説明

溶融成形に適したポリヌクレオチド組成物およびそれからなる成形体の製造方法

【課題】二重螺旋構造を形成するポリヌクレオチド成形体を製造する際に、大規模で複雑な溶媒回収工程や大型製造設備などを必要とせず、シート状成形体などに加工するのに有効な方法として、無溶媒かつ高い生産性とすることができる加熱溶融成形法に適したポリヌクレオチド組成物を提供する。
【解決手段】鎖状構造を有し少なくとも一部が互いに二重螺旋構造を形成しているデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)であるポリヌクレオチド(I)5〜99.9質量%と、プロトン性可塑剤(II−1)等から選択される可塑剤(II)95〜0.1質量%とからなる、加熱溶融成形に適した組成物、および該組成物を用いた成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヌクレオチドを含む加熱溶融成形に適した組成物、および該組成物からなる成形体の製造方法および該製造方法により得られる成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デオキシリボ核酸(以下DNAという。)、リボ核酸(以下RNAという。)に代表される鎖状構造を有するポリヌクレオチドは、塩基性部分構造、糖部分構造、リン酸部分構造とからなるヌクレオチド単位の繰り返し構造になっている。一次構造が特徴的なだけでなく、複数のポリヌクレオチドの前記鎖状構造の少なくとも一部が互いの塩基性部分構造の水素結合からなる塩基対を複数形成することで二重螺旋構造を形成しやすいという特異な性質がある。
【0003】
特にDNAやRNAなどの天然ポリヌクレオチドは、自然界に豊富に存在することもあり、新たな機能性高分子素材としての注目を集めている。例えば、DNAに関して挙げると、DNA中に有機色素等の芳香族化合物を導入し、機能材料として利用したり、DNAのリン酸基を活かして電解質として利用したり、DNAの二重螺旋構造に沿って流れる電気を利用して半導体として利用したり、DNAに金属を担持させて配列させ金属ナノワイアーとして利用したりすることが試みられている。
【0004】
このように、ポリヌクレオチドを成形体に加工することで、従来にない、例えば、生分解性電解質シート、生分解性導電体、機能性ナノファイバー、非線形光学材料、フォトクロミック材料、偏光材料、難燃材料、光学異性体分離膜、抗菌材料、紫外線吸収材料、などの機能性成形体として利用したりすることが試みられている。
【0005】
ポリヌクレオチドの持つ、これら機能性高分子素材としての特性を幅広い分野で利用していくために、ポリヌクレオチドの成形体の工業的な製造方法が望まれる。特にポリヌクレオチドの機能性高分子素材としての特性を生かす上では、成形体が二重螺旋構造を保持していることが好ましい。現在、ポリヌクレオチドの成形方法としてはラボスケールでの製膜法が知られているのみで、これら製膜法の多くは特許文献1に示されるようなキャスト法であり、他には特許文献2に示されるような熱プレスが知られているものの、ポリヌクレオチドの二重螺旋構造を成形時の加熱条件下で保持するための成形処方については全く開示されていない。
【0006】
これらの製膜法で得られる成形品は、フィルム形状のものに限られる。更に大型や厚物の製品を作るのは設備的な面からも生産性の面からも非常に制約が大きく、現在のところ全く例がない。特にキャスト法の工業化においては、大規模で複雑な溶媒回収工程が必要であり、課題が大きい。
【0007】
すなわち、ポリヌクレオチドの特異な性質を種々の用途に展開できる、工業的に生産性よく製造された、思い通りの形状、サイズのポリヌクレオチド成形体を得ることは、現状では実現できていない。
【0008】
【特許文献1】特開平11−119270号公報
【特許文献2】特開2004−082663公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、二重螺旋構造を形成するポリヌクレオチドを含む成形体を製造する際に、大規模で複雑な溶媒回収工程や、大型製造設備などを必要としない方法を提供することにある。すなわち、ポリヌクレオチドをシートのみならず、繊維、容器、などの成形体に加工する有効な方法として、無溶媒で、しかも高い生産性で、ポリヌクレオチド成形体を製造できる加熱溶融成形法を提案し、加熱溶融成形に適した組成物、および該組成物を用いた成形体の製造方法を提供することで前述の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
すなわち本発明は、
鎖状構造を有するポリヌクレオチド(I)と、
四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、両性界面活性剤、高分子カチオン化合物、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、アルキレングリコール系可塑剤、エポキシ化合物系可塑剤、ポリマー可塑剤、からなる群より少なくとも1つ選択される可塑剤(II)と、
からなる組成物であって、複数の前記ポリヌクレオチド(I)の前記鎖状構造の少なくとも一部が互いに二重螺旋構造を形成しており、ポリヌクレオチド(I)と可塑剤(II)との合計に対し前記可塑剤(II)を0.1質量%以上95質量%以下含むことを特徴とする組成物である。
【0011】
また本発明は、上記の組成物を加熱溶融して成形する工程を有する成形体の製造方法である。
【0012】
さらに本発明はの上記の製造方法により得られる成形体である。
【0013】
また本発明は、シート状である上記の成形体からなる層と他の材料からなる層とを有する積層体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は可塑剤(II)の効果によって、加熱溶融成形に好適であり、所望の成形体を与えることが出来る。
【0015】
また本発明はこれら成形体の製造に有利な種々の加熱溶融成形方法も与えるので、本発明の成形品を工業的に生産性よく生産できる。原料に可塑剤(II)を含有させることで、成形性が高まる。本発明の成形体は、ポリヌクレオチド(I)に可塑剤(II)を加えた本発明の組成物を加熱溶融成形することで得られる。本発明の成形体はそれを構成するポリヌクレオチド(I)に二重螺旋構造を有しているのでポリヌクレオチド本来の種々の特異な機能を残している。また形状や大きさを広い範囲で自由に選択できることから様々な用途に好適である。また可塑剤(II)を含有することで、エンボス加工などの熱的後加工にも好適である。またポリヌクレオチド(I)の有するリン酸基の少なくとも90%以上が有機カチオン錯体を形成することで、疎水性を高めることができる。
本発明のシート状成形体はポリヌクレオチド鎖の配向を制御して、光学的、電気的に優れた性能を発現させたり、配向表面に凹凸構造を有したり、表面および/または内部に微粒子を分散したりすることで意匠性や光学特性など更に優れた機能を与えた機能性シートとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における、ポリヌクレオチド(I)は、塩基、糖、リン酸基から構成され、ポリリン酸を主鎖とするポリアニオンであり、且つ自身と相補的な配列を有する分子と二重螺旋構造を形成している化合物であれば特に限定されないが、生分解性、生体適合性などの観点からDNA、RNAが特に好ましく、特に大量に原料を確保できると言う観点から、例えばサケ、マス、ニシン、サバ、タラ等の魚類の白子(精子)、牛の乳腺等から抽出されるものを利用することが好ましい。
【0017】
本発明の組成物に含有させる可塑剤(II)は、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、両性界面活性剤または高分子カチオン化合物からなるプロトン性可塑剤(II−1);並びにリン酸エステル系可塑剤;カルボン酸エステル系可塑剤;アルキレングリコール系可塑剤;エポキシ化合物系可塑剤およびポリマー可塑剤からなる群より少なくとも1つ選択される。
【0018】
