搬送路近傍であってその上方に設置され、各ローラ66で支持されながら搬送された湿潤フィルム65に対し、乾燥風を供給してその乾燥を進行させる。
【0036】
テンタ42の内部には、湿潤フィルム65の両側端部を把持するための複数のクリップ42aが備えられており、テンタ42の入口付近の所定の位置で、湿潤フィルム65の両側端部を把持する。両側端部が固定された湿潤フィルム65は、テンタ42の内部を搬送される間に、図示しない乾燥装置から乾燥風が供給され、その乾燥がより進められる。テンタ42では、対面するクリップ42aの間隔を拡縮させて、湿潤フィルム65の幅方向に対し所望の張力を付与する。これにより、湿潤フィルム65の幅方向での分子配向を制御して、所望のレタデーション値をフィルムに発現させる。なお、渡り部41でのローラ66の搬送速度やクリップ42aの搬送方向に対する間隔を調整すると、湿潤フィルム65の搬送方向に張力を付与し、その搬送方向の分子配向を制御することができる。
【0037】
テンタ42の下流には、内部にカッタを備える耳切装置67が設置されている。耳切装置67に送られた湿潤フィルム65は、その両側端部が切除される。フィルムの切断片は、耳切装置67に接続されているクラッシャ70に送られてチップ状に粉砕される。
【0038】
乾燥機45は、複数のローラ72と、乾燥風を供給するための送風装置(図示しない)とを有する。各ローラ72に巻き掛けられながら湿潤フィルム65は搬送される間に、供給される乾燥風により乾燥が進行し、フィルム18となる。乾燥中は、乾燥機45内の空気を吸着回収装置76により回収する。回収された空気は、吸着回収装置76において湿潤フィルム65から蒸発した溶剤成分が除去された後に、再び乾燥風として乾燥機45内に送り込まれる。
【0039】
乾燥機45の下流に設置された冷却室46は、加熱されたフィルム18を略室温となるまで冷やすためのものである。冷却方法は特に限定されず、略室温とした室内にフィルム18を放置して自然に冷やしても良いし、冷熱や冷却風を供給することができる冷却手段を用いてフィルム18を冷やしても良い。
【0040】
冷却されたフィルム18は、冷却室46の下流に設置されたナーリング付与ローラ77に送られてナーリングが付与される。巻取室48には、フィルム18を巻き取るための巻取機78が設置されており、フィルム18は押し圧ローラ79で中心方向に押圧された状態で巻取機78によって巻き取られる。以上の一連の工程を経ることにより、しわやつれがなく、かつスジ等の故障が存在しないロール状のフィルムを得ることができる。
【0041】
図2に示すように、フィードブロック50では、図1に示したドープ製造ラインの各配管L1〜L3から第1〜第3流路80〜82に送り込まれた基層用ドープ及び外層用ドープを合流部83で合流させる。そして、この合流させた状態で、流延ダイ51のスリット出口85から支持体54に共に流出される。支持体54側に傾くように流延ダイ51を設置することで、スリット出口85から支持体54までの間に形成されるドープの流れ、即ち流延ビード93を安定して形成させることができる。これにより、支持体54の上には、基層61aの両面に空気と接触する外層61bと、支持体54に接触するようにして配される外層61cとを備えた3層構造の流延膜61が形成される。
【0042】
送風ユニット53は、流延ダイ51に対して支持体54の走行方向の下流であり、かつ支持体54の上方に設置されている。送風ユニット53の下部には、流延ビード93の幅方向に長く形成されたスリット状の送風口88を有するノズル89が備えられており、送風口88からスリット出口85であり、かつ流延ビード93の幅方向全領域に向けてドープの調製に用いた溶剤の蒸気を含む溶剤ガスを送り、スリット出口85付近で溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持する。本実施形態では、ドープの調製用溶剤としてジクロロメタンを使用したので、ジクロロメタンを気化させた蒸気を含む溶剤ガスをスリット出口85付近に送る。
【0043】
溶剤ガスは、その中に5体積%以上65体積%以下の割合で蒸気を含むものとする。より好ましくは、20体積%以上65体積%以下であり、特に好ましくは40体積%以上65体積%以下である。このように流延ビード93付近の溶剤ガス濃度が高く維持された空気中では、流延ビード93の乾燥が防止される。このため、スリット出口85付近においてドープが固化して異物となり、付着することが抑制されるので、スジ故障等のない面状に優れるフィルムを製造することができる。
【0044】
ただし、流延室40内の温度は、流延膜の乾燥を効果的に行う等を目的として−10℃〜57℃とされているので、このような雰囲気下において溶剤ガスに含まれる蒸気の割合が65体積%を超えると、蒸気が飽和濃度を超えて溶剤露点に達し液化が始まる。液化した溶剤は流延ダイの表面に付着して、流延ビード93や流延膜61に飛散し、これらの面状を悪化させるので好ましくない。一方で、蒸気を5体積%未満しか含まない溶剤ガスでは、空気中の溶剤ガス濃度を高くする効果が弱く、流延ビード93の乾燥を防止することは難しい。なお、流延ダイ51付近にガス濃度計を設置して、オンラインで流延ビード93の温度や、周辺のガス濃度を測定し、この測定された温度及び濃度に応じて供給するガスの量を調整しても良い。この場合、流延ビード93付近の溶剤ガス濃度をより適格に知ることができるので、より好適に液化しない範囲で高濃度に維持することができ、異物の発生をいっそう抑制することができる。
【0045】
溶剤として、ジクロロメタンとその他の所定の化合物とを含ませた混合物を使用する場合、溶剤ガス中に含まれる蒸気の割合は混合物中に含ませた全ての有機化合物の蒸気の総和が所定の範囲を満たせば良い。ただし、この蒸気の中には、ジクロロメタンを気化させたジクロロメタンガスを80体積%以上含ませる。ジクロロメタンガスを含ませる割合は100体積%に近づくほど好ましい。
【0046】