本発明の組成物における可塑剤(II)の含有量は、ポリヌクレオチド(I)と可塑剤(II)との合計に対し0.1質量%以上95質量%以下である。可塑剤(II)の一部または全部、中でも好ましくはプロトン性可塑剤(II−1)の一部または全部は、ポリヌクレオチド(I)と錯体(有機カチオン錯体)を形成していてもよい。可塑剤(II)は、0.1質量%未満の含有量では該組成物を加熱溶融させた際の可塑化効果が小さくなり、高粘度溶融体となってしまい、該溶融体を熱成形する際に過度のせん断力や過熱をせざるを得ず、それによって得られる成形体は、成形体中のポリヌクレオチド(I)が二重螺旋構造を形成したままであることが困難になる。ポリヌクレオチド(I)が可塑剤(II)と錯体を形成していない場合、可塑剤(II)の含有量は1質量%以上であるのが好ましい。また、95質量%以上の可塑剤含有量であれば、可塑剤過多となりポリヌクレオチド(I)の機能性が十分に発揮されない。尚、本発明の組成物中の可塑剤含有量は、組成物中のポリヌクレオチド(I)の錯体化率に影響を及ぼさない有機溶媒に該組成物を溶解させ、核磁気共鳴スペクトル測定、赤外分光スペクトル測定、ゲル浸透クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、滴定、熱質量測定、示差走査熱量測定、などの手法を用いて確認できる。
【0019】
本発明におけるプロトン性可塑剤(II−1)は、ポリヌクレオチド(I)のリン酸基とイオン的に相互作用し、ポリヌクレオチド鎖に結合することによって可塑化効果を発揮することができることに加えて、ポリヌクレオチド(I)が形成する二重螺旋構造の安定性を高める効果も併せ持つため、該プロトン性可塑剤(II−1)の少なくとも一種が該組成物中に含まれている方が好適である。また、可塑剤(II)が該プロトン性可塑剤(II−1)である場合の好ましい添加量は、二重螺旋構造を形成するポリアニオンのリン原子に対して0.1モル当量以上10モル当量以下であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜3モル当量であることが望ましい。これは、本発明におけるプロトン性物質が可塑剤としての機能を持つことに由来し、リン酸基に対して0.1モル当量以下の添加量であれば可塑化効果が小さく、プロトン性物質添加の効果が小さくなることに加えて、成形時の二重螺旋構造の安定性も低下するためである。また、10モル当量以上の添加量であれば、該組成物は過剰に可塑化されたされた状態になり、成形安定性を失うことから好ましくない。さらに好ましくは、成形時の二重螺旋構造の安定性確保といった観点から、0.5モル当量以上の添加量が好ましく、熱成形時の熱安定性低下抑止といった観点から、3モル当量以下の添加量が好ましい。
【0020】
本発明においてプロトン性可塑剤(II−1)として用いることのできる四級アンモニウム塩は特に限定されないが、下記の様に分類される。
【0021】
ベンジルアンモニウム塩;ベンジル部位には、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、アミド基、アミノ基のうちから選択される官能基の少なくとも一つを有していてもよく、例えば、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0022】
脂肪族四級アンモニウム塩;炭素数が1〜30で形成される脂肪族であればよく、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、オレイルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ジラウリルジメチルアンモニウム塩、トリメチル(テトラオキサドコシル)アンモニウム塩、等が挙げられる。
【0023】
トリメチルフェニルアンモニウム塩;フェニル部位を形成するベンゼン環にはアルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、アミド基、アミノ基のうちから選択される官能基の少なくとも一つを有していてもよく、例えば、トリメチルフェニルアンモニウム塩、トリエチルフェニルアンモニウム塩、トリブチルフェニルアンモニウム塩、等が挙げられる。
【0024】
本発明においてプロトン性可塑剤(II−1)として用いることのできるピリジニウム塩は特に限定されないが、、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、カルボキシル基、ケトン基、アミド基、アミノ基のうちから選択される官能基の少なくとも一つを有していてもよく、好ましくは、アルキルピリジニウム塩がよい。特に、アルキル基が炭素数1〜30で構成されているものであればよく、例えばメチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、プロピルピリジニウム塩、イソプロプルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、ペンチルピリジニウム塩、ヘキシルピリジニウム塩、ヘプチルピリジニウム塩、オクチルピリジニウム塩、ノニルピリジニウム塩、デシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ラウリルピコリニウム塩等が挙げられる。
【0025】
本発明においてプロトン性可塑剤(II−1)として用いることのできるイミダゾリニウム塩は特に限定されないが、イミダゾリニウム型カチオンの例として、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、1,3,4−トリメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリニウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリニウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルイミダゾリニウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリニウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリニウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリニウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。
【0026】
本名発明においてプロトン性可塑剤(II−1)として用いることのできる両性界面活性剤は特に限定されないが、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩型、イミダゾリニウムベタイン型、アルキルアミンオキシド型、等に分類されるものの中から選択される。
【0027】
本発明においてプロトン性可塑剤(II−1)として用いることのできる高分子カチオン化合物は特に限定されないが、高分子鎖末端、もしくは鎖中に少なくとも一つのカチオン性部位を有していればよく、例えば、ポリジメチルジアリルアンモニウム塩、ジメチルジアリルアンモニウム塩とアクリルアミドの共重合体、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム塩等のポリオキシアルキレンアンモニウム塩、等が挙げられる。
【0028】
本発明において可塑剤(II)として用いることのできるリン酸エステルは特に限定されないが、例えば、トリアセチルホスフェート、トリブチルホスフェート等のリン酸アルキルエステル、トリシクロベンチルホスフェート、シクロヘキシルホスフェート等のリン酸シクロアルキルエステル、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリキシリルオスフェート、トリスオルト−ビフェニルホスフェート等のリン酸アリールエステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0029】
またエチレンビス(ジメチルホスフェート)、ブチレンビス(ジエチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアルキルホスフェート)、エチレンビス(ジフェニルホスフェート)、プロピレンビス(ジナフチルホスフェート)等のアルキレンビス(ジアリールホスフェート)、フェニレンビス(ジブチルホスフェート)、ビフェニレンビス(ジオクチルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアルキルホスフェート)、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、ナフチレンビス(ジトルイルホスフェート)等のアリーレンビス(ジアリールホスフェート)等のリン酸エステルが挙げられる。これらの置換基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキル基、シクロアルキル基、アリール基のミックスでもよく、また置換基同志が共有結合で結合していてもよい。
【0030】
さらにリン酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。上記化合物の中では、リン酸アリールエステル、アリーレンビス(ジアリールホスフェート)が好ましく、具体的にはトリフェニルホスフェート、フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)が好ましい。
【0031】
本発明において可塑剤(II)として用いることのできるカルボン酸エステルは特に限定されないが、下記の様に分類される。
【0032】
ジカルボン酸エステル;ジカルボン酸エステルの例として、ジドデシルマロネート(C)、ジオクチルアジペート(C)、ジブチルセバケート(C)等のアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロペンチルサクシネート、ジシクロヘキシルアジーペート等のアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルサクシネート、ジ4−メチルフェニルグルタレート等のアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジヘキシル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート、ジデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロヘキシル−1,2−シクロブタンジカルボキシレート、ジシクロプロピル−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニル−1,1−シクロプロピルジカルボキシレート、ジ2−ナフチル−1,4−シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキルジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、ジシクロプロピルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のアリールジカルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、ジフェニルフタレート、ジ4−メチルフェニルフタレート等のアリールジカルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0033】
多価カルボン酸エステル;多価カルボン酸エステルの例として、トリドデシルトリカルバレート、トリブチル−meso−ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロヘキシルトリカルバレート、トリシクロプロピル−2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボキシレート、テトラ3−メチルフェニルテトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボキシレート等のアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、テトラヘキシル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、テトラブチル−1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、テトラシクロプロピル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボキシレート、トリシクロヘキシル−1,3、5−シクロヘキシルトリカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤、トリフェニル−1,3、5−シクロヘキシルトリカルボキシレート、ヘキサ4−メチルフェニル−1,2,3,4,5,6−シクロヘキシルヘキサカルボキシレート等のシクロアルキル多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤、トリドデシルベンゼン−1,2,4−トリカルボキシレート、テトラオクチルベンゼン−1,2,4,5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アルキルエステル系の可塑剤、トリシクロペンチルベンゼン−1,3、5−トリカルボキシレート、テトラシクロヘキシルベンゼン−1,2,3、5−テトラカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸シクロアルキルエステル系の可塑剤トリフェニルベンゼン−1,3、5−テトラカルトキシレート、ヘキサ4−メチルフェニルベンゼン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボキシレート等のアリール多価カルボン酸アリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルコキシ基、シクロアルコキシ基は、同一でもあっても異なっていてもよく、また一置換でもよく、これらの置換基はさらに置換されていてもよい。アルキル基、シクロアルキル基はミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにフタル酸の芳香環も置換されていてよく、ダイマー、トリマー、テトラマー等の多量体でもよい。またフタル酸エステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にポリマーへペンダントされていてもよく、酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0034】
エチレングリコールエステル系;エチレングリコールエステル系可塑剤の例として、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジブチレート等のエチレングリコールアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジシクロプロピルカルボキシレート、エチレングリコールジシクロヘキルカルボキシレート等のエチレングリコールシクロアルキルエステル系の可塑剤、エチレングリコールジベンゾエート、エチレングリコールジ4−メチルベンゾエート等のエチレングリコールアリールエステル系の可塑剤が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにエチレングリコール部も置換されていてもよく、エチレングリコールエステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0035】