図3に示すように、送風口88の全長W1(mm)は、スリット出口85の全長W2(mm)と略同等とする。これにより、スリット出口85の幅方向全領域に渡って均一に溶剤ガス94が送られるので、その領域において異物の発生を効果的に抑制することができる。ただし、送風口88とスリット出口85との全長は必ずしも略同等とする必要はない。また、送風ユニット53は、スリット出口85と略同等以上の送風口88を備えるものに限定されず、例えば、複数の送風ユニットを使用し、送風口がスリット出口の幅方向に向くように並列させても良い。送風口の形状も、所定の箇所に溶剤ガスを供給することができるものであれば良く、特に限定されるものではない。スリット状以外にも、例えば、円形や四角形等が挙げられる。
【0047】
スリット出口に向けて溶剤ガスを送る方法は、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4に示すように、流延ダイ51の近傍に、流延ビード96の幅方向に長く形成されたスリット状の送風口97とノズル98とを有する送風ユニット95を設置させ、送風口98から流延ダイ51の上部に溶剤ガス99を吹き付けて、流延ダイ51の表面を沿わせながら溶剤ガス99をスリット出口85に供給する。この場合、スリット出口85付近の溶剤ガス濃度を高く維持することができ、更には流延ダイ51の表面の結露を抑制する効果も得られる。なお、図4には、位置関係を分かりやすくするため支持体やローラ等を示しているが、作用などは前述と同じであるため、同符号を付すと共に、説明は省略する。
【0048】
本発明では、オンラインでドープの流出口であるスリット出口の全長域に渡って所定の溶剤ガスを送り、溶剤ガス濃度を高く維持するようにしたので、ドープの乾燥を防止し、異物の付着を抑制することができる。このため、異物の付着した部分を洗浄するために、ライン速度を低下させたり、ラインを一旦停止させたりすることがないので、製造時間のロスを招くことなく面状の良好なフィルムを得ることが可能である。また、スリットに異物が付着した場合にも、溶剤ガスを送ってスリット出口付近を高濃度に維持すると、異物は軟化・溶解し、取り除くことが可能である。
【0049】
複層構造の流延膜を形成する場合には、本実施形態のように複数のドープを合流させたものを共に支持体上に流出させる方法に限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、複数台の流延ダイ101〜103を支持体54上に設置して、ドープを支持体上に逐次に流出させる方法が挙げられる。支持体54の上方には、その走行方向の上流側から、支持体54に接触する外層を形成させるための外層用ドープが流出される流延ダイ101、この外層の上に配される基層用ドープを流出させる流延ダイ102、そして、空気に接触する外層用ドープを流出させる流延ダイ103が設置されている。流延ダイ101から外層用ドープが流出された後、支持体54の上には単層構造の外層105が形成される。ここに、下流に設置された流延ダイ102から基層用ドープが流出されて、外層の上に着層を配した2層構造の流延膜106が形成された後、最後に流延ダイ103から外層用ドープが流出されて3層構造の流延膜110が形成される。なお、流延膜を形成する際に必要な装置のうち、前述と同じものは同符号を付すと共に説明を省略する。
【0050】
以下、本発明に係る実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は、あくまで本発明に係る一例であり、本発明を限定するものではない。したがって、下記の実施例における材料、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、各工程等の詳細は実施例1で説明し、その他の例では、実施例1と異なる箇所のみ記載する。
【実施例1】
【0051】
実施例1では、図1に示すドープ製造ライン16を使用し、ポリマー11をトリアセチルセルロース(TAC)、溶剤12をジクロロメタン、添加剤13である可塑剤や紫外線吸収剤を混合することによりドープ15を調製した。次に、このドープ15を主成分とした中に剥離促進剤を添加して、これを外層用ドープとした。また、ドープ15のみを基層用ドープとして、各ドープをフィードブロック50で合流させた後に、流延ダイ51のスリット出口から流延ビードを形成しながら支持体54上に共に流出させてフィルム18を製造した。流延ダイ51のスリット出口付近の所定の位置に、送風ユニット53からスリット出口であり、流延ビードの幅方向全領域に向けて、ジクロロメタンの蒸気を含ませた溶剤ガスを送った。この溶剤ガス中にジクロロメタンの蒸気が含まれている割合は5体積%とした。
【0052】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近に異物が付着しているかどうかを目視により観察した。その結果、スリット出口付近には少量の異物が付着していたが、完成したフィルムの表面を目視により観察したところ、スジ故障は確認されず、面状が良好なフィルムを得ることができた。
【実施例2】
【0053】
実施例2では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を10体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例3】
【0054】
実施例3では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を30体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例4】
【0055】
実施例4では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を50体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例5】