グリセリンエステル系;グリセリンエステル系可塑剤の例として、トリアセチン、トリブチリン、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンオレートプロピオネート等のグリセリンアルキルエステル、グリセリントリシクロプロピルカルボキシレート、グリセリントリシクロヘキシルカルボキシレート等のグリセリンシクロアルキルエステル、グリセリントリベンゾエート、グリセリン4−メチルベンゾエート等のグリセリンアリールエステル、ジグリセリンテトラアセチレート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンテトララウレート、等のジグリセリンアルキルエステル、ジグリセリンテトラシクロブチルカルボキシレート、ジグリセリンテトラシクロペンチルカルボキシレート等のジグリセリンシクロアルキルエステル、ジグリセリンテトラベンゾエート、ジグリセリン3−メチルベンゾエート等のジグリセリンアリールエステル等が挙げられる。これらアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基は、同一でもあっても異なっていてもよく、さらに置換されていてもよい。またアルキレート基、シクロアルキルカルボキシレート基、アリレート基のミックスでもよく、またこれら置換基同志が共有結合で結合していてもよい。さらにグリセリン、ジグリセリン部も置換されていてもよく、グリセリンエステル、ジグリセリンエステルの部分構造が、ポリマーの一部、あるいは規則的にペンダントされていてもよく、また酸化防止剤、酸掃去剤、紫外線吸収剤等の添加剤の分子構造の一部に導入されていてもよい。
【0036】
多価アルコールエステル系;多価アルコールエステル系可塑剤の例として、ソルビトールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加した誘導体、ペンタエリスリトール等の多価アルコールおよびその誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明において可塑剤(II)として用いることのできるアルキレングリコール系可塑剤は特に限定されないが、炭素数1〜20の脂肪族アルコール類が好ましく、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族二価アルコールなどを挙げることができ、その他にグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の脂肪族多価アルコール等も挙げることもできる。これらは1種のみ用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0038】
本発明において可塑剤(II)として用いることのできるエポキシ化合物系可塑剤は特に限定されないが、例えばエポキシ化大豆油、炭素数が1〜30のアルキル鎖が結合したアルキルエポキシステアレート、などが挙げられる。
【0039】
本発明において可塑剤(II)として用いることのできるポリマー可塑剤は特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、などのポリオレフィン、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニル、オレフィン−ビニルアルコール共重合体、オレフィン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン、スチレン−ブチレン共重合体およびその水素添加体、スチレン−イソプレン共重合体およびその水素添加体、等のスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレンビニレン、などのπ電子共役型ポリマー、ポリフェノール、液晶性ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、オレフィンマレイミド共重合体、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ブタジエン系ゴム、シリコーンゴム、等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物においては、本発明で必須とする上記の可塑剤(II)に加えて、さらに電子受容機能を有する機能性可塑剤を含有させてもよい。このような電子受容機能を有する機能性可塑剤は、以下に示す電子受容体と化学的、または物理的に結合しているものである。例えば、電子受容体としては、米国特許出願公開2004/0004433号明細書に記載された化合物、テトラシアノキノジメタンおよびその誘導体、チオピラニリジン化合物(チオピラニリジンおよびその誘導体)、ポリニトロフルオレノン化合物(ポリニトロフルオレノンおよびその誘導体)、テトラシアノエチレン化合物(テトラシアノエチレン(TCNE)およびその誘導体)、クロラニル化合物(クロラニルおよびその誘導体)、ならびに電子受容体として通常用いられる他の化合物が挙げられる。電子受容体の具体例として、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル−6−フェニル−4H−チオピラン−4−イリデン)−プロパンジニトリル−1,1−ジオキシイド(PTYPD)、および2,4,7−トリニトロフルオレノンが挙げられる。有機電子受容体の他の例として、カルボキシルフルオレノンマロニトリル(CFM)化合物(CFMおよびその誘導体)、N,N’−ビス(ジアルキル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド化合物(N,N’−ビス(ジアルキル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドおよびその誘導体)、N,N’−ビス(ジアリール)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド化合物(N,N’−ビス(ジアリール)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドおよびその誘導体)、カルボキシベンジルナフタキノン化合物(カルボキシベンジルナフタキノンおよびその誘導体)、ジフェノキノン化合物(ジフェノキノンおよびその誘導体)等、米国特許出願公開2004/0009418に記載された物質が挙げられる。電子受容体の他の例として、フラーレン化合物(C60等)(フラーレンおよびその誘導体)が挙げられる。これら、ポリヌクレオチド鎖に結合することができるプロトン性可塑剤が電子受容性の機能を有することによって、ポリヌクレオチド鎖、またはポリヌクレオチド鎖が形成する二重螺旋構造が導電性、または半導体性を有する場合、ポリヌクレオチド鎖、またはポリヌクレオチド鎖が形成する二重螺旋構造上に光誘起により発生した励起子から電子を分離受容することができるため、ドナー−アクセプタ型の光電変換素子、例えば太陽電池、光センサなどの用途に好適である。
【0041】
本発明の組成物においては、電子受容体もしくは電子供与体となる化合物を含有させてもよい。このような電子受容体もしくは電子供与体は下記の様に分類される。
【0042】
電子受容体;電子受容体としては、前述のように、米国特許出願公開2004/0004433号明細書に記載された化合物、テトラシアノキノジメタンおよびその誘導体、チオピラニリジン化合物(チオピラニリジンおよびその誘導体)、ポリニトロフルオレノン化合物(ポリニトロフルオレノンおよびその誘導体)、テトラシアノエチレン化合物(テトラシアノエチレン(TCNE)およびその誘導体)、クロラニル化合物(クロラニルおよびその誘導体)、ならびに電子受容体として通常用いられる他の化合物が挙げられる。電子受容体の具体例として、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(F4TCNQ)、テトラシアノエチレン、クロラニル、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル−6−フェニル−4H−チオピラン−4−イリデン)−プロパンジニトリル−1,1−ジオキシイド(PTYPD)、および2,4,7−トリニトロフルオレノンが挙げられる。有機電子受容体の他の例として、カルボキシルフルオレノンマロニトリル(CFM)化合物(CFMおよびその誘導体)、N,N’−ビス(ジアルキル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド化合物(N,N’−ビス(ジアルキル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドおよびその誘導体)、N,N’−ビス(ジアリール)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミド化合物(N,N’−ビス(ジアリール)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボキシリックジイミドおよびその誘導体)、カルボキシベンジルナフタキノン化合物(カルボキシベンジルナフタキノンおよびその誘導体)、ジフェノキノン化合物(ジフェノキノンおよびその誘導体)等、米国特許出願公開2004/0009418に記載された物質が挙げられる。電子受容体の他の例として、フラーレン化合物(C60等)(フラーレンおよびその誘導体)が挙げられる。
【0043】
電子供与体;電子供与体としては、導電性材料が挙げられる。具体的には例えば、p型無機半導体(GaP、NiO、CoO、FeO、Bi23、MoO2、Cr23、一価の銅を含む化合物等)や導電性高分子化合物が好ましい。導電性高分子化合物としては、以下の具体例に限られないが、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリ(チオフェンビニレン)、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリ(p−フェニレン)、ポリアニリンの基本骨格を持つものが好ましい。本発明において組成物が電子受容体を含有することによって、ポリヌクレオチド鎖、またはポリヌクレオチド鎖が形成する二重螺旋構造が導電性、または半導体性を有する場合、光誘起により発生した励起子から電子を分離受容することができるため、ドナー−アクセプタ型の光電変換素子、例えば太陽電池、光センサなどの用途に好適である。また、ポリヌクレオチド鎖、またはポリヌクレオチド鎖が形成する二重螺旋構造が前記光電変換素子として作動せしめるに十分な導電性、または半導体性を有しない場合においても、電子供与体を含有することによって、ポリヌクレオチド鎖、またはポリヌクレオチド鎖が形成する二重螺旋構造の不十分な導電性、または半導体性を補うことができるため、好適である。電子受容体は、プロトン性可塑剤(II−1)が電子受容性を有する機能性可塑剤として導入することも出来る。機能性可塑剤の形で電子受容体を導入すると、可塑剤と電子受容体が別である場合に比べて構成が単純になり、これら組成物を熱溶融成形によって成形体とした場合、成形条件が選択しやすいだけでなく、成形体の電子受容体からの溶出による機能低下を抑制しやすい。一方、電子受容体もしくは電子供与体を可塑剤とは別に加えると、光電変換効率を高める上では有利である。
【0044】
本発明の組成物においては機能性色素を含有させてもよい。機能性色素は特に限定されないが、例えば、単環芳香族化合物、縮合多環芳香族化合物、複素環化合物および縮合複素環化合物などから構成され、各種官能基が結合していてもよい化合物からなる色素が挙げられる。また、その機能から分類すると、非線形光学物質、フォトクロミック物質、液晶物質、光制御物質、導電性物質、抗菌物質、紫外線吸収物質、赤外線吸収物質、機能性色素材料などが挙げられる。具体的には例えば、ニトロベンゼン、4−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、2−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、2−ブロモ−4−ニトロアニリン、2−メチル−4−ニトロアニリン、N,N−ジメチル−4−ニトロアニリン、4−シアノアニリン、4−シアノ−N,N−ジメチルアニリン、4−アミノアセトフェノン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、トルエン、4−ニトロトルエン、4−シアノトルエン、4−ニトロアニソール、4−シアノアニソール、2−フルオロニトロベンゼン、3−フルオロニトロベンゼン、4−フルオロニトロアニリン、4−ニトロ−トランス−スチルベン、4−アミノ−トランス−スチルベン、4−ジメチルアミノ−トランス−スチルベン、4−クロロ−トランス−スチルベン、4−クロロ−4’−ニトロ−トランス−スチルベン、4−クロロ−4’−ジメチルアミノ−トランス−スチルベン、4−シアノ−4’−ジメチルアミノ−トランス−スチルベン、4−シアノ−4’−メトキシ−トランス−スチルベン、4−メチル−4’−ニトロ−トランス−スチルベン、4−アミノ−4’−ニトロ−トランス−スチルベン、4−ジメチルアミノ−4’−ニトロ−トランス−スチルベン、4−[(1−メチル−4−(1H)−ピリジニリデン)エチリデン]2,5−シアノヘキサジエン−1−オン、4−ジメチルアミノ−β−ニトロスチレン、メチル−N−(2,4−ジニトロフェニル)アラニネート、トランス−4−アザスチルベン、1−(4−シアノフェニル)−4−(4−ジメチルアミノフェニル)−ブタ−1、3−ジエン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−4−ニトロブタ−1,3−ジエン、2−(4−チアノメチレンシクロヘキサ−2,5−ジエニリデン)−イミダゾリデン、3−エチル−2−[2−(4−オキソ−2,5−シクロヘキサジエニリデン)エチリデン]−2,3−ジヒドロベンゾチアゾール、2−[6−(4−カルボキシフェニリアミノ)ヘキサ−2,4−ジエニリデン]−3−エチル−2,3−ジヒドロキシベンゾチアゾール、アゾベンゼン、スピロピラン、フルギド、ジアリールエテン、フェノキシナフタセンキノン、チオインジゴ、マラキトグリーン、スピロオキサジン系化合物、シクロファン系化合物、フェニレンビニレン系化合物、スチルベンゼン系化合物、ニトロベンゼン系化合物、スチレン系化合物、ピリドン系化合物、アゾベンゼン系化合物、フタロシアニン系化合物、フェキシナフタセン系化合物、シー・アイ・ダイレクト・イエロー12、シー・アイ・ダイレクト・イエロー28、シー・アイ・ダイレクト・イエロー44、シー・アイ・ダイレクト・イエロー142、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ6、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ26、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ39、シー・アイ・ダイレクト・オレンジ107、シー・アイ・ダイレクト・レッド2、シー・アイ・ダイレクト・レッド31、シー・アイ・ダイレクト・レッド79、シー・アイ・ダイレクト・レッド81、シー・アイ・ダイレクト・レッド247、シー・アイ・ダイレクト・グリーン59、シー・アイ・ダイレクト・グリーン85、2,6−ジtert−ブチルフェノール(以下、tert−ブチルをt−ブチルと略記する。)、2,6−ジt−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジt−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジt−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジt−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジt−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジt−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジt−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジt−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジt−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジt−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、1−ナフチルアミン、フェニル−1−ナフチルアミン、p−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ノニルフェニル−1−ナフチルアミン、p−ドデシルフェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N’−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジイソブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−β−