【0056】
実施例5では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を60体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例6】
【0057】
実施例6では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を65体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例7】
【0058】
実施例7では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を70体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかったが、溶剤が凝縮しており、フィルムの表面にはスジ故障が確認された。
【実施例8】
【0059】
実施例8では、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を溶剤12とした。また、送風ユニット53からスリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を27体積%、メタノールの蒸気を3体積%の割合でそれぞれ含んでいて溶剤ガスの総計が30体積%であるものを使用した。ここで、溶剤ガスに着目した場合、ジクロロメタンガスが含まれる割合は90体積%である。なお、上記以外は全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。
【0060】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例9】
【0061】
実施例9では、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を溶剤12とした。また、送風ユニット53からスリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を24体積%、メタノールの蒸気を6体積%の割合でそれぞれ含んでいて溶剤ガスの総計が30体積%であるものを使用した。ここで、溶剤ガスに着目した場合、ジクロロメタンガスが含まれる割合は80体積%である。なお、上記以外は全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。
【0062】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着は確認されなかった。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認されず、非常に面状が良好であった。
【実施例10】
【0063】
実施例10では、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を溶剤12とした。また、送風ユニット53からスリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を21体積%、メタノールの蒸気を9体積%の割合でそれぞれ含んでいて溶剤ガスの総計が30体積%であるものを使用した。ここで、溶剤ガスに着目した場合、ジクロロメタンガスが含まれる割合は70体積%である。なお、上記以外は全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。
【0064】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に少量の異物の付着が確認された。また、完成したフィルムの表面にはスジが多量に確認された。
【実施例11】
【0065】
実施例11では、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を溶剤12とした。また、送風ユニット53からスリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を18体積%、メタノールの蒸気を12体積%の割合でそれぞれ含んでいて溶剤ガスの総計が30体積%であるものを使用した。ここで、溶剤ガスに着目した場合、ジクロロメタンガスが含まれる割合は60体積%である。なお、上記以外は全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。
【0066】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に少量の異物の付着が確認された。また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認され、非常に面状が良好であった。
スリットの近傍に異物の付着を確認すると共に、完成したフィルムの表面にはスジが多量に確認された。
【実施例12】
【0067】
実施例12では、ジクロロメタンとメタノールとの混合物を溶剤12として使用した。ここで、溶剤ガスは、ジクロロメタンとメタノールとを蒸気にしたものを30体積%含ませた。また、この蒸気の中にジクロロメタンガスが含まれる割合は78体積%とした。なお、上記以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。
【0068】
フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に少量の異物の付着が確認された。また、スリットの近傍に異物の付着を確認すると共に、完成したフィルムの表面にはスジが多量に確認された。
【0069】
〔比較例1〕
比較例1は、スリット出口付近に溶剤ガスを供給せずにドープを流出させた以外は、全て実施例1と同じにしてフィルムを製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視で観察したところ、多量の異物の付着を確認した。また、完成したフィルムの表面を目視により観察したところ、多量のスジ故障が確認された。