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−シクロヘキシル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジオクチル−p−フェニレンジアミン、フェニルヘキシル−p−フェニレンジアミン、フェニルオクチル−p−フェニレンジアミン、ジピリジルアミン、ジフェニルアミン、p,p’−ジn−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジt−ブチルジフェニルアミン、p,p’−ジt−ペンチルジフェニルアミン、p,p’−ジノニルジフェニルアミン、p,p’−ジデシルジフェニルアミン、p,p’−ジドデシルジフェニルアミン、p,p’−ジスチリルジフェニルアミン、p,p’−ジメトキシジフェニルアミン、4,4’−ビス(4−α,α−ジメチルベンゾイル)ジフェニルアミン、p−イソプロポキシジフェニルアミン、フルオラン系色素、シアニン色素ホウ酸塩、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、ピリドン系モノアゾ色素、キノフタロン系色素、トリシアノスチリル系色素、アントラキノン系モノアゾ色素、複素環系モノアゾ色素、その他アゾ系色素、インドアニリン系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、インドナフトール系金属錯体、ポルフィン、キニザリン、8−オキシキノリンアルミニウム錯体、キナクリドン系色素、ジシアノメチレン系色素、対称型ビスアゾメチン系色素、キノン系色素、臭化エチジウムなどの含窒素複素芳香族系色素、クリスタルバイオレットなどのトリフェニルメタン染料等が挙げられる。これら機能性色素を該組成物中に含有させることによって、該組成物からなる、非線形光学材料、フォトクロミック材料、液晶材料、光制御材料、導電性材料、抗菌材料、紫外線吸収材料、赤外線吸収材料、機能性色素材料などの用途に好適である。
【0045】
本発明において、溶融成形法の適用により、本発明の組成物をシート、およびフィルム状などの成形体とする為には、該組成物の捻り型動的粘弾性測定において得られる10−1のせん断下における溶融粘度が50〜10000Pa・sであることが好ましく、より好ましくは100〜5000Pa・sである。これは、粘度が低すぎると押出機からの吐出が不安定になるといった問題が懸念される為であり、また粘度が高すぎると押出機に過負荷がかかったり、ベントアップしやすくなったり、吐出が不安定になったりするといった問題が懸念される為である。
【0046】
本発明において、溶融成形法により成形体を形成するに適した本発明の組成物は、熱成形前の該組成物の含水率が50質量%以下である事が好ましく、より好ましくは該組成物の吸水率が5〜20質量%であることが望まれる。これは、水分含有による可塑化効果を期待するものであるが、水分含有量が過少であれば、期待される可塑化効果が小さく、水分含有量が過多であれば、加熱溶融時に二重螺旋構造が解ける恐れがあるためである。
【0047】
本発明における溶融成形法により成形体を形成するに適したポリヌクレオチド(I)は、10〜100000個の塩基性部分構造から構成されているものが好ましく、より好ましくは100〜50000個の塩基性部分構造から構成されているものが望ましい。これは、10個以下の塩基性部分構造から構成されているものであれば、成形困難であるし、成形体にした時の耐久性の面も懸念されるためである。また、100000個以上の塩基性部分構造から構成されているものであれば、成形時の溶融粘度調整が困難になるためである。さらに好ましくは、100〜50000個の塩基性部分構造から構成されているものであると成形時の溶融粘度調整、配向制御が容易であるという観点から、優れた成形性が期待される。
【0048】
本発明における製造方法は、前記組成物を加熱溶融して成形する工程を有するものである。加熱溶融成形工程が溶融押出成形工程であれば、前記組成物を該溶融押出成形工程で任意の押出成形体に成形することができる。該製造方法によって、シート状等の押出成形体の大きさや厚さを広い範囲で自由に選択できるようになり、またポリヌクレオチド鎖の配向を制御した押出成形体を得ることも可能になる。更には、シート状成形体を工業的に生産性よく生産することも可能となる。
【0049】
本発明の成形体中に含まれているポリヌクレオチド(I)の二重螺旋構造は、互いに相補的なポリヌクレオチド鎖と塩基同士の結合による塩基対によって構成されており、前記塩基のうち10%以上が前記塩基対を形成していることが好ましい。これは、前記塩基対の形成率が10%以下であると、二重螺旋構造に起因する芳香族のインターカレーション、導電性の発現、配向制御など、種々の機能性発現に関する期待効果が薄いためである。
【0050】
本発明の組成物からなる成形体中の可塑剤含有量は、ポリヌクレオチド(I)と可塑剤(II)との合計に対し0.1質量%以上95質量%以下である。これは、0.1質量%以下の可塑剤含有量であれば、該組成物を加熱溶融させた際の可塑化効果が小さくなり、高粘度溶融体となってしまい、該溶融体を熱成形するには、過度のせん断力や過熱をせざるを得ず、それによって得られる成形体は、成形体中のポリヌクレオチド(I)が二重螺旋構造を形成したままであることが困難になるためである。また、95質量%以上の可塑剤含有量であれば、可塑剤過多となりポリヌクレオチド(I)の機能性が十分に発揮されないためである。
【0051】
本発明におけるシート状成形体は、該成形体の厚みが5μm〜1cm、より好ましくは20μm〜2mmであることが望ましい。これは、5μm以下の厚みであれば、シート状成形体としての強度が下がるため好ましくないし、また、成形体の取り扱いにも注意を要するためである。また、1cm以上の厚みであれば、シート状成形体として、割れ、欠けの品質上の問題が発生し易くなり、工業的な歩留まり向上が期待しにくくなるためである。工業的な生産を想定した場合、20μm以上の厚みを有することが好ましい。また、該成形体の厚みが2mm以上であれば、ロールに巻いて保管する際に、割れ、欠けなどの成形体の破損が懸念されるため、好ましくない。
【0052】
本発明のシート状成形体は、該成形体の幅が1cm以上、より好ましくは、2cm以上2m以下であることが望ましい。これは、該成形体の幅が1cm以下であれば、シート状成形体としての強度が下がるため好ましくないし、また、狭い幅のために用途が限定されてしまい、広範囲において本発明の効果が発揮されないため好ましくない。また、2m以上の幅をもったシート状成形体は、品質的に不安定であり、工業的な利用価値が期待できないためである。また、機械的、設備的問題から、これ以上の幅の該成形体を連続的に安定生産することは困難であるため、好ましくない。よって、工業的用途によって様々ではあるが、できるだけ幅広の、好ましくは2cm以上、2m以下の幅を持ったシート状成形体を連続的に安定して生産することが望ましい。
【0053】
本発明における製造方法は、加熱溶融により得られる成形体の重量平均分子量と数平均分子量の比である分子量分布が、前記組成物の分子量分布の10倍以下となるように、溶融温度や加熱滞留時間などの製造条件を適宜選択するのが好ましい。これは、該製造法によって得られる成形体の分子量分布が該組成物のそれに比して10倍以上であれば、該組成物が元来有する化学的、物理的な性質を大きく損なってしまうからである。また、分子量分布増加に伴い発生した低分子量体が異物の原因となり、成形体の品位を低下させたり、該低分子量体が成形体保管時に表面からブリードアウトしたりする恐れもあるため好ましくない。
【0054】
本発明における製造方法では、得られる成形体がシート状積層体であることができる。これは、前記溶融押出成形工程で本発明の組成物を含む少なくとも2種類の材料をTダイ方式により共押出しする方法でシート状積層体とする製造方法である。該製造方法は複数の組成物を一つの工程で複層化してシート状積層体とできることから生産性の高い製造方法である。また得られるシート状積層体は種々の用途に有用である。例えば高い吸水性を有し、且つ経時的な吸水が成形体の性能を低下させることが懸念される基材層に、低吸水性の層を積層させることで、課題解決を図ることができる。また、該組成物と固有複屈折の符合が逆の組成物からなる層を積層させることによって、位相差板などに利用できたり、該組成物と親和性の低い基材へ接着させようとした場合の該組成物の表面改質手法として利用できたり、屋外用光電変換素子として利用するに必須な耐候性を付与する為に耐候性の良好な層を積層させたりすることができるため好適である。