【0070】
〔比較例2〕
比較例2では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を68体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に少量の異物の付着が確認された。ただし、完成したフィルムの表面にスジ故障は確認されず、面状は良好であった。
【0071】
〔比較例3〕
比較例3では、スリット出口付近に送る溶剤ガスとして、ジクロロメタンの蒸気を3体積%の割合で含ませたものを使用した以外は、全て実施例1と同じにしてフィルム18を製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視により観察したところ、スリット出口付近に異物の付着が確認され、また、完成したフィルムの表面にはスジ故障が確認された。
【0072】
〔比較例4〕
比較例4は、スリット出口付近に溶剤ガスを供給せずにドープを流出させた以外は、全て実施例7と同じにしてフィルムを製造した。フィルムの製造開始から1000時間が経過した後、流延ダイ51のスリット出口付近を目視で観察したところ、多量の異物の付着を確認した。また、完成したフィルムの表面を目視により観察したところ、多量のスジ故障が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明に係る溶液製膜設備の一例の概略図である。
【図2】本発明に係る流延ダイ付近の断面を示す概略図である。
【図3】本実施形態における送風ユニットと流延ダイとの近傍を上面から示した概略図である。
【図4】本発明に係る溶剤ガスの供給方法の一例の概略図である。
【図5】本発明に係る共流延のうち、逐次にドープを流出する場合の流延ダイ付近の概略図である。
【符号の説明】
【0074】
10 溶液製膜設備
16 ドープ製造ライン
19 フィルム製造ライン
51 流延ダイ
53 送風ユニット
54 支持体
61 流延膜
85 スリット出口
88 送風口
89 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する支持体上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを流延ダイのスリット出口から流出させて前記支持体との間に流延ビードを形成し、
前記流延ビードにより前記支持体上に形成した流延膜を前記支持体から剥ぎ取って前記溶剤を含んだ湿潤フィルムとした後、乾燥させてフィルムとする溶液製膜方法において、
前記スリット出口であり、かつ前記流延ビードの幅方向全領域に向けて前記溶剤の蒸気を含む溶剤ガスを送り、前記スリット出口付近で前記溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持することを特徴とする溶液製膜方法。
【請求項2】
前記溶剤ガスは、前記支持体の走行方向下流側から前記スリットに向かって吹き付けられることを特徴とする請求項1に記載の溶液製膜方法。
【請求項3】
前記溶剤ガス中に含まれる前記蒸気の割合は、5体積%以上65体積%以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶液製膜方法。
【請求項4】
前記溶剤は、ジクロロメタンであることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載の溶液製膜方法。
【請求項5】
前記溶剤は、ジクロロメタンを最も多く含み、前記ポリマーを溶解又は分散させる化合物と混合した混合物であり、
前記蒸気中に含まれるジクロロメタンガスの割合が80体積%以上であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載の溶液製膜方法。
【請求項6】
前記流延ダイの上部に前記溶剤ガスを吹き付けて、前記流延ダイの表面を沿わせながら前記溶剤ガスを前記スリット出口に送ることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つに記載の溶液製膜方法。
【請求項7】
複数の前記ドープを前記支持体に向かって共に、或いは逐次に流出させることにより、基層と、前記基層の表面に接するように配された外層とを有する複層構造の前記流延膜を形成することを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つに記載の溶液製膜方法。
【請求項8】
走行する支持体上に、ポリマーと溶剤とを含むドープを流延ダイのスリット出口から流出させて前記支持体との間に流延ビードを形成し、
前記流延ビードにより前記支持体上に形成した流延膜を前記支持体から剥ぎ取り前記溶剤を含んだ湿潤フィルムとした後、この湿潤フィルムを乾燥させてフィルムとする溶液製膜設備において、
前記スリット出口であり、かつ前記流延ビードの幅方向全領域に向けて前記溶剤の蒸気を含む溶剤ガスを送り、前記スリット出口付近で前記溶剤ガスを液化させない範囲で高濃度に維持するために、
前記流延ダイに対して前記支持体の走行方向の下流側であり、かつ支持体の上方に備えられた送風ユニットを有することを特徴とする溶液製膜設備。
【請求項9】
前記送風ユニットの下部には、前記流延ビードの幅方向に長く形成されたスリット状の送風口を有するノズルが備えられていることを特徴とする請求項8に記載の溶液製膜設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−230105(P2008−230105A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74366(P2007−74366)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】