【0055】
また上記のシート状積層体は、前記組成物を前記溶融押出成形工程でシート状に成形したのちに、シート表面に異なる層をラミネートするラミネート工程を含む製造方法によっても製造することができる。該製造方法は特に薄い層を表面に形成する上では上記の共押出しの製造方法よりも、膜厚制御などの観点から優れている。また得られるシート状積層体は種々の用途に有用である。表面に前記のような低吸水層などの機能層を積層させる場合も、より薄い層をより均一な膜厚で積層できるので、より薄型の成形体を製造でき、かつ機能の位置による変化も少ないため有利である。該組成物と固有複屈折の符合が逆の組成物からなる層を積層させることによって、位相差板などに利用できたり、該組成物と親和性の低い基材へ接着させようとした場合の該組成物の表面改質手法として利用できたり、屋外用光電変換素子として利用するに必須な耐候性を付与する為に耐候性の良好な層を積層させたりすることができるため好適である。また、該組成物の表面を保護するためにも好適である。
【0056】
上記のシート状成形体または積層体の製造方法では、前記組成物を溶融押出成形工程でシート状に成形したのちに、該シートの表面と略平行な少なくとも一方向に延伸する延伸工程を更に有していてもよい。該製造方法によって、シート状成形体の厚みムラを小さくすることができ、延伸工程を有さない製造方法よりも、膜厚制御などの観点から優れている。シート状成形体を延伸することで、力学的強度を高めるのみならず、DNA鎖を配向せることにより、フィルムの面内異方性を高めることで、例えば、液晶性、導電性、イオン伝導性、有害物質吸着性、などの機能性を飛躍的に高めることが可能となる。
【0057】
得られるシート状積層体は種々の用途に有用である。例えば高い吸水性を有し、且つ経時的な吸水が成形体の性能を低下させることが懸念される基材層に、低吸水性の層を積層させることで、課題解決を図ることができる。また、該組成物と固有複屈折の符合が逆の組成物からなる層を積層させることによって、位相差板などに利用できたり、該組成物と親和性の低い基材へ接着させようとした場合の該組成物の表面改質手法として利用できたり、屋外用光電変換素子として利用するに必須な耐候性を付与する為に耐候性の良好な層を積層させたりすることができるため好適である。
【実施例】
【0058】
以下の実施例にて本発明の実施の形態を示す。
用いるポリヌクレオチド(I)としては下の2種を用いた。
○ポリヌクレオチド(Ia):鮭の白子から抽出した、分子量2.4kbp〜30kbp、純度82.6%(DNA純分74.3質量%、水分8.3質量%)のDNA。
○ポリヌクレオチド(Ib):鮭の白子から抽出した、分子量100bp〜1500bp、純度81.0%(DNA純分72.9質量%、水分8.1質量%)のDNA。
【0059】
<実施例A>ポリヌクレオチド組成物(A)の製造
ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(ライオンアクゾ社製:アーカード210−50)35gを蒸留水1Lに溶解したものを、氷冷下で攪拌しつつ、上記ポリヌクレオチド(Ia)25gを蒸留水4Lに氷冷下で溶解したDNA水溶液を徐々に滴下していき、析出した沈殿物を、遠心分離により回収し、水洗後、真空下で質量一定になるまで乾燥させた後、クロロホルム:エタノール=4:1の混合溶媒、ならびにジエチルエーテルを用いて、再沈殿作業により該乾燥物の洗浄を行い、過剰のジデシルジメチルアンモニウムクロライドを除去した後、真空下で質量一定になるまで乾燥させて、ポリヌクレオチドの有するリン酸基の95%がジデシルジメチルアンモニウム塩であるDNA有機カチオン錯体からなる組成物[DNA18.59質量g、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド9.64質量g、水分2.07質量gを含む。ポリヌクレオチド(I)純分と可塑剤(II)との合計に対しDNA66質量%、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド34質量%]を得た。
【0060】
<実施例B>ポリヌクレオチド組成物(B)の製造
ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(ライオンアクゾ社製:アーカード210−50)35gを蒸留水1Lに溶解したものを、氷冷下で攪拌しつつ、上記ポリヌクレオチド(Ib)25gを蒸留水4Lに氷冷下で溶解したDNA水溶液を徐々に滴下していき、析出した沈殿物を、遠心分離により回収し、水洗後、真空下で質量一定になるまで乾燥させた後、クロロホルム:エタノール=4:1の混合溶媒、ならびにジエチルエーテルを用いて、再沈殿作業により該乾燥物の洗浄を行い、過剰のジデシルジメチルアンモニウムクロライドを除去した後、真空下で質量一定になるまで乾燥させて、ポリヌクレオチドの有するリン酸基の95%がジデシルジメチルアンモニウム塩であるDNA有機カチオン錯体からなる組成物[DNA18.23質量g、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド9.45質量g、水分2.03質量gを含む。ポリヌクレオチド(I)純分と可塑剤(II)との合計に対しDNA66質量%、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド34質量%]を得た。
【0061】
上記DNAの純度は、HPLC法とアミノ酸分析法により算出した。上記DNAの分子量は、アガロースゲルの電気泳動により算出した。DNA有機カチオン錯体の有するリン酸基の錯体化率は、元素分析から炭素と窒素の元素比を求めることによって算出した。
【0062】
各種組成物、成形体の物性は、以下に示す測定方法を用いて測定した。
○測定方法1:溶融粘度:
回転型レオメーター(レオメトリクス社製:ARES型)にて複素粘度の周波数依存性を測定し、60〜170℃の温度範囲、0.1〜100rad/secの周波数範囲で、歪み量1%を与え、溶融粘度を算出した。
○測定方法2:含水率:
熱重量分析(METTLER TOLEDO社製:TGA-50型)で110℃にて20分保持した後の質量減少により算出した。
○測定方法3:分光透過率:
分光光度計(日立製作所社製:U-4000型)にて厚み0.5mmの試験片を用いて300〜1000nmの波長範囲で測定した。
○測定方法4:二重螺旋構造保持率:
エチジウムブロマイド(和光純薬社製)を溶解させた水溶液に浸漬させ、測定対象にエチジウムブロマイドをインターカレートさせた後、希釈して溶液中のエチジウムブロマイド量を紫外−可視分光光度計(日立製作所社製:U-4000型)により測定し、470nmと520nmの吸収ピークの変化から導入されたエチジウムブロマイド量を求めた。なお、測定対象中に導入されたエチジウムブロマイド量は、ポリヌクレオチド中のリン原子2個に対して1モルのエチジウムブロマイドが導入されていた場合を100とし、それに対する相対値(モル%)を判断基準とした。
測定方法5:成形体中の可塑剤含有量:
該成形体破片をクロロホルムに溶解させ、核磁気共鳴測定により算出した。
【0063】
実施例1
ポリヌクレオチド組成物(A)50gにジデシルジメチルアンモニウムクロライドを10g加えて混合することで得られた本発明の組成物を、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により厚み20μm〜1.2mm、幅1cm〜2cmのシート状成形体を得た。成形時の成形機の設定温度は80〜150℃の間で調整し、また冷却ロールの温度も70〜90℃の間で調整を行った。
前記組成物の溶融粘度は別途測定し、表1に示した。また、原料ポリヌクレオチド中の含水率、プロトン性可塑剤添加量、プロトン性可塑剤以外の可塑剤添加量、成形体中のポリヌクレオチドの錯体化率、および、成形体中の可塑剤含有量についても併せて表1に示した。尚、表1中の%は質量分率を示すものとする。
また得られた成形体の成形性と外観については表2に示した。
【0064】
実施例2
ポリヌクレオチド組成物(A)を用いて、その総質量に対してジオクチルフタレート(和光純薬社製)を10質量%加え、実施例1と同様の手法によりシート状成形体を得た。
【0065】
実施例3
ポリヌクレオチド組成物(A)を用いて、その総質量に対して10質量%に相当する蒸留水を含有させたものを用い、実施例1と同様の手法によりシート状成形体を得た。
【0066】
実施例4
ポリヌクレオチド組成物(A)を用いて、その総質量に対して1質量%に相当するテトラシアノキノジメタン(アルドリッチ社製)を含有させたものを用い、実施例1と同様の手法によりシート状成形体を得た。
【0067】
実施例5
ポリヌクレオチド組成物(A)にエチジウムブロマイド(和光純薬社製)をインターカレートさせた後、実施例1と同様の手法によりシート状成形体を得た。
【0068】
実施例6
実施例1におけるジデシルジメチルアンモニウムクロライドの代りに、ジドデシルジメチルアンモニウムクロライド(和光純薬社製)を用いた。
【0069】
実施例7
実施例1におけるポリヌクレオチド組成物(A)の代りに、ポリヌクレオチド組成物(B)を用いた。
【0070】
実施例8
実施例1におけるジデシルジメチルアンモニウムクロライドの代りに、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド(ライオンアクゾ社製:エソカードO/12E)を用いた。
【0071】
実施例9
ポリヌクレオチド組成物(A)を用いて、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により厚み20μm〜1.2mm、幅1cm〜2cmのシート状成形体を得た。成形時の成形機の設定温度は80〜150℃の間で調整し、また冷却ロールの温度も70〜90℃の間で調整を行った。
【0072】
実施例10
ポリヌクレオチド組成物(B)を用いて、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により厚み20μm〜1.2mm、幅1cm〜2cmのシート状成形体を得た。成形時の成形機の設定温度は80〜120℃の間で調整し、また冷却ロールの温度も70〜90℃の間で調整を行った。
【0073】
比較例1
ポリヌクレオチド(Ia)を用いて、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により押出成形試験を行った。
【0074】
比較例2
ポリヌクレオチド(Ia)100質量部に、ジオクチルフタレート(和光純薬社製)を0.01質量部加えて、混合することで得られた本発明の組成物を、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により押出成形試験を行った。
【0075】
比較例3(実施例に該当)
ポリヌクレオチド組成物(A)に、該ポリヌクレオチドが有するリン原子に対して、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(ライオンアクゾ社製:アーカード210−50)を11モル当量加えて、混合することで得られた本発明の組成物を、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano型)を使用してTダイ方式により押出成形試験を行った。
【0076】
比較例4
比較例3において、ポリヌクレオチド組成物(A)の代りにポリヌクレオチド(Ia)を用い、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドの添加量を、ポリヌクレオチド組成物(A)中のリン原子に対して0.05モル当量に変更した。
【0077】
比較例5
ポリヌクレオチド組成物(A)4質量部に、ジオクチルフタレート(和光純薬社製)を96質量部加えて、混合することで得られた組成物を、小型二軸押出機(テクノベル社製:ULT−nano)を使用してTダイ方式により押出成形試験を行った。
【0078】
【表1】

【0079】
○成形性の評価
前記実施例1に記載の成形法における成形性評価は、成形時の「溶融粘度安定性」、「吐出量安定性」、「冷却ロールへの密着性」および「巻き取り性」の4つの観点から総合的に評価した。前記3項目以上を満足するものは「◎」、前記2項目を満足するものは「○」、前記1項目を満足するものは「△」、いずれの項目も満足しない、または成形不可能であったものは「×」、とした。
○成形体外観の評価
前記実施例1に記載の成形法における成形体外観評価は、目視による外観評価、およびマイクロメーターによる厚み測定により、「厚みと幅のムラ」、「黄色度」および「ヘイズ感」の3つの観点から総合的に評価した。前記3項目を満足するものは「◎」、前記2項目を満足するものは「○」、前記1項目を満足するものは「△」、いずれの項目も満足しない、または成形不可能であったものは×、とした。
○シート状成形体の二重螺旋構造保持率の決定
前記実施例、比較例で得られた組成物、またはシート状成形体につき、二重螺旋構造がポリヌクレオチド(I)の有する塩基同士の結合による塩基対によって構成されており、該塩基のうち10%以上で塩基対が保持されていれば「○」、保持されていない、または成形不可能であったものは「×」、とした。
【0080】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖状構造を有するポリヌクレオチド(I)と、
四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、両性界面活性剤、高分子カチオン化合物、リン酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、アルキレングリコール系可塑剤、エポキシ化合物系可塑剤、ポリマー可塑剤、からなる群より少なくとも1つ選択される可塑剤(II)と、
からなる組成物であって、複数の前記ポリヌクレオチド(I)の前記鎖状構造の少なくとも一部が互いに二重螺旋構造を形成しており、ポリヌクレオチド(I)と可塑剤(II)との合計に対し前記可塑剤(II)を0.1質量%以上95質量%以下含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、前記ポリヌクレオチド(I)がデオキシリボ核酸またはリボ核酸である組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、前記可塑剤(II)が、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、両性界面活性剤、高分子カチオン化合物からなる群より少なくとも1つ選択されるプロトン性可塑剤(II−1)を含み、前記プロトン性可塑剤(II−1)が前記ポリヌクレオチド(I)が有するリン原子に対して0.1モル当量以上10モル当量以下である組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物であって、さらに電子受容体または電子供与体となる化合物を含む組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物であって、さらに機能性色素を含む組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物を加熱溶融して成形する工程を有する成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られる成形体。
【請求項8】
請求項7に記載の成形体であって、該成形体中の前記ポリヌクレオチド(I)の前記二重螺旋構造が、前記ポリヌクレオチド(I)が有する塩基同士の結合による塩基対によって構成されており、前記塩基のうち10%以上が前記塩基対を形成している成形体。
【請求項9】
シート状である請求項7または8に記載の成形体。
【請求項10】
請求項9に記載のシート状の成形体からなる層と他の材料からなる層とを有する積層体。

【公開番号】特開2008−201862(P2008−201862A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37616(P2007−37616)